説明

衝撃波アブレーションシステム

【課題】心内膜側からの治療方法であって、不整脈等の原因となる心筋組織を凝固壊死させるための衝撃波アブレーションシステムを提供する。
【解決手段】衝撃波発生装置11と、先端にその衝撃波発生装置を取り付けたカテーテル12とからなる衝撃波アブレーションシステム10。衝撃波発生置11は、光ファイバー16と、その光ファイバーの先端が挿入される円柱状の反射部17とからなる。反射部17は、前記光ファイバーを通す中心孔21と、その中心孔と連通した長軸を回転軸とした楕円を短軸面によって切断した切断回転曲面形状を有する上端の凹面22とを備えた反射体17aと、その凹面22の開口部を閉じる薄膜23と、前記封入体と凹面22の間に充填される液体24とを有している。光ファイバー16の先端は、凹面22の焦点に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整脈の治療などに用いる衝撃波アブレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2003−265426号公報
【特許文献2】特開2004−215862号公報
【0003】
従来、不整脈の治療法として、薬物療法、心臓ペースメーカー、外科手術、カテーテルアブレーション、植え込み型除細動器など様々な方法が知られている。その中で、カテーテルアブレーションは、熱を発生させたカテーテルの先端を心腔内に挿入させ、心内膜側から不整脈の原因となる心筋組織に直接当接させ、その組織を凝固壊死させるものであり、この治療法は、他の方法に比べ、直接原因となる組織に対して治療することができ注目されている。
【0004】
このようなカテーテルアブレーションとしては、たとえば、特許文献1に紹介されるように、体表面に設置した対極板と、心腔内に留置した電極カテーテルの先端との間で高周波通電を行って電極カテーテルの先端に熱を発生させる高周波カテーテルアブレーションが、患者に対する負担、その使用の安全性等から実用されている。
【0005】
しかし、高周波カテーテルアブレーションでは、発生した熱量は、電極先端からの距離の4乗に反比例して減少し、その進達度には限界がある。また、発生した熱量は、血流によって冷却されたり、組織で拡散されたりして失われるため、その進達度はさらに減少する。そのため、拡張型心筋症など不整脈の起原が心筋の深層に存在する場合は、高周波カテーテルアブレーションではアブレーション効果が低い。
【0006】
一方、特許文献2には、光ファイバーと、その光ファイバーの先端部が固定された細管と、その細管を覆う外套管と、その外套管の開口部を塞ぐ薄い隔膜と、外套管内に充填された液体とからなる衝撃波発生装置が開示されている。
【0007】
この衝撃波発生装置は、光ファイバーにレーザー光を照射することにより、外套管内の光ファイバーの先端部の液体を急激に蒸散させて水蒸気泡を発生させ、その排除効果で細管出口から液体噴流と気泡群を放出させ、気泡群は崩壊して、衝撃波を発生する。一方、液体噴流と気泡群は、隔膜で止められるが、衝撃波は隔膜を透過して伝達され、衝撃波を標的部位に照射するものである。
これにより、頭蓋骨等の硬組織に対して、骨等の再生を外部から促すことに適用することができ、いろいろな治療に応用することができると記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、心内膜側からの治療方法に用いることができるシステムであって、不整脈等の原因となる心筋組織を瞬間的な高圧ないし引っ張り力の負荷で壊死させるための衝撃波アブレーションシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の衝撃波アブレーションシステムは、光ファイバーと、その光ファイバーの先端が挿入され、一端に凹面を有する円柱状の反射部とを備えた衝撃波発生装置と、先端に前記衝撃波発生装置が固定されたカテーテルとからなり、前記反射部が、前記光ファイバーを通す中心孔と、その中心孔と連通し、その中心孔と連通し、長軸を回転軸とした回転楕円面ないしこれを修正した曲面を長軸に垂直あるいは傾斜角をもって切断した切断回転曲面形状の前記凹面とを備えた反射体と、前記反射体の凹面の開口部を閉じる封入体と、前記封入体と反射体の凹面の間に充填される液体とを有しており、光ファイバーの先端が、前記反射体の凹面の焦点に配置されていることを特徴としている。
【0010】
このような衝撃波アブレーションシステムであって、前記凹面が金属ないし合成樹脂からなっているものが好ましい。また、カテーテルの先端のいくらか後の位置が屈曲自在となっているものが好ましい。さらに、反射体の少なくとも一部に電極を備えているものが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衝撃波アブレーションシステムは、光ファイバーと、その光ファイバーの先端が挿入され、一端に凹面を有する円柱状の反射部とを備えた衝撃波発生装置と、先端に前記衝撃波発生装置が固定されたカテーテルとからなるため、心腔内にある患部へ衝撃波発生装置を直接挿入することができる。
また、前記反射部が、前記光ファイバーを通す中心孔と、その中心孔と連通し、長軸を回転軸とした回転楕円面ないしこれを修正した曲面を長軸に垂直あるいは傾斜角をもって切断した切断回転曲面形状の凹面とを備えた反射体と、前記凹面の開口部を閉じる封入体と、前記封入体と反射体の凹面の間に充填される液体とを有しており、光ファイバーの先端が、前記反射体の凹面の焦点に配置されているため、焦点にある光ファイバーの先端からレーザー光が照射されると、瞬間的に水分子を蒸散し、水中衝撃波が発生する。さらに、焦点に発生した水中衝撃波は反射体の凹面で反射して、衝撃波発生装置の外に位置する外部焦点あるいはその周辺の極限された部位に収束する。そのため、得られる衝撃波は、指向性を持って伝播する。そのため、患部が心筋組織の深層に存在しても、患部組織を壊死させることができる。
【0012】
また、カテーテルの先端のいくらか後の位置が屈曲自在となっている場合、複雑に交差した血管内であっても、カテーテルの先端を操作して、配置させることができる。
【0013】
さらに、反射体の少なくとも一部に電極を備えている場合、心筋細胞の電位を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の衝撃波アブレーションシステムを図面を用いて説明する。図1は本発明の衝撃波アブレーションシステムの一実施形態を示す側面断面図、図2は衝撃波の収束過程を示す略図、図3は本発明の衝撃波アブレーションシステムの他の実施形態を示す側面断面図、図4は本発明の衝撃波アブレーションシステムのさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【0015】
図1の衝撃波アブレーションシステム10は、衝撃波発生装置11と、先端にその衝撃波発生装置を取り付けたカテーテル12とからなる。
【0016】
衝撃波発生装置11は、光ファイバー16と、その光ファイバーの先端が挿入される円柱状の反射部17とからなる。
光ファイバー16は、その基端にレーザー装置が取り付けられており、カテーテル12を通って、先端の反射部17に連結されている。また、光ファイバー16の先端はレーザー光を一点に収束するように非球面レンズとなっている。
このような光ファイバー16は可撓性のものが好ましく、材質としては、溶融石英等が挙げられる。さらに、光ファイバー16の径は、0.2〜0.8mmであり、特に0.6mmが好ましい。
【0017】
反射部17は、光ファイバー16を通す中心孔21と、その中心孔と連通した長軸を回転軸とした回転楕円面ないしこれを修正した曲面を短軸面によって切断した切断回転曲面(半切回転楕円)の形状を有する上端の凹面22とを備えた反射体17aと、その凹面22の開口部を閉じる薄膜23と、その薄膜と凹面22の間に充填される液体24とからなる。そして、光ファイバー16の先端は、反射体の凹面22の焦点に配置されている。
【0018】
このような反射体17aの材質としては、アクリル等の合成樹脂、真鍮、ステンレス等の金属が挙げられる。金属を用いる場合、反射体を鏡面化させることができる。合成樹脂を用いる場合、その加工がしやすい。反射体の外径は、2.5〜3.0mm、特に2.8mmが好ましい。
凹面の開口部22の開口部直径は、2.0〜2.5mm、特に2.3mmが好ましく、その長短径比は、1.2〜1.6、特に1.4〜1.45が好ましい。また、凹面は長軸面にやや斜めに切断された大口のものであってもよい。
【0019】
薄膜23は、プラスチック薄膜であり、弾力性を有している。そのような材質としては、ポリエチレン等が挙げられる。
液体24としては、水、食塩水等が用いられる。
【0020】
このように構成された衝撃波発生装置11の光ファイバーの先端から液体24中にレーザーを収束させると、レーザー光は瞬間的に水分子を蒸散し、プラズマを発生する。このプラズマは球状に膨張するピストンのように作用して球状衝撃波を駆動する。そして、図2に示すように反射体の上端の凹面22に反射した波が、衝撃波ないし引っ張り力を発現する膨張波として、腹膜23を介して、反射体の外の焦点あるいは外部の焦点近傍に収束する。
【0021】
カテーテル12は、可撓性を有するものであり、ポリウレタン、ポリアミド、それらに類するエラストマー、シリコーンゴムなどの合成樹脂材料からなる。その大きさは、光ファイバーを通し、衝撃波発生装置を保持できればよい。
【0022】
次のようにして本発明の衝撃波アブレーションシステムを使用する。ガイドワイヤを心腔内の目的部位に挿入する。次いで、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを挿入する。ガイドワイヤを抜いて、カテーテル内に衝撃波アブレーションシステム10を挿入し、衝撃波発生装置11を不整脈の原因となる心筋組織に当接させる。この状態で、衝撃波を患部に向けて発生させることにより、その衝撃波による高圧作用で患部の細胞を壊死させるものである。
この衝撃波アブレーションシステム10は、衝撃波に指向性を持たすことができるため、不整脈の起原が心筋組織の奥部にあっても、確実に壊死させることができる。また、衝撃波を収束させて患部に当てることができるため、患部近辺の組織を傷つけることがない。
【0023】
図3に示す衝撃波アブレーションシステム30は、反射部31の側面先端に電極32を設けたものである。また、カテーテル内には、電位計33が備えられている。他の構成は、実質的に図1の衝撃波アブレーションシステム10と同じものである。
このように電極を備えているため、診断機能を持たせることができる。
【0024】
図4に示す衝撃波アブレーションシステム40は、カテーテルの中心にレーザー光導体41を設置したものである。これにより、光ファイバー21を短くすることができ、光ファイバーより基端側において(例えば、図4のX地点)、カテーテルを任意に曲げることができる。そのため、光ファイバーを曲げる必要がなく、レーザーの収束率が高い。そして、体内での操作性も損なわない。
【実施例】
【0025】
短径が2.5mm、長短比が1.41の楕円を長軸周りに回転した回転楕円面の一部からなり、外径20mmの凹面22を有する反射体17aを備えた衝撃波発生装置11を用意した。この反射体17aは、真鍮製である。この衝撃波発生装置11をラット脳に挿入し、そして、エネルギー源として10マイクログラム程度のアジ化銀をレーザー起爆した。衝撃波発生装置11の反射体の外の第2焦点の限局した空間にあるラット脳の神経細胞に衝撃波を伝播、収束させた。これにより、瞬間的に発生する高圧作用で第2焦点近辺のラット脳の神経細胞を壊死させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の衝撃波アブレーションシステムの一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】衝撃波の収束過程を示す略図である。
【図3】本発明の衝撃波アブレーションシステムの他の実施形態を示す側面断面図である。
【図4】本発明の衝撃波アブレーションシステムのさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 衝撃波アブレーションシステム
11 衝撃波発生装置
12 カテーテル
16 光ファイバー
17 反射部
17a 反射体
21 中心孔
22 凹面
23 薄膜
24 液体
30 衝撃波アブレーションシステム
31 反射部
32 電極
33 電位計
40 衝撃波アブレーションシステム
41 レーザー光導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーと、一端に凹面を有する円柱状の反射部とを備えた衝撃波発生装置と、
先端に前記衝撃波発生装置が固定されたカテーテルとからなり、
前記反射部が、前記光ファイバーを通す中心孔と、その中心孔と連通し、長軸を回転軸とした回転楕円面ないしこれを修正した曲面を長軸に垂直あるいは傾斜角を持って切断した切断回転曲面形状を有する前記凹面とを備えた反射体と、前記反射体の凹面の開口部を閉じる封入体と、前記封入体と反射体の凹面の間に充填される液体とを有しており、
光ファイバーの先端が、前記反射体の凹面の焦点に配置されている、衝撃波アブレーションシステム。
【請求項2】
前記反射体の凹面が金属ないし合成樹脂からなる、請求項1記載のアブレーションシステム。
【請求項3】
前記カテーテルの先端からいくらか後の位置が屈曲自在となっている、請求項1記載のアブレーションシステム。
【請求項4】
前記反射体の少なくとも一部に電極を備えている、請求項1記載のアブレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−61083(P2009−61083A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231214(P2007−231214)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコ−ポレ−ション (362)
【Fターム(参考)】