説明

行動立証装置

【課題】 容易に実用化でき、使用者が痴漢を行っていなかったことを確実に立証することができる行動立証装置を得る。
【解決手段】各種情報を記録する記録手段と、時刻を計時する計時手段と、指を検出すると共に該指から指紋情報を読み取る一対の指紋認識手段からなる両指紋認識手段とを備えた行動立証装置において、両指紋認識手段が指を検出してからいずれか一方の指紋認識手段が指を検出しなくなるまでの時刻情報及び両指紋認識手段で読み取られた指紋情報を関連付けて記録手段に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動立証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、近年、テレビ番組などにおいて痴漢の実態が報道されるようになり、被害者となる女性の痴漢に対する警戒心が強くなっている。しかし、このことが原因となって、特に満員電車において不可抗力的に女性と接触せざるを得なくなった男性が痴漢の加害者と勘違いされて冤罪が生じていることも事実である。
【0003】
このような冤罪を減少させるため、自ら無実を立証できるシステムが開発されており、例えば、後出特許文献1には、ユーザの手に装着された複数の被測定手段、前記被測定手段との距離を測定する測定手段、及び情報処理装置から構成される位置方向推定システムであって、前記情報処理装置は、前記測定手段に対して測定開始と測定終了の命令を出力する命令出力手段と、前記測定手段とそれぞれの前記被測定手段との距離を前記測定手段から取得し、前記ユーザの掌の位置及び向きを算出する処理手段と、を有する位置方向推定システムが開示されている。
【0004】
また、本人の行動を立証できる装置として、後出特許文献2には、時刻を計時する計時手段および表示手段を備える携帯電話機において、本人であることを認証するための生体情報を読み取る読み取り手段と、当該携帯電話機が存在する位置を検出する位置検出手段と、発信および着信の少なくとも一方においての所要の操作がなされたときに、前記読み取り手段で読み取られた生体情報、前記位置検出手段で検出された位置情報および前記計時手段で計時された時刻情報を記憶する記憶手段とを備える携帯電話機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−181429号公報
【特許文献2】特開2002−95058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献1に開示された位置方向推定システムにおいては、痴漢が発生する場所毎に測定手段を設置する必要があり、また、ユーザがそれぞれ被測定手段を装着する必要があり、設備投資に費用が掛かるため、実用化が困難であった。
【0007】
一方、前記特許文献2に開示された携帯電話機は、普及率が非常に高い携帯電話機に追加機能を加えることによって容易に実用化できるが、通話記録を立証できるに止まり、痴漢の加害者に勘違いされる可能性が高い通勤電車などの通話ができない状態においては、何等行動を立証することができなかった。
【0008】
そこで、本発明者は、容易に実用化でき、使用者が痴漢を行っていなかったことを確実に立証することができる行動立証装置を開発することを技術的課題として、研究開発を行った結果、各種情報を記録する記録手段と、時刻を計時する計時手段と、指を検出すると共に該指から指紋情報を読み取る一対の指紋認識手段からなる両指紋認識手段とを備えた行動立証装置において、両指紋認識手段が指を検出してからいずれか一方の指紋認識手段が指を検出しなくなるまでの時刻情報及び両指紋認識手段で読み取られた指紋情報を関連付けて記録手段に記録すれば、使用者が行動立証装置を両手で触れていた時刻を容易に立証することができるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【0009】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0010】
すなわち、本発明に係る行動立証装置は、各種情報を記録する記録手段と、時刻を計時する計時手段と、指を検出すると共に該指から指紋情報を読み取る一対の指紋認識手段とを備えた行動立証装置において、両指紋認識手段からなる両指紋認識手段が指を検出してからいずれか一方の指紋認識手段が指を検出しなくなるまでの時刻情報及び両指紋認識手段で読み取られた指紋情報を関連付けて記録手段に記録するものである。
【0011】
また、本発明は、前記行動立証装置において、時刻情報が、両指紋認識手段が指を検出した際に計時手段が計時していた検出開始時刻情報と、少なくとも一方の指紋認識手段が指を検出しなくなった際に計時手段が計時していた検出終了時刻情報とからなるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一対の指紋認識部を設けると共に、両指紋認識部が読み取った指紋情報と両指紋認識部が指を検出している間の時刻情報とを関連付けて記録するため、使用者が一方の指紋認識部に一方の手の指を接触させると共に他方の指紋認識部に他方の手の指を接触させることにより、使用者が時刻情報に示される時刻の間は両手が塞がっていたことを容易に立証できる。例えば、満員電車において痴漢の加害者と勘違いされた際に使用者は両手を自由に使用することができなかったことが容易に立証でき、冤罪の発生を防止できる。
【0013】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る行動立証装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示す行動立証装置のブロック図である。
【図3】図1に示す行動立証装置の行動記録ステップを示したフローチャートである。
【図4】図1に示す行動立証装置の行動立証ステップを示したフローチャートである。
【図5】実施の形態2に係る行動立証装置の作業ステップを示したフローチャートである。
【図6】実施の形態3に係る行動立証装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
実施の形態1.
【0017】
本実施の形態に係る行動立証装置1は、図1に示すように、各種情報を表示するための表示部2と、使用者の指の接触を検出すると共に該指の指紋を読み取るための一対の指紋認識部3,3(指紋認識手段)と、各種操作を行うための操作部4とを備えている。
【0018】
指紋認識部3,3は、行動立証装置1の下部に左右に分かれた状態で二つ設置されており、それぞれ使用者の両手の指を検出するようになっている。
【0019】
そして、行動立証装置1には、図2に示すように、各種情報を記録するための記録部5(記録手段)と、時刻を計時するための計時部6(計時手段)と、各部を制御する制御部7とが設けられている。
【0020】
次に、本実施の形態に係る行動立証装置1の行動記録ステップを図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0021】
使用者が操作部4に設けられた開始スイッチ(図示せず)を押すことにより(ステップS1)、使用者が操作部4に設けられた開始スイッチを押してから終了スイッチ(図示せず)を押すまでの間で両指紋認識部3,3に触れている時間を示す時刻情報を保存できるようになる。
【0022】
具体的には、先ず、使用者が指紋認識部3に指を触れると、指を検出した指紋認識部3は検出信号を制御部7へと送信し続ける。そして、制御部7は、両指紋認識部3,3から検出信号が届いているかどうかを確認する(ステップS2)。
【0023】
次に、制御部7において両指紋認識部3,3から検出信号が届いていることが確認されると、制御部7は、両指紋認識部3,3に対して使用者の指紋を読み取るように指示する。制御部7から指示を受けた両指紋認識部3,3は、使用者の指紋を読み取って一方の指紋認識部3で読み取った指紋情報と他方の指紋認識部3で読み取った指紋情報とを制御部7へ送信する。そして、両指紋認識部3,3から指紋情報を受け取った制御部7は、両指紋情報からなる本人指紋情報を作成すると共に、両指紋認識部3,3から検出信号が届いた際に計時部6で計時されていた時刻に基づく検出開始時刻情報を作成し、本人指紋情報と検出開始時刻情報とを関連付けて記録部5に記録する(ステップS3,S4)。
【0024】
次に、使用者が少なくとも一つの指紋認識部3から指が離すと、指を検出しなくなった指紋認識部3から制御部7へ送信されていた検出信号が途絶える。これに伴って、制御部7において少なくとも一つの指紋認識部3から検出信号が途絶えたことが確認されると(ステップS5)、制御部7は、少なくとも一つの指紋認識部3から検出信号が途絶えた際に計時部6で計時されている時刻に基づく検出終了時刻情報を作成し、検出終了時刻情報を本人指紋情報及び検出開始時刻情報と関連付けて記録部5に記録する(ステップS6)。
【0025】
そして、使用者が指紋認識部3から指を離して終了スイッチを押すことにより(ステップS7)、制御部7は行動記録作業を終了する。
【0026】
一方、使用者が指紋認識部3から指を離した後に終了スイッチを押さないと(ステップS7)、制御部7は、指を検出しなくなった指紋認識部3から再び検出信号が届いているかどうかを確認する(ステップS8)。そして、制御部7において指を検出しなくなった指紋認識部3から再び検出信号が届いたことが確認されると、制御部7は、再び指を検出した指紋認識部3に対して使用者の指紋を読み取るように指示する。制御部7から指示を受けた指紋認識部3は、使用者の指紋を読み取って再指紋情報を作成して制御部7へ送信する。再指紋情報を受け取った制御部7は、記録部5に記録されている本人指紋情報の内で再び指を検出した指紋認識部3に対応する指紋情報と再指紋情報とが一致しているかどうかを確認する(ステップS9)。そして、制御部7において両指紋情報が一致していることを確認されると、制御部7は、指を検出しなくなった指紋認識部3から再び検出信号が届いた際に計時部6で計時されていた時刻に基づく検出開始時刻情報を作成し、新たに作成した検出開始時刻情報を本人指紋情報及び既に作成した検出開始時刻情報及び検出終了時刻情報と関連付けて記録部に記録する(ステップS3,S4)。なお、制御部7は、終了スイッチが押されない限り、ステップS4〜S9の作業を繰り返して検出開始時刻情報及び検出終了時刻情報が一対となった複数の時刻情報と本人指紋情報とを関連付けて記録部5に記録する。
【0027】
なお、本人指紋情報と再指紋情報とが一致していることを確認する際に制御部7において両指紋情報が一致しないことが確認されると(ステップS9)、制御部7は、表示部2に「指紋情報不一致エラー」と表示させて行動記録作業を終了する(ステップS10)。
【0028】
また、使用者が両指紋認識部3,3から指を離すことなく終了スイッチを押すことにより(ステップS11)、制御部7は、終了スイッチが押された際に計時部6で計時されている時刻に基づく検出終了時刻情報を作成し、検出終了時刻情報を本人指紋情報及び検出開始時刻情報と関連付けて記録部5に記録して行動記録作業を終了する(ステップS12)。
【0029】
以上の作業により、使用者が開始スイッチを押してから終了スイッチが押すまでの間に少なくとも一対の検出開始時刻情報及び検出終了時刻情報からなる時刻情報と本人指紋情報とが関連付けて記録部5に記録されるため、使用者が操作部4の表示スイッチ(図示せず)を押すことによって関連付けられた複数の情報を一つのグループとして表示することができる。
【0030】
次に、本実施の形態に係る行動立証装置の行動立証ステップを図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0031】
先ず、行動立証装置1の使用者が痴漢の加害者であると勘違いされた場合には、使用者は操作部4に設けられた表示スイッチを操作し(ステップS13)、痴漢行為が行われたと主張されている時刻を含む時刻情報と該時刻情報に関連付けられた本人指紋情報とを表示部2に表示する(ステップS14)。そして、使用者は操作部に設けられた照合スイッチ(図示せず)を押して両指紋認識部3,3に触れた指の指紋情報を読み取ることにより(ステップS15)、当該指紋情報が本人指紋情報と一致するかどうかを確認する(ステップS16)。そして、両指紋情報が一致している場合には表示部に「指紋情報一致」と表示し(ステップS17)、両指紋情報が一致していない場合には表示部に「指紋情報不一致」と表示して行動立証作業を終了する(ステップS18)。
【0032】
なお、記録部5に記録される各種情報は前記少なくとも一対の検出開始時刻情報及び検出終了時刻情報からなる時刻情報と本人指紋情報とからなるグループを一つの単位として所定数のグループが記録されると最も古いグループの情報が最も新しいグループの情報に上書きされて常時所定数のグループの情報が記録されるようにしてもよい。また、指紋認識部として指が接触した直後に検出信号を出し、指が離れた直後に非検出信号を出すタイプのものを採用しても同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
実施の形態2.
【0034】
本実施の形態は前記実施の形態1における行動記録ステップの変形例である。
【0035】
本実施の形態に係る行動立証装置1においては、図5に示すように、先ず、使用者は予め両指紋認識部3,3の指紋読取機能を利用して自己の本人指紋情報を記録部に記録する(ステップS19)。次に、使用者が操作部4に設けられた開始スイッチを押した後(ステップS20)、制御部7は、両指紋認識部3,3から検出信号が届いているかどうかを確認して両指紋認識部3,3から検出信号が届いていることが確認されると(ステップS21)、両指紋認識部3,3に対して使用者の指紋を読み取るように指示して新たに両指紋認識部3,3で読み取られた新指紋情報が記録部5に記録されている本人指紋情報と一致しているかどうかを確認する(ステップS22)。そして、制御部7において両指紋情報が一致していることが確認されると、制御部7は、両指紋認識部3,3から検出信号が届いた際に計時部で計時されていた時刻に基づく検出開始時刻情報を作成した後(ステップS4)、前記実施の形態1と同じようにステップS4〜S12の行動記録作業を繰り返す。なお、本人指紋情報と新指紋情報とが一致していることを確認する際に制御部7において両指紋情報が一致しないことが確認されると、制御部7は、表示部に「指紋情報不一致エラー」と表示させて作業を終了する(ステップS23)。
【0036】
本実施の形態によれば、使用者のみが本人指紋情報を記録しておくため、立証作業を容易に行うことができる。
【0037】
実施の形態3.
【0038】
本実施の形態は前記実施の形態1における記録部の変形例である。
【0039】
本実施の形態における行動立証装置1は、インターネット網へ接続してWebにアクセスすることができる機能が付加されており、図6に示すように、制御部7には、送受信部8が接続されている。また、Web上に記録サーバー9が設置されており、行動立証装置1で得られた各種情報は制御部7に接続された送受信部8からインターネットを介して記録サーバー9に記録されるようになっている。なお、記録サーバー9に記録された各種情報は、操作部4に設けられた表示スイッチを押すことによって表示部2に表示できるようになっている。
【0040】
本実施の形態によれば、行動立証装置1で得られた各種情報をWeb上に設置された記録サーバー9に記録するため、各種情報に対する改ざんの疑惑を防止することができる。
【0041】
なお、インターネット網へ接続してWebにアクセスすることができる機能を備えた携帯電話機に実施の形態1に係る行動立証装置の機能を組み込むことにより、本実施の形態に係る行動立証装置と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 行動立証装置
2 表示部
3 指紋認識部
4 操作部
5 記録部
6 計時部
7 制御部
8 送受信部
9 記録サーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種情報を記録する記録手段と、時刻を計時する計時手段と、指を検出すると共に該指から指紋情報を読み取る一対の指紋認識手段からなる両指紋認識手段とを備えた行動立証装置において、両指紋認識手段が指を検出してからいずれか一方の指紋認識手段が指を検出しなくなるまでの時刻情報及び両指紋認識手段で読み取られた指紋情報を関連付けて記録手段に記録することを特徴とする行動立証装置。
【請求項2】
時刻情報が、両指紋認識手段が指を検出した際に計時手段が計時していた検出開始時刻情報と、少なくとも一方の指紋認識手段が指を検出しなくなった際に計時手段が計時していた検出終了時刻情報とからなる請求項1記載の行動立証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−141813(P2011−141813A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2975(P2010−2975)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【特許番号】特許第4543345号(P4543345)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(500065255)
【Fターム(参考)】