説明

衛星信号からナビゲーションビットを復調するためのシステム

【課題】衛星信号からナビゲーションビットを復調するための信号処理システムが本明細書で開示される。
【解決手段】本信号処理システムは、上記衛星信号から取得された第1の複数の粗捕捉(C/A)コードにより上記ナビゲーションビットにおける二つのナビゲーションビット間の境界を決定し、上記第1の複数のC/Aコードを格納し、上記境界を決定した後に取得される第2の複数のC/Aコードを復調して第1の一連のナビゲーションビットを復元するためのデジタルベースバンドプロセッサを備える。本信号処理システムは、更に、上記デジタルベースバンドプロセッサに接続された相補的復調ユニットを備え、この相補的復調ユニットは、前記第1の複数のC/Aコードを復調して、第2の一連のナビゲーションビットを復元するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステム(a navigation system)に関し、更に詳しくは、ナビゲーションシステムにおいて衛星信号を処理するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛星信号により移動中の物体についての絶対位置を提供するために、車両アプリケーション及び移動体電子機器アプリケーションを含む多くのアプリケーションにおいて全地球測位システム(GPS; Global positioning system)が広く使用されている。初回測位時間(TTFF; Time To First Fix)パラメータは、GPSの性能を評価するのに重要なパラメータである。TTFFパラメータは、GPS受信器が起動した後に最初に位置を算出するまでの時間を意味する。一般に、ユーザは、GPS受信器の起動後に短時間で移動中の物体の現在位置を算出することを望む。
【0003】
GPS受信器は、GPS受信器に格納された従前の別の情報に従って、コールドスタートモード、ウォームスタートモード、ホットスタートモードを含む複数のモードで動作する。一般に、GPS受信器は、GPS受信器が動作を開始するときにはコールドスタートモードで動作する。コールドスタートモードは、GPS受信器に従前の情報(例えば、衛星エフェメリス(ephemeris)、衛星アルマナック(almanac)、GPS受信器の前の位置、クロック情報、など)が何も格納されていない状態でGPS受信器が動作を開始することを意味する。
【0004】
図1は、コールドスタートモードにおいて、従来のGPS受信器によって実施される動作のフローチャート100を示す。図1に示されるように、GPS受信器がコールドスタートモードで動作を開始するときには、このGPS受信器は、ブロック102で、全ての衛星信号を捕捉(acquire)し、ブロック104で、利用可能な衛星信号を追跡(track)し、ブロック106で、衛星信号のそれぞれからC/Aコードを取得(capture)し、ブロック108で、C/Aコードを復調してナビゲーションビットを復元(recover)し、ブロック110で、上記ナビゲーションビットに基づいてナビゲーションデータサブフレームを同期化(synchronize)し、ブロック112で、衛星エフェメリシスを収集し、そしてブロック114で現在の位置を算出(fix)する。
【0005】
動作中に、GPS受信器は、複数のC/Aコードを受信した後にナビゲーションビットの第1の境界を決定し、そして、その境界からC/Aコードの復調を開始して、この第1の境界の後のナビゲーションビットを復元する。従って、第1の境界の前のC/Aコードは使用されずに破棄されるので、第1の境界の前のナビゲーションビットは利用されない。しかしながら、現在位置を計算するためには、十分な数量のナビゲーションビットが復元されるべきである。結果として、GPS受信器は、位置を計算するための第1の境界の後のナビゲーションビットを復元するのに比較的長い時間を費やす必要がある。従って、本発明は、主として、ナビゲーションシステムの高速な復元のためのGPS受信器システムを対象とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、衛星信号から複数のナビゲーションビットを復調するための信号処理システムを提供する。本信号処理システムは、前記衛星信号から取得される第1の複数の粗捕捉(C/A)コードにより、前記ナビゲーションビットにおける二つのナビゲーションビット間の境界を決定し、前記第1の複数のC/Aコードを格納し、そして前記境界を決定した後に取得される第2の複数のC/Aコードを復調して第1の一連のナビゲーションビットを復元するためのデジタルベースバンドプロセッサを備える。この信号処理システムは、更に、前記第1の複数のC/Aコードを復調して第2の一連のナビゲーションビットを復元するための、前記デジタルベースバンドプロセッサに接続された相補的復調ユニットを備える。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、衛星信号から複数のナビゲーションビットを復調するための方法に関する。本方法は、前記衛星信号から取得される第1の複数の粗捕捉(C/A)コードにより、前記ナビゲーションビットにおける二つのナビゲーションビット間の境界を決定するステップと、前記第1の複数のC/Aコードを格納するステップと、そして前記境界を決定した後に取得される第2の複数のC/Aコードを復調して第1の一連のナビゲーションビットを復元するステップと、前記第1の複数のC/Aコードを復調して第2の一連のナビゲーションビットを復元するステップとを含む。
更に他の実施形態では、本発明は、複数の衛星信号のそれぞれから複数のナビゲーションビットを復調するための信号処理システムを備えたGPS受信器を提供する。この信号処理システムは、前記衛星信号から取得される第1の複数の粗捕捉(C/A)コードにより、前記ナビゲーションビットにおける二つのナビゲーションビット間の境界を決定し、前記第1の複数のC/Aコードを記憶ユニットに格納し、そして前記境界を決定した後に取得される第2の複数のC/Aコードを復調して第1の一連のナビゲーションビットを復元するためのデジタルベースバンドプロセッサを備える。この信号処理システムは、更に、前記デジタルベースバンドプロセッサに接続され、前記第1の複数のC/Aコードを復調して第2の一連のナビゲーションビットを復元するための相補的復調ユニットと、前記第2の一連のナビゲーションビットと前記第1の一連のナビゲーションビットを連続的に連結してナビゲーションビットフローを形成するためのフロー形成ユニットとを備える。本GPS受信器は、更に、前記信号処理システムに接続され、前記衛星信号のナビゲーションビットフローにより現在位置を計算するためのナビゲーションプロセッサを備える。
【0008】
請求項に記載された対象の特徴及び利点は、図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。ここで、同様の符号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】異なる動作開始モードで従来のGPSによって実施される従来技術による動作のフローチャートを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態によるナビゲーションビットの構成図である。
【図3】本発明の一実施形態による衛星信号からナビゲーションビットを復調するための信号処理システムのブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態によるナビゲーションビットフローを形成する図式を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態によるGPS受信器のブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態による利用可能なデジタル衛星信号からナビゲーションビットを復調するための動作のフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態によるGPS受信器によって実施される動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、これらの実施形態で説明されるが、それらは本発明をこれらの実施形態に制限することを意図するものではないことが理解される。逆に、本発明は、代替物、変形物、均等物に及び、これらは添付の請求項によって規定される本発明の精神及び範囲に含まれる。
【0011】
また、以下の本発明の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために多くの詳細が述べられる。しかしながら、当業者であれば、本発明がこれらの詳細を用いずに実施できることが分かる。他の例では本発明の態様を必要以上に不明瞭にしないために、公知の方法、手順、構成要素、及び回路を詳細に説明しない。
【0012】
本発明による実施形態は、衛星信号からナビゲーションビットを復調するための信号処理システムを提供する。この信号処理システムは、入力衛星信号から連続的にC/Aコードを取得(capturing)し、取得した複数のC/Aコードによりナビゲーションビットの第1の境界(a first boundary)を決定し、そして、この第1の境界を決定した後に取得されるC/Aコードを復調して第1の境界に続く第1の一連のナビゲーションビットを復元(recover)するためのデジタルベースバンドプロセッサを備える。また上記取得されたC/Aコードは、上記第1の境界を決定する前に、データベースに格納されることができる。この格納されたC/Aコードは、第1の境界より前の第2の一連のナビゲーションビットを復元するために復調されることができる。有利には、第1の境界を決定する前に取得されるC/Aコードは、格納され、そして第1の一連のナビゲーションビットに対して相補的(complementary)な第2の一連のナビゲーションビットを復元するために使用されることができる。従って、上記相補的なナビゲーションビットは、より迅速に現在位置を決定するのに役立つ。
【0013】
一般に、衛星信号は、キャリア信号、擬似ランダムノイズ(PRN)コード、及びナビゲーションビットを含む。各衛星は、ナビゲーションビットをユニークなPRNコードに変調して、このナビゲーションビットのスペクトルを拡散させることができる。そして、衛星は、ナビゲーションビットと共にPRNコードをキャリア信号に変調し、このナビゲーションビットとPRNコードを乗せたキャリア信号を衛星信号として送出する。民生のGPSアプリケーションでは、PRNコードはC/Aコードとしても知られている。
【0014】
本発明の一実施形態によるナビゲーションビットの構成200を図2に示す。一実施形態において、C/Aコード202は、1023個のC/Aコードチップから構成される。C/Aコード202の長さは1秒であり得る。長さが1秒のC/Aコードは、簡潔に、1msC/Aと称される。ナビゲーションビットフロー206は、一連のナビゲーションビットN1,N2,…,N16などから構成することができる。ナビゲーションビットフロー206における各ナビゲーションビットは、ナビゲーションビット204と同じ構成を有する。一実施形態において、ナビゲーションビットフロー206のビットレートは50ビット/sであり、従って、ナビゲーションビット204の長さは20msである。ナビゲーションビットはC/Aコードフローと共に変調されるので、ナビゲーションビット204は、20個の1msC/Aコード、例えば、C1−C20により表すことができる。
【0015】
図3は、本発明の一実施形態による、衛星信号からナビゲーションビットを復調するための信号処理システムのブロックダイアグラム300を示す。図3は、図2と組合せて説明される。
【0016】
アンテナは、衛星が発生した衛星信号を捕捉(acquire)する。そして、この衛星信号は、増幅器によって増幅され、RF/IF変換器によって無線周波数(RF)から中間周波(IF)に変換され、そしてA/D変換器によってアナログからデジタルに変換(A/D変換)される。一実施形態では、このデジタル衛星信号は、このデジタル衛星信号からナビゲーションビットを復調するために信号処理システム302へ送出される。
【0017】
デジタル衛星信号を受信した後、デジタルベースバンドプロセッサ304は、どのデジタル衛星信号がGPSナビゲーションに利用可能かを判定することができる。デジタルベースバンドプロセッサ304は、上記利用可能なデジタル衛星信号からナビゲーションビットを復調することができる。
【0018】
上述のように、各衛星は、ユニークなC/Aコードを使用してナビゲーションビットのスペクトルを拡散させる。任意の二つの異なるC/Aコード間の相互相関(cross correlation)は概ねゼロである。二つの同じC/Aコード間の自己相関(auto correlation)は、この二つの同じC/Aコードの位相が同じときにのみ所定の閾値よりも高い。利用可能なデジタル衛星信号のそれぞれについて、デジタルベースバンドプロセッサ304は、対応するデジタル衛星信号から継続的に1msC/Aコードを取得し、そして、衛星の参照C/Aコードとデジタル衛星信号との間の相関により1msC/Aコードの現在の位相を決定することができる。この衛星の参照C/Aコードは、内部のC/Aコード発生器(図3では示されていない)によって発生されることができる。
【0019】
1msC/Aコードの現在の位相に基づいて、デジタルベースバンドプロセッサ304は、1msC/Aコードの境界を決定することができる。図2で説明したように、ナビゲーションビット、例えば、ナビゲーションビット204は、1msC/Aコード、例えばC1−C20を含む。従って、デジタルベースバンドプロセッサ304は、1msC/Aコードの境界によりナビゲーションビットの境界を決定することができる。
【0020】
更に詳しくは、1msC/Aコードの境界により、デジタルベースバンドプロセッサ304は、各1msC/Aコードの積分値(integral value)を計算する。もし、シリーズにジョイントするナビゲーションビットが同じ値を有すれば、例えば、ナビゲーションビットフロー206において、N1,N2,N3がビット0であれば、N1,N2,N3における1msC/Aコードの積分値は概ね同じであり、同じ符号(sign)を有することができる。もし、シリーズにジョイントするナビゲーションビットが異なる値を有すれば、例えば、ナビゲーションビットフロー206において、N3がビット0であり、N4がビット1であれば、N3における1msC/Aコードの積分値は、N4における1msC/Aコードの積分値と異なる。
【0021】
デジタルベースバンドプロセッサ304は、ひとたびシリーズにジョイントする二つのナビゲーションビットが異なれば、ナビゲーションビットの第1の境界を決定する。例えば、もし、ナビゲーションビットN1,N2,N3が前のナビゲーションビットと同じであり、ナビゲーションビットN4が前のナビゲーションビットと異なれば、デジタルベースバンドプロセッサ304は、これら二つのナビゲーションビットにおける1msC/Aコードの積分値の変化により、ナビゲーションビットN3とN4との間の境界を決定することができる。ナビゲーションビットを変調するのに、20個の1msC/Aコードごとの第1の境界から開始することが使用できるので、デジタルベースバンドプロセッサ304は、第1の境界に基づいて、続かれる(followed)ナビゲーションビットの境界を決定することができる。
【0022】
一実施形態において、デジタルベースバンドプロセッサ304は、ナビゲーションビットの第1の境界を決定する前に、C/Aコード記憶ユニット306に1msC/Aコードを連続して格納する。この1msC/Aコードは、[C1,C2,…,CN]として表されることができる。或いは、デジタルベースバンドプロセッサ304は、1msC/Aコードの関連情報、例えば1msC/Aコードの積分値をC/Aコード記憶ユニット306に順に格納することができる。
【0023】
ナビゲーションビットの境界を決定した後、デジタルベースバンドプロセッサ304は、第1の境界の後の一連のナビゲーションビット(現在のナビゲーションビット)、例えばナビゲーションビットフロー206におけるビットN4,N5,…,N16を復元するために、上記決定された境界により、継続的に取得される1msC/Aコードを復調することができる。一実施形態において、デジタルベースバンドプロセッサ304は、ナビゲーションビットの開始境界と終了境界との間の20個の1msC/Aコードの積分値により、各ナビゲーションビットの値、例えばビット0またはビット1を決定することができる。
【0024】
また、デジタルベースバンドプロセッサ304は、ナビゲーションビットの第1の境界を決定した後、C/Aコード記憶ユニット306に格納された1msC/Aコード[C1,C2,…,CN]を相補的復調ユニット308に順に送出することができる。続いて、相補的復調ユニット308は、上記格納された1msC/Aコード[C1,C2,…,CN]を復調して、第1の境界の前の一連のナビゲーションビット(前のナビゲーションビット)、例えば、ナビゲーションビットフロー206におけるビットN1,N2,N3を復元することができる。
【0025】
相補的復調ユニット308は、次式(1)に従って、上記格納された1msC/Aコード[C1,C2,…,CN]によって変調された前のナビゲーションビットの数bitcntを計算することができる。
【0026】
【数1】

【0027】
Nは、C/Aコード記憶ユニット306に格納されたC/Aコードの数を表す。Mは、一つのナビゲーションビットに含まれるC/Aコードの所定数を表す。この実施形態において、Mは20である。
【0028】
【数2】

【0029】
は、例えば次最小の整数(next smallest number)に、数、例えばN/20をマッピングする関数である。より具体的には、
【0030】
【数3】

【0031】
は、xよりも大きい最大の整数である。
【0032】
この実施形態では、各ナビゲーションビットは、20個の1msC/Aコードを含む。従って、C/Aコード[CN]から始めて20個のC/Aコード、例えば、[CN],[CN−1],[CN−2],…,[CN−19]は、ナビゲーションビットを表すことができる。従って、1msC/Aコード[C1,C2,…,CN]において、前のナビゲーションビットにおけるナビゲーションビットNに含まれる1msC/Aコードの開始位置StartNavBit(i)は式(2)で与えることができる。
【0033】
StartNavBit(i) = N-bitcnt*M+(i-1)*M+1 = N-bitcnt*20+(i-1)*20+1 (2)
【0034】
ここで、iは、ナビゲーションビットNの通し番号(serial number)を表す。
【0035】
同様に、ナビゲーションビットを変調するための1msC/Aコードの終了位置EndNavBit(i)は式(3)で与えることができる。
【0036】
EndNavBit(i) = StartNavBit(i)+M-1 (3)
【0037】
従って、相補的復調ユニット308は、開始位置StartNavBit(i)と終了位置EndNavBit(i)との間の20個の1msC/Aコードにより、ナビゲーションビットNの値、例えばビット0またはビット1を決定することができる。
【0038】
一実施形態において、デジタルベースバンドプロセッサ304は、て現在のナビゲーションビットを復元するために、第1の境界を決定した後に取得される1msC/Aコードの復調を開始し、また、相補的復調ユニット308は、同時的に、前のナビゲーションビットを復元するために、上記格納された1msC/Aコード[C1,C2,…,CN]の復調を開始することができる。或いは、相補的復調ユニット308は、デジタルベースバンドプロセッサ304が1msC/Aコードの復調を開始する前または後に、上記格納された1msC/Aコードの復調を開始することができる。
【0039】
フロー形成ユニット310は、それぞれ相補的復調ユニット308とデジタルベースバンドプロセッサ304から出力される前のナビゲーションビットと現在のナビゲーションビットとを連続的に連結することによりナビゲーションビットフローを形成するのに使用される。このナビゲーションビットフローは、対応する衛星のナビゲーションメッセージを示し、更なるオペレーションのために出力されることができる。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態による、ナビゲーションビットフローを形成するための図式400を示す。図5は、図3と組合せて説明される。図4に示されるように、信号処理システム302は動作を開始し、デジタルベースバンドプロセッサ304は、デジタル衛星信号から1msC/Aコードを取得して、この1msC/Aコードの境界によりナビゲーションビットの第1の境界を決定する。そして、デジタルベースバンドプロセッサ304は、現在のナビゲーションビットを復元するために、第1の境界に基づいて、この第1の境界を決定した後に取得される1msC/Aコードを復調する。また、第1の境界を決定した後、C/Aコード記憶ユニット306に格納された1msC/Aは、前のナビゲーションビットを復元するために復調されることができる。前のナビゲーションビットと現在のナビゲーションビットは、ナビゲーションビットフローを形成するために連続的に連結されることができる。
【0041】
従って、ナビゲーションビットの第1の境界を決定する前に、上記取得されたC/Aコードは、C/Aコード記憶ユニット306に連続的に格納されることができる。第1の境界を決定した後、相補的復調ユニット308は、前のナビゲーションビットを復元するために、上記格納されたC/Aコードを復調することができ、それは、より迅速に現在の位置を決定するために、デジタルベースバンドプロセッサ304から出力される現在のナビゲーションビットとともに使用することができる。
【0042】
図5は、本発明の一実施形態によるGPS受信器500のブロック図を示す。図3において同じ符号が付された要素は同様の機能を有し、ここでは説明しない。図5は、図3と組合せて説明される。
【0043】
図5に示されるように、GPS受信器500は、アンテナ502を介して複数の衛星から衛星信号を受信し、この衛星信号をプリ増幅器504により増幅することができる。無線周波数から中間周波数(RF/IF)への変換器506は、上記増幅された衛星信号の周波数を無線周波数から中間周波数に変換することができる。アナログからデジタルへの変換器508は、衛星信号を所定のサンプリング周波数でデジタル化して、信号処理システム302へのデジタル衛星信号を生成することができる。
【0044】
上述のように、信号処理システム302は、デジタル衛星信号の可用性(availability)を判定することができ、ナビゲーションビットを復元するために、利用可能なデジタル衛星信号のそれぞれを変調し、そしてナビゲーションビットを連続的に連結することによりナビゲーションビットフローを形成することができる。ナビゲーションプロセッサ510は、利用可能なデジタル衛星信号のナビゲーションビットフローにより示されるナビゲーションメッセージにより、GPS受信器500の位置を計算することができる。
【0045】
一実施形態において、相補的復調ユニット308とフロー形成ユニット310は、ハードウェア及び/又はファームウェアにより実施することができる。或いは、相補的復調ユニット308とフロー形成ユニット310は、ソフトウェアにより実施することができる。加えて、GPS受信器500は、他の構成をとることができ、図3及び図5に示されるアーキテクチャに制限されず、例えば、相補的復調ユニット308とフロー形成ユニット310は、デジタルベースバンドプロセッサ304またはナビゲーションプロセッサ510に統合されることができる。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態による、利用可能なデジタル衛星信号からナビゲーションビットを復調するための動作のフローチャート600を示す。図6は、図3と組合せて説明される。
【0047】
ブロック602では、デジタルベースバンドプロセッサ304は、利用可能なデジタル衛星信号から、C/Aコード、例えば1msC/Aコードを継続的に取得することができる。ブロック604では、デジタルベースバンドプロセッサ304は、C/Aコードの境界に基づいてナビゲーションビットの第1の境界を決定する。
【0048】
ブロック606では、C/Aコードは、ナビゲーションビットの第1の境界を決定する前にC/Aコード記憶ユニット306に格納されることができる。ブロック608では、ナビゲーションビットの第1の境界を決定した後、デジタルベースバンドプロセッサ304は、この第1の境界に基づいて、ナビゲーションビットの境界を決定する。ブロック610では、デジタルベースバンドプロセッサ304は、第1の境界に続く一連のナビゲーションビット(現在のナビゲーションビット)を復元するために、上記決定されたナビゲーションビットの境界に基づいて、第1の境界の後に取得されるC/Aコードを復調する。
【0049】
また、第1の境界を決定した後、相補的復調ユニット308は、ブロック612において、第1の境界の前の一連のナビゲーションビット(前のナビゲーションビット)を復元するため、C/Aコード記憶ユニット306に格納されたC/Aコードを復調する。
【0050】
前のナビゲーションビットのそれぞれについて、相補的復調ユニット308は、次式(1)に従って、C/Aコード記憶ユニット306に格納されたC/Aコードにおける一連のC/Aコードの開始位置StartNavBit(i)を計算することができる。この一連のC/Aコートは、ナビゲーションビットNを示すことができる。
【0051】
【数4】

【0052】
Nは、C/Aコード記憶ユニット306に格納されたC/Aコードの数を表す。Mは、一つのナビゲーションビットを変調するためのC/Aコードの所定数を表す。iは、前のナビゲーションビットにおけるナビゲーションビットNの通し番号を表す。
【0053】
相補的復調ユニット308は、更に、次式(2)に従って、C/Aコード記憶ユニット306に格納されたC/Aコードにおける一連のC/Aコードの終了位置EndNavBit(i)を計算することができる。
【0054】
【数5】

【0055】
従って、相補的復調ユニット308は、C/Aコード記憶ユニット306に格納されたC/Aコードにおける開始位置StartNavBit(i)と終了位置EndNavBit(i)との間の一連のC/Aコードの積分値により、ナビゲーションビットNの値を決定することができる。
【0056】
一実施形態において、ブロック610及び612におけるステップは、同期して実施されることができる。或いは、ブロック610及び612におけるステップは、非同期的に実施されることもできる。
【0057】
ブロック614において、それぞれ相補的復調ユニット308とデジタルベースバンドプロセッサ304から出力される前のナビゲーションビットと現在のナビゲーションビットは、連続的に連結されてナビゲーションビットフローを形成することができる。このナビゲーションビットフローは、対応衛星のナビゲーションメッセージを示し、更なる動作のために出力されることができる。
【0058】
図7は、本発明の一実施形態によるGPS受信器、例えば図5のGPS受信器500によって実行される動作のフローチャート700を示す。図6と同じ符号が付された要素は同様の機能を有する。図7は、図3、図5、図6と組合せて説明される。
【0059】
ブロック702では、GPS受信器500が動作を開始すると、このGPS受信器500は、アンテナ502を介して衛星から衛星信号を受信することができる。ブロック704では、GPS受信器500は、プリ増幅器504を介して上記衛星信号を増幅する。ブロック706では、GPS受信器500は、RF/IF変換器506を介して、上記衛星信号の周波数を無線周波数から中間周波数に変換する。ブロック708では、GPS受信器500は、上記衛星信号を所定のサンプリング周波数でデジタル化して、信号処理システム302へのデジタル衛星信号を生成する。
【0060】
ブロック710では、信号処理システム302は、上記デジタル衛星信号の可用性を判定する。続いて、信号処理システム302は、図6に示されるフローチャート600に従って、利用可能なデジタル衛星信号のそれぞれからナビゲーションビットを復調して、対応するナビゲーションビットフローを形成することができる。ブロック711は、ブロック602−614を含むことができる。ブロック712では、ナビゲーションプロセッサ10は、信号処理システム302から出力されるナビゲーションビットフローにおいて示されるナビゲーションメッセージにより位置を計算する。
【0061】
従って、本発明による実施形態は、衛星信号からナビゲーションビットを復調するための信号処理システム、例えば信号処理システム302を提供する。デジタル衛星信号が信号処理システム302に送られると、デジタルベースバンドプロセッサ304は、上記デジタル衛星信号から、C/Aコード、例えば1msC/Aコードを取得して、C/Aコードの境界を決定することができる。このC/Aコードの境界に基づいて、デジタルベースバンドプロセッサ304は、ナビゲーションビットの第1の境界を決定することができる。また、ナビゲーションビットの第1の境界を決定する前に、上記取得されたC/Aコードは、C/Aコード記憶ユニット306に連続的に格納されることができる。
【0062】
ナビゲーションビットの第1の境界を決定した後、デジタルベースバンドプロセッサ304は、第1の境界に続く一連のナビゲーションビット(現在のナビゲーションビット)を復元するために、第1の境界の後に取得されたC/Aコードを復調することができる。同時的に、相補的復調ユニット308は、第1の境界の前の一連のナビゲーションビット(前のナビゲーションビット)を復元するために、C/Aコード記憶ユニット306に格納されたC/Aコードを復元することができる。続いて、前のナビゲーションビットと現在のナビゲーションビットは、より迅速に現在の位置を決定するために、連続的に連結されることができる。
【0063】
上述の説明及び図面は、本発明の実施形態を表すが、添付の請求項に規定されるような本発明の原理の精神および範囲を逸脱することなく、種々の付加、修正、代替がなされ得ることが理解されるであろう。当業者であれば、本発明が、本発明の実施において使用される、形式、構造、配置、比率、材料、要素、構成要素、及びその他の多くの修正と共に使用され得ることを理解するであろう。従って、ここに開示された実施形態は、あらゆる点で例示的なものであって制限的なものではなく、本発明の範囲は、添付の請求項と、その法定の均等物によって示され、上述の実施形態に制限されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
302 信号処理システム
304 デジタルベースバンドプロセッサ
306 C/Aコード記憶ユニット
308 相補的復調ユニット
310 フロー形成ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星信号から複数のナビゲーションビットを復調するための信号処理システムであって、
前記衛星信号から取得された第1の複数の粗捕捉(C/A)コードにより、前記ナビゲーションビットにおける二つのナビゲーションビット間の境界を決定し、前記第1の複数のC/Aコードを格納し、前記境界を決定した後に取得される第2の複数のC/Aコードを復調して第1の一連のナビゲーションビットを復元するデジタルベースバンドプロセッサと、
前記デジタルベースバンドプロセッサに接続され、前記第1の複数のC/Aコードを復調して第2の一連のナビゲーションビットを復元するための相補的復調ユニットと
を備えた信号処理システム。
【請求項2】
前記第1の複数のC/Aコードを格納するためのC/Aコード記憶ユニットを更に備えた請求項1記載の信号処理システム。
【請求項3】
前記第2の一連のナビゲーションビットと前記第1の一連のナビゲーションビットとを連続的に連結してナビゲーションビットフローを形成するためのフロー形成ユニットを更に備えた請求項1記載の信号処理システム。
【請求項4】
前記相補的復調ユニットは、
前記第1の複数のC/Aコードにおける一連のC/Aコードであって、前記第2の一連のナビゲーションビットにおける対応ナビゲーションビットを変調するために使用される一連のC/Aコードの開始位置を計算し、
前記第1の複数のC/Aコードにおける前記一連のC/Aコードの終了位置を計算し、
前記第1の複数のC/Aコードにおける前記開始位置と前記終了位置との間の前記一連のC/Aコードの積分値により、前記対応ナビゲーションビットの値を決定するものである請求項1記載の信号処理システム。
【請求項5】
前記相補的復調ユニットは、次式(1)に従って前記開始位置を計算するものである請求項4記載の信号処理システム。
【数1】

ここで、StartNavBit(i)は、前記開始位置を表し、Nは、前記第1の複数のC/Aコードの数を表し、Mは、一つのナビゲーションビットを変調するためのC/Aコードの所定数を表し、iは、前記第2の一連のナビゲーションビットにおける前記対応ナビゲーションビットの通し番号を表す。
【請求項6】
前記相補的復調ユニットは、次式(2)に従って前記終了位置を計算するものである請求項4記載の信号処理システム。
【数2】

ここで、EndNavBit(i)は、前記終了位置を表し、Nは、前記第1の複数のC/Aコードの数を表し、Mは、一つのナビゲーションビットを変調するためのC/Aコードの所定数を表し、iは、前記第2の一連のナビゲーションビットにおける前記対応ナビゲーションビットの通し番号を表す。
【請求項7】
衛星信号から複数のナビゲーションビットを復調するための方法であって、
前記衛星信号から取得される第1の複数の粗捕捉(C/A)コードにより、前記ナビゲーションビットにおける二つのナビゲーションビット間の境界を決定するステップと、
前記第1の複数のC/Aコードを格納するステップと、
前記境界を決定した後に取得される第2の複数のC/Aコードを復調して第1の一連のナビゲーションビットを復元するステップと、
前記第1の複数のC/Aコードを復調して第2の一連のナビゲーションビットを復元するステップと
を含む方法。
【請求項8】
前記第1の複数のC/AコードをC/Aコード記憶ユニットに格納するステップを更に含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第2のナビゲーションビットと前記第1のナビゲーションビットとを連続的に連結してナビゲーションビットフローを形成するステップを更に含む請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記第1の複数のC/Aコードにおける一連のC/Aコードであって、前記第2の一連のナビゲーションビットにおける対応ナビゲーションビットを変調するために使用される一連のC/Aコードの開始位置を計算するステップと、
前記第1の複数のC/Aコードにおける前記一連のC/Aコードの終了位置を計算するステップと、
前記第1の複数のC/Aコードにおける前記開始位置と前記終了位置との間の前記一連のC/Aコードの積分値により、前記対応ナビゲーションビットの値を決定するステップと
を含む請求項7記載の方法。
【請求項11】
次式(1)に従って前記開始位置を計算するステップを更に含む請求項10記載の方法。
【数3】

ここで、StartNavBit(i)は、前記開始位置を表し、Nは、前記第1の複数のC/Aコードの数を表し、Mは、一つのナビゲーションビットを変調するためのC/Aコードの所定数を表し、iは、前記第2の一連のナビゲーションビットにおける前記対応ナビゲーションビットの通し番号を表す。
【請求項12】
次式(2)に従って前記終了位置を計算するステップを更に含む請求項10記載の方法。
【数4】

ここで、EndNavBit(i)は、前記終了位置を表し、Nは、前記第1の複数のC/Aコードの数を表し、Mは、一つのナビゲーションビットを変調するためのC/Aコードの所定数を表し、iは、前記第2の一連のナビゲーションビットにおける前記対応ナビゲーションビットの通し番号を表す。
【請求項13】
複数の衛星信号のそれぞれから複数のナビゲーションビットを復調するための信号処理システムを備え、
前記信号処理システムは、
前記衛星信号から取得される第1の複数の粗捕捉(C/A)コードにより前記ナビゲーションビットにおける二つのナビゲーションビット間の境界を決定し、前記第1の複数のC/Aコードを記憶ユニットに格納し、前記境界を決定した後に取得される第2の複数のC/Aコードを復調して第1の一連のナビゲーションビットを復元するためのデジタルベースバンドプロセッサと、
前記デジタルベースバンドプロセッサに接続され、前記第1の複数のC/Aコードを復調して第2の一連のナビゲーションビットを復元するための相補的復調ユニットと、
前記第2の一連のナビゲーションビットと前記第1の一連のナビゲーションビットとを連続的に連結してナビゲーションビットフローを形成するためのフロー形成ユニットと、
前記信号処理システムに接続され、前記衛星信号の前記ナビゲーションビットフローにより現在位置を計算するためのナビゲーションプロセッサと
を備えたGPS受信器。
【請求項14】
前記第1の複数のC/Aコードを格納するためのC/Aコード記憶ユニットを更に備えた請求項13記載のGPS受信器。
【請求項15】
前記相補的復調ユニットは、
前記第1の複数のC/Aコードにおける一連のC/Aコードであって、前記第2の一連のナビゲーションビットにおける対応ナビゲーションビットを変調するために使用される一連のC/Aコードの開始位置を計算し、
前記第1の複数のC/Aコードにおける前記一連のC/Aコードの終了位置を計算し、
前記第1の複数のC/Aコードにおける前記開始位置と前記終了位置との間の前記一連のC/Aコードの積分値により前記対応ナビゲーションビットの値を決定するものである請求項13記載のGPS受信器。
【請求項16】
前記相補的復調ユニットは、次式(1)に従って前記開始位置を計算するものである請求項15記載のGPS受信器。
【数5】

ここで、StartNavBit(i)は、前記開始位置を表し、Nは、前記第1の複数のC/Aコードの数を表し、Mは、一つのナビゲーションビットを変調するためのC/Aコードの所定数を表し、iは、前記第2の一連のナビゲーションビットにおける前記対応ナビゲーションビットの通し番号を表す。
【請求項17】
前記相補的復調ユニットは、次式(2)に従って前記終了位置を計算するものである請求項15記載のGPS受信器。
【数6】

ここで、EndNavBit(i)は、前記終了位置を表し、Nは、前記第1の複数のC/Aコードの数を表し、Mは、一つのナビゲーションビットを変調するためのC/Aコードの所定数を表し、iは、前記第2の一連のナビゲーションビットにおける前記対応ナビゲーションビットの通し番号を表す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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