衛星無線ナビゲーション受信機
【課題】衛星無線ナビゲーションシステムの受信信号におけるI/Qのミスマッチを除去すること
【解決手段】送信された無線ナビゲーション信号を受信する衛星無線ナビゲーション受信機において、衛星無線ナビゲーションシステムの受信したナビゲーション信号におけるI/Qのミスマッチを除去する方法は、前記受信したナビゲーション信号をI信号成分とQ信号成分とに分解するステップと、不要信号を除去する分離段に前記I信号成分およびQ信号成分を入力として提供するステップとを備え、前記分離段は、第1および第2適応形フィルタを備え、これらフィルタの係数は、前記分離段の出力によって更新され、前記分離段の出力は、I/Qのミスマッチが補正された信号を示す。この受信機はゼロIF受信機でもよいし、低IF受信機でもよく、時間領域信号または周波数領域信号で作動できる。
【解決手段】送信された無線ナビゲーション信号を受信する衛星無線ナビゲーション受信機において、衛星無線ナビゲーションシステムの受信したナビゲーション信号におけるI/Qのミスマッチを除去する方法は、前記受信したナビゲーション信号をI信号成分とQ信号成分とに分解するステップと、不要信号を除去する分離段に前記I信号成分およびQ信号成分を入力として提供するステップとを備え、前記分離段は、第1および第2適応形フィルタを備え、これらフィルタの係数は、前記分離段の出力によって更新され、前記分離段の出力は、I/Qのミスマッチが補正された信号を示す。この受信機はゼロIF受信機でもよいし、低IF受信機でもよく、時間領域信号または周波数領域信号で作動できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS、GLONASSおよびガリレオを含むGNSS(全地球的航法衛星システム)として一般に知られている衛星無線ナビゲーションシステムのための受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
全地球測位システム(GPS)は、自らの位置およびローカル時間を連続的に一斉送信する、低地球軌道にある24個の衛星を含む。地上(または飛行機搭載)受信機は、視野内に4つの衛星がある限り、衛星の距離測定値により、自らの絶対位置を決定できる。
【0003】
ガリレオとは、最先端の全地球的ナビゲーション衛星システム(GNSS)のための欧州のイニシアティブであり、非常に正確で保証された全地球測位サービスを提供する。欧州白書「2010年のための欧州運輸政策:決断のとき」によれば、GNSSは重要な技術として認識されている。ガリレオは、民間GPSおよびその補強技術と相互に運用可能であり、かつコンパーチブルである、時間、測地学および信号構造規格を使って設計し、開発しなければならない。短期から中期の将来において、衛星ナビゲーション技術に対する市場は大きく成長すると予想される。
【0004】
ポータブルで、民生用のGNSS受信機は、コンパクトであり、安価であり、低電力、例えばバッテリー寿命が長いという解決案を求めている。GNSS能力を民生製品に普及できるようにするには、集積された受信機でのオフチップコンポーネントの数を最小にしなければならない。受信機全体を集積化すると、個々の受信機の部分ごとのバリエーションを最小にできる。何百個ものコンポーネントを精密にレイアウトする必要はないので、統合された受信機は製品ごとに複製がより容易となる。更に、受信機全体の機能はチップレベルで検証されているので、製造し、所望する歩留まりを得ることがより容易である。これら検討事項により、低IFまたはゼロIF(ダイレクトコンバージョン)アプローチを利用する新規な受信機アーキテクチャを研究し、展開することになった(IF:中間周波数)。しかしながら、オフチップコンポーネントを高レベルに統合したり、省略したりすることができるが、これらアーキテクチャは、IQの位相および利得が損なわれるという問題があり、その結果、得られるイメージ除去が限られてしまう。このことは、市販用製品が広範に普及し、経済的に使用されることを阻害している。
【0005】
以前のGNSSシステムのすべてと比較すると、ガリレオが有する大幅に異なる変調方式を用いることによる、より挑戦的なことを除けば、依然として同じ問題が存在する。このことは、Guenter W. Hein等の論文「ガリレオの周波数および信号設計のステータス(2002年9月25日)」、http://europa.eu.int/comm/dgs/energy_transport/galileo/documents/technical_en.htm、並びに、作業白書「GALILEO信号:RF特性(ICAO NSP/WGW:WP/36)、http://www.galileoju.com.に記載されている。ガリレオは3つの信号バンドを含む。すなわち、それぞれ中心周波数1191.795MHz,1278.750MHzおよび1575.420MHzのE5,E6およびL1バンドである。E5バンドは2つの信号E5aおよびE5bを有する。ガリレオ衛星は、E5aバンド(1176.450MHz)およびE5bバンド(1207.14MHz)の信号を、中心周波数1191.795MHzのコンポジット信号として送信する。E5の変調はオルタネートバイナリオフセットキャリア(AltBOC)となる。この信号の発生については、上記2つの参考文献に記載されている。「ガリレオの周波数および信号設計のステータス」の付属書Aを参照すると、標準バイナリオフセットキャリア(BOC)変調は、矩形サブキャリアを使用し、このサブキャリアは時間領域の信号s(t)を変調するために周波数fsの正弦または余弦、例えば符号(sin(2πfst))とすることができる。このことは、信号の周波数を上側波帯および対応する下側波帯にシフトする。BOCタイプの信号は、通常、BOC(fs,fchip)のフォームで表示される。ここで、fsは矩形サブキャリアの周波数であり、fchipは拡散符号チッピングレートである。周波数は1.023MHzの倍数で示される。例えばBOC(10,5)信号は、実際には10×1.033MHz=10.330MHzのサブキャリア周波数および5×1.023MHz=5.115MHzの拡散符号チッピングレートを有する。一方、AltBOCは、符号(ej(2πfst))で与えられる複素指数である複素矩形サブキャリアを使用する。オイラーの公式を使用すると、この式は符号[cos(2πfst)+j sin(2πfst)]と記載できる。このように信号スペクトルは分割されないが、より高い周波数にシフトされるだけである。また、より低い周波数にシフトさせることも可能である。AltBOCの目的は、ワイドバンドのBOC状の信号として信号を受信できるよう、複素指数又はサブキャリアによりそれぞれ変調されたE5aおよびE5bバンドをコヒーレントに発生することである。図1には、AltBOC変調された信号のコンステレーション(スペース内配置)図が示されている。
【0006】
L1信号は、L1Pチャンネル、L1FデータチャンネルおよびL1Fパイロットチャンネルの3つの成分の多重化から成り、一方、E6信号は、E6pとE6cの多重化から成る。E6およびL1バンドのこれら信号は、複合信号を発生するためのインタープレックスまたは変更トライコード6相とも称されるコヒーレント適応サブキャリア変調(CASM)を使用している。この方式は「GPSのためのトライコード6相変調」(ナビゲーション協会(ION)−GPS年次会合の議事録の385〜397ページ、1997年)、および「3GPPに対するガリレオ規格化文書とも称される、宇宙におけるガリレオ信号のICD(SIS ICD)のL1バンド部分」(http://www.galileoju.com.)に定められている。この変調方式を用いると、2つのチャンネルを組み合わせた結果生じるQPSK信号は第3のチャンネルにより位相変調される。3つのチャンネルの間の相対電力を設定するのに、変調指数m=0.6155が使用される。図2には、CASM/変更6相変調(modified Hexaphase modulated)された信号に対するコンステレーション図が示されている。
【0007】
E5は、ガリレオ衛星が送信する最も高度で、将来性のある信号のうちの1つである。この信号をトラッキングできるガリレオ受信機は、測定精度、屋内性能およびマルチパス抑制の点で無比の性能からの利点を享受できる。しかしながら、AltBOC変調を処理するのに必要な信号処理技術は、従来のBPSKまたは従来のBOC変調に対するよりも、より挑戦的なものである。このことはバンド幅が極端に広いこと、および拡散符号における成分が複素相互作用することから生じたものである。
【0008】
上記のように、ガリレオ受信機には、IQ位相および利得が損なわれるという問題がある。直交変調および復調システムは、データをベースバンド信号の同相(I)および直交(Q)成分に変調し、次に変調されたデータを放送するために、ベースバンド信号を無線周波数(RF)キャリアのI成分およびQ成分と混合する。Q信号は、I信号と90°位相がずれている。受信機では逆のプロセスを実行され、まず放送信号を受信し、次に変調されたベースバンド信号のIおよびQ成分を回復するようダウンコンバートし、次にこれらIおよびQ成分からデータを回収する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
IQ信号処理を利用する受信機のアーキテクチャは、IチャンネルとQチャンネルのミスマッチ(不整合)の影響を受けやすい。このことは、受信機内の幾つかの段で生じ得る。すなわち受信するRF信号をIパスとQパスとに等しく分解(分離)するのに使用されるRFスプリッターは、位相差と利得差を生じさせ得る。これら2つのRFパスの長さの差が、位相のアンバランスを生じさせ得る。IチャンネルおよびQチャンネルミキサーを駆動するIおよびQ局部発振器(LO)信号を発生するのに使用される直交90°位相スプリッターは、正確に90°でないかもしれない。更に、Iチャンネルミキサーの出力ポートとQチャンネルミキサーの出力ポートの間で、変換損失差が生じ得る。これらの外に、IパスおよびQパスにおけるフィルタおよびアナログ−デジタル変換器ADCは、完全にはマッチングしない。受信機の性能におけるこれら障害の作用は悪影響を及ぼし得る。このIQのアンバランスは、2つのパラメータ、すなわち振幅のミスマッチαεおよびIブランチとQブランチとの間の位相の直交性のミスマッチφεによって特徴付けることができる。次のように、振幅のミスマッチαεから、デシベルを単位とする振幅のアンバランスβが得られる。
【0010】
【数1】
【0011】
図3の直交復調受信機モデルは、損なわれたLO信号としてのIQのアンバランスを含む。入力信号s(t)は、直交チャンネルにおいて局部発振器の信号fLOと混合される。この混合された信号は、各チャンネルにおいて、ゲインされ、ローパスフィルタリング(LPF)を受ける。
【0012】
図4は、(a)21−PS変調フォーマットおよび(b)256−QAM変調フォーマットを使用するシステムのロービットエラーレート(BER)性能に対する、IQ位相および利得のミスマッチを変化させたときの効果を示すものである。これから理解できるように、IQのアンバランスはシステムのBER性能を大幅に劣化させる。このような性能の劣化は望ましいものではなく、補償しなければならない。正しいシンボル検出を保証するため、シンボルの決定を行う前にRF障害を補償しなければならない。
【0013】
論文「デジタル受信機におけるアナログフロントエンドのI/Qのミスマッチの適応補償」(Cetin. E., Kale I., Morling R.C.S.、回路およびシステムに関するIEEE国際シンポジウム(ISCAS2001年)、第4巻、370〜373ページ、2001年5月)、「適応自動キャリブレートイメージ除去受信機」(Cetin. E., Kale I., Morling R.C.S.、通信に関するIEEE国際会議(ICC2004年)、第5巻、2731〜2735ページ、2004年6月)、「適応形I/Qのミスマッチ補正器の構造、コンバージェンスおよび性能に関して」(Cetin. E., Kale I., Morling R.C.S.、IEEE自動車技術会議(VTC2002年秋)、第4巻2288〜2292ページ、2002年9月)では、シングルエンドのゼロIFおよび低IFI/Qチャンネル無線システムが議論されている。これらの論文は、パイロットトーンを必要とせず、その変わりにブラインド適用アルゴリズムを使用するブラインド(教師なし)技術を提案している。ミスマッチエラーは、ゼロIFアプローチの場合には、IチャンネルとQチャンネルの間、または低IFアプローチの場合には、所望するチャンネルと隣接/干渉チャンネルとの間の相互相関性を発生すると認められている。このような相互相関性を除くため、IチャンネルとQチャンネルとの間に適応形フィルタが相互結合される。フィルタ係数は、選択される適応アルゴリズムにより更新される。これら論文の主題である信号は、これまで説明したようなガリレオの極めて複雑な広バンド方式と比較して、処理が比較的簡単である。
【0014】
本発明の目的は、IチャンネルとQチャンネルの間のミスマッチから生じる衛星無線ナビゲーション受信機におけるRF障害を低減するための手段を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、製造および作動が経済的であり、すなわちより簡単で安価で低電力であり、高度に統合できる衛星無線ナビゲーション受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様によれば、本発明は、
衛星無線ナビゲーションシステムの受信したナビゲーション信号におけるI/Qのミスマッチを除去する方法において、
前記受信したナビゲーション信号をI信号成分とQ信号成分とに分解するステップと、
不要信号から前記I信号成分およびQ信号成分を分離(demix)する分離段に、前記I信号成分および前記Q信号成分を入力として提供するステップとを備え、分離段は、第1および第2適応フィルタを備え、これらフィルタの係数は、分離段の出力によって更新され、分離段の出力は、I/Qのミスマッチ(不一致)が補正された信号を示す、I/Qのミスマッチを除去する方法を提供するものである。
【0017】
第2の態様によれば、本発明は、
受信したナビゲーション信号におけるI/Qのミスマッチを除去するようになっている、衛星無線ナビゲーション受信機において、
受信したナビゲーション信号をI信号成分およびQ信号成分に分解するための分解手段と、不要信号から前記信号成分を分離するために、前記信号成分を入力信号として受信するようになっている分離段とを備え、分離段は第1適応フィルタおよび第2適応フィルタを備え、更に分離段の出力により、前記適応フィルタの係数を更新するための手段を備え、分離段の出力は、I/Qのミスマッチが補正された信号を示す、衛星無線ナビゲーション受信機を提供するものである。
【0018】
本発明によれば、前記分離段は、I信号成分およびQ信号成分内の不要信号を逆混合、すなわち分離する。これら不要信号は、ゼロIF受信機の場合、複素共役成分であるか、または低IF受信機の場合、ミラーイメージ周波数にある干渉信号である。いずれのケースにおいても、分離段の出力はIQミスマッチが補正された受信信号を示す。
【0019】
本発明は、全地球的衛星ナビゲーションシステムにおけるアナログフロントエンド障害を取り扱うために、教師なしアルゴリズムを使用することを提案するものである。IQエラーが存在する場合、ゼロIFアプローチのケースにおけるIチャンネルとQチャンネル、または低IFアプローチのケースにおける所望するチャンネルと隣接/妨害チャンネルとが相関化される。本発明では、IQ障害がない場合、IチャンネルとQチャンネル、または所望するチャンネルと隣接/妨害チャンネルとは相関化されないと仮定している。
【0020】
好ましいことに、本発明はガリレオ変調方式、特にE5信号のAltBOC方式およびL1およびE6信号のCASM/変形された6相方式に適用される。本発明は、上側波帯および下側波帯で異なる信号を有し、極めて広くなり得る全バンド幅を極めて高いサンプリングレートおよびクロック周波数で、同じRFチェーンにより処理しなければならないこれら複素変調スキームを処理するものである。
【0021】
本発明によれば、時間領域または周波数領域、もしくは両者の組み合わせにおいて、教師なしのデジタル信号処理に基づく補償スキームを展開し、これら望ましくない障害に対応することができる。このような技術を使用することにより、追加(増加した)デジタル信号処理を負担すれば、アナログ回路の複雑さおよびそれに関連するコストを低減することが可能となり、経済的な全システムの解決案を提供できる。これら教師なし信号処理技術は、個々のオフチップコンポーネントの必要性をかなり高い程度解消し、その結果、性能が高められた、より簡単で、より低コストの低電力受信機を提供できる。次にこれらのことにより、RFフロントエンドはより簡単になり、ADCアナログ回路条件は緩和され、その結果、低電力の単一チップの全地球的衛星ナビゲーション受信機に向う大きな進歩が得られる。
【0022】
アナログフロントエンドでの障害は、ゼロIFおよび低IFトランシーバの性能を大幅に制限する。性能の劣化を低減するため、2つのデジタルフィルタに基づく、有効で実際に実現できる教師なしの低電力デジタル補償構造が提案される。これまでにデジタル補償構造およびデジタル補償フィルタ係数を決定するための適用係数更新アルゴリズムが開発されている。
【0023】
本発明は、一般的にGNSS受信機に適用できるが、例えばガリレオ,GPS,GSM,CDMA、将来における規格となるように設定される、あるタイプのハイブリッドハンドヘルドデバイス等の無線ナビゲーション設備を有する携帯電話にも適用できる。処理はデジタル領域で行われるので、GPS,GSM,UMTSおよびWiFiアプリケーションを含むが、これだけに限定されない集積化されたハイブリッドシステム内で他の信号を取り扱うために、デジタル信号処理の設定可能性を活用できる。
【0024】
以下、添付図面を参照し、本発明の好ましい実施例について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
ガリレオシステムでは、提案される変調フォーマットはE5,E6およびL1信号に対して、それぞれAltBOCおよびCASM/修正された6相変調スキームである。CASM/修正された6相変調方式を使用するとき、L1信号を次のように記載できる。
【0026】
【数2】
【0027】
ここで、
CXY(t)は、Xキャリア周波数(「X」はE5a,E5b,E6またはL1を表す)のYチャンネル(「Y」は2チャンネル信号ではIまたはQを表し、または3チャンネル信号ではA,BまたはCを表す)での測距コードであり、
DXY(t)は、X周波数バンド内のYチャンネルでのデータ信号であり、
fXは、X周波数バンド内のキャリア周波数であり、
UXY(f)は、X周波数バンド内のYチャンネルでの矩形サブキャリアであり、
mは、CASM/修正された6相変調に関連する変調指数である。
【0028】
図2は、位相の数が6に等しい、すなわち6相であるコンステレーション図を示す。
【0029】
図5(a)および図5(b)には、それぞれ低IFトポロジーおよびゼロIFトポロジーを使用する、高度に集積化されたGNSS受信機のブロック図が示されている。双方の図におけるアーキテクチャは、概して図3に示されるアーキテクチャに対応しているが、IチャンネルおよびQチャンネル内にアナログ−デジタルコンバータ(ADC)が追加されている点が異なる。図5(a)の低IFの場合、混合局部発振信号は、fLO=fRF−fIFである。図5(b)のゼロIFの場合、混合局部発振信号はfLO=fRFである。各図は、図の左に、入力信号の形を略図で示し、図の底部に、受信チェーンの終わりで生じるような、RF障害を含む回復された信号の有り得る適当な形を示している。
【0030】
図5(a)および図5(b)から分かるように、RF障害の結果、(a)隣接チャンネルが所望のチャンネルを劣化させ、(b)所望のチャンネルの複素共役が所望のチャンネルを劣化させる。いずれのケースにおいても、受信機の性能は直交混合器(ミキサー)のリニアリティの性能によって常に制限される。これら技術のこのような欠点は、市販用および軍用での広範な使用を阻害している。
【0031】
低IFの場合、受け入れる信号s(t)は、fRFでの望む信号u(t)およびfIMGでの不要な干渉信号i(t)から成り、この場合、fIMG=fRF−2fIFである。従って、受信信号s(t)は次のように記載できる。
【0032】
【数3】
【0033】
ここで、u(t)およびi(t)は、それぞれ所望する信号および干渉信号の複素エンベロープであり、「R」はuおよびiの実数部分である。RF障害を含む場合、この結果生じるIF信号は次のように表示できる。
【0034】
【数4】
【0035】
ここで、g1=(1+0.5αε)、g2=(1−0.5αε)(式1参照)であり、(・)*は複素共役である。これから理解できるように、所望する信号u(t)は、アナログのミスマッチに起因するバンド内でリークした像(イメージ)i*(t)により劣化する。所望する信号からイメージチャンネルへのリークも存在する。図5(a)には、この周波数領域の表示が示されている。しかしながら、完全にバランスのとれたシステムでは、所望する信号および干渉信号は、対照的な反対側の周波数+fIFおよび−fIFにダウンコンバートされる。次に、信号IおよびQはデジタル領域にコンバートされる。この後で、別の混合段が、IFからベースバンドへの最終的なダウンコンバートを行う。このような変換段は、デジタル領域で行われるので、IチャンネルとQチャンネルとはマッチングし、理想的な混合が保証され、次のようなベースバンド信号が得られる。
【0036】
【数5】
【0037】
ここで、h1,h2は水平の括弧で示される値を有する。これらh1,h2は混合マトリックスHの要素と見なすことができる。
【0038】
理解できるように、最終的なベースバンド信号は所望の信号のスケーリングされたバージョンを含むだけでなく、干渉信号のスケーリングされたバージョンも含む。イメージ除去比(IRR)は、干渉信号電力に対する所望の信号電力の比として定められる。
【0039】
図5(b)に示されるようなゼロIF受信機の場合、ベースバンド信号rBBは次のように示される。
【0040】
【数6】
【0041】
ここで、g1=(1+0.5αε)、g2=(1−0.5αε)(式1参照)であり、(・)*は複素共役であり、h1,h2は、混合マトリックスHの要素と見なすことができ、理解できるようにIチャンネルとQチャンネルとの間にはクロストークが存在する。
【0042】
図6(a)および図6(b)は、RF障害を解消するための本発明の好ましい実施形態にかかわるガリレオ受信機を略図で示し、図6(a)は、時間領域のコンフィギュレーションであり、図6(b)は周波数領域のコンフィギュレーションである。いずれの図においても、Iチャンネル60およびQチャンネル61に入力信号s(t)が送られる。各チャンネルは、要求に応じて、入力信号と局部発振信号fLOとを混合して、ゼロIF信号または低IF信号を発生するための混合器(ミキサー)62を備える。ダウンコンバートされた信号はローパスフィルタ63に加えられ、フィルタにかけられた信号はADC64でデジタル化される。時間領域の実施形態の場合、デジタル化された信号は分離段65に加えられ、その結果得られる信号は、RF障害が補正され、復調器66でナビゲーション信号を回復するように復調を受ける。周波数領域の実施形態の場合、受取る時間領域信号は、デジタル化され、次に分離段65に適用される前に、67で高速フーリエ変換を受ける。分離された信号は、この信号が復調器66に適用される前に、68で逆FFTを受ける。改変例では、分離された信号は、復調器66において周波数領域での処理が行われ、IFFT68を省略してもよい。更に、当該ポイント数が少ない場合には、時間/周波数変換のより簡単な手段でFFT67を置換してもよい。
【0043】
低IFの場合、分離段65は、u(t)およびi(t)がソースとなっている2×2のブラインド複素ソースセパレータのように働き、観察された信号からこれらを見積もる(推定する)ことを試みる。このアプローチを作動させるには、+fIFだけでなく、−fIF部分もベースバンドにダウンコンバートしなければならない。ゼロIFの場合、好ましい実施形態は、I信号およびQ信号に演算を行う2×2のブラインドソースセパレータとして働く。
【0044】
図7は、図6の分離段65をより詳細に示す。このステージは、入力r1,r2および出力c1,c2を有する適応形フィルタブロック70を備えている。係数更新ブロック72は、信号r,cを受信し、係数更新信号74をフィルタブロック70に提供する。図7に示され、図8および図9でより詳細に示されているような分離段は、図6の時間領域構造および周波数領域構造の双方に適用できる。
【0045】
使用する受信機のトポロジー、すなわち低IFまたはゼロIFによっては、信号r1,r2,c1およびc2をそれぞれ複素数または実数とすることができる。更にトポロジーの選択は、フィルタおよび適応係数更新ブロックにも影響する。これらは、低IFトポロジーおよびゼロIFトポロジーに対してそれぞれ複素数または実数のいずれかとすることができる。更にGPSデータは±1であるので、好ましい実施形態に起因するハードウェアの経費は最小となる。好ましい実施形態は、IPコアまたはソフトウェアコードとして既存の受信機の信号処理チェーンに簡単に統合できる。
【0046】
図8は、IQのミスマッチを解決するための相互結合されたフィルタを備えた分離ユニットの好ましい実施例を示す。図8は、補正された信号を発生するために、適応形フィルタシステムがr1およびr2の双方を使用する態様をより詳細に示す。ゼロIFの場合、r1およびr2はそれぞれI信号およびQ信号であり、一方、低IFの場合、r1およびr2はデジタル領域においてベースバンドにダウンコンバートされた、それぞれ所望する信号(+fIF)およびイメージ信号(−fIF)である。適応形システムは相互結合された適応形フィルタを含む。これらクロス結合された適応形フィルタに、受信された信号r1およびr2が送られる。適応形係数更新ブロックは、新たな非相関マトリックス又は分離(demixing)マトリックスWを決定する。これは、別の補正された信号を発生するのに使用されるとき、更にエラー信号の振幅を低減する。すなわち、分離マトリックスWは、混合マトリックスHを補償またはキャンセルするように機能する(式5参照)。次に、係数更新ブロックの出力は、適応形フィルタシステムに戻され、これは係数更新ブロックが提供した分離マトリックスを置換する。この新しい分離マトリックスは、逆フィルタリングを実行するのに使用され、これら推定値が減算され、推定された又は再構成された信号c1(k)およびc2(k)(ここで、kは離散的時間サンプルとしてtの代わりとなる)を発生する。このプロセスは、エラー信号の振幅が最小値または予め定めた閾値に達するまで続く。よって、エラー信号は分離マトリックスを調節するためのフィードバック信号として機能する。
【0047】
図8に示されるように、キャリアr1,r2のI成分およびQ成分は、分離ユニット80の入力へ適用される。分離ユニット80は、フィードフォワードループ84内に第1および第2適応形フィルタ82を備える。ループ84は、これら2つのチャンネルの間にクロス結合され、チャンネル内の総和点86に接続されているので、適応形フィルタにより変更された各入力信号は、他方の入力信号に加算される。チャンネルの出力c1(k),c2(k)は、分離ユニットの出力を表し、88におけるように、フィルタの係数を更新するのに使用される。
【0048】
エラー信号が除去されると、分離マトリックスWは、混合マトリックスHをキャンセルする。Cetin E.等による上記引用論文では、この問題に対するより強力な数学的処理方法が記載されている。フィードフォワードのケースでは、上記論文からソース推定値c1(k)およびc2(k)が、次のようになることが示される。
【0049】
【数7】
【0050】
フィルタが収束する場合、すなわちw1=h1かつw2=h2であるとき、ソース推定値は次のようになる。
【0051】
【数8】
【0052】
フィードバックのケースに対しては、次のようになる。
【0053】
【数9】
【0054】
フィルタが収束する場合、すなわちw1=h1かつw2=h2であるとき、ソース推定値は次のようになる。
【0055】
【数10】
【0056】
分離ユニットに対する別の実現例は、フィードバックループ内にフィルタを設けることである。この構造は、図9に示されており、この図では、図8の部品と同様な部品は同じ参照番号で示されている。フィードバックループ90内にフィルタ82が設けられている。
【0057】
フィルタ係数は、適応形アルゴリズムにより計算できる。このアルゴリズムは、簡単な標準的な最小二乗平均アルゴリズム(LMS)または再帰的最小二乗(RLS)アルゴリズムとすることができる。当然ながら、適応形アルゴリズムの選択は性能に影響する。しかしながら、提案されたアプローチは、専門アルゴリズムまたはフィルタ係数を更新するための特別に仕様を合わせたアルゴリズム/方式に対する条件とは独立している。
【0058】
システム性能全体を何らかの方法で妥協させないで、出力信号の極性だけを使用することにより係数更新が作動し、この結果、全体の複雑さを低下できることを証明した。更に、誘導される係数の符号を使用することによって作動させるので、適応形フィルタの作動も簡略化される。
【0059】
双極性(すなわち±1)であるナビゲーションデータを復調器66における分離段の出力から誘導するために、極めて簡単な、すなわち瑣末なADC作動だけでよく、この作動は最も簡単に極性検出器またはハードリミターを使用できる。
【0060】
少なくとも上記実施例における本発明の特徴事項は次のとおりである。
1−本方法は、パイロット/テストトーンを必要とすることなく、全地球的衛星ナビゲーションシステムの受信機におけるRF障害を解消できる。
2−フィードバックループ内にフィルタを設けることにより、分離構造用の別の実現例が可能となる。
3−材料コストが少なくて済む、性能が強化されたデバイスにより、電子メーカーがコスト的に効果的により安価な製品を設計し、市販できるようにする。
4−我々の新規なデジタル処理技術により補償され、補助される、緩和されたRFフロントエンド仕様による、集積化及び大型で電力消費量の大きいアナログ部品の排除により、非専用の低い生産コストのCMOS技術を使って、よりロバストで電力効率の高い製品を設計できる。
5−本方法は、ゼロIF受信機および低IF受信機の双方に適用できる。
6−本方法は、時間領域補正および周波数領域補正の双方に適用できる。
7−補正マトリックス推定のための方法は、データの極性だけを使用し、ハードウェア的に極めて効率的な解決案を提供できる。システム全体を妥協することなく、極性情報によりこの係数更新ブロックが作動し、その結果、システム全体の複雑さを低減できることを実証した。
8−ブラインドであることにより、トレーニングまたはパイロット/テストトーンが不要である。
9−このアプローチは、AltBOCおよび6相/CASMで極めて良好に働く。
10−少しのハードウェア/ソフトウェアの経費で、受信機の標準的な信号処理チェーンに容易に統合できる。本発明はインストールされたインフラストラクチャを変えることなく、既存のシステムに容易に適用できる。
11−マルチパスのフェージング環境だけでなく、低SNRの場合で作動することにより、微弱信号GPSアプリケーションに適す。
12−双方のチャンネルが高品位で再生される。低IFバージョンでは、所望するチャンネルだけでなく、たまに隣接チャンネルとなるような妨害波も再生できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ガリレオシステムで使用されるAltBOC変調を略図で示す。
【図2】ガリレオシステムで使用される修正された6相変調を略図で示す。
【図3】従来の直交復調器の略図である。
【図4】(a)32PSK変調された信号と、(b)256QAM変調された信号との、IQアンバランスの効果を示すグラフである。
【図5(a)】ガリレオシステムに対し低IFを使用する受信機のブロック略図を示す。
【図5(b)】ガリレオシステムに対しゼロIFを使用する受信機のブロック略図を示す。
【図6(a)】本発明に係る、ガリレオシステムに対する受信機の時間領域における好ましい実施形態のブロック図である。
【図6(b)】本発明に係る、ガリレオシステムに対する受信機の周波数領域における好ましい実施形態のブロック図である。
【図7】本発明に係るIQミスマッチを除去するための好ましい構成をより詳細に示す。
【図8】IチャンネルとQチャンネルの間のIQミスマッチを除去するための、本発明に係る好ましい分離ユニットの回路略図である。
【図9】IチャンネルとQチャンネルの間のIQミスマッチを除去するための、本発明にかかわる別の分離ユニットの回路略図である。
【符号の説明】
【0062】
60 Iチャンネル
61 Qチャンネル
62 混合器(ミキサー)
63 ローパスフィルタ
64 アナログ−デジタルコンバータ(ADC)
65 分離段
66 復調器
67 高速フーリエ変換
68 逆FFT
70 適応フィルタブロック
72 係数更新ブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS、GLONASSおよびガリレオを含むGNSS(全地球的航法衛星システム)として一般に知られている衛星無線ナビゲーションシステムのための受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
全地球測位システム(GPS)は、自らの位置およびローカル時間を連続的に一斉送信する、低地球軌道にある24個の衛星を含む。地上(または飛行機搭載)受信機は、視野内に4つの衛星がある限り、衛星の距離測定値により、自らの絶対位置を決定できる。
【0003】
ガリレオとは、最先端の全地球的ナビゲーション衛星システム(GNSS)のための欧州のイニシアティブであり、非常に正確で保証された全地球測位サービスを提供する。欧州白書「2010年のための欧州運輸政策:決断のとき」によれば、GNSSは重要な技術として認識されている。ガリレオは、民間GPSおよびその補強技術と相互に運用可能であり、かつコンパーチブルである、時間、測地学および信号構造規格を使って設計し、開発しなければならない。短期から中期の将来において、衛星ナビゲーション技術に対する市場は大きく成長すると予想される。
【0004】
ポータブルで、民生用のGNSS受信機は、コンパクトであり、安価であり、低電力、例えばバッテリー寿命が長いという解決案を求めている。GNSS能力を民生製品に普及できるようにするには、集積された受信機でのオフチップコンポーネントの数を最小にしなければならない。受信機全体を集積化すると、個々の受信機の部分ごとのバリエーションを最小にできる。何百個ものコンポーネントを精密にレイアウトする必要はないので、統合された受信機は製品ごとに複製がより容易となる。更に、受信機全体の機能はチップレベルで検証されているので、製造し、所望する歩留まりを得ることがより容易である。これら検討事項により、低IFまたはゼロIF(ダイレクトコンバージョン)アプローチを利用する新規な受信機アーキテクチャを研究し、展開することになった(IF:中間周波数)。しかしながら、オフチップコンポーネントを高レベルに統合したり、省略したりすることができるが、これらアーキテクチャは、IQの位相および利得が損なわれるという問題があり、その結果、得られるイメージ除去が限られてしまう。このことは、市販用製品が広範に普及し、経済的に使用されることを阻害している。
【0005】
以前のGNSSシステムのすべてと比較すると、ガリレオが有する大幅に異なる変調方式を用いることによる、より挑戦的なことを除けば、依然として同じ問題が存在する。このことは、Guenter W. Hein等の論文「ガリレオの周波数および信号設計のステータス(2002年9月25日)」、http://europa.eu.int/comm/dgs/energy_transport/galileo/documents/technical_en.htm、並びに、作業白書「GALILEO信号:RF特性(ICAO NSP/WGW:WP/36)、http://www.galileoju.com.に記載されている。ガリレオは3つの信号バンドを含む。すなわち、それぞれ中心周波数1191.795MHz,1278.750MHzおよび1575.420MHzのE5,E6およびL1バンドである。E5バンドは2つの信号E5aおよびE5bを有する。ガリレオ衛星は、E5aバンド(1176.450MHz)およびE5bバンド(1207.14MHz)の信号を、中心周波数1191.795MHzのコンポジット信号として送信する。E5の変調はオルタネートバイナリオフセットキャリア(AltBOC)となる。この信号の発生については、上記2つの参考文献に記載されている。「ガリレオの周波数および信号設計のステータス」の付属書Aを参照すると、標準バイナリオフセットキャリア(BOC)変調は、矩形サブキャリアを使用し、このサブキャリアは時間領域の信号s(t)を変調するために周波数fsの正弦または余弦、例えば符号(sin(2πfst))とすることができる。このことは、信号の周波数を上側波帯および対応する下側波帯にシフトする。BOCタイプの信号は、通常、BOC(fs,fchip)のフォームで表示される。ここで、fsは矩形サブキャリアの周波数であり、fchipは拡散符号チッピングレートである。周波数は1.023MHzの倍数で示される。例えばBOC(10,5)信号は、実際には10×1.033MHz=10.330MHzのサブキャリア周波数および5×1.023MHz=5.115MHzの拡散符号チッピングレートを有する。一方、AltBOCは、符号(ej(2πfst))で与えられる複素指数である複素矩形サブキャリアを使用する。オイラーの公式を使用すると、この式は符号[cos(2πfst)+j sin(2πfst)]と記載できる。このように信号スペクトルは分割されないが、より高い周波数にシフトされるだけである。また、より低い周波数にシフトさせることも可能である。AltBOCの目的は、ワイドバンドのBOC状の信号として信号を受信できるよう、複素指数又はサブキャリアによりそれぞれ変調されたE5aおよびE5bバンドをコヒーレントに発生することである。図1には、AltBOC変調された信号のコンステレーション(スペース内配置)図が示されている。
【0006】
L1信号は、L1Pチャンネル、L1FデータチャンネルおよびL1Fパイロットチャンネルの3つの成分の多重化から成り、一方、E6信号は、E6pとE6cの多重化から成る。E6およびL1バンドのこれら信号は、複合信号を発生するためのインタープレックスまたは変更トライコード6相とも称されるコヒーレント適応サブキャリア変調(CASM)を使用している。この方式は「GPSのためのトライコード6相変調」(ナビゲーション協会(ION)−GPS年次会合の議事録の385〜397ページ、1997年)、および「3GPPに対するガリレオ規格化文書とも称される、宇宙におけるガリレオ信号のICD(SIS ICD)のL1バンド部分」(http://www.galileoju.com.)に定められている。この変調方式を用いると、2つのチャンネルを組み合わせた結果生じるQPSK信号は第3のチャンネルにより位相変調される。3つのチャンネルの間の相対電力を設定するのに、変調指数m=0.6155が使用される。図2には、CASM/変更6相変調(modified Hexaphase modulated)された信号に対するコンステレーション図が示されている。
【0007】
E5は、ガリレオ衛星が送信する最も高度で、将来性のある信号のうちの1つである。この信号をトラッキングできるガリレオ受信機は、測定精度、屋内性能およびマルチパス抑制の点で無比の性能からの利点を享受できる。しかしながら、AltBOC変調を処理するのに必要な信号処理技術は、従来のBPSKまたは従来のBOC変調に対するよりも、より挑戦的なものである。このことはバンド幅が極端に広いこと、および拡散符号における成分が複素相互作用することから生じたものである。
【0008】
上記のように、ガリレオ受信機には、IQ位相および利得が損なわれるという問題がある。直交変調および復調システムは、データをベースバンド信号の同相(I)および直交(Q)成分に変調し、次に変調されたデータを放送するために、ベースバンド信号を無線周波数(RF)キャリアのI成分およびQ成分と混合する。Q信号は、I信号と90°位相がずれている。受信機では逆のプロセスを実行され、まず放送信号を受信し、次に変調されたベースバンド信号のIおよびQ成分を回復するようダウンコンバートし、次にこれらIおよびQ成分からデータを回収する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
IQ信号処理を利用する受信機のアーキテクチャは、IチャンネルとQチャンネルのミスマッチ(不整合)の影響を受けやすい。このことは、受信機内の幾つかの段で生じ得る。すなわち受信するRF信号をIパスとQパスとに等しく分解(分離)するのに使用されるRFスプリッターは、位相差と利得差を生じさせ得る。これら2つのRFパスの長さの差が、位相のアンバランスを生じさせ得る。IチャンネルおよびQチャンネルミキサーを駆動するIおよびQ局部発振器(LO)信号を発生するのに使用される直交90°位相スプリッターは、正確に90°でないかもしれない。更に、Iチャンネルミキサーの出力ポートとQチャンネルミキサーの出力ポートの間で、変換損失差が生じ得る。これらの外に、IパスおよびQパスにおけるフィルタおよびアナログ−デジタル変換器ADCは、完全にはマッチングしない。受信機の性能におけるこれら障害の作用は悪影響を及ぼし得る。このIQのアンバランスは、2つのパラメータ、すなわち振幅のミスマッチαεおよびIブランチとQブランチとの間の位相の直交性のミスマッチφεによって特徴付けることができる。次のように、振幅のミスマッチαεから、デシベルを単位とする振幅のアンバランスβが得られる。
【0010】
【数1】
【0011】
図3の直交復調受信機モデルは、損なわれたLO信号としてのIQのアンバランスを含む。入力信号s(t)は、直交チャンネルにおいて局部発振器の信号fLOと混合される。この混合された信号は、各チャンネルにおいて、ゲインされ、ローパスフィルタリング(LPF)を受ける。
【0012】
図4は、(a)21−PS変調フォーマットおよび(b)256−QAM変調フォーマットを使用するシステムのロービットエラーレート(BER)性能に対する、IQ位相および利得のミスマッチを変化させたときの効果を示すものである。これから理解できるように、IQのアンバランスはシステムのBER性能を大幅に劣化させる。このような性能の劣化は望ましいものではなく、補償しなければならない。正しいシンボル検出を保証するため、シンボルの決定を行う前にRF障害を補償しなければならない。
【0013】
論文「デジタル受信機におけるアナログフロントエンドのI/Qのミスマッチの適応補償」(Cetin. E., Kale I., Morling R.C.S.、回路およびシステムに関するIEEE国際シンポジウム(ISCAS2001年)、第4巻、370〜373ページ、2001年5月)、「適応自動キャリブレートイメージ除去受信機」(Cetin. E., Kale I., Morling R.C.S.、通信に関するIEEE国際会議(ICC2004年)、第5巻、2731〜2735ページ、2004年6月)、「適応形I/Qのミスマッチ補正器の構造、コンバージェンスおよび性能に関して」(Cetin. E., Kale I., Morling R.C.S.、IEEE自動車技術会議(VTC2002年秋)、第4巻2288〜2292ページ、2002年9月)では、シングルエンドのゼロIFおよび低IFI/Qチャンネル無線システムが議論されている。これらの論文は、パイロットトーンを必要とせず、その変わりにブラインド適用アルゴリズムを使用するブラインド(教師なし)技術を提案している。ミスマッチエラーは、ゼロIFアプローチの場合には、IチャンネルとQチャンネルの間、または低IFアプローチの場合には、所望するチャンネルと隣接/干渉チャンネルとの間の相互相関性を発生すると認められている。このような相互相関性を除くため、IチャンネルとQチャンネルとの間に適応形フィルタが相互結合される。フィルタ係数は、選択される適応アルゴリズムにより更新される。これら論文の主題である信号は、これまで説明したようなガリレオの極めて複雑な広バンド方式と比較して、処理が比較的簡単である。
【0014】
本発明の目的は、IチャンネルとQチャンネルの間のミスマッチから生じる衛星無線ナビゲーション受信機におけるRF障害を低減するための手段を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、製造および作動が経済的であり、すなわちより簡単で安価で低電力であり、高度に統合できる衛星無線ナビゲーション受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様によれば、本発明は、
衛星無線ナビゲーションシステムの受信したナビゲーション信号におけるI/Qのミスマッチを除去する方法において、
前記受信したナビゲーション信号をI信号成分とQ信号成分とに分解するステップと、
不要信号から前記I信号成分およびQ信号成分を分離(demix)する分離段に、前記I信号成分および前記Q信号成分を入力として提供するステップとを備え、分離段は、第1および第2適応フィルタを備え、これらフィルタの係数は、分離段の出力によって更新され、分離段の出力は、I/Qのミスマッチ(不一致)が補正された信号を示す、I/Qのミスマッチを除去する方法を提供するものである。
【0017】
第2の態様によれば、本発明は、
受信したナビゲーション信号におけるI/Qのミスマッチを除去するようになっている、衛星無線ナビゲーション受信機において、
受信したナビゲーション信号をI信号成分およびQ信号成分に分解するための分解手段と、不要信号から前記信号成分を分離するために、前記信号成分を入力信号として受信するようになっている分離段とを備え、分離段は第1適応フィルタおよび第2適応フィルタを備え、更に分離段の出力により、前記適応フィルタの係数を更新するための手段を備え、分離段の出力は、I/Qのミスマッチが補正された信号を示す、衛星無線ナビゲーション受信機を提供するものである。
【0018】
本発明によれば、前記分離段は、I信号成分およびQ信号成分内の不要信号を逆混合、すなわち分離する。これら不要信号は、ゼロIF受信機の場合、複素共役成分であるか、または低IF受信機の場合、ミラーイメージ周波数にある干渉信号である。いずれのケースにおいても、分離段の出力はIQミスマッチが補正された受信信号を示す。
【0019】
本発明は、全地球的衛星ナビゲーションシステムにおけるアナログフロントエンド障害を取り扱うために、教師なしアルゴリズムを使用することを提案するものである。IQエラーが存在する場合、ゼロIFアプローチのケースにおけるIチャンネルとQチャンネル、または低IFアプローチのケースにおける所望するチャンネルと隣接/妨害チャンネルとが相関化される。本発明では、IQ障害がない場合、IチャンネルとQチャンネル、または所望するチャンネルと隣接/妨害チャンネルとは相関化されないと仮定している。
【0020】
好ましいことに、本発明はガリレオ変調方式、特にE5信号のAltBOC方式およびL1およびE6信号のCASM/変形された6相方式に適用される。本発明は、上側波帯および下側波帯で異なる信号を有し、極めて広くなり得る全バンド幅を極めて高いサンプリングレートおよびクロック周波数で、同じRFチェーンにより処理しなければならないこれら複素変調スキームを処理するものである。
【0021】
本発明によれば、時間領域または周波数領域、もしくは両者の組み合わせにおいて、教師なしのデジタル信号処理に基づく補償スキームを展開し、これら望ましくない障害に対応することができる。このような技術を使用することにより、追加(増加した)デジタル信号処理を負担すれば、アナログ回路の複雑さおよびそれに関連するコストを低減することが可能となり、経済的な全システムの解決案を提供できる。これら教師なし信号処理技術は、個々のオフチップコンポーネントの必要性をかなり高い程度解消し、その結果、性能が高められた、より簡単で、より低コストの低電力受信機を提供できる。次にこれらのことにより、RFフロントエンドはより簡単になり、ADCアナログ回路条件は緩和され、その結果、低電力の単一チップの全地球的衛星ナビゲーション受信機に向う大きな進歩が得られる。
【0022】
アナログフロントエンドでの障害は、ゼロIFおよび低IFトランシーバの性能を大幅に制限する。性能の劣化を低減するため、2つのデジタルフィルタに基づく、有効で実際に実現できる教師なしの低電力デジタル補償構造が提案される。これまでにデジタル補償構造およびデジタル補償フィルタ係数を決定するための適用係数更新アルゴリズムが開発されている。
【0023】
本発明は、一般的にGNSS受信機に適用できるが、例えばガリレオ,GPS,GSM,CDMA、将来における規格となるように設定される、あるタイプのハイブリッドハンドヘルドデバイス等の無線ナビゲーション設備を有する携帯電話にも適用できる。処理はデジタル領域で行われるので、GPS,GSM,UMTSおよびWiFiアプリケーションを含むが、これだけに限定されない集積化されたハイブリッドシステム内で他の信号を取り扱うために、デジタル信号処理の設定可能性を活用できる。
【0024】
以下、添付図面を参照し、本発明の好ましい実施例について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
ガリレオシステムでは、提案される変調フォーマットはE5,E6およびL1信号に対して、それぞれAltBOCおよびCASM/修正された6相変調スキームである。CASM/修正された6相変調方式を使用するとき、L1信号を次のように記載できる。
【0026】
【数2】
【0027】
ここで、
CXY(t)は、Xキャリア周波数(「X」はE5a,E5b,E6またはL1を表す)のYチャンネル(「Y」は2チャンネル信号ではIまたはQを表し、または3チャンネル信号ではA,BまたはCを表す)での測距コードであり、
DXY(t)は、X周波数バンド内のYチャンネルでのデータ信号であり、
fXは、X周波数バンド内のキャリア周波数であり、
UXY(f)は、X周波数バンド内のYチャンネルでの矩形サブキャリアであり、
mは、CASM/修正された6相変調に関連する変調指数である。
【0028】
図2は、位相の数が6に等しい、すなわち6相であるコンステレーション図を示す。
【0029】
図5(a)および図5(b)には、それぞれ低IFトポロジーおよびゼロIFトポロジーを使用する、高度に集積化されたGNSS受信機のブロック図が示されている。双方の図におけるアーキテクチャは、概して図3に示されるアーキテクチャに対応しているが、IチャンネルおよびQチャンネル内にアナログ−デジタルコンバータ(ADC)が追加されている点が異なる。図5(a)の低IFの場合、混合局部発振信号は、fLO=fRF−fIFである。図5(b)のゼロIFの場合、混合局部発振信号はfLO=fRFである。各図は、図の左に、入力信号の形を略図で示し、図の底部に、受信チェーンの終わりで生じるような、RF障害を含む回復された信号の有り得る適当な形を示している。
【0030】
図5(a)および図5(b)から分かるように、RF障害の結果、(a)隣接チャンネルが所望のチャンネルを劣化させ、(b)所望のチャンネルの複素共役が所望のチャンネルを劣化させる。いずれのケースにおいても、受信機の性能は直交混合器(ミキサー)のリニアリティの性能によって常に制限される。これら技術のこのような欠点は、市販用および軍用での広範な使用を阻害している。
【0031】
低IFの場合、受け入れる信号s(t)は、fRFでの望む信号u(t)およびfIMGでの不要な干渉信号i(t)から成り、この場合、fIMG=fRF−2fIFである。従って、受信信号s(t)は次のように記載できる。
【0032】
【数3】
【0033】
ここで、u(t)およびi(t)は、それぞれ所望する信号および干渉信号の複素エンベロープであり、「R」はuおよびiの実数部分である。RF障害を含む場合、この結果生じるIF信号は次のように表示できる。
【0034】
【数4】
【0035】
ここで、g1=(1+0.5αε)、g2=(1−0.5αε)(式1参照)であり、(・)*は複素共役である。これから理解できるように、所望する信号u(t)は、アナログのミスマッチに起因するバンド内でリークした像(イメージ)i*(t)により劣化する。所望する信号からイメージチャンネルへのリークも存在する。図5(a)には、この周波数領域の表示が示されている。しかしながら、完全にバランスのとれたシステムでは、所望する信号および干渉信号は、対照的な反対側の周波数+fIFおよび−fIFにダウンコンバートされる。次に、信号IおよびQはデジタル領域にコンバートされる。この後で、別の混合段が、IFからベースバンドへの最終的なダウンコンバートを行う。このような変換段は、デジタル領域で行われるので、IチャンネルとQチャンネルとはマッチングし、理想的な混合が保証され、次のようなベースバンド信号が得られる。
【0036】
【数5】
【0037】
ここで、h1,h2は水平の括弧で示される値を有する。これらh1,h2は混合マトリックスHの要素と見なすことができる。
【0038】
理解できるように、最終的なベースバンド信号は所望の信号のスケーリングされたバージョンを含むだけでなく、干渉信号のスケーリングされたバージョンも含む。イメージ除去比(IRR)は、干渉信号電力に対する所望の信号電力の比として定められる。
【0039】
図5(b)に示されるようなゼロIF受信機の場合、ベースバンド信号rBBは次のように示される。
【0040】
【数6】
【0041】
ここで、g1=(1+0.5αε)、g2=(1−0.5αε)(式1参照)であり、(・)*は複素共役であり、h1,h2は、混合マトリックスHの要素と見なすことができ、理解できるようにIチャンネルとQチャンネルとの間にはクロストークが存在する。
【0042】
図6(a)および図6(b)は、RF障害を解消するための本発明の好ましい実施形態にかかわるガリレオ受信機を略図で示し、図6(a)は、時間領域のコンフィギュレーションであり、図6(b)は周波数領域のコンフィギュレーションである。いずれの図においても、Iチャンネル60およびQチャンネル61に入力信号s(t)が送られる。各チャンネルは、要求に応じて、入力信号と局部発振信号fLOとを混合して、ゼロIF信号または低IF信号を発生するための混合器(ミキサー)62を備える。ダウンコンバートされた信号はローパスフィルタ63に加えられ、フィルタにかけられた信号はADC64でデジタル化される。時間領域の実施形態の場合、デジタル化された信号は分離段65に加えられ、その結果得られる信号は、RF障害が補正され、復調器66でナビゲーション信号を回復するように復調を受ける。周波数領域の実施形態の場合、受取る時間領域信号は、デジタル化され、次に分離段65に適用される前に、67で高速フーリエ変換を受ける。分離された信号は、この信号が復調器66に適用される前に、68で逆FFTを受ける。改変例では、分離された信号は、復調器66において周波数領域での処理が行われ、IFFT68を省略してもよい。更に、当該ポイント数が少ない場合には、時間/周波数変換のより簡単な手段でFFT67を置換してもよい。
【0043】
低IFの場合、分離段65は、u(t)およびi(t)がソースとなっている2×2のブラインド複素ソースセパレータのように働き、観察された信号からこれらを見積もる(推定する)ことを試みる。このアプローチを作動させるには、+fIFだけでなく、−fIF部分もベースバンドにダウンコンバートしなければならない。ゼロIFの場合、好ましい実施形態は、I信号およびQ信号に演算を行う2×2のブラインドソースセパレータとして働く。
【0044】
図7は、図6の分離段65をより詳細に示す。このステージは、入力r1,r2および出力c1,c2を有する適応形フィルタブロック70を備えている。係数更新ブロック72は、信号r,cを受信し、係数更新信号74をフィルタブロック70に提供する。図7に示され、図8および図9でより詳細に示されているような分離段は、図6の時間領域構造および周波数領域構造の双方に適用できる。
【0045】
使用する受信機のトポロジー、すなわち低IFまたはゼロIFによっては、信号r1,r2,c1およびc2をそれぞれ複素数または実数とすることができる。更にトポロジーの選択は、フィルタおよび適応係数更新ブロックにも影響する。これらは、低IFトポロジーおよびゼロIFトポロジーに対してそれぞれ複素数または実数のいずれかとすることができる。更にGPSデータは±1であるので、好ましい実施形態に起因するハードウェアの経費は最小となる。好ましい実施形態は、IPコアまたはソフトウェアコードとして既存の受信機の信号処理チェーンに簡単に統合できる。
【0046】
図8は、IQのミスマッチを解決するための相互結合されたフィルタを備えた分離ユニットの好ましい実施例を示す。図8は、補正された信号を発生するために、適応形フィルタシステムがr1およびr2の双方を使用する態様をより詳細に示す。ゼロIFの場合、r1およびr2はそれぞれI信号およびQ信号であり、一方、低IFの場合、r1およびr2はデジタル領域においてベースバンドにダウンコンバートされた、それぞれ所望する信号(+fIF)およびイメージ信号(−fIF)である。適応形システムは相互結合された適応形フィルタを含む。これらクロス結合された適応形フィルタに、受信された信号r1およびr2が送られる。適応形係数更新ブロックは、新たな非相関マトリックス又は分離(demixing)マトリックスWを決定する。これは、別の補正された信号を発生するのに使用されるとき、更にエラー信号の振幅を低減する。すなわち、分離マトリックスWは、混合マトリックスHを補償またはキャンセルするように機能する(式5参照)。次に、係数更新ブロックの出力は、適応形フィルタシステムに戻され、これは係数更新ブロックが提供した分離マトリックスを置換する。この新しい分離マトリックスは、逆フィルタリングを実行するのに使用され、これら推定値が減算され、推定された又は再構成された信号c1(k)およびc2(k)(ここで、kは離散的時間サンプルとしてtの代わりとなる)を発生する。このプロセスは、エラー信号の振幅が最小値または予め定めた閾値に達するまで続く。よって、エラー信号は分離マトリックスを調節するためのフィードバック信号として機能する。
【0047】
図8に示されるように、キャリアr1,r2のI成分およびQ成分は、分離ユニット80の入力へ適用される。分離ユニット80は、フィードフォワードループ84内に第1および第2適応形フィルタ82を備える。ループ84は、これら2つのチャンネルの間にクロス結合され、チャンネル内の総和点86に接続されているので、適応形フィルタにより変更された各入力信号は、他方の入力信号に加算される。チャンネルの出力c1(k),c2(k)は、分離ユニットの出力を表し、88におけるように、フィルタの係数を更新するのに使用される。
【0048】
エラー信号が除去されると、分離マトリックスWは、混合マトリックスHをキャンセルする。Cetin E.等による上記引用論文では、この問題に対するより強力な数学的処理方法が記載されている。フィードフォワードのケースでは、上記論文からソース推定値c1(k)およびc2(k)が、次のようになることが示される。
【0049】
【数7】
【0050】
フィルタが収束する場合、すなわちw1=h1かつw2=h2であるとき、ソース推定値は次のようになる。
【0051】
【数8】
【0052】
フィードバックのケースに対しては、次のようになる。
【0053】
【数9】
【0054】
フィルタが収束する場合、すなわちw1=h1かつw2=h2であるとき、ソース推定値は次のようになる。
【0055】
【数10】
【0056】
分離ユニットに対する別の実現例は、フィードバックループ内にフィルタを設けることである。この構造は、図9に示されており、この図では、図8の部品と同様な部品は同じ参照番号で示されている。フィードバックループ90内にフィルタ82が設けられている。
【0057】
フィルタ係数は、適応形アルゴリズムにより計算できる。このアルゴリズムは、簡単な標準的な最小二乗平均アルゴリズム(LMS)または再帰的最小二乗(RLS)アルゴリズムとすることができる。当然ながら、適応形アルゴリズムの選択は性能に影響する。しかしながら、提案されたアプローチは、専門アルゴリズムまたはフィルタ係数を更新するための特別に仕様を合わせたアルゴリズム/方式に対する条件とは独立している。
【0058】
システム性能全体を何らかの方法で妥協させないで、出力信号の極性だけを使用することにより係数更新が作動し、この結果、全体の複雑さを低下できることを証明した。更に、誘導される係数の符号を使用することによって作動させるので、適応形フィルタの作動も簡略化される。
【0059】
双極性(すなわち±1)であるナビゲーションデータを復調器66における分離段の出力から誘導するために、極めて簡単な、すなわち瑣末なADC作動だけでよく、この作動は最も簡単に極性検出器またはハードリミターを使用できる。
【0060】
少なくとも上記実施例における本発明の特徴事項は次のとおりである。
1−本方法は、パイロット/テストトーンを必要とすることなく、全地球的衛星ナビゲーションシステムの受信機におけるRF障害を解消できる。
2−フィードバックループ内にフィルタを設けることにより、分離構造用の別の実現例が可能となる。
3−材料コストが少なくて済む、性能が強化されたデバイスにより、電子メーカーがコスト的に効果的により安価な製品を設計し、市販できるようにする。
4−我々の新規なデジタル処理技術により補償され、補助される、緩和されたRFフロントエンド仕様による、集積化及び大型で電力消費量の大きいアナログ部品の排除により、非専用の低い生産コストのCMOS技術を使って、よりロバストで電力効率の高い製品を設計できる。
5−本方法は、ゼロIF受信機および低IF受信機の双方に適用できる。
6−本方法は、時間領域補正および周波数領域補正の双方に適用できる。
7−補正マトリックス推定のための方法は、データの極性だけを使用し、ハードウェア的に極めて効率的な解決案を提供できる。システム全体を妥協することなく、極性情報によりこの係数更新ブロックが作動し、その結果、システム全体の複雑さを低減できることを実証した。
8−ブラインドであることにより、トレーニングまたはパイロット/テストトーンが不要である。
9−このアプローチは、AltBOCおよび6相/CASMで極めて良好に働く。
10−少しのハードウェア/ソフトウェアの経費で、受信機の標準的な信号処理チェーンに容易に統合できる。本発明はインストールされたインフラストラクチャを変えることなく、既存のシステムに容易に適用できる。
11−マルチパスのフェージング環境だけでなく、低SNRの場合で作動することにより、微弱信号GPSアプリケーションに適す。
12−双方のチャンネルが高品位で再生される。低IFバージョンでは、所望するチャンネルだけでなく、たまに隣接チャンネルとなるような妨害波も再生できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ガリレオシステムで使用されるAltBOC変調を略図で示す。
【図2】ガリレオシステムで使用される修正された6相変調を略図で示す。
【図3】従来の直交復調器の略図である。
【図4】(a)32PSK変調された信号と、(b)256QAM変調された信号との、IQアンバランスの効果を示すグラフである。
【図5(a)】ガリレオシステムに対し低IFを使用する受信機のブロック略図を示す。
【図5(b)】ガリレオシステムに対しゼロIFを使用する受信機のブロック略図を示す。
【図6(a)】本発明に係る、ガリレオシステムに対する受信機の時間領域における好ましい実施形態のブロック図である。
【図6(b)】本発明に係る、ガリレオシステムに対する受信機の周波数領域における好ましい実施形態のブロック図である。
【図7】本発明に係るIQミスマッチを除去するための好ましい構成をより詳細に示す。
【図8】IチャンネルとQチャンネルの間のIQミスマッチを除去するための、本発明に係る好ましい分離ユニットの回路略図である。
【図9】IチャンネルとQチャンネルの間のIQミスマッチを除去するための、本発明にかかわる別の分離ユニットの回路略図である。
【符号の説明】
【0062】
60 Iチャンネル
61 Qチャンネル
62 混合器(ミキサー)
63 ローパスフィルタ
64 アナログ−デジタルコンバータ(ADC)
65 分離段
66 復調器
67 高速フーリエ変換
68 逆FFT
70 適応フィルタブロック
72 係数更新ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星無線ナビゲーションシステムの受信したナビゲーション信号におけるIQのミスマッチを除去する方法において、
前記受信したナビゲーション信号をI信号成分とQ信号成分とに分解するステップと、
不要信号から前記I信号成分およびQ信号成分を分離する分離段に、前記I信号成分および前記Q信号成分を入力として提供するステップとを備え、前記分離段は、第1および第2適応形フィルタを備え、これらフィルタの係数は、前記分離段の出力によって更新され、前記分離段の出力は、IQのミスマッチが補正された信号を示す、IQのミスマッチを除去する方法。
【請求項2】
前記受信したナビゲーション信号は、ガリレオシステムの信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受信したナビゲーション信号は、コヒーレント適応形サブキャリア変調(CASM)信号である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記受信したナビゲーション信号は、AltBOC変調されたものである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記係数は、前記分離段の出力の極性によって更新される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記受信した信号の時間領域バージョンで前記分離を実行する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記受信した信号の周波数領域バージョンで前記分離を実行し、時間領域にある前記受信した信号に対し、前記分離の前に周波数変換を施すステップを更に含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記I成分およびQ成分は、ゼロIF信号であり、これは不要な複素共役成分を含む、請求項1乃至7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記I成分およびQ成分は、低IF信号から導かれたものであり、これはベースバンド信号に変換され、ミラーイメージ周波数の不要な干渉成分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
受信したナビゲーション信号におけるIQのミスマッチを除去するようになっている、衛星無線ナビゲーション受信機であって、
受信したナビゲーション信号をI信号成分およびQ信号成分に分解するための分解手段と、不要信号から前記信号成分を分離するために、前記信号成分を入力信号として受信するようになっている分離段と、を備え、前記分離段は、第1適応形フィルタおよび第2適応形フィルタを備え、更に前記分離段の出力により、前記適応形フィルタの係数を更新するための手段を備え、前記分離段の出力は、IQのミスマッチが補正された信号を示す、衛星無線ナビゲーション受信機。
【請求項11】
前記分離段は、第1減算手段を含む第1信号パスを介して第1出力に結合された第1入力と、第2減算手段を含む第2信号パスを介して第2出力に結合された第2入力と、を備え、前記第1フィルタは、前記第1信号パスから前記第2信号パスに結合され、前記第2フィルタは、前記第2信号パスから前記第1信号パスに結合されている、請求項10に記載の受信機。
【請求項12】
前記第1フィルタは、フィードフォワードループ内で前記第1入力と前記第2減算手段との間に結合されており、前記第2フィルタは、フィードフォワードループ内で前記第2入力と前記第1減算手段との間に結合されている、請求項11に記載の受信機。
【請求項13】
前記第1フィルタは、フィードバックループ内で前記第1出力と前記第2減算手段との間に結合されており、前記第2フィルタは、フィードバックループ内で前記第2出力と前記第1減算手段との間に結合されている、請求項11に記載の受信機。
【請求項14】
前記適応形フィルタの係数は、前記分離段の出力の符号を含む、請求項10乃至13のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項15】
前記周波数領域において信号に対する分離を実行するため、前記分離段の入力に結合された時間/周波数変換手段を含む、請求項10乃至14のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項16】
前記受信機は、ゼロIF受信機であり、前記分解手段は、ゼロIF混合手段を含む、請求項10乃至15のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項17】
前記受信機は、低IF受信機であり、前記分解手段は、前記受信したナビゲーション信号を低IF信号に変換するための低IF混合手段を含み、更に、前記低IF信号をベースバンドに変換し、前記I成分およびQ成分を提供するための混合手段を含む、請求項16に記載の受信機。
【請求項18】
添付図面を参照して実質的に説明したような、衛星無線ナビゲーションシステムの受信信号におけるI/Qのミスマッチを除去するための受信機。
【請求項19】
添付図面を参照して実質的に説明したような、衛星無線ナビゲーションシステムの受信信号におけるI/Qのミスマッチを除去するための方法。
【請求項1】
衛星無線ナビゲーションシステムの受信したナビゲーション信号におけるIQのミスマッチを除去する方法において、
前記受信したナビゲーション信号をI信号成分とQ信号成分とに分解するステップと、
不要信号から前記I信号成分およびQ信号成分を分離する分離段に、前記I信号成分および前記Q信号成分を入力として提供するステップとを備え、前記分離段は、第1および第2適応形フィルタを備え、これらフィルタの係数は、前記分離段の出力によって更新され、前記分離段の出力は、IQのミスマッチが補正された信号を示す、IQのミスマッチを除去する方法。
【請求項2】
前記受信したナビゲーション信号は、ガリレオシステムの信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受信したナビゲーション信号は、コヒーレント適応形サブキャリア変調(CASM)信号である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記受信したナビゲーション信号は、AltBOC変調されたものである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記係数は、前記分離段の出力の極性によって更新される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記受信した信号の時間領域バージョンで前記分離を実行する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記受信した信号の周波数領域バージョンで前記分離を実行し、時間領域にある前記受信した信号に対し、前記分離の前に周波数変換を施すステップを更に含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記I成分およびQ成分は、ゼロIF信号であり、これは不要な複素共役成分を含む、請求項1乃至7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記I成分およびQ成分は、低IF信号から導かれたものであり、これはベースバンド信号に変換され、ミラーイメージ周波数の不要な干渉成分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
受信したナビゲーション信号におけるIQのミスマッチを除去するようになっている、衛星無線ナビゲーション受信機であって、
受信したナビゲーション信号をI信号成分およびQ信号成分に分解するための分解手段と、不要信号から前記信号成分を分離するために、前記信号成分を入力信号として受信するようになっている分離段と、を備え、前記分離段は、第1適応形フィルタおよび第2適応形フィルタを備え、更に前記分離段の出力により、前記適応形フィルタの係数を更新するための手段を備え、前記分離段の出力は、IQのミスマッチが補正された信号を示す、衛星無線ナビゲーション受信機。
【請求項11】
前記分離段は、第1減算手段を含む第1信号パスを介して第1出力に結合された第1入力と、第2減算手段を含む第2信号パスを介して第2出力に結合された第2入力と、を備え、前記第1フィルタは、前記第1信号パスから前記第2信号パスに結合され、前記第2フィルタは、前記第2信号パスから前記第1信号パスに結合されている、請求項10に記載の受信機。
【請求項12】
前記第1フィルタは、フィードフォワードループ内で前記第1入力と前記第2減算手段との間に結合されており、前記第2フィルタは、フィードフォワードループ内で前記第2入力と前記第1減算手段との間に結合されている、請求項11に記載の受信機。
【請求項13】
前記第1フィルタは、フィードバックループ内で前記第1出力と前記第2減算手段との間に結合されており、前記第2フィルタは、フィードバックループ内で前記第2出力と前記第1減算手段との間に結合されている、請求項11に記載の受信機。
【請求項14】
前記適応形フィルタの係数は、前記分離段の出力の符号を含む、請求項10乃至13のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項15】
前記周波数領域において信号に対する分離を実行するため、前記分離段の入力に結合された時間/周波数変換手段を含む、請求項10乃至14のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項16】
前記受信機は、ゼロIF受信機であり、前記分解手段は、ゼロIF混合手段を含む、請求項10乃至15のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項17】
前記受信機は、低IF受信機であり、前記分解手段は、前記受信したナビゲーション信号を低IF信号に変換するための低IF混合手段を含み、更に、前記低IF信号をベースバンドに変換し、前記I成分およびQ成分を提供するための混合手段を含む、請求項16に記載の受信機。
【請求項18】
添付図面を参照して実質的に説明したような、衛星無線ナビゲーションシステムの受信信号におけるI/Qのミスマッチを除去するための受信機。
【請求項19】
添付図面を参照して実質的に説明したような、衛星無線ナビゲーションシステムの受信信号におけるI/Qのミスマッチを除去するための方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2009−526986(P2009−526986A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554840(P2008−554840)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000515
【国際公開番号】WO2007/093790
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(507208381)ユニヴァーシティー オブ ウェストミンスター (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000515
【国際公開番号】WO2007/093790
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(507208381)ユニヴァーシティー オブ ウェストミンスター (2)
【Fターム(参考)】
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