説明

衛星通信システム、制御局、主幹通信地球局及び通信地球局

【課題】 要求時割当多元接続方式の衛星通信システムにおいて、所望の回線速度へのBOD制御をより速やかに行うことができる衛星通信システム、制御局及び通信地球局を得ることを目的とする。
【解決手段】 通信地球局3aのトラヒック量が増加して回線速度を超過し、通常モードによる増速ステップを超える増速が必要な場合に、ステップS7により優先権要求信号が送信される。主幹通信地球局4はステップS8により優先権移動要求信号を送信し、制御局1にてこれを受信すると、割当情報テーブルに記録している主幹通信地球局4の増速優先権を通信地球局3aに移動する。ステップ12により通信地球局3aから増速要求信号が送信されると、制御局1は優先モードの増速ステップに基づき増速処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、要求時割当多元接続(DAMA:Demand Assignment Multiple Access)方式により回線割り当てを行い、トラヒック量に基づき回線の速度変更処理を行う衛星通信システム、制御局、主幹通信地球局及び通信地球局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1には、DAMA方式によって衛星通信回線の回線制御を行う衛星通信システムにおいてBOD(Bandwidth on Demand)制御を行う従来技術が開示されている。この従来技術によれば、衛星通信回線がDAMA制御により割り当られた通信地球局間での通信速度を十数段階の増速ステップに分けて、速度変更することができる。具体的には、通信地球局に設けたデータ伝送装置においてトラヒック量を監視し、トラヒック量が増加すると、回線速度の変更要求を制御局へ送信する。この変更要求に対して制御局において回線設定を行い、通信地球局へ回線制御信号を送信し、受信した通信地球局は回線制御信号に従って、周波数チャネルや回線速度の設定を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「IP伝送対応衛星通信システムの開発」菊田徹著、2004年 電子情報通信学会総合大会予稿集B−3−2、P.330、2004年3月22日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載された従来の技術によれば、制御局は、通信地球局から回線速度の変更要求があると、いずれの通信地球局に対しても、一律に同じ増速ステップを適用して回線速度を増速させていた。しかし、昨今では、グループモデムが組み込まれた通信地球局などを用いることにより、いわゆるマルチデスティネーション(1つの通信地球局が複数の通信地球局と同時に通信を行う)通信をより小規模で効率的に行うことができるようになってきている。このようなシステムにおいて、通信接続時にとくに1の通信地球局に複数の通信地球局からの通信回線が集中するような場合(例えば、その1の通信地球局にコンテンツサーバが端末装置として接続されていて、そのコンテンツサーバへの他の通信地球局からのアクセスが集中するような場合など)には、その1の通信地球局は、いわばスター型の通信接続状態となり、BODの発生頻度は他の通信地球局より極めて高くなる。BODの発生頻度が高い通信地球局に対しても一律に同じ増速ステップが適用されることになると、回線の再割り当て処理が頻発して所望の回線速度に到達するまでに時間がかかってしまうという問題点があった。また、複数の通信地球局によって通信地球局グループが形成されるような場合には、グループ内で一律に同じ増速ステップが適用されるよりも、より効率的に増速ステップ幅を可変化しつつ、衛星通信システム全体におけるシステム利用帯域の急激な消耗が回避されるような増速方式の構築も課題となっている。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、要求時割当多元接続方式の衛星通信システムにおいて、所望の回線速度へのBOD制御をより速やかに行うことができる衛星通信システム、制御局及び通信地球局を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る衛星通信システムは、通信地球局からの回線割当要求に基づいて制御局にて通信回線を割り当て、通信地球局から増速要求があったときに制御局により通信回線を段階的に増速する回線増速処理を行う衛星通信システムにおいて、増速優先権を有する主幹通信地球局と複数の通信地球局とからなる通信地球局グループに属する通信地球局は、接続された端末から送信されたパケットを伝送する伝送部と、この伝送部により伝送するパケットのトラヒック量が回線速度よりも大きく、通常モードの増速ステップを超える増速をするときに、上記主幹通信地球局に増速優先権の移動を要求する優先権要求信号を生成する回線制御部とを具備し、上記主幹通信地球局は、受信した上記優先権要求信号に基づいて、上記制御局へ増速優先権の移動を要求する優先権移動要求信号を生成し、上記優先権要求信号を発した通信地球局へ優先権が移動したことを通知する優先権許可信号を生成する主幹用回線制御部を具備し、上記制御局は、上記主幹通信地球局からの上記優先権移動要求信号に基づいて、増速優先権の登録を上記主幹通信地球局から上記優先権要求信号を発した通信地球局へ変更し、上記優先権要求信号を発した通信地球局からの増速要求信号を受信したときに、増速ステップ幅が大きい優先モードにより増速する回線割当制御部を具備したものである。
【0007】
請求項2の発明に係る制御局は、通信地球局からの回線割当要求に基づいて通信回線を割り当て、通信地球局から増速要求があったときに通信回線を段階的に増速する回線増速処理を行う制御局において、増速優先権を有する主幹通信地球局と複数の通信地球局とからなる通信地球局グループに属する通信地球局との間で制御信号を送受信する送受信部と、制御信号を変復調する制御回線変復調部と、受信した制御信号が上記主幹通信地球局からの優先権移動要求信号である場合に、上記増速優先権の登録を上記主幹通信地球局から1の通信地球局へ変更し、受信した制御信号が上記1の通信地球局からの増速要求信号である場合に、増速ステップ幅が大きい優先モードにより増速する回線割当制御部とを具備したものである。
【0008】
請求項3の発明に係る通信地球局は、回線割当要求に基づいて通信回線を割り当てる回線割当処理と増速要求があったときに通信回線を段階的に増速する回線増速処理とを行う制御局に、増速ステップ幅の大きい優先モードによる増速処理を受けられる増速優先権が登録された主幹通信地球局とともに通信地球局グループを形成する通信地球局において、接続された端末から送信されたパケットを伝送する伝送部と、この伝送部により伝送するパケットのトラヒック量が回線速度よりも大きく、通常モードの増速ステップを超える増速をするときに、上記主幹通信地球局に増速優先権の移動を要求する優先権要求信号を生成する回線制御部とを備えたものである。
【0009】
請求項4の発明に係る主幹通信地球局は、通信地球局からの回線割当要求に基づいて通信回線を割り当てる回線割当処理と通信地球局から増速要求があったときに通信回線を段階的に増速する回線増速処理とを行う制御局に、増速ステップ幅の大きい優先モードによる増速処理を受けられる増速優先権が登録され、複数の通信地球局とともに通信地球局グループを形成する主幹通信地球局において、上記通信地球局から受信した優先権要求信号に基づいて、上記制御局へ増速優先権の移動を要求する優先権移動要求信号を生成し、上記優先権要求信号を発した通信地球局へ優先権が移動したことを通知する優先権許可信号を生成する主幹用回線制御部を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、増速優先権を有する主幹通信地球局と複数の通信地球局からなる通信地球局グループ内において、通信地球局から主幹通信地球局へ増速優先権を要求し、主幹通信地球局から制御局へ増速優先権の移動を要求して、制御局に登録した増速優先権を要求を発した通信地球局に移動させるようにしたので、通信地球局グループ内の通信地球局において、増速ステップ幅の大きい優先モードにより増速して、より速く短時間に通信回線の増速をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る衛星通信システムの構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る通信地球局の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る主幹通信地球局の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る制御局の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る衛星通信システムにおける主幹通信地球局の回線速度の変更処理を表わす処理フローチャート図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る制御局における回線速度の変更前後の割当情報テーブルの例を示す模式図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る制御局における通常モードと優先モードのそれぞれの増速ステップを記述した増速ステップテーブルの一例である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る衛星通信システムにおける通信地球局3の回線速度の変更処理を表わす処理フローチャート図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る衛星通信システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
【0013】
この発明の実施の形態1に係る衛星通信システム、制御局、主幹通信地球局及び通信地球局について、図1乃至図8を用いて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信システムの構成図である。図1において、1はDAMA方式により回線割り当てを行う制御局であり、2は通信衛星、3は制御局1により割り当てられた通信回線により通信衛星2を介して通信を行う通信地球局である。4は主幹通信地球局であり、他の通信地球局3と同様に制御局1により割り当てられた通信回線により通信衛星2を介して通信を行うが、増速優先権を付与されているという特徴をもつ。複数の通信地球局3と主幹通信地球局4とにより通信地球局グループ5が構成されているが、この通信地球局グループ5に属しない通信地球局6は別のグループに属するか、又はグループに属さずに、制御局1によって割り当てられた通信回線により通信衛星2を介して通信を行う。7は制御局1と、通信地球局3等(以下、「通信地球局3等」という場合には、通信地球局3、主幹通信地球局4及び通信地球局6が含まれるものとする。)との間で制御信号の送受信を行う制御回線であり、8は通信地球局3等が通信を行うための通信回線である。制御回線7により、通信地球局3等から通信回線8の割り当てを要求する回線割当要求信号を制御局1へ送信し、制御局1において通信回線8を割り当てる。割り当てられた通信回線8の回線情報(CH番号や、中心周波数、帯域幅等の情報)は、制御回線7により回線割当通知信号として制御局1から回線割当要求をした通信地球局3等及び通信相手となる他の通信地球局3等へ送信される。この回線割当通知信号を受信した通信地球局3等と相手側の通信地球局3等との間で通信衛星2を介した通信回線8により通信が行われる。
【0014】
図2はこの発明の実施の形態1に係る通信地球局3の構成を示す機能ブロック図である。図2において、9は通信衛星2との間で電波の送受信を行うアンテナであり、10は受信信号に対して低雑音増幅して低周波変換し、送信信号を高周波数変換し高出力増幅する送受信部である。11は通信回線8により、受信する信号を復調し、送信する信号を変調する通信回線変復調部であり、12は制御回線7により、受信する信号を復調し、送信する信号を変調する制御回線変復調部である。13は通信回線8の回線制御を行う回線制御部であり、14はパケットを伝送する伝送部であり、15はLAN(ローカルエリアネットワーク)回線を通じて接続される端末装置である。
【0015】
伝送部14において、16はLANとの接続を行うLANインタフェース回路であり、17は、端末装置15からのIPパケットやVoIPパケット等で使用されているデータフォーマットを衛星通信に適した通信プロトコルに基づくデータフォーマットに変換するフォーマット変換回路である。ただし、衛星通信においても端末装置15から伝送されてくるパケットのデータフォーマットのまま通信を行う衛星通信システムの場合には、フォーマット変換回路17において、フォーマット変換を行う必要はない。また、フォーマット変換回路17は通信衛星2側から受信した受信データをIPパケットやVoIPパケット等のデータフォーマットに変換し、端末装置15側へ伝送する。LANインタフェース回路16とフォーマット変換回路17は伝送ライン18で接続されており、19は伝送ライン18上において伝送されるパケットからヘッダ情報を抽出するヘッダ情報読出手段であり、20は伝送ライン18上のトラヒック量(単位時間あたりの伝送データ量)を検出するトラヒック量検出手段である。回線制御部13において、21は伝送ライン18上を流れるIPパケットのヘッダ情報をもとにコネクションを管理し、相手側となる通信地球局3等との衛星を介した通信回線の割当要求信号や回線開放信号、増速要求信号等の制御信号を生成する制御回路であり、制御回路21は主幹通信地球局4へ送信する増速の優先権要求信号の生成も行う。22はコネクション情報(例えば両端末のアドレス情報、ウィンドウサイズ等)や、相手側となる通信地球局3等の識別情報など、コネクションに関わるTCP/IP通信及び衛星通信の管理情報を記憶する記憶部である。23はトラヒック量検出手段20により検出したトラヒック量を衛星通信回線の回線速度と比較し、回線速度を超えるトラヒック量である場合には増速要求を制御回路21へ送出する増速要求手段である。また、増速要求手段23は、必要とする情報速度の増分(=現在のトラヒック量から回線速度を減算した値)が通常の増速ステップによる増分を超える場合には、優先増速要求を制御回路21へ送出する。
【0016】
図3はこの発明の実施の形態1に係る主幹通信地球局4の構成を示す機能ブロック図である。図3において、24は伝送ライン18上を流れるIPパケットのヘッダ情報をもとにコネクションを管理し、相手側となる通信地球局3等との衛星を介した通信回線の割当要求信号や回線開放信号、増速要求信号等の制御信号を生成する主幹用制御回路であり、さらに、主幹用制御回路24は通信地球局グループ5内の通信地球局3からの優先権要求信号に基づく制御処理も行うものである。25はトラヒック量検出手段20により検出したトラヒック量を衛星通信回線の回線速度と比較し、回線速度を超えるトラヒック量である場合には増速要求を主幹用制御回路24へ送出する増速要求手段である。図3において図2と同一の符号を付した回路は図2におけるそれらの回路と同一又は相当する回路である。
【0017】
図4はこの発明の実施の形態1に係る制御局1の構成を示す機能ブロック図である。図4において、26は通信衛星2との間で電波の送受信を行うアンテナであり、27は受信信号に対して低雑音増幅して低周波変換し、送信信号を高周波数変換し高出力増幅する送受信部である。28は制御回線7により、受信する信号を復調し、送信する信号を変調する制御回線変復調部、29は通信地球局3等が使用する通信回線8の割当て・開放・増減速などの処理を行う回線割当制御部である。回線割当制御部29において、30は受信した制御信号に基づき回線の割当処理や増減速処理、回線の開放処理を行い、また、割り当てた回線の情報を通信地球局3等へ通知する回線割当通知信号等の制御信号を生成する回線割当処理回路である。また、回線割当処理回路30は主幹通信地球局4からの優先権移動要求信号に対する制御処理も行う。31はシステムで使用する回線の割り当て情報が書き込まれる割当情報テーブル、32は増速ステップが書き込まれた増速ステップテーブルであり、これらのテーブルはメモリ上に記憶される。
【0018】
次に主幹通信地球局4の回線速度の変更処理(とくに増速処理)について、図5乃至図7に基づき説明する。図5はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信システムにおける主幹通信地球局4の回線速度の変更処理を表わす処理フローチャート図であり、図6はこの発明の実施の形態1に係る制御局1における回線速度の変更前後の割当情報テーブルの例を示す模式図である。図5のフローチャートは、主幹通信地球局4(ID番号:#01)、通信地球局3a(ID番号:#02)、3b(ID番号:#03)間で衛星通信が行われている場合を示している。予め主幹通信地球局4、通信地球局3a又は3bからの回線割当要求信号が制御回線7を介して制御局1へ送信され、制御局1は割当情報テーブル31をサーチして空き回線を抽出し、図6(a)に示すように、主幹通信地球局4送信に2ch分(速度128kbps)、通信地球局3a送信に1ch分(速度64kbps)、通信地球局3b送信に1ch分(速度64kbps)をそれぞれ初期割り当てし、主幹通信地球局4/通信地球局3a間、主幹通信地球局4/通信地球局3b間での通信が行われている。尚、CH1あたり64kbpsとしている。この例において、主幹通信地球局4は複数の通信地球局3からの通信回線が集中する通信地球局となっている。主幹通信地球局4には優先モードでの増速処理を受けることができる優先権が与えられており、図6に示すように、主幹通信地球局4の優先権は制御局1の割当情報テーブル31の優先権レコードに符号1が記述されて認識されている。尚、優先権レコードは入力端子33から操作者によって適宜登録と変更をできるようにすればよい。
【0019】
主幹通信地球局4内のトラヒック量検出手段20において検出するトラヒック量が増加して回線速度を超過する場合、増速要求手段25は、制御回路24に対して増速要求(例えばフラグ“1”のような簡単な制御ビットでよい)を出力する。尚、実際には、衛星通信回線で用いる同期語や誤り訂正符号が付加されるので、回線速度に伝送効率を乗じた値以上にトラヒック量がなった場合に、増速要求を出力するものとすればよい。制御回路20は、増速要求が入力されると、増速要求信号を生成し制御回線変復調部12へ出力する。図5のステップS1において、制御回線7により主幹通信地球局4から増速要求信号が送信され、制御局1が受信する。制御局1は、ステップS2により主幹通信地球局4に優先権があるかどうかを割当情報テーブル31を参照して判定する。制御局1は、主幹通信地球局4に増速優先権があると判定すると、優先モードによる増速処理を行う。図7はこの発明の実施の形態1に係る制御局1における通常モードと優先モードのそれぞれの増速ステップを記述した増速ステップテーブルの一例である。通常モードによる増速は所定の増速ステップ幅で設定されており、図7に示す例では、64kbps刻みで256kbpsまで増速し、その後は256kbps刻みで1024kbpsまで増速、そして最終は2048kbpsとしている。一方、優先モードでは256kbpsへ1段で増速し、その後は倍速し、最終は同じく2048kbpsとすることにより、段数を減らして増速ステップ幅を大きく設定したものであり、通常モードに比べて、より速やかに増速がされるものとしている。尚、主幹通信地球局4の送信速度は上記のとおり128kbpsとなっているが、これは回線割当処理時には増速処理時とは独立に、回線割当時初期速度64kbps(1CH分)が、各回線割当要求信号に対応して相手通信地球局分(2局分)割り当てられているためである。図5のステップS3において、制御局1内の回線割当処理回路30は、主幹通信地球局4の増速処理を行うが、この際、割当情報テーブル31から現回線速度が128kbpsであることを読み取り、図7の優先モードのステップに則り、次のステップ位置である256kbps分の回線を割り当てるようにする。回線割当処理回路30は割当情報テーブル31により空きチャネルをサーチし、図6(b)のように空きチャネル(CH05、06)を主幹通信地球局4に追加して割り当てる。
【0020】
次にステップS4により主幹通信地球局4、通信地球局3a及び3bへ回線変更信号を送信する。主幹通信地球局4、通信地球局3a及び3bは、回線変更信号を受信すると、送信または受信チャンネルを変更し、ステップS5において、回線変更完了通知信号を制御回線7により制御局1へ送信する。制御局1は回線変更完了通知信号を受信すると、ステップS6において回線変更完了確認信号を主幹通信地球局4、通信地球局3a及び3bへ送信する。その後、変更後の通信回線により、主幹通信地球局4/通信地球局3a間、主幹通信地球局4/通信地球局3b間の通信が行われる。
【0021】
次に通信地球局3aでの伝送速度が急増した場合の回線速度の変更処理(とくに増速処理)について、図8に基づき説明する。図8はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信システムにおける通信地球局3の回線速度の変更処理を表わす処理フローチャート図である。図8のフローチャートは、図5のフローチャートと同様に、主幹通信地球局4(ID番号:#01)、通信地球局3a(ID番号:#02)、3b(ID番号:#03)間で衛星通信が行われている場合を示している。予め主幹通信地球局4、通信地球局3a又は3bからの回線割当要求信号が制御回線7を介して制御局1へ送信され、制御局1は割当情報テーブル31をサーチして空き回線を抽出し、図6(a)に示すように、主幹通信地球局4送信に2ch分(速度128kbps)、通信地球局3a送信に1ch分(速度64kbps)、通信地球局3b送信に1ch分(速度64kbps)をそれぞれ初期割り当てし、主幹通信地球局4/通信地球局3a間、主幹通信地球局4/通信地球局3b間での通信が行われている。尚、CH1あたり64kbpsとしている。この例において、主幹通信地球局4は複数の通信地球局3からの通信回線が集中する通信地球局となっている。主幹通信地球局4には優先モードでの増速処理を受けることができる優先権が与えられており、図6に示すように、主幹通信地球局4の優先権は制御局1の割当情報テーブル31の優先権レコードに符号1が記述されて認識されている。
【0022】
通信地球局3a内のトラヒック量検出手段20において検出するトラヒック量が増加して回線速度を超過する場合、増速要求手段23は、制御回路21に対して増速要求を出力する。また、増速要求手段23は、必要とする情報速度の増分(=現在のトラヒック量から回線速度を減算した値)が大きく、通常モードによる次の増速ステップ位置を超えるかどうかを判定し、次の増速ステップ位置を超える場合には優先増速要求(例えばフラグ“1”のような簡単な制御ビットでよい)を制御回路21へ送出する。なお、通常モードの増速ステップは図7に示すような値が制御局1に記憶されているが、これを予め通信地球局3aの増速要求手段23又は記憶部22において記憶させておき、読み出して判定するものとする。
【0023】
制御回路21は、基本的には、増速要求が入力されると増速要求信号を生成し制御回線変復調部12へ出力する動作を行うが、優先増速要求が入力されている場合にはこの動作を中断し、主幹通信地球局4あての優先権要求信号を生成して、通信回線変復調部11へ出力する。優先権要求信号は、通信地球局3aのID番号と優先権要求を示す制御コードからなるものとする。図8のステップS7において、通信地球局3aから通信回線8を介して優先権要求信号が主幹通信地球局4あてに送信され、主幹通信地球局4にて受信される。主幹通信地球局4は優先権要求信号を受信すると、主幹用制御回路24において、現在、自局が増速優先権を有しているかどうかを判定し、有している場合には優先権移動要求信号を生成し、制御回線変復調部12へ出力し、制御回線7により優先権移動要求信号が送信される(図8のステップ8)。優先権移動要求信号は移動元である主幹通信地球局4のID番号と移動先である通信地球局3aのID番号、優先権移動を示す制御コードからなるものとする。制御局1は優先権移動要求信号を受信すると、回線割当処理回路30において割当情報テーブル31を参照して、現在の優先権が主幹通信地球局4にあることを確認し、ステップS9による優先権移動処理として、優先権移動要求信号に記述された通信地球局3aのID番号に対応する優先権情報を符号1に変更し、主幹通信地球局4(ID番号#01)の優先権情報を符号0に変更する処理を行う。この処理後、ステップS10において、制御局1は主幹通信地球局4へ優先権の移動が完了したことを示す優先権移動応答を制御回線7により送信し、主幹通信地球局4はこれを受信する。主幹通信地球局4は優先権移動応答を受信すると、主幹用制御回路24において通信地球局3aに増速優先権が許可されたことを示す優先権許可信号を生成して通信回線変復調部11へ出力し、ステップS11において優先権許可信号が通信回線8により送信され、通信地球局3aにより受信される。通信地球局3aの制御回路21は、増速要求信号の生成・出力処理を中断していたが、優先権許可信号を受信すると、増速要求信号を生成し制御回線変復調部12へ出力し、ステップS12により、制御回線7により送信する。
【0024】
ステップS12で送信された増速要求信号を制御局1が受信すると、ステップS13により通信地球局3aに優先権があるかどうかを割当情報テーブル31を参照して判定する。制御局1は、通信地球局3aに増速優先権があると判定すると、優先モードによる増速処理を行う。図7に示す優先モードの増速ステップに基づけば、たとえば、現在の通信地球局3aの回線速度が64kbpsの場合には、増速後の回線速度は優先モードの次の増速ステップ位置である256kbpsとする。回線割当処理回路30は割当情報テーブル31により空きチャネルをサーチし、不足分を補うように空きチャネルを通信地球局3aに追加して割り当てる(ステップS14速度変更処理)。
【0025】
次にステップS15により主幹通信地球局4、通信地球局3a及び3bへ回線変更信号を送信する。主幹通信地球局4、通信地球局3a及び3bは、回線変更信号を受信すると、送信または受信チャンネルを変更し、ステップS16において、回線変更完了通知信号を制御回線7により制御局1へ送信する。制御局1は回線変更完了通知信号を受信すると、ステップS17において回線変更完了確認信号を主幹通信地球局4、通信地球局3a及び3bへ送信する。通信地球局3aの増速要求手段23は、増速後の回線速度に基づいて更なる増速が必要であるか判定しており、不要であれば増速要求をフラグ“0”出力とし、制御回路21は増速が完了したと判定する(ステップS18増速完了)。このとき、通信地球局3aでは増速優先権に基づく増速が不要になるので、制御回路21にて優先権を開放することを示す制御コード及び送信相手先の主幹通信地球局4のID番号を含む優先権開放信号を生成し、通信回線変復調部11へ出力し、ステップS19にて通信回線8により送信する。主幹通信地球局4の主幹用制御回路24は、優先権開放信号を受信すると、移動元である通信地球局3aのID番号、移動先である主幹通信地球局4のID番号、優先権移動を示す制御コードからなる優先権移動要求信号を生成し、ステップS20において、制御回線7により送信し、制御局1は送信された優先権移動要求信号を受信する。ステップS21において、制御局1は優先権移動要求信号に記述された通信地球局3aのID番号に対応する優先権情報を符号0に変更し、主幹通信地球局4(ID番号#01)の優先権情報を符号1に変更する処理を行う。この処理後、ステップS22において、制御局1は主幹通信地球局4へ優先権の移動が完了したことを示す優先権移動応答を制御回線7により送信し、主幹通信地球局4はこれを受信すると、自局に増速優先権があることを主幹用制御回路24または記憶部22に記憶する。
【0026】
なお、主幹通信地球局4は、他の通信地球局(例えば通信地球局3b)に増速優先権を移動している場合には、主幹通信地球局4における自局の増速があっても優先モードによる増速はできず、通常モードにより増速することとなるし、通信地球局3aからの優先権要求信号を受信しても、主幹用制御回路24又は記憶部22に増速優先権が無いとの情報が記憶されているので、この記憶情報に基づき、優先権要求信号を送信した通信地球局3aへ優先権不可信号を出力する。また、主幹通信地球局4において、主幹通信地球局4が含まれる通信地球局グループ5に属する通信地球局3のID番号を登録しておき、通信地球局3からの優先権要求信号に記述されたID番号と、登録しておいたID番号とを照合し、一致する場合には優先権要求を受け付け、一致しない場合には優先権要求を受け付けないこととすれば、増速優先権の移動対象を主幹通信地球局4が含まれる通信地球局グループ5に属する通信地球局3に限定することができる。また、優先権要求信号、優先許可信号、及び優先権開放信号を通信回線8ではなく、地上系の公衆回線や、ネット回線などで送受信するようにしてもよい。
【0027】
以上のように、主幹通信地球局4は、予め制御局1に登録した優先モードでの増速を受ける権利(増速優先権)に基づいて、ステップ数を減らして増速ステップ幅の大きな増速処理が行える。また、主幹通信地球局4の増速優先権を排他的に通信地球局グループ5内の通信地球局3に移動することにより、通信地球局グループ5内の通信地球局3の増速に対して、ステップ数を減らして増速ステップ幅の大きな増速処理が行える。このような増速処理によって、より早く短時間に回線を増速することができる。また、通信地球局グループ5内で排他的に増速優先権が移動することにより、複数の通信地球局3等で優先増速が利用することができるとともに、1の増速優先権に対して複数の同時の増速処理が行われることはなく優先増速の頻度が抑えられるので、衛星通信システム全体からみた増速によるシステム利用帯域の急激な消耗を抑制することができる。
【0028】
実施の形態2
【0029】
この発明の実施の形態2に係る衛星通信システム、制御局、主幹通信地球局及び通信地球局について、図9を用いて説明する。図9はこの発明の実施の形態2に係る衛星通信システムの構成図である。図9において、34は主幹通信地球局4と、通信地球局グループ5に属する通信地球局3との間で制御信号の送受信を行うグループ専用制御回線である。図9において図1と同一の符号を付した部分は図1におけるそれらの部分と同一又は相当する部分である。また、この実施の形態2において以下にとくに説明する構成及び動作以外の構成及び動作については、実施の形態1において説明したとおりであるものとする。
【0030】
グループ専用制御回線34は、主幹通信地球局4と通信地球局グループ5に属する通信地球局3との間で通信地球局グループ5内の制御信号を送受信する制御回線として割り当てられているものとする。通信地球局グループ5内の制御信号とは、例えば通信地球局グループ5に属する通信地球局3が正常に動作しているか確認するために、主幹通信地球局4が送信するヘルスチェック制御信号と、これに対し通信地球局3から主幹通信地球局4あてに送信するヘルスチェック応答信号がある。また、グループ専用制御回線34は常時割り当てられた回線であり、一般的には帯域幅が狭く大容量の伝送には不向きであるが、主幹通信地球局4から通信地球局グループ5内の通信地球局3への指令文書の一斉送信と、通信地球局3から主幹通信地球局4への文書受領応答信号の送信なども行うことができる。この実施の形態2では、通信地球局3から主幹通信地球局4へ優先権要求信号をグループ専用制御回線34により送信し(図8のステップS7)、主幹通信地球局4から通信地球局3へ優先権許可信号をグループ専用制御回線34により送信し(図8のステップS11)、通信地球局3から主幹通信地球局4へ優先権開放信号をグループ専用制御回線34により送信(図8のステップS19)するものとする。優先権要求信号、優先権許可信号、及び優先権開放信号の変復調は、通信地球局3及び主幹通信地球局4内の通信回線変復調部11または制御回線変復調部12のいずれかで行うものとし、制御回線変復調部12で行う場合には、制御回線7とグループ専用制御回線34の2回線分の送受信が行えるようにする。
【0031】
この実施の形態2に係る発明によれば、優先権要求信号、優先権許可信号、及び優先権開放信号をグループ専用制御回線34で送受信するので、通信回線上にこのような制御信号が生じて伝送効率を低下させることを抑制できる。また、主幹通信地球局4との間の通信回線を割り当てられていない通信地球局グループ5内の通信地球局3であっても、グループ専用制御回線34により主幹通信地球局4に増速の優先権要求をすることができるので、利便性が向上する。
【符号の説明】
【0032】
1 制御局
2 通信衛星
3 通信地球局
4 主幹通信地球局
5 通信地球局グループ
7 制御回線
8 通信回線
13 回線制御部
14 伝送部
29 回線割当制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信地球局からの回線割当要求に基づいて制御局にて通信回線を割り当て、通信地球局から増速要求があったときに制御局により通信回線を段階的に増速する回線増速処理を行う衛星通信システムにおいて、増速優先権を有する主幹通信地球局と複数の通信地球局とからなる通信地球局グループに属する通信地球局は、接続された端末から送信されたパケットを伝送する伝送部と、この伝送部により伝送するパケットのトラヒック量が回線速度よりも大きく、通常モードの増速ステップを超える増速をするときに、上記主幹通信地球局に増速優先権の移動を要求する優先権要求信号を生成する回線制御部とを具備し、上記主幹通信地球局は、受信した上記優先権要求信号に基づいて、上記制御局へ増速優先権の移動を要求する優先権移動要求信号を生成し、上記優先権要求信号を発した通信地球局へ優先権が移動したことを通知する優先権許可信号を生成する主幹用回線制御部を具備し、上記制御局は、上記主幹通信地球局からの上記優先権移動要求信号に基づいて、増速優先権の登録を上記主幹通信地球局から上記優先権要求信号を発した通信地球局へ変更し、上記優先権要求信号を発した通信地球局からの増速要求信号を受信したときに、増速ステップ幅が大きい優先モードにより増速する回線割当制御部を具備した衛星通信システム。
【請求項2】
通信地球局からの回線割当要求に基づいて通信回線を割り当て、通信地球局から増速要求があったときに通信回線を段階的に増速する回線増速処理を行う制御局において、増速優先権を有する主幹通信地球局と複数の通信地球局とからなる通信地球局グループに属する通信地球局との間で制御信号を送受信する送受信部と、制御信号を変復調する制御回線変復調部と、受信した制御信号が上記主幹通信地球局からの優先権移動要求信号である場合に、上記増速優先権の登録を上記主幹通信地球局から1の通信地球局へ変更し、受信した制御信号が上記1の通信地球局からの増速要求信号である場合に、増速ステップ幅が大きい優先モードにより増速する回線割当制御部とを具備した制御局。
【請求項3】
回線割当要求に基づいて通信回線を割り当てる回線割当処理と増速要求があったときに通信回線を段階的に増速する回線増速処理とを行う制御局に、増速ステップ幅の大きい優先モードによる増速処理を受けられる増速優先権が登録された主幹通信地球局とともに通信地球局グループを形成する通信地球局において、接続された端末から送信されたパケットを伝送する伝送部と、この伝送部により伝送するパケットのトラヒック量が回線速度よりも大きく、通常モードの増速ステップを超える増速をするときに、上記主幹通信地球局に増速優先権の移動を要求する優先権要求信号を生成する回線制御部とを備えた通信地球局。
【請求項4】
通信地球局からの回線割当要求に基づいて通信回線を割り当てる回線割当処理と通信地球局から増速要求があったときに通信回線を段階的に増速する回線増速処理とを行う制御局に、増速ステップ幅の大きい優先モードによる増速処理を受けられる増速優先権が登録され、複数の通信地球局とともに通信地球局グループを形成する主幹通信地球局において、上記通信地球局から受信した優先権要求信号に基づいて、上記制御局へ増速優先権の移動を要求する優先権移動要求信号を生成し、上記優先権要求信号を発した通信地球局へ優先権が移動したことを通知する優先権許可信号を生成する主幹用回線制御部を備えた主幹通信地球局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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