説明

衛生洗浄装置及びトイレ装置

【課題】衛生洗浄装置の水抜きに連動してロータンクや便器ボウルなどの排水も実行可能とした衛生洗浄装置及びトイレ装置を提供する。
【解決手段】タンクに貯留した水を排水弁を介して水洗便器のボウルに流すトイレに付設される衛生洗浄装置であって、吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く水路と、前記水路の途上に接続され前記水路の水の少なくとも一部を前記ボウルに排水可能とした水抜弁と、前記水抜弁を開閉させることによる前記水路の水抜きと、前記排水弁を開かせることによる前記タンクの排水と、を連動して実行可能とした制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置及びトイレ装置に関し、より具体的には、例えば洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置及びトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置は、洗浄水を噴射する吐水ノズルを進退自在に収容し、腰掛便器の上に設置して使用者の「おしり」などを温水で洗浄することができる。このような衛生洗浄装置は、その内部に水路系を有するため、保守点検や、寒冷地において凍結を防ぐために、衛生洗浄装置の給水部の水抜きを行う必要がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、例えば、寒冷地において凍結を防ぐためには、衛生洗浄装置の水抜きだけではなく、ロータンクなどの水も抜く必要がある。
また一方、航空機などに設置されるいわゆる真空式のトイレの場合には、便器の排水を実行するためにはボウル底部に付設された開閉弁を開く必要がある。従って、例えば、保守点検などのために衛生洗浄装置の水抜きを実行した場合には、衛生洗浄装置から便器のボウルに排出された水が溢れ出さないように、便器の排水も実行する必要がある。同様に、凍結防止のために衛生洗浄装置の水抜きをする場合も、真空式便器のボウルに溜まった水の凍結を防ぐために、便器の排水も実行する必要がある。
【特許文献1】特開平4−64631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、衛生洗浄装置の水抜きに連動してロータンクや便器ボウルなどの排水も実行可能とした衛生洗浄装置及びトイレ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、タンクに貯留した水を排水弁を介して水洗便器のボウルに流すトイレに付設される衛生洗浄装置であって、吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く水路と、前記水路の途上に接続され前記水路の水の少なくとも一部を前記ボウルに排水可能とした水抜弁と、前記水抜弁を開閉させることによる前記水路の水抜きと、前記排水弁を開かせることによる前記タンクの排水と、を連動して実行可能とした制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、減圧された排水路と便器との間に開閉弁が設けられたトイレに付設される衛生洗浄装置であって、吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く水路と、前記水路の途上に接続され前記水路の水の少なくとも一部を前記ボウルに排水可能とした水抜弁と、前記水抜弁を開閉させることによる前記水路の水抜きと、前記開閉弁を開かせることによる前記便器のボウルから前記排水路への排水と、を連動して実行可能とした制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、タンクに貯留した水を排水弁を介して水洗便器のボウルに流すトイレと、吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く水路と、前記水路の途上に接続され前記水路の水の少なくとも一部を前記ボウルに排水可能とした水抜弁と、前記水抜弁を開閉させることによる前記水路の水抜きと、前記排水弁を開かせることによる前記タンクの排水と、を連動して実行可能とした制御部と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、減圧された排水路と便器との間に開閉弁が設けられたトイレと、吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く水路と、前記水路の途上に接続され前記水路の水の少なくとも一部を前記ボウルに排水可能とした水抜弁と、前記水抜弁を開閉させることによる前記水路の水抜きと、前記開閉弁を開かせることによる前記便器のボウルから前記排水路への排水と、を連動して実行可能とした制御部と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、衛生洗浄装置の水抜きに連動してロータンクや便器ボウルなどの排水も実行可能とした衛生洗浄装置及びトイレ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるトイレ装置のブロック図である。
また、図2は、本実施形態のトイレ装置を例示する模式斜視図である。
また、図3は、このトイレ装置の一部断面模式図である。
このトイレ装置は、水洗トイレ900と、この水洗トイレに設置された衛生洗浄装置10と、を有する。水洗トイレ900は、洗浄水を貯留可能なタンク910と、ボウル930を有する便器950と、タンク910に貯留された洗浄水を排水路955を介してボウル930に流す排水弁920と、を有する。排水弁920は、排水弁駆動部960により自動的に開くことが可能とされている。また、排水弁920は、使用者がハンドル935などを操作することにより手動でも開くことができるようにしてもよい。図2及び図3に表した水洗トイレ900は、いわゆる「ロータンク式」のものであり、排水弁920は、浮子922の浮力により鉛直上方に付勢されている。従って、排水弁920が排水弁駆動部960またはハンドル935により開かれると、タンク910内の水が所定の水位に低下するまで、排水弁920は浮子922の浮力により開かれた状態が維持される。一方、タンク910にはボールタップ915が設けられ、タンク910内の水位が所定のレベルになるまで、分岐22から供給される水を給水する。
【0011】
ただし、本願明細書における「排水弁」とは、便用後に汚物を流す便器洗浄用の排水弁には限定されず、このような便器洗浄用の排水弁とは別に設けられタンク910の水を排出する排水弁も含むものとする。
【0012】
なお、図2及び図3においては、タンク910として「ロータンク式」のものを表したが、本発明はこれに限定されず、例えば「ハイタンク式」の洗浄タンクを用いたものであってもよい。
【0013】
一方、便器950の上に設置された衛生洗浄装置10は、本体部12と、この本体部12に対して開閉自在に軸支された便座14及び便蓋16と、を備える。ただし便蓋16は、設けなくてもよい。本体部12からは、使用者のスイッチ操作などに応じて吐水ノズルが便器950のボウル内に伸出し、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、使用者の「おしり」などを洗浄可能とされている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0014】
トイレ装置が設置されたトイレ空間の壁などには、水道または貯水タンクなどの給水源に接続された止水栓20が設けられ、その先に分岐22が設けられて、水洗トイレのタンク910と衛生洗浄装置10とにそれぞれ給水される。衛生洗浄装置10は、分岐22から給水された水をノズルユニット400に導く水路110を有する。水路110の上流側には、電磁弁120が設けられている。電磁弁120は、例えばノーマリクローズすなわち非通電時において閉状態となる電磁バルブであり、制御部500からの指令に基づいて水の供給を制御する。電磁弁120の下流には、熱交換ユニット200が設けられている。熱交換ユニット200は、供給された水をヒータで加熱し、所定の温水にする。熱交換ユニット200の下流には、吐水ノズルを有するノズルユニット400が設けられている。
【0015】
また、熱交換ユニット200とノズルユニット400との間には、水抜弁100が設けられている。水抜弁100は、制御部500からの指示に基づいて開き、水路110及びその途上にある熱交換ユニット200などの内部に残留した水を外部に放出する。水抜弁100から放出された水は、便器のボウル930に排出される。なお、本実施形態における水抜弁100の接続位置は、図1に表した具体例には限定されず、電磁弁120の下流側であれば、何処に接続してもよい。また、ノズルユニット400から水抜きを行うタイプの衛生洗浄装置の場合には、水抜弁100の代わりにノズルユニットの通水を制御する通水制御弁を用いてもよい。
【0016】
また、衛生洗浄装置10と排水弁駆動部960とは、接続コード962により接続され、制御部500からの信号または電力により排水弁駆動部960を駆動させて排水弁920を開くことが可能とされている。
以上説明した衛生洗浄装置10の動作は、本体部やリモコンなどに設けられたスイッチなどの操作部700を操作することにより制御することができる。
【0017】
次に、このトイレ装置において実行される水抜き動作について説明する。
図4は、本実施形態のトイレ装置の水抜き動作を例示するフローチャートである。
すなわち、衛生洗浄装置10の制御部500は、まず、水抜きトリガがあるか否かを判定する(ステップS110)。水抜きトリガは、水抜き動作を開始する指令であり、例えば、使用者が操作部700を操作することにより入力することができる。なおこの時、使用者は、予め止水栓20を閉じて衛生洗浄装置10及び水洗トイレ900への給水を遮断することが望ましい。
【0018】
水抜きトリガが入力された場合(ステップS110:yes)には、制御部500は、操作スイッチの受付を禁止する(ステップS120)。すなわち、使用者が操作部700を操作して、例えば「おしり」の洗浄を開始しようとしても、その動作は実行されない。ただし、例えば、水抜き動作を中止するような指令が入力された場合には、これを受け付けて水抜き動作を適宜中止する。また、ステップS120において、例えば使用者が「おしり」の洗浄のためにリモコンなどのスイッチを操作した時に、「ピピッ」のようなアラームを鳴らしたり、光などにより、水抜き動作を実行中であることを報知してもよい。
【0019】
そして、制御部500は、水抜弁100を開く(ステップS130)。この時、典型的には、電磁弁120は閉じた状態にある。すると、衛生洗浄装置10の水路110の電磁弁120の下流側に残留している水が水抜弁100から便器のボウル930に排出される。便器950は、例えばサイホン式の水洗便器であり、トラップ932の最大水位を超える水は自動的に排水管に放出される。従って、衛生洗浄装置10の水抜きによりボウル930から外側に水が溢れでることはない。
【0020】
例えば、熱交換ユニット200に貯湯タンクを設けた場合には、700ミリリットル程度の水が残留していることもある。本実施形態によれば、このような残留水も水抜弁100を介して確実且つ容易に排出できる。なお、本発明は貯湯タンクを用いたものには限定されず、いわゆる瞬間加熱式の熱交換機を有するものも包含する。
【0021】
次に、水抜きが完了したか否かを判定する(ステップS140)。具体的には、例えば水抜弁100を開いてから所定の時間が経過したか否かが、制御部500において判定される。または、水抜きトリガ(ステップS110参照)が入力されてから所定の時間が経過したか否かにより判定してもよい。またあるいは、水抜弁100あるいはその下流側にセンサなどの検知手段を設け、水抜弁100から排出される水がこの検知手段によって検知されなくなってから所定時間が経過したか否かを判定してもよい。また一方、水路110の一部や熱交換ユニット200などの重量を検出し、その重量が所定の値以下となってから所定の時間が経過したか否かを判定してもよい。あるいは、熱交換ユニット200の内部の水位をフロートスイッチやセンサなどにより検出し、所定の水位を下回ってから所定の時間が経過したか否かによって判定してもよい。
【0022】
このような方法により水抜きが完了したと判定した時(ステップS140:yes)は、制御部500は、水抜弁100を閉じる(ステップS150)。そして、制御部500は、水洗トイレ900の排水弁920を開くための信号を排水弁駆動部960に送信する(ステップS160)。すると、水洗トイレ900の排水弁920が開かれ、タンク910に貯留されていた水がボウル930に排出される。なおこの時、前述したように、使用者により予め止水栓20が閉じられていれば、タンク910への給水はされない。つまり、タンク910の水抜きをすることができる。
【0023】
また、この時、タンク910への給水が遮断されていると、ボールタップ915から分岐しオーバーフロー管916から排水路955を介してボウル930に供給されるはずの封水用の水の供給も遮断される。従って、サイホン効果によりトラップ932の水の殆どが排水管に押し流された後に、封水用の水が供給されず、トラップ932は殆ど水がない状態を形成することも可能である。つまり、便器950のトラップ932の水位を下げることにより、凍結によるトラブルを防止することも可能となる。
【0024】
このようにして水洗トイレ900のタンク910及びトラップ932の水抜きを実行したら、操作スイッチの受付を再び許可状態とする(ステップS170)。その後、使用者は、止水栓20を開状態にし、例えばリモコンなどの操作部700の所定のスイッチを押したり、衛生洗浄装置10の電源を遮断した後に再投入すると、給水が開始される。すなわち、衛生洗浄装置10の電磁弁120が開かれて、熱交換ユニット200に水が導入される。また、水洗トイレのタンク910には、ボールタップ915を介して所定の水位まで給水され、トラップ932にもオーバーフロー管916を介して封水が充填される。
【0025】
ただし、ボールタップ915からオーバーフロー管916を介してトラップ932に封水が充填されないタイプの便器の場合には、封水を充填する操作が必要となる。その場合には、例えば制御部500を用いて、給水開始から所定時間経過後に排水弁920を開動作させるようにすればよい。また、給水開始から所定時間経過したか否かに限らず、重量による制御など、前述した判定方法を転用してもよい。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、衛生洗浄装置10の水抜きに連動して水洗トイレのタンク910及びトラップ932の水抜きを自動的に実行させることができる。すなわち、衛生洗浄装置10と水洗トイレ900の水抜きを使用者がそれぞれ行わなければならないとすると、水抜き作業は面倒であり、作業のミスや作業の忘れなどが生ずる場合もある。これに対して、本実施形態によれば、衛生洗浄装置10と連動して水洗トイレ900の水抜きも実行できる。その結果として、寒冷地における凍結防止などのための水抜きを確実且つ容易に実行でき、使い勝手のよいトイレ装置を実現できる。
【0027】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図5は、本実施形態にかかるトイレ装置のブロック図である。
また、図6は、本実施形態のトイレ装置の水抜き動作を例示するフローチャートである。 これらの図については、図1〜図4に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0028】
本実施形態においては、衛生洗浄装置10に給水源からの水の供給状態を検出する供給検出部550が設けられている。供給検出部550は、例えば水路110に設けられた水圧センサとすることができる。供給検出部550を設けることにより、水路110への水の供給の有無、すなわち止水栓20の開閉状態を調べることができる。
【0029】
制御部500は、供給検出部550からの信号に基づき、水抜き動作を実行する。すなわち、水抜きトリガが発生すると(ステップS110:yes)、制御部500は、供給検出部550からの信号に基づき、止水栓20からの給水が停止しているか否かを判定する(ステップS180)。給水が停止していない(ステップS180:no)と判定した場合には、ステップS110に戻る。またこの時、例えば、「ピピッ」のようなアラームを鳴らしたり、光などにより、止水栓20が閉じられていないことを使用者に報知してもよい。
【0030】
一方、給水が停止していると判断した場合(ステップS180:yes)は、ステップS120以降の処理を順次実行する。これらの処理については、図1〜図4に関して前述したものと同様とすることができる。
【0031】
衛生洗浄装置10と連動して水洗トイレのタンク910などの水抜きを実行させるためには、止水栓20を閉じる必要がある。これに対して、本実施形態によれば、止水栓20が閉じられているか否かを供給検出部550により検出することにより、使用者が止水栓20を閉めずに水抜きの指令を出した場合に、水抜き動作を実行しないようにすることができる。つまり、使用者が止水栓20を閉め忘れた場合などに、水抜き動作を行わず、止水栓20が閉じられていないことを報知することが可能となる。
【0032】
また、ステップS170の後に、使用者が例えばリモコンなどの操作部700の所定のスイッチを押したり、衛生洗浄装置10の電源を遮断した後に再投入して給水の開始を指令した時にも、供給検出部550により止水栓20の開閉状態を判定することができる。つまり、給水の開始が指令された時に、止水栓20が閉まっている場合には、音や光などのアラームにより使用者に報知することができる。
【0033】
一方、本実施形態においては、ステップS180において、給水が停止していない場合(no)に、ステップS110まで戻らず、音や光で使用者に報知しつつ、ステップS120以降を実行するようにしてもよい。このようにすると、例えば、衛生洗浄装置10の保守点検のために水抜きをしたい場合などに、衛生洗浄装置10のみの水抜きを実行させることができる。また一方、給水が停止していない場合(no)に、ステップS110まで戻らず、音や光で使用者に報知しつつ、給水を停止するまでステップS180で待機し、給水停止後にステップS120以降を実行するようにしてもよい。
【0034】
図7は、本実施形態の変型例にかかる水抜き動作のフローチャートである。
すなわち、本変型例においては、ステップS190において水抜弁100とともに電磁弁120も開く。この時、止水栓20は閉じているので、止水栓20から電磁弁120に至る水路に残留している水も、水抜弁100から排出させることが可能となる。
そして、水抜きが完了したら(ステップS140:yes)、水抜弁100とともに電磁弁120も閉じる(ステップS200)。このようにして、衛生洗浄装置10およびこれに至る配管の水抜きをさらに確実に実行することが可能となる。
【0035】
なお、本変型例における水抜弁100と電磁弁120の開閉のタイミングは必ずしも同時である必要はない。すなわち、電磁弁120の1次側の水抜きができる限り、その開閉タイミングは適宜設定することができる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図8は、本実施形態にかかるトイレ装置のブロック図である。
また、図9は、本実施形態のトイレ装置を例示する模式斜視図である。
また、図10は、このトイレ装置の一部断面模式図である。
これらの図についても、図1〜図7に関して前述したものと同様の要素には同一に符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施形態のトイレ装置は、真空式のトイレ900と、この真空式のトイレに設置された衛生洗浄装置10と、を備える。真空式のトイレ900は、例えば航空機などに設置される。すなわち、便器950のボウル930の底部に開閉弁940が設けられ、減圧された排水路970との間が開閉自在とされている。開閉弁940が閉じた状態では気密及び液密がほぼ維持され、一方、開閉弁940が開くとボウル930内の水などが排水路970に吸引排出される。また、開閉弁940を開く際に、所定量の水をボウル930に流すようにしてもよい。
【0038】
そして、本実施形態においては、衛生洗浄装置10の制御部500から開閉弁940を開閉する信号が出力される。
【0039】
図11は、本実施形態のトイレ装置において実行される水抜き動作のフローチャートである。同図についても、図1〜図10に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0040】
本実施形態においては、例えば電磁弁120を閉じたままステップS110〜ステップS150の一連の処理を実行した後に、真空式のトイレの開閉弁940を開き、閉じる(ステップS210)。前述したように、真空式のトイレの場合、開閉弁940が閉じられた状態では液密がほぼ維持されるので、衛生洗浄装置10の水抜きによりボウル930に排出された水はボウル930に溜まることとなる。そこで、衛生洗浄装置10の水抜きを実行した後に、真空式のトイレの開閉弁940を開き、ボウル930に溜まった水を排水路970に排出する。その後、開閉弁940を閉じる。このようにすれば、衛生洗浄装置10の水抜きによりボウル930に排出されて溜まった水がボウル930の外に溢れたり、凍結したりする問題を防止できる。
【0041】
なお、本実施形態においては、開閉弁940の開閉のタイミングは図11に表した具体例には限定されない。例えば、開閉弁940を開くタイミングはもっと早くてもよいし、また例えば、開閉弁940を開くタイミングを複数回設けてもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態においても、衛生洗浄装置10の水抜きに連動して真空式のトイレのボウル930に排出された水の排水を自動的に実行させることができる。この場合にも、衛生洗浄装置10の水抜きと真空式のトイレ900の排水を使用者がそれぞれ行わなければならないとすると、水抜き作業は面倒であり、作業のミスや作業の忘れなどが生ずる場合もある。これに対して、本実施形態によれば、衛生洗浄装置10と連動して真空式のトイレ900の排水も実行できる。その結果として、寒冷地における凍結防止などのための水抜きを確実且つ容易に実行でき、使い勝手のよいトイレ装置を実現できる。
【0043】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図12は、本実施形態にかかるトイレ装置のブロック図である。
また、図13は、本実施形態のトイレ装置の水抜き動作を例示するフローチャートである。
これらの図についても、図1〜図12に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
本実施形態においても、第2実施形態と同様に、衛生洗浄装置10に給水源からの水の供給状態を検出する供給検出部550が設けられている。供給検出部550を設けることにより、水路110への水の供給の有無、すなわち止水栓20の開閉状態を調べることができる。
【0045】
その動作について説明すると、本実施形態においても、図7に関して前述したものと同様に、ステップS190において水抜弁100とともに電磁弁120も開く。この時、止水栓20は閉じているので、止水栓20から電磁弁120に至る水路に残留している水も、水抜弁100から排出させることが可能となる。
そして、水抜きが完了したら(ステップS140:yes)、水抜弁100とともに電磁弁120も閉じる(ステップS200)。このようにして、衛生洗浄装置10およびこれに至る配管の水抜きをさらに確実に実行することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態における水抜弁100と電磁弁120の開閉のタイミングについても、必ずしも同時である必要はない。すなわち、電磁弁120の1次側の水抜きができる限り、その開閉タイミングは適宜設定することができる。
【0047】
以上、本発明の第1乃至第4の実施形態について説明した。
次に、これら実施形態における衛生洗浄装置10の水路系について具体例を挙げて説明する。
【0048】
図14は、本発明の衛生洗浄装置10の水路系を例示するブロック図である。
衛生洗浄装置10の水路110の上流側には、まず止水栓112が設けられている。止水栓112は、手動による開閉が可能とされ、例えば、衛生洗浄装置10の取付・取り外しや保守点検の際などに水路を随時遮断することができる。なお、止水栓112は、衛生洗浄装置10に設けてもよく、または、衛生洗浄装置10とは別体の要素として水道または貯水タンクなどの給水源の分岐22の近傍に設けてもよい。
【0049】
止水栓112の下流には、ストレーナ114、電磁開閉弁120、調圧弁130が設けられている。ストレーナ114は、例えば80メッシュ程度のフィルタであり、給水に混入した異物を除去する。電磁開閉弁120は、第1乃至第3実施形態に関して前述した如くである。調圧弁130は、給水圧が高い場合に、所定の圧力範囲に調整する役割を有する。また、ストレーナ114と電磁開閉弁120との間や、電磁開閉弁120と調圧弁130との間には、バキュームブレーカ118、122が適宜設けられている。これらバキュームブレーカは、水路の水抜きの際に外部から空気を取り込んで水抜きを促進させる。
【0050】
調圧弁130の下流には、安全弁140が設けられている。安全弁140は、水路の圧力が上昇した時に開いて、水を便器のボウルに排出する。安全弁140を設けることにより、例えば調圧弁130の故障などによりその2次側の水路の圧力が上昇した場合でも、衛生洗浄装置10の内部に漏水が生ずることを防止できる。
【0051】
安全弁140の下流には、熱交換ユニット200が設けられ、その下流には、バキュームブレーカ210、逆止弁220、バキュームブレーカ230から、流量調整弁ユニット300を経てノズルユニット400が接続されている。逆止弁220は、水路の圧力が低下した場合などに、ノズルユニット400から水路への水の逆流を防止する。その前後に設けられたバキュームブレーカ210、230は、逆止弁220の1次側と2次側の水路の水抜きを促進させる。流量調整弁ユニット300は、ノズルユニット400に設けられている吐水ノズルやノズル洗浄室への給水の切替や水勢の調整をする。なお、流量調整弁ユニット300の2次側に、水に脈動を与える脈動ユニットなどを設けてもよい。
【0052】
そして、このような水路110に水抜弁100を設け、この水抜弁100の開閉と連動して、水洗トイレまたは真空式トイレの排水を実行させることにより、確実且つ容易に、トイレ装置の全体の水抜きを実行できる。
【0053】
次に、本実施形態のトイレ装置を寒冷地に設置する場合の態様について説明する。
図15〜図17は、寒冷地に設置するトイレ装置の具体例を表す模式図である。
【0054】
図15に表したトイレ装置の場合、便器950にヒータ980が付設され、トラップ932に溜まった水を加熱して凍結を防止することができる。また、衛生洗浄装置10とタンク910に給水するための給水管21は地下の不凍帯まで埋設され、水抜き栓995により水抜きが可能とされている。止水栓20(図1、図5参照)を開いた状態で水抜き栓995により水抜きをした場合、衛生洗浄装置10の電磁弁120の1次側まで水抜きすることも可能である。
【0055】
本発明の第1及び第2実施形態によれば、図4に関して前述したように、タンク910の水抜きをすることにより、トラップ932は殆ど水がない状態を形成することも可能である。従って、このままでも凍結などによるトラブルを回避できる場合もあるが、図15に表した具体例によれば、ヒータ980を用い、トラップ932に残った水を加熱して凍結を防ぐことにより、より確実に凍害を防止できる。
【0056】
図16に表したトイレ装置の場合、凍結防止のために、トイレ装置が設置されたトイレ空間の室内暖房器990が付設されている。この場合には、タンク910に至るまでの給水管21内の水が凍結するおそれがある。このため、衛生洗浄装置10及びタンク910内の水を水抜きした後に、給水管21内の水を水抜き栓995により水抜きして凍結を防止する。この場合にも、本発明の第1及び第2の実施形態により衛生洗浄装置10とタンク910の水抜きを連動して実行することができる。
【0057】
図17に表したトイレ装置の場合、トラップ932に溜まる水の凍結防止のために、トラップ932を不凍帯に埋設している。この場合も、第1及び第2の実施の形態により衛生洗浄装置10とタンク910の水抜きを実行し、また、水抜き栓995により給水管21の水抜きをすればよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、衛生洗浄装置10の水抜きと連動させて水洗式トイレの水抜きや真空式トイレの排水を自動的に実行させることができる。例えば、寒冷地において凍結防止のために水抜きをする場合に、使用者は衛生洗浄装置の水抜きと、水洗式トイレの水抜きあるいは真空式トイレの排水を別々に実行する必要がなく、衛生洗浄装置の水抜きのみを実行すればよく、使い勝手のよいトイレ装置を提供できる。
【0059】
また、例えば、キャンピングカーや列車、航空機などに衛生洗浄装置を搭載する場合、これらを低温環境下で駐車・駐機する際には、水抜きが必要となる場合が多い。本実施形態によれば、このような場合でも、使用者は衛生洗浄装置の水抜きと、水洗式トイレの水抜きあるいは真空式トイレの排水を別々に実行する必要がなく、衛生洗浄装置の水抜きのみを実行すればよく、使い勝手のよいトイレ装置を提供できる。
【0060】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図1乃至図17に関して前述した各具体例が有する特徴は、技術的に可能な範囲において適宜組み合わせることができ、これらも本発明の範囲に包含される。
例えば、図6、図7、図13に表した具体例において、ステップS120をステップS110とステップS180との間に行ってもよい。このようにすると、水抜きトリガがあったことを使用者などに対して分かり易くすることができる。
また例えば、図4や図6に表した具体例においてステップS140及びステップS150を省略したり、あるいは図7に表した具体例においてステップS140及びステップS200を省略することで、水抜弁と排水弁の開動作を連動して略同時に実行させることもできる。このようにすると、水抜き動作を同時に行うため、水抜き動作に必要な時間を短縮することができる。ただし、この場合には水抜弁・電磁弁を別途閉じる必要がある。
【0061】
また、衛生洗浄装置の構造や、その初期化動作の内容についても、図1乃至図17に関して前述したものには限定されず、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。例えば、吐水ノズルは、水圧により進退するものであってもよく、あるいはひとつあるいは複数のシリンダ体の内部にスライド可能とされた多段式の構造を有するものであってもよい。
【0062】
また、例えば、前述した制御を行う制御部は必ずしも衛生洗浄装置の内部に設ける必要はなく、衛生洗浄装置が設置される構造物の他の場所に設けてもよい。また、衛生洗浄機能部を備えたトイレ装置の場合にも、前述した制御を行う制御部は必ずしもトイレ装置の内部に設ける必要はなく、トイレ装置が設置される構造物の他の場所に設けてもよい。同様に、水抜きトリガを出力する操作部についても、必ずしも衛生洗浄装置やトイレ装置と一体的に設ける必要はなく、衛生洗浄装置やトイレ装置が設置される構造物の他の場所に設けてもよい。これらの場合には、同じ構造物に設けられた他の機器等の操作部や制御部とまとめることができるので、管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるトイレ装置のブロック図である。
【図2】第1実施形態のトイレ装置を例示する模式斜視図である。
【図3】第1実施形態のトイレ装置の一部断面模式図である。
【図4】第1実施形態のトイレ装置の水抜き動作を例示するフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態にかかるトイレ装置のブロック図である。
【図6】第2実施形態のトイレ装置の水抜き動作を例示するフローチャートである。
【図7】第2実施形態の変型例にかかる水抜き動作のフローチャートである。
【図8】本発明の第3実施形態にかかるトイレ装置のブロック図である。
【図9】第3実施形態のトイレ装置を例示する模式斜視図である。
【図10】第3実施形態のトイレ装置の一部断面模式図である。
【図11】第3実施形態のトイレ装置において実行される水抜き動作のフローチャートである。
【図12】本発明の第4実施形態にかかるトイレ装置のブロック図である。
【図13】第4実施形態のトイレ装置において実行される水抜き動作のフローチャートである。
【図14】本発明の衛生洗浄装置10の水路系を例示するブロック図である。
【図15】寒冷地に設置するトイレ装置の具体例を表す模式図である。
【図16】寒冷地に設置するトイレ装置の具体例を表す模式図である。
【図17】寒冷地に設置するトイレ装置の具体例を表す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
10 衛生洗浄装置、 12 本体部、 14 便座、 16 便蓋、 20 止水栓、 21 給水管、 22 分岐、100 水抜弁、110 水路、112 止水栓、114 ストレーナ、118 バキュームブレーカ、120 電磁弁、130 調圧弁、140 安全弁、200 熱交換ユニット、210 バキュームブレーカ、220 逆止弁、230 バキュームブレーカ、300 流量調整弁ユニット、400 ノズルユニット、500 制御部、550 供給検出部、700 操作部、900 トイレ、910 タンク、915 ボールタップ、916 オーバーフロー管、920 排水弁、922 浮子、930 ボウル、932 トラップ、935 ハンドル、940 開閉弁、950 便器、955 排水路、960 排水弁駆動部、962 接続コード、970 排水路、980 ヒータ、990 室内暖房器、995 水抜き栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに貯留した水を排水弁を介して水洗便器のボウルに流すトイレに付設される衛生洗浄装置であって、
吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、
給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く水路と、
前記水路の途上に接続され前記水路の水の少なくとも一部を前記ボウルに排水可能とした水抜弁と、
前記水抜弁を開閉させることによる前記水路の水抜きと、前記排水弁を開かせることによる前記タンクの排水と、を連動して実行可能とした制御部と、
を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記給水源から前記水路への水の供給を検出する供給検出部をさらに備え、
前記水路の水抜きにおいて前記供給検出部により前記給水源から前記水路への水の供給が停止されていないと判断した時には、前記制御部は、前記水路の水抜きを実行しないことを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記給水源から前記水路への水の供給を検出する供給検出部をさらに備え、
前記水路の水抜きにおいて前記供給検出部により前記給水源から前記水路への水の供給が停止されていないと判断した時には、前記制御部は、音及び光の少なくともいずれかにより報知することを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記水路の水抜きにおいて前記水抜弁を閉じさせた後に、前記タンクの排水のために前記排水弁を開かせることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
減圧された排水路と便器との間に開閉弁が設けられたトイレに付設される衛生洗浄装置であって、
吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、
給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く水路と、
前記水路の途上に接続され前記水路の水の少なくとも一部を前記ボウルに排水可能とした水抜弁と、
前記水抜弁を開閉させることによる前記水路の水抜きと、前記開閉弁を開かせることによる前記便器のボウルから前記排水路への排水と、を連動して実行可能とした制御部と、
を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記水路の水抜きにおいて前記水抜弁を閉じさせた後に、前記排水路への排水のために前記開閉弁を開かせることを特徴とする請求項5記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記水路を開閉する電磁弁と、
前記給水源から前記水路への水の供給を検出する供給検出部と、
をさらに備え、
前記水路の水抜きにおいて前記供給検出部により前記給水源から前記水路への水の供給が停止されていると判断した時には、前記制御部は、前記電磁弁も開かせることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
タンクに貯留した水を排水弁を介して水洗便器のボウルに流すトイレと、
吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、
給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く水路と、
前記水路の途上に接続され前記水路の水の少なくとも一部を前記ボウルに排水可能とした水抜弁と、
前記水抜弁を開閉させることによる前記水路の水抜きと、前記排水弁を開かせることによる前記タンクの排水と、を連動して実行可能とした制御部と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項9】
減圧された排水路と便器との間に開閉弁が設けられたトイレと、
吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、
給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く水路と、
前記水路の途上に接続され前記水路の水の少なくとも一部を前記ボウルに排水可能とした水抜弁と、
前記水抜弁を開閉させることによる前記水路の水抜きと、前記開閉弁を開かせることによる前記便器のボウルから前記排水路への排水と、を連動して実行可能とした制御部と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−81948(P2008−81948A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260490(P2006−260490)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】