説明

衝撃吸収ダンパ

【課題】記憶装置とそれを収納する収納部材との間の高さ方向のダンパ用スペースが低くなった場所に装着する場合であっても、高さ方向の衝撃を十分に吸収することができるダンパを提供する。
【解決手段】記憶装置2と収納部材3との間に装着されZ方向に突出しZ方向の衝撃入力を収縮により緩衝する高さ方向ダンパ4とX方向に突出しX方向の衝撃入力を収縮により緩衝する幅方向ダンパ5とを備える衝撃吸収ダンパ1において、
幅方向ダンパ5は、一端51が記憶装置2に固着され、Z方向の衝撃入力に対しZ方向に所定距離相対動したときに収納部材3に固着されている停止部6と他端52が当接して剪断変形し、衝撃を緩衝するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯用ハードディスク装置・携帯用光学式ディスクプレーヤ装置等の記憶装置等を内蔵した携帯可能な装置の防振技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶装置を内蔵する、例えばパソコン・音楽及び映像プレーヤ等の携帯可能な装置は、耐衝撃性を向上させる手段の一つとして、従来図4乃至7に示すように、高さ方向の衝撃を緩衝する高さ方向ダンパ101と幅方向の衝撃を緩衝する幅方向ダンパ(102,103)とが結合した一体ダンパ104の挿入孔105をブラケット111の取付部112に嵌合させて組付し、それを記憶装置121の外周部に装着しダンパの伸縮変形により衝撃を緩衝させていた。この場合に衝撃緩衝性は、一般的にダンパ(101,102,103)の突出量tが大きいほど、また硬度が低い(柔らかい)ほど向上する。しかし、持ち運び性を向上する目的で装置全体を薄型化する場合は、記憶装置121とそれを収納する収納部材131との間の高さ方向のダンパ用スペースも少なく(低く)なるので、高さ方向の衝撃を緩衝するダンパ101については、突出量t1を小さくする必要が生じ、高さ方向の衝撃を十分に緩衝するのが困難であった。
【0003】
また、ブラケットを介さないで記憶装置211と収納部材との間に直接介装させて衝撃を吸収する一体ダンパ204として、図8に示すようなものが知られている(下記特許文献1参照)。この一体ダンパ204においても、やはり高さ方向ダンパ201は衝撃を緩衝する高さ方向に突出しているので、その突出量t1を小さくする必要が生じ、上記と同様の問題点を有していた。
【0004】
この対応として、(1)ダンパに使用する材料を衝撃緩衝性のよいものにする。(2)ダンパを複数個装着する。(3)ダンパに使用する材料の材質を複数組み合わせる。等の方法が検討されるが、コストアップや構造が複雑化する等の不具合点が生じると共に、高さ方向の衝撃に対し十分な衝撃緩衝性を確保するのは困難であった。
【0005】
また、(4)伸縮変形で衝撃を吸収するだけでなく曲げ変形を利用するダンパ形状とする(下記特許文献2参照)。(5)ダンパを幅方向のみ装着し、高さ方向の衝撃は該ダンパの剪断変形により吸収する構造とする(下記特許文献3参照)。等の方法も検討されるが共に衝撃緩衝時の変形量が大きく、そのためのスペースが必要になるので装置を薄型化するのには適していなかった。更に、上述の(5)の方法に(1)乃至(4)の方法を組み合わせることも検討されたが、小さな衝撃力においては高さ方向ダンパが十分に伸縮変形できないため、衝撃緩衝しないことがある等の不具合点が存在した。更に、幅方向ダンパを記憶装置に組付けた後に高さ方向から収納部材へ組込む場合、幅方向ダンパが収納部材と接触しながら変形(曲がる)して組込まれやすい。その状態では変形量に応じた衝撃吸収性を確保できないため、接触しないように圧縮させて組込んだ後に圧縮を開放して位置決めをする、若しくは組込んだ後に変形の修正と位置決めをする等の作業が必要となる等の不具合点もあった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−134036公報
【特許文献2】特開2006−038066公報
【特許文献3】特開2006−040503公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、持ち運び性を向上する目的で装置全体が薄型化され、記憶装置とそれを収納する収納部材との間の高さ方向のダンパ用スペースが少なく(低く)なった場所に装着する場合であっても、高さ方向の衝撃を十分に吸収することができるダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る衝撃吸収ダンパは、機器本体である部材と該機器本体を収納する部材との間に装着され衝撃入力方向に突出し該衝撃入力方向の衝撃入力を収縮により緩衝する衝撃方向緩衝部と該衝撃入力方向と直交方向に突出し該直交方向の衝撃入力を収縮により緩衝する直交方向緩衝部とを備える衝撃吸収ダンパであって、前記直交方向緩衝部は、一端が前記一の部材に固着され、前記衝撃入力方向の衝撃入力に対し衝撃方向に所定距離相対動したときに前記他の部材に固着されている停止部と他端が当接して剪断変形し、衝撃を緩衝することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0010】
上記構成を備えた本発明の請求項1に記載の衝撃吸収ダンパは、衝撃入力方向の衝撃入力に対し、小さな衝撃力には衝撃方向緩衝部が収縮して衝撃を緩衝し、大きな衝撃力には衝撃方向緩衝部が収縮し、更に直角方向緩衝部が衝撃方向に相対動し停止部と当接して剪断変形し衝撃を緩衝するので、装置全体の薄型化に対応してダンパスペースが少なく(低く)なり衝撃方向緩衝部の突出量を小さくした場合であっても十分に衝撃入力方向からの衝撃に対する耐衝撃性を確保することができる。
【0011】
また、直角方向緩衝部を一の部材に固着した後に他の部材に衝撃入力方向から組込む場合であっても、停止部を越えさせる作業は必要であるが位置決め作業が不要になり、ダンパの装着作業を容易に行なうことができる。
【0012】
更に、他の部材に固着している停止部間の距離および停止部の突出量等を変更することで直角方向衝撃部の剪断変形量、形状等を変更することができ、衝撃緩衝性を任意に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示して説明する。ただし、この発明の範囲は、特に限定的記載がないかぎりは、この実施の形態に記載されている内容に限定する趣旨のものではない。
【0014】
なお、以下の説明で言うX方向とは、衝撃入力方向である高さ方向と直角をなす方向であり図1に示す左右方向(幅方向)をいい、Y方向とは、高さ方向と直角方向で且つX方向とも直角をなす方向であり図1に示す前後方向(幅方向)をいい、Z方向とは、衝撃入力方向、すなわち高さ方向をいい、X方向及びY方向と直角をなす図1に示す上下方向をいう。
【0015】
図1は、本実施形態に係る衝撃吸収ダンパを装着した状態をZ方向に切断して示す断面図であり、図2は、図1においてZ方向に衝撃入力された状態を示す説明図、図3は、図2における衝撃力とダンパ変形量の関係を示すグラフである。
【0016】
図1に示す通り、本実施形態に係る衝撃吸収ダンパ1は、機器本体である記憶装置2(一の部材)と機器本体を収納する収納部材3(他の部材)との間に装着されるもので、Z方向の衝撃入力に対し収縮して衝撃を緩衝する衝撃方向緩衝部である高さ方向ダンパ4と、Z方向に対し直行方向の衝撃入力に対し収縮して衝撃を緩衝する直行方向緩衝部である幅方向ダンパ5とを備えている。
【0017】
高さ方向ダンパ4は、粘弾性のあるゴムやエラストマ等の材料でJIS硬度が20乃至60の範囲に設定されるように成形されていて、一端である本体側端部41が記憶装置2の周面21に固着され、Z方向から衝撃入力された場合にその衝撃を収縮により緩衝できるようにZ方向に突出している。なお、Z方向への突出量t1は記憶装置2と収納部材3との高さ方向のスペースが少ない(低い)ので従来よい小さく設定されている。他端である収納部材側端部42は、図1では収納部材3の周面31に固着しているが、固着していなくてもよい。固着されている場合には、Z方向から衝撃入力された場合に、図2に示すように記憶装置2の上下に設けられている高さ方向ダンパ(4a,4b)のうちの一方の高さ方向ダンパ(図2では下側のダンパ)4aが収縮して衝撃を緩衝すると共に、他方の高さ方向ダンパ(図2では上側のダンパ)4bが伸張して衝撃を緩衝するようになるので、大きな衝撃を緩衝させる場合に適している。
【0018】
幅方向ダンパ5は、粘弾性のあるゴムやエラストマ等の材料でJIS硬度が20乃至60の範囲に設定されるように成形されていて、一端である本体側端部51が記憶装置2の側面22に固着され、Z方向と直角の方向であるX方向から衝撃入力された場合にその衝撃を収縮により緩衝するようになっている。固着の方法としては加硫接着や接着剤等による方法のほかどのような方法でも良く、後述する収納部材3に固着している停止部6と当接したときに滑って移動しないで剪断変形するように固着されていればよい。他端である収納部材側端部52は、収納部材3の側面32には固着していないで、Z方向の衝撃入力時に収納部材3に対しZ方向に相対動できるようになっている。収納部材側端部52の側面53は収納部材3の側面32に対し滑るようになっているのが好ましく、例えば幅方向の振動共振点を上げる目的で幅方向ダンパ5を圧縮して組込む場合には、幅方向ダンパ5の収納部材側側面53、若しくはその側面53と向かい合っている収納部材3の側面32に滑りやすくするように表面をコーティングし、または薄い部材を貼り付ける等してもよい。なお、X方向への突出量t2は、記憶装置2と収納部材3との間の幅方向に対する寸法の制約が少ないためにX方向からの衝撃を十分に吸収できるように設定するのが好ましい。
【0019】
収納部材3の側面32に、停止部6が2個固着されている。2個の停止部(6a,6b)間の距離k1は、幅方向ダンパ5の厚さ(高さ)k2より大きくなっていて、Z方向の衝撃入力がない場合には、停止部6に幅方向ダンパ5が当接しないようになっている。停止部6間の距離k1が幅方向ダンパ5の厚さ(高さ)k2より大きく設定され、衝撃入力がないときは幅方向ダンパ5が停止部6に当接しないようにしているのは、Z方向の衝撃入力に対し、小さな衝撃力のときには高さ方向ダンパ4の伸縮(若しくは収縮)のみによって緩衝し、大きな衝撃力のときに幅方向ダンパ5がZ方向に相対動し停止部6と当接して剪断変形による緩衝も加わるようにしたためである。したがって、停止部6間の距離k1を変更し、また停止部6の突出量を調整すること等により衝撃吸収性を任意に設定できるようになっている。
【0020】
上記により構成された衝撃吸収ダンパ1は、図2に示す通り、Z方向からの衝撃入力時に、入力初期の段階では、高さ方向ダンパ4の伸縮で緩衝し、高さ方向ダンパ4が一定以上伸縮したときに、横方向ダンパ5がZ方向に相対動して停止部6に当接して剪断変形により衝撃を緩衝するので(図3参照)、装置の薄型化により高さ方向のダンパ用スペースが少なく(低く)なって高さ方向ダンパ4のZ方向の突出量t1が小さくなってもZ方向の衝撃に対する耐衝撃性を確保することが可能となる。
【0021】
また、衝撃吸収ダンパ1を記憶装置2と収納部材3との間に装着させるため幅方向ダンパ5を記憶装置2に固着した後に収納部材3へZ方向から組込む場合に、停止部6を超えるようにして組付ける作業は必要であるが、位置決め作業が不要となり装着作業を容易に行なうことが可能となる。
【0022】
なお、上記の説明においては、幅方向ダンパ5はX方向の衝撃を緩衝するダンパを備えた場合のみについて説明したが、Y方向の衝撃を緩衝する幅方向ダンパをも備えている場合であってもよい。
【0023】
また、高さ方向ダンパ4と幅方向ダンパ5とは、別個に独立して設けないで一体としたものであってもよい。
【0024】
更に、幅方向ダンパ5を記憶装置2に固着し、停止部6を収納部材3に固着した場合について説明したが、逆に幅方向ダンパ5を収納部材3に固着し、停止部6を記憶装置2に固着した場合であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の衝撃吸収ダンパを両部材間に装着した状態の断面図
【図2】図1において衝撃が入力された状態を説明する説明図
【図3】図2における衝撃力とダンパ変形量との関係を示すグラス
【図4】従来例に係る衝撃吸収ダンパ単体の説明図
【図5】従来例に係るブランケット単体の説明図
【図6】従来例に係るブランケット組付けられた衝撃吸収ダンパを記憶装置に装着した状態を示す説明図
【図7】図6を記憶装置と収納部材に組付けた状態を示す説明図
【図8】別の従来例に係る衝撃吸収ダンパを記憶装置に組付けた説明図
【符号の説明】
【0026】
1 衝撃吸収ダンパ
2 記憶装置(一の部材)
3 収納部材(他の部材)
4,4a,4b 高さ方向ダンパ
21,31 周面
22,32,53 側面
41,42,51,52 端部
5 幅方向ダンパ
6 停止部
t,t1,t2 ダンパ突出量
k1 停止部間の距離
k2 幅方向ダンパの厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体である部材と該機器本体を収納する部材との間に装着され衝撃入力方向に突出し該衝撃入力方向の衝撃入力を収縮により緩衝する衝撃方向緩衝部と該衝撃入力方向と直交方向に突出し該直交方向の衝撃入力を収縮により緩衝する直交方向緩衝部とを備える衝撃吸収ダンパであって、
前記直交方向緩衝部は、一端が前記一の部材に固着され、前記衝撃入力方向の衝撃入力に対し衝撃方向に所定距離相対動したときに前記他の部材に固着されている停止部と他端が当接して剪断変形し、衝撃を緩衝することを特徴とする衝撃吸収ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−285366(P2007−285366A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111549(P2006−111549)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】