説明

衣服

【課題】本発明は、ニットセータ等の伸縮しやすい生地の衣服であっても、故意的に引っ張っても衣服が伸びることがなく、型崩れを生じない衣服を提供することを目的とした。
【解決手段】ニット製のセータのように伸縮性の高い生地を用いた衣服1であって、その衣服1の胴横部13及び/又は袖の下ライン14に、引っ張っても伸びない丈夫な部材である伸び防止材7を設け、人為的な引っ張り力であっても胴横部13や袖の下ライン14が伸び難い構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服に関するもので、特に袖や裾などが伸びにくい衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣服には、多くの種類があり、ジャケット,スーツ,カッターシャツ,学生服,セータ,パジャマなど、用途に応じて使い分けられる。
そのような衣服は、従来から、洗濯あるいは湿度や気温等の置かれる環境が原因で袖や裾などが縮む問題があった。
【0003】
この問題に鑑み、特許文献1には、ニット製のウェアの襟周り,袖周り,胸ポケット口周りを塩化ビニル性の芯材で補強し、縮みを防止する発明が開示されている。
【特許文献1】実用新案登録第3057579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで中学校や高等学校では、制服を制定している学校が多い。そして冬季においては、制服だけでは寒いので、制服の下にセータを着込むこととなる。ここで制服を制定している学校の多くでは、制服の下に着込むセータについても制服に準じる衣服として形状やデザインを定めている。
中に着込むセータは、本来は、図6(a)に示すように、制服たる上着の下に隠れるものである。
【0005】
ところが、中学生や高校生は、お洒落をしたい年頃であり、制服やセータを故意に改造して着用する生徒が多い。
特に近年ではセータの袖や裾などを人為的に伸ばして着用することが、生徒の間で流行している。すなわち本来は、体に合ったサイズのセータであって、図6(a)に示すように、制服たる上着の下に隠れるものを着用するが、セータの袖や裾を無理矢理引っ張って、局所的に大きなサイズにして着用する。
【0006】
その結果、図6(b)に示すようにブレザー等の上着の袖や裾からセータが必要以上に露出する。衣服を着用する中学生や高校生は、この姿が格好よく美しいと認識しているが、中高年たる父兄や教員にはとうてい理解できないファッションである。すなわち、まことにだらしない外見であり、学校の品位を損なうこととなる。
【0007】
このような傾向に、父兄や学校は不満を抱えている。つまり、父兄側としては、折角新しく買ってあげたのに故意に衣服を伸ばされることで物を粗末にされている、あるいは格好がだらしない等の不満、学校側としては、生徒のだらしない格好が風紀を乱す等の不満を抱えている。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点を鑑みて、ニットセータ等の伸縮しやすい生地の衣服であっても、衣服を故意的に引っ張っても伸びず、型崩れを生じない衣服を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、上半身に着用する衣服であって、伸縮性を有する布帛で作られた衣服において、胴体部の上下方向又は袖の長手方向の少なくともいずれかに伸び防止材が設けられたことを特徴とする衣服である。
【0010】
請求項1の衣服は、胴体部の上下方向や、袖の長手方向に伸び防止材を設けているため、生徒が衣服を変形しようと故意に袖や裾を引っ張っても衣服は伸びない。そのため請求項1の衣服は、型崩れを起こしにくい。特に伸縮しやすい裾や袖の伸びを防止でき、衣服を長持ちさせる。
また他の部位については、通常の衣服と同様に伸縮するので、着心地を損なうこともない。
【0011】
また生徒は、袖や裾を均等に伸ばそうとする傾向にあるから、例えば胴体部分であれば体側部を伸ばそうとする。袖であれば下ラインを伸ばそうとする。そのため伸び防止材は、胴体部の体側部、又は袖の下ラインに設けられていることが望ましい(請求項2)。
また体側部や袖の下ラインは、着用したときに目立ちにくい部位であるから、伸び防止材を配しても外観上の違和感が生じにくい。
【0012】
また請求項3に記載の発明は、前記伸び防止材は、前記胴体部においては脇部から裾まで、前記袖の長手方向においては脇部から袖口までに設けられ、直線状に略連続していることを特徴とする請求項1又は2に記載の衣服である。
【0013】
請求項3に記載の衣服は、伸び防止材を設ける位置を、胴体部であれば脇部から裾まで、袖の長手方向は脇部から袖までに限定することで、伸びが生じやすい部分だけを補強して衣服の型崩れを防止できる。一般的に衣服における前身頃と後身頃は、脇部から裾あるいは袖まで直線状に縫着されている。そのため本発明によると、伸び防止材だけを縫着するという余分な手間が掛からず、伸び防止材を設けたことが見た目にもわかりにくいため、着用したときの格好を損ねることがない。さらに、伸び防止材を縫着することによるコストアップを防ぐことができる。
【0014】
伸び防止材はテープであることが推奨される(請求項4)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の衣服は、伸び防止材を衣服の胴体部及び/又は袖の長手方向に設けているため、伸縮しやすい袖や裾に引張力を掛けても殆ど伸びず、型崩れしにくい。そのため着用者が故意に変形しようとしてもこれに抗することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の具体的実施形態について説明する。
本実施形態の衣服1は、横編みのニット製のセータであり、図1〜4は、その衣服1の正面図を示している。図5は、本発明の特徴である伸び防止材を編み込む際の分解斜視図である。
【0017】
衣服1は、公知のセータと同様に前身頃2と後身頃3及びアーム部材20が一体となり構成されており、胴体部4と左右のアーム部5,6を持つ構成である。パーツとしてのアーム部材20は、裁断された一枚の布であり、公知のそれと同様に筒状に丸めて端辺同士が縫合されている。この縫合部は、袖の下ラインに位置する。すなわち衣服を着用して腕を横方向水平に伸ばした時、下に向く位置に継ぎ目がある。詳しくは、アーム部5,6における脇部15から袖口11までの袖の下ライン(袖の長手方向)14である。
また前身頃2と後身頃3の間にも継ぎ目がある。この継ぎ目の詳細な位置は、胴体部4における脇部15から裾12までの胴横部(体側部)13である。
【0018】
胴体部4は、裾12側の大開口21と襟部16の小開口22を有する。本実施形態のセータは、図1に示すように、正面視した小開口22の形状が略三角形である。本実施形態では、小開口22が略三角形である構成を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。円弧状やその他の矩形状であっても構わない。
【0019】
アーム部5,6は、胴体部4の襟部16及び脇部15から左右に細長く延びた長袖タイプであり、袖口11に繋がっている。袖11の開口は前記した襟部16よりも小さく形成されている。なお、本発明の衣服1は、半袖や袖が無いタンクトップであっても構わない。
【0020】
ここで本実施形態の衣服1には、伸び防止材7が設けられており、衣服1の伸びを防止する構成である。
本実施形態では、この伸び防止材7にポリエステル系のテープを採用している。ポリエステル系は、吸湿性が低く、薬品にも強い。さらに耐熱性が高いことから洗濯による伸縮から衣服1を守ることができる。
また、ポリエステル系は、繊維の中でも特に丈夫であることから、突発的な人為的な力からも衣服1が伸びることを防止できる。
【0021】
本実施形態の衣服1では、上記した前身頃2と後身頃3の継ぎ目に伸び防止材7を設けている。つまり、図3,4に太線で示すように、胴体部4の体側面部13及びアーム部5,6の袖の下ライン14に伸び防止材7が縫い込まれている。
詳しくは、図3,4に太線で示すように衣服1を平たく広げた状態で、胴体部4の輪郭線と、アーム部5,6の下辺に沿うように連続的に設けられている。
【0022】
このように伸び防止材7を配置とすることで、伸びやすい胴体部4の裾12及びアーム部5,6の袖口11の伸びを防止することができる。
このことにより、故意的な引っ張り力により、裾12や袖口11が引っ張られた場合でも、伸び防止材7がその引っ張り力に対抗し、衣服1が伸びてしまうことを防止することができる。また、洗濯における衣服1の縮みも伸び防止材7により守られる。
【0023】
さらに、前身頃2と後身頃3との継ぎ目に伸び防止材7を設ける構成であるため、作業効率を下げることがない。つまり、大幅なコストアップに繋がることはない。
【0024】
次に図面を参照にして、本実施形態の衣服1における伸び防止材7の取り付け方について説明する。
【0025】
まず図5に示すように、前身頃2と後身頃3とを生地の表側が合わさるように配置する。そして、伸び防止材7をそれらに挟まるように配置する。そのとき、生地の端部側、つまり図1,2における胴横部13及び袖の下ライン14であって、上述した輪郭線近くにテープ状の伸び防止材7を配置させる。その状態を維持し、針と糸を用いて生地と伸び防止材7を縫着させる。詳しくは、縫着させる糸を前記端部に沿って螺旋状に縫い(かがり縫い)、そのとき伸び防止材7にも糸が貫通するようにすると強固に縫着される。
またテープ状の伸び防止材7の挟み込みと、縫合とを同時に行ってもよい。
【0026】
このように、本実施形態の衣服1は、ニット製のセータにおける前身頃2と後身頃3との体側部の継ぎ目であって、胴体部4の脇部15から裾12までと、アーム部5,6の脇部15から袖口11までにテープ状の伸び防止材7を設ける構成である。
つまり、衣服1の継ぎ目に伸び防止材7を配置させるため、見た目にも認識しにくく、その衣服1を着用したときも型崩れすることがない。また、伸び防止材7だけを設ける余分な手間が省けることにも繋がり、大幅なコストアップにならない。
これにより、ニットセータ等の伸縮性の高い衣服1の袖11や裾12を、人為的に伸ばすことができなくなる。
【0027】
上記実施形態の衣服1では、胴横部13及び袖の下ライン14に伸び防止材7を設ける構成を示したが、本発明はこのような構成に限定されるわけではない。
例えば、胴横部13あるいは袖の下ライン14のどちらかにのみ伸び防止材7を設ける構成であっても構わない。しかし、本実施形態のように袖のある衣服1の場合では、伸び防止材7を設けていない側は、従来の衣服と同じく伸びやすいため、上述した本実施形態のように胴横部13及び袖の下ライン14の両方に設ける構成の方が好ましい。
【0028】
上記実施形態の衣服1では、前身頃2及び後身頃3の継ぎ目に伸び防止材7を設ける構成を示したが、本発明はこのような構成に限定されるわけではない。
例えば、前身頃2と後身頃3の継ぎ目以外の箇所に設ける構成であっても構わない。その場合でも、胴体部4の側面部分や、アーム部5,6の下ライン相当部に伸び防止材7を設けることが望ましい。
【0029】
上記実施形態の衣服1では、ニットセータで構成された衣服1を示したが、本発明はニットセータに限られるわけではない。他の伸縮しやすい生地を用いた衣服であれば何でも構わない。
【0030】
本実施形態での衣服1では、横編みのセータを示したが、本発明は、この横編みに限定されるわけではなく、縦編みのニットであっても構わない。
【0031】
本実施形態での衣服1では、伸び防止材7にポリエステル系の部材を示したが、本発明はこれに限られるわけではなく、ワイヤーなど繊維以外の伸びに強い部材であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の衣服の正面図である。
【図2】図1の衣服の背面図である。
【図3】伸び防止材の位置を示す本発明の実施形態の衣服の正面図である。
【図4】伸び防止材の位置を示す本発明の実施形態の衣服の背面図である。
【図5】伸び防止材の挿入部分を示す分解斜視図である。
【図6】(a)は通常のセータの着用状況を示す説明図であり、(b)は故意的に伸ばしたセータの着用状況を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 衣服
4 胴体部
5,6 アーム部
7 伸び防止材
11 袖口
12 裾
13 胴横部(体側部)
14 袖の下ライン(袖の長手方向)
15 脇部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半身に着用する衣服であって、伸縮性を有する布帛で作られた衣服において、胴体部の上下方向又は袖の長手方向の少なくともいずれかに伸び防止材が設けられたことを特徴とする衣服。
【請求項2】
伸び防止材が胴体部の体側部、又は袖の下ラインに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記伸び防止材は、前記胴体部においては脇部から裾まで、前記袖の長手方向においては脇部から袖口までに設けられ、直線状に略連続していることを特徴とする請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項4】
伸び防止材はテープであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−24571(P2010−24571A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186341(P2008−186341)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(397023549)株式会社チクマ (4)
【Fターム(参考)】