説明

衛生薄葉紙収納製品の包装袋

【課題】把手フィルムの接合部分及びその周辺部が必要以上に塑性伸長し力が分散して開封が困難になることを防止する。
【解決手段】上記課題は、衛生薄葉紙収納製品を包装する包装フィルム11と、両端部が包装フィルム11の両側面に対してそれぞれ接合された帯状の把手フィルム12とを備えており、包装11フィルムは、5N/25mmでの高さ方向の伸び率が2.5〜3.3%であり、把手フィルム12は、ポリエチレンを79〜95重量%及びポリ乳酸を5〜18重量%含有し、且つポリエチレン:ポリ乳酸の比率が79:18〜95:5、5N/25mmでの長手方向の伸び率が1.50〜2.10%である、包装袋X1により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパーやキッチンペーパーなどが収められた衛生薄葉紙収納製品の包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ティシュペーパーやキッチンペーパーなどが収められた衛生薄葉紙収納箱は、フィルム包装袋で複数個まとめて包装されている。近年の包装形態では、包装袋の一方の側面上部から上面を通り他方の側面上部まで延在する帯状の把手フィルムが、その両端部のみ両側面に熱融着(溶着)により接合(連結)され、接合部間の自由部分を把持することにより容易に持ち運びできるようになっている。また、このような包装形態では、持ち運びの耐久性を持たせるため、通常は開封のためのミシン目が設けられておらず、開封に際しては包装体下部や包装体側部の融着部端部から引き剥がし開封する、把手フィルムを上方へ引っ張る、あるいは把手フィルムの融着部耳部(後述の非接合部14)を上方へ引っ張ることにより、包装フィルムを把手フィルムとの接合部から破くという方法が採られているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−341724号公報
【特許文献2】特開2007−153383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の包装袋では、把手フィルムの接合部分及びその周囲部が必要以上に塑性伸長し、力が分散して開封に必要以上の力が必要になる等、開封が困難となる事態が発生することがあった。
そこで、本発明の主たる課題は、把手による運搬、把手の垂直方向での引張り強度を保持しつつ、把手フィルムの融着部耳部を上方へ引っ張ることにより容易に開封できる包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手法として、把手フィルムの素材を塑性伸長し難いものに変更することが考えられたが、一般的な塑性伸長し難いフィルムを用いた場合、柔らかさが損なわれて手で持ち難いものとなってしまう。以下に述べる本発明は、このような知見に基づくものである。
【0006】
〔請求項1に係る発明〕
衛生薄葉紙収納製品を包装する包装フィルムと、
両端部が前記包装フィルムの両側面に対してそれぞれ接合された帯状の把手フィルムとを備えており、
前記包装フィルムは、5N/25mmでの高さ方向の伸び率が2.5〜3.3%であり、
前記把手フィルムは、ポリエチレンを79〜95重量%及びポリ乳酸を5〜18重量%含有し、且つポリエチレン:ポリ乳酸の比率が79:18〜95:5、5N/25mmでの長手方向の伸び率が1.50〜2.10%である、
ことを特徴とする衛生薄葉紙収納製品の包装袋。
【0007】
(作用効果)
本発明の把手フィルムは、ポリエチレン及びポリ乳酸のコンパウンドであり、塑性変形し難いものである。そのため、把手フィルムを引っ張り開封する際、把手フィルムの接合部及びその周囲部が必要以上に塑性伸長することがなく、開封のための力が接合部分に集中し、接合部の周囲で包装フィルムを容易に破ることができる、しかも、本発明の把手フィルムは塑性変形し難いものでありながら十分な柔軟性(弾性変形)を持ち合わせているため、手にきつく当たり難く、持ち易いものである。
【0008】
また、把手フィルムのポリ乳酸としては植物由来のものを用いることができ、その場合、廃棄される把手フィルムの焼却処分におけるCO2排出量の点で環境負荷の低いものとなるという利点もある。
【0009】
なお、伸び率とは、幅25mm×長さ70mmの試験片を採取して、JIS P 8113に準拠し、チャッキング間隔を50mmとして、100mm/分の速度で引っ張り、所定荷重(上記の場合5N/25mm)時に測定される伸び率(%)を意味する。
【0010】
〔請求項2に係る発明〕
前記包装フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエステルの少なくとも一種からなるものであり、且つ、前記把手フィルムと相互に熱融着されている、請求項1に記載の衛生薄葉紙収納製品の包装袋。
【0011】
(作用効果)
本発明の把手フィルムと包装フィルムとの接合部は熱融着によって形成することが好ましく、その場合、包装フィルムはこれらの材質であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、把手による運搬、把手の垂直方向での引張り強度を保持しつつ、把手フィルムの融着部耳部を上方へ引っ張ることにより容易に開封できるものでありながら、把手フィルムは十分に柔軟で持ち易い等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る衛生薄葉紙収納製品の包装袋の実施形態を示す図であり、5つの衛生薄葉紙収納箱を包装した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る衛生薄葉紙収納箱の包装袋の実施形態を、図1を参照しつつ説明する。なお、図1中の矢印Uは上方向を、矢印Dは下方向を、矢印LRは左右方向を、矢印FBは前後方向を、それぞれ示しているが、これらは説明の便宜上用いたものに過ぎない。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る衛生薄葉紙収納箱の包装袋X1は、主として、5個の衛生薄葉紙収納箱Cと、包装フィルム11と、把手フィルム12とから構成されている。
【0016】
5つの衛生薄葉紙収納箱Cは、すべて同一の形状とされており、ボール紙を直方体状に形成したものであり、内部にティシュペーパーやキッチンペーパーなどの衛生薄葉紙(図示しない)が折りたたまれて収納されている。これらの衛生薄葉紙収納箱Cの上面には、例えば特開2009−083866号公報に示されるような、環状のミシン目が設けられており、これらのミシン目を切り剥がすことによって、衛生薄葉紙収納箱Cの内部に収納された衛生薄葉紙を取出し可能な取出口(図示しない)が形成されるようになっている。これらの衛生薄葉紙収納箱Cは、上下方向長さが40〜110mm、左右方向長さが220〜250mm、前後方向長さが100〜130mm、1個あたりの重さが150〜300gとなるよう形成されている。
【0017】
5つの衛生薄葉紙収納箱Cは、上下に縦長な直方体状を成すように、上下方向に沿って5段に積まれており、筒状に形成された包装フィルム11を被せて、その上下を封することによって、一括して包装されている。包装フィルム11の袋化は、キャラメル包装やシュリンク包装などの既知の手段によって行われる。
【0018】
5つの衛生薄葉紙収納箱Cを包む包装フィルム11に対して、その左右側面及び上面に跨るように帯状の把手フィルム12が配置されるとともに、把手フィルムの両端部が左右側面に対してそれぞれ熱融着によって接合されており、これにより左右一対の接合部13が形成されている。両接合部間の部分は包装フィルム11に接合されておらず、この部分と包装フィルム11との間に手を入れることにより、把手フィルム12を手で掴むことができる。
【0019】
左右の接合部13の位置は適宜定めることができるが、図示例では、略同じ高さ(図示例の場合、一番上に配置された衛生薄葉紙収納箱Cの左右両側面と重なる高さ)でそれぞれ前後方向中央に位置している。把手フィルムの寸法及び各接合部13の寸法形状は適宜定めることができるが、通常の場合、把手フィルム12は幅40〜70mm、長さ300〜420mm程度とするのが好ましく、接合部13は図示のような矩形状とするのが好ましく、接合部13の寸法は、上下方向長さ30〜50mm、前後方向長さ40〜60mm程度とするのが好ましい。なお、通常の場合、把手フィルム12の長さ方向とMD方向(把手フィルム12製造時におけるライン流れ方向)とは一致している。
【0020】
把手フィルム12は各接合部の先端側(下側)に、包装フィルム11の側面に接合されていない非接合部14を有している。この非接合部14は、手で掴むことができる程度の寸法、例えば7〜30mm程度の長さ確保されており、包装フィルム11の開封時にこれらの非接合部を手で掴んで引っ張ることによって、包装フィルム11を接合部13の周囲から破いて開封することができる。もちろん、把手フィルム12における両接合部間の部分を掴んで引っ張ることによっても同様に開封することができる。本発明は、包装フィルム11に開封のためのミシン目が形成されない場合に好適であるが、包装フィルムにミシン目が形成されている形態に適用し、ユーザーが開封手法を選択するようにしても良い。
【0021】
特徴的には、包装フィルム11は5N/25mmでの高さ方向の伸び率が2.5〜3.3%、特に9.0〜12.0%とされるとともに、把手フィルム12は5N/25mmでの長手方向の伸び率が1.50〜2.10%、特に1.58〜1.75%とされる。包装フィルムの伸び率は原料物質の種類(樹脂配合含む)や分子量、フィルム厚、製造時の延伸等により適宜調整することができ、把手フィルムの伸び率は、原料物質の種類(樹脂配合含む)や分子量、フィルム厚、製造時の延伸の他、後述するポリ乳酸の配合量等により適宜調整することができる。
【0022】
把手フィルム12の伸び率が上記範囲内にあっても、包装フィルム11の高さ方向の伸び率が高過ぎると包装フィルム11が不用意に伸び易くなり、包装フィルム11の高さ方向の伸び率が低過ぎると、開封に要する力が過大となる。また、包装フィルム11の伸び率が上記範囲内にあっても、把手フィルム12の長さ方向の伸び率が高過ぎると、把手フィルム12を引っ張って開封する際に把手フィルム12の接合部分及びその周囲部が必要以上に塑性伸長し、力が分散して開封に必要以上の力が必要になり、把手フィルム12の高さ方向の伸び率が低過ぎると、把手フィルム12と包装フィルム11との間に手を入れ難くなる又は手を入れたときにきつく感じ易くなる。
【0023】
また特徴的には、把手フィルム12は、ポリエチレンを79〜95重量%及びポリ乳酸を5〜18重量%含有し、且つポリエチレン:ポリ乳酸の比率が79:18〜95:5の樹脂フィルムとされる。このような配合の樹脂フィルムは伸び率を上記範囲内に抑えても柔軟性に富み、把手としての持ち易さが損なわれないものである。ポリ乳酸が多過ぎると伸び率及び柔軟性が低下し過ぎ、把手フィルムを引っ張ることによる開封は容易となるが、持ち難いものとなる。一方、ポリ乳酸が少な過ぎると、伸び率を十分に抑えることができず、把手フィルム12を引っ張って開封する際に把手フィルム12の接合部分及びその周囲部が必要以上に塑性伸長し、力が分散して開封に必要以上の力が必要になる。
【0024】
把手フィルム12に用いるポリエチレンとしては、LLDPE、LDPE、HDPEが挙げられ、その中でも特に、耐久性とティシュペーパーの保持力に優れる理由からLLDPEを主原料とし、HDPEを25〜45重量%(把手フィルム12における割合)程度混合するのが好ましいい。
【0025】
ポリ乳酸としては、乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、乳酸またはラクチドと他のヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、環状ラクトンとの共重合体、またはこれらの混合体が挙げられ、植物由来のものが好適に用いられる。ポリ乳酸の数平均分子量は、5万から30万の範囲であることが好ましく、8万から15万であることがより好ましい。数平均分子量が5万未満の場合は、得られるフィルムの機械的強度が不十分となり、また、延伸や巻取の工程中での切断も頻繁に起こり、操業性の低下を招く。一方、数平均分子量が30万を超えると、加熱溶融時の流動性が乏しくなって製膜性が低下する。
【0026】
一方、包装フィルム11の材質は特に限定されないが、把手フィルム12に融点が近く融着し易いという点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエステルの少なくとも一種からなる樹脂フィルムが好ましい。
【0027】
包装フィルム11及び把手フィルム12には、上記原料樹脂の他に、フィルム同士が意図せず接着するのを防止するためのアンチブロッキング剤、およびフィルムの滑りを適度に調整するためのスリップ剤を配合することができ、その配合量は合計で3重量%以下、多くても6重量%以下とするのが望ましい。
【0028】
把手フィルム12の厚みは、50〜70μmが適する。把手フィルム12が薄過ぎると切れ易くなり、逆に厚過ぎると材料コストが嵩むだけでなく、接合部13の熱融着の品質安定性を確保するのが困難となる。包装フィルム11の厚みは、20〜30μmが適する。把手フィルム12が薄過ぎると破れ易くなり、逆に厚過ぎると材料コストが嵩むだけでなく、接合部13の熱融着の品質安定性を確保するのが困難となる。
【0029】
これらのフィルムを製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、Tダイ法やインフレーション法といったエキストルージョン(溶融押出)法、キャスティング(溶液流延)法、カレンダー法など任意の方法を採用することができる。特に、フィルムの製造法としては、Tダイ法やインフレーション法が好ましい。
【0030】
なお、本実施例では、衛生薄葉紙収納箱Cの数を5個としたが、衛生薄葉紙収納箱Cの数は特に限定されず何個でも良い。
【実施例】
【0031】
上述の実施形態と同様の構造(接合部は熱融着により形成した)の包装袋を、表1(本発明に係る実施例)及び表2(本発明に含まれない比較例)に示すように各種用意し、把手強度、及び開封強度を測定し、開封のし易さ、及び持ちやすさについて評価した。表に示されない条件については各例共通とした。
【0032】
なお、伸び率は前述の方法により測定(包装フィルムにおいては、5N/25mm荷重時だけでなく、10N/25mm荷重時についても測定)した。
【0033】
また、把手強度については、衛生薄葉紙収納箱の包装袋の下面を固定し、プッシュプルゲージで把手フィルム12を掴んだ状態で垂直に上方へ引っ張り、把手フィルム12が破断した時点、もしくは把手フィルム12と包装フィルム11との融着部が包装フィルム11から破れ剥がれた時点のプッシュプルゲージの引っ張り力(kgf)とした。
【0034】
開封強度については、把手フィルム12先端の非接合部14をプッシュプルゲージで掴んだ状態で上方へ引っ張り、包装フィルム11が破れた時点のプッシュプルゲージの引っ張り力(kgf)とした。
【0035】
接合部からの開封のし易さについては、把手フィルム12先端の非接合部14を上方へ持ち上げるように引っ張って開封した時の開封のし易さについて、4段階で官能評価した。
【0036】
持ち易さについては、把手フィルム12の中央を片手で把持し、そのままの状態で1.6kmを徒歩で持ち歩いた際に、手になじむように適度な幅を保つものを◎、運搬に問題はないが把手の幅が狭くなり指先に食い込み、重さをより感じるものを○、運搬に問題はないが把手のフィルムシートに柔軟性がなく手に馴染まず、フィルムの端部が手に当りやや痛く感じるものを△、運搬時に把手が切れたり、把手が細くなって手が痛くなる問題があるものを×として、4段階で評価した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1に示す結果から、実施例に係る包装袋は、比較例に係る衛生薄葉紙収納箱の包装袋に比べて開封しやすく、持ちやすいことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ティシュペーパーやキッチンペーパーなどが収められた衛生薄葉紙収納製品であれば、収納箱を包装するものに限られず、ウェットティッシュやポケットティッシュのように衛生薄葉紙を袋詰めしたものを外装包装する包装袋においても利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
X1・・・衛生薄葉紙収納箱の包装袋
11・・・包装フィルム
12・・・把手フィルム
C・・・衛生薄葉紙収納箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生薄葉紙収納製品を包装する包装フィルムと、
両端部が前記包装フィルムの両側面に対してそれぞれ接合された帯状の把手フィルムとを備えており、
前記包装フィルムは、5N/25mmでの高さ方向の伸び率が2.5〜3.3%であり、
前記把手フィルムは、ポリエチレンを79〜95重量%及びポリ乳酸を5〜18重量%含有し、且つポリエチレン:ポリ乳酸の比率が79:18〜95:5、5N/25mmでの長手方向の伸び率が1.50〜2.10%である、
ことを特徴とする衛生薄葉紙収納製品の包装袋。
【請求項2】
前記包装フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエステルの少なくとも一種からなるものであり、且つ、前記把手フィルムと相互に熱融着されている、請求項1に記載の衛生薄葉紙収納製品の包装袋。

【図1】
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【公開番号】特開2010−275011(P2010−275011A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132604(P2009−132604)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】