説明

衛生用紙

【課題】滑らかさ、柔らかさといった風合いに優れ、かつ低コストで製造することが可能な衛生用紙を提供する。
【解決手段】複数枚の原紙2,4の積層体6からなるマルチプライの衛生用紙1である。複数枚の原紙2,4には、その全面に亘ってエンボスが形成されており、積層体6を構成する1枚の原紙2における表面2a及び裏面2bのうち一方の面(表面2a)のみに全面に亘って保湿剤を塗工し、当該原紙2における他方の面(裏面2b)及び他の原紙4の表面4a及び裏面4bには保湿剤を塗工していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性、柔軟性、意匠性等を向上させるエンボスが形成されるとともに、柔軟性を付与する保湿剤を付着させた衛生用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパー、トイレットペーパー等の衛生用紙の分野においては、吸水性、肌当たりの柔らかさ、意匠性を向上させる等の目的で、原紙にエンボスを形成することが行われている。また、柔軟性を付与することを目的として、原紙に保湿剤を付着させることも行われている。
【0003】
そのような衛生用紙としては、例えば、基材紙(原紙)の表裏両面の全面に薄用紙処理剤(保湿剤や柔軟剤等)が塗布されているとともに、基材紙の表裏両面の全面にエンボスが形成された衛生薄用紙が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−240721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、前記衛生薄用紙は、保湿剤の塗布及びエンボス形成によって滑らかさ、柔らかさといった風合いが向上されている旨が記載されている。しかし、前記衛生薄用紙は、基材紙(原紙)の表裏両面の全面に保湿剤等を塗布するため、保湿剤を大量に使用する必要があり、製造コストが高いという課題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、滑らかさ、柔らかさといった風合いに優れ、かつ低コストで製造することが可能な衛生用紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、マルチプライの衛生用紙を構成する全ての原紙の全面に亘ってエンボスを形成するとともに、原紙のうち1枚の原紙における表面及び裏面のうち一方の面のみに全面に亘って保湿剤を塗工することによって、前記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す衛生用紙が提供される。
【0008】
[1]複数枚の原紙の積層体からなるマルチプライの衛生用紙であって、前記複数枚の原紙には、その全面に亘ってエンボスが形成されており、前記積層体を構成する1枚の原紙における表面及び裏面のうち一方の面のみに全面に亘って保湿剤を塗工し、当該原紙における他方の面及び他の原紙の表面及び裏面には前記保湿剤を塗工していない衛生用紙。
【0009】
[2]前記エンボスがマッチドスチールエンボスである前記[1]に記載の衛生用紙。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る衛生用紙は、滑らかさ、柔らかさといった風合いに優れ、かつ低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本発明に係る衛生用紙の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図1B】図1Aに示す衛生用紙の一部を拡大して模式的に示す側面図である。
【図2A】本発明に係る衛生用紙の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2B】図2Aに示す衛生用紙の一部を拡大して模式的に示す側面図である。
【図3A】本発明に係る衛生用紙を得るためのエンボスロールに形成されるエンボスパターンの一例を模式的に示す平面図である。
【図3B】図3Aに示すエンボスパターンをA−A’で切断した端面の一部を模式的に示すA−A’端面図である。
【図3C】図3Aに示すエンボスパターンをB−B’で切断した端面の一部を模式的に示すB−B’端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る衛生用紙を実施するための形態について図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える衛生用紙を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
[1]本発明に係る衛生用紙の特徴:
本発明に係る衛生用紙は、例えば図1A及び図1Bに示す衛生用紙1のように、複数枚の原紙2,4には、その全面に亘ってエンボス10が形成されており、積層体6を構成する1枚の原紙2における表面2a及び裏面2bのうち一方の面(表面2a)のみに全面に亘って保湿剤12を塗工し、当該原紙2における他方の面(裏面2b)及び他の原紙4の表面4a及び裏面4bには保湿剤を塗工していないものである。
【0014】
このように、マルチプライの衛生用紙1を構成する全ての原紙2,4の全面に亘ってエンボスが形成されていることにより、衛生用紙1に優れた柔軟性が付与される。また、原紙2に保湿剤12を塗工することで、滑らかさ、柔らかさといった風合いに優れる。更に、保湿剤12は積層体6を構成する1枚の原紙2における表面2a及び裏面2bのうち一方の面(表面2a)にしか塗工していないので低コストで製造することができる。原紙2の表面2aに塗工した保湿剤12は積層体6全体に浸透する。即ち、原紙2の表面2aに塗工した保湿剤12が経時的に原紙2の裏面2b、原紙4の表面4aを経て原紙4の裏面4bにまで浸透する。
【0015】
[2]本発明に係る衛生用紙の実施形態:
以下、本発明に係る衛生用紙を構成要素毎に説明する。
【0016】
[2―1]衛生用紙:
「衛生用紙」とは、液体や汚れを拭き取るための吸収性に優れた紙である。「衛生用紙」の種類について特に制限はなく従来公知の衛生用紙を用いることができる。具体的には、ティシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙等と呼ばれるもの)、ちり紙、ペーパータオル(キッチンペーパー等)、トイレットペーパー、ワッティング(紙綿)等の使い捨て紙(例えば、紙パルプ技術便覧第5版、第459頁参照、1992年1月30日発行、紙パルプ技術協会編集・発行)等を挙げることができる。
【0017】
本発明の衛生用紙は、トイレットロールのようなロール状のものであってもよいし、ティシュペーパーのようなシート状のものであってもよい。図1A及び図1Bに示す衛生用紙1は本発明をトイレットロールに適用した例であり、2枚の原紙2,4の積層体6からなる2プライの衛生用紙1が紙管8に巻回されてロール状に構成されている。一方、図2A及び図2Bに示す衛生用紙21は本発明をティシュペーパーに適用した例であり、2枚の原紙22,24の積層体26からなる2プライの衛生用紙21が折り畳まれ、積層された衛生用紙束36の状態でカートン34に収納されている。
【0018】
「マルチプライ」とは、衛生用紙が複数枚の原紙の積層体から構成されている形態を指す。代表的な例としては、図1A及び図1Bに示す衛生用紙1のような2枚の原紙2,4が積層された2プライの衛生用紙を挙げることができる。但し、本発明は、3枚以上の原紙が積層された3プライ以上のマルチプライ衛生用紙にも適用することができる。
【0019】
[2−2]原紙:
「原紙」は、衛生用紙の構成材料とある紙材料であり、従来公知の紙材料の中から衛生用紙の種類、用途等に応じて適宜選択すればよい。例えば、トイレットペーパー用であれば、坪量10〜25g/mに抄紙された原紙を、ティシュペーパー用であれば、坪量10〜18g/mに抄紙された原紙を好適に用いることができる。前記範囲内の原紙は強度と柔軟性のバランスに優れており、柔らかい触感を保ちつつ、適正な強度を有するものである。
【0020】
[2−3]エンボス:
「エンボス」とは、1対のロール間に対象物(原紙)を挟み込んで押圧し、ロール表面に形成された凸模様を原紙に型押しすることによって形成される型押し模様である。このエンボス加工によって、或いは、原紙に凹凸が形成され、空気層を含んだ嵩高い状態となるため、衛生用紙に柔軟性を付与することができる。
【0021】
「その全面に亘って」とは、プライボンディングを目的として製品(ロール状トイレットペーパー)の側縁部に該当する部分のみに形成されるエンボス(いわゆる「エッジエンボス」)を排除する趣旨である。ここで「側縁部」とは、最終製品である衛生用紙を製品の幅方向に三等分する平行線を引いた場合において、その平行線より幅方向外側の部分を意味するものとする。即ち、前記平行線で挟まれた部分(「幅方向中央部」と称することにする。)以外の部分である。
【0022】
原紙の全面に亘って形成されるエンボス(即ち、エッジエンボス以外のエンボス)としては、例えばマイクロエンボス等を挙げることができる。
【0023】
「マイクロエンボス」とは、主として柔軟性向上のために付されるエンボスである。より具体的には、頂面部の面積が0.01〜2mmのドットエンボスを意味する。通常、マイクロエンボスの頂面部は平面視した場合に円形状又は矩形状等の形状に形成され、長尺原紙の全面に均一に配置される。ドットの頂面形状は特に限定されないが、円形、楕円形、正方形、菱形等を挙げることができる。なお、エンボスの「頂面」とは、凸模様の頂部に形成される平面を意味する。
【0024】
「エンボス」は積層体を構成する全ての原紙の全面に亘って形成されている必要がある。即ち、2プライの衛生用紙であれば積層体を構成する2枚の原紙の全てに、3プライの衛生用紙であれば積層体を構成する3枚の原紙の全てに、全面に亘ってエンボスが形成されている必要がある。
【0025】
エンボスを形成する方法は、従来公知のエンボス形成方法の中から目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、マッチドスチール法、ラバースチール法、ネステッド法、ポイント・トゥー・ポイント法等の方法を挙げることができる。
【0026】
但し、本発明に係る衛生用紙には、マッチドスチール法によるエンボス(マッチドスチールエンボス)が形成されていることが好ましい。マッチドスチール法は、ロール周面にエンボスを形成する凸模様が形成されたエンボスロールと、ロール周面に凸模様と相補的な凹部が周面に形成された受けロール(凹ロール)との間に原紙を挟み込み押圧することによって、原紙に凸模様が型押しされたエンボスを形成する方法である。この方法は、ラバーエンボス法と比較して、衛生用紙の表裏両面に差異なくエンボス形成効果を付与することができる点で好ましい。
【0027】
本発明に係る衛生用紙は、マルチプライを構成する複数枚の原紙が全て積層された状態でエンボス、特にマッチドスチールエンボスが形成されたものであることが好ましい。このような構成により、積層された原紙同士がしっかり噛み合い、別途プライ剥がれ防止用のエッジエンボスやクリンプが形成されていなくても、プライボンディングの効果を得ることができる。但し、本発明に係る衛生用紙はエッジエンボスやクリンプが形成されていてもよい。このような形態はプライ剥がれをより効果的に防止することができる。
【0028】
本発明に係る衛生用紙は、頂面の面積0.2〜1.5mm、深さ0.6〜1.2mmのエンボスが複数形成されたものであることが好ましい。
【0029】
1つのエンボスの頂面の面積を0.2〜1.5mmの範囲内とすることによって、良好な肌触りを得ることができる。一方、面積が0.2mm未満であると、エンボスが鋭利な形状となり、エンボスを触った際の刺激が強くなり易いため、良好な触感・肌触りが得られないおそれがある。逆に、面積が1.5mmを超えると、衛生用紙に十分な柔軟性を付与し難くなり、良好な肌触りを得られなくなる場合がある。
【0030】
また、エンボスの深さを0.6〜1.2mmの範囲内とすることによって、プライ剥がれを有効に防止することができ、しかも良好な肌触りを得ることができる。一方、エンボスの深さが0.6mm未満であると、プライ剥がれを防止する効果が不十分となるおそれがある。逆に、エンボスの深さが1.2mmを超えると、エンボスが鋭利な形状となり、エンボスを触った際の刺激が強くなり易いため、良好な触感・肌触りが得られない場合がある。
【0031】
更に、エンボスの形状を頂面の形状を真円形状又は楕円形状とすることによって、滑らかで良好な肌触りが得られる。但し、エンボス形状は前記形状に限定されるものではなく、正方形、矩形、菱形等であってもよい。
【0032】
また、本発明に係る衛生用紙は、エンボスが10〜100個/cmの密度で形成されていることが好ましい。エンボスの密度を10〜100個/cmの範囲内とすることによって、良好な肌触りを得られる。一方、エンボスの密度が10個/cm未満であると、衛生用紙に十分な柔軟性を付与することができなくなり、良好な肌触りを得られなくなるおそれがある。逆に、エンボスの密度が100個/cmを超えると、結果的にエンボス頂面の面積が小さくなる。従って、エンボスが鋭利な形状となり、エンボスを触った際の刺激が強くなり易いため、良好な触感・肌触りが得られない場合がある。
【0033】
本発明に係る衛生用紙において、エンボスの配置パターンは特に限定されないが、エンボスを格子の交点に配置するエンボスパターン又はエンボスを千鳥に配置するエンボスパターンで形成されていることが好ましい。例えば、図3A〜図3Cに示すエンボスパターン50は凸模様52を千鳥に配置した例である。このようなエンボスパターンを1つのブロックとして、当該ブロックを前後左右に繰り返されるパターンで凸模様が形成されたエンボスロールを用いてエンボスを形成すればよい。
【0034】
[2−4]保湿剤:
本発明に係る衛生用紙には、保湿剤が塗工されている。エンボス形成と保湿剤の効果が相俟って衛生用紙の柔軟性が一層向上する。
【0035】
本発明に係る衛生用紙は、積層体を構成する1枚の原紙における表面及び裏面のうち一方の面のみに全面に亘って保湿剤を塗工し、当該原紙における他方の面及び他の原紙の表面及び裏面には保湿剤を塗工していない点に特徴がある。例えば、図1A及び図1Bに示すような2プライの衛生用紙1であれば、積層体6を構成する1枚の原紙2における表面2a及び裏面2bのうち一方の面(表面2a)のみに全面に亘って保湿剤12を塗工し、当該原紙2における他方の面(裏面2b)並びに他の原紙4の表面4a及び裏面4bには保湿剤を塗工していない。
【0036】
このような構成によれば、積層体6の表裏両面(原紙2の表面2a,原紙4の表面4a)の全面に亘って保湿剤を塗工した場合と比較して半量、原紙2,4の表裏両面(原紙2の表面2a,裏面2b及び原紙4の表面4a,裏面4b)の全面に亘って保湿剤を塗工した場合と比較して1/4量に低減することができる。また、保湿剤を1面のみに塗工するため、保湿剤の塗工・噴霧装置が1基で足り、簡易な設備により製造することができる。
【0037】
なお、図1A及び図1Bには積層体6を構成する原紙2の外部に露出する面(表面2a)のみに保湿剤を塗工した例を示したが、図2A及び図2Bに示す衛生用紙21のように、積層体26を構成する原紙24の外部に露出しない面(裏面24b)のみに保湿剤32を塗工してもよい。原紙2の表面2aに塗工した保湿剤12は積層体6全体に浸透する。即ち、原紙2の表面2aに塗工した保湿剤12が経時的に原紙2の裏面2b、原紙4の表面4aを経て原紙4の裏面4bにまで浸透する。
【0038】
また、図1A及び図1Bには2プライの衛生用紙の例を示したが、3プライ以上の衛生用紙は積層体の最外層を構成する原紙に加えて、中間層を構成する原紙が存在する。3プライ以上の衛生用紙の場合には、2プライの衛生用紙と同様に、最外層を構成する2枚の原紙のうち一方の原紙の表面及び裏面のうち一方の面のみに全面に亘って保湿剤を塗工すればよい。また、中間層を構成する原紙の表面及び裏面のうち一方の面のみに全面に亘って保湿剤を塗工してもよい。いずれの形態であっても、一方の面に保湿剤を塗工した原紙の他方の面、並びに積層体を構成する他の原紙の表面及び裏面には保湿剤を塗工しない。この場合にも、一方の原紙の一方の面に塗工した保湿剤は積層体全体に浸透する。
【0039】
保湿剤の種類は特に限定されず、衛生用紙(保湿ティシュ等)に用いられてきた従来公知の保湿剤を好適に用いることができる。例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類;グルコール酸系薬剤及びその誘導体;セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール;流動パラフィン等を挙げることができる。
【0040】
また、前記成分に加えて、或いは単独で、グリシン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、シスチン、システイン等のアミノ酸;アロエエキス、アマチャエキス、アシタバエキス、カリンエキス、キュウリエキス、スギナエキス、トマトエキス、ノバラエキス、ヘチマエキス、ユリエキス、レンゲソウエキス等の植物抽出エキス;オリーブ油、ホホバ油、ローズヒップ油、アーモンド油、ユーカリ油、アボカド油、ツバキ油、大豆油、サフラワー油、ゴマ油、月見草油等の植物油;ビタミン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、キトサン、尿素、ハチミツ、ローヤルゼリー、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、スクワラン、ワセリン等を保湿剤として用いてもよい。
【0041】
保湿剤は、原紙に対して1〜3g/mの割合で塗工することが好ましい。付着量を1g/m以上とすることにより、柔軟性を確実に発現させることが可能となる。また、3g/m以下とすることにより、保湿剤の量が多すぎて紙力が弱くなり、以後の工程で紙切れが起こるという不具合を効果的に防止することができる。
【0042】
保湿剤の付着は、グラビアロール等による塗工、スプレー式の噴霧器等による噴霧等、従来公知の方法により行うことができる。
【実施例】
【0043】
本発明に係る衛生用紙について、図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明は、その発明特定事項を備えた衛生用紙を全て包含するものであり、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
図1A及び図1Bに示す衛生用紙1を製造した。衛生用紙1は、2枚の原紙2,4の積層体6からなる(いわゆるダブルのトイレットロール)。原紙2,4としては、坪量が17g/mのトイレットペーパー用原紙を用いた。
【0045】
図1A及び図1Bに示す衛生用紙1は、原紙2,4を積層した積層体6の状態でマッチドスチール法によりその全面に亘ってエンボス10を形成したものである。このエンボスは、図3A〜図3Cに示すエンボスパターン50が刻設されたエンボスロールにより形成した。
【0046】
エンボスパターン50は一つの凸模様52が四角錘台状に形成されている。凸模様52は頂面52aの横幅W1が0.9mm、縦幅W2が0.9mmの正方形状、底面の横幅W3が1.1mm、縦幅W4が1.2mmの矩形状、高さHは1mmとした。更に、凸模様52の幅方向のピッチP1は3.6mm、周方向のピッチP2は3.6mmとした。
【0047】
図1A及び図1Bに示す衛生用紙1は、積層体6を構成する1枚の原紙2における表面2a及び裏面2bのうち一方の面(表面2a)のみに全面に亘って保湿剤12を塗工した。保湿剤としてはグリセリンを用いた。原紙2への付着量は2g/mとした。原紙2における他方の面(裏面2b)及び他の原紙4の表面4a及び裏面4bには保湿剤を塗工しなかった。原紙2の表面2aに塗工した保湿剤12は積層体6全体に浸透した。
【0048】
なお、紙管8としては、外径39mmφ、厚さ0.5mmのボール紙からなる紙管を用いた。衛生用紙1の幅は114mm、巻取り長さは30mとした。
【0049】
(実施例2)
図2A及び図2Bに示す衛生用紙21を製造した。衛生用紙21は、2枚の原紙22,24の積層体26からなる(いわゆる2プライのティシュペーパー)。原紙22,24としては、坪量が13g/mのティシュペーパー用原紙を用いた。
【0050】
図2A及び図2Bに示す衛生用紙21は、原紙22,24を積層した積層体26の状態でマッチドスチール法によりその全面に亘ってエンボス30を形成したものである。このエンボス30は、実施例1と同様に図3A〜図3Cに示すエンボスパターン50が刻設されたエンボスロールにより形成した。
【0051】
図2A及び図2Bに示す衛生用紙21は、積層体26を構成する1枚の原紙24における表面24a及び裏面24bのうち一方の面(裏面24b)のみに全面に亘って保湿剤32を塗工した。保湿剤としてはグリセリンを用いた。原紙24への付着量は2g/mとした。原紙24における他方の面(表面24a)及び他の原紙22の表面22a及び裏面22bには保湿剤を塗工しなかった。原紙24の裏面24bに塗工した保湿剤32は積層体26全体に浸透した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の衛生用紙は、ティシュペーパー、ペーパータオル、トイレットペーパー等の衛生用紙として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1:衛生用紙、2,4:原紙、6:積層体、8:紙管、10:エンボス、12:保湿剤、21:衛生用紙,22,24:原紙、26:積層体、30:エンボス、32:保湿剤、34:カートン、36:衛生用紙束、50:エンボスパターン、52:凸模様、52a:頂面、W1:横幅、W2:縦幅、W3:横幅、W4:縦幅、H:高さ、P1:ピッチ、P2:ピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の原紙の積層体からなるマルチプライの衛生用紙であって、
前記複数枚の原紙には、その全面に亘ってエンボスが形成されており、
前記積層体を構成する1枚の原紙における表面及び裏面のうち一方の面のみに全面に亘って保湿剤を塗工し、
当該原紙における他方の面及び他の原紙の表面及び裏面には前記保湿剤を塗工していない衛生用紙。
【請求項2】
前記エンボスがマッチドスチールエンボスである請求項1に記載の衛生用紙。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2011−224151(P2011−224151A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96835(P2010−96835)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(707001643)関西紙株式会社 (1)
【Fターム(参考)】