説明

衝撃吸収部材

【課題】所望の補強対象部位を補強可能な衝撃吸収部材を提供することを課題とする。
【解決手段】衝撃吸収部材1は、長尺状であって衝突時のエネルギーを自身が変形することにより吸収する衝撃吸収体2と、衝撃吸収体2の補強対象部位に配置され、衝突時に補強対象部位の変形に沿って変形し、被取付部材901に取り付けられる取付部材3と、を備える。衝突時に補強対象部位が変形する場合、取付部材3は補強対象部位の変形に沿って変形する。当該変形により、取付部材3は補強対象部位を補強することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突時の衝撃を吸収して車両の乗員や歩行者等を保護する衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、特許文献2には、車両のバンパービームやルーフサイドインナパネルに取り付けられる長尺状の衝撃吸収部材が紹介されている。衝撃吸収部材は、衝突時のエネルギーを自身が変形することにより吸収する。このため、衝撃吸収部材をバンパービームに配置すると、衝突時に歩行者(自転車やバイクなどの運転者を含む。以下同じ。)に加わる衝撃を軽減することができる。また、衝撃吸収部材をルーフサイドインナパネルに配置すると、衝突時に車両の乗員に加わる衝撃を軽減することができる。
【特許文献1】特開2006−62635号公報
【特許文献2】特開2007−118931号公報
【特許文献3】特開2006−168535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1、特許文献2に記載の長尺状の衝撃吸収部材の短手方向断面形状は、長手方向全体に亘って同一である。しかしながら、これらの文献に記載の衝撃吸収部材の荷重(詳しくは衝突対象物が衝撃吸収部材に衝突した場合に衝撃吸収部材から衝突対象物に加わる反力)分布は、長手方向全体に亘って均一ではない。
【0004】
例えば、衝撃吸収部材の長手方向中央部は、当該中央部の長手方向両側に隣接する部分により拘束されている。このため、変形しにくい。したがって、長手方向中央部の荷重は大きくなる。これに対して、衝撃吸収部材の長手方向両端部は、各々、長手方向に隣接する部分が片側にしか存在しない。すなわち、左端部に対しては右側にしか、右端部に対しては左側にしか、隣接する部分が存在しない。このため、変形しやすい。したがって、長手方向両端部の荷重は小さくなる。
【0005】
このように、特許文献1、特許文献2に記載の長尺状の衝撃吸収部材の場合、長手方向中央部の荷重が大きく、長手方向両端部の荷重が小さくなる。言い換えると、長手方向両端部は、長手方向中央部に対して、脆弱になる。このため、長手方向両端部を補強する必要がある。
【0006】
一方、衝撃吸収部材の中には、バンパービームなどの被取付部材に衝撃吸収部材を堅固に固定するために、取付部材を有するものがある。例えば、特許文献3の衝撃吸収部材は、同文献の段落[0012]、[図7]、[図8]に記載されているように、クリップ、ネジ、バンドなどにより、バンパービームに固定されている。しかしながら、特許文献3には、これらクリップ、ネジ、バンドにより衝撃吸収部材を補強することを示唆する記載はない。また、衝撃吸収部材にクリップやボルトを挿通するための挿通孔を穿設する必要があるため、却って当該挿通孔穿設部位が脆弱になってしまう。
【0007】
本発明の衝撃吸収部材は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、例えば長手方向両端部など所望の補強対象部位を補強可能な衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の衝撃吸収部材は、長尺状であって衝突時のエネルギーを自身が変形することにより吸収する衝撃吸収体と、該衝撃吸収体の補強対象部位に配置され、衝突時に該補強対象部位の変形に沿って変形し、被取付部材に取り付けられる取付部材と、を備えてなることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0009】
ここで、「補強対象部位」とは、衝撃吸収体において、荷重を大きくする必要がある部位をいう。例えば、他の部位と比較して荷重が小さい部位をいう。また、他の部位と比較して荷重は小さくないものの、衝突時に荷重が集中しやすいなどの要請から荷重を大きくする必要がある部位をいう。
【0010】
本発明の衝撃吸収部材をバンパーに配置する場合の「補強対象部位」について、以下に例示する。例えば、牽引用のアイボルトを装着するための孔が衝撃吸収部材に穿設される場合、当該孔周辺は「補強対象部位」に含まれる。
【0011】
また、例えば、衝撃吸収部材がバンパービームの形状に沿って湾曲している場合、車幅方向と、衝撃吸収部材の任意の部分の延在方向(詳しくは湾曲面の接線方向)と、の挟角が大きい場合、衝突方向成分の荷重が不足するおそれがある。この場合は、当該挟角が大きい部分が「補強対象部位」に含まれる。具体的には、湾曲した衝撃吸収部材の両端部に近い部分が該当する。
【0012】
また、例えば、湾曲したバンパービームの形状に沿うように、直線状の衝撃吸収部材に後から曲げ加工を施すと、曲げ加工に伴い肉厚が薄くなる部分が発生する場合がある。この場合は、当該薄肉部分が「補強対象部位」に含まれる。
【0013】
本発明の衝撃吸収部材は、衝撃吸収体と取付部材とを備えている。衝突時に補強対象部位が変形する場合、取付部材は補強対象部位の変形に沿って変形する。言い換えると、取付部材は、補強対象部位の変形に追従して変形する。このため、衝突時において、取付部材が充分に変形することができる。当該変形により、取付部材は、衝突時に補強対象部位に加わるエネルギーの一部を担持することができる。すなわち、補強対象部位を補強することができる。
【0014】
また、本発明の衝撃吸収部材の取付部材は、衝撃吸収体を被取付部材に固定する機能と、上記補強対象部位を補強する機能と、を併有している。このため、取付部材とは別個独立して補強部材を配置する場合と比較して(例えば前出特許文献3の衝撃吸収部材に新たに補強部材を配置する場合と比較して)、部品点数が少なくて済む。
【0015】
また、特許文献3に記載されているように、衝撃吸収部材(本発明の衝撃吸収体に相当)を、クリップ、ネジ、バンドなどにより被取付部材に固定する場合と比較して、衝撃吸収体に孔を穿設する必要がない。このため、衝撃吸収体が脆弱になるおそれがない。並びに、衝撃吸収体に孔を穿設するための作業が不要になる。
【0016】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記補強対象部位は、前記衝撃吸収体の長手方向両端部である構成とする方がよい(請求項2に対応)。本構成によると、脆弱になりがちな長手方向両端部を補強することができる。また、衝撃吸収体の長手方向両端部を被取付部材に対する取付位置に設定すると、取付後における衝撃吸収体の例えば自重などによる湾曲を抑制することができる。
【0017】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記取付部材は、前記長手方向両端部に一対配置されており、一対の該取付部材は、各々、該長手方向両端部の各々を外側から覆う被覆部と、該被覆部から内側に湾曲して延在し該長手方向両端部の各々の少なくとも一部を該被覆部との間に挟持する爪部と、を有する構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0018】
本構成によると、長手方向両端部の各々の少なくとも一部が、外側から被覆部により、内側から爪部により、挟持されている。このため、長手方向両端部のうち少なくとも一方の長手方向端部が変形する際、変形する方の長手方向端部に配置されている取付部材が、当該長手方向端部から剥離しにくい。したがって、より確実に、取付部材を長手方向端部の変形に追従して変形させることができる。
【0019】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記衝撃吸収体は、アウター筒部と、衝突時の荷重入力方向に対して略垂直方向に面展開すると共に該アウター筒部の内面間を連結し衝突時に引張変形する複数のインナーリブと、を有する構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0020】
本構成の衝撃吸収体によると、インナーリブが引張変形することにより、衝突時のエネルギーの一部が消費される。このため、衝突初期の荷重が急激に大きくなりにくい。したがって、衝突初期に大きな荷重が衝突対象物(例えば乗員や歩行者など)に加わるのを抑制することができる。また、インナーリブの引張変形は、衝突初期から終期に亘り、継続的に行われる。このため、衝突初期に立ち上がった荷重が、その後低下しにくい。したがって、効率よく衝突時のエネルギーを吸収することができる。
【0021】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記アウター筒部は、荷重が入力される入力壁部と、該荷重を前記被取付部材に出力すると共に該入力壁部に対して略平行に配置される出力壁部と、該入力壁部と該出力壁部との間を連結する一対の連結壁部と、を有し、前記インナーリブは、該入力壁部および該出力壁部に対して略平行になるように、一対配置されており、一対の該インナーリブは、各々、一対の該連結壁部の内面間を連結しており、前記爪部は、少なくとも、該入力壁部の周方向両端部と、該連結壁部のうち一対の該インナーリブにより囲まれる区間の周方向両端部と、を前記被覆部との間に挟持している構成とする方がよい(請求項5に対応)。
【0022】
本構成によると、衝突により衝撃吸収体の長手方向両端部のうち少なくとも一方の長手方向端部が変形する場合、取付部材と当該長手方向端部とが剥離しやすい部位に、爪部が配置されている。このため、さらに取付部材が当該長手方向端部から剥離しにくい。したがって、さらに確実に取付部材を長手方向端部の変形に追従して変形させることができる。
【0023】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記取付部材は、前記補強対象部位における前記被取付部材側に表出する部分の少なくとも一部を覆う回り込み部を有する構成とする方がよい(請求項6に対応)。
【0024】
本構成によると、取付部材の回り込み部が、補強対象部位における被取付部材側に表出する部分(つまり荷重入力側に対して反対側の部分)の、少なくとも一部を覆っている。衝突時において、回り込み部は、補強対象部位と被取付部材との間に挟み込まれる。このため、回り込み部を、補強対象部位における被取付部材側に表出する部分の変形に追従して変形させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、所望の補強対象部位を補強可能な衝撃吸収部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の衝撃吸収部材の実施の形態について説明する。
【0027】
<第一実施形態>
[衝撃吸収部材の配置]
まず、本実施形態の衝撃吸収部材の配置について説明する。図1に、本実施形態の衝撃吸収部材が配置された車両のフロントバンパー付近の透過斜視図を示す。なお、図1から図10において、方位(左右)は車両後方から前方を見た場合を基準に定義する。
【0028】
図1に示すように、車両9のフロントバンパー90は、バンパーフェイシア900とバンパービーム901とクラッシュボックス902とを備えている。衝撃吸収部材1は、バンパービーム901の前面に配置されている。なお、バンパービーム901は、本発明の被取付部材に含まれる。
【0029】
バンパービーム901は、アルミ合金製であって、長尺の四角筒状を呈している。バンパービーム901は、車幅方向(左右方向)に延設されている。
【0030】
クラッシュボックス902は、アルミ合金製であって、後方に向かって開口する箱状を呈している。クラッシュボックス902は、車幅方向に離間して、合計二つ配置されている。一対のクラッシュボックス902は、各々フロントサイドメンバ903の前端に、開口が伏せられた状態で、固定されている。一対のクラッシュボックス902の前壁には、バンパービーム901の左右両端部が、各々固定されている。
【0031】
バンパーフェイシア900は、オレフィン系樹脂製であって、長尺状を呈している。バンパーフェイシア900は、車幅方向に延在している。バンパーフェイシア900は、バンパービーム901および衝撃吸収部材1を前方から覆っている。
【0032】
[衝撃吸収部材の構成]
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の構成について説明する。図2に、本実施形態の衝撃吸収部材1の左端部付近の拡大斜視図を示す。図3に、同左端部付近の拡大分解斜視図を示す。図4に、同左端部付近の前面図を示す。図5に、同左端部付近の左側から見た部分断面図を示す。図2〜図5に示すように、本実施形態の衝撃吸収部材1は、衝撃吸収体2と取付部材3とを備えている。
【0033】
衝撃吸収体2は、バンパービーム901の前面に沿って、左右方向に延在している(前出図1参照)。衝撃吸収体2は、樹脂製であって、押出成形により製造されている。具体的には、衝撃吸収体2は、商品名「UBEナイロン6」(宇部興産株式会社製、品番「1013IU50」))製である。衝撃吸収体2は、当該樹脂により一体形成された押出成形材を所定寸法に切断した後、所定の湾曲形状に成形加工することにより作製されている。衝撃吸収体2は、アウター筒部20と、前後一対のインナーリブ21と、を備えている。
【0034】
アウター筒部20は、略八角形筒状を呈している。アウター筒部20は、入力壁部200と出力壁部201と一対の連結壁部202とを備えている。入力壁部200は、平板状であって、アウター筒部20の前縁に配置されている。出力壁部201は、平板状であって、アウター筒部20の後縁に配置されている。出力壁部201は、入力壁部200に対して略平行に配置されている。一対の連結壁部202のうち、上方の連結壁部202は、上方に膨出する弧板状であって、入力壁部200上縁と出力壁部201上縁とを連結している。一対の連結壁部202のうち、下方の連結壁部202は、下方に膨出する弧板状であって、入力壁部200下縁と出力壁部201下縁とを連結している。
【0035】
一対のインナーリブ21は、各々左右方向に延在する板状を呈している。一対のインナーリブ21は、各々、アウター筒部20の内部に配置されている。一対のインナーリブ21は、一対の連結壁部202内面間を連結している。一対のインナーリブ21は、入力壁部200および出力壁部201に対して、略平行に配置されている。
【0036】
取付部材3は、衝撃吸収体2の左右両端部に一対配置されている(前出図1参照)。左右一対の取付部材3の構成、組付方法、取付方法、動きは同様である。したがって、ここでは左側の取付部材3についてのみ説明し、右側の取付部材3についての説明を兼ねるものとする。
【0037】
取付部材3は、一枚の鋼板をプレス加工することにより作製されている。取付部材3は、上下一対の基部30と突出部31とを備えている。
【0038】
一対の基部30のうち上方の基部30は、バンパービーム901の上面前部から前面上部に至る部分を覆っている。基部30の端部には、取付爪300が配置されている。取付爪300は、基部30の端部を下前側に折り曲げることにより、形成されている。一方、バンパービーム901の上壁には、被取付孔901aが穿設されている。取付爪300は被取付孔901aに係合している。一対の基部30のうち下方の基部30は、バンパービーム901の下面前部から前面下部に至る部分を覆っている。基部30の端部には、取付爪300が配置されている。取付爪300は、基部30の端部を上前側に折り曲げることにより、形成されている。一方、バンパービーム901の下壁には、被取付孔901aが穿設されている。取付爪300は被取付孔901aに係合している。このように、上下一対の取付爪300が上下一対の被取付孔901aに係合することにより、取付部材3すなわち衝撃吸収部材1がバンパービーム901に取り付けられている。
【0039】
突出部31は、上下一対の基部30間に配置されている。突出部31は、基部30に対して前方に突出している。突出部31は、被覆部310と爪部311と回り込み部312と面取部313とを備えている。突出部31内部とバンパービーム901前面との間に、前記衝撃吸収体2の左端部が収容されている。
【0040】
被覆部310は、衝撃吸収体2の左端部を覆っている。被覆部310は、その内面がアウター筒部20の外面形状に沿うように、後縁の無い略八角形環状を呈している。
【0041】
爪部311は、突出部31の上縁に一対、下縁に一対、前縁に一つ配置されている。すなわち、爪部311は、合計五つ配置されている。各々の爪部311は、被覆部310の左端縁から内側にU字状に湾曲して延在している。五つの爪部311のうち、上縁一対の爪部311は、上方の連結壁部202のうち一対のインナーリブ21により囲まれる区間の前後方向両端部を、被覆部310との間に挟持している。五つの爪部311のうち、下縁一対の爪部311は、下方の連結壁部202のうち一対のインナーリブ21により囲まれる区間の前後方向両端部を、被覆部310との間に挟持している。五つの爪部311のうち、前縁の爪部311は、入力壁部200全体を、被覆部310との間に挟持している。
【0042】
回り込み部312は、衝撃吸収体2の左端部のうち、バンパービーム901前面側に表出する部分を覆っている。また、回り込み部312は、突出部31のうち、爪部311が配置されていない部分に配置されている。回り込み部312は、上下に一対配置されている。回り込み部312および後述する面取部313の左右方向長さは、突出部31のうち爪部311が配置されている部分の左右方向長さよりも、大きくなるように設定されている(前出図3参照)。
【0043】
面取部313は、曲板状を呈している。面取部313は、突出部31全体の湾曲方向とは逆方向に、所定の曲率で湾曲している。面取部313は、上下に一対配置されている。このうち、上方の面取部313は、上方の回り込み部312と上方の基部30下縁とを連結している。同様に、下方の面取部313は、下方の回り込み部312と下方の基部30上縁とを連結している。
【0044】
[衝撃吸収部材の組付方法]
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の組付方法について説明する。組付の際は、取付部材3の突出部31内側に、衝撃吸収体2の左端部を相対的に挿入する。この際、衝撃吸収体2の入力壁部200を、被覆部310前縁と前方の爪部311との間に、相対的に挿入する。並びに、衝撃吸収体2の上方の連結壁部202を、被覆部310上縁と上方の一対の爪部311との間に、相対的に挿入する。並びに、衝撃吸収体2の下方の連結壁部202を、被覆部310下縁と下方の一対の爪部311との間に、相対的に挿入する。このようにして、本実施形態の衝撃吸収部材1は組み付けられる。
【0045】
[衝撃吸収部材の取付方法]
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1のバンパービーム901に対する取付方法について説明する。取付の際は、まず、衝撃吸収部材1を、バンパービーム901の左端部の前方に配置する。この際、取付部材3の上下一対の取付爪300が、バンパービーム901の上下一対の被取付孔901aの前方に来るように、位置合わせする。
【0046】
次いで、取付部材3の上下一対の基部30間に、バンパービーム901を相対的に挿入する。ここで、一対の取付爪300間の間隔は、バンパービーム901の上下幅よりも若干小さくなるように、設定されている。このため、挿入の際、突出部31は、後側の開口が開くように、弾性変形する。挿入の過程で、上方の取付爪300はバンパービーム901上面を、下方の取付爪300はバンパービーム901下面を、それぞれ相対的に摺動する。そして、弾性変形した突出部31の復元力により、上方の取付爪300は上方の被取付孔901aに、下方の取付爪300は下方の被取付孔901aに、それぞれ挿入される。このようにして、本実施形態の衝撃吸収部材1はバンパービーム901に取り付けられる。
【0047】
[衝撃吸収部材の動き]
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の衝突時の動きについて説明する。車両9のバンパーフェイシア900左端に歩行者が衝突する場合、図5中、白抜き矢印で示すように、前方から後方に向かって、荷重が入力される。入力された荷重は、バンパーフェイシア900を介して、取付部材3および衝撃吸収体2に伝達される。取付部材3および衝撃吸収体2は、バンパーフェイシア900とバンパービーム901との間で、前後方向から押しつぶされるように変形する。この際、衝撃吸収体2のアウター筒部20は、上下方向に膨出するように変形する。このため、インナーリブ21には、上下方向から張力が加わる。当該張力により、インナーリブ21は、引張変形する。また、取付部材3と衝撃吸収体2とは、合計五つの爪部311により、堅固に接合されている。このため、取付部材3が衝撃吸収体2から剥離しにくい。したがって、取付部材3は衝撃吸収体2の変形に沿って塑性変形する。このようにして、本実施形態の衝撃吸収部材1は、衝突時の衝撃を吸収している。なお、本発明の衝撃吸収部材の衝突時の変形過程については、後述する実施例で詳しく説明する。
【0048】
[作用効果]
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の作用効果について説明する。本実施形態の衝撃吸収部材1によると、衝撃吸収体2の入力壁部200が、前側(外側)から被覆部310により、後側(内側)から爪部311により、挟持されている。並びに、衝撃吸収体2の上方の連結壁部202が、上側(外側)から被覆部310により、下側(内側)から一対の爪部311により、挟持されている。並びに、衝撃吸収体2の下方の連結壁部202が、下側(外側)から被覆部310により、上側(内側)から一対の爪部311により、挟持されている。このため、衝撃吸収体2の左端部あるいは右端部の変形時に、取付部材3が左端部あるいは右端部から剥離しにくい。すなわち、取付部材3は、衝撃吸収体2の左端部あるいは右端部の変形に沿って変形する。言い換えると、取付部材3は、衝撃吸収体2の左端部あるいは右端部の変形に追従して変形する。このため、衝突時において、取付部材3が充分に変形することができる。当該変形により、取付部材3は、衝突時に衝撃吸収体2の左端部あるいは右端部に加わるエネルギーの一部を担持することができる。すなわち、衝撃吸収体2の左右両端部を補強することができる。
【0049】
また、取付部材3は、衝撃吸収体2をバンパービーム901に固定する機能と、衝撃吸収体2の左右両端部を補強する機能と、を併有している。このため、取付部材3とは別個独立して補強部材を配置する場合と比較して、部品点数が少なくて済む。
【0050】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、脆弱になりがちな衝撃吸収体2の左右両端部を補強することができる。また、衝撃吸収体2の左右両端部をバンパービーム901に対する取付位置に設定したため、取付後における衝撃吸収体2の自重などによる湾曲を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、インナーリブ21が引張変形することにより、衝突時のエネルギーの一部が消費される。このため、衝突初期の荷重が急激に大きくなりにくい。したがって、衝突初期に大きな荷重が衝突対象物(例えば乗員や歩行者など)に加わるのを抑制することができる。また、インナーリブ21の引張変形は、衝突初期から終期に亘り、継続的に行われる。このため、衝突初期に立ち上がった荷重が、その後低下しにくい。したがって、効率よく衝突時のエネルギーを吸収することができる。
【0052】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、取付部材3の回り込み部312が、衝撃吸収体2の左端部および右端部におけるバンパービーム901側に表出する部分(つまり後側の部分)を覆っている。衝突時の荷重により、回り込み部312は、左端部あるいは右端部とバンパービーム901との間に挟み込まれる。このため、回り込み部312を、衝撃吸収体2の左端部あるいは右端部におけるバンパービーム901側に表出する部分の変形に追従して変形させることができる。
【0053】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、衝撃吸収体2の左右両端部を各々取付部材3の突出部31内側に挿入するだけで、組付作業が完了する。このため、組付が容易である。
【0054】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、取付部材3の突出部31内側にバンパービーム901を相対的に挿入するだけで、衝撃吸収部材1をバンパービーム901に取り付けることができる。このため、取付が容易である。また、取付爪300は、あたかも釣り針のように、前方に向かってレ字状に湾曲している。このため、取付爪300が被取付孔901aから脱落しにくい。すなわち、取付強度が大きい。
【0055】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、衝撃吸収体2が「UBEナイロン6」製である。「UBEナイロン6」は、曲げ弾性率が1GPa以上、引張破断伸びが100%以上、引張降伏応力が15MPa以上であるため、衝撃吸収体2の材質として特に好適である。また、衝撃吸収体2は、押出成形により製造される。押出成形は、長尺物の製造に有利であるため、衝撃吸収体2の成形方法として特に好適である。
【0056】
<第二実施形態>
本実施形態の衝撃吸収部材と第一実施形態の衝撃吸収部材との相違点は、衝撃吸収部材がバンパービームではなくルーフサイドレール部に配置されている点である。並びに、取付部材が爪嵌合ではなくクリップによりルーフサイドレール部に取り付けられている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0057】
図6に、本実施形態の衝撃吸収部材が配置されている車室内の斜視図を示す。なお、図1と対応する部位については同じ符号で示す。図6に示すように、車室内の天井には、樹脂製のルーフライニング8が配置されている。衝撃吸収部材1(図6中、ハッチングで示す。)は、ルーフライニング8内部の左右縁に、各々、前後に二列ずつ、収容されている。すなわち、衝撃吸収部材1は、ルーフライニング8内部に、合計四列配置されている。
【0058】
以下、ルーフライニング8内部右前の衝撃吸収部材1の、配置および構成について説明する。残りの三列の衝撃吸収部材1の配置および構成も、右前に配置された衝撃吸収部材1と同様である。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0059】
図7に、図6のVII−VII断面図を示す。なお、図5と対応する部位については同じ符号で示す。図5に示すように、ルーフライニング8上方には、所定間隔だけ離間して、鋼製のルーフパネル80が配置されている。ルーフパネル80は、車両9の外郭を形成している。ルーフライニング8とルーフパネル80との間には、鋼製であって高剛性のルーフサイドレール部81が介装されている。ルーフサイドレール部81は、本発明の被取付部材に含まれる。衝撃吸収部材1は、当該ルーフサイドレール部81の下面に取り付けられている。取付部材3は、衝撃吸収体2の前後両端部に、一対配置されている。図7に示すのは、衝撃吸収体2の前端部の取付部材3である。衝撃吸収体2の後端部の取付部材も、構成は同様である。したがって、ここでは前端部の取付部材3についてのみ説明し、後端部の取付部材の説明を兼ねるものとする。
【0060】
図8に、図7の円VIII内の拡大図を示す。衝撃吸収部材1の取付部材3の一対の基部30には、各々基部側貫通孔301が穿設されている。並びに、ルーフサイドレール部81には、一対のレール部側貫通孔810が穿設されている。クリップ82は、基部側貫通孔301およびレール部側貫通孔810を、この順番に貫通している。クリップ82が基部側貫通孔301およびレール部側貫通孔810を通過する際、図8中に点線で示すように、クリップ82の係合爪820は、内側に弾性変形している。クリップ82が基部側貫通孔301およびレール部側貫通孔810を通過した後、係合爪820は弾性復元力により外側に復動する。係合爪820が復動することにより、クリップ82の頂壁821と係合爪820先端との間に、基部30およびルーフサイドレール部81が挟持される。このように、本実施形態の衝撃吸収部材1は、クリップ82により、ルーフサイドレール部81に取り付けられている。
【0061】
本実施形態の衝撃吸収部材1は、構成が共通する部分については、第一実施形態の衝撃吸収部材と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の衝撃吸収部材1は、クリップ82により、ルーフサイドレール部81に取り付けられている。このため、第一実施形態と比較して、取付部材3の基部30の形状が簡単である。したがって、取付部材3の加工が簡単である。また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、衝突時に乗員の頭部に加わる衝撃を吸収することができる。
【0062】
<第三実施形態>
本実施形態の衝撃吸収部材と第一実施形態の衝撃吸収部材との相違点は、取付部材が爪嵌合ではなくボルトによりバンパービームに取り付けられている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0063】
図9に、本実施形態の衝撃吸収部材の左端部付近の左側から見た部分断面図を示す。なお、図5と対応する部位については同じ符号で示す。取付部材3は、衝撃吸収体2の左右両端部に、一対配置されている。図9に示すのは、衝撃吸収体2の左端部の取付部材3である。衝撃吸収体2の右端部の取付部材も、構成は同様である。したがって、ここでは左端部の取付部材3についてのみ説明し、右端部の取付部材の説明を兼ねるものとする。
【0064】
衝撃吸収部材1の取付部材3の一対の基部30には、各々ボルト挿通孔302が穿設されている。並びに、バンパービーム901には、一対のボルト螺着孔901bが穿設されている。ボルト91は、ボルト挿通孔302を貫通し、ボルト螺着孔901bに螺着されている。このように、本実施形態の衝撃吸収部材1は、ボルト91を介して、バンパービーム901に取り付けられている。
【0065】
本実施形態の衝撃吸収部材1は、構成が共通する部分については、第一実施形態の衝撃吸収部材と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の衝撃吸収部材1は、ボルト91により、バンパービーム901に取り付けられている。このため、第一実施形態と比較して、取付部材3の基部30の形状が簡単である。したがって、取付部材3の加工が簡単である。また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、より堅固に衝撃吸収部材1をバンパービーム901に取り付けることができる。
【0066】
<第四実施形態>
本実施形態の衝撃吸収部材と第一実施形態の衝撃吸収部材との相違点は、爪部の形状のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図10に、本実施形態の衝撃吸収部材の左端部付近の拡大斜視図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ符号で示す。
【0067】
図10に示すように、一対の連結壁部202を挟持する一対の爪部311の形状は、各々、分岐端を有するT字状を呈している。分岐端は、連結壁部202のうち一対のインナーリブ21により囲まれる区間の前後方向両端部を、被覆部310との間に挟持している。
【0068】
本実施形態の衝撃吸収部材1は、構成が共通する部分については、第一実施形態の衝撃吸収部材と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の衝撃吸収部材1は、爪部311が合計三つ配置されている。このため、第一実施形態の衝撃吸収部材と比較して、爪部311の配置数が少なくて済む。
【0069】
<その他>
以上、本発明の衝撃吸収部材の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0070】
例えば、衝撃吸収体2の形状は特に限定しない。三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形状としてもよい。また、真円形、楕円形、半円形などとしてもよい。また、衝撃吸収体2の材質も特に限定しない。PA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)、PC/PBT(ポリブチレンテレフタレート)アロイ、PC/PET(ポリエチレンテレフタレート)アロイ、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等を使用することができる。また、衝撃吸収体2の成形方法も特に限定しない。射出成形、ブロー成形などを用いてもよい。
【0071】
また、取付部材3の形状は特に限定しない。例えば、突出部31の左右方向長さを、全体的にあるいは部分的に、調整することにより、衝突時の取付部材3の変形しやすさを調整することができる。すなわち、取付部材3の荷重を調整することができる。同様に、突出部31に適宜孔を穿設することにより、取付部材3の荷重を調整することができる。
【0072】
また、爪部311の配置部位も特に限定しない。爪部311は、衝撃吸収体2変形時において、取付部材3が衝撃吸収体2から剥離しやすい部位に配置すればよい。また、爪部311の形状、配置数も特に限定しない。
【0073】
また、取付部材3の材質も特に限定しない。金属製は勿論、樹脂製であってもよい。また、取付部材3の製造方法も特に限定しない。鍛造、鋳造、射出成形などにより製造してもよい。なお、取付部材3をプレス加工により製造する場合、取付部材3の板厚は3mm以下が好ましい。その理由は、加工が容易だからである。
【0074】
また、衝撃吸収部材1の配置場所も特に限定しない。乗員保護の観点からは、車室内に表出する部材の裏側に配置すればよい。例えば、フロントピラー、センターピラー、フロントドアトリム、リヤドアトリム、インストルメントパネルなどの裏側に配置すればよい。また、歩行者保護の観点からは、歩行者が衝突しやすい部材の裏側に配置すればよい。例えば、リヤバンパー、サイドモールディングなどの裏側に配置すればよい。また、これら表出する部材の裏側のみならず、勿論、表側に配置してもよい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の衝撃吸収部材について行ったストライカー衝突実験について説明する。
【0076】
<サンプル>
[実施例サンプル]
まず、実施例サンプル全体について説明する。図11に、実施例サンプルの前面図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ符号で示す。図11に示すように、実施例サンプル7と第一実施形態の衝撃吸収部材とは、取付部材3の基部の形状以外は、略一致している。実施例サンプル7は、衝撃吸収体2と取付部材3とを備えている。取付部材3は、衝撃吸収体2の左右両端部に一対配置されている。取付部材3は、被取付部材5に取り付けられている。実施例サンプル7の左右方向全長L1は、600mmである。
【0077】
次に、衝撃吸収体2について説明する。図12に、衝撃吸収体2の左側面図を示す。図12に示すように、一対のインナーリブ21の前後方向長さW1は、共に109mmである。また、連結壁部202における入力壁部200と上方のインナーリブ21との間の区間の長さW2は、40mmである。また、入力壁部200の前後方向長さW3は、60mmである。また、出力壁部201の前後方向長さW4は、40mmである。また、連結壁部202における上下一対のインナーリブ21間の区間の長さW5は、40mmである。
【0078】
また、上方のインナーリブ21の肉厚T1は、0.5mmである。また、下方のインナーリブ21の肉厚T2は、0.7mmである。また、連結壁部202における入力壁部200と上方のインナーリブ21との間の区間の肉厚T3は、3mmである。また、連結壁部202における出力壁部201と下方のインナーリブ21との間の区間の肉厚T4は、3.5mmである。また、入力壁部200の肉厚T5は、3.5mmである。また、出力壁部201の肉厚T6は、4mmである。また、連結壁部202における上下一対のインナーリブ21間の区間の肉厚T7は、3mmである。
【0079】
次に、取付部材3について説明する。図13に、衝撃吸収体2の左端部に配置される取付部材3の斜視図を示す。左右一対の取付部材3の形状、寸法は同様である。したがって、ここでは左側の取付部材3についてのみ説明し、右側の取付部材3についての説明を兼ねるものとする。図13に示すように、取付部材3の突出部31のうち爪部311が配置されている部分の左右方向全長L2は、25mmである。また、五つの爪部311のうち、連結壁部202(前出図11参照)用の四つの爪部311の左右方向全長L3は、10mmである。また、取付部材3の基部30および面取部313および回り込み部312の左右方向全長L4は、45mmである。また、取付部材3を構成する鋼板の板厚T8は、1mmである。
【0080】
[比較例サンプル]
次いで、比較例サンプルについて説明する。比較例サンプルは、上記実施例サンプル7から一対の取付部材3を除去したものである。すなわち、実施例サンプル7の衝撃吸収体2のみを、比較例サンプルとした。
【0081】
<実験方法>
前出図11に示すように、ストライカー6は、剛体であって、直径Φ100mm、全長1mの円柱状を呈している。ストライカー6の質量は、26.5kgである。当該ストライカー6を、実施例サンプル7および比較例サンプルに対して、互いの長手方向同士が直交するように、衝突させた。ストライカー6の衝突速度は、16km/hとした。
【0082】
図14に、実施例サンプル7の取付部材3にストライカー6を衝突させた場合の様子を示す。図14(a)は衝突初期を、図14(b)は衝突中期を、図14(c)は衝突終期を、それぞれ示す。図14(a)〜(c)に示すように、実施例サンプル7は、上方のストライカー6と下方の被取付部材5との間で、押しつぶされる。衝撃吸収体2のインナーリブ21は、衝突時の荷重により、前後方向に引張変形する。
【0083】
取付部材3と衝撃吸収体2とは、五つの爪部311により、堅固に固定されている。このため、取付部材3が衝撃吸収体2から剥離しにくい。すなわち、取付部材3は、衝撃吸収体2の変形に沿って変形する。具体的には、取付部材3の頂壁は、衝撃吸収体2の入力壁部が下方に没入変形するのに沿って、没入変形する。並びに、取付部材3の一対の側壁は、衝撃吸収体2の一対の連結壁部202が前後方向に膨出変形するのに沿って、膨出変形する。
【0084】
また、取付部材3の回り込み部312は、衝撃吸収体2の左端部および右端部における被取付部材5側に表出する部分(つまり下側の部分)を覆っている。このため、衝突時の荷重により、回り込み部312は、左端部あるいは右端部と被取付部材5との間に挟み込まれる。すなわち、回り込み部312は、衝撃吸収体2の左端部あるいは右端部における被取付部材5側に表出する部分の変形に追従して変形する。
【0085】
<実験結果>
図15に、実施例サンプル7と比較例サンプルの所定の衝突位置(前出図11参照)における変位と荷重との関係を示す。ここで、変位とは、ストライカー6が衝突した場合の衝突位置の下方向の変位をいう。荷重とは、ストライカー6が衝突した場合の衝突位置に加わる荷重(=ストライカー6が衝突位置から受ける反力)をいう。
【0086】
図15に示すように、比較例サンプルの場合、衝突位置300mm(左右方向中央)に対して、衝突位置66mmの場合、すなわち衝撃吸収体2の左端部に近い場合、荷重が小さくなることが判る。これに対して、実施例サンプル7の場合、衝突位置66mmの場合であっても、比較例サンプルの衝突位置300mmに対して、荷重が小さくなりにくいことが判る。
【0087】
図16に、実施例サンプル7と比較例サンプルの衝突位置とエネルギー量との関係を示す。図16に示すように、衝突位置が150mmから300mm(左右方向中央)までの区間においては、実施例サンプル7も比較例サンプルも吸収するエネルギー量は同等であることが判る。これに対して、衝突位置が66mmから150mmまでの区間においては、すなわち衝撃吸収体2の左端部に近い場合においては、実施例サンプル7の方が比較例サンプルよりも、吸収するエネルギー量が大きくなることが判る。また、実施例サンプル7の場合、左右方向中央から左端部に至るまで、吸収するエネルギー量がほぼ一定であることが判る。具体的には、衝突位置300mmのエネルギー量を100%とする場合、衝突位置66mmのエネルギー量は97%である。このため、実施例サンプル7によると、衝撃吸収体2のいかなる部位にストライカー6が衝突しても、ほぼ均一の衝撃吸収性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第一実施形態の衝撃吸収部材が配置された車両のフロントバンパー付近の透過斜視図である。
【図2】同衝撃吸収部材の左端部付近の拡大斜視図である。
【図3】同左端部付近の拡大分解斜視図である。
【図4】同左端部付近の前面図である。
【図5】同左端部付近の左側から見た部分断面図である。
【図6】第二実施形態の衝撃吸収部材が配置されている車室内の斜視図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【図8】図7の円VIII内の拡大図である。
【図9】第三実施形態の衝撃吸収部材の左端部付近の左側から見た部分断面図である。
【図10】第四実施形態の衝撃吸収部材の左端部付近の拡大斜視図である。
【図11】実施例サンプルの前面図である。
【図12】衝撃吸収体の左側面図である。
【図13】取付部材の斜視図である。
【図14】(a)は実施例サンプルの取付部材にストライカーを衝突させた場合の衝突初期の模式図である。(b)は同じ場合の衝突中期の模式図である。(c)は同じ場合の衝突終期の模式図である。
【図15】実施例サンプルと比較例サンプルの所定の衝突位置における変位と荷重との関係を示すグラフである。
【図16】実施例サンプルと比較例サンプルの衝突位置とエネルギー量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0089】
1:衝撃吸収部材。
2:衝撃吸収体、20:アウター筒部、21:インナーリブ、200:入力壁部、201:出力壁部、202:連結壁部。
3:取付部材、30:基部、31:突出部、300:取付爪、301:基部側貫通孔、302:ボルト挿通孔、310:被覆部、311:爪部、312:回り込み部、313:面取部。
5:被取付部材。
6:ストライカー。
7:実施例サンプル。
8:ルーフライニング、80:ルーフパネル、81:ルーフサイドレール部、82:クリップ、810:レール部側貫通孔、820:係合爪、821:頂壁。
9:車両、90:フロントバンパー、91:ボルト、900:バンパーフェイシア、901:バンパービーム(被取付部材)、901a:被取付孔、901b:ボルト螺着孔、902:クラッシュボックス、903:フロントサイドメンバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状であって衝突時のエネルギーを自身が変形することにより吸収する衝撃吸収体と、
該衝撃吸収体の補強対象部位に配置され、衝突時に該補強対象部位の変形に沿って変形し、被取付部材に取り付けられる取付部材と、
を備えてなる衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記補強対象部位は、前記衝撃吸収体の長手方向両端部である請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記取付部材は、前記長手方向両端部に一対配置されており、
一対の該取付部材は、各々、該長手方向両端部の各々を外側から覆う被覆部と、該被覆部から内側に湾曲して延在し該長手方向両端部の各々の少なくとも一部を該被覆部との間に挟持する爪部と、を有する請求項2に記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記衝撃吸収体は、アウター筒部と、衝突時の荷重入力方向に対して略垂直方向に面展開すると共に該アウター筒部の内面間を連結し衝突時に引張変形する複数のインナーリブと、を有する請求項3に記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記アウター筒部は、荷重が入力される入力壁部と、該荷重を前記被取付部材に出力すると共に該入力壁部に対して略平行に配置される出力壁部と、該入力壁部と該出力壁部との間を連結する一対の連結壁部と、を有し、
前記インナーリブは、該入力壁部および該出力壁部に対して略平行になるように、一対配置されており、
一対の該インナーリブは、各々、一対の該連結壁部の内面間を連結しており、
前記爪部は、少なくとも、該入力壁部の周方向両端部と、該連結壁部のうち一対の該インナーリブにより囲まれる区間の周方向両端部と、を前記被覆部との間に挟持している請求項4に記載の衝撃吸収部材。
【請求項6】
前記取付部材は、前記補強対象部位における前記被取付部材側に表出する部分の少なくとも一部を覆う回り込み部を有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の衝撃吸収部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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