衛生洗浄装置及び発熱量制御方法及びそれを実行するためのプログラム
【課題】ヒータ発熱量を位相制御により電力可変する温水洗浄装置に於いて、位相制御により発生する電源高調波電流の低減とフリッカの発生防止を行う。
【解決手段】衛生洗浄装置21において、各種加熱器(温水ヒータ2、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4、室暖ヒータ5)の発熱量を制御する制御手段をそなえ、前記制御手段は、位相制御の点弧角の所定基準値に僅かなゆらぎを加えることで、電源に生ずる高調波の発生周波数を分散させることができる。
【解決手段】衛生洗浄装置21において、各種加熱器(温水ヒータ2、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4、室暖ヒータ5)の発熱量を制御する制御手段をそなえ、前記制御手段は、位相制御の点弧角の所定基準値に僅かなゆらぎを加えることで、電源に生ずる高調波の発生周波数を分散させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水洗浄便座における温水器の湯温制御、便座温度制御、乾燥の温風温度制御、室内暖房(室暖)の温風温度制御や、電気シャワーにおける温水器の湯温制御などの電力の位相制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の制御手段は、図13に示すように、交流電源1へ温水ヒータ2、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4、室暖ヒータ5等の加熱器に、それぞれの加熱器を個別にスイッチングする各トライアック6〜9とを直列に接続し、温度設定部10で設定する制御の目標値(温水温度目標値、便座温度目標値、乾燥温度目標値、室暖温度目標値)と、温度検出部11で検出した各負荷の温度(温水温度、便座温度、乾燥温度、室暖温度)を点弧角制御部12で比較し制御に必要な位相角を算定しトリガー部13へ出力する。点弧角制御部12は、ゼロクロス点検出部14により検出されたゼロクロス点を基準にして所定の位相角となる時間値をトリガー部13に出力する。トリガー部7はパルス状の点弧信号を発生しトライアック6〜9に加え,トライアック6〜9の点弧角を制御して、位相制御により各負荷に印加する実効電流を増減し、所望の温水温度、便座温度、乾燥温度、室暖温度を得るように制御していた(特許文献1参照)。
【0003】
この場合、商用電源から負荷に流れ込む電流波形は正弦波ではなくなり、多くの高調波を含む歪んだ波形になる。一般に正半波(上半波)と負半波(下半波)が同じ点弧角で位相制御された場合、負荷に流れ込む電流は電源周波数の奇数倍の高調波(奇数次高調波)を持つようになる。例えば電源周波数が60Hzの場合、位相制御されると180Hz、300Hz、420Hzというような60Hz以外の周波数が現れる。また、負荷に供給する電力を増減するために、点弧角を変えて印加する実効電圧を変化させると、周期的に変化させた場合には、120Hz、240Hz、360Hzといった電源周波数の偶数倍の高調波(偶数次高調波)や、さらに、1サイクル毎に点弧角を増減した場合には、30Hzの奇数次の高調波も現れるようになる。そして、正弦波半波の中央付近で点弧する場合が一番、発生する高調波電流のレベルが高い。
【0004】
このため他の実施例では、高レベルの高調波電流が発生する点弧角を避けて点弧する位相制御方法もある(特許文献2参照)。
【0005】
さらに他の実施例では、電源高調波電流が奇数次高調波に集中しないように、複数の全波間の点弧角において非対称性を生成することで偶数次高調波を増加させ奇数次高調波を減らすような例もある。例えば目標の供給電力を与える基準点弧角αに対して、実際はαよりも大きい点弧角α’で最初の全波を点弧し、基準点弧角αよりも小さい点弧角α”で次の全波を点弧し、これを繰り返すことで時間平均的に見た場合、負荷に目標の電力を与える方法である。この結果、電源高調波電流において偶数次高調波が生まれ、代わりに奇数次高調波の低減を実現している(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−107434号公報
【特許文献2】特開平8−255027号公報
【特許文献3】特開平10−271891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような位相制御方法でも、まだ、電源周波数の整数倍の周波数において、高いレベルの高調波電流が発生しやすく、同じ商用電源系統につながる他の機器に悪影響を与え
る場合がある。
【0007】
具体的な悪影響としては、次のようなことがあげられる。
【0008】
高調波電流が多い機器は力率が低い。このため、実際に消費される電力より皮相電力が大きくなるため入力電流が多く流れる。従って電力設備に余裕が必要になる。
【0009】
また電源は発電所から送電線や変電所・柱上トランスなどを通って各家庭に接続されているが、その電源ラインにはインピーダンスが存在している。そして高調波電流が流れるとそのインピーダンスにより電圧降下が発生し、結果として電源電圧波形が高調波を含んだ波形になる。商用電源に接続して使用される機器は、普通は商用周波数での使用を前提に作られているので、高調波が重畳された電圧波形が印加されると思わぬ不具合につながることがある。
【0010】
高調波が重畳された電圧波形により電源ラインに接続された機器や配電設備で悪影響を受けた例としては、進相コンデンサに高調波電流が流れて発熱したり、トランスがうなったり、電圧のピーク値が下がってスイッチング電源が正常動作しなくなったりした事例がある。
【0011】
また、上にも述べたが、電源ラインにはインピーダンスが存在しているため、負荷に供給する電力を増減すると、電圧降下量も変化し、同じ電力線系統の他の機器に印加される電圧も増減する。増減の頻度が多いと他の機器が照明機器である場合には、いわゆるフリッカ現象が起き、照明のちらつきによる不快感を人に与えることになる。人がちらつき感を覚えるのは、明るさの変化度合いにもよるが、明るさの変化頻度がだいたい1秒間に60回以下になった場合である。
【0012】
上述の従来の構成例の特許文献2の方法で高調波電流レベルを下げるには、大きな高調波を発生する点弧角を避けて位相制御するため、点弧角が急激に変化する点が生じて急激な電力変化や回転数変化が起き、実用化できない場合や使用感が悪くなる場合がある。
【0013】
また、上述の従来の構成の特許文献3の方法で高調波電流レベルを下げるには、大きい点弧角α’と次に続く小さい点弧角α”との差を大きくしなければならない。しかし、この差をあまり大きなものにすると先ほどのフリッカが起こり、人に不快感を与える場合がある。
【0014】
以上のように位相制御で負荷に与える電力を制御する場合には、電源高調波電流と同時にフリッカについても考慮する必要があった。
【0015】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電源波形を歪ませる高調波電流の発生が少なく、電源1サイクル毎の電源電圧の変化も少なく、照明器具のフリッカが実用上無視できる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記従来の課題を解決するために、位相制御に於いて電源周波数の高調波成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように所定基準点弧角を中心として点弧角を細かくゆらぎ状に変化させ、平均値として所望の基準値点弧角を得て電気ヒータ等の加熱器へ供給する電力を制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の衛生洗浄装置は、加熱器の位相制御時に発生する電源高調波電流を、電源周波
数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように所定基準点弧角を中心として点弧角を細かく変化させることにより、位相制御の全ての点弧角において、高調波電流の発生を所定の許容範囲に抑え、高出力で、円滑な電力制御作用を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の発明は、交流電源の位相制御により加熱器の発熱量を制御する制御手段を備えた衛生洗浄装置において、前記制御手段は、電源高調波電流成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように点弧角を変化させたので、高調波電流の発生レベルを低下させることができる。そして、照明器具のフリッカの発生を抑えることができる。
【0019】
第2の発明は、特に第1の発明の制御を、点弧角の制御に必要な所定基準値(加熱器の所定発熱量を得るための電力出力における点弧角の基準値を示す)に対して点弧角を大または小に任意に変化させることとした。すなわち、所定基準値に対して、所定基準値以上または以下である大きな角度または小さな角度、または所定基準値に対しての大きさも種々の大きさとした角度となるように任意に点弧角を変化させ、揺らがせることで、点弧角と関連して特異的に発生する高調波電流を電源周波数の整数倍以外の他の周波数成分に容易に分散化でき、各サイクル毎の電源電圧の変化が小さく、フリッカの発生を抑えることができる。
【0020】
第3の発明は、特に第1の発明の制御を、所定基準値に対して点弧角を全波毎に変化させることとしたことにより、交流波形の正負が上下対象となるため、電源供給側となる柱上トランス等への負荷が軽減できる。また、点弧角と関連して特異的に発生する高調波電流を電源周波数の整数倍以外の他の周波数成分への分散化を迅速に行なうことができ高調波電流を減少させることができる。
【0021】
第4の発明は、特に第1の発明の制御を、所定基準値に対して点弧角を半波毎に変化させることとしたことにより、点弧角と関連して特異的に発生する高調波電流を電源周波数の整数倍以外の他の周波数成分への分散化を更に迅速に行なうことができる。
第5の発明は、特に第1の発明の制御に、所定基準値に対して点弧角を所定の範囲で変化させることとしたので、点弧角の変化幅が制限されて、隣接するサイクルの電圧降下の変化幅が制限され、フリッカの発生を抑えることができる。
【0022】
第6の発明は、特に第1の発明から第5の発明の制御に於いて、平均点弧角が略所定基準値になるように点弧角を変化させたので、単位時間あたりの加熱器の発生電力に変動が無く円滑な負荷の温度制御が出来る。平均点弧角については、もちろん所定基準値と同値になることが望ましいが、所定の電力量が得られ、機器の制御に問題がなければ略基準点弧角になるような平均点弧角となるように変化を制御しておけばよく、問題はない。
【0023】
第7の発明は、特に第1から第6の発明の制御における点弧角の所定基準値に対して変化させる変化幅を、所定基準値に対してランダムに変化させることとしたので、点弧角と関連して特異的なパターンで発生する高調波電流に規則性を持たせずに分散化でき、より高調波電流の減少度を高め、電源電圧の変化にも規則性が現れない。
【0024】
第8の発明は、特に第7の発明の制御における点弧角の所定基準値に対してランダムに変化させる変化幅を決定する乱数を、最長系列符号から生成することとしたので、制御処理を行うマイクロコンピュータ内部において乱数テーブルを持たなくてもシフトレジスタを基本とする処理で簡単に乱数を生成できる。
【0025】
第9の発明は、特に第8の発明の制御の最長系列符号を生成するシフトレジスタのビット数を3ビット以上とすることで、乱数の個数を7個以上にでき実質上乱数に近い点弧角
の揺らぎを簡単に実現できる。
【0026】
第10の発明は、特に第1から第7の発明の制御に、点弧角の変化幅を所定基準値に対して予め設定した複数の変動幅で変化させることとしたので、制御時に変化させる全ての所定基準値での点弧角の高調波電流を試験で確認でき、予期せざる高調波電流の発生を除去できるとともに、点弧角の変化を発生させる回路を簡素化できる。
【0027】
第11の発明は、特に第1から第10の発明の制御を、点弧角の所定基準値の変化に応じて点弧角の変化幅を変えることとしたので、所定基準値が高調波電流の発生の少ない点弧角である時は、照明のフリッカに煩わされる事無く、少ないステップ数と周期で構成する点弧角の変化で高調波電流を分散化し削減できる。
【0028】
第12の発明は、特に、第1から第11の発明の制御で、位相制御の点弧角の所定基準値が0度、180度付近では点弧角の変化を停止することとしたので、点弧信号が位相角0度の前へ進みすぎたり、180度より遅れて制御され、本来180度近辺で点弧されるべきものが点弧しなかったり、本来無点弧であるべきものが反対側の半波で180度導通したりする誤点弧を防止できる。
【0029】
第13の発明は、交流電源の位相制御により衛生洗浄装置の電力制御を行なう制御方法において、電源高調波電流成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように点弧角を変化させる電力制御方法であり、高調波電流の発生レベルを低下させ、フリッカ現象の発生を抑えることができる。
【0030】
第14の発明は、第13の発明において、電力値を設定するステップと、基準点弧角を設定するステップと、前記基準点弧角に対して揺らがせて点弧角を設定するステップとを備え、前記揺らがせた点弧角の所定回数の半波の平均値は略基準点弧角となることを特徴とした発熱量制御方法としたものである。これによって、基準点弧角を揺らがせることにより、高調波電流を分散させることができる。揺らがせる点弧角は、平均点弧角が略基準点弧角になるように、揺らぎ量を予め設定しておいたり、都度算出して設定したりすることによっても、設定可能であり、同様の効果を奏する。
【0031】
第15の発明は、第13または第14の発明の発熱量制御方法の全てもしくは一部をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0032】
そして、プログラムであるので汎用コンピュータやサーバを用いて本発明の衛生洗浄装置の一部あるいは全てを容易に実現することができる。また、記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布やインストール作業が簡単にできる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における衛生洗浄装置の制御手段のブロック図を示すものである。
【0035】
交流電源1と、加熱器である温水ヒータ2、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4、室暖ヒータ5の各負荷と、トライアック6〜9と、温度設定部10と、温度検出部11と、点弧角制御部12と、トリガー部13と、点弧角制御部12と、ゼロクロス点検出部14とは従来例と同一である。本発明では点弧角制御部12とトリガー部13との間にゆらぎ制御部1
5を新たに設けた。
【0036】
温度設定部10は従来例と同様に使用者が設定した所望の温水温度目標値、便座温度目標値、乾燥温度目標値、室暖温度目標値を設定する。
【0037】
温水ヒータ2、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4、室暖ヒータ5の各負荷に設けた温度検出部11の各センサ(図示せず)は各負荷の温度(温水温度、便座温度、乾燥温度、室暖温度)を電気信号へ変換し、点弧角制御部12へ送る。点弧角制御部12は温度設定部10の値と温度検出部11の値とを比較して点弧角(以下点弧角の所定基準値という)を決め、ゼロクロス点検出部14から得た電源のゼロクロス点を基準とした点弧角の所定基準値に相当する時間値をゆらぎ制御部15へ出力する。ゆらぎ制御部15は点弧角制御部12から受けた点弧角の所定基準値を中心として電源のサイクル毎に大小に点弧角を変動させゆらぎを加えてトリガー部13へ出力する。点弧角制御部12およびゆらぎ制御部15はマイクロコンピュータ、メモリー等で構成されており、ゆらぎ制御部15のメモリーに設定された変化巾設定データに基づき点弧角を変化させた点弧信号をトリガー部13へ送る。トリガー部13はパルス信号を発生しトライアック6〜9を点弧して位相制御を行なう。
【0038】
図2は本発明の第1の実施の形態における衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図である。
【0039】
図2に示すように、便器20上に衛生洗浄装置21が装着される。タンク22は、水道配管に接続されており、便器20内に洗浄水を供給する。
【0040】
衛生洗浄装置21は、本体部23、遠隔操作装置24、便座部25および蓋部26により構成される。
【0041】
本体部23には、便座部25および蓋部26が開閉自在に取り付けられる。さらに、本体部23には、ノズル部27を含む洗浄水供給機構が設けられるとともに、制御部が内蔵されている。本体部23の制御部は、後述するように遠隔操作装置24により送信される信号に基づいて、洗浄水供給機構を制御する。さらに、便座部25には前述の便座ヒータ3が内蔵されており、本体部23には乾燥用の温風供給装置(図示せず)と、脱臭装置(図示せず)と、室内暖房用の室暖装置(図示せず)が収められている。温風供給装置と室暖装置にはそれぞれ前述の乾燥ヒータ4と室暖ヒータ5とが内臓されている。
【0042】
図3は図2の遠隔操作装置24の一例を示す模式図である。
【0043】
図2に示すように、遠隔操作装置24は、複数のLED(発光ダイオード)28、複数の調整スイッチ29〜34、おしりスイッチ35、ビデスイッチ36、乾燥スイッチ37、脱臭スイッチ38、室暖スイッチ39および停止スイッチ40を備える。
【0044】
使用者により調整スイッチ29〜34、おしりスイッチ35、ビデスイッチ36、乾燥スイッチ37、脱臭スイッチ38、室暖スイッチ39および停止スイッチ40が押下操作される。それにより、遠隔操作装置24は、後述する衛生洗浄装置21の本体部23に設けられた制御部に所定の信号を無線送信する。本体部23の制御部は、遠隔操作装置24より無線送信される所定の信号を受信し、洗浄水供給機構等を制御する。
【0045】
例えば、使用者が、おしりスイッチ35またはビデスイッチ36を押下操作することにより図2の本体部23のノズル部27が移動して洗浄水が噴出する。調整スイッチ31の「高」を押下操作することにより図2の本体部23の洗浄水供給機構の温水器の温水温度
目標値が変更され、温水温度が上昇する。停止スイッチ40を押下操作することによりノズル部27からの洗浄水の噴出が停止する。
【0046】
また、乾燥スイッチ37を押下操作することにより人体の局部に対して衛生洗浄装置21の温風供給装置(図示せず)より温風が噴出される。脱臭スイッチ38を押下操作することにより衛生洗浄装置21の脱臭装置(図示せず)により周辺の脱臭が行われる。さらに室暖スイッチ39を押下操作することによりトイレ全体に衛生洗浄装置21の室暖装置(図示せず)より温風が噴出される。
【0047】
使用者が、調整スイッチ29〜34を押下操作することにより、おしりスイッチ35やビデスイッチ36を押下操作中であれば、図2の衛生洗浄装置21の本体部23のノズル部27の位置が変化したり、ノズル部27より噴出される洗浄水の温度が変化したり、ノズル部27より噴出される洗浄水の圧力が変化する。また、乾燥スイッチ37や室暖スイッチ39を押下操作中であれば、温風温度が変化する。さらに、調整スイッチ29〜34の押下に伴って複数のLED(発光ダイオード)28が点灯する。
【0048】
以下、本発明の一実施例の衛生洗浄装置の洗浄水供給機構について説明を行う。図4は本発明の一実施例の衛生洗浄装置の洗浄水供給機構の構成を示す模式図である。
【0049】
洗浄水供給機構は図1で説明した制御手段の、温水ヒータ2を制御する構成である。
【0050】
図4に示す本体部23は、制御部41、分岐水栓42、ストレーナ43、逆止弁44、定流量弁45、止水電磁弁46、流量センサ47、熱交換器48、給水温度センサ49、温水温度センサ50、サーモスタット51、ポンプ52、切替弁53およびノズル部27を含む。また、ノズル部27は、おしりノズル54、ビデノズル55およびノズル洗浄用ノズル56を含む。
【0051】
温水温度センサ50は図1における温度検出部11の中のひとつのセンサである。
【0052】
図4に示すように、水道配管57に分岐水栓42が介挿される。また、分岐水栓42と熱交換器48との間に接続される配管58に、ストレーナ43、逆止弁44、定流量弁45、止水電磁弁46、流量センサ47および給水温度センサ49が順に介挿されている。さらに、熱交換器48と切替弁53との間に接続される配管59に、温水温度センサ50およびポンプ52が介挿されている。
【0053】
まず、水道配管57を流れる浄水が、洗浄水として分岐水栓42によりストレーナ43に供給される。ストレーナ43により洗浄水に含まれるごみや不純物等が除去される。次に、逆止弁44により配管58内における洗浄水の逆流が防止される。そして、定流量弁45により配管58内を流れる洗浄水の流量が一定に維持される。
【0054】
また、ポンプ52と切替弁53との間にはリリーフ管60が接続され、止水電磁弁46と流量センサ47との間には、逃がし水配管61が接続されている。リリーフ配管60には、リリーフ弁62が介挿されている。リリーフ弁62は、配管59の特にポンプ52の下流側の圧力が所定値を超えると開成し、異常時の機器の破損、ホースの外れ等の不具合を防止する。一方、定流量弁45によって流量が調節され供給される洗浄水のうちポンプ52で吸引されない洗浄水を逃がし水配管60から放出する。これにより、水道供給圧に左右されることなくポンプ52には所定の背圧が作用することになる。
【0055】
次いで、流量センサ47は、配管58内を流れる洗浄水の流量を測定し、制御部41に測定流量値を与える。また、給水温度センサ49は、配管58内を流れる洗浄水の温度を
測定し、制御部41に温度測定値を与える。
【0056】
続いて、熱交換器48には、温水ヒータ2が内臓され、制御部41により与えられる制御信号に基づいて、温水ヒータ2が通電制御され、配管58を通して供給された洗浄水を加熱する。温水温度センサ50は、熱交換器11により加熱される洗浄水の温度を測定し、温水温度信号を制御部41に与え、制御部41は温水温度が所望の温水温度目標値となるように温水ヒータ2の加熱量をフィードバック制御する。サーモスタット51は、熱交換器48からの温水温度を検知し、所定の温度を超過した場合に温水ヒータ2への電力供給を遮断する。
【0057】
なお、上述の所望の温水温度目標値は、遠隔操作装置24の調整スイッチ31,32により設定される値であり、図1の温度設定部10の設定項目のひとつを表している。
【0058】
ポンプ52は、熱交換器48により加熱された洗浄水を制御部41により与えられる制御信号に基づいて、切替弁53に圧送する。切替弁53は、制御部41により与えられる制御信号に基づいて、ノズル部27のおしりノズル54、ビデノズル55およびノズル洗浄用ノズル56のいずれか1つに洗浄水を供給する。それにより、おしりノズル54、ビデノズル55およびノズル洗浄用ノズル56のいずれか1つより洗浄水が噴出される。
【0059】
洗浄水供給機構における制御部41は、図2の遠隔操作装置24から無線送信される信号、流量センサ47から与えられる測定流量値、給水温度センサ49から与えられる温度測定値および温水温度センサ50から与えられる温水温度信号に基づき止水電磁弁46、熱交換器48、ポンプ52および切替弁53に対して制御信号を与える。
【0060】
次に図1で説明した制御手段における位相制御の動作の説明をする。
【0061】
図5は、ゆらぎ制御部15に与えた電源サイクル毎の点弧位相角の変化を示す図であり、同図の点線で示す点弧角の所定基準値αを中心として各サイクル(全波)毎に異なる変化角度(Δαn)だけ変化した点弧角α1、α2、αnで夫々1サイクル目、2サイクル目、nサイクル目の点弧角を変化させている。尚、各サイクルの正負のサイクルの点弧角は同一である。
【0062】
(表1)は、ゆらぎ制御部9が点弧角の所定基準値αに与える図5ついて述べたゆらぎ角度(Δθn)のサイクル順の条件表の1例であり、変化角度の最高値をレベル1で±1.13度、レベル2で±2.26度、レベル3で±3.4度、レベル4で±4.53度とし、正と負の最大値間を15段階に分けて乱数表によりサイクル順に割り当てて変化させた例を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(表1)の左段のnは1から15まで変わると再び1に戻り、同じゆらぎを繰り返すため、ゆらぎ変化は周期的に同じ変化を繰り返すことになる。
【0065】
ゆらぎの角度の種類(乱数の個数)は、多いほど偏りのない乱数を得られるが、多すぎるとゆらぎの周期が長くなり、短時間に電源高調波を測定すると測定毎に違った結果が得られるという不具合が起こる。
【0066】
(表1)において、レベル1の条件では1サイクル目を所定基準値+1.13度とし、2サイクル目では所定基準値−0.16度として以下15サイクルを1周期として夫々のサイクルでの点弧角を変化させた。
【0067】
なおレベル0はゆらぎ変化を与えないことを示す。
【0068】
上のように構成された衛生洗浄装置を用いて温水ヒータ2の発熱量を制御した場合の動作、作用を以下説明する。
【0069】
1200ワットの温水ヒータ2の負荷において、表1のゆらぎ変化角度表の条件を加えた場合と加えない場合の高調波発生の状況と照明のフリッカの発生を調べた結果を以下述べる。
【0070】
図6は、点弧角の所定基準値を90度(発熱量約600ワット)として、表1のゆらぎ角度表のレベル3の変化を加えて位相制御した時、所定の許容範囲をJIS C6100
0−3−2限度値―高調波電流発生限度値として、これに基づいて行なった実験による第40次までの電源高調波電流の分布を示す。
【0071】
同図6に於いて、白色の線は高調波の次数毎のJIS C61000−3−2に規定された限度値(以下限度値という)を示し、黒色の線は実測値を示す。
【0072】
いずれの高調波も限度値を下回り、40次までの各次数の高調波の限度値と実測値との比率を示す余裕度の内の最少の余裕度は35.1%を示す良好な結果が得られ、同時に行なった照明器具のフリッカ試験でもフリッカが観測されなかった。
【0073】
図7は、点弧角の所定基準値を90度として、ゆらぎ変化なしの時の電源高調波電流の分布を示す。実測値は13次高調波電流から上の奇数次高調波電流が全て限度値を超過していることで、高調波電流の発生が大きいことを示している。また、同時に行なった照明器具のフリッカ試験ではフリッカが観測されなかった。
【0074】
図6と図7を比較すると図6では偶数次高調波電流が生じていて、点弧角のゆらぎ変化により高調波電流の分散が生じていると判断できる。
【0075】
さらに図7では電源周波数の整数倍の周波数の電流成分しか表示されていないが、本発明のように点弧角をランダムにゆらがせると高調波電流の周波数成分は、電源周波数の整数倍以外の周波数にも発生する。
【0076】
(表1)におけるゆらぎ変化は周期的に同じ変化を繰り返しており、この繰り返し周波数は本実施の形態の場合は、電源周波数60Hzの15分の1の4Hzとなる。実はゆらがせた場合の高調波電流の周波数成分は、乱数が一巡する周期に依存し、乱数が15個では電源周波数の15サイクルで一巡するので、電源周波数の整数倍の各周波数を中心に4Hz間隔で分散される。例えば180Hzの3次高調波電流は、揺らがせると180Hzを中心に高い方では184Hz、188Hz、192Hz、・・・、低い方では176Hz、172Hz、168Hz、・・・と、電源周波数の整数倍のところにあった高調波電流成分が4Hz間隔で周囲の周波数に分散され、結果的に高いレベルの高調波電流成分が減少する。
【0077】
図8は点弧角の所定基準値を90度として、表1のゆらぎ角度表のレベル3の変化を加えて位相制御した時のフーリエ解析結果である。縦軸は高調波電流レベルの相対値であり、ひずみのない60Hzの正弦波の振幅を基準の1としたものである。
【0078】
このように点弧角をゆらがせた場合は、電源周波数60Hzの奇数倍の各周波数を中心に4Hz間隔で分散された高調波電流が存在している。
【0079】
図9は図8との比較のために点弧角の所定基準値を90度として、+3.4度と−3.4度の2つの点弧角を1サイクル毎に交番させて位相制御した時のフーリエ解析結果である。電源周波数の2サイクル毎に同じ点弧角が繰り返されるため、30Hzの奇数倍の周波数のところに高調波電流が存在している。しかもこの30Hzの奇数倍の高調波電流は990Hzから2130Hzの周波数において60Hzの奇数倍の高調波電流レベルよりも高くなっている。さらに、図9の30Hzの奇数倍の高調波電流は、点弧角をゆらがせた場合の図8の同じ周波数の高調波電流レベルよりもかなり高いレベルの高調波電流となっている。さらに付け加えると、乱数の種類を15個よりも多く、例えば45個にすると、乱数が一巡する周期が電源周波数の45サイクルになるため電源周波数60Hzの45分の1の1.33Hzとなり、電源周波数の整数倍のところにあった高調波電流成分がさらに細かい1.33Hz間隔で周囲の周波数にさらに細かく分散され、結果的に高いレベ
ルの高調波電流成分がさらに減少することになる。
【0080】
図10は、点弧角の所定基準値を90度とし、(表1)に示すゆらぎ角度変化表のレベル1から4までと、ゆらぎ変化なしの条件(レベル0)での最少余裕率の観測データを示す図である。
【0081】
最小余裕率は、ゆらぎ変化なしでは−42%、ゆらぎ変化レベル1では−30%、レベル2では−0.3%限度値を超えているが、レベル3では35.1%、レベル4では36.5%の余裕が生じている。このとき、同時に行なったフリッカの観測ではゆらぎ変化のレベル0からレベル3までは観測されなかったが、レベル4ではわずかにフリッカが観測された。これは、レベル4では変化幅がレベル3よりも大きくなっているが、変化幅が大きくなりすぎるとフリッカ現象を誘引するからである。従って、所定の許容範囲をJISの基準とした場合に、最少余裕率とフリッカの観測からレベル3のゆらぎ変化で良好な結果を得ることができた。従って、1200Wの電熱負荷に於ける点弧角の所定基準値が90度の場合のゆらぎ変化はレベル3が最も好ましい値となった。
【0082】
本実施の形態の発熱量制御方法で衛生洗浄装置の加熱器が制御される場合、商用電源の配電盤から分岐された屋内配線の末端で並列に、または隣接して接続される電気機器に照明器具が含まれる場合、その照明器具のフリッカ現象の発生が防止される。通常、家庭内で使用される衛生洗浄装置は、交流電源の配線の都合上室内の照明機器と隣接して接続される可能性が非常に高く、照明との同時使用において、フリッカ現象が生じると使用者に非常に不快感を与えることになる。よって、高調波の許容範囲における余裕率とフリッカ現象発生状況によるゆらぎ変化レベルの決定は、必要不可欠である。よって、本実施の形態のように所定の許容範囲に対する余裕率と、フリッカ現象の発生に基づいて点弧角を揺らがせ変動させるレベルを決定することが望ましいが、そうでない電気機器の制御においては、余裕率にのみ基づいて決定してもよい。
【0083】
次に、図11はゆらぎ変化をレベル3に固定し、点弧角の所定基準値を55度(発熱量1000W)、74度(発熱量800W)、104度(発熱量400W)、124度(発熱量200W)に変化させて、高調波電流の発生とフリッカを試験したが、最少余裕度が夫々45.3%、27.9%、35.1%、31.6%、40.9%を示しいずれも良好な結果が得られ、フリッカも発生しなかった。
【0084】
(表1)に示すゆらぎ変化角度について更に説明を加えると、所定基準値に対して位相角を大小に変化させているが、これによりゆらぎ変化分の1周期(乱数の1周期)当たりの平均値をゼロとし、ゆらぎ変化の1周期(15サイクル)毎に所定基準値を実現している。
【0085】
次に所定基準値に対して位相角を全波毎に変化させているが、これは正負のサイクルの実効値が異なると電源に直流分を生じさせ、他の電気器具のトランスに磁気飽和などの悪影響を及ぼすのでこれを避ける為である。
【0086】
しかしながら、ゆらぎ変化の1周期は15サイクルで構成しているので表1の表には無いが、ゆらぎ変化の最初の1周期と次の1周期で変化の方向を逆にすれば電源に悪影響を及ぼすことも無く半波毎に変化させることも出来、より細かく高調波電流の分散化を行うことが出来る。
【0087】
更に、表1では所定基準値に対してゆらぎ変化を所定の範囲内で変化させて、高調波電流の分散化を規制し、照明のフリッカ現象の発生を防いでいる。
【0088】
更に、所定基準値に対してゆらぎ変化の変動幅を予め設定した値に決めている。これは負荷の消費電力が小さくなれば表1のゆらぎ変化角度表より少ないステップ数と少ないゆらぎ変化巾で高調波電流の削減が可能である。
【0089】
更に、ゆらぎ点弧角を決める場合には、図11に示す様に点弧角が0度又は180度へ近づくにつれて、最小余裕度が大きくなる傾向があり、概ね点弧角30度以下と150度以上では、同一の点弧角の変動幅に対する電力変化も小さくなるのでフリッカの発生も減少し、ゆらぎ変化の変化巾を小さくしたり、変化ステップを少なくすることができる。更に、点弧角が0度、又は180度近辺では変動幅をもうけなくても高調波電流の発生は少なく、点弧角度が0度より進んで点弧の失敗を生じたり、又は180度より遅れて逆位相で誤点弧することを防止できる。
【0090】
本実施の形態の機器制御においては、望ましくは、点弧角の所定基準値が0度又は180度の±5度以内で制御する場合であれば、変動させなくても、本実施の形態による所定の許容範囲を逸脱することなく、高調波の発生を低減させることが可能となる。
【0091】
更に、(表1)に示すゆらぎ変化レベルと周期は、便座ヒータ、乾燥ヒータ、室暖ヒータなど負荷の種類とワットの大きさが異なれば、他のゆらぎ変化角度と周期の条件でも高調波電流を限度値以下に削減し、照明器具へのフリッカの発生を防ぐことができるので、表1の条件に制約されることはない。
【0092】
更に、ゆらぎ変化を起こすための乱数を表1のような表形式で持たずに最長系列符号で生成するようにすれば、制御をつかさどるマイクロコンピュータの処理も更に簡単に行えるようになる。
【0093】
更に最長系列符号を3ビット以上とすることで、ゆらぎ変化の1周期を15サイクルにでき実質上偏りのない乱数を生成できる。
【0094】
図12は、本発明の実施の形態1における温水器48の発熱量制御方法を説明するフローチャートであり、繰り返し行なわれる主ループに関してのみ記述している。図12においてSTEP1は電源1の電圧波形を観測し電圧がゼロボルトになるゼロクロス点を検出するもので、検出できた場合にはSTEP2へ、できなかった場合にはSTEP12へ分岐する。
【0095】
STEP2からSTEP11まではゼロクロス点を検出した直後に処理が行なわれるもので、まずSTEP2ではタイマーをリセットする。このタイマーはマイクロコンピュータの中のハードウェアで構成されたものであり、プログラムの実行とは独立して一定時間ごと(例えば1マイクロ秒ごと)に計数していくものである。プログラムからはTimという変数を通じてこのタイマー値を読み出したり、値を設定したりすることができる。
【0096】
STEP3はプログラムの中で設定した15進カウンタ変数Cntをインクリメントする。このカウンタは交流電源の全波が何番目の全波かをカウントするためのもので、本実施の形態1では2半波毎に15進カウンタ変数Cntをインクリメントして15進カウンタとしている。つまり計数値は半波毎のゼロクロス点を検出たびに0、0、1、1、2、2、・・・13、13、14、14のように30回検出するまでに、0から14までカウントアップする。そして14の次は0に戻る。
【0097】
STEP4は使用者が遠隔操作装置24の調整スイッチ31および32を押下操作して設定した温水温度目標値を温度設定部10を通じて読み出すものである。使用者が頻繁に設定を変更してもすぐに追従できるように、ゼロクロス点を検知するたびに設定値を読み
出すようにしている。
【0098】
STEP5は温度検出部11の温水温度センサ50の値を読み出し、温水温度目標値に対して現在の温度との偏差を算定する。
【0099】
STEP6はSTEP5で算定した結果から温水ヒータ2への要求発熱量を算出する。ここでは公知のPID制御を用いて温度偏差がゼロに近づくようにフィードバック制御をおこなう。たとえば、動作開始直後で設定温度に対し現在の温度が充分に低ければ定格電力の発熱量を算出する。また、たとえば温水温度目標値に対し現在の温水温度がまだ低いが徐々に近づきつつあるときには定格の75%の電力の発熱量を算出するなどの演算を行う。
【0100】
STEP7はSTEP6で算出した発熱量から基準点弧角を算出する。例えば定格の75%の電力が必要な場合は基準点弧角を60度とする。この計算はプログラム中で三角関数演算を行なってもできるし、所望電力値に点弧角を対応させた表をプログラムで参照するようにしてもできる。
【0101】
STEP8は基準点弧角にゆらぎ変化を与えるか禁止するかの判定を行う。ここでは基準点弧角αが5度(185度)以下か、175度(355度)以上の場合にはゆらぎ変化を禁止するように判定し、STEP9へ進む。一方、基準点弧角αが5度(185度)を超えて且つ175度(355度)未満であれば、ゆらぎ変化を与えるものと判定し、STEP10へ進む。
【0102】
STEP9ではゆらぎ変化を禁止するために、ゆらぎ変化角度Δαnをゼロとして設定
する。
【0103】
STEP10は予めプログラム中に構成されているゆらぎ変化角度Δαnを取り出せる
表(表1参照)からΔαnを求めている。ここでのnは15進カウンタ変数Cntの値であり、15進カウンタ変数Cntがインクリメントするたびにゆらぎ変化角度Δαn
が切り換る。
【0104】
STEP11は基準点弧角αにゆらぎ変化角度Δαnを加算した点弧角α+Δαnに相当
する電源電圧波形のゼロクロス点からの遅延時間値τを算出する。その後STEP1に戻る。
【0105】
ここで、点弧角から遅延時間値τを算出する場合、日本においては電源周波数が50Hzの場合と60Hzの場合があるため、予め電源周波数がどちらなのかを設定しておく必要があるが、電源投入直後に一回行なえば良い極めて一般的な処理であるため、繰り返し行なわれる主ループに関してのみ説明する本フローチャートではこの電源周波数の判定処理の記述を省略している。
【0106】
一方、STEP1においてゼロクロス点を検出できなかった場合にはSTEP12へ分岐し、タイマーTimの値を調べる。ここで、Timの値がτと等しければ、ゼロクロス点から点弧角α+Δαnに相当する時間が経過しているということでSTEP13へ進む。また、同様にSTEP12においてタイマーTimの値がτに等しくない場合はSTEP1へ戻る。
【0107】
STEP13はトリガーパルスを出力してトライアック6をオンさせ温水ヒータ2に通電を開始する。トライアック6は一度導通すると電流がゼロにならない限り初期のオフ状態には戻らないためマイクロコンピュータからオフの制御はできないが、交流電源電圧が
ゼロクロス点になるとトライアック3を流れる電流もゼロになるためこのゼロクロス点でトライアック6もオフとなり初期状態に戻る。
【0108】
以上のような交流電源の半波の周期に同期して処理が行なわれるプログラム構成により点弧角を変化させる基準電力制御を容易に行なうことができる。
【0109】
以上のように本発明の第1の実施の形態では、温度設定部10で使用者が設定した所望の温水温度目標値と、温度検出部11の温水温度センサ50の電気信号との偏差が小さくなるように制御するフィードバック制御について説明したが、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4および室暖ヒータ5についても、それぞれの温度設定部10で設定する便座温度目標値、乾燥温度目標値および室暖温度目標値と、温度検出部11で検出する便座温度、乾燥温度および室暖温度をとの偏差が小さくなるようにフィードバック制御する際に、同様の発熱量制御方法を用いることができる。
【0110】
また、回転数センサを備えた送風機や掃除機などに用いられるモータでも所望の回転数になるように同様にフィードバック制御が用いられている。このようなモータの位相制御において本発明の点弧角を変化させて高調波成分を分散化する方法は有効に作用する。
【0111】
なお、フィードバック制御ではないが、例えば水道水温度や気温などの外的要因に応じて電力を位相制御するフィードフォワード制御もあるが、この場合でもフィードバック制御同様に本発明の点弧角を変化させて高調波成分を分散化する方法は有効である。
【0112】
一方、電力の位相制御を用いても、電力負荷に対する変動要因が少ない場合や、電力負荷に対する制御精度の要求が低い場合などに、フィードバック制御を行わずに予め設定した基準位相角で位相制御をする一定制御がある。このような一定制御も、センサが不要であり、制御構成が簡単になるので広く用いられている。例えば1200W定格の調理器において電力を600W一定に制御するような場合に、基準点弧角を90度一定にして制御すれば、ほぼ600W一定の電力が得られるので、あえてフィードバック制御をする必要はない。このような一定値制御においても、本発明の点弧角を変化させて高調波成分を分散化する方法は有効に作用する。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明にかかる衛生洗浄装置は、例えば位相制御に最大で±3.4度程度のわずかな変化を15サイクルを1周期として与えることにより位相制御により発生する高調波電流を電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化することができ、照明器具のフリッカも発生しない。したがって、高ワットの負荷を円滑に制御できるので、電熱負荷のワットコントロール、温度制御、照明器具の明るさ調整、電動機具の回転数制御など多くの特に家庭用など以外にも一般的に使用する電気器具の電力制御方法及び電力制御装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施形態1における衛生洗浄装置の制御手段のブロック図
【図2】本発明の実施形態1における衛生洗浄装置の斜視図
【図3】本発明の実施形態1における衛生洗浄装置の遠隔操作装置の模式図
【図4】本発明の実施形態1における衛生洗浄装置の洗浄水供給機構の模式図
【図5】同位相制御の点弧角のゆらぎ変化を示す図
【図6】本発明の位相制御のゆらぎ変化時の高調波電流分布を示すグラフ
【図7】従来の位相制御の高調波電流分布を示すグラフ
【図8】本発明の位相制御のフーリエ解析を示すグラフ
【図9】従来の位相制御のフーリエ解析を示すグラフ
【図10】本発明の位相制御のゆらぎ変化条件と最少余裕度の変化を示すグラフ
【図11】本発明の位相制御の点弧角の所定基準値と最少余裕度の変化を示すグラフ
【図12】本発明の制御方法を説明するフローチャート
【図13】従来の衛生洗浄装置の制御手段のブロック図
【符号の説明】
【0115】
2 温水ヒータ(加熱器)
3 便座ヒータ(加熱器)
4 乾燥ヒータ(加熱器)
5 室暖ヒータ(加熱器)
10 温度設定部
11 温度検出部
12 点弧角制御部
14 ゼロクロス点検出部
15 ゆらぎ制御部
21 衛生洗浄装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水洗浄便座における温水器の湯温制御、便座温度制御、乾燥の温風温度制御、室内暖房(室暖)の温風温度制御や、電気シャワーにおける温水器の湯温制御などの電力の位相制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の制御手段は、図13に示すように、交流電源1へ温水ヒータ2、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4、室暖ヒータ5等の加熱器に、それぞれの加熱器を個別にスイッチングする各トライアック6〜9とを直列に接続し、温度設定部10で設定する制御の目標値(温水温度目標値、便座温度目標値、乾燥温度目標値、室暖温度目標値)と、温度検出部11で検出した各負荷の温度(温水温度、便座温度、乾燥温度、室暖温度)を点弧角制御部12で比較し制御に必要な位相角を算定しトリガー部13へ出力する。点弧角制御部12は、ゼロクロス点検出部14により検出されたゼロクロス点を基準にして所定の位相角となる時間値をトリガー部13に出力する。トリガー部7はパルス状の点弧信号を発生しトライアック6〜9に加え,トライアック6〜9の点弧角を制御して、位相制御により各負荷に印加する実効電流を増減し、所望の温水温度、便座温度、乾燥温度、室暖温度を得るように制御していた(特許文献1参照)。
【0003】
この場合、商用電源から負荷に流れ込む電流波形は正弦波ではなくなり、多くの高調波を含む歪んだ波形になる。一般に正半波(上半波)と負半波(下半波)が同じ点弧角で位相制御された場合、負荷に流れ込む電流は電源周波数の奇数倍の高調波(奇数次高調波)を持つようになる。例えば電源周波数が60Hzの場合、位相制御されると180Hz、300Hz、420Hzというような60Hz以外の周波数が現れる。また、負荷に供給する電力を増減するために、点弧角を変えて印加する実効電圧を変化させると、周期的に変化させた場合には、120Hz、240Hz、360Hzといった電源周波数の偶数倍の高調波(偶数次高調波)や、さらに、1サイクル毎に点弧角を増減した場合には、30Hzの奇数次の高調波も現れるようになる。そして、正弦波半波の中央付近で点弧する場合が一番、発生する高調波電流のレベルが高い。
【0004】
このため他の実施例では、高レベルの高調波電流が発生する点弧角を避けて点弧する位相制御方法もある(特許文献2参照)。
【0005】
さらに他の実施例では、電源高調波電流が奇数次高調波に集中しないように、複数の全波間の点弧角において非対称性を生成することで偶数次高調波を増加させ奇数次高調波を減らすような例もある。例えば目標の供給電力を与える基準点弧角αに対して、実際はαよりも大きい点弧角α’で最初の全波を点弧し、基準点弧角αよりも小さい点弧角α”で次の全波を点弧し、これを繰り返すことで時間平均的に見た場合、負荷に目標の電力を与える方法である。この結果、電源高調波電流において偶数次高調波が生まれ、代わりに奇数次高調波の低減を実現している(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−107434号公報
【特許文献2】特開平8−255027号公報
【特許文献3】特開平10−271891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような位相制御方法でも、まだ、電源周波数の整数倍の周波数において、高いレベルの高調波電流が発生しやすく、同じ商用電源系統につながる他の機器に悪影響を与え
る場合がある。
【0007】
具体的な悪影響としては、次のようなことがあげられる。
【0008】
高調波電流が多い機器は力率が低い。このため、実際に消費される電力より皮相電力が大きくなるため入力電流が多く流れる。従って電力設備に余裕が必要になる。
【0009】
また電源は発電所から送電線や変電所・柱上トランスなどを通って各家庭に接続されているが、その電源ラインにはインピーダンスが存在している。そして高調波電流が流れるとそのインピーダンスにより電圧降下が発生し、結果として電源電圧波形が高調波を含んだ波形になる。商用電源に接続して使用される機器は、普通は商用周波数での使用を前提に作られているので、高調波が重畳された電圧波形が印加されると思わぬ不具合につながることがある。
【0010】
高調波が重畳された電圧波形により電源ラインに接続された機器や配電設備で悪影響を受けた例としては、進相コンデンサに高調波電流が流れて発熱したり、トランスがうなったり、電圧のピーク値が下がってスイッチング電源が正常動作しなくなったりした事例がある。
【0011】
また、上にも述べたが、電源ラインにはインピーダンスが存在しているため、負荷に供給する電力を増減すると、電圧降下量も変化し、同じ電力線系統の他の機器に印加される電圧も増減する。増減の頻度が多いと他の機器が照明機器である場合には、いわゆるフリッカ現象が起き、照明のちらつきによる不快感を人に与えることになる。人がちらつき感を覚えるのは、明るさの変化度合いにもよるが、明るさの変化頻度がだいたい1秒間に60回以下になった場合である。
【0012】
上述の従来の構成例の特許文献2の方法で高調波電流レベルを下げるには、大きな高調波を発生する点弧角を避けて位相制御するため、点弧角が急激に変化する点が生じて急激な電力変化や回転数変化が起き、実用化できない場合や使用感が悪くなる場合がある。
【0013】
また、上述の従来の構成の特許文献3の方法で高調波電流レベルを下げるには、大きい点弧角α’と次に続く小さい点弧角α”との差を大きくしなければならない。しかし、この差をあまり大きなものにすると先ほどのフリッカが起こり、人に不快感を与える場合がある。
【0014】
以上のように位相制御で負荷に与える電力を制御する場合には、電源高調波電流と同時にフリッカについても考慮する必要があった。
【0015】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電源波形を歪ませる高調波電流の発生が少なく、電源1サイクル毎の電源電圧の変化も少なく、照明器具のフリッカが実用上無視できる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記従来の課題を解決するために、位相制御に於いて電源周波数の高調波成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように所定基準点弧角を中心として点弧角を細かくゆらぎ状に変化させ、平均値として所望の基準値点弧角を得て電気ヒータ等の加熱器へ供給する電力を制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の衛生洗浄装置は、加熱器の位相制御時に発生する電源高調波電流を、電源周波
数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように所定基準点弧角を中心として点弧角を細かく変化させることにより、位相制御の全ての点弧角において、高調波電流の発生を所定の許容範囲に抑え、高出力で、円滑な電力制御作用を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の発明は、交流電源の位相制御により加熱器の発熱量を制御する制御手段を備えた衛生洗浄装置において、前記制御手段は、電源高調波電流成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように点弧角を変化させたので、高調波電流の発生レベルを低下させることができる。そして、照明器具のフリッカの発生を抑えることができる。
【0019】
第2の発明は、特に第1の発明の制御を、点弧角の制御に必要な所定基準値(加熱器の所定発熱量を得るための電力出力における点弧角の基準値を示す)に対して点弧角を大または小に任意に変化させることとした。すなわち、所定基準値に対して、所定基準値以上または以下である大きな角度または小さな角度、または所定基準値に対しての大きさも種々の大きさとした角度となるように任意に点弧角を変化させ、揺らがせることで、点弧角と関連して特異的に発生する高調波電流を電源周波数の整数倍以外の他の周波数成分に容易に分散化でき、各サイクル毎の電源電圧の変化が小さく、フリッカの発生を抑えることができる。
【0020】
第3の発明は、特に第1の発明の制御を、所定基準値に対して点弧角を全波毎に変化させることとしたことにより、交流波形の正負が上下対象となるため、電源供給側となる柱上トランス等への負荷が軽減できる。また、点弧角と関連して特異的に発生する高調波電流を電源周波数の整数倍以外の他の周波数成分への分散化を迅速に行なうことができ高調波電流を減少させることができる。
【0021】
第4の発明は、特に第1の発明の制御を、所定基準値に対して点弧角を半波毎に変化させることとしたことにより、点弧角と関連して特異的に発生する高調波電流を電源周波数の整数倍以外の他の周波数成分への分散化を更に迅速に行なうことができる。
第5の発明は、特に第1の発明の制御に、所定基準値に対して点弧角を所定の範囲で変化させることとしたので、点弧角の変化幅が制限されて、隣接するサイクルの電圧降下の変化幅が制限され、フリッカの発生を抑えることができる。
【0022】
第6の発明は、特に第1の発明から第5の発明の制御に於いて、平均点弧角が略所定基準値になるように点弧角を変化させたので、単位時間あたりの加熱器の発生電力に変動が無く円滑な負荷の温度制御が出来る。平均点弧角については、もちろん所定基準値と同値になることが望ましいが、所定の電力量が得られ、機器の制御に問題がなければ略基準点弧角になるような平均点弧角となるように変化を制御しておけばよく、問題はない。
【0023】
第7の発明は、特に第1から第6の発明の制御における点弧角の所定基準値に対して変化させる変化幅を、所定基準値に対してランダムに変化させることとしたので、点弧角と関連して特異的なパターンで発生する高調波電流に規則性を持たせずに分散化でき、より高調波電流の減少度を高め、電源電圧の変化にも規則性が現れない。
【0024】
第8の発明は、特に第7の発明の制御における点弧角の所定基準値に対してランダムに変化させる変化幅を決定する乱数を、最長系列符号から生成することとしたので、制御処理を行うマイクロコンピュータ内部において乱数テーブルを持たなくてもシフトレジスタを基本とする処理で簡単に乱数を生成できる。
【0025】
第9の発明は、特に第8の発明の制御の最長系列符号を生成するシフトレジスタのビット数を3ビット以上とすることで、乱数の個数を7個以上にでき実質上乱数に近い点弧角
の揺らぎを簡単に実現できる。
【0026】
第10の発明は、特に第1から第7の発明の制御に、点弧角の変化幅を所定基準値に対して予め設定した複数の変動幅で変化させることとしたので、制御時に変化させる全ての所定基準値での点弧角の高調波電流を試験で確認でき、予期せざる高調波電流の発生を除去できるとともに、点弧角の変化を発生させる回路を簡素化できる。
【0027】
第11の発明は、特に第1から第10の発明の制御を、点弧角の所定基準値の変化に応じて点弧角の変化幅を変えることとしたので、所定基準値が高調波電流の発生の少ない点弧角である時は、照明のフリッカに煩わされる事無く、少ないステップ数と周期で構成する点弧角の変化で高調波電流を分散化し削減できる。
【0028】
第12の発明は、特に、第1から第11の発明の制御で、位相制御の点弧角の所定基準値が0度、180度付近では点弧角の変化を停止することとしたので、点弧信号が位相角0度の前へ進みすぎたり、180度より遅れて制御され、本来180度近辺で点弧されるべきものが点弧しなかったり、本来無点弧であるべきものが反対側の半波で180度導通したりする誤点弧を防止できる。
【0029】
第13の発明は、交流電源の位相制御により衛生洗浄装置の電力制御を行なう制御方法において、電源高調波電流成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように点弧角を変化させる電力制御方法であり、高調波電流の発生レベルを低下させ、フリッカ現象の発生を抑えることができる。
【0030】
第14の発明は、第13の発明において、電力値を設定するステップと、基準点弧角を設定するステップと、前記基準点弧角に対して揺らがせて点弧角を設定するステップとを備え、前記揺らがせた点弧角の所定回数の半波の平均値は略基準点弧角となることを特徴とした発熱量制御方法としたものである。これによって、基準点弧角を揺らがせることにより、高調波電流を分散させることができる。揺らがせる点弧角は、平均点弧角が略基準点弧角になるように、揺らぎ量を予め設定しておいたり、都度算出して設定したりすることによっても、設定可能であり、同様の効果を奏する。
【0031】
第15の発明は、第13または第14の発明の発熱量制御方法の全てもしくは一部をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0032】
そして、プログラムであるので汎用コンピュータやサーバを用いて本発明の衛生洗浄装置の一部あるいは全てを容易に実現することができる。また、記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布やインストール作業が簡単にできる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における衛生洗浄装置の制御手段のブロック図を示すものである。
【0035】
交流電源1と、加熱器である温水ヒータ2、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4、室暖ヒータ5の各負荷と、トライアック6〜9と、温度設定部10と、温度検出部11と、点弧角制御部12と、トリガー部13と、点弧角制御部12と、ゼロクロス点検出部14とは従来例と同一である。本発明では点弧角制御部12とトリガー部13との間にゆらぎ制御部1
5を新たに設けた。
【0036】
温度設定部10は従来例と同様に使用者が設定した所望の温水温度目標値、便座温度目標値、乾燥温度目標値、室暖温度目標値を設定する。
【0037】
温水ヒータ2、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4、室暖ヒータ5の各負荷に設けた温度検出部11の各センサ(図示せず)は各負荷の温度(温水温度、便座温度、乾燥温度、室暖温度)を電気信号へ変換し、点弧角制御部12へ送る。点弧角制御部12は温度設定部10の値と温度検出部11の値とを比較して点弧角(以下点弧角の所定基準値という)を決め、ゼロクロス点検出部14から得た電源のゼロクロス点を基準とした点弧角の所定基準値に相当する時間値をゆらぎ制御部15へ出力する。ゆらぎ制御部15は点弧角制御部12から受けた点弧角の所定基準値を中心として電源のサイクル毎に大小に点弧角を変動させゆらぎを加えてトリガー部13へ出力する。点弧角制御部12およびゆらぎ制御部15はマイクロコンピュータ、メモリー等で構成されており、ゆらぎ制御部15のメモリーに設定された変化巾設定データに基づき点弧角を変化させた点弧信号をトリガー部13へ送る。トリガー部13はパルス信号を発生しトライアック6〜9を点弧して位相制御を行なう。
【0038】
図2は本発明の第1の実施の形態における衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図である。
【0039】
図2に示すように、便器20上に衛生洗浄装置21が装着される。タンク22は、水道配管に接続されており、便器20内に洗浄水を供給する。
【0040】
衛生洗浄装置21は、本体部23、遠隔操作装置24、便座部25および蓋部26により構成される。
【0041】
本体部23には、便座部25および蓋部26が開閉自在に取り付けられる。さらに、本体部23には、ノズル部27を含む洗浄水供給機構が設けられるとともに、制御部が内蔵されている。本体部23の制御部は、後述するように遠隔操作装置24により送信される信号に基づいて、洗浄水供給機構を制御する。さらに、便座部25には前述の便座ヒータ3が内蔵されており、本体部23には乾燥用の温風供給装置(図示せず)と、脱臭装置(図示せず)と、室内暖房用の室暖装置(図示せず)が収められている。温風供給装置と室暖装置にはそれぞれ前述の乾燥ヒータ4と室暖ヒータ5とが内臓されている。
【0042】
図3は図2の遠隔操作装置24の一例を示す模式図である。
【0043】
図2に示すように、遠隔操作装置24は、複数のLED(発光ダイオード)28、複数の調整スイッチ29〜34、おしりスイッチ35、ビデスイッチ36、乾燥スイッチ37、脱臭スイッチ38、室暖スイッチ39および停止スイッチ40を備える。
【0044】
使用者により調整スイッチ29〜34、おしりスイッチ35、ビデスイッチ36、乾燥スイッチ37、脱臭スイッチ38、室暖スイッチ39および停止スイッチ40が押下操作される。それにより、遠隔操作装置24は、後述する衛生洗浄装置21の本体部23に設けられた制御部に所定の信号を無線送信する。本体部23の制御部は、遠隔操作装置24より無線送信される所定の信号を受信し、洗浄水供給機構等を制御する。
【0045】
例えば、使用者が、おしりスイッチ35またはビデスイッチ36を押下操作することにより図2の本体部23のノズル部27が移動して洗浄水が噴出する。調整スイッチ31の「高」を押下操作することにより図2の本体部23の洗浄水供給機構の温水器の温水温度
目標値が変更され、温水温度が上昇する。停止スイッチ40を押下操作することによりノズル部27からの洗浄水の噴出が停止する。
【0046】
また、乾燥スイッチ37を押下操作することにより人体の局部に対して衛生洗浄装置21の温風供給装置(図示せず)より温風が噴出される。脱臭スイッチ38を押下操作することにより衛生洗浄装置21の脱臭装置(図示せず)により周辺の脱臭が行われる。さらに室暖スイッチ39を押下操作することによりトイレ全体に衛生洗浄装置21の室暖装置(図示せず)より温風が噴出される。
【0047】
使用者が、調整スイッチ29〜34を押下操作することにより、おしりスイッチ35やビデスイッチ36を押下操作中であれば、図2の衛生洗浄装置21の本体部23のノズル部27の位置が変化したり、ノズル部27より噴出される洗浄水の温度が変化したり、ノズル部27より噴出される洗浄水の圧力が変化する。また、乾燥スイッチ37や室暖スイッチ39を押下操作中であれば、温風温度が変化する。さらに、調整スイッチ29〜34の押下に伴って複数のLED(発光ダイオード)28が点灯する。
【0048】
以下、本発明の一実施例の衛生洗浄装置の洗浄水供給機構について説明を行う。図4は本発明の一実施例の衛生洗浄装置の洗浄水供給機構の構成を示す模式図である。
【0049】
洗浄水供給機構は図1で説明した制御手段の、温水ヒータ2を制御する構成である。
【0050】
図4に示す本体部23は、制御部41、分岐水栓42、ストレーナ43、逆止弁44、定流量弁45、止水電磁弁46、流量センサ47、熱交換器48、給水温度センサ49、温水温度センサ50、サーモスタット51、ポンプ52、切替弁53およびノズル部27を含む。また、ノズル部27は、おしりノズル54、ビデノズル55およびノズル洗浄用ノズル56を含む。
【0051】
温水温度センサ50は図1における温度検出部11の中のひとつのセンサである。
【0052】
図4に示すように、水道配管57に分岐水栓42が介挿される。また、分岐水栓42と熱交換器48との間に接続される配管58に、ストレーナ43、逆止弁44、定流量弁45、止水電磁弁46、流量センサ47および給水温度センサ49が順に介挿されている。さらに、熱交換器48と切替弁53との間に接続される配管59に、温水温度センサ50およびポンプ52が介挿されている。
【0053】
まず、水道配管57を流れる浄水が、洗浄水として分岐水栓42によりストレーナ43に供給される。ストレーナ43により洗浄水に含まれるごみや不純物等が除去される。次に、逆止弁44により配管58内における洗浄水の逆流が防止される。そして、定流量弁45により配管58内を流れる洗浄水の流量が一定に維持される。
【0054】
また、ポンプ52と切替弁53との間にはリリーフ管60が接続され、止水電磁弁46と流量センサ47との間には、逃がし水配管61が接続されている。リリーフ配管60には、リリーフ弁62が介挿されている。リリーフ弁62は、配管59の特にポンプ52の下流側の圧力が所定値を超えると開成し、異常時の機器の破損、ホースの外れ等の不具合を防止する。一方、定流量弁45によって流量が調節され供給される洗浄水のうちポンプ52で吸引されない洗浄水を逃がし水配管60から放出する。これにより、水道供給圧に左右されることなくポンプ52には所定の背圧が作用することになる。
【0055】
次いで、流量センサ47は、配管58内を流れる洗浄水の流量を測定し、制御部41に測定流量値を与える。また、給水温度センサ49は、配管58内を流れる洗浄水の温度を
測定し、制御部41に温度測定値を与える。
【0056】
続いて、熱交換器48には、温水ヒータ2が内臓され、制御部41により与えられる制御信号に基づいて、温水ヒータ2が通電制御され、配管58を通して供給された洗浄水を加熱する。温水温度センサ50は、熱交換器11により加熱される洗浄水の温度を測定し、温水温度信号を制御部41に与え、制御部41は温水温度が所望の温水温度目標値となるように温水ヒータ2の加熱量をフィードバック制御する。サーモスタット51は、熱交換器48からの温水温度を検知し、所定の温度を超過した場合に温水ヒータ2への電力供給を遮断する。
【0057】
なお、上述の所望の温水温度目標値は、遠隔操作装置24の調整スイッチ31,32により設定される値であり、図1の温度設定部10の設定項目のひとつを表している。
【0058】
ポンプ52は、熱交換器48により加熱された洗浄水を制御部41により与えられる制御信号に基づいて、切替弁53に圧送する。切替弁53は、制御部41により与えられる制御信号に基づいて、ノズル部27のおしりノズル54、ビデノズル55およびノズル洗浄用ノズル56のいずれか1つに洗浄水を供給する。それにより、おしりノズル54、ビデノズル55およびノズル洗浄用ノズル56のいずれか1つより洗浄水が噴出される。
【0059】
洗浄水供給機構における制御部41は、図2の遠隔操作装置24から無線送信される信号、流量センサ47から与えられる測定流量値、給水温度センサ49から与えられる温度測定値および温水温度センサ50から与えられる温水温度信号に基づき止水電磁弁46、熱交換器48、ポンプ52および切替弁53に対して制御信号を与える。
【0060】
次に図1で説明した制御手段における位相制御の動作の説明をする。
【0061】
図5は、ゆらぎ制御部15に与えた電源サイクル毎の点弧位相角の変化を示す図であり、同図の点線で示す点弧角の所定基準値αを中心として各サイクル(全波)毎に異なる変化角度(Δαn)だけ変化した点弧角α1、α2、αnで夫々1サイクル目、2サイクル目、nサイクル目の点弧角を変化させている。尚、各サイクルの正負のサイクルの点弧角は同一である。
【0062】
(表1)は、ゆらぎ制御部9が点弧角の所定基準値αに与える図5ついて述べたゆらぎ角度(Δθn)のサイクル順の条件表の1例であり、変化角度の最高値をレベル1で±1.13度、レベル2で±2.26度、レベル3で±3.4度、レベル4で±4.53度とし、正と負の最大値間を15段階に分けて乱数表によりサイクル順に割り当てて変化させた例を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(表1)の左段のnは1から15まで変わると再び1に戻り、同じゆらぎを繰り返すため、ゆらぎ変化は周期的に同じ変化を繰り返すことになる。
【0065】
ゆらぎの角度の種類(乱数の個数)は、多いほど偏りのない乱数を得られるが、多すぎるとゆらぎの周期が長くなり、短時間に電源高調波を測定すると測定毎に違った結果が得られるという不具合が起こる。
【0066】
(表1)において、レベル1の条件では1サイクル目を所定基準値+1.13度とし、2サイクル目では所定基準値−0.16度として以下15サイクルを1周期として夫々のサイクルでの点弧角を変化させた。
【0067】
なおレベル0はゆらぎ変化を与えないことを示す。
【0068】
上のように構成された衛生洗浄装置を用いて温水ヒータ2の発熱量を制御した場合の動作、作用を以下説明する。
【0069】
1200ワットの温水ヒータ2の負荷において、表1のゆらぎ変化角度表の条件を加えた場合と加えない場合の高調波発生の状況と照明のフリッカの発生を調べた結果を以下述べる。
【0070】
図6は、点弧角の所定基準値を90度(発熱量約600ワット)として、表1のゆらぎ角度表のレベル3の変化を加えて位相制御した時、所定の許容範囲をJIS C6100
0−3−2限度値―高調波電流発生限度値として、これに基づいて行なった実験による第40次までの電源高調波電流の分布を示す。
【0071】
同図6に於いて、白色の線は高調波の次数毎のJIS C61000−3−2に規定された限度値(以下限度値という)を示し、黒色の線は実測値を示す。
【0072】
いずれの高調波も限度値を下回り、40次までの各次数の高調波の限度値と実測値との比率を示す余裕度の内の最少の余裕度は35.1%を示す良好な結果が得られ、同時に行なった照明器具のフリッカ試験でもフリッカが観測されなかった。
【0073】
図7は、点弧角の所定基準値を90度として、ゆらぎ変化なしの時の電源高調波電流の分布を示す。実測値は13次高調波電流から上の奇数次高調波電流が全て限度値を超過していることで、高調波電流の発生が大きいことを示している。また、同時に行なった照明器具のフリッカ試験ではフリッカが観測されなかった。
【0074】
図6と図7を比較すると図6では偶数次高調波電流が生じていて、点弧角のゆらぎ変化により高調波電流の分散が生じていると判断できる。
【0075】
さらに図7では電源周波数の整数倍の周波数の電流成分しか表示されていないが、本発明のように点弧角をランダムにゆらがせると高調波電流の周波数成分は、電源周波数の整数倍以外の周波数にも発生する。
【0076】
(表1)におけるゆらぎ変化は周期的に同じ変化を繰り返しており、この繰り返し周波数は本実施の形態の場合は、電源周波数60Hzの15分の1の4Hzとなる。実はゆらがせた場合の高調波電流の周波数成分は、乱数が一巡する周期に依存し、乱数が15個では電源周波数の15サイクルで一巡するので、電源周波数の整数倍の各周波数を中心に4Hz間隔で分散される。例えば180Hzの3次高調波電流は、揺らがせると180Hzを中心に高い方では184Hz、188Hz、192Hz、・・・、低い方では176Hz、172Hz、168Hz、・・・と、電源周波数の整数倍のところにあった高調波電流成分が4Hz間隔で周囲の周波数に分散され、結果的に高いレベルの高調波電流成分が減少する。
【0077】
図8は点弧角の所定基準値を90度として、表1のゆらぎ角度表のレベル3の変化を加えて位相制御した時のフーリエ解析結果である。縦軸は高調波電流レベルの相対値であり、ひずみのない60Hzの正弦波の振幅を基準の1としたものである。
【0078】
このように点弧角をゆらがせた場合は、電源周波数60Hzの奇数倍の各周波数を中心に4Hz間隔で分散された高調波電流が存在している。
【0079】
図9は図8との比較のために点弧角の所定基準値を90度として、+3.4度と−3.4度の2つの点弧角を1サイクル毎に交番させて位相制御した時のフーリエ解析結果である。電源周波数の2サイクル毎に同じ点弧角が繰り返されるため、30Hzの奇数倍の周波数のところに高調波電流が存在している。しかもこの30Hzの奇数倍の高調波電流は990Hzから2130Hzの周波数において60Hzの奇数倍の高調波電流レベルよりも高くなっている。さらに、図9の30Hzの奇数倍の高調波電流は、点弧角をゆらがせた場合の図8の同じ周波数の高調波電流レベルよりもかなり高いレベルの高調波電流となっている。さらに付け加えると、乱数の種類を15個よりも多く、例えば45個にすると、乱数が一巡する周期が電源周波数の45サイクルになるため電源周波数60Hzの45分の1の1.33Hzとなり、電源周波数の整数倍のところにあった高調波電流成分がさらに細かい1.33Hz間隔で周囲の周波数にさらに細かく分散され、結果的に高いレベ
ルの高調波電流成分がさらに減少することになる。
【0080】
図10は、点弧角の所定基準値を90度とし、(表1)に示すゆらぎ角度変化表のレベル1から4までと、ゆらぎ変化なしの条件(レベル0)での最少余裕率の観測データを示す図である。
【0081】
最小余裕率は、ゆらぎ変化なしでは−42%、ゆらぎ変化レベル1では−30%、レベル2では−0.3%限度値を超えているが、レベル3では35.1%、レベル4では36.5%の余裕が生じている。このとき、同時に行なったフリッカの観測ではゆらぎ変化のレベル0からレベル3までは観測されなかったが、レベル4ではわずかにフリッカが観測された。これは、レベル4では変化幅がレベル3よりも大きくなっているが、変化幅が大きくなりすぎるとフリッカ現象を誘引するからである。従って、所定の許容範囲をJISの基準とした場合に、最少余裕率とフリッカの観測からレベル3のゆらぎ変化で良好な結果を得ることができた。従って、1200Wの電熱負荷に於ける点弧角の所定基準値が90度の場合のゆらぎ変化はレベル3が最も好ましい値となった。
【0082】
本実施の形態の発熱量制御方法で衛生洗浄装置の加熱器が制御される場合、商用電源の配電盤から分岐された屋内配線の末端で並列に、または隣接して接続される電気機器に照明器具が含まれる場合、その照明器具のフリッカ現象の発生が防止される。通常、家庭内で使用される衛生洗浄装置は、交流電源の配線の都合上室内の照明機器と隣接して接続される可能性が非常に高く、照明との同時使用において、フリッカ現象が生じると使用者に非常に不快感を与えることになる。よって、高調波の許容範囲における余裕率とフリッカ現象発生状況によるゆらぎ変化レベルの決定は、必要不可欠である。よって、本実施の形態のように所定の許容範囲に対する余裕率と、フリッカ現象の発生に基づいて点弧角を揺らがせ変動させるレベルを決定することが望ましいが、そうでない電気機器の制御においては、余裕率にのみ基づいて決定してもよい。
【0083】
次に、図11はゆらぎ変化をレベル3に固定し、点弧角の所定基準値を55度(発熱量1000W)、74度(発熱量800W)、104度(発熱量400W)、124度(発熱量200W)に変化させて、高調波電流の発生とフリッカを試験したが、最少余裕度が夫々45.3%、27.9%、35.1%、31.6%、40.9%を示しいずれも良好な結果が得られ、フリッカも発生しなかった。
【0084】
(表1)に示すゆらぎ変化角度について更に説明を加えると、所定基準値に対して位相角を大小に変化させているが、これによりゆらぎ変化分の1周期(乱数の1周期)当たりの平均値をゼロとし、ゆらぎ変化の1周期(15サイクル)毎に所定基準値を実現している。
【0085】
次に所定基準値に対して位相角を全波毎に変化させているが、これは正負のサイクルの実効値が異なると電源に直流分を生じさせ、他の電気器具のトランスに磁気飽和などの悪影響を及ぼすのでこれを避ける為である。
【0086】
しかしながら、ゆらぎ変化の1周期は15サイクルで構成しているので表1の表には無いが、ゆらぎ変化の最初の1周期と次の1周期で変化の方向を逆にすれば電源に悪影響を及ぼすことも無く半波毎に変化させることも出来、より細かく高調波電流の分散化を行うことが出来る。
【0087】
更に、表1では所定基準値に対してゆらぎ変化を所定の範囲内で変化させて、高調波電流の分散化を規制し、照明のフリッカ現象の発生を防いでいる。
【0088】
更に、所定基準値に対してゆらぎ変化の変動幅を予め設定した値に決めている。これは負荷の消費電力が小さくなれば表1のゆらぎ変化角度表より少ないステップ数と少ないゆらぎ変化巾で高調波電流の削減が可能である。
【0089】
更に、ゆらぎ点弧角を決める場合には、図11に示す様に点弧角が0度又は180度へ近づくにつれて、最小余裕度が大きくなる傾向があり、概ね点弧角30度以下と150度以上では、同一の点弧角の変動幅に対する電力変化も小さくなるのでフリッカの発生も減少し、ゆらぎ変化の変化巾を小さくしたり、変化ステップを少なくすることができる。更に、点弧角が0度、又は180度近辺では変動幅をもうけなくても高調波電流の発生は少なく、点弧角度が0度より進んで点弧の失敗を生じたり、又は180度より遅れて逆位相で誤点弧することを防止できる。
【0090】
本実施の形態の機器制御においては、望ましくは、点弧角の所定基準値が0度又は180度の±5度以内で制御する場合であれば、変動させなくても、本実施の形態による所定の許容範囲を逸脱することなく、高調波の発生を低減させることが可能となる。
【0091】
更に、(表1)に示すゆらぎ変化レベルと周期は、便座ヒータ、乾燥ヒータ、室暖ヒータなど負荷の種類とワットの大きさが異なれば、他のゆらぎ変化角度と周期の条件でも高調波電流を限度値以下に削減し、照明器具へのフリッカの発生を防ぐことができるので、表1の条件に制約されることはない。
【0092】
更に、ゆらぎ変化を起こすための乱数を表1のような表形式で持たずに最長系列符号で生成するようにすれば、制御をつかさどるマイクロコンピュータの処理も更に簡単に行えるようになる。
【0093】
更に最長系列符号を3ビット以上とすることで、ゆらぎ変化の1周期を15サイクルにでき実質上偏りのない乱数を生成できる。
【0094】
図12は、本発明の実施の形態1における温水器48の発熱量制御方法を説明するフローチャートであり、繰り返し行なわれる主ループに関してのみ記述している。図12においてSTEP1は電源1の電圧波形を観測し電圧がゼロボルトになるゼロクロス点を検出するもので、検出できた場合にはSTEP2へ、できなかった場合にはSTEP12へ分岐する。
【0095】
STEP2からSTEP11まではゼロクロス点を検出した直後に処理が行なわれるもので、まずSTEP2ではタイマーをリセットする。このタイマーはマイクロコンピュータの中のハードウェアで構成されたものであり、プログラムの実行とは独立して一定時間ごと(例えば1マイクロ秒ごと)に計数していくものである。プログラムからはTimという変数を通じてこのタイマー値を読み出したり、値を設定したりすることができる。
【0096】
STEP3はプログラムの中で設定した15進カウンタ変数Cntをインクリメントする。このカウンタは交流電源の全波が何番目の全波かをカウントするためのもので、本実施の形態1では2半波毎に15進カウンタ変数Cntをインクリメントして15進カウンタとしている。つまり計数値は半波毎のゼロクロス点を検出たびに0、0、1、1、2、2、・・・13、13、14、14のように30回検出するまでに、0から14までカウントアップする。そして14の次は0に戻る。
【0097】
STEP4は使用者が遠隔操作装置24の調整スイッチ31および32を押下操作して設定した温水温度目標値を温度設定部10を通じて読み出すものである。使用者が頻繁に設定を変更してもすぐに追従できるように、ゼロクロス点を検知するたびに設定値を読み
出すようにしている。
【0098】
STEP5は温度検出部11の温水温度センサ50の値を読み出し、温水温度目標値に対して現在の温度との偏差を算定する。
【0099】
STEP6はSTEP5で算定した結果から温水ヒータ2への要求発熱量を算出する。ここでは公知のPID制御を用いて温度偏差がゼロに近づくようにフィードバック制御をおこなう。たとえば、動作開始直後で設定温度に対し現在の温度が充分に低ければ定格電力の発熱量を算出する。また、たとえば温水温度目標値に対し現在の温水温度がまだ低いが徐々に近づきつつあるときには定格の75%の電力の発熱量を算出するなどの演算を行う。
【0100】
STEP7はSTEP6で算出した発熱量から基準点弧角を算出する。例えば定格の75%の電力が必要な場合は基準点弧角を60度とする。この計算はプログラム中で三角関数演算を行なってもできるし、所望電力値に点弧角を対応させた表をプログラムで参照するようにしてもできる。
【0101】
STEP8は基準点弧角にゆらぎ変化を与えるか禁止するかの判定を行う。ここでは基準点弧角αが5度(185度)以下か、175度(355度)以上の場合にはゆらぎ変化を禁止するように判定し、STEP9へ進む。一方、基準点弧角αが5度(185度)を超えて且つ175度(355度)未満であれば、ゆらぎ変化を与えるものと判定し、STEP10へ進む。
【0102】
STEP9ではゆらぎ変化を禁止するために、ゆらぎ変化角度Δαnをゼロとして設定
する。
【0103】
STEP10は予めプログラム中に構成されているゆらぎ変化角度Δαnを取り出せる
表(表1参照)からΔαnを求めている。ここでのnは15進カウンタ変数Cntの値であり、15進カウンタ変数Cntがインクリメントするたびにゆらぎ変化角度Δαn
が切り換る。
【0104】
STEP11は基準点弧角αにゆらぎ変化角度Δαnを加算した点弧角α+Δαnに相当
する電源電圧波形のゼロクロス点からの遅延時間値τを算出する。その後STEP1に戻る。
【0105】
ここで、点弧角から遅延時間値τを算出する場合、日本においては電源周波数が50Hzの場合と60Hzの場合があるため、予め電源周波数がどちらなのかを設定しておく必要があるが、電源投入直後に一回行なえば良い極めて一般的な処理であるため、繰り返し行なわれる主ループに関してのみ説明する本フローチャートではこの電源周波数の判定処理の記述を省略している。
【0106】
一方、STEP1においてゼロクロス点を検出できなかった場合にはSTEP12へ分岐し、タイマーTimの値を調べる。ここで、Timの値がτと等しければ、ゼロクロス点から点弧角α+Δαnに相当する時間が経過しているということでSTEP13へ進む。また、同様にSTEP12においてタイマーTimの値がτに等しくない場合はSTEP1へ戻る。
【0107】
STEP13はトリガーパルスを出力してトライアック6をオンさせ温水ヒータ2に通電を開始する。トライアック6は一度導通すると電流がゼロにならない限り初期のオフ状態には戻らないためマイクロコンピュータからオフの制御はできないが、交流電源電圧が
ゼロクロス点になるとトライアック3を流れる電流もゼロになるためこのゼロクロス点でトライアック6もオフとなり初期状態に戻る。
【0108】
以上のような交流電源の半波の周期に同期して処理が行なわれるプログラム構成により点弧角を変化させる基準電力制御を容易に行なうことができる。
【0109】
以上のように本発明の第1の実施の形態では、温度設定部10で使用者が設定した所望の温水温度目標値と、温度検出部11の温水温度センサ50の電気信号との偏差が小さくなるように制御するフィードバック制御について説明したが、便座ヒータ3、乾燥ヒータ4および室暖ヒータ5についても、それぞれの温度設定部10で設定する便座温度目標値、乾燥温度目標値および室暖温度目標値と、温度検出部11で検出する便座温度、乾燥温度および室暖温度をとの偏差が小さくなるようにフィードバック制御する際に、同様の発熱量制御方法を用いることができる。
【0110】
また、回転数センサを備えた送風機や掃除機などに用いられるモータでも所望の回転数になるように同様にフィードバック制御が用いられている。このようなモータの位相制御において本発明の点弧角を変化させて高調波成分を分散化する方法は有効に作用する。
【0111】
なお、フィードバック制御ではないが、例えば水道水温度や気温などの外的要因に応じて電力を位相制御するフィードフォワード制御もあるが、この場合でもフィードバック制御同様に本発明の点弧角を変化させて高調波成分を分散化する方法は有効である。
【0112】
一方、電力の位相制御を用いても、電力負荷に対する変動要因が少ない場合や、電力負荷に対する制御精度の要求が低い場合などに、フィードバック制御を行わずに予め設定した基準位相角で位相制御をする一定制御がある。このような一定制御も、センサが不要であり、制御構成が簡単になるので広く用いられている。例えば1200W定格の調理器において電力を600W一定に制御するような場合に、基準点弧角を90度一定にして制御すれば、ほぼ600W一定の電力が得られるので、あえてフィードバック制御をする必要はない。このような一定値制御においても、本発明の点弧角を変化させて高調波成分を分散化する方法は有効に作用する。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明にかかる衛生洗浄装置は、例えば位相制御に最大で±3.4度程度のわずかな変化を15サイクルを1周期として与えることにより位相制御により発生する高調波電流を電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化することができ、照明器具のフリッカも発生しない。したがって、高ワットの負荷を円滑に制御できるので、電熱負荷のワットコントロール、温度制御、照明器具の明るさ調整、電動機具の回転数制御など多くの特に家庭用など以外にも一般的に使用する電気器具の電力制御方法及び電力制御装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施形態1における衛生洗浄装置の制御手段のブロック図
【図2】本発明の実施形態1における衛生洗浄装置の斜視図
【図3】本発明の実施形態1における衛生洗浄装置の遠隔操作装置の模式図
【図4】本発明の実施形態1における衛生洗浄装置の洗浄水供給機構の模式図
【図5】同位相制御の点弧角のゆらぎ変化を示す図
【図6】本発明の位相制御のゆらぎ変化時の高調波電流分布を示すグラフ
【図7】従来の位相制御の高調波電流分布を示すグラフ
【図8】本発明の位相制御のフーリエ解析を示すグラフ
【図9】従来の位相制御のフーリエ解析を示すグラフ
【図10】本発明の位相制御のゆらぎ変化条件と最少余裕度の変化を示すグラフ
【図11】本発明の位相制御の点弧角の所定基準値と最少余裕度の変化を示すグラフ
【図12】本発明の制御方法を説明するフローチャート
【図13】従来の衛生洗浄装置の制御手段のブロック図
【符号の説明】
【0115】
2 温水ヒータ(加熱器)
3 便座ヒータ(加熱器)
4 乾燥ヒータ(加熱器)
5 室暖ヒータ(加熱器)
10 温度設定部
11 温度検出部
12 点弧角制御部
14 ゼロクロス点検出部
15 ゆらぎ制御部
21 衛生洗浄装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱器と、前記加熱器を交流電源の位相制御により制御手段を備え、前記制御手段は、電源高調波電流成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように点弧角を変化させるようにした衛生洗浄装置。
【請求項2】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値に対して点弧角を大または小に任意に変化させる請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値に対して点弧角を全波毎に変化させる請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値に対して点弧角を半波毎に変化させる請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値に対して点弧角を所定の範囲で変化させる請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
変化させた点弧角の単位時間当たりの平均角度が略所定基準値となるようにした請求項1から請求項5記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、所定基準値に対して点弧角をランダムに変化させる請求項1から請求項6記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
ランダムに変化させるための乱数を最長系列符号から生成する請求項7記載の衛生洗浄装置。
【請求項9】
最長系列符号のビット数を3ビット以上とする請求項8記載の衛生洗浄装置。
【請求項10】
点弧角を所定基準値に対して予め設定した値に基づいて変化させる請求項1から請求項7記載の衛生洗浄装置。
【請求項11】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値の変化に応じて点弧角の変化させる範囲を変える請求項1から請求項10記載の衛生洗浄装置。
【請求項12】
点弧角の所定基準値が0度または180度付近では点弧角の変化を停止する請求項2から請求項11記載の衛生洗浄装置。
【請求項13】
交流電源の位相制御により衛生洗浄装置の加熱器の電力を変更し発熱量制御を行なう制御方法において、電源高調波電流成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように点弧角を変化させる発熱量制御方法。
【請求項14】
電力値を設定するステップと、基準点弧角を設定するステップと、前記基準点弧角に対して揺らがせて点弧角を設定するステップとを備え、前記揺らがせた点弧角の所定回数の半波の平均値は略基準点弧角となることを特徴とした請求項13記載の発熱量制御方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の発熱量制御方法の全てもしくは一部をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
加熱器と、前記加熱器を交流電源の位相制御により制御手段を備え、前記制御手段は、電源高調波電流成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように点弧角を変化させるようにした衛生洗浄装置。
【請求項2】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値に対して点弧角を大または小に任意に変化させる請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値に対して点弧角を全波毎に変化させる請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値に対して点弧角を半波毎に変化させる請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値に対して点弧角を所定の範囲で変化させる請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
変化させた点弧角の単位時間当たりの平均角度が略所定基準値となるようにした請求項1から請求項5記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、所定基準値に対して点弧角をランダムに変化させる請求項1から請求項6記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
ランダムに変化させるための乱数を最長系列符号から生成する請求項7記載の衛生洗浄装置。
【請求項9】
最長系列符号のビット数を3ビット以上とする請求項8記載の衛生洗浄装置。
【請求項10】
点弧角を所定基準値に対して予め設定した値に基づいて変化させる請求項1から請求項7記載の衛生洗浄装置。
【請求項11】
加熱器の発熱量を決定する点弧角の所定基準値を設け、前記所定基準値の変化に応じて点弧角の変化させる範囲を変える請求項1から請求項10記載の衛生洗浄装置。
【請求項12】
点弧角の所定基準値が0度または180度付近では点弧角の変化を停止する請求項2から請求項11記載の衛生洗浄装置。
【請求項13】
交流電源の位相制御により衛生洗浄装置の加熱器の電力を変更し発熱量制御を行なう制御方法において、電源高調波電流成分を、電源周波数の整数倍以外の周波数成分に分散化するように点弧角を変化させる発熱量制御方法。
【請求項14】
電力値を設定するステップと、基準点弧角を設定するステップと、前記基準点弧角に対して揺らがせて点弧角を設定するステップとを備え、前記揺らがせた点弧角の所定回数の半波の平均値は略基準点弧角となることを特徴とした請求項13記載の発熱量制御方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の発熱量制御方法の全てもしくは一部をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−40007(P2007−40007A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226424(P2005−226424)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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