説明

衛生紙用風合い向上剤

【課題】べたつき感や油性感を抑え、柔らかさ、しっとり感に加え、ぬめり感が得られ、肌触りがより良好な衛生紙が得られる衛生紙用風合い向上剤を提供する。
【解決手段】式(1)で示される化合物と無水マレイン酸との共重合体、または、その加水分解物もしくは塩(A)と、グリセリン(B)からなる衛生紙用風合い向上剤であって、該共重合体が、式(1)の化合物と無水マレイン酸とをモル比4:6〜6:4で重合し、重量平均分子量が10000〜100000である共重合体であり、(A)と(B)との質量比が、1/99〜15/85である、衛生紙用風合い向上剤。R−O−(AO)n−R(1)(式中、Rは炭素数2〜5のアルケニル基、Rは水素原子または炭素数1〜22のアルキル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜50である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生紙用風合い向上剤に関し、詳細には塗布することでしっとり感、柔らかさに加えて衛生紙に良好なぬめり感を付与する衛生紙用風合い向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生紙、中でも、ティシュペーパーは直接肌に使用するために、より柔らかい使用感が求められている。
【0003】
しかし近年では、消費者の嗜好の多様化により、柔らかい使用感のみならず、しっとりとした使用感や衛生紙表面の感触を向上させることが求められている。そこで、薬剤をティシュペーパーに含有させ、柔らかさに加え、しっとり感や表面の感触を向上させた高級タイプのティシュペーパー、いわゆるローションティシューが市販され、繰り返して鼻をかんでも肌がヒリヒリし難い等として人気を呼んでいる。
【0004】
柔らかさとしっとり感を向上させる方法として、水溶性の保湿成分を紙に含有させる方法がある。特許文献1には、多価アルコールと保水性を有する糊量を含有する紙、特許文献2には、多価アルコールと寒天を含有する紙が開示されている。しかし、これらの方法では、水溶性の保湿成分に由来するべたつき感が生じる場合があった。
【0005】
そこで、べたつき感を改善するために、多価アルコールと油性成分を紙に含有させる方法がある。特許文献3には、多価アルコールと流動パラフィンを紙に含有する紙が開示されている。しかし、この方法では、使用時に油性成分が皮膚に移って脂ぎった感触である油性感を与えるという問題があった。
【0006】
このように、従来の方法では、ティシュペーパーにしっとり感や柔らかい使用感を与えると共に、肌触りとしてべたつき感や油性感を抑えることは十分ではなく、付与される表面性も平滑感が主であった。更に、肌触りを向上させるために柔らかさやしっとり感を与えると共にべたつき感や油性感を抑え、表面性として平滑感がありながら適度な摩擦感を有するぬめり感が感じられるティシュペーパーが求められている。
【特許文献1】特開平5−156596号公報
【特許文献2】特開2003−199685号公報
【特許文献3】特開平7−082662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、べたつき感や油性感を抑え、柔らかさ、しっとり感に加え、ぬめり感が得られ、肌触りがより良好な衛生紙が得られる衛生紙用風合い向上剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、式(1)で示される化合物と無水マレイン酸との共重合体とグリセリンとを組み合わせることにより、衛生紙に、柔らかさやしっとり感に加え、ぬめり感を付与し、良好な肌触りが得られることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、
式(1)で示される化合物と無水マレイン酸との共重合体、または、その加水分解物もしくは塩(A)と、グリセリン(B)からなる衛生紙用風合い向上剤であって、該共重合体が、式(1)の化合物と無水マレイン酸とをモル比4:6〜6:4で重合し、重量平均分子量が10000〜100000である共重合体であり、(A)と(B)との質量比が、1/99〜15/85である、衛生紙用風合い向上剤、
−O−(AO)n−R (1)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルケニル基、Rは水素原子または炭素数1〜22のアルキル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜50である。)
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の風合い向上剤により、べたつき感や油性感を抑え、柔らかさ、しっとり感に加え、ぬめり感が付与された良好な肌触りの衛生紙を提供することができ、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に更に詳細に発明の説明をする。
【0012】
本発明の風合い向上剤に使用する化合物(A)は式(1)で示された化合物と無水マレイン酸との共重合体または、その加水分解物もしくは塩である化合物である。
【0013】
式(1)において、Rで示されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基などが挙げられる。好ましくはアリル基である。Rは水素原子または炭素数1〜22のアルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクダデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いても良い。
【0014】
式(1)においてAOで示されるオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基1.2−オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基が挙げられ、1種または2種以上併用しても良い。2種のオキシアルキレン基を付加する場合、付加形状はブロック状であってもランダム状であっても良い。また、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表しnは1〜50である。nが50を超えると、粘度が高くなり取扱い性が悪くなる場合がある。好ましくは5〜40である。
【0015】
式(1)で示される化合物と無水マレイン酸を重合する際のモル比は、6:4〜4:6である。
【0016】
式(1)で示される化合物と無水マレイン酸の共重合体は、有機溶剤中または水系溶剤中で溶液重合、あるいは無溶剤で塊状重合によって得られる。得られた共重合体は、加水分解を行い、加水分解物としても、加水分解物を塩基性化合物で中和した塩としても使用することができる。この際に使用する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニアや有機アミン等が挙げられる。好ましくはアルカノールアミンである。
【0017】
本発明に用いる、式(1)の化合物と無水マレイン酸の共重合体の重量平均分子量は10000〜100000であり、好ましくは10000〜50000である。重量平均分子量が10000未満の場合、十分なぬめり感が得られない場合があり、100000を超えると十分な柔らかさが得られない場合がある。
本発明の共集合体には、本発明の効果に影響を与えない範囲で、本発明の共重合体に使用する単量体と共重合可能な、他の単量体を用いることができる。このような単量体としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどを挙げることができる。
本発明の衛生紙用風合い向上剤は、式(1)で示される化合物と無水マレイン酸との共重合体またはその加水分解物もしくは塩(A)とグリセリン(B)からなる。(A)と(B)との質量比は1/99〜15/85であり、好ましくは5/95〜10/90である。(A)と(B)の質量が1/99未満の場合、十分なぬめり感が得られず、(A)と(B)の質量比が15/85を超えると摩擦感が強く感じられるなど良好なぬめり感が得られない場合がある。また、しっとり感も十分に得られない場合がある。
【0018】
本発明において、衛生紙用風合い向上剤は取扱い性を良くするために溶媒を用いて粘度を低減させて使用することができる。また、本風合い向上剤にはその他任意の成分を配合することも可能である。例えば、油性成分、界面活性剤、防腐剤などが挙げられる。
【0019】
本発明に用いる衛生紙はティシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー等が挙げられる。
【0020】
本発明の衛生紙用風合い向上剤を塗布する方法としては、コーターまたは印刷機による塗布法、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。衛生紙に塗布する量は、紙に対して、10〜30質量%が好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
【0022】
実施例に使用した共重合体(A)については、表1に示す式(1)の化合物と、無水マレイン酸との共重合体を用いた。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた。
【0023】
【表1】

【0024】
(衛生紙用風合い向上剤組成物の調製)
化合物1を5質量%、グリセリンを79質量%、イオン交換水を15質量%、トリエタノールアミンを1質量%混合して風合い向上剤組成物1を得た。風合い向上剤組成物2〜10については風合い向上剤組成物1と同様に表2〜3に示す割合で混合し、風合い向上剤組成物を調製した。なお、表中の%は質量%を示す。
【0025】
(衛生紙用風合い向上剤塗布ティシュペーパーの調製)
調製した風合い向上剤組成物を、ハンドスプレーを用いてティシュペーパー1枚(市販されている2枚1組を1枚とする)に噴霧した。表中の塗布量は風合い向上剤組成物噴霧前後のティシュペーパーの重量差から求めた。
【0026】
(衛生紙用風合い向上剤の評価)
女性パネラー5人により、風合い向上剤組成物1〜10を塗布したティシュペーパーの「ぬめり感」、「柔らかさ」、「しっとり感」について比較例1を4段階評価の2としたときの相対的な評価を下記評価基準に従い評価を行った。各項目において5人の評価の平均点が2.6点以上の場合を優れていると判断した。風合い向上剤組成物1〜10を塗布したティシュペーパーは室温23℃、湿度50%の恒温恒湿室で48時間保管した後に評価に用いた。結果を表2〜3に示す。
<ぬめり感の評価基準>
4点:非常に良好である。
3点:良好である。
2点:比較例1と同じ。
1点:良好でない。
<柔らかさの評価基準>
4点:非常に柔らかい。
3点:柔らかい。
2点:比較例1と同じ。
1点:硬い。
<しっとり感の評価基準>
4点:非常にしっとりとしている。
3点:しっとりしている。
2点:比較例1と同じ。
1点:しっとりしていない。
【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
表2に示すように実施例1〜7の風合い向上剤は、ぬめり感、柔らかさ、しっとり感のいずれも良好なティシュペーパーを得ることができる。これに対して、表3に示すように比較例1では式(1)で示される化合物と無水マレイン酸の共重合体を使用していないのでぬめり感が特に不十分である。比較例2はポリビニルアルコールを使用したため,特にぬめり感および柔らかさが不十分である。比較例3は(A)成分(B)成分の質量比が本発明の範囲を外れており、ぬめり感、柔らかさ、しっとり感いずれも不十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される化合物と無水マレイン酸との共重合体、または、その加水分解物もしくは塩(A)と、グリセリン(B)からなる衛生紙用風合い向上剤であって、該共重合体が、式(1)の化合物と無水マレイン酸とをモル比4:6〜6:4で重合し、重量平均分子量が10000〜100000である共重合体であり、(A)と(B)との質量比が、1/99〜15/85である、衛生紙用風合い向上剤。
−O−(AO)n−R (1)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルケニル基、Rは水素原子または炭素数1〜22のアルキル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜50である。)

【公開番号】特開2010−24560(P2010−24560A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184628(P2008−184628)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】