説明

衛生品用容器

【課題】顔料分散性(紫外線遮断性)に優れるとともに、顔料粒子による内容物の汚染の虞がなく、さらに耐衝撃強度、ガスバリヤー性、界面接着にも優れた容器の提供。
【解決手段】物品を収納する中空部を有する容器であって、該容器の壁部が、内側層と外側層との積層構造を有し、外側層が、C.I.Pigment Yellow 147、C.I.Pigment Yellow 180およびC.I.Pigment Yellow 181からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料が添加された環状オレフィン重合体からなり、上記内側層が上記顔料を含まない環状オレフィン重合体からなることを特徴とする衛生品用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチン、タンパク製剤、抗生物質、ビタミン類、アミノ酸類などの医薬品、栄養剤、輸液類、化粧品、調味料などの食品などの衛生性を要する物質やこれらに準ずる物質を、長期にわたり衛生性を確保して安定に保存できるプラスチックス製衛生品用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品、食品、化粧品、その他の衛生品は、衛生品用容器に充填されて保存される場合が多い。このような衛生品用容器は、内容物を微生物の侵入から保護するとともに、紫外線などによる内容物の変質や劣化などを防止し得るものでなければならない。
【0003】
微生物の容器内への侵入は容器を密封するか、ゴム栓などによる密栓などで防止し、また、紫外線による内容物の変質や劣化などは、内容物に劣化防止剤を添加したり、衛生品用容器自体に紫外線を吸収する物質を添加することによって防止されている。ところで、従来、医薬品類、栄養剤、輸液類、食品などについて衛生上最適な容器として、長い間ガラス製容器が使用されてきた。
【0004】
ガラス製容器の原料であるソーダ石灰ガラスは、耐気体透過性や耐水蒸気透過性(ガスバリヤー性)が高く耐熱性もあり、化学的耐久性も比較的ある。そのうえ安価でもあるために、ガラス製容器はソーダ石灰ガラス(軟質ガラス)で製造される場合が多いが、割れること、珪素と反応性を有する薬液やアルカリ性の強い薬液を保存できないなどのガラスであることによる課題も多い。ガラスに起因する課題を回避するために、ガラス製容器に代わってプラスチックス製容器を採用することが多くなってきた。
【0005】
プラスチックスは、ガラスに比べて割れにくく、軽量であり、成形性にも優れる利点を有する反面、プラスチックスの種類によっては、耐熱性が悪かったり、成形物の強度が不十分であったり、耐気体透過性や耐水蒸気透過性(ガスバリヤー性)が劣るなどの欠点がある。また、耐紫外線透過性(紫外線遮断性)についても多くの改善すべき問題があり、衛生品用容器に要求される性能をバランスよく具備したプラスチックスは未だ見い出されていなかった。
【0006】
因に、着色容器の遮光性(耐紫外線透過性)に関して、第15改正日本薬局方7.01項注射剤用ガラス容器試験法では、波長290〜450nmにおける透過率は50%以下、波長590〜610nmでは60%以上(融封できない容器で器壁の厚さが1.0mm以上のものでは同45%以上)と規定されている。また、米国では、USP31<671>Table2において、プラスチックス製容器の波長290〜450nmでの透過率は、容器の容量によって異なるが、例えば、容量50mLで10%以下、容量1mLで25%以下と規定されている。
【0007】
このような状況の下に、衛生品用容器用のプラスチックスとして環状オレフィン系重合体が適していることが知られている。しかしながら、環状オレフィン系重合体も従来のプラスチックスと同様に、紫外線透過性が高く、これで製造した衛生品用容器では、内容物がこれらの光線で変質したり、劣化するなどの危惧がある。このような危惧を回避するために、特定の有機顔料を紫外線吸収剤として使用する衛生品用容器に関する発明が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−114374号公報
【特許文献2】特開平5−293159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記提案においては、使用する環状オレフィンが、エチレンなどを含まない単独重合体である場合には、使用する環状オレフィンが、エチレンなどを含む共重合体である場合と比べて、耐衝撃強度が高く、化学的安定性が高いという特徴があるが、前記顔料の樹脂中における分散性が悪く、充分な紫外線遮断性を得るために顔料の使用量を多くすると、容器内壁面から顔料粒子が露出する虞があり、内容物が液状である場合には、液状内容物中に顔料粒子が混入する虞が生じる。また、ガスバリヤー性が劣るという問題もある。一方、使用する環状オレフィンが、エチレンなどを含む共重合体である場合には、使用する環状オレフィンが、エチレンなどを含まない単独重合体である場合と比べて、顔料の分散性が良好で上記の如き虞は低減されるものの、容器の耐衝撃強度が低下し、割れやすいという課題がある。
さらに、特許文献2には環状オレフィンと他の種類のプラスチックを積層した衛生品容器が開示されているが、このような積層構造とするとプラスチック層間の接着に問題があり、界面の剥離や白濁化、亀裂の発生など、種々の問題が発生する。
【0010】
そこで、本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、容器壁部を環状オレフィン系材料同士の積層構造とし、外側層にのみ顔料を分散させ、内側層は顔料を含まない層とすること、さらに好ましくは外側層の重合体として顔料分散性がより優れる環状オレフィン共重合体を使用して顔料の分散性を確保し、内側層の樹脂として化学的安定性や耐衝撃強度に優れる環状オレフィンの単独重合体を使用することで、界面接着に優れるとともに、顔料分散性(紫外線遮断性)、顔料粒子による内容物の汚染の虞がなく、さらに耐衝撃強度やガスバリヤー性にも優れた容器が得られることを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、物品を収納する中空部を有する容器であって、該容器の壁部が、内側層と外側層との積層構造を有し、外側層が、C.I.Pigment Yellow 147、C.I.Pigment Yellow 180およびC.I.Pigment Yellow 181からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料が添加された環状オレフィン重合体からなり、上記内側層が上記顔料を含まない環状オレフィン重合体からなることを特徴とする衛生品用容器を提供する。
【0012】
上記本発明においては、外側層の環状オレフィン重合体が、エチレン/環状オレフィン共重合体であり、内側層の環状オレフィン重合体が、環状オレフィン単独重合体であること;顔料の添加量が、重合体の0.01〜0.3質量%であること;および外側層の厚みが0.5〜3mmであり、内側層の厚みが0.5〜3mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、顔料分散性(紫外線遮断性)に優れるとともに、顔料粒子による内容物の汚染の虞がなく、さらに耐衝撃強度、ガスバリヤー性、界面接着にも優れた容器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に発明の実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
本発明において衛生品用容器の製造に使用する重合体は、外側層と内側層とが同じ環状オレフィン重合体でも異なる重合体でもよいが、外側層が顔料分散性に優れる環状オレフィンの共重合体であり、内側層が化学的安定性に優れる環状オレフィンの単独重合樹脂であることが好ましい。なお、本発明において「環状オレフィン重合体」とは、該重合体の水素添加物も含む。
環状オレフィンの単独重合体、または共重合体またはその水素添加物は、環状オレフィン単量体の開環単独重合体または他の単量体との開環共重合体、これらの単独重合体または共重合体の水素添加物である。上記環状オレフィン単量体には、以下に例示するように単環式オレフィン単量体、二環以上の多環式オレフィン単量体が含まれる。
【0015】
環状オレフィン単独重合体または共重合体の製造に使用される単環式オレフィン系単量体としては、例えば、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロオクテンなどの単環オレフィン系単量体および置換基として1〜3個のメチル基、エチル基などの低級アルキル基を有する低級アルキル誘導体、アクリレート誘導体などが挙げられる。
【0016】
多環式オレフィン系単量体としては、例えば、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロシクロペンタジエン、ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプト−2−エンおよびその誘導体、トリシクロ〔4,3,0,12,5〕−3−デセンおよびその誘導体、テトラシクロ〔4,4,0,12,5〕−3−ウンデセンおよびその誘導体、テトラシクロ〔4,4,0,12,5,17,10〕−3−ドデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ〔6,5,1,13,6,02,7,09,13〕−4−ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ〔7,4,0,12,5,0,08,13,19,12〕−3−ペンタデセンおよびその誘導体、ヘキサシクロ〔6,6,1,13,6,110,13,02,7,09,14〕−4−ヘプタデセンおよびその誘導体などが挙げられる。
【0017】
ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプト−2−エンの誘導体としては、例えば、5−メチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプト−2−エン、5−メトキシ−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプト−2−エン、6−メトキシカルボニル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプト−2−エンなどが挙げられる。
【0018】
トリシクロ〔4,3,0,12,5〕−3−デセンの誘導体としては、2−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12,5〕−3−デセン、5−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12,5〕−3−デセンなどが挙げられる。テトラシクロ〔4,4,0,12,5〕−3−ウンデセンの誘導体としては、10−メチル−テトラシクロ〔4,4,0,12,5〕−3−ウンデセンなどが挙げられる。
【0019】
テトラシクロ〔4,4,0,12,5,17,10〕−3−ドデセンの誘導体としては、8−エチリデン−テトラシクロ〔4,4,0,12,5,17,10〕−3−ドデセン、8−メチル−テトラシクロ〔4,4,0,12,5,17,10〕−3−ドデセン、9−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4,4,0,12,5,17,10〕−3−ドデセン、5,10−ジメチル−テトラシクロ〔4,4,0,12,5,17,10〕−3−ドデセンなどが挙げられる。
【0020】
ヘキサシクロ〔6,6,1,13,6,110,13,02,7,09,14〕−4−ヘプタデセンの誘導体としては、12−メチル−ヘキサシクロ〔6,6,1,13,6,110,13,02,7,09,14〕−4−ヘプタデセン、1,6−ジメチル−ヘキサシクロ〔6,6,1,13,6,110,13,02,7,09,14〕−4−ヘプタデセンなどが挙げられる。
【0021】
環状オレフィン重合体の一つの例は、環状オレフィン単量体の少なくとも1種または環状オレフィン単量体の少なくとも1種と他の単量体(例えば、エチレン、プロピレン、4−メチルペンテン−1、シクロペンテン、シクロオクテン、ブタジエン、イソプレン、スチレンなど)の少なくとも1種との単独重合体または共重合体であり、この単独重合体または共重合体は、上記の単量体を、例えば、触媒として炭化水素溶媒に可溶のバナジウム化合物などと有機アルミニウム化合物などからなる公知の触媒(特開平6−157672号公報、特開平5−43663号公報など)を用いて重合することによって得ることができる。
【0022】
環状オレフィン重合体の他の例は、上記単量体の単独開環重合体または共重合体であり、触媒として、例えば、(1)ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、白金などの白金族金属のハロゲン化物、硝酸塩などと還元剤とからなる触媒、(2)チタン、モリブデン、タングステンなどの遷移金属の化合物と有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物などの周期律表I〜IV族金属の有機金属化合物からなる触媒(特開平6−157672号公報、特開平5−43663号公報など)などの公知の触媒を用いて上記の単量体を単独重合または共重合させることによって得ることができる。
【0023】
上記で得られる単独重合体または共重合体が不飽和結合を有している場合には、この単独重合体または共重合体を公知の水素化触媒を用いて水素添加する。水素添加触媒としては、例えば、(1)チタン、コバルト、ニッケルなどの有機酸塩とリチウム、アルミニウムなどの有機金属化合物からなるチーグラー型の均一触媒、(2)パラジウム、ルテニウムなどの白金族金属をカーボン、アルミナなどの担体に担持させた担持触媒、(3)上記白金族金属の錯体触媒など(特開平6−157672号公報など)が挙げられる。
【0024】
なお、本発明においては上記の水素添加単独重合体または共重合体には、重合性二重結合を有する置換基を有していてもよい二環以上の多環式飽和炭化水素化合物の単独開環重合体または共重合体が含まれる。
【0025】
このような多環式飽和炭化水素化合物としては、例えば、トリシクロ〔4,3,0,12,5〕−デカン、ビス(アリルオキシカルボキシ)−トリシクロ〔4,3,0,12,5〕−デカン、ビス(メタクリルオキシ)−トリシクロ〔4,3,0,12,5〕−デカン、ビス(アクリルオキシ)−トリシクロ〔4,3,0,12,5〕−デカンなどが挙げられる。
【0026】
本発明の容器においては、その壁部を積層構造とし、外側層を後述の顔料を含む環状オレフィン重合体(好ましくはエチレンと環状オレフィンとの共重合体)で構成し、内側層を、後述の顔料を含まない上記外側層と同一または異なる環状オレフィン重合体(好ましくは化学的安定性に優れる環状オレフィンの単独重合体)で構成する。
【0027】
上記のエチレン/環状オレフィン共重合体は、例えば、Topas Advanced Polymers GmbH製「TOPAS(登録商標)」、三井化学株式会社製「アペル(登録商標)」などの商品名で入手でき、さらに環状オレフィン単独重合体としては、例えば、株式会社大協精工製「Crystal Zenith(登録商標)」、日本ゼオン株式会社製「ZEONEX(登録商標)」などの商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0028】
本発明において紫外線の透過を抑制するために上記の外側層に添加する顔料は、下記の構造式で表されるC.I.Pigment Yellow 147『化学名:1,1'-[(6-phenyl-1,3,5-triazine-2,4-diyl)-diimino]bis-9,10-anthracenedione』、C.I.Pigment Yellow 180『化学名:2,2'-[1,2-ethanediylbis(oxy-2,1-phenyleneazo)]bis[N-(2,3-dihydro-2-oxo-1H-benzimidazol-5-yl)-3-oxo-butanamide』、C.I.Pigment Yellow 181『化学名:N-[4-(aminocarbonyl)phenyl]-4-[[1-[[2,3-dihydro-2-oxo-1H-benzimodazol-5-yl)amino]carbonyl]-2-oxopropyl]azo]benzamide』、或いはこれらの混合物である。これらの顔料はいずれも市場から容易に入手して本発明において使用することができ、安全衛生上問題がないことはいうまでもない。
【0029】

【0030】
上記顔料の使用量は、特に限定されないが、少な過ぎては遮光性(紫外線遮蔽性)が不十分となり、多過ぎると着色が濃くなり容器の内容物の視認性が困難となる。好ましい添加量は、重合体に対してその0.01〜0.3質量%である。なお、上記の顔料は、容器の成形時に前記重合体中に良く分散するように、担体樹脂と予め混練した高濃度マスターバッチ(顔料濃度10〜60質量%)として使用することが好ましい。
【0031】
本発明の容器は、前記外側層用樹脂に、上記の顔料に加えて、必要に応じて、フェノール系、チオエーテル系、リン系などの老化防止剤、紫外線吸収剤、高級脂肪酸およびそのエステル、シリコーン油などの加工助剤、その他物性改善のためのポリマーやエラストマーなどを適宜添加してニーダー、ロール、押出機などの通常の混合機を用いて混合・混練して外側層用のコンパウンド(組成物)を用意し、一方、前記内側層用には前記顔料を含まず、また、好ましくは上記添加剤を含まない環状オレフィン単独重合体を用意し、これらを用いてダブルインジェクション法、またはダブルインジェクション法により作成したプリフォームをブロー成形する方法によって所定の形状の容器に成形することによって製造される。なお、内側層と外側層とを別に成形して組み合わせたり、その組み合わせによってプリフォームを作成し、そのプリフォームをブロー成形して製造することなどもできるが、前述のダブルインジェクション法を利用するほうが層間接着に有利であり好ましい。
【0032】
例えば、前記の顔料を含まない重合体を所望の形状に射出成形し、該成形物の外面に、前記顔料含有コンパウンドを用いて射出成形(ダブルインジェクション)することで本発明の容器が得られる。このようにして得られる容器においては、外側層の厚みが0.5〜3mmであり、内側層の厚みが0.5〜3mmであることが好ましい。なお、本発明においては容器の形状などは何ら制限されない。
【0033】
本発明の容器は、例えば、アンプル、バイアル類などの医薬品、栄養剤、輸液類用の容器、シリンジ、カートリッジなどの注射器用容器、各種化粧品用容器、ボトルなどの油類、醤油などの各種食品用容器などとして種々の形状の容器として使用することができる。
【実施例】
【0034】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下においては、「部」および「%」は特に断らない限り質量基準である。
実施例1、2(外側層の重合体と内側層の重合体とが同一である実施例)
環状オレフィン重合体(株式会社大協精工製 商品名Crystal Zenith(登録商標))および環状オレフィン共重合体(Topas Advanced Polymers GmbH製 商品名TOPAS(登録商標))を用意し、それぞれ100部に対してC.I.Pigment Yellow 147(日本チバガイギー社製 Filester Yellow RN)を、それぞれ0.05%、0.1%および0.2%添加したコンパウンドをブラベンダープラストグラフを用いて作製した。一方、前記顔料も他の添加剤も含まない上記重合体と同じ単独重合体および共重合体を用意した。これらを用いるダブルインジェクション成形によって、まず、顔料を含まない内側層(厚み2mm)を形成し、続いて内側層と同じ環状オレフィン重合体を用いた顔料を含む環状オレフィン重合体で、外側層(厚み2mm)を形成して容量2mlの積層バイアルを作製した。このバイアルは上記顔料の添加量とともに黄味が濃くなるが、透明性を有するものである。なお、環状オレフィン単独重合体同士の積層容器を実施例1とし、エチレン/環状オレフィン共重合体同士の積層容器を実施例2とした。
【0035】
また、同時に、上記実施例1、2と同じ組み合わせで着色コンパウンドと環状オレフィン重合体とを用いてプレス成形によって着色層(2mm)と無着色層(2mm)との積層シートを作製し、各シートについてダブルビーム型分光光度計(日立社製150−20形)により、波長290〜450nmおよび590〜610nmにおける光透過率(紫外線遮断性)を測定した。結果を下記表1に示す。顔料添加量が同一である場合、波長290〜450nmの範囲において実施例2の方が実施例1よりも2〜5%程度、紫外線遮断率が高くなった。
【0036】

【0037】
実施例3、4(外側層の重合体と内側層の重合体とが異なる実施例)
実施例1の外側層用樹脂として実施例2の外側層用樹脂(共重合体)を使用した以外は、実施例1と同様に成形した容器、および積層シートを実施例3とし、同様に実施例2の外側層用樹脂として実施例1の外側層用樹脂(単独重合体)を使用した以外は、実施例2と同様に成形した容器および積層シートを実施例4として、光透過率試験を行った。光透過率試験の結果は、実施例3の方が、実施例4よりも2〜5%程度高い紫外線遮断性を示した。紫外線遮蔽性は顔料を含有する外側層によってその効果が生ずると推測され、実際の試験結果も実施例3は実施例2の結果とほぼ同一であり、実施例4は実施例1の結果とほぼ同一であった。また、この結果より、環状オレフィン重合体同士であれば異なる樹脂(単独重合体と共重合体)で積層したとしても、層間接着面による光透過率の低下はほとんど認められないことが確認された。
【0038】
実施例5、6
実施例3、4におけるC.I.Pigment Yellow 147に代えてC.I.Pigment Yellow 180を使用し、他は実施例3、4と同様にしてバイアルを作製した。このバイアルは上記顔料の添加量とともに黄味が濃くなるが、透明性を有するものである。また、同時に、同じコンパウンドを用いてプレス成形によって同じ厚さの積層シートを作製し、各シートについてダブルビーム型分光光度計(日立社製150−20形)により、波長290〜450nmおよび590〜610nmにおける光透過率を測定したところ実施例3、4の場合と同様であった。
【0039】
実施例7、8
C.I.Pigment Yellow 147に代えてC.I.Pigment Yellow 181を使用し、他は実施例3、4と同様にしてバイアルを作製した。このバイアルは上記顔料の添加量とともに黄味が濃くなるが、透明性を有するものである。また、同時に、同じコンパウンドを用いてプレス成形によって2mm厚さのシートを作製し、各シートについてダブルビーム型分光光度計(日立社製150−20形)により、波長290〜450nmおよび590〜610nmにおける光透過率を測定したところ実施例3、4の場合と同様であった。
【0040】
比較例1
顔料を使用しなかったことを除き、他は実施例3と同様にしてバイアルを作製した。
比較例2
顔料を使用しなかったことを除き、他は実施例4と同様にしてバイアルを作製した。
比較例3
実施例3の内側層用樹脂と外側層用樹脂を、それぞれ外側層と内側層とした以外は、実施例3と同様にしてバイアルを作製した。
比較例4
上記比較例3と同様に、実施例4の内側層と外側層の樹脂を入れ換えた以外は、実施例4と同様にしてバイアルを作製した。
【0041】
試験例
上記実施例1〜8および比較例1〜4で得られたバイアルを十分に洗浄後、下記の試験を行った。なお、顔料濃度0.2%のものについて試験を行った。
【0042】
(1)溶出試験:第15改正日本薬局方「プラスチック製容器試験法に準拠して行った。
(2)微粒子量:バイアルに無塵水20mlを充填し、振動機にて10分間振動させた後、1時間静置してから光遮蔽型自動微粒子計測機(HIAC社製)にて水中の粒径2.5μm以上の微粒子の個数を測定した。
【0043】
(3)薬液の吸着試験:アンプルに密封された塩酸クロルプロマジン(濃度25mg/5ml)を含むコントミン注射液(商品名、吉富製薬製)を生理食塩水に加えて、水素イオン濃度調節剤(和光純薬社製)にてpHを7.0に調節して500mlとして試験薬液とした。この試験薬液をバイアルに充填し、弗素樹脂フイルムを積層したゴム栓を打栓し、10ケ月間室温に静置した。バイアル内の塩酸クロルプロマジン含有量を、波長254nmにおけるその試験薬液の吸光度を島津製作所製分光光度計UV2100型(商品名)にて測定して決定した。吸着量は充填直後の濃度を100%とし、10ケ月放置後の塩酸クロルプロマジンの濃度の低下量(%)とした。
【0044】
(4)光劣化試験:上記吸着試験における薬液の調製方法と同様にして、ビタミンK1およびビタミンB2を含有する薬液を調製した。この薬液を各バイアルに充填し、サンシャインウエザオメーター(スガ試験機製、We−SUN−He)にて紫外線照射(主波長340〜450nm)を36時間行って、照射後の薬液の吸着量(試験方法は前記(3)と同じ)、ビタミンK1およびビタミンB2の光劣化を測定した。いずれの場合もバイアルには打栓して行った。なお、ビタミンK1およびビタミンB2の光劣化は次の方法によって定めた。
【0045】
(a)ビタミンK1:UV検出器で波長254nmにて照射後の薬液中に残存しているビタミンK1の濃度を測定した。照射前のビタミンK1の濃度を100%とし、照射後のビタミンK1の濃度(%)を調べた。
(b)ビタミンB2:自記記録分光光度計(日立EPS−3T型)にて、波長445nmにより、照射後の薬液中に残存しているビタミンB2の濃度を測定した。照射前のビタミンB2の濃度を100%とし、照射後のビタミンB2の濃度(%)を調べた。以上の試験結果を表2に示す。
【0046】

【0047】
以上の結果からして、本発明の容器は、日本薬局方試験に合格するとともに、紫外線遮断性に優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上の本発明によれば、顔料分散性(紫外線遮断性)に優れるとともに、顔料粒子による内容物の汚染の虞がなく、さらに耐衝撃強度、ガスバリヤー性、界面接着にも優れた容器が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する中空部を有する容器であって、該容器の壁部が、内側層と外側層との積層構造を有し、外側層が、C.I.Pigment Yellow 147、C.I.Pigment Yellow 180およびC.I.Pigment Yellow 181からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料が添加された環状オレフィン重合体からなり、上記内側層が上記顔料を含まない環状オレフィン重合体からなることを特徴とする衛生品用容器。
【請求項2】
外側層の環状オレフィン重合体が、エチレン/環状オレフィン共重合体であり、内側層の環状オレフィン重合体が、環状オレフィン単独重合体である請求項1に記載の衛生品用容器。
【請求項3】
顔料の添加量が、重合体の0.01〜0.3質量%である請求項2に記載の衛生品用容器。
【請求項4】
外側層の厚みが、0.5〜3mmであり、内側層の厚みが0.5〜3mmである請求項3に記載の衛生品用容器。

【公開番号】特開2010−179928(P2010−179928A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23578(P2009−23578)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000149000)株式会社大協精工 (31)
【Fターム(参考)】