表現型の可塑性を示す細胞を生成する方法
本発明は、細胞の分化に関し、特に表現型の可塑性を示すハイブリッド細胞およびこれらの細胞を製造する方法に関する。また、本発明は、所望の表現型の特定の細胞を生成する方法に関する。本発明は、より初期の前駆体の状態への脱分化能を有しているハイブリッド細胞を製造する方法にさらに関する。本発明は、例えば組織生成のための、種々の用途におけるハイブリッド細胞の使用について考慮されている。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、細胞の分化、特に表現型の可塑性を示すハイブリッド細胞、およびこれらの細胞を生成する方法に関する。また、本発明は、所望の表現型の特定の細胞を生成する方法に関する。さらに、本発明は、より初期の前駆状態への脱分化能を有しているハイブリッド細胞を生成する方法に関する。さらに、本発明は、例えば組織生成ための、種々の用途におけるハイブリッド細胞の使用を意図している。
【0002】
〔背景技術〕
本明細書の全体を通じての従来技術のあらゆる議論は、当該従来技術が広く公知であるか、または当該分野においてよく知られている一般的な知識の一部を形成していることの自認として決して見做されるべきではない。
【0003】
体細胞を再生する幹細胞の能力および幹細胞としての細胞区分の特異な可塑性に対する報告は、標的細胞の修復の実現性を広げている。造血性の幹細胞(HSC)は、自己再生能、および特定の微小環境にさらすことによって種々の特殊化された血液細胞型(系統(lineage))を生成する潜在性の両方を示す。異なる血液細胞の分化の過程(すなわち造血)は、発生プログラムが脊椎動物においてどのように確立され、実行されるのか、および血液形成の恒常性が白血病においてどのように変更されるのかを試験する有用なモデルをもたらす。最近の知見は、これがどのように実現されるのかを示すだけでなく、インビボにおける組織の幹細胞の非常な可塑性を示している。
【0004】
造血は、初めに未分化の前駆体(progenitor)を生じ、それから複数または単一の系統経路に下って分化する能力の変更をともなっている前駆体(precursor)を生じるHSCを用いて階層的な様式において通常、表される。特定の系統に拘束された細胞の可塑性を調べる研究によって、系統の転換の過程は形質転換および/または腫瘍遺伝子の発現を必要としたが見出されている。さらに、系統の転換についての証拠が認められたときに、系統の転換は小さい割合の細胞にのみ生じていると分かった(Klinken et al, Cell 53: 857-867, 1988; Graf et at, Blood 99: 3089-3101, 2002)。
【0005】
5−アザシスチジンを用いて処理したアベルソンウイルス性の形質転換したプレB細胞を用いた実験によって、マクロファージ様の特性(プラスティックに付着する能力、ならびに食作用およびエステラーゼ活性が挙げられる)を示す細胞の部分集合が生じた(Boyd et al, Nature 297:691-693, 1982)。より最近の実験によって、Bリンパ細胞株または前白血病骨髄B細胞系統における腫瘍遺伝子E−mycおよびv−rafの同時発現は、それらのマクロファージへの転換を導き得ることが証明されている。これらのトランスフェクトされたマクロファージ様細胞は、骨髄性単球の複数のマーカー(例えばコロニー刺激受容体1)を有しており、リゾチームを発現していたが、元の細胞の特徴(例えば免疫グロブリンの再構成)を保持していた。また、マクロファージへの変化に加えて、B細胞系統はmax遺伝子のトランスフェクションによって顆粒球への変化について報告された(Lindeman et al, Immunity 1: 517-527, 1994)。注目すべきことに、導入遺伝子を発現している細胞の非常にわずかな割合のみが実際に系統を転換しており、1つの系統から他の系統への変化は、完全に理解されていない複雑な過程であることを示している(Klinken et al, Cell 53: 857-867, 1988; Borzello et al, Mol. Cell Biol. 10:2703-2714, 1990)。
【0006】
造血性系統の可塑性を研究する代替の実験的な方法は、遺伝子ノックアウトマウスの生成に関していた。特に、Pax−5をノックアウトしたマウスに由来するB細胞系統は、プレB細胞の特性(例えば、CD19ではなく、B220、AA4.1、SL鎖およびc−Kit(低い)の発現)を示した。また、これらの細胞は、多能性の幹細胞の特性(例えば、インターロイキン7(IL−7)の存在下におけるストロマ細胞に対する継続的な自己再生、移植後の骨髄へのホーミング、ならびにインビボおよびインビトロの両方における造血細胞のほとんどの種類への分化能)を示した。異なるサイトカインまたは異なる成長因子の存在下において増殖させると、それらは異なる細胞の種類の範囲に分化した。例えば、IL−2を用いた処理によってナチュラルキラー細胞(NK細胞)への転換が生じ、CSF−1および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を用いた処理によって樹状細胞への転換を生じ、CSF−1を用いた処理によってマクロファージへの転換を生じ、IL−3、IL−6、幹細胞因子(SCF)および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を用いた処理によって好中球への転換を生じた(Nutt et al, Nature 401: 556-562, 1999)。
【0007】
可塑性がPax−5ノックアウトマウスに由来する細胞を用いて証明されると思われるが、野生型のマウスからのプレB細胞の培養物には疑問があるため、Pax−5ノックアウトのプレB細胞と類似の表現型を示す細胞は、野生型の動物にほとんど存在していない(Kee et al, Curr. Opin. Immunol. 13: 180-185, 2001)。
【0008】
リンパ系の共通前駆細胞(CLP)の可塑性を調べる、遺伝子導入マウスを用いた他の研究によって、IL−7の存在下においてストロマ細胞上で培養され場合にヒトIL−2受容体β鎖を遺書的に発現する遺伝子導入マウスの系統に由来するCLPはB細胞およびNK細胞に分化することが示された。IL−2が培養物に加えられた場合、それらは顆粒球およびマクロファージを形成した。しかし、これらの結果は、同じ条件下に成長させた対照CLPから再現され得なかった(Kondo et al, Nature 407: 383-386, 2000)。したがって、これらの研究の結果は、細胞の可塑性の誘導が拘束された細胞によって通常に発現されない遺伝子の発現を必要とすることを示唆していると考えられる。
【0009】
上述の実験において詳述された表現型の可塑性を示す細胞は、マウスのリンパ腫に由来するか、腫瘍遺伝子によって形質転換された細胞であるか、または変異によって変化したかのいずれかであった。通常のB細胞の可塑性に関するデータがわずかに存在している。一連の実験によって、IL−3、IL−6およびGM−CSFとともに培養した場合に、成体のマウスに由来するCD19陽性、DJ再構成陽性、およびB220陰性のB細胞の、接着性のマクロファージ様細胞への転換が説明された。しかし、NK細胞またはT細胞への転換は実現不可能であった(Montecino-Rodriguez et al, Nat. Immunol. 2: 83-88, 2001)。
【0010】
骨髄球系統からBリンパ球系統への逆転換についてごくわずかなデータが利用できる。試みられている実験は、E2A遺伝子、EBF遺伝子およびRAG遺伝子によってコードされている初期のBリンパ球系統に特異的な転写因子の強制的な発現について主に関していた。例えば、E2Aの強制的な発現は、細胞にそれらの吸着特性を失わさせ、Mac−1およびc−fmsの発現を下方制御させ、Bリンパ球系統に特異的な多くの遺伝子を誘導(ミトゲンに応じたκ鎖の形成能が挙げられる)させた(Kee et al, J. Exp. Med. 188: 699-713, 1998)。これらの細胞が完全なBリンパ球系統の表現型を獲得しなかったことは、E2A遺伝子、EBF遺伝子およびRAG遺伝子の発現の組合せが系統の特異化に十分ではなく、付加的な遺伝子が関与する必要があることを示唆している(Romanow et al, Mol. Cell 5: 343-353, 2000)。
【0011】
また、Tリンパ球系統およびマクロファージの間における起こり得る転換の例がある。胸腺のストロマ細胞株に由来する純化されたプロT細胞の部分集合は、条件培地において培養された場合に機能的なマクロファージを生成した。同じ転換は、IL−6、IL−7およびマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF;CSF−1)の存在下に認められたが、非常に低い頻度であった(Lee et al, J. Immunol. 166: 5964-5989, 2001)。
【0012】
最も説明がなされている分化転換は、ほぼ間違いなく、骨髄球−赤血球の区分内における可塑性である。この分野におけるほとんどの実験は、強制的な転写因子の発現に基づいている。1つの系統から他の系統への培養した細胞株の直接的な分化を可能にする最も再現性があり、予測可能な実験系は、Myb−Etsをコードしている白血球ウイルスによるトリの赤血球巨核球の前駆細胞の形質転換に基づいている。これらのE26−MEP細胞は、巨核球細胞および幹細胞の表面マーカー(例えば、MEP21/トロンボムチン/PCLP1およびGPIIaIIb/CD41(Graf et al, Cell 70:201-213, 1992; McNagny et al, J. Cell. Biol. 138:1395-14-7, 1997)、ならびにGATA−1およびFOG−1)の多くを発現しているが、骨髄性単核球の表面マーカーを発現しておらず、PU.1、C/EBPαおよびC/EBPβを発現していないか、または低レベルに発現している。v−Etsがこれらの細胞において不活性化される場合、それらは赤血球細胞に分化する(Golay et al, Cell 55: 1147-1158, 1987; Rossi et al, Curr. Biol. 6: 866-872, 1988)。代替的に、Mybの不活性化はこれらの細胞の血小板への分化を導く(Frampton et al, EMBO J. 14: 2866-2875, 1995)。レトロウイルス性の形質転換を介してか、またはタンパク質キナーゼC(PKC)の活性化によってras経路の腫瘍遺伝子の導入を通じて、細胞は拘束されて、シグナルの強度に依存して好酸球または骨髄芽球になる(Graf et al, Cell 70:201-213, 1992; Rossi et al, EMBO J. 15: 1894-1901, 1996)。
【0013】
多能性または分化状態の維持は、持続的な過程の結果であること、および単一(または少数)の核制御因子の活性化もしくは抑制は、分化、系統の転換、もしくは脱分化を導き得ることが広く知られている(Orkin, Nature Rev. Genet. 1: 57-64, 2000)。これに関連して、それらの発現において特定の系統に制限されている核の転写因子の研究は、それらが細胞の分化に対して固有の遺伝子発現プログラムを確立しているので、特に関心がもたれている。成長因子は、造血の維持、細胞の生存能力および増殖に重要であり、それらは経路の分化にとって必ずしも指導的ではない(Sokolovsky et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 6573-6575, 1998; Stoffel et al, Proc Natl. Acad. Sci. USA 96: 698-702, 1999)。
【0014】
系統分化の複雑さは、所定の因子が発現されている濃度またはレベルが系統の分化の方向に影響し得ることを示す研究によってさらに証明されている。特に、形質転換されたトリの前駆体の系(Kulessa et al, Genes Dev. 9: 1250-1262, 1995)において、系統の結果はGATA−1発現のレベルと相関した。低レベルにおいてそれは好酸球を生じ、高レベルにおいてそれは赤血球細胞および巨核球細胞を産生した。また最近、高レベルのPU.1がマクロファージの発生を支持し、低レベルにおいてB細胞が生成されることが見出されている(DeKoter et al, Science 288: 146-149, 2000)。
【0015】
また最近、HSCは組織の異なる種類に寄与する顕著な能力を有していることが明らかになっている。したがって、細胞の可塑性を制御する能力または導入する能力は、潜在的に多くの有用な用途を有している。例えば、FAHチロシナーゼ欠乏症の機能的な肝臓の再構成は、高度に純化されたHSCを用いることによって実現された。肝細胞は、内胚葉に由来しており、したがって中胚葉に由来するHSCは内胚葉性の派生物に転換する能力を有していると思われる(Lagasse et al, Nature Med. 6: 1229-1234, 2000)。他の一連の実験はHSCの非常に高い可塑性を指摘しており、これらの細胞の機能的な能力に関するデータは示されていないが、これによって、骨髄に由来する単一の幹細胞は多くの器官における種々の表皮組織に対する低レベルの寄与を証明している(Krause et al, Cell 105: 369-377, 2001)。濃縮された骨髄性の集団に由来する成体の幹細胞を用いた最近の実験によって、心筋梗塞の後に筋細胞を修復する能力がさらに示された(Orlic et al, Ann. NY Acad. Sci. 938: 221-230, 2001; Orlic et al, Nature 410: 701-705, 2001; Jackson et al, J. Clin. Invest. 107: 1395-1402, 2001)。
【0016】
以上において詳述した研究によって、細胞に可塑性を導入することの理解および可能性は、例えば組織再生における、潜在的に有用な用途を有していることが明らかに示されている。
【0017】
また、造血細胞はより初期の前駆状態に逆分化し得るか、または脱分化し得るという証拠が増えている。例えば、v−mybの温度感受性(ts)変異体によって形質転換されたトリの骨髄単球性の細胞は、未成熟な表現型を示し、許容性の温度において骨髄芽球と類似している。しかし、非許容性の温度において、それらは、食作用を示す吸着性のマクロファージ様細胞に移行し、分裂を中断する。低速度撮影の実験によって、許容性の温度に変化した後の2または3日以内に、この過程は芽細胞の形態を獲得し、細胞周期にふたたび入ることをともなって可逆性であったことが示された(Beug et al, Genes Dev. 1: 277-286, 1987)。
【0018】
環境の操作によって単一の細胞集団から機能的に分化した骨髄性細胞またはリンパ系細胞の生成を可能にする再生可能で安定なモデルが存在しないため、今のところ、分化転換を調べる研究の大部分は非ヒト細胞を用いてなされている。
【0019】
現在、造血系統内のすべての分化転換の研究は生体宿主への移植を必要とする非ヒトモデルにおいて実施されている。さらに、これらのモデル系は異なる系統に切り替わる高頻度の細胞について証明されておらず、したがってインビトロおよびインビボにおける研究の効率を制限している。最も注目すべきことに、これらのモデル(例えば、遺伝子導入動物から単離された細胞または人工的に形質転換された細胞)は、天然に存在していない細胞の表現型の使用をしばしば含んでいる。
【0020】
成熟エフェクター細胞の分化転換に関する利用可能なデータは限られているか、またはない。これは、B細胞、T細胞および骨髄性細胞の成熟した表現型のマーカー、特にCD19、CD4もしくはCD3、およびCD15といったマーカーを含んでいる細胞系または動物モデルが不足していることから生じている。Bリンパ球系統の分化転換をともなう実験の大部分は、成熟したCD19陽性細胞への転換について非常に低い頻度を有しているプレB細胞に関する。Bリンパ球系統および骨髄球、Tリンパ球および骨髄球の間における転換はわずかな成功を収めているが、Bリンパ球系統およびTリンパ球系統の間の転換は認められていない。
【0021】
従来技術の少なくとも1つの不都合の克服もしくは改善、または有用な代替物を提供することが本発明の目的である。
【0022】
〔発明の概要〕
多重の融合細胞は不安定であり、融合に関連する細胞が多いほど、生じるハイブリッド細胞の不安定性が増すことが一般的に認められている。意外にも、本発明において、いくつかの細胞(例えば、3つの細胞)の融合から生じるハイブリッド細胞は、機能的な安定性を示す。特に、異なる系統に由来する細胞は体細胞性に融合されるか、またはハイブリダイズされて、実質的に安定なキメラ/ハイブリッド細胞を形成し得ることを見出している。より詳細には、本発明は、三重のハイブリッドを生じる少なくとも3つの親細胞のハイブリダイゼーションに基づいて生成される系統交雑のキメラ/ハイブリッド細胞に関する。ここで、少なくとも2つの親細胞は、異なる系統に由来しており、骨髄腫細胞はハイブリダイゼーションに関わっていない。
【0023】
意外にもまた、本発明の安定なキメラ/ハイブリッド細胞は、所望の表現型(例えば、(複数の)所定の外来因子を用いた処理による所望の系統)の細胞に変化可能な表現型的可塑性を示すことを見出している。これらの因子としては、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンド、細胞(例えば、ストロマ細胞)またはこれらの組合せが挙げられ得る。
【0024】
細胞の表現型を変えるこれまでに公知の方法は、例えば腫瘍遺伝子発現の変更または形質転換動物からの細胞の単離による、細胞の形質転換を包含している。これらの方法は、技術的に複雑であり、細胞の表現型的可塑性の低いレベルを常にともなっている非能率的な結果をもたらす。さらに、これらの公知の方法は、ヒト細胞に対して容易に採用され得ない。
【0025】
本発明は、効率的な分化転換(trans-differentication)または脱分化を可能にする安定な細胞系を提供するという点について、これまでに公知の方法を超えて顕著な利点を提供する。さらに、本発明は、ヒト細胞の分化転換または脱分化を可能にする。
【0026】
一実施形態において、本発明は、細胞分化の過程(例えば血液細胞の分化(すなわち造血))を調べるための多用途の簡便なモデル系を提供することに関する。また、本発明は、遺伝的なプログラムが脊椎動物においてどのように確立され、実行されているのかを試験するための有用なモデルを提供することに関する。また、本発明は、細胞の悪性腫瘍化の機能(例えば、血液形成の恒常性がどのようにして白血病に変質されるのか)の理解をもたらすことに関する。
【0027】
また、代替的な実施形態において、本発明は、疾患の処置の用途(例えば、特定の細胞または組織の生成)に使用され得る表現型可塑性を発現する細胞の生成に関する。
【0028】
本発明は、分化過程のモデル系の研究の代わりを果たし得る。また、成熟した細胞から特定の細胞への分化能または脱分化能が好都合であり得る状況があり得る。例えば、ある患者は、分化経路におけるある点における変異に起因して特定の表現型を有している細胞を十分に産生する能力を欠いている。例えば、彼らは、プレB細胞を有し得るが、成熟B細胞を有し得ない。そのような患者からプレB細胞を単離すること、およびそれらをB細胞にすることは、役には立たない。しかし、変異のない、彼らの他の細胞種は本発明を用いてB細胞に分化転換され得る。
【0029】
ある実施形態において、本発明は、必要に応じてB細胞、T細胞または骨髄性単球細胞を生成可能な造血性分化転換系(HTS)の創出に関する。
【0030】
一実施形態において、細胞の可塑性を示す3種のハイブリッド細胞は、1つの骨髄単核性の前駆体(不死または初代培養(primary)のいずれか)、1つのB細胞(不死または初代培養のいずれか)、および1つのT細胞(不死または初代培養のいずれか)のハイブリダイゼーションによって生成され得る。ここで、上記ハイブリッド細胞は、ハイブリダイゼーションに使用したすべての細胞種に由来する特定のCDマーカー(例えば、CD15、CD19、CD4)を発現している。しかし、当業者は、本発明がこれらの特定のマーカーを発現するハイブリッド細胞に限定されないことを理解する。
【0031】
ある特定の実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は、例えば
1つの骨髄単球性の共通前駆体K562(CD72+CD15+)、1つの初代B細胞(CD19)、および1つのT細胞(CD4)−KBT;
1つの骨髄単球性の共通前駆体K562、不死のB細胞WIL2NS、および不死のT細胞MOLT−KMW;または
初代培養された骨髄CD34+CD15+細胞に由来する1つの骨髄単球性の共通前駆体、1つの不死のB細胞WIL2NSおよび初代培養された1つのT細胞−WTM
のハイブリダイゼーションによって生成され得る。
【0032】
特に好ましい実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は、種々の因子(例えば、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンド、ストロマ細胞といった細胞もしくはこれらの組合せ)にそれらをさらすこと、または所望の細胞種とさらにハイブリダイズすることのいずれかによって、必要に応じてB細胞、T細胞または骨髄単球性の細胞に分化され得る。他の実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は、他の細胞(例えば、例えばCD34を発現する前駆細胞、またはCD34を発現する細胞)とさらにハイブリダイズすることによって分化され得る。
【0033】
第1の局面によれば、本発明は、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供する。当該方法は、
未拘束(uncommitted)の前駆細胞に由来する細胞、または幹細胞である第1の細胞;
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第2の細胞;および
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第3の細胞をハイブリダイズして、ハイブリッド細胞を生成する工程、ならびに
当該ハイブリッド細胞が所定の表現型の上記細胞になる所定の環境に当該ハイブリッド細胞をさらす工程を包含している。
【0034】
一実施形態において、上記所定の表現型は、B細胞、T細胞または骨髄性細胞である。代替的な実施形態において、上記表現型は、例えばCD34、CD10、Pax−5またはλ様のうちの1つ以上の発現を包含している。
【0035】
ある実施形態において、上記第1の細胞は骨髄性の共通前駆細胞に由来し、上記第2の細胞はBリンパ球系統に由来する細胞であり、上記第3の細胞はTリンパ球系統に由来する細胞である。
【0036】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球であることが好ましい。したがって、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズする工程を包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0037】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示していることが好ましい。したがって、本発明は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示している骨髄性の共通前駆細胞、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0038】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は単球である。したがって、本発明は、単球、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0039】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は初代培養された骨髄単球性の前駆細胞である。したがって、本発明は、初代培養された骨髄単球性の前駆細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0040】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球から選択される不死化された細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0041】
他の実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来するものである。したがって、本発明は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来する骨髄性の共通前駆細胞、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0042】
他の実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞、またはエフェクターB細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞、またはエフェクターB細胞から選択されるBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0043】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞はプラズマ細胞または抗原を経験した(antigen-experienced)B細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、プラズマ細胞または抗原を経験したB細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0044】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示している。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示しているBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0045】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞、ならびにプレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞から選択されるTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0046】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示している。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞、ならびに以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示しているTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0047】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、不死化されたBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0048】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞、ならびに不死化されたTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0049】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、リンパ組織に由来するBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0050】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞、ならびにリンパ組織に由来するTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0051】
ここで、本発明の方法に包含されているBリンパ細胞またはTリンパ細胞はリンパ組織に由来するものである。当該リンパ組織は、末梢血、臍帯血、脾臓、骨髄、胸腺、扁桃腺、咽頭扁桃腺および領域リンパ節から好ましく選択される。
【0052】
一実施形態において、本発明の方法に包含されている細胞の少なくとも1つはヒト細胞である。また、本発明の方法はヒト細胞以外(例えばマウス細胞)の細胞を包含し得ることが明らかである。
【0053】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する細胞はK562細胞である。したがって、本発明は、K562細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0054】
一実施形態において、上記第2の細胞または上記第3の細胞はそれぞれWIL2NSまたはMOLT5細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞、WIL2NS細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。また、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞、Bリンパ細胞およびMOLT4細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供する。
【0055】
一実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞はMOLT4細胞である。
【0056】
他の実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞は初代培養されたB細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0057】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたヒト単球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0058】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたヒト骨髄単球性の前駆体であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたヒトT細胞である。
【0059】
他の実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0060】
さらなる実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたマウス単球であり、上記第2の細胞はSP2細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたマウスT細胞である。
【0061】
ある実施形態において、上記B細胞および上記T細胞はCD5を発現している、代替的な実施形態において、上記B細胞はCD20およびCD72を発現しており、上記T細胞はCD4およびCD8を発現している。
【0062】
ある実施形態において、本発明の方法によって生成された上記ハイブリッド細胞は他の細胞とさらにハイブリダイズされる。ここで、当該他の細胞は例えば、幹細胞または前駆細胞であり得る。
【0063】
ある実施形態において、上記所定の環境は、胸腺のストロマ細胞、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンドまたはこれらの組合せを包含している。したがって、本発明の方法は、上述のような3つの細胞:例えば
未拘束の前駆細胞に由来する第1の細胞;
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第2の細胞;および
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第3の細胞
をハイブリダイズして、ハイブリッド細胞を生成すること、ならびに当該ハイブリッド細胞が所定の表現型の細胞になるような胸腺のストロマ細胞、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンドまたはこれらの組合せに当該ハイブリッド細胞をさらすことを提供することが明らかである。
【0064】
ある実施形態において、上記所定の環境に包含されている上記サイトカインまたは成長因子は、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−1β、IL−7、IL−23、TGF−β、M−CSF、GM−CSF、およびIFN−γからなる群から選択される。
【0065】
ある実施形態において、上記免疫グロブリンは、抗IL−4、抗IFN−γおよび抗CD3/CD28からなる群から選択される。
【0066】
ある実施形態において、上記受容体リガンドはFit3リガンドまたはCD40である。
【0067】
ある局面において、本発明は、
未拘束の前駆細胞に由来する第1の細胞;
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第2の細胞;および
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第3の細胞
のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。ここで、上記第1の細胞は骨髄腫細胞ではない。
【0068】
一実施形態において、上記第2の細胞はBリンパ球系統に由来する細胞であり、上記第3の細胞はBリンパ球系統に由来する細胞である。
【0069】
他の実施形態において、上記第2の細胞はBリンパ球系統に由来する細胞であり、上記第3の細胞はTリンパ球系統に由来する細胞である。
【0070】
上記第1の細胞は骨髄性の共通前駆細胞に由来する細胞であることが好ましい。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、および2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0071】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球であることが好ましい。したがって、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0072】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示していることが好ましい。したがって、本発明は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示している骨髄性の共通前駆細胞、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示している骨髄性の共通前駆細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0073】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は単球である。したがって、本発明は、単球ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、単球、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0074】
他の実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は初代培養された骨髄単球性の前駆細胞である。したがって、本発明は、初代培養された骨髄単球性の前駆細胞、および2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、初代培養された骨髄単球性の前駆細胞、Bリンパ細胞、およびTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0075】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球から選択される不死化された細胞、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球から選択される不死化された細胞、Bリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0076】
他の実施形態において、骨髄性の共通前駆体細胞に由来する上記細胞は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来するものである。したがって、本発明は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来する骨髄性の共通前駆体細胞、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来する骨髄性の共通前駆体細胞、Bリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0077】
他の実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞またはエフェクターB細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびにプレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞、またはエフェクターB細胞から選択される2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞またはエフェクターB細胞から選択されるBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0078】
一実施形態において、上記エフェクターB細胞はプラズマ細胞または抗原を経験したB細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびにプラズマ細胞または抗原を経験したB細胞から選択される2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、プラズマ細胞または抗原を経験したB細胞から選択されるBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0079】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示している。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびに以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示している2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示しているBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0080】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、、Bリンパ細胞、ならびにプレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞から選択されるTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0081】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示している。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、、Bリンパ細胞、ならびに以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示しているTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0082】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびに不死化された細胞の少なくとも1つであり得る2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、不死化されたBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0083】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、Bリンパ細胞、ならびに不死化されたTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0084】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびにリンパ組織に由来する2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、リンパ組織に由来するBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0085】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、Bリンパ細胞、ならびにリンパ組織に由来するTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0086】
ここで、本発明のハイブリッド細胞に含まれている上記Bリンパ細胞または上記Tリンパ細胞はリンパ組織に由来しており、当該リンパ組織は、末梢血、臍帯血、脾臓、骨髄、胸腺、扁桃腺、咽頭扁桃腺、および領域リンパ節から好ましく選択される。
【0087】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に包含されている上記細胞の少なくとも1つはヒト細胞である。また、本発明のハイブリッド細胞はヒト細胞以外の細胞(例えばマウス細胞)を包含し得ることが明らかである。
【0088】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞はK562細胞である。したがって、本発明は、K562細胞、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供することが明らかである。また、本発明は、K562細胞、不死化されたBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0089】
一実施形態において、上記第2の細胞または上記第3の細胞はそれぞれWIL2NS細胞またはMOLT4細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞または幹細胞、WIL2NS細胞ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供することが明らかである。また、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞または幹細胞、Bリンパ細胞、ならびにMOLT4細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0090】
一実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞はMOLT4細胞である。
【0091】
他の実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞は初代培養されたB細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0092】
他の実施形態において、上記第1の細胞はヒト単球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0093】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたヒト骨髄性単球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0094】
他の実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0095】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養された単球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞はWIL2NS細胞である。
【0096】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養された単球であり、上記第2の細胞はSP2細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたマウス細胞である。
【0097】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたマウス単球であり、上記第2の細胞はSP2細胞であり、上記第3の細胞はSP2細胞である。
【0098】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたヒト単球またはマウス単球であり、上記第2の細胞はWIL2−NS細胞であり、上記第3の細胞はSP2細胞である。
【0099】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は所望のタンパク質を発現する。一実施形態において、上記タンパク質は外来性のタンパク質である。他の実施形態において、上記タンパク質は組換えタンパク質である。上記タンパク質はサイトカイン(すなわちコロニー刺激因子またはインターロイキン)であることが好ましい。一実施形態において、上記タンパク質はGM−CSFである。他の実施形態において、上記タンパク質はインターロイキン2である。さらに他の実施形態において、上記タンパク質は受容体またはそれらの断片である。さらに他の実施形態において、上記タンパク質は可溶性の受容体である。
【0100】
一実施形態において、上記タンパク質はヒトIL−4受容体α鎖である。他の実施形態において、上記タンパク質はIgMである。さらに他の実施形態において、上記タンパク質はIgGである。さらに他の実施形態において、上記タンパク質はCD54である。
【0101】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に使用されるハイブリダイゼーションは電気的な手段によって実現される。他の実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に使用されるハイブリダイゼーションは化学的な手段によって実現される。
【0102】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は所望のタンパク質を発現している細胞とさらにハイブリダイズされる。
【0103】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に使用されるハイブリダイゼーションは3つの個々の細胞をハイブリダイズすることによって実施される。
【0104】
他の実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に使用されるハイブリダイゼーションは細胞の3つの集団を用いて実施される。ここで、各細胞集団は同一の細胞種または表現型を複数含んでいる。
【0105】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は、特定の細胞種を規定するマーカーに関して濃縮されて、タンパク質の発現が所望の翻訳後修飾または所望の機能性を示すことを可能にする。
【0106】
〔定義〕
本発明に照らして、「含んでいる(comprise)」および「含んでいる(comprising)」などは、それらの排他的な意味ではなく、「包含しているが、これに限定されない」というそれらの包括的な意味において解釈されるべきである。
【0107】
(ハイブリッド細胞)
ハイブリッド細胞は、2以上のゲノムに由来する構成要素を含んでいる細胞(接合体およびそれらの派生物以外)である。それは、例えば2以上の生物学的な細胞(親細胞)の、体細胞ハイブリダイゼーション(または全細胞ハイブリダイゼーション)から構築される細胞である。親細胞は、同じ系統(または種)または異なる系統(または種)のいずれかから入手され得る。同じ系統および種から生成されたハイブリッド細胞は自己ハイブリッド(auto-hybrid)と呼ばれ、一方、異なる系統のハイブリッド細胞は異種ハイブリッドと呼ばれる。
【0108】
(キメラ細胞)
キメラ細胞は、2以上の異なる種に由来するゲノムを有している、人工的に生成されたハイブリッド細胞である。
【0109】
(系統交雑のハイブリッド細胞)
系統交雑のハイブリッド細胞は、異なる細胞系統に由来する2以上の細胞に由来するゲノムを有している人工的に生成されたハイブリッド細胞である。造血細胞は2つの主な系統:リンパ球系(T細胞、B細胞およびNK細胞)ならびに骨髄系(単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球および好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)に分けられる。
【0110】
(トリハイブリッド細胞(tri-hybrid cell))
トリハイブリッド細胞は、3つの細胞に由来するゲノムを有している、人工的に生成されたハイブリッド細胞である。
【0111】
(安定な)
細胞に言及するときに、「安定な」という用語は、所定の成長パラメータもしくは生産パラメーターの一貫性を証明する細胞の能力、または増加する世代数に対して細胞株の生産特性の一貫性を意味する。安定な形質転換体に言及して用いられるとき、それは、比較的に一定のレベルにおいて導入遺伝子を、実質的に無期限に発現する細胞株を意味する。
【0112】
(体細胞ハイブリダイゼーション)
本明細書に照らして、「体細胞ハイブリダイゼーション」という用語は、細胞の原形質膜が良好に接触するよう誘導され、接触点において親細胞の原形質膜の可逆的な破壊が同時に誘導され、新たに形成された単一細胞の外膜の内部にそれぞれの親細胞の本体または細胞小器官が組み込まれるような方法において、単一の生細胞が2以上の二倍体(非生殖細胞)の細胞(親細胞)から生成される過程を指す。新たに形成された単一の細胞はハイブリダイズされた細胞またはハイブリッド細胞と呼ばれる。
【0113】
(幹細胞)
「幹細胞」という用語は、有糸分裂による分裂能および種々の異なる細胞型への分化能を有している特殊化していない細胞(unspecialised cell)を指す。幹細胞は、胚性幹細胞、臍帯に由来する「成熟な」幹細胞または成体に由来する幹細胞を包含し得る。幹細胞は、すべての細胞型に分化する無制限の能力を有している細胞、すなわち全能細胞を包含している。また、幹細胞は、特殊化した細胞(例えば、全能性、多能性、低能性(oligopotent)または単能性幹細胞)への分化能に制限されている細胞を包含し得る。
【0114】
(不死化された細胞)
「不死化された細胞」という用語は、無制限に成長する能力を有している細胞を指す。不死化された細胞はインビボの悪性腫瘍または胚に由来し得ることが明確であろう。代替的に、不死化された細胞は、無制限に成長する能力を誘導する処理を細胞に施すことによって入手し得る。これら処理は、例えば、インビトロの形質転換処理(例えばウイルス遺伝子の導入)を包含し得る。当該ウイルス遺伝子は、例えば、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、シミアンウイルス40(SV40) T抗原、アデノウイルス E1AおよびE1B、ならびにヒトパピローマウイルス(HPV) E6およびE7である。代替的に、不死化された細胞はテロメラーゼ逆転写酵素タンパク質(TERT)の発現または他の方法を経た細胞に由来し得る。また、不死化された細胞は、発癌遺伝子の発現が改変されている細胞に由来し得る。不死化された細胞は無制限に成長する能力を誘導する任意の処理(UV照射、または不死化の機構が不明である任意の形質転換を包含しているが、これらに限定されない)に由来し得る。
【0115】
(骨髄腫細胞)
「骨髄腫細胞」という用語は、プラズマ細胞の悪性腫瘍を指す。
【0116】
(ハイブリドーマ)
「ハイブリドーマ」という用語は、免疫化された動物の脾臓に由来するB細胞と、骨髄腫細胞とのハイブリダイゼーションによって生成される細胞を指す。ハイブリドーマはモノクローナル抗体の産生能を有している不死化された細胞である。
【0117】
(未拘束の前駆細胞)
「未拘束の前駆細胞」という用語は、任意の特定の系統に拘束されることなく、一部の種類の細胞にのみ分化し得るが、自己をもはや回復し得ない幹細胞の初期の子孫を指す。
【0118】
(骨髄性の共通前駆細胞)
骨髄性の共通前駆細胞は、骨髄系統に制限された造血幹細胞の子孫であり、巨核球/赤血球または顆粒球/マクロファージ前駆細胞のいずれかになり得るが、リンパ球系細胞になり得ない。
【0119】
(リンパ系の共通前駆細胞)
リンパ系の共通前駆細胞は、リンパ球系統に制限された造血幹細胞の子孫であり、B、T細胞およびナチュラルキラー細胞になり得るが、骨髄細胞になり得ない。
【0120】
(Bリンパ球系統に由来する細胞)
Bリンパ球系統に由来する細胞は、B細胞の任意の型になるB系統の分化の後の、リンパ系の共通前駆細胞に由来する任意の細胞である。
【0121】
(Tリンパ球系統に由来する細胞)
Tリンパ球系統由来の細胞は、T細胞の任意の型になるT系統の分化の後の、リンパ球共通前駆体に由来する任意の細胞である。
【0122】
(顆粒球−マクロファージ前駆細胞)
顆粒球−マクロファージ前駆細胞は、骨髄性の共通前駆細胞に由来しており、顆粒球および単球の系統に分化するが、巨核球および赤血球の系統には分化しない前駆細胞である。
【0123】
(巨核球−赤血球前駆細胞)
巨核球−赤血球前駆細胞は、骨髄性の共通前駆細胞に由来しており、巨核球および赤血球の系統に分化するが、顆粒球および単球の系統には分化しない前駆細胞である。
【0124】
(プレB細胞)
プレB細胞は、膜結合型IgMの重鎖が代替軽鎖と共に発現している段階において発達中のB細胞である。
【0125】
(未成熟なB細胞)
未成熟なB細胞は、抗体の位置の組換え段階においてVJがL鎖上に再構成され、VDJがH鎖上(IgM受容体の発現がみられる)に再構成される骨髄において発達中のB細胞を指す。
【0126】
(ナイーブB細胞)
ナイーブB細胞は、その表面の免疫グロブリンの無作為な遺伝子再構成を経て骨髄において分化し、成熟しているが、末梢において対応する抗原といまだに接触していない成熟B細胞である。
【0127】
(活性化B細胞)
T依存性の様式または非依存性の様式におけるクローン性増殖、およびプラズマ細胞への最終分化の組合せを生じるBCRを介した抗原認識を通じて、末梢において対応する抗原に接触した成熟B細胞型である。
【0128】
(エフェクターB細胞)
エフェクターB細胞は、特定の抗原に特異的な抗体および免疫系の他の細胞を機能させるために過剰のサイトカインを分泌する短期生存型のB細胞の一種である、抗体分泌プラズマ細胞としばしば同義である。
【0129】
(記憶B細胞)
記憶B細胞は、初期の免疫反応の間に接触した抗原に特異的である活性化B細胞から形成された長期生存型のB細胞であり、同じ抗原に対する2回目のばくろに続く迅速な応答が可能である。
【0130】
(プラズマ細胞)
プラズマ細胞は、最終的な有糸分裂後の短期生存型の免疫系の細胞であり、CD4+リンパ球(Th細胞)による刺激によってB細胞から分化し、大量の抗体を分泌する。
【0131】
(前T細胞)
前T細胞は、TCRのβ鎖が二重陰性(CD4−CD8−)のT細胞(CD3+)において発現しており、VbDbJbが揃いっている段階において発達中のT細胞である。
【0132】
(未成熟T細胞)
未成熟T細胞は、骨髄から胸腺に移動しているが、そのTCRの再構成もしくは自己の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子上に提示された自己ペプチドに対するTCR結合能についての選択が完了していないか、またはそれぞれMHCクラスIもしくはII分子に対する細胞のTCR特異性と正確に相互関係を示すTキラー系統もしくはTヘルパー系統への分化を経ていない発達中のT細胞である。系統分化は補助受容体分子であるCD8またはCD4の一方の発現を喪失することによって表現型として特徴付けられる。
【0133】
(ナイーブT細胞)
骨髄において分化し、そのTCRの再構成を伴う胸腺における中心的な選択のポジティブおよびネガティブな過程および補助受容体分子の1つの喪失を首尾よく経ているが、末梢において対応する抗原といまだに接触していない成熟T細胞。
【0134】
(活性化T細胞)
活性化T細胞は、抗原提示細胞上における主要組織適合遺伝子複合体ペプチド(ペプチド:MHCの複合体)およびB7ファミリーメンバーのそれぞれによる、細胞表面上のTCRおよびCD28の両方の結合を通して、抗原特異的なエフェクターT細胞になりつつあるT細胞である。
【0135】
(エフェクターT細胞)
エフェクターT細胞は、細胞に適切なペプチド:MHCの複合体を有している当該細胞との接触によって即座に応答可能な短期生存型のTリンパ球の一種である。
【0136】
〔図面の簡単な説明〕
図1.同定および分取−精製したCD71+K562細胞。
【0137】
図2.CD15陽性およびCD71陽性のK562細胞のFACSプロファイル;(a)元のCD71に関して濃縮されたK562細胞の集団の約18%がCD15について陽性(R1領域)であり、(b)培養物における2ヵ月後のCD15陽性のK562細胞の再分析。
【0138】
図3.培養物における48時間後の、CD34+に関して濃縮されたAMLの単球細胞からの、CD34陽性、およびCD34+およびCD34+CD15+の細胞の分取。
【0139】
図4.マウス抗ヒトCD19抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイル。
【0140】
図5.マウス抗ヒトCD3抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイル。
【0141】
図6.マウス抗ヒトCD20抗体およびマウス抗ヒトCD72抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイル。
【0142】
図7.CD3およびCD54について染色した扁桃腺の単球細胞の典型的なFACSプロファイル。
【0143】
図8.IgMおよびIgG陽性の培養リンパ球の存在;(A)5日後の培養物において、CD19+細胞の18%がIgM陽性であり、1%のみがその表面に検出可能なIgGを有しており、(B)1日後の、IgM陽性のリンパ球の割合がわずか2%まで減少し、IgG陽性の細胞の割合が15%まで増加した。
【0144】
図9.HTS−KMW細胞についてのCD発現のFACSプロファイル、および異なる表現型の細胞集団についての分取領域。
【0145】
図10.初代培養された混合した脾臓のリンパ球上におけるCD4およびCD19の発現、分取したCD4およびCD19の集団、ならびに生じたHTS−KBT細胞株;(a)初代培養された脾臓のリンパ球のCD4およびCD19の発現;(b)分取したCD19+細胞の純度のプロファイル(98.1%);(c)分取したCD4+細胞の純度のプロファイル(96.8%);(d)HTS−KBT細胞上におけるCD19およびCD4の共発現。HTS−KBT細胞集団の99%以上がB細胞およびT細胞の両方についてのマーカーを共発現している。
【0146】
図11.不死化した1つの骨髄性細胞、および抗原を経験した、初代培養された2つのリンパ球に由来するHTS−KBTAE上におけるCD19、CD3およびCD5の発現:(a)HTS−KBTAE細胞表面上におけるCD19およびCD5の発現;(b)HTS−KBTAE細胞上におけるCD3およびCD5の発現。
【0147】
図12.不死化した1つの骨髄性細胞、および骨髄および胸腺に由来する初代培養された2つのリンパ球に由来するHTS−KBTDP細胞上におけるCD4、CD8、CD72およびCD20の表面発現:(a)HTS−KBTDPの表面上におけるCD4およびCD8の発現;(b)HTS−KBTDPの表面上におけるCD4およびCD72の発現;(c)HTS−KBTDPの表面上におけるCD20およびCD8の発現。
【0148】
図13.骨髄単球性の前駆細胞に由来するHTS−WTM細胞の表面上におけるCD発現:(A)CD19、CD4およびCD15を用いた3色染色、(B)
骨髄単球性の前駆体に由来するCD34およびCD15、ならびにエフェクターT細胞に由来するCD4を用いた3色染色。
【0149】
図14.CD4表現型を促進する環境における8日後の、HTS−KMW.6、HTS−WTM.6およびHTS−.12の培養物におけるCD4、CD19およびCD15の代表的な染色プロファイル(ここで、100%の細胞がそれらの細胞表面におけるマーカーとしてCD4のみを保持していた(CD4のみが陽性の細胞))。図示していないが、HTS−KMW.1培養物において、単独のCD4+細胞は三重陽性のCD15+CD19+CD4+の細胞の100%のからなる開始集団のうち49%を示し、HTS−KBTにおいて、二重陽性のCD19+CD4+の集団の最初の100%のうち50%に達し、HTS−KBTAE.1において、三重陽性のCD3+CD19+CD5+の集団のうち100%のうち61%に達し、HTS−KBTAE.4において、CD3+細胞の100%のうち74%に達し、HTS−WTM.1において、三重陽性のCD15+CD19+CD4+の集団のうち82%に達し、HTS−WTM.7において、CD15+CD34+CD4+の表現型の三重陽性の集団の100%のうち71%に達した。
【0150】
図15.HTS−KBTDP.12培養物におけるCD8、CD19およびCD15についての代表的な染色プロファイル(ここで、CD8+を促進する環境へのばくろの14日後に100%の細胞がCD8について陽性に染色された)。図示していないが、KBTAE.1において、CD8のみが陽性の細胞の数は三重陽性のCD3+CD19+CD5+の集団の100%のうち53%に達し、KBTAE.4において、単独のCD3+の手段の100%のうち61%に達し、HTS KBTDP.1およびHTS KBTDP.4において、これらの数はCD4+CD8+CD20+CD72+およびCD4+CD8+CD20−CD72−の集団の100%のうち、それぞれ72%および86%であった。
【0151】
図16.HTS−KBTAE.4培養物(A)およびHTS−KBTDP.12培養物(B)のうちCD8のみが陽性の細胞における、ヒトIL−2およびヒトIFN−γの細胞内産生。両方の培養物は、IL−2、IFN−γまたは両方を産生する細胞を含んでおり、HTS−KBTDP.12培養物は広範囲のIL−2の産生レベルを有しており、一方でHTS−KBTAE.4培養物は広範囲のIFN−γ濃度を示した。
【0152】
図17.HTS−KBTAE.4培養物(A)およびHTS−KBTDP.12培養物(B)のうちCD8のみが陽性の細胞における、細胞内のパーフォリンおよびグランザイムAの典型的なプロファイル。
【0153】
図18.Bリンパ球を促進する環境における7日後の、抗CD19抗体、抗CD4抗体および抗CD15抗体を用いたHTS−KBTAE.6培養物の典型的な染色。
【0154】
図19.マクロファージを許容する成長培地における8日後のHTS培養物から生成された細胞の付着性の形態。
【0155】
図20.細胞の少ない割合がいまだにCD4について陽性であり、7%の細胞が骨髄性単球のCD15を保持しており、CD19の発現が完全に消失していることを示している、マクロファージを許容する成長培地における8日後のHTS−WTM.4細胞上におけるCD19、CD15およびCD4発現のプロファイル。
【0156】
図21.マクロファージを許容する成長培地における8時間後のHTS−WTM.4細胞の表面におけるマクロファージ様マーカーの発現。
【0157】
図22.マクロファージを許容する成長培地における8時間後のHTS−WTM.4培養物に由来するCD64陽性のマクロファージによる1000nmの微粒子の食作用。
【0158】
図23.マクロファージを許容する成長培地における8時間後のLPS刺激したHTS−WTM.4細胞による一酸化窒素の生成。
【0159】
図24.初代培養されたCD54+のヒトT細胞を用いた体細胞ハイブリダイゼーションによってT細胞に分化転換されたHTS−KBTAE.6に由来するCD19+Bリンパ球によるCD3およびCD54発現の典型的なプロファイル。
【0160】
図25.CD3発現の消失および表面IgGの獲得を示している、CD40活性化のIgM陽性のB細胞を用いた体細胞ハイブリダイゼーション後のCD3+HTS−KBTAE.4細胞の分化転換の代表的なプロファイル。
【0161】
図26.CD19+細胞の100%の同質な培養物から開始され、HTS−KMW.1と比べて脱分化の徴候を示しているHTS−WTM培養物1および7における初期B細胞の発生マーカーについてのRT−PCR転写物。両方のHTS−WTMにおけるCD10の上方制御およびるHTS−WTM.7におけるCD34の出現をともなう、Pax−5およびλ様転写物の存在は、環境条件の変化に応じた初期段階のB細胞への、成熟なB細胞の分化転換を示している。
【0162】
図27.単一細胞の操作/供給系。
【0163】
図28.ガラスのマイクロピペット。
【0164】
図29.微小電極。
【0165】
図30.平行な2つの微小電極。
【0166】
図31.組織培養プレートのウェルにおける2つの微小電極。
【0167】
図32.2つの微小電極の中間にある3つの細胞の上面図。
【0168】
図33.図32の側面図。
【0169】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照した以下の非限定的な例によってさらに説明される。
【0170】
<実施例1>
1.細胞の選択、細胞の操作、および単一細胞のクローニング
以下の実施例は、HTSの生成および所望のタンパク質の発現に用いる哺乳類細胞株および初代培養された細胞の、選択および単離(または分取)を包含している細胞の調製について記載している。特定の特性を有している細胞の単一集団を得るための特定の選択法の選択、または特定の表現型の細胞を単離するための特定の(複数の)マーカーの使用は、まったく限定的ではなく、むしろ暗示的である。他の細胞マーカーまたは分取の手順は、同様の結果を出すために用いられ得る。
【0171】
1.1.不死化したヒト細胞株からの細胞の選択
NaHCO3(JRH Biosciences)、20mMのHepes(Sigma)、4mMのL−グルタミン(Sigma)によって改変し、10%のウシ胎児血清FCS(JRH Biosciences)を補ったRPMI1640(Roswell Park Memorial Institute培地)を用いて、加湿した5%のCO2雰囲気の37℃のCO2インキュベーターにおいて、標準的な(通常の)条件下において、すべての不死の細胞株(下記を参照)を懸濁培養において成長させた。特に記載がない限り、本明細書に記載の組織培養培地(TC培地)は、本発明に関するすべての不死の細胞株、初代培養された癌細胞、初代培養された細胞培養および樹立したトリハイブリッド細胞株を培養するための標準培地である。一般的に、用いたすべての不死の細胞株、初代培養された癌細胞および初代培養された細胞を抗生物質のない環境において培養した。しかし、危険性の高いバクテリアおよび/または真菌による汚染の疑いがある場合、2%のアンピシリン(5000ユニット)/ストレプトマイシン(5mg)溶液(Sigma)を標準培地に加えた。
【0172】
本発明に使用されたヒトの細胞株は以下の通りである:
骨髄性の共通前駆体系統、K562(ヒトの慢性骨髄性白血病に由来する細胞株)、
Tリンパ球系統、MOLT4(ヒトのTリンパ芽球)および
Bリンパ球系統、WIL2NS(ヒトBTリンパ芽球)。
【0173】
1.1.1.単一細胞の供給系(single-cell delivering system)
細胞の単離または分取、細胞の操作および単一細胞のクローニングは、本発明を通して重要な工程である。ここには、我々は目的の単一細胞の操作および/またはクローニングのために確立した単一細胞の供給系について説明する。単一細胞の供給系(図27)は、ガラスのマイクロピペット、1mlのシリンジおよび1次元簡易操作装置(one-dimensional coarse manipulator)から主に構成される。図28は、目的の単一細胞を拾い上げるために用いられるガラスのL字型マイクロピペットを示す。このピペットを、ヘマトクリットキャピラリーチューブ(75ミリメートル(mm)の長さ、それぞれ1.5mmおよび1.10mmの外径および内径)から作製した。熱を用いることによって、チューブの一端を、約250〜300マイクロメートル(μm)の内径および約30μmの先端の壁厚を有している先端(1)が得られるように引っ張った。マイクロピペットの他端には手を加えなかった(2)。細胞供給系(図27)において、シリンジ(4)を簡易操作装置上に載せ、同様に簡易操作装置を磁気スタンド(16)に載せている。この系は、シリンジのピストン(6)がシリンジに対して前方または後方に非常にゆっくりと動かされ得るように機能する。目的の単一細胞を操作するために、柔軟性のある医療用品質のチューブ(3)を用いて、図に示されるようにシリンジをマイクロピペット(2)の手を加えていない端に接続しなければならない。この単一細胞の供給系は、任意の細胞操作の前に、70%のアルコールを用いて数回にわたって洗浄することによって殺菌し、最終的に、必要なあらゆる適切な組織培養培地または溶液によって気泡を含ずに満たされる必要がある。
【0174】
1.1.2.単一細胞のクローニング
各細胞株由来の細胞のクローンを単一細胞のクローニングによって樹立した。本発明において用いられる任意の生物学的な細胞(例えば、K562細胞株の細胞)の単一細胞のクローニングまたは操作の方法を以下に記載する。
【0175】
5μlのK562細胞の細胞懸濁液を、対数期においてその培養物から採取し、150μlのTC培地が入っている組織培養96ウェルプレート(TCプレート, Becton and DickinsonまたはBD)のウェルの中に入れた。このウェルを「細胞保存ウェル」と称した。このプレートを倒立顕微鏡(Axiovert 40C, Carl Zeiss)のXY顕微鏡ステージの上に置いた。単一細胞の操作/クローニング工程の前に、気泡を含んでいないTC培地によってマイクロピペット(図28)を完全に満たした。単一細胞の供給系(図27)のマイクロピペット、チューブおよびシリンジを、1次元簡易操作装置(5)(Narishege)の上に載せた。マイクロピペットの先端(1)を、顕微鏡の視野の中心に位置するように配置した。K562の単一細胞の操作およびクローニングのために、マイクロピペットを細胞保存ウェルの中へ挿入した。シリンジのピストンを吸い込む方向へ非常にゆっくりと動かすことによって、K562の単一細胞をマイクロピペットの中に入れた。マイクロピペットを細胞保存ウェルから引き出した。顕微鏡のステージを細胞保存ウェルから隣接したウェル(「クローニングウェル」と称する)へ横方向に動かし、その後マイクロピペットをこのクローニングウェルに挿入することによって、マイクロピペット中の単一細胞をマイクロピペットから静かに放出した。シリンジのピストンを放出する方向へ非常にゆっくりと動かすことによって、これを行った。細胞保存ウェルから単一細胞を採取し、この単一細胞をクローニングウェルに入れる工程を、TCプレートあたり60個の単一細胞クローンを得るまで複数回にわたって繰り返した。37℃、5%CO2において管理した加湿したインキュベーター(Thermoline Scientific)において、このクローニングプレートを10日間にわたってインキュベートした。インキュベーションの期間中、定期的に各クローニングウェル中の培地を新鮮なTC培地と交換した。各クローニングウェルからの各クローンの細胞増殖を24時間毎に記録した。インキュベーションの期間の終了時において、K562細胞のクローン数を決めた。増殖速度が最大であるクローンまたは細胞表面上に発現している目的のマーカー(例えば、K562細胞上におけるCD71トランスフェリン受容体)のレベルが最大であるクローンを、トリハイブリッドの生成またはさらなる実験のために選択した。
【0176】
1.1.3 CD71+細胞の分取
一例として、以下の方法は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いた、K562細胞株からの、骨髄単球性の系統のCD71陽性細胞の細胞選択および分取について説明する。
【0177】
この目的のために、2%のウシ血清アルブミンBSA(Sigma)を含んでいる100μlのリン酸緩衝溶液(Dulbeco PBS)に懸濁させた1×105個のK562細胞を、20μlの抗CD71(BD Pharmingen)に結合させたフィコエリスリン(PE)またはPEを結合させた同位体対照抗体IgG2a,κ(BD Pharmingen)のいずれかとともに、30分間にわたって、室温の暗所においてインキュベートした。インキュベーション混合物を1mlのPBSを用いて希釈し、染色した細胞を300gにおいて10分間にわたって遠心することによって回収した。1mlのPBSを用いてさらに洗浄した後、染色した細胞を1mlのPBSに懸濁して、直ちにFACS(BD FACSCalibur)を用いて分析した。図1はK562細胞株のCD71+細胞のプロファイルを示す。CD71+陽性細胞を絞り込み(gate)、分取した(図1a)。元のK562集団の約65%がCD71について陽性であった。さらなる実験のために、分取した細胞を300gにおいて10分間にわたって遠心分離し、1mlのPBSに懸濁させた。図1bにおいて示されるような純度分析のために、100mlの懸濁したCD71+の分取した細胞を回収した。99%の純度のCD71+の分取した細胞を得た。細胞分取の後、このK562細胞株のCD71+細胞をさらなる実験に用いたか、または標準的な培養条件下の培養に置き、CD71に関して濃縮されているK562細胞として特徴付けた。CD71に関して濃縮されているWIL2NSおよびCD71に関して濃縮されているMOLT4の培養を確立するために、同様の方法論を用いた。
【0178】
1.2 骨髄単球性の細胞の単離
骨髄単球性の前駆細胞は、不死化した骨髄単球性の任意の細胞株または初代培養された造血組織(例えば骨髄)に由来し得る。以下は、ヒトの骨髄細胞株K562および骨髄サンプルからの骨髄単球性の前駆細胞を単離する例である。
【0179】
1.2.1 CD71+K562培養物からの骨髄性単球細胞の選択
細胞のハイブリダイゼーション実験にとっての細胞の骨髄単球性の表現型を確認するために、CD71+K562細胞はFACS分析および続く分取を用いてCD15+細胞に関してさらに濃縮された。
【0180】
項目1.1.3に記載のCD71に関して濃縮された細胞を、PE抗ヒトCD71およびFITC抗ヒトCD15(BD Pharmingen)を用いて標識した。洗浄したCD71に関して濃縮された1×105のK562細胞を2%のBSAを含有している100μlのPBSに懸濁させ、抗ヒトCD71−PE抗体および抗ヒトCD15−FITC抗体、または陰性の同位体対照の抗体、またはFITCおよびPE標識した陰性の同位体対照の抗体のいずれかとともに、室温の暗所において30分間にわたってインキュベートした。1mlのPBSを用いてインキュベーション混合物を希釈し、染色した細胞を10分間にわたる300gにおける遠心分離によって回収した。1mlのPBSを用いた付加的な洗浄の後に、染色した細胞を1mlのPBSに懸濁させ、FACS Calibur(BD)を用いて直ちに分析した。
【0181】
典型的なFACSプロファイルを図2aに示す。培養物における5ヶ月の後に、CD−に関して濃縮されたK562細胞の99%はCD71について陽性を保持しており、約18%が表面にCD15を発現していた。CD71およびCD15の両方について陽性の細胞が絞り込まれ(図2a)、分取された。分取された細胞は10分間にわたる300gにおける遠心分離によって回収され、さらなる実験のために1mlのPBSに懸濁された。2ヶ月間の培養に続いて、分取された細胞はCD71およびCD15の共発現についてふたたび分析された(図2b)。その結果は、精製された細胞の約98%がCD71およびCD15の両方を保持していたことを示している。その表面にCD71およびCD15の両方をより初期に発現していた細胞のいくつかはそれらのCD15の発現を消失することが見出され(図2b)、K562細胞における骨髄単球性の系統に対する拘束が安定ではなく可逆的であることを示唆している。
【0182】
1.2.2 初代細胞からの未拘束の骨髄単球性の前駆細胞の選択
一例として、以下の方法は、急性骨髄性白血病(AML)の患者から得られた骨髄サンプルに由来する未拘束の細胞または骨髄性の細胞の選択について説明する。
【0183】
AMLの患者からの骨髄吸引物は説明および同意の後に得られた。実験の実施前にAMLであると明らかに診断されている患者からサンプルを取り出した。項目1.3.1に記載のように同じ密度勾配遠心分離手法を用いてAMLの単核細胞を単離し、FACSを用いてサンプルからCD34+細胞を分取するか、または単離した。
【0184】
上記において得られた単核細胞を染色するか、または標識するために、マウス抗ヒトCD34−PE抗原(BD Pharmingen)またはPE同位体対照抗体(BD Pharmingen)の10μlを、染色培地(PBS+5%のBSA)における1×106の単核細胞の所定の分取物の100μlに加えた。所定の分取物について、染色混合物を30分間にわたって氷上においてインキュベートした。10mlの氷冷した染色培地を細胞のペレットに加え、350gおよび4℃において7分間にわたって遠心分離した。上清を吸出し、それから同じ体積の氷冷した染色培地を加えたチューブを軽く叩くことによって細胞のペレットを再懸濁させた。染色した細胞を遠心分離し、もう一度、氷冷した染色培地において洗浄した。標識した細胞を染色培地に懸濁させ、FACSにかけた。CD34+細胞の集団について適切に分取するゲートを設定した後に、細胞の画分を回収した。CD34+細胞を、直ちに使用したか、または骨髄単球性の細胞に関する濃縮のために培養物として置かれた。
【0185】
集積培養のために、40×103の濃縮されたCD34+細胞を、合成細胞外マトリクスを用いてあらかじめ被覆された12ウェルのプレートに播いた。57mMのβ−メルカプトエタノール(Sigma)、1mMのヒドロコルチゾン、20ng/mlのヒトのインターロイキン−3(IL−3)および20ng/mlのヒトの顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を補った完全TC培地において細胞を広げた。培養の48時間後に、細胞をFACSを用いてCD15発現についてさらに選択した。
【0186】
細胞の蛍光染色のために、マウス抗ヒトCD15−FITC(BD Pharmingen)およびマウス抗ヒトCD34−PE(BD Pharmingen)を使用し、また、この項目の前半に記載した類似の細胞染色方法を採用した。FACSを用いて染色したサンプルを分析した。CD34およびCD15陽性の細胞集団(CD34+CD15+)およびCD34陽性およびCD15陰性の細胞集団(CD34+CD15−)について適切に分取するゲートを設定した後に、画分を回収した。
【0187】
培養の48時間後における、CD34+細胞およびCD34+AML細胞上のCD15発現についての典型的な発現プロファイルおよび分取するゲートを図3に示す。試験したAML単核細胞の約54%はCD15について陽性であり、CD34発現を維持しており、残りの細胞集団は骨髄単球系統に拘束されることなくCD34発現を維持していた。CD34+CD15+細胞を分化転換系を構築する実験に使用し、未拘束のCD34+細胞を脱分化実験に使用した。
【0188】
1.3 リンパ球の単離
分化転換系の確立のために、リンパ球を不死化した特定の細胞の任意の種類、または初代培養されたリンパ球のいずれかから誘導し得る。不死化されたWIL2NS細胞株およびMOLT4細胞株にそれぞれ由来するBリンパ球およびTリンパ球の調製は、項目1.1.3に記載されている。初代培養されたリンパ球は任意のリンパ組織(例えば、末梢血、臍帯血、脾臓、骨髄、胸腺、扁桃腺、咽頭扁桃腺および領域リンパ節)から単離され得る。第1の段階において、単核細胞を分離するためにすべてのリンパ組織を処理した。
【0189】
1.3.1.骨髄、末梢血または臍帯血からのヒトの単核細胞の単離
説明および同意の後に、末梢血のサンプルを健康な個人から収集した。各血液サンプルはヘパリン処理されたチューブ(Vacutainer, BD)に回収し、プールし、RPMI1640を用いて希釈した。
【0190】
骨髄生検を受け、血液異常のない正常な骨髄を有している患者から、ヒト骨髄の吸引物を得た。このサンプルをRPMI1640を用いて1:3の割合に希釈した。
【0191】
ヒト臍帯血のサンプルを、説明および同意の後、正常な満期経膣出産児から得た。乳児の出産および臍帯の結さつの後、胎盤の娩出の前に、各臍帯血をヘパリン処理した60mlのシリンジを用いて収集した。各サンプルをRPMI1640を用いて希釈した。
【0192】
末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄単核細胞(BMMC)および臍帯血単核細胞(UCBMC)をFicoll-Paque(Amersham Pharmacia)による密度遠心分離によって調製した。要約すると、20mlのシリンジに取り付けたカニューレチューブを用いて、10mlのFicoll-Paqueを20mlの細胞懸濁液の下に層化した。サンプルの細胞を4℃、1700rpm(700g)において、40分間にわたって遠心分離した。境界面にある細胞を回収し、50mlのRPMI1640、2000rpm(1000g)における10分間にわたる遠心によって洗浄した。上清を捨て、ペレット化した細胞を40mlのRPMI1640に再懸濁させ、1300rpm(400g)において10分間にわたって遠心分離した。赤血球および血小板を、それぞれ0.83%(wt/vol)のNH4Clを用いた溶解およびPBSを用いて1:2の割合に希釈したFicoll-Paqueによる2回目の遠心によって除去した。
【0193】
単離した単核細胞を、培養、またはFACSを介した細胞の特異的な画分への分析および分取に用いた。
【0194】
1.3.2.固形のリンパ組織からのヒト単核細胞の単離
以下の方法は、脾臓から単核細胞を単離するために本発明において使用された手法を説明する。同じ方法は、胸腺、扁桃腺または領域リンパ節から単核細胞を単離するために使用され得る。また、細胞の染色方法および分取方法が示されている。
【0195】
脾臓のサンプルを、国際的な倫理指針にしたがって、臓器移植ドナーから得た。脾臓細胞を単離するまでの間、約2×2×3cmの脾臓のブロックのそれぞれを、4℃のRPMI1640に保存した。シリンジのピストンを用いて無菌のふるいのメッシュに各ブロックを通して、小さい断片に切断した。それから、20U/mlのタイプVIIコラーゲナーゼ(Sigma)および20U/mlのDNase(Sigma)を用いて、室温の完全培地において30分間にわたって消化することによって、細胞を酵素的に分離した。10mMになるようEDTAを加えて、室温において5分間にわたって攪拌することによって、この細胞集団をさらに分離した。それから、酵素消化を停止させるために完全培地を用いて脾臓細胞を2回にわたって洗浄し、RPMI1640に再懸濁させた。これらの条件は非酵素的な分離工程と比べて表面分子の発現に影響を与えなかった(McIlroy et al 1995)。赤血球の除去を除いて、項目1.3.1に記載のように、密度勾配遠心分離によってこれらの脾臓細胞の懸濁液から脾臓の単核細胞を単離した。この脾臓の単核細胞をRPMI1640に再懸濁させ、細胞濃度を1mlあたり1×106に調節した。細胞の生存率は、トリパンブルー排除によって決定したところ、98%を超えていた。
【0196】
1.3.3.ヒトの脾臓および末梢血からの成熟B細胞およびヘルパーT細胞の単離
組織サンプルをまず、項目1.3.1および項目1.3.2に記載のように単核細胞集団を抽出するために処理した。次いで、蛍光細胞染色、続いて細胞分取を、単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。この細胞を、染色するまで標準的な培養条件(項目1.1参照)下に完全培地に懸濁させた。
【0197】
以下は、初代培養された細胞からのB細胞およびT細胞の染色および分取の例である。通常、B細胞およびヘルパーT細胞の選択はそれぞれCD19およびCD4の表面発現に基づいていた。
【0198】
要約すると、それぞれ10μlのマウス抗ヒトCD19−FITC結合抗体(BD Pharmingen)およびマウス抗ヒトCD4−PE結合抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照を、染色用培地(PBS+5%BSA)における単核細胞の100μlの分取物(1×105の細胞を含んでいる)に加えた。分取物の単核細胞集団のために、染色混合物を氷上で30分間にわたってインキュベートした。10mlの氷冷した染色用培地を染色混合物に加え、350g、4℃において7分間にわたって遠心分離した。上清を吸引し、次いで同じ容積の氷冷した染色用培地を加えたチューブを軽くたたくことによって細胞ペレットを再懸濁させ。染色した細胞を遠心分離し、氷冷した染色用培地において再び洗浄した。この工程を他の分取物に対して繰り返した。FACSを用いて染色した細胞を分析した。少なくとも20000の絞り込んだ結果を各サンプルに関して分析した。CD19陽性B細胞集団(CD19+CD4−)またはCD4陽性T細胞集団(CD4+CD19−)にとって適切な分取ゲートを設定し、画分を回収した。各画分のうち1mlを純度分析のために回収し、各画分の残りをさらなる実験のために完全培地に懸濁させた。
【0199】
適切なアダプターを備えているマイクロ遠心チューブに少数の細胞(≦5×105個)を直接分取した。分取の前に、補完したRPMI1640の少量(0.1から0.2ml)を回復チューブに加えて、分取したサンプルと混合させ、分取した細胞の生存性を向上させた。許容される回復した細胞の数が供給された分取の後、20μlの分取した細胞の各サンプルをその純度の変化を再分析するために染色用培地を用いて1:10に希釈した。許容可能な純度は≧95%であった。分取したサンプルの1mlにつき、20から40μlのFCSをさらに加え、続いて350g、4℃において7分間にわたって遠心分離した。次いで、細胞を標準的な組織培養培地に再懸濁させた。十分な細胞が利用可能であれば、収量を決定するためにその数を数えた。
【0200】
抗ヒトCD19−FITCおよび抗ヒトCD4−PEによって標識した脾臓のサンプルのFACSプロファイルを図01aに示し、分取したCD19+B細胞およびCD4+T細胞の純度分析のプロファイルを図10bおよび図10cに示す。画分における細胞の純度は、CD19+細胞については98%を超え、CD4+細胞については96%を超えた。
【0201】
末梢血由来のCD19+およびCD4+細胞についての分取および純度のプロファイルは基本的に脾臓のサンプル由来のものと同様であるが、わずかな数の各細胞集団を得たのみであった。
【0202】
1.3.4.ヒトの臍帯血からのCD5陽性の(抗原を経験した)B細胞およびCD5陰性の(ナイーブ)B細胞の単離
項目1.3.1に記載のように、単核細胞を臍帯血のサンプルから調製した。蛍光細胞染色、続く細胞分取を単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。この特定の例において、上述の方法(項目1.3.3)にしたがって、ヒトの臍帯血からのCD5陰性(ナイーブ)B細胞およびCD5陽性(抗原を経験した)B細胞の分取を、マウス抗ヒトCD5−FITC抗体(BD Pharmingen)、マウス抗ヒトCD19−PE抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照を用いて行った。
【0203】
FACSを用いて染色した細胞を分析した。少なくとも20000のゲートした結果を各サンプルについて分析した。CD5陰性B細胞集団(CD19+CD5−)またはCD5陽性B細胞集団(CD19+CD5+)にとって適切な分取ゲートを設定し、多数の画分を回収した。図4はマウス抗ヒトCD19およびマウス抗ヒトCD5を用いて染色したサンプルの典型的なプロファイルを示す。
【0204】
サンプル中のB細胞の割合は4から19.2%に及び、CD5+B細胞は移動した全リンパ球の0.8から7.2%に及んだ。
【0205】
1.3.5.ヒトの臍帯血からのCD5陽性の(抗原を経験した)T細胞およびCD5陰性の(ナイーブ)T細胞の単離
項目1.3.1の記載と同様の方法を用いて、単核細胞を臍帯血のサンプルから調製した。蛍光細胞染色、続いて細胞分取を単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。この特定の実施例において、上述した細胞の方法(項目1.3.3)にしたがって、ヒトの臍帯血からのCD5陽性(抗原を経験した)T細胞およびCD5陰性(ナイーブ)T細胞の分取を、マウス抗ヒトCD5−FITC抗体(BD Pharmingen)、マウス抗ヒトCD3−PE抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照を用いて行った。FACSを用いて染色した細胞を分析した。少なくとも20000の絞り込んだ結果を分析した。CD5陰性T細胞(CD3+CD5−)またはCD5陽性T細胞(CD3+CD5+)のいずれか一方を含んでいる画分を回収するために、分取ゲートを設定した。図5はマウス抗ヒトCD3抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色したサンプルの典型的なプロファイルを示す。
【0206】
分取した集団を回復および分析するために用いた実質的に同様の方法については、項目1.3.3に記載している。
【0207】
サンプルにおけるT細胞の割合は1.7から13.5%に及び、CD5+T細胞は移動した全リンパ球の0.4から1.3%に及んだ。
【0208】
1.3.6.骨髄性のヒト単核細胞の集団からの、初期B細胞、CD20およびCD72に基づいて活性化されて生じたB細胞の単離
上述の方法(項目1.3.1)を用いて、単核細胞を骨髄から抽出した。蛍光細胞染色に続く細胞分取を単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。活性化B細胞の染色および分取は、上記の項目1.3.3に記載されている。すなわち、10μlのマウス抗ヒトCD72−FITC抗体(BD Pharmingen)および20μlのマウス抗ヒトCD20−PE抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照(PEマウスIgG2b,κ抗体)を用いた。FACSを用いて染色した細胞を分析した。プレB細胞、休止B細胞、活性化B細胞、濾胞樹状細胞からなるCD20陽性集団(CD20+CD72−)、または初期B細胞(CD20−CD72+)もしくは活性化B細胞(CD20+CD72+)からなるCD72陽性細胞のいずれか一方を含んでいる画分を回収するために、分取ゲートを設定した。図6はマウス抗ヒトCD20およびマウス抗ヒトCD72抗体を用いて染色したサンプルの典型的なプロファイルを示す。
【0209】
項目1.3.3の記載と実質的に同様の方法を、分取した細胞を回復および分析するために用いた。
【0210】
代表的に、骨髄単核細胞集団の約10〜15%がCD20およびCD72の両方について陽性であり;細胞の9〜12%がCD20について陽性であるが、CD72について陰性であり;約8%がCD72のみについて陽性であった。
【0211】
1.3.7.磁気ビーズ分取による胸腺細胞の亜集団の単離
MACS CD4 Multisortキット(Miltenyi Biotec GmbH)を用いて、CD4−CD8−二重陰性の胸腺細胞、CD4+CD8+二重陽性の胸腺細胞、ならびにCD4+およびCD8+単独陽性の胸腺細胞の集団を、製造者の手順にしたがって分取した。要約すると、項目1.3.2の記載と同様の方法を用いて回収した胸腺細胞をCD4 Multisort CD4マイクロビーズと共に30分間にわたってインキュベートした。5mMのEDTAおよび0.5%のBSAを含んでいるPBSを用いて洗浄した後、標識した細胞を磁気カラムによって分離した。陽性として選択された胸腺細胞(磁気カラム上に保持された)はCD4+単独陽性およびCD4+CD8+二重陽性の細胞集団を含んでいた。一方、CD4が減少した細胞集団(カラムから逃れた)はCD8+単独陽性およびCD4−CD8−二重陰性の細胞を含んでいた。CD4陽性として選択された細胞集団からマイクロビーズを除去するために、MACS Multisort分離試薬と共に細胞をインキュベートした。20分後に消化を止め、細胞をCD8マイクロビーズによって30分間にわたって標識した。CD4+CD8+二重陽性の胸腺細胞を正の選択によって得た。一方、CD4+単独陽性細胞は細胞集団が枯渇したことがわかった。CD4の枯渇した細胞集団をCD8マイクロビーズと共に30分間にわたってインキュベートした。標識した細胞を磁気カラムにかけた後、CD8+単独陽性の細胞を、CD4−CD8−二重陰性の胸腺細胞から分離できた。4つの異なる胸腺細胞亜集団の純度をフローサイトメトリー解析によって評価した。許容される純度は95%より高いものである。
【0212】
1.3.8 ヒトの扁桃腺からのCD54+T細胞の単離
項目1.3.2に記載の方法を用いて、単核細胞をヒト扁桃腺から抽出した。蛍光細胞染色に続く細胞分取を単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。CD54+T細胞(細胞間接着分子−1またはICAM−1)を単核扁桃細胞集団から抽出し、マウス抗ヒトCD3−PE抗体(BD Pharmingen)およびマウス抗ヒトCD54−FITC抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照の使用は項目1.3.5に記載のような細胞染色/分取方法を用いて選択した。FACSを用いて染色した細胞を分析した。CD3+T細胞(すなわちCD3+CD54−細胞)または活性化CD54+T細胞(すなわちCD3+CD54+細胞)のいずれか一方を含んでいる画分を回収するために、分取ゲートを設定した。図7はマウス抗ヒトCD3案乳亜およびマウス抗ヒトCD54抗体を用いて染色したサンプルのFACSプロファイルを示す。CD3+細胞をHTSの生成のために用い、一方でCD54+活性化T細胞を発現実験のために用いた。
【0213】
その結果は、T細胞が扁桃腺から単離した単核細胞の大部分(82%)を構成しているが、9%のみがCD54+T細胞であることを示した。
【0214】
1.4.IgMおよびIgGを分泌しているヒトのリンパ球の生成および選択
マウス抗ヒトCD154抗体(BD Pharmingen)によって被覆した丸底96ウェルプレート(Corning)のウェルに、精製したB細胞(項目1.3.3参照)を3.75×105/mlにおいて播いた。10%の熱不活性化尿素−低IgG 胎児ウシ血清、FBS(Gibco/BRL)ならびに100U/mlのヒトインターロイキン4(IL−4)(R&D systems)および50ng/mlのヒトインターロイキン10(IL10)を補った(培養3日目の後に加えた)完全RPMI2640培地において、この細胞を培養した。培養物を2から3日毎に培養培地の半分を交換することによって新しく補給した。細胞生存率および細胞数を、血球計算板を用いて、トリパンブルー排除によって3回にわたって評価した。5日目および10日目において、培養したリンパ球を、回収し、PBSにおいて2回にわたって洗浄して、マウス抗ヒトCD19−PE抗体、マウス抗ヒトIgM−FITC抗体またはマウス抗ヒトIgG−FITC抗体(全てBD Pharmingen製)を用いたFACSによって分析した。すべての染色を、1×106の細胞あたり1μgの各抗体を用いて4℃において行った。すべての分析において、95%を超える細胞が同位体適合の陰性対照の染色にしたがったマーカーの組について二重陰性であった。死細胞および残骸を含んでいる領域を分析から排除した。すべての分析を5000から10000の生細胞を絞り込むことによって行った。
【0215】
培養したリンパ球におけるIgMおよびIgG陽性細胞の典型的なプロファイルを図8に示す。5日間の培養の後、CD19+細胞の18%がIgM陽性であり、わずか1%が表面上に検出可能なIgGを有していた。一方、10日後には、IgG陽性細胞の割合は15%まで増加したが、IgM陽性単球の割合はわずか2%まで減少した。適切なゲートを設定した後、IgM陽性およびIgG陽性な画分を分取した。
【0216】
培養物におけるIgMおよびIgGの濃度を96ウェルのELISAプレートおよびプラスチックに吸着させたヒトμ鎖およびγ鎖に対するヤギの親和性精製した抗体を用いた標準的なELISAによって決定した。結合した抗体をHRPを結合させたヒツジ抗ヒトIg抗体によって明確にした。すべての抗体はSigma製であった。ABTSを基質として用い、405nmにおける吸光度を測定した。表1は、5日後および10日後にBリンパ球の培養物において検出されたIgMおよびIgGのレベルを要約したものである。
【0217】
【表1】
IgMの生産は5日間の培養の後に低下した一方で、IgGの生産は増加した。
【0218】
<実施例2>
2.体細胞ハイブリダイゼーション
体細胞ハイブリダイゼーションの種々の方法が当該技術において周知である。これらとしては、例えば、センダイウイルスのような融合性(fusagenic)ウイルスを用いる生物学的方法(Kohler and Milstein, 1975)、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる化学的方法(Wojciezsyn, et al, 1983)、および電界を用いる電気的方法(Neil, and Zimmermann, 1993)が挙げられるが、これらに限られない。各方法は目的の細胞の原形質膜が可逆的に透過可能となり、ハイブリダイズすることを誘導し得るか、または引き起こし得る。
【0219】
上述した細胞ハイブリダイゼーション法とは関係なく、細胞ハイブリダイゼーションを達成するために、2つの不可欠な段階が原則として必要とされる。第一に、ハイブリダイズさせたい細胞の原形質膜を、良好に細胞膜と接触させる必要がある。第二に、接触点における原形質膜の可逆的な破壊が同時に誘導される必要がある。
【0220】
電気的な細胞ハイブリダイゼーション法に関して、目的の細胞を、適切なフィールド周波数を有している交流電界(AC電界)を用いて良好に細胞膜と接触させ、次いでAC電界と同時に短い電気パルスにさらしたときにハイブリダイズを誘導し得る。
【0221】
さらに詳しく述べると、電気的な細胞ハイブリダイゼーションは次の物理現象;誘電泳動(DEP)および原形質細胞膜の電気的な破壊を伴う。
【0222】
誘電泳動(Pohl,1978)は、生物学な細胞のような誘電体粒子が適切な溶液に懸濁され、適切な周波数の不均一なAC電界にさらされる場合に、その誘電体粒子の運動を説明する現象である。細胞の運動は、(i)例えば100mMのソルビトールに懸濁されているSp2細胞に対する0.5〜2.0メガヘルツ(MHz)のフィールド周波数における、誘電体粒子の転移または移動(Mahaworasilpa, 1992)、および(ii)例えば100mMのソルビトールに懸濁されているSp2細胞に対する2〜10キロヘルツ(kHz)のフィールド周波数における、誘電体粒子の回転(Mahaworasilpa, 1992)として説明され得ることがよく報告される。不均一電界は1対の電極(例えば、多数の配置において設計され得る電気的な円筒形の金属線)を横切る電界を印加することによって発生させ得る。最も広く用いられている配置は平行な電極配置(図30)である。不均一電界の存在において、DEPは誘電体粒子(すなわち生物細胞)を互いに引きつけさせ、同時に最も強い電界の領域に向かって移動させ得る。その結果、一続きの細胞(a chain or string of cells)を形成し、次は良好な細胞膜の接触を誘引する。細胞が適度に低い電気伝導度の溶液に懸濁されている場合に、細胞の引き合いは強く促進される。
【0223】
適切なハイブリダイゼーション溶液に懸濁されている細胞が適切なパルス振幅およびパルス幅を伴っている電気パルスにさらされる場合に、細胞膜の電気的な破壊が誘導され得る(Zimmermann, 1982)。様々なパルス幅、例えば1から200マイクロ秒(μ秒)の方形波パルスが、ハイブリダイズされる細胞のタイプに依存して広く用いられる。
【0224】
2.1.電気的な細胞ハイブリダイゼーション系
本発明のいくつかの実施形態において、電気的な細胞技術をトリハイブリッドのようなハイブリダイズされた細胞の生成に用い得る。
【0225】
2.1.1.細胞操作系
細胞ハイブリダイゼーションの前に目的の個々の細胞を増殖させるため、上述した単一細胞の増殖/供給系(項目1.1.1)を本発明を通じて用いた。
【0226】
2.1.2.微小電極
本発明において、2つのL字型の微小電極を用いた。図29は被覆されていない直径128μmのニッケル合金から作製した微小電極(7)を示す。微小電極の柄を、外径1.5mmのヘマトクリットキャピラリーチューブ(8)によって覆った。微小電極のL字型部(9および10)を、電極の水平な部分および垂直な部分の両方の表面の一致する領域が、培地または適切な溶液にさらされるように配置した(Mahaworasilpa, 1992)。細胞ハイブリダイゼーションの工程の前に、2つの微小電極を2つの微細マイクロマニピュレーター(fine micromanipulators)(各微小電極について1つずつ)の上に載せた。これらの微小電極を各電極の平行な電極配置が得られるような方法において設計した(図30)。各微細マイクロマニピュレーターを水圧によって駆動させし、0.5μmの精度の動きがX、YまたはZ方向において行えるようにした。
【0227】
2.1.3.細胞チャンバおよび構成
図31は標準的な96ウェル平底TCプレートのウェルにおける2つの平行な電極を示す。このウェルは本発明のいくつかの実施形態において、細胞ハイブリダイゼーションのチャンバーの役割を果たす。細胞ハイブリダイゼーションを行うため、微小電極を標準的な96ウェル組織培養プレートのウェル(12)に入っている適切な培地(11)に沈めた。図32および図33はそれぞれ、平行な電極配置の上面図および側面図を示す。ここでは、例えば、ハイブリダイズされるべくあらかじめ選択された3つの細胞をそれらが適切なAC電界の存在において一続きの細胞に整列するまたは形成することを誘導し得るようにおいて、平行な電極の間に置く。
【0228】
<実施例3>
3.電気的な細胞ハイブリダイゼーション法による造血性の分化転換系を確立する例
以下の項目は、異なる系統もしくは細胞型であるか、または同じ系統/もしくは細胞型であるが異なる表現型である、いずれかに由来する細胞のハイブリダイゼーションによって得た造血性の分化転換系(HTS)の生成の例を提供する。安定な各トリハイブリッドが親細胞の表現型の特性を同時に有していることを確認するために分析を行った。この確認は系統特異的な細胞表面マーカー、系統特異的なマーカーの細胞内発現、系統特異的なマーカーのRNA転写産物の存在、核型分類、および/または系統特異的なタンパク質の分泌の分析に基づいた。以下の例は分化転換系の最も典型的な表現型の特性について説明する。しかし、これらの例は、選択した特定のマーカーに限定されない。
【0229】
3.1.不死化された1つの骨髄単球性の前駆体、不死化された1つのリンパ球および不死化された1つのTリンパ球に由来するHTS − HTS−KMW
一例として、この種のHTSを、1つの不死化した骨髄単球性の前駆体K562細胞、不死化した1つのTリンパ球MOLT4細胞、および不死化した1つのBリンパ球WIL2NS細胞をハイブリダイズすることによって生成した。このようにして得られたHTSをHTS−KMW系と名付けた(続いてその識別番号を付与した)。HTS−KMWを確立する工程に関する以下の段階、溶液(ハイブリダイゼーション、培養および回復培地)および本発明に用いるパラメーターを以下に記載する。
【0230】
3.1.1.HTS−KMWのための細胞調製
K562、WIL2NS、およびMOLT4細胞株を我々の標準培地(項目1.1参照)において培養し、5%のCO2の37℃の加湿インキュベータにおいてインキュベートした。定法にしたがって、各細胞株を3日毎に継代した。細胞ハイブリダイゼーションの前に、最も速い増殖速度を有している細胞型の安定な各クローンを、項目1.1.2に記載の手順を用いて樹立した。いくつかの実験において、項目1.1.3に記載のように樹立したCD71+に関して濃縮されている細胞集団を用いた。また、いくつかの事例において、CD71+に関して濃縮されているK562集団のCD15+細胞(項目1.1.3)を用いた。
【0231】
3.1.2.HTS−KMWを確立するための細胞ハイブリダイゼーション手法
TC96ウェルプレートの少数のウェルを細胞ハイブリダイゼーションウェルとして用いた。各ウェルを約150μlのハイブリダイゼーション培地によって満たした。この培地は、240mMのソルビトール(Sigma)、2.0mMのKH2PO4(Sigma)、0.4mMのCaCl2(Sigma)、0.2mMのMg(C2H3O2)2(Sigma)および0.2mMのCa(C2H3O2)2(Sigma)を含んでおり、0.2%のウシ血清アルブミン、BSA(Sigma)によって補われていた。電気的な細胞ハイブリダイゼーションの前に、あらかじめ選択した細胞型の各クローンの細胞を一度ハイブリダイゼーション培地において数分間にわたって洗浄し、新鮮なハイブリダイゼーション培地を含んでいるウェルに移した。このウェルはプレハイブリダイゼーションウェルとして設計した。細胞ハイブリダイゼーションの工程の前に、選択した各クローンの単一の洗浄した細胞を項目1.1.1にしたがって、3つの細胞(選択した各クローンから1つずつ)のみを1対の同一の平行な電極(ウェルの底に沈めた(図33において示されるように))の間に置くように操作した。電極の距離は400マイクロメートル(すなわち400μm)において設定した。
【0232】
電気的な細胞ハイブリダイゼーションを実施するために、まず、0.8MHzの周波数および1メートルあたり約50〜60キロボルト(例えば50〜60kV/m)の場の強度を有している交流(AC)電界を、誘電泳動,DEPによって3つの細胞の互いにおける引き合いを誘導するまで、数秒間にわたって電極の間に印加し、一続きの細胞を形成させた。この工程は良好な細胞膜接触をこれら細胞に起こさせた。細胞をK562細胞が細胞の列の中央にあるような方法において配置した(図32または33参照)。次いで、3秒間隔の2回にわたる電気的方形波パルスをAC電界と同時に印加した。約170kV/mの強度および75マイクロ秒(例えば75μ秒)のパルス幅を伴う各パルスを用いた。2回目の方形波パルスの終了後、AC電界をさらに5秒間にわたって連続的に維持し、単一のトリハイブリダイズされた細胞への細胞ハイブリダイゼーションが得られた。本発明のいくつかの実施形態に関して、3つの細胞のハイブリダイゼーションは同時に起こり得ないことが観察された。すなわち、まず3つのうち2つの細胞のハイブリダイゼーションがしばしば起こり、続いて3つ目の細胞のハイブリダイゼーションが起こる。いくつかの事例において、3つの細胞の完全なハイブリダイゼーションを得るために、さらなる方形波パルスを必要とした。新しく生成したトリハイブリダイズされた分化転換細胞を次いで、ハイブリダイゼーションウェルから回復ウェルに移した。1つの回復ウェルはハイブリダイゼーションウェルの列と異なる列に位置していた。各回復ウェルは150μlの標準TC培地(項目1.1参照)を含んでいた。新しく樹立した各分化転換細胞を、回復ウェルあたり1つの分化転換細胞において、37℃、5%のCO2容量に制御された加湿インキュベーターにおいて数日間にわたってインキュベートした。大多数の分化転換トリハイブリッド細胞は細胞ハイブリダイゼーションの実施後36時間以内に分裂することがわかった。インキュベーション期間の終了時において、各回復ウェル中の培地を新鮮な標準培地と適切に交換した。このことは各分化転換トリハイブリッドのクローンの細胞増殖を刺激した。2または3日後、分裂している細胞または生き残っている細胞を各回復ウェルから同定し、標準的な24ウェルTCプレートのウェルに播き、1組の分化転換トリハイブリッドのクローンの基とした。各分化転換トリハイブリッドのクローンを、10ミリリットル(ml)の我々の標準培養培地(項目1.1参照)を入れた25cm2TCフラスコに移してさらなる分析のために適切に標識する前に、24ウェルプレートにおいてさらに1週間にわたって培養した。一群の安定な分化転換トリハイブリッド細胞を生成するために、電気的な細胞ハイブリダイゼーションの全工程および分化転換トリハイブリッドの回復の工程を複数回にわたって繰り返した。
【0233】
3.1.3.HTS−KMWの系統マーカーのプロファイル
確立されたHTS−KMW細胞株上の系統特異的なマーカーの共発現の確認の例が以下に示されている。
【0234】
HTS−KMW細胞株を通常の培養条件下において6ヶ月間にわたって樹立した後、HTS−KMW細胞集団を、骨髄系統、Bリンパ系統、およびTリンパ系統に特異的なCDマーカーの発現について分析した。
【0235】
次のCDマーカー:WIL2NS由来のCD19、K562由来のCD15およびMOLT4由来のCD4の共発現を確認するために、三色のFACS分析(tri-colour FACS analysis)を用いた。
【0236】
要約すると、5%のBSAを含んでいるPBSにおいて1×106/mlの濃度であるHTS−KMW細胞のうち100μlを、100μlのPBSに懸濁させ、0.5mg/100mlのマウス抗ヒトCD15−PerCP抗体、0.25mg/100mlのマウス抗ヒトCD4−PE抗体および1.0mg/100mlのマウス抗ヒトCD19−FITC抗体、または適切な同位体対照と共に、4℃において30分間にわたってインキュベートした。すべてのマウス抗ヒト抗体はBD Pharmingenから入手した。PBSを用いた十分な洗浄の後、標識した細胞をFACSCaliburフローサイトメーターおよびCellQuest Proソフトウェアを用いて分析した。
【0237】
図9はHTS−KMW細胞の典型的なFACSプロファイルを示す。HTS−KMW細胞は系統特異的な特性が不死化表現型に由来するが、骨髄が支配的である、混合表現型(mixed phenotypes)の異種の細胞集団を含んでいることを、このFACSプロファイルは示唆している。しかし、62%のHTS−KMW細胞が骨髄およびTリンパ球の表現型を共有し、28%のHTS−KMW細胞がTおよびBリンパ球の表現型を発現している。
【0238】
3.1.4.HTS−KMWからの、異なる表現型の集団の単離
HTS−KMW細胞は、異なる6つの表現型の集団、詳細には:(1)CD15+CD19+CD4+;(2)CD15+CD19+CD4−;(3)CD15+CD19−CD4+;(4)CD15−CD19+CD4+;(5)CD15−CD19+CD4−;(6)CD15−CD19−CD4+にさらに分取された。
【0239】
分取領域は図9に示されているように設定された。異なる細胞集団についての分取ゲートは、以下に規定されている通りであった:(1)CD15+CD19+CD4+の細胞集団を、HTS−KMW.1と命名し、R3およびR6の領域の両方にあるものをカウントし;(2)CD15+CD19+CD4−の細胞集団を、HTS−KMW.2と命名し、R5およびR2の領域の両方にあるものをカウントし;(3)CD15+CD19−CD4+の細胞集団を、HTS−KMW.3と命名し、R6およびR1の領域の両方にあるものをカウントし;(4)CD15−CD19+CD4+の細胞集団を、HTS−KMW.4と命名し、R4およびR3の領域の両方にあるものをカウントし;(5)CD15−CD19+CD4−の細胞集団を、HTS−KMW.5と命名し、R7およびR2の領域の両方にあるものをカウントし;(6)CD15−CD19−CD4+の細胞集団を、HTS−KMW.6と命名し、R4およびR1の領域の両方にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0240】
3.2.不死化された1つの骨髄単球性の前駆体、初代培養された1つのBリンパ球および初代培養された1つのTリンパ球に由来するHTS − HTS−KBT
一例として、この種のHTSを、K562細胞に由来する不死化した1つの骨髄細胞、初代培養された1つのヒトB細胞および初代培養された1つのヒトT細胞の体細胞ハイブリダイゼーションによって生成した。この種のHTSをHTS−KBTと名付け、その後ろに識別番号を付与した。
【0241】
3.2.1.HTS−KBTを確立するための細胞調製
HTS−KBTのトリハイブリッドの生成前のK562細胞の調製については、上述の通りである(項目1.1.3)。(i)脾臓、末梢血または臍帯血に由来する成熟B細胞(CD19+);骨髄に由来する初期B細胞(CD20−CD72+);骨髄に由来する活性化B細胞(CD20+CD72+);臍帯血に由来する、抗原を経験したB細胞(CD19+CD5+)、および(ii)脾臓および末梢血に由来するヘルパーT細胞(CD4+)、脾臓、末梢血、臍帯血および胸腺に由来する細胞傷害性T細胞(CD8+);臍帯血に由来する、抗原を経験したT細胞(CD3+CD5+);臍帯血に由来するCD3+T細胞;胸腺に由来する二重陽性のT細胞(CD4+CD8+)を含んでいるKBT系統交雑のトリハイブリッドの生成に用いた初代培養された細胞を実験において用いた。初代培養された種々のリンパ球の、種々のリンパ組織からの単離は、項目1.3に上述されている。
【0242】
3.2.2.HTS−KBTを確立する細胞ハイブリダイゼーション手法
HTS−KBTの確立のための細胞ハイブリダイゼーションの手順は、培地ならびにAC電界およびパルスを変更したことを除いて、HTS−KBTの確立のために用いたもの(項目3.1.2)と同様である。これらの実験において用いたハイブリダイゼーション培地は、230mMのソルビトール、1.8mMのKH2PO4、0.5mMのCaCl2、0.2mMのMg(C2H3O2)2および0.3mMのCa(C2H3O2)2を含んでおり、0.3%のBSAによって補われていた。0.5MHzおよび65〜75kV/mのAC電界を、それぞれ100μ秒のパルス幅および175〜185kV/mの強度を伴う3秒間隔における3回にわたる連続した方形波パルスと同時に印加した。3回目の方形波パルスの終了後、AC電界をさらに5秒間にわたって連続的に出力し、細胞のハイブリダイゼーションが系統交雑のトリハイブリッドを生成するという結果になった。
この新しく作り出した分化転換ハイブリッド細胞のインキュベーションおよびHTSトリハイブリッドの回復手順は、上述されている(項目3.1.2)。
【0243】
3.2.3.HTS−KBTの系統マーカーのプロファイル
確立されたHTS−KBT細胞上における系統特異的なマーカーの共発現の確認の例が以下に示されている。
【0244】
3.2.3.1 不死化された1つの骨髄性細胞、初代培養された1つの成熟Bリンパ球および初代培養された1つのエフェクターTヘルパー細胞から確立されているHTS−KBTのマーカープロファイル
HTS−KBT細胞株を、例えば、通常の培養条件下において数ヶ月間にわたって樹立した後、この細胞株を系統特異的なCDマーカーの発現について分析した。ハイブリダイゼーション前の細胞の調製(項目1.3.3)についての記載と同様の手順を用いて、HTS−KBT細胞株の細胞をマウス抗ヒトCD19およびCD4抗体を用いて標識した。図10(d)は、1つの不死の骨髄単球細胞および初代培養された2つの細胞から樹立したHTS−KBT細胞株のFACSプロファイル(CD19およびCD4標識)を示す。代表的に、このような安定な系統交雑のトリハイブリッドにおける99%を超える細胞が、親である初代培養された細胞と同様の密度を伴って、BおよびT細胞の両方に関するCDマーカーを発現していた。
【0245】
3.2.3.2 不死化された1つの骨髄性細胞、および抗原を経験した、初代培養された2つのリンパ球(B細胞およびT細胞)から確立されているHTS−KBTのマーカープロファイル
他の実施形態において、1つのK562細胞、抗原を経験した1つのB細胞および抗原を経験した1つのT細胞に由来するHTS−KBT細胞株を樹立した。HTS−KBTのこのバリアントをHTS−KBTAEと命名した。この細胞をFACSを用いてCD19、CD3およびCD5の共発現について分析した。
【0246】
要約すると、細胞ハイブリダイゼーション前の細胞の調製(項目1.3.3)と同様の手順を用いて、この細胞をマウス抗ヒトCD5−FITC抗体およびマウス抗ヒトCD19−PE抗体またはマウス抗ヒトCD4−PE抗体を用いて標識した。図12はこのようなHTS−KBTAE細胞株の細胞のFACSプロファイルを示す。この結果は、HTS−KBTAE細胞集団の5〜10%がCD5分子の細胞表面発現を維持する一方で、CD3または/およびCD19について陽性であることによって、その抗原ばくろの記憶を保持していたことを示す。また、CD5陰性細胞集団の少なくとも83%がB系統(CD19)およびT系統(CD3)マーカーの両方を共発現していた。
【0247】
3.2.3.3 HTS−KBTAEからの異なる表現型の集団の単離
HTS−KBTAE細胞は、異なる6つの表現型の集団、詳細には:(1)CD3+CD19+CD5+;(2)CD3+CD19+CD5−;(3)CD3+CD19−CD5+;(4)CD3+CD19−CD5−;(5)CD3−CD19+CD5+;(6)CD3−CD19+CD5−にさらに分取された。
【0248】
分取領域は図11に示されるように設定された。異なる細胞の集団についての分取ゲートは以下のように規定された:(1)CD3+CD19+CD5+の細胞の集団をとHTS−KBTAE.1と命名し、R2およびR4の領域の両方においてカウントし;(2)CD3+CD19+CD5−の細胞の集団をとHTS−KBTAE.2と命名し、R1およびR3の領域の両方においてカウントし;(3)CD3+CD19−CD5+の細胞の集団をとHTS−KBTAE.3と命名し、R2の領域にはなくR4の領域にあるものをカウントし;(4)CD3+CD19−CD5−の細胞の集団をとHTS−KBTAE.4と命名し、R1の領域にはなくR3の領域にあるものをカウントし;(5)CD3−CD19+CD5+の細胞の集団をとHTS−KBTAE.5と命名し、R4の領域になくR2の領域にあるものをカウントし;(6)CD3−CD19+CD5−の細胞の集団をとHTS−KBTAE.6と命名し、R3の領域になくR1の領域にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0249】
3.2.3.4 不死化された1つの骨髄性の細胞、活性化されたB細胞、および初代培養された二重陽性の未拘束のエフェクターT細胞から確立されているHTS−KBTのマーカープロファイル
他の実施形態において、1つのK562、胸腺から単離した1つのT細胞(CD4+CD8+について二重陽性)および骨髄から単離した1つの活性化B細胞(CD20+およびCD72+)の細胞ハイブリダイゼーションに由来するHTS−KBT細胞株を樹立した。HTS−KBTのこのバリアントを、HTS−KBTDPと命名した。この細胞を細胞表面上におけるCD4、CD8、CD20およびCD72の共発現について分析した。
【0250】
要約すると、初代培養されたリンパ球の単離(項目1.3)についての記載と同様の手順を用いて、HTS−KBTDP細胞を、(1)マウス抗ヒトCD4−PEおよびマウス抗ヒトCD72−FITC抗体の組合せ、(2)マウス抗ヒトCD20−PEおよびマウス抗ヒトCD8−FITC抗体の組合せ、または(3)マウス抗ヒトCD4−PEおよびマウス抗ヒトCD8−FITC抗体の組み合わせのいずれかを用いて標識した。図12はこのようなHTS−KBTDP細胞のFACSプロファイルを示す。
【0251】
この結果(図12参照)は、HTS−KBTDP細胞の99%がその表面上に二重陽性のT細胞由来のCD4またはCD8のいずれかを発現しており、66〜71%の細胞がCD4について陽性であり、88〜89%の細胞がCD8について陽性であった。これらの細胞の60%において、CD4およびCD8の発現は同時に起こっていた。二重陽性の胸腺細胞に由来するCD4について陽性であるが、61%の細胞が同様に骨髄の活性化B細胞に由来するCD72について陽性であった。しかし、HTS−KBTDP集団の94%がそれらの表面上にCD72を発現していた。一方、CD8陽性細胞の31%がCD20を共発現していた。CD20陽性細胞の総数は39%であった。
【0252】
3.2.3.5 HTS−KBTDPからの異なる表現型の集団の単離
HTS−KBTDP細胞は、異なる15の表現型の集団、詳細には:(1)CD4+CD8+CD20+CD72+;(2)CD4+CD8+CD20+CD72−;(3)CD4+CD8+CD20−CD72+;(4)CD4+CD8+CD20−CD72−;(5)CD4+CD8−CD20+CD72+;(6)CD4+CD8−CD20+CD72−;(7)CD4+CD8−CD20−CD72+;(8)CD4+CD8−CD20−CD72−;(9)CD4−CD8+CD20+CD72+;(10)CD4−CD8+CD20+CD72−;(11)CD4−CD8+CD20−CD72+;(12)CD4+CD8+CD20−CD72−;(13)CD4−CD8−CD20+CD72+;(14)CD4−CD8−CD20+CD72−;(15)CD4−CD8−CD20−CD72+にさらに分取された。
【0253】
分取領域は図12に示されるように設定された。異なる細胞の集団についての分取ゲートは以下のように規定された:(1)CD4+CD8+CD20+CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.1と命名し、R2、R5およびR8のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(2)CD4+CD8+CD20+CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.2と命名し、R2、R8およびR4のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(3)CD4+CD8+CD20−CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.3と命名し、R2、R5およびR9のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(4)CD4+CD8+CD20−CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.4と命名し、R2、R4およびR9のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(5)CD4+CD8−CD20+CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.5と命名し、R1、R5およびR7のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(6)CD4+CD8−CD20+CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.6と命名し、R1、R4およびR7のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(7)CD4+CD8−CD20−CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.7と命名し、R1、R5およびR12のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(8)CD4+CD8−CD20−CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.8と命名し、R1、R4およびR12のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(9)CD4−CD8+CD20+CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.9と命名し、R3、R6およびR8のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(10)CD4−CD8+CD20+CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.10と命名し、R3、R11およびR8のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(11)CD4−CD8+CD20−CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.11と命名し、R3、R6およびR9のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(12)CD4+CD8+CD20−CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.12と命名し、R3、R11およびR9のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(13)CD4−CD8−CD20+CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.13と命名し、R10、R6およびR7のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(14)CD4−CD8−CD20+CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.14と命名し、R10、R11およびR7のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(15)CD4−CD8−CD20−CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.15と命名し、R10、R6およびR12のすべての3つの領域にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0254】
3.3 骨髄単球性の初代培養された前駆体、不死化されたBリンパ球および初代培養されたTリンパ球に由来するHTS − HTS−WTM
一例として、骨髄に由来する初代培養された1つの骨髄性の前駆体、WIL2NS細胞株に由来する不死化された1つのヒトB細胞、および初代培養されたヒトT細胞の体細胞ハイブリダイゼーションによって、この種のHTSを作製した。
【0255】
3.3.1.HTS−WTMを確立するための細胞調製
HTS−WTMの作製に使用したWIL2NSの調製については、項目1.1.3にすでに記載されている。脾臓、末梢血、臍帯血および胸腺に由来するヘルパーT細胞(CD4+)の初代培養された細胞をこれらの実験に使用した。初代培養された種々のリンパ球の、種々のリンパ組織からの単離についてはすでに記載されている(項目1.3)。初代培養された骨髄性の前駆細胞は項目1.2.2に記載されているCD34+CD15+骨髄単核球に由来する。
【0256】
3.3.2.HTS−WTMを確立するための細胞ハイブリダイゼーション手法
HTS−WTMの生成のための細胞ハイブリダイゼーションの手順は、培地を変更したことを除いて、HTS−WTMの生成のために用いたもの(項目3.1.2参照)と同様であった。これらの実験において用いたハイブリダイゼーションの培地は、235mMのソルビトール、1.8mMのKH2PO4、0.5mMのCaCl2、0.3mMのMg(C2H3O2)2および0.25mMのCa(C2H3O2)2(Sigma)を含んでおり、0.3%のBSAによって補われていた。項目3.2.2の記載とまったく同じ電気的な手順をWTMの生成のために用いた。この新しく作り出した各分化転換ハイブリッド細胞のインキュベーションおよびHTSトリハイブリッド回復の手順については、項目3.1.2に記載されている。
【0257】
3.3.3.HTS−WTMの系統マーカーのプロファイル
確立されたHTS−WTM細胞上における系統特異的なマーカーの共発現の確認の例が以下に示されている。
【0258】
3.3.3.1 初代培養された骨髄性の1つの前駆体、不死化された1つのリンパ球および初代培養された1つのT細胞から確立されたHTS−WTMのマーカープロファイル
WIL2NS細胞株に由来する不死化された1つのBリンパ球、初代培養された1つのT細胞、および1つの骨髄単球性の前駆体の細胞ハイブリダイゼーションに由来するHTS−WTM細胞株を通常の条件の下(項目1.1を参照)に6ヶ月間にわたって培養した後に、HTS−WTM細胞の集団を系統特異的なCDマーカーの発現について分析した。CD19(B系統)、CD4(T系統)、CD15(骨髄系統)およびCD34(前駆細胞)に関する表面マーカーの発現を分析した。要約すると、マウス抗ヒトCD19−PE抗体、マウス抗ヒトCD4−FITC抗体(BD Pharmingen)およびマウス抗ヒトCD15PerCP抗体の組合せ、またはマウス抗ヒトCD34−PE抗体、マウス抗ヒトCD4−FITC抗体およびマウス抗ヒトCD15−PerCP抗体の組合せを用いて、このHTS−WTM細胞株の細胞を標識した。上述の手法(項目1.3.3)にしたがって細胞の染色を実施した。CD34+CD15+骨髄単球性の前駆細胞に由来するHTS−WTM細胞の典型的な発現プロファイルが図13に示されている。HTS−WTMの約81%はB系統および骨髄単球性の表現型を共有しており(CD34+CD15+)、またCD4+細胞の34%はそれらの表面にCD34を維持しており、CD34+細胞の68%はCD15を発現していることが分析によって示された。興味深いことに、CD34およびCD15が同じ起源(骨髄単球性の前駆細胞)に由来するにもかかわらず、CD34+細胞の28%はCD15の発現を維持していない。
【0259】
3.3.3.2 HTS−WTMからの異なる表現型の集団の単離
HTS−WTM細胞は、異なる6つの表現型の集団、詳細には:CD15、CD19およびCD4の発現に基づいて、(1)CD15+CD19+CD4+;(2)CD15−CD19−CD4−;(3)CD15+CD19−CD4+;(4)CD15−CD19+CD4+;(5)CD15−CD19+CD4−;(6)CD15−CD19−CD4+;またはCD15、CD34およびCD4の発現に基づいて、(7)CD15+CD34+CD4+;(8)CD15+CD34+CD4−;(9)CD15+CD34−CD4+;(10)CD15−CD34+CD4+;(11)CD15−CD34+CD4−;(12)CD15−CD34−CD4+にさらに分取された。
【0260】
分取領域を図13(A)および13(B)に示されるように設定した。CD15、CD19およびCD4の発現に基づく異なる細胞の集団についての分取ゲートは以下のように規定された:(1)CD15+CD19+CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.1と命名し、R3およびR6の両方の領域にあるものをカウントし;(2)CD15−CD19−CD4−の細胞集団を、HTS−WTM.2と命名し、R6およびR1の両方の領域にあるものをカウントし;(3)CD15+CD19−CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.3と命名し、R5およびR3の両方の領域にあるものをカウントし;(4)CD15−CD19+CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.4と命名し、R1、R2およびR3の領域にはなくR5の領域にあるものをカウントし;(5)CD15−CD19+CD4−の細胞集団を、HTS−WTM.5と命名し、R5およびR6のの領域にはなくR4の領域にあるものをカウントし;(6)CD15−CD19−CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.6と命名し、R4、R5およびR6の領域にはなくR2の領域にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0261】
図13BはCD15、CD34およびCD4の発現に基づく異なる細胞集団についての分取ゲートを示している。上記ゲートは以下のように規定された:(7)CD15+CD34+CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.7と命名し、R3およびR6の両方の領域にあるものをカウントし;(8)CD15+CD34+CD4−の細胞集団を、HTS−WTM.8と命名し、R1およびR6の両方の領域にあるものをカウントし;(9)CD15+CD34−CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.9と命名し、R2およびR5の両方の領域にあるものをカウントし;(10)CD15−CD34+CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.10と命名し、R3およびR4の両方の領域にあるものをカウントし;(11)CD15−CD34+CD4−の細胞集団を、HTS−WTM.11と命名し、R1およびR4の両方の領域にあるものをカウントし;(12)CD15−CD34−CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.12と命名し、R2の領域にはなくR4、R5およびR6の領域にはなくR2の領域にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0262】
<実施例4>
4.環境条件の変化による異なる細胞表現型へのHTS細胞の分化転換
この実施例は、細胞系統に許容性の環境または細胞系統を促進する環境への所定のHTS細胞のばくろを通じた、異なる表現型への細胞の分化転換の実現可能なモデルのいくつかを示している。
【0263】
4.1.CD4+T細胞へのHTS細胞の分化転換
以下の亜集団:HTS−KMW.1、HTS−KMW.6、HTS−KBT、HTS−KBTAE.1、HTS−KBTAE.4、HTS−WTM.1、HTS−WTM.6、HTS−WTM.7およびHTS−WTM.12に由来しており、項目3.1.4、項目3.2.3.1、項目3.2.3.3および項目3.3.3.2に記載されているように作製されたHTS細胞、ならびにK562細胞、WIL2NS細胞およびMOLT4細胞の対照培養物を新たな培養培地に移し、細胞の濃度を1mlにつき250000細胞または500000細胞に調整した。10U/mlのヒトIL−2(BD Biosciences)、1ng/mLのヒトIL−1β(BD Biosciences)、10ng/mlのヒトIL−23(R&D Systems)、1μg/mlの抗IL−4、1μg/mlの抗IFN−γおよび細胞につき1ビーズの割合の抗CD3/CD28活性化ビーズ(Invitrogen)を細胞培養物に補い、U底の96ウェルプレート(Corning)に、ウェルにつき200μlにおいて播いた。0.1、1および10ng/mlにおける増加する濃度のTGF−βを一連の4つのウェルに加えた。3日目および5日目に培養培地を、すべてのサイトカインおよび抗体を含んでいる新たな培地に置き換えた。8日目に、抗CD4、抗CD19およびCD15を用いて細胞を、染色し、項目1.3.3に記載の通りにフローサイトメトリーによって分析した。染色の前に50ng/mlのPMA、500ng/mlのイオノマイシンおよび1倍のBD GoldgiStopを用いて5時間にわたって細胞を活性化した。
【0264】
それから、項目3.1.3に記載の通りにマウス抗ヒトCD4−PE抗体、マウス抗ヒトCD19−FITC抗体、マウス抗ヒトCD15−PerCP抗体を用いて、細胞を標識した。図14は、培養物におけるCD4、CD19およびCD15についての三重染色の代表的なプロファイルを示しており、ここで、CD4+細胞への分化っを誘導された後に100%の細胞が表面上にCD4のみを発現した。HTS−KMW.1培養物において、CD4+単独の細胞は、三重陽性の(CD15+CD19+CD4+)細胞の純粋な集団から開始された細胞集団の全体のうち49%に達した。CD4+単独の細胞は、HTS−KBTにおいて、最初の二重陽性の(CD19+CD4+)集団の100%うち50%に達し;HTS−KBTAE.1において、三重陽性の(CD3+CD19+CD5+)集団の100%のうち61%に達し;HTS−KBTAE.4において、最初のCD3+細胞の100%のうち74%に達し;HTS−WTM.1において、三重陽性の(CD15+CD19+CD4+)集団の100%のうち82%に達し;HTS−WTM.7における715が、CD15+CD34+CD4+表現型の三重陽性の集団から単独のCD4陽性の細胞になった。K562細胞、WIL2NS細胞およびMOLT4細胞の対照細胞は、変わらないそれらのマーカー発現プロファイルを維持した。
【0265】
4.1.1 HTSから生成されたCD4+T細胞の性質決定
CD4+T細胞に誘導されたHTS培養物から生成された単独陽性のCD4+細胞を、マーカー発現および機能的な性質決定のさらなる分析のために分取した。許容される純度はCD4+T細胞の全体集団の98%であった。
【0266】
4.1.1.1 HTSから生成されたCD4+細胞の表現型プロファイル
Tリンパ球許容性のHTS培養物に由来する単独陽性のCD4細胞を、CD4+T細胞の表面に限定的に発現されているか、またはCD8+T細胞の機能にとって重要な、細胞表面上における以下の分子の発現について、さらに分析した。当該分子は、TCRαβ−T細胞受容体;CD25−活性化T細胞によって発現されるIL−2受容体αであり、CD4との組合せにおいてCD4+T細胞の制御性サブセットを意味する;CD27−T細胞の共刺激に関与する;CD28−ナイーブT細胞の活性化を意味する;CD62L−ナイーブT細胞およびメモリT細胞上に発現され、ホーミングに関与する;CD69−活性化T細胞上におけるシグナル伝達分子;CD95−活性化によって上方制御される;CD45RO−活性化T細胞またはメモリT細胞を意味する、である。各マーカーの発現をCD4と組み合わせて評価した。この目的のために、項目1.3.3に記載の同じ手法に本質的にしたがって、マウス抗ヒトCD4−PEと、マウス抗ヒトCD25−FITC、マウス抗ヒトCD27−FITC、マウス抗ヒトCD62L−FITC、マウス抗ヒトCD69−FITCまたはマウス抗ヒトCD95−FITCとの組合せを用いて、細胞を染色した。表2には、異なるHTS培養物に由来するCD4+Tリンパ球の表現型プロファイルが要約されている。
【0267】
種々の培養物からの細胞のすべてはそれらの表面上にTCRの成熟形態を発現しており、CD発現プロファイルはHTS培養物において生成された種々のCD4+サブセットを示している。種々の活性化分子について発現レベルと顕著に相関するCD62L発現による徴候として、細胞はホーミングついての異なる能力を示した。特に初代培養された骨髄単球性の前駆細胞から生じているTHS−WTMにおいて、活性化ヘルパーT細胞のサブセットだけでなく、T細胞のCD4+CD25+制御性サブセットを生成可能であった。
【0268】
【表2】
4.1.1.2 HTSから生成されたCD4+細胞によるサイトカイン産生
T細胞許容性のHTS培養物から生成された単独陽性のCD4+細胞を、10ng/mlのリポ多糖(LPS)を用いた4日間にわたるポリクロナル活性化に続いく、IL−2、IL−4、IL−8、IL−10、IFN−γおよびTNF−αの産生について、さらに分析した。平底の96ウェルプレートの1ウェルにつき、200μlの完全培地における200000細胞を播いた。上清を取り出し、それぞれのELISAキット(すべてInvitrogenから購入した)によって分析した。表3はHTS培養物に由来するポリクロナル性に刺激されたCD4+におけるサイトカイン産生の典型的なプロファイルを表している。
【0269】
【表3】
サイトカインプロファイルは、炎症性の優勢なプロファイルから制御性の優勢なプロファイルまでの範囲にあるT細胞許容性の環境においてHTS培養物から生成されたCD4+細胞における異なるT細胞サブセットの存在をを再確認している。
【0270】
4.2.細胞傷害性CD8+細胞へのHTS細胞の分化転換
以下のTHS集団:項目3.2.3.3に記載のHTS−KBTAE.1およびHTS−KBTAE.4;項目3.2.3.5に記載のHTS−KBTDP.1、HTS−KBTDP.4およびHTS−KBTDP.12に由来する細胞、ならびにK562の対照培養物を細胞傷害性のCD8+Tリンパ球の分化に使用した。
【0271】
この目的のために、対照のK562細胞、および各HTS集団に由来する細胞を、単層のヒト胸腺ストロマ細胞を用いて被覆した24ウェルプレートのウェルごとに100000細胞において播いた。0.5mg/mlのコラゲナーゼおよび1U/mlのDNaseIを有しているPBSにおいて、常に攪拌しながら60分間にわたって37℃においてインキュベートすることによって単一の細胞の懸濁物に消化された胸腺の細かく刻んだ小片から、胸腺ストロマ細胞を調製した。培養培地(RPMI1640:10%のFCS、10IU/mlのペニシリン、10pg/mlのストレプトマイシンおよび1mmol/LのL−グルタミン)を用いて1回にわたって、細胞の懸濁物を洗浄した。24ウェルプレートにおける2mlの培養培地の入った1ウェルごとに108細胞の新しい細胞または低温保存の細胞のいずれかを用いて、胸腺ストロマ細胞の培養物を確立した。2日後に、培養培地を用いて3回にわたって洗浄することによって、吸着していない細胞を除去した。それから、少なくとも週に2回、交換された培養培地に単層を維持させた。また、1%の非必須アミノ酸、10ng/mlのヒトIL−7および100U/mlのヒトIL−2(BD Bioscience)を、HTS培養物に補った。5日目および10日目に培養培地を、サイトカインを含んでいる新たな培地に交換した。
【0272】
14日目に、CD8、CD19およびCD15の発現についてHTS培養物を分析した。この目的のために、それから、項目1.3.3に記載の通りに、マウス抗ヒトCD8−PE、マウス抗ヒトCD19−FITCおよびマウス抗ヒトCD15−PerCpを用いて細胞を標識した。図15は、HTS−KBTDP.12における系統マーカーの典型的なプロファイルを示しており、ここで、CD8+細胞への分化を誘導した後に、100%の細胞が単独陽性(CD8+)の表現型を示した。KBTAE.1において、単独陽性のCD8細胞の数は、三重陽性のCD3+CD19+CD5+集団の100%に基づいて53%に達し、ここで、KBTAE.4における当該数は単独CD3+集団の100%に基づいて61%であった。HTS KBTDP.1およびHTS KBTDP.4において、単独CD8+細胞の割合は、CD4+CD8+CD20+CD72+の集団およびCD4+CD8+CD20−CD72−の集団の100%のうち72%および86%に上った。対照のK562培養物において変化は認められなかった。
【0273】
4.2.1. HTS細胞から生成されたCD8+細胞の性質決定
細胞傷害性のT細胞へと誘導されたHTS培養物から生成された単独陽性のCD8+細胞を、マーカー発現および機能的な性質決定のさらなる分析のために分取した。
【0274】
4.2.1.1 HTS細胞から生成されたCD8+細胞の表現型プロファイル
Tリンパ球許容性のHTS培養物に由来する単独陽性のCD8細胞を、細胞傷害性T細胞の表面に限定的に発現されているか、またはCD8+T細胞の機能にとって重要な、細胞表面上における以下の分子の発現について、さらに分析した。当該分子は、TCRαβ−T細胞受容体;CD8αおよびCD8β(ここで、β鎖の下方制御は抗原ばくろ前を意味する);CD27−T細胞の共刺激に関与する;CD28−ナイーブT細胞の活性化を意味する;CD62L−ナイーブT細胞およびメモリT細胞上に発現され、ホーミングに関与する;CD95−活性化によって上方制御される;CD45RO−活性化T細胞またはメモリT細胞を意味する、である。まず、項目1.3.3に記載の手法に本質的にしたがって、抗ヒトCD8α−PE(BD Pharmingen)および抗ヒトCD8β−FITC(BD Pharmingen)を用いて、細胞を標識した。続く染色において、抗ヒトTCRαβ−FITC、抗ヒトCD27−FITC、抗ヒトCD28−FITC、抗ヒトCD62L−FITCまたは抗ヒトCD45RO−FITC(すべてBD Pharmingenから購入した)と組み合わせて、抗ヒトCD8β−FITCを使用した。表4には、異なるHTS培養物に由来するCD8+Tリンパ球の表現型プロファイルが要約されている。
【0275】
【表4】
マーカーの分析によって、種々の集団におけるすべての細胞はCD8についてα鎖およびβ鎖の両方をともなう、TCRαβの発現について同質であることが明らかになった。しかし、細胞の集団は、他のマーカーの同質の発現を示すだけでなく、活性化、ホーミングおよびメモリに関与するマーカーの異なる程度の発現を示した。
【0276】
4.2.1.2 HTS細胞から生成されたCD8+細胞によるサイトカイン産生
THS培養物から生成された単独陽性のCD8細胞を、細胞内のIFN−γおよびIL−2の産生について分析した。この目的のために、50ng/mlのホルボールエステルおよび500ng/mlのイオナマイシン(ionamycyne)を用いた通常の培養条件において、Tリンパ球の条件におけるHTS培養物に由来する単独陽性のCD8細胞を刺激した。1時間後に、200ng/mlのブレフェルディンAを加え、15分間にわたって20℃の4%のパラホルムアルデヒドにおいて細胞を固定した。3回にわたる洗浄サイクルの後に、細胞を、サポニンを用いて透過化処理し、抗IL−2−PE(Pharmingen)、抗IFN−γーFITCまたは同位体対照を用いて染色した。図16は、HTS−KBTAE.4およびHTS−KBTDP.12の培養物の単独陽性のCD8細胞における細胞内のIL−2およびIFN−γの典型的なプロファイルを示している。両方の培養物はIL−2、IFN−γまたはその両方を産生している細胞を含んでおり、HTS−KBTDP.12培養物は、HTS−KBTAE.4培養物が広範囲のIFN−γ濃度を有しているのに対して、IL−2について広範囲の産生レベルを有していた。
【0277】
4.2.1.3 HTS細胞から生成されたCD8+細胞の細胞傷害性エフェクター機能
細胞内の細胞傷害性の顆粒の産生は、最終分化したT細胞を示す主なエフェクター機能である。細胞内の細胞傷害性の顆粒の検出のために、Tリンパ球許容性の条件におけるHTS培養物に由来する単独陽性のCD8細胞を、4%のパラホルムアルデヒドを用いて15分間にわたって20℃において固定した。洗浄後に、細胞を、サポニンを用いて透過化処理し、抗パーフォリン−PE抗体(BD Pharmingen)および抗グランザイムA−FITC抗体、同位体対照を用いて染色した。図17は、HTS−KBTAE.4およびHTS−KBTDP.12の培養物の単独陽性のCD8細胞における細胞内のパーフォリンおよびグランザイムAの典型的なプロファイルを示している。両方の内容物は、機能的に分化した細胞傷害性T細胞を示すパーフォリン、グランザイムAまたはその両方のいずれかについて陽性の細胞を含んでいた。両方の培養物における単独のCD8陽性細胞の約40%がそのような表現型を獲得していた。
【0278】
4.3.HTSからBリンパ球へのHTS細胞の分化転換
以下のHTS集団:項目3.1.4に記載のHTS−KMW.1およびHTS−KMW.5;項目3.2.3.1に記載のHTS−KBT;項目3.2.3.3に記載のHTS−KBTAE.1およびHTS−KBTAE.6;項目3.2.3.5に記載のHTS−KBTDP.1およびHTS−KBTDP.13;項目3.34に記載のHTS−WTM.1およびHTS−WTM.7に由来する細胞、ならびにK562、WIL2NSおよびMOLT4の対照培養物を、ヒトの骨髄ストロマ細胞株HS−5の存在下におけるBリンパ球の分化に使用した。4mMのL−グルタミン、1.5g/Lのジカルボン酸ナトリウムおよび10%(v/v)のFCSを補ったダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において、HS−5細胞を定法にしたがって維持した。分化実験の1日前または2日前に、HS−5細胞を、24ウェルのプレートの、1mlの培養培地の入ったウェルごとに60000細胞、または平底の96ウェルプレートの、100μlの培養培地の入ったウェルごとに6000細胞においてに播いた。HS−5成長培地の除去、ならびに24ウェルのプレートの、1mlのウェルごとに1000〜4000細胞、および96ウェルプレートの、100μlのウェルごとに100細胞において、選択したHTS細胞の集団を播くことによって、Bリンパ球分化の共培養を開始した。Bリンパ球系統を促進する添加剤、特に可溶性の4ng/mlのCD40L(Invitrogen)、10ngのヒトIL−4(Invitrogen)、5ng/mlのヒトIL−5(Invitrogen)、10ng/mlのヒトIL−6(Invitrogen)、10ng/mlのIL−10(Invitrogen)、5ng/mlのヒトIL−2(Invitrogen)、20ng/mlのIL−7(Invitrogen)、20ng/mlのFit3リガンド(Invitrogen)、20ng/mlの幹細胞由来因子(BD Bioscience)、10ng/mlのヒトIL−3(Invitrogen)および5μg/mlの抗CD40mAbのアゴニスト(クローンHM40−3、BD Bioscience)を、標準的な培養培地に補った。5日目および7日目に、培養培地をBリンパ球系統を促進する添加剤を補った新たな培地に交換した。HTS−KMW.1、HTS−KMW.5、HTS−KBT、HTS−WTM.1、HTS-WTM.7ならびにK562、MOLT4およびWIL2NSの対照培養物に由来する吸着しなった細胞を、回収し、マウス抗ヒトCD4−FITC、マウス抗ヒトCD19−PEおよびマウス抗ヒトCD15−PerCPを用いて染色し、項目1.3.3に記載の通りにフローサイトメトリーによって分析した。図18は、Bリンパ球に分化を誘導された後の、100%のCD19+細胞を有しているHTS−KBTAE.6の典型的な染色プロファイルを示している。HTS−KBTAE.1およびHTS−KBTAE.6の場合に、抗ヒトCD4−FITCの代わりに抗ヒトCD3−FITCを用いて、吸着しなかった細胞を染色した。HTS−KBTDP.1およびHTS−KBTDP.13の培養物について、マウス抗ヒトCD20−PEを抗CD19−PEの代わりに用いた。
【0279】
4.3.1 HTS細胞から生成されたCD19+細胞の性質決定
Bリンパ球のHTS培養物に由来する単独陽性のCD19細胞を分取し、B特異的な転写物および機能的な特性(例えば、免疫グロブリンの分泌およびプラズマ細胞への分化)の存在、B細胞マーカーについてさらに分析した。
【0280】
4.3.1.1 他のB細胞マーカー表面発現
Bリンパ球に関して促進されたHTS培養物に由来するCD19+細胞を、B細胞の表面上に限定的に発現されているか、またはB細胞の機能にとって重要な以下の分子の発現についてさらに分析した。当該分子は、CD1c−抗原提示における特殊な役割を有している、β2−ミクログロブリンと会合するMHCクラスI様分子;CD10−B細胞の発生に関与している亜鉛金属プロテアーゼ;CD20−B細胞活性化分子;CD22−単球およびT細胞とのB細胞の相互作用を担っている成熟B細胞上に発現されている接着分子;CD38−細胞活性化;CD40−アポトーシスからのB細胞の開放、およびアイソタイプ転換に関与するB細胞の分化および共刺激である;表面IgMおよびIgG、である。
【0281】
この目的のために、マウス抗ヒトCD1c−PE抗体、マウス抗ヒトCD10−FITC抗体、マウス抗ヒトCD20−PE抗体、マウス抗ヒトCD22−FITC抗体、マウス抗ヒトCD38−FITC抗体、マウス抗ヒトCD40−FITC抗体、マウス抗ヒトIgG−PE抗体、マウス抗ヒトIgM−PE抗体(BD Pharmingen)を用いて、Bリンパ球に関して促進されたHTS培養物に由来するCD19+細胞を標識した。本質的に同じ染色手法は、項目1.3.3に記載の通りにしたがった。表5には、異なるHTS培養物に由来するBリンパ球の表現型のプロファイルが要約されている。
【0282】
【表5】
K562、WIL2NSおよびMOLT4の対照培養物において、新たなマーカー発現、上方制御または下方制御は認められなかった。
【0283】
CD5+B細胞に本来的に由来するHST−KBTAEの集団を、Bリンパ球を促進する環境において培養した場合に、より活性化されたCD20+細胞、より成熟したCD22+細胞およびより成熟したCD40+細胞が検出された。また、LPS刺激後にこれらの培養物がIgG陽性の細胞をより含んでいた(表6)ことを考えると、結果は、機能的なB細胞およびプラズマ細胞への、これらの特定の集団の分化能を示している。
【0284】
細胞表面上(特にHTS−WTM培養物)におけるIgM発現の消失と結びついているプレB細胞にとってのマーカーである、細胞表面におけるCD10の出現は、より初期のプレB細胞へのCD19+細胞の脱分化を強く示唆している。
【0285】
4.3.1.2 プラズマ細胞への分化能
14日目に、3.5mg/mlのリポ多糖(Sigma)に培養物をさらして、Bリンパ球を活性化させ、プラズマ細胞の形成を誘導した。96ウェルのELISAプレート、およびヒトμ鎖およびγ鎖に対する親和性精製された、プラスティックに吸着させたヤギ抗体を用いた標準的なELISAによって、すべてのHTS−Bリンパ球の培養物について、分泌されたIgMおよびIgGを定量化した。HRPを結合させたヒツジ抗ヒトIg抗体を用いて、結合した抗体を顕示化した。使用したすべての抗体はSigmaから入手した。ABTSを基質として使用し、405nmにおける吸光度を測定した。表6には、LPSばくろ後のCD19+細胞の表現型プロファイルが示されており、表7には、7日後および17日後におけるBリンパ球培養物において検出されたIgMおよびIgGのレベルが要約されている。
【0286】
【表6】
CD22+細胞の数が、CD40+陽性の細胞およびIgGを有している細胞の増加をもとなって、増加しているので、HTS−KBT培養物における単独のCD19+細胞の数の減少はプラズマ細胞へのさらなる分化の結果と考えられ得る。また、WTM培養物におけるより未成熟なCD10+プレB細胞の数はCD40+およびCD22+の陽性細胞の増加にともなって減少した。
【0287】
ELISAの結果は、IgGが始めて検出された場合に、LPS刺激した培養物(特にHTS−KBT培養物)における成熟B細胞からプラズマ細胞へのある程度の発達があることを確かめている。
【0288】
【表7】
【0289】
4.4.マクロファージへのHTS細胞の分化転換
以下の亜集団HTS−WTM.4に由来しており、項目3.3に記載されているHTS細胞およびWIL2NSの対照培養物を新たな培養培地に移し、細胞濃度を1mlにつき100000〜200000細胞に調整した。50ng/mlのヒトIL−7(Invitrogen)、50ng/mlのヒトIL−6(Invitrogen)、10ng/mlのヒトIL−3(Invitrogen)、100ng/mlのヒトM−CSF(BD Bioscience)、30ng/mlのヒトGM−CSF(BD Bioscience)および50ng/mlのFit3L(Invitrogen)を細胞培養物に補い、当該細胞培養物を平底の24ウェルプレートの1ウェルにつき1mlにおいて播いた。3〜4日ごとに、新たな培養培地を培養培地の半分と置き換えることによって、新たな培養培地を継ぎ足した。図19は8日後におけるHTS培養物の形態を示しており、ここで、細胞を接着細胞の成長特性について評価した。
【0290】
それから、項目1.3.3に記載の通りにマウス抗ヒトCD4抗体、マウス抗ヒトCD19抗体およびマウス抗ヒトCD15抗体を用いて、細胞を標識した。図20は、8日間にわたるマクロファージ許容性の培養の後に、細胞の大部分がCD15を除いたすべてのマーカーの発現を消失していることを示しており、ここで、約7%の細胞が骨髄単球系統のマーカーについて陽性を維持していた。2%の細胞のみがCD4について陽性であり、CD19について陰性であった。対照のWIL2NS培養物には何らの変化も認められなかった。
【0291】
4.4.1 HTS細胞から生成されたマクロファージの性質決定
HTS細胞から生成されたマクロファージを、他のマクロファージ系統のマーカーおよび機能的な能力の発現についての分析に供した。
【0292】
4.4.1.1 他のマクロファージマーカーの発現
また、ヒトマクロファージを排他的に特徴付ける単一のマーカーがないので、マクロファージ系統の特徴であるCD11b、CD86、CD64、CD14およびCD115の発現について、HTS細胞から生成された接着性の細胞をさらに分析した。この目的のために、抗ヒトCD11b−PE抗体、抗ヒトCD86−FITC抗体、抗ヒトCD64−FITC抗体、抗ヒトCD14−PE抗体および抗ヒトCD115−PE抗体(BD Pharmingen)を用いて、マクロファージに関して促進されたHTS培養物を標識した。CD115−PE抗体を除くすべてのマーカーについての実質的に同じ染色手法は、項目1.3.3の記載にしたがった。M−CSFの、その受容体CD115に対する結合は、受容体の内部移行を生じ、したがって表面染色の強度を低減させ得る。したがって、表面および細胞内のCD115が評価され得るように、抗CD115−PEを用いた染色の前に、細胞を、固定し、Cytofix/Cytopermキット(BD Biosciences)を用いて透過化処理した。マクロファージ許容性の培地においてから8日後に細胞表面上におけるマクロファージ様因子の発現について、5つの別の培養物を分析した。図21には、HTS細胞上におけるマクロファージ様CDマーカーの分布(平均±標準偏差)が要約されており、ここで、約96%の細胞がCD11bについて陽性であり、95%の細胞がCD64について陽性であり、61%の細胞がCD86について陽性であり、56%の細胞がCD14について陽性であり、42%の細胞がCD115について陽性であった。これらのマーカーのいくつかが顆粒球および樹状細胞(DC)上において種々のレベルとして発現され得ることを考えて、ヒトのCD1a、CD83、CD15およびCD3についてのついての付加的な染色を、項目1.3.3に記載の手法を用いて実施した。染色は、わずかに認められた(CD15)か、認められなかった。これらの結果は、マクロファージ許容性の培地に移されると、HTS細胞がマクロファージの機能(例えば、吸着(CD11b)、増殖(M−CSFにとっての受容体であるCD115)、食作用(CD86)および免疫食作用(IgGにとっての受容体であるCD64))にとって決定的な表面分子を獲得することを示している。
【0293】
4.4.1.2 HTS細胞から生成されたマクロファージの機能的な性質決定
機能的な特性を評価するために、HTSにおいて生成されたマクロファージを、食作用能および一酸化窒素(NO)の生成についてさらに分析した。
【0294】
蛍光微粒子(分子プローブ)を捕食する能力によるフローサイトメトリーによって、食作用能を評価した。マクロファージ許容性の培地において8日後に、5μg/mlのLPS(Sigma)および蛍光フィコエリトリン(PE)標識を有しているカルボキシル化した40nmおよび100nmのポリスチレン微粒子とともに、24ウェルプレートにおいて1mlにつき1000000細胞として、18時間にわたってHTS細胞をインキュベートした。細胞を、回収し、氷冷した2%(w/v)のBSA/PBSにおけるCD64に対する抗ヒトのFITCを結合した抗体とともに45分間にわたって、氷上においてインキュベートし、2回にわたって洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。図22は、マクロファージに関して促進されたHTS細胞における食作用活性の典型的なプロファイルを示している。約94%の細胞が小さなビーズおよび大きなビーズに対する食作用活性を示した。
【0295】
10ng/mlのLPS、100U/mlのヒトインターフェロン−γ(IFN−γ)、またはその両方とともに、200μlの総量におけるウェルにつき200000細胞に播いた平底の96ウェルプレートにおいて、マクロファージに関して促進されたHTS細胞を培養することによって、NOの生成を評価した。一昼夜の刺激の後に、50μlのGriess試薬(1%のスルファニルアミド、0.1%のナフチレンジアミン2塩酸塩、2.5%のH3PO4)とともに、5分間にわたって室温において50μlの無細胞の上清をインキュベートし、550nmにおける吸光度をマクロプレートリーダにおいて選択した。硝酸ナトリウムの標準曲線の直線回帰からNOの濃度を決定した。図23に示されるように、マクロファージ許容性の培地にさらされた後のHST細胞は、LPSおよびIFNを用いた刺激に応じて一酸化炭素を生成した。
【0296】
<実施例5>
5.成熟した表現型の細胞とのハイブリダイゼーションによる異なる細胞表現型へのHTS細胞の分化転換
HTSの汎用性および利用される機序に対する非感受性をさらに証明するために、HTS細胞を、成熟エフェクターT細胞または成熟エフェクターB細胞とハイブリダイズした。また、異なる表現型の細胞を分化転換させるために、同じ方法が使用され得る。
【0297】
5.1 初代培養されたCD54+T細胞とのハイブリダイゼーションによるCD4陽性T細胞へのHTS細胞の分化転換
HTS亜集団に由来するB細胞を、電気的な細胞ハイブリダイゼーションを介したCD54+T細胞への分化転換に使用した。詳細には、項目3.1.4に記載のHTS−KMW.5(単独のCD19+細胞)、項目3.2.3.3に記載のHTS−KBTAE.6(単独のCD19+細胞)、および項目3.2.3.5に記載のHTS−KBTDP.13(CD20+CD72+細胞)に由来する細胞を、この特定の実施例における分化転換に使用した。項目1.3.8に記載の通りに単離した、初代培養されたヒトCD54陽性T細胞を、CD54+T細胞の供給源として使用した。ハイブリダイゼーション手法は対応するHTSの作製のために使用された手法(項目3.1.2を参照)と本質的に同じであった。生じた混成体が安定した後に、それらを、標準的な培養条件の下に細胞株として維持し(項目1.1を参照)、項目1.3.3に記載の手法にしたがって表面マーカー発現について分析した。すべてのB細胞の亜集団は、それらのCD19+を消失して分化転換し、図24Aにおける代表的な例による証拠としてCD3+になった。それらをCD54発現についてさらに分析した。簡単に説明すると、項目1.3.8(CD54+T細胞の単離)に記載と同じ手法にしたがって、マウス抗ヒトCD54−FITC抗体およびマウス抗ヒトCD3−PE抗体を用いて、100μlの分取物につき1×105細胞を標識した。CD54について陽性の細胞の数は図24(B)に示されているように42〜85%の範囲であった。
【0298】
5.2 初代培養されたIg分泌B細胞とのハイブリダイゼーションによるCD陽性B細胞へのHTS細胞の分化転換
以下のHTS亜集団に由来するT細胞を免疫グロブリン(Ig)分泌細胞への分化転換に使用した。この目的のために、項目3.1.4に記載のHTS−KMW.6(単独のCD4+集団)、項目3.2.3.3に記載のHTS−KBTAE.4(単独のCD3+集団)、項目3.2.3.5に記載のHTS−KBTDP.4(CD4+CD8+集団)を使用した。項目1.4に記載の通りに単離した、CD40活性化の初代培養されたIgM陽性B細胞またはIgG陽性B細胞を、初代培養された分泌B細胞の供給源として使用した。電気的な細胞ハイブリダイゼーション手法は、項目3.1.2に記載されているような対応するHTSの作製に使用した手法と本質的に同じであった。生じた混成体が安定した後に、それらを、維持し、CD19、CD40および表面Igについて分析した。すべてのHTS亜集団はそれらのT細胞マーカー(CD3、CD4およびCD8)を消失して分化転換し、CD19、CD40およびsIgの陽性細胞になった。図25は、CD3発現の消失および表面IgMの獲得を示しているCD40活性化のIgM陽性B細胞とのハイブリダイゼーションの後における分化転換したCD3+HTS−KBTAE.4細胞の代表的な例を示している。
【0299】
B細胞に分化転換したT細胞培養物の上清を、IgMまたはIgGの存在について、上述のELISA(項目1.4を参照)によって分析した。細胞を、ウェルにつき1×105細胞において丸底の96ウェルプレートに播き、標準的な培養条件の下に24時間にわたって培養した。結果は表8にまとめられている。各値は3つの独立した測定の平均値±標準偏差として示されている。
【0300】
【表8】
【0301】
<実施例6>
6.環境条件の変化へのばくろを介した、HTS細胞に由来する成熟Bリンパ球の脱分化
項目4.3.1.1に記載されている通りにBリンパ球を促進する環境において培養され、HTS−WTM.1およびHTS−WTM.7に由来するCD19+細胞は、他のBリンパ球マーカーの発現について調べたとき、低い程度に成熟したB細胞種への脱分化の徴候(特にCD10発現の上方制御および表面IgG発現の下方制御)を示した(項目4.3.1.1)。これらの培養物において惹起された脱分化過程を確認するために、項目7.1に記載の造血性の幹細胞を促進する環境に細胞を置き、そのような培養の5日後に、初期の他のB細胞マーカー(例えば、Pax−5、λ様およびCD34)の転写物の存在について確認した。
【0302】
簡単に説明すると、RNeasyキット(RNeasy Mini kit、Qiagen)を用いて培養した細胞から総RNAを調製した。cDNAキット(Amersham Pharmacia)を用いて製造者の手順にしたがってcDNA合成を実施し、本質的にSewing et alによって説明されている通りにPCRを実施した。PCR反応混合物っをアガロースゲル(2%)電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。オリゴヌクレオチドのプライマー対は以下の配列を有していた:
ヒトβ2ミクログロブリン:センス、
54℃における5’ACCCCCACTGAAAAAGATGA3’(配列番号1)、およびアンチセンス、5’ATCTTCAAACCTCCATGATG3’(配列番号2);CD34:64℃におけるセンス、5’CTCTTCTGTCCAGTCACAGACC3’(配列番号3)、およびアンチセンス、5’GAATAGCTCTGGTGGCTTGCAA3’(配列番号4);CD10:65℃におけるセンス、5’CTGTGACAATGATCGCACTCTATG3’(配列番号5)、およびアンチセンス、5’GATTCCAGTGCATTCATAGTAATCTC3’(配列番号6);λ様:67℃におけるセンス、5’ATGCATGCGGCCGCGGCATGTGTTTGGCAGC3’(配列番号7)、およびアンチセンス、5’ATCCGCGGCCGCATCGATAGGTCACCGTCAAGATT3’(配列番号8);Pax−5:64℃におけるセンス、5’AGCAGGACAGGACATGGAGGA3’(配列番号9)、およびアンチセンス5’ATCCTGTTGATGGAACTGACGC3’(配列番号10);CD19:67℃におけるセンス、5’TCACCGTGGCAACCTGACCATG3’(配列番号11)、およびアンチセンス5’GAGACAGCACGTTCCCGTTACTG3’(配列番号12);VHコンセンサス−Cμ:60℃におけるセンス、5’GACACGGCCGTGTATTACTG3’(配列番号13)、およびアンチセンス、5’ATCCGCGGCCGCGGAATTCTCACACAGGAGAC-GA3’(配列番号14);Vkコンセンサス、:67℃におけるセンス、5*ATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTG3*(配列番号15)、およびアンチセンス5’ATGCGGCCGCGGGAAGATGAAGACAGATG3’(配列番号16)。
【0303】
図26は、HTS−WTM培養物が初期のB細胞の発達のための転写物(例えばPax−5およびλ様)の発現を、当該転写物を含んでいないHTS−WTM.1培養物と比べたとき、実際に示したことを示している。さらに、CD34がまた、HTS−WTM.7培養物において転写されている。この結果は、環境条件の変化に応じた、初期段階のB細胞への成熟CD19+細胞の脱分化を強く示唆している。
【0304】
<実施例7>
7.体細胞ハイブリダイゼーションを介した、HTS細胞に由来する異なる表現型の成熟細胞の脱分化
HTSのさらなる可塑性を証明するために、種々のHTS培養物に由来する、表現型について区別される亜集団を、初期の造血性幹細胞との体細胞ハイブリダイゼーションを介した脱分化に供した。CD34+の骨髄幹細胞を項目1.2.2に記載のように選択した。体細胞ハイブリダイゼーションのための実質的に同じ手順を、項目3.1.2に記載のように利用した。
【0305】
7.1 HTS細胞から分化転換したB細胞の脱分化
Bリンパ球を促進する環境において成長させたKBTAE.6およびKMW.5の培養物に由来するB細胞を、この特定の例に使用した。両方の培養物におけるすべての細胞の100%がCD19+陽性であるような純度について、培養物を選択した。Bリンパ球促進環境にさらした後のこれらの培養物のマーカー発現プロファイルは、表5にまとめられている(項目4.3.1.1を参照)。KMW.5はHTSの生成に使用された3つの細胞のすべてが不死化の表現型を有していた場合を代表しており、KBTAE.6は、不死化の骨髄性の前駆細胞、初代培養されたBリンパ球および初代培養されたTリンパ球に由来していた。骨髄に由来するCD34+幹細胞とのハイブリダイゼーションの後に、20ng/mlのヒトIL−6、300ng/mlのヒトSCF、100ng/mlのヒトfms様チロシンキナーゼ3リガンド(hFT3L)、20ng/mlのヒトトロンボポエチン(hTPO)、および60ng/mlのヒトIL−3を補った標準的な培養培地において、HTS培養物を成長させた。培養の1ヶ月間後に、CD34およびCD130、ならびに項目4.3.1.1に記載のBリンパ球関連マーカーの発現について、細胞の集団を分析した。骨髄からのCD34+細胞の単離について記載されている通りの同じ方法を利用して(項目1.2参照)、項目1.2.2に記載の同じマウス抗体ならびにマウス抗ヒトCD34−PEおよびマウス抗ヒトCD130−FITCを用いて、細胞を標識した。表9には、脱分化開始後における細胞のCDプロファイルがまとめられている。
【0306】
【表9】
【0307】
7.2 HTS細胞から分化転換したCD4+T細胞の脱分化
Tリンパ球を促進する環境において成長させたKMW.6の培養物に由来するCD4+細胞を、この特定の例に使用した。培養物におけるすべての細胞の100%がCD4+陽性であるような純度について、培養物を選択した。Tリンパ球を促進する環境にさらした後のこれらのHTS培養物のマーカー発現プロファイルは表2にまとめられている(項目4.1.1.1参照)。骨髄に由来するCD34+幹細胞とのハイブリダイゼーションの後に、造血幹細胞(HSC)の成長を促進する種々のサイトカインを補った標準的な培養培地において、HTS培養物を成長させた(項目7.1参照)。HSC環境における1ヶ月間の後に、CD34およびCD130、ならびに項目4.1.1.1に記載のCD4+T細胞関連マーカーの発現について、細胞を分析した。以下の表10には、脱分化したCD4+細胞の表面上におけるCD発現のプロファイルが示されている。
【0308】
【表10】
【0309】
7.3 HTS細胞から分化転換したCD8+T細胞の脱分化
細胞の大部分は、それらのCD4およびTCRの発現を消失し、CD25の発現について上方制御を受け、CD34の発現を獲得していた。
【0310】
Tリンパ球を促進する環境において成長させたKBTDP.12の培養物に由来するCD8+細胞を、この特定の例に使用した。培養物におけるすべての細胞の100%がCD8+陽性であるような純度について、培養物を選択した。Tリンパ球を促進する環境にさらした後のこれらのHTS培養物のマーカー発現が、表4にまとめられている(項目4.2.1.1参照)。骨髄に由来するCD34+幹細胞とのハイブリダイゼーションの後に、造血幹細胞(HSC)の成長を促進する種々のサイトカインを補った標準的な培養培地において、細胞を成長させた(項目7.1参照)。HSC環境における1ヵ月間の後に、CD34およびCD130、ならびに項目4.2.1.1に記載のCD8+細胞関連マーカーについて、細胞を分析した。以下の表11には、脱分化したCD8+細胞の表面上におけるCD発現のプロファイルがまとめられている。
【0311】
【表11】
ほとんどすべての細胞がそれらのCD8およびTCRの発現を消失し、CD34の発現を獲得していた。
【0312】
特定の例を参照して本発明について説明しているが、本明細書に記載の本発明の広範な原理および精神にしたがって、本発明は多くの他の形態として具体化され得ることが、当業者によって適切に理解されるであろう。
【0313】
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【図面の簡単な説明】
【0314】
【図1】同定し、分取−精製したCD71+K562細胞を示す図である。
【図2】CD15陽性およびCD71陽性のK562細胞のFACSプロファイルを示す図である。
【図3】培養物における48時間後の、CD34+について濃縮されたAMLの単球細胞からの、CD34陽性、およびCD34+およびCD34+CD15+の細胞の分取を示す図である。
【図4】マウス抗ヒトCD19抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイルを示す図である。
【図5】マウス抗ヒトCD3抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイルを示す図である。
【図6】マウス抗ヒトCD20抗体およびマウス抗ヒトCD72抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイルを示す図である。
【図7】CD3およびCD54について染色した扁桃腺の単球細胞の典型的なFACSプロファイルを示す図である。
【図8】IgMおよびIgG陽性の培養リンパ球の存在を示す図である。
【図9】HTS−KMW細胞についてのCD発現のFACSプロファイル、および異なる表現型の細胞集団についての分取領域を示す図である。
【図10】初代培養された混合した脾臓のリンパ球上におけるCD4およびCD19の発現、分取したCD4およびCD19の集団、ならびに生じたHTS−KBT細胞株を示す図である。
【図11】不死化した1つの骨髄性細胞、および抗原を経験した、初代培養された2つのリンパ球に由来するHTS−KBTAE上におけるCD19、CD3およびCD5の発現を示す図である。
【図12】不死化した1つの骨髄性細胞、および骨髄および胸腺に由来する初代培養された2つのリンパ球に由来するHTS−KBTDP細胞上におけるCD4、CD8、CD72およびCD20の表面発現を示す図である。
【図13】骨髄単球性の前駆細胞に由来するHTS−WTM細胞の表面上におけるCD発現を示す図である。
【図14】CD4表現型を促進する環境における8日後の、HTS−KMW.6、HTS−WTM.6およびHTS−.12の培養物におけるCD4、CD19およびCD15の代表的な染色プロファイルを示す図である。
【図15】HTS−KBTDP.12培養物におけるCD8、CD19およびCD15についての代表的な染色プロファイルを示す図である。
【図16】HTS−KBTAE.4培養物およびHTS−KBTDP.12培養物のうちCD8のみが陽性の細胞における、ヒトIL−2およびヒトIFN−γの細胞内産生を示す図である。
【図17】HTS−KBTAE.4培養物およびHTS−KBTDP.12培養物のうちCD8のみが陽性の細胞における、細胞内のパーフォリンおよびグランザイムAの典型的なプロファイルを示す図である。
【図18】Bリンパ球を促進する環境における7日後の、抗CD19抗体、抗CD4抗体および抗CD15抗体を用いたHTS−KBTAE.6培養物の典型的な染色を示す図である。
【図19】マクロファージを許容する成長培地における8日後のHTS培養物から生成された細胞の付着性の形態を示す図である。
【図20】マクロファージを許容する成長培地における8日後のHTS−WTM.4細胞上におけるCD19、CD15およびCD4発現のプロファイルを示す図である。
【図21】マクロファージを許容する成長培地における8時間後のHTS−WTM.4細胞の表面におけるマクロファージ様マーカーの発現を示す図である。
【図22】マクロファージを許容する成長培地における8時間後のHTS−WTM.4培養物に由来するCD64陽性のマクロファージによる1000nmの微粒子の食作用を示す図である。
【図23】マクロファージを許容する成長培地における8時間後のLPS刺激したHTS−WTM.4細胞による一酸化窒素の生成を示す図である。
【図24】初代培養されたCD54+のヒトT細胞を用いた体細胞ハイブリダイゼーションによってT細胞に分化転換されたHTS−KBTAE.6に由来するCD19+Bリンパ球によるCD3およびCD54発現の典型的なプロファイルを示す図である。
【図25】CD3発現の消失および表面IgGの獲得を示している、CD40活性化のIgM陽性のB細胞を用いた体細胞ハイブリダイゼーション後のCD3+HTS−KBTAE.4細胞の分化転換の代表的なプロファイルを示す図である。
【図26】HTS−WTM培養物1および7における初期B細胞の発生マーカーについてのRT−PCR転写物を示す図である。
【図27】単一細胞の操作/供給系を示す図である。
【図28】ガラスのマイクロピペットを示す図である。
【図29】微小電極を示す図である。
【図30】平行な2つの微小電極を示す図である。
【図31】組織培養プレートのウェルにおける2つの微小電極を示す図である。
【図32】2つの微小電極の中間にある3つの細胞の上面図である。
【図33】図32の側面図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、細胞の分化、特に表現型の可塑性を示すハイブリッド細胞、およびこれらの細胞を生成する方法に関する。また、本発明は、所望の表現型の特定の細胞を生成する方法に関する。さらに、本発明は、より初期の前駆状態への脱分化能を有しているハイブリッド細胞を生成する方法に関する。さらに、本発明は、例えば組織生成ための、種々の用途におけるハイブリッド細胞の使用を意図している。
【0002】
〔背景技術〕
本明細書の全体を通じての従来技術のあらゆる議論は、当該従来技術が広く公知であるか、または当該分野においてよく知られている一般的な知識の一部を形成していることの自認として決して見做されるべきではない。
【0003】
体細胞を再生する幹細胞の能力および幹細胞としての細胞区分の特異な可塑性に対する報告は、標的細胞の修復の実現性を広げている。造血性の幹細胞(HSC)は、自己再生能、および特定の微小環境にさらすことによって種々の特殊化された血液細胞型(系統(lineage))を生成する潜在性の両方を示す。異なる血液細胞の分化の過程(すなわち造血)は、発生プログラムが脊椎動物においてどのように確立され、実行されるのか、および血液形成の恒常性が白血病においてどのように変更されるのかを試験する有用なモデルをもたらす。最近の知見は、これがどのように実現されるのかを示すだけでなく、インビボにおける組織の幹細胞の非常な可塑性を示している。
【0004】
造血は、初めに未分化の前駆体(progenitor)を生じ、それから複数または単一の系統経路に下って分化する能力の変更をともなっている前駆体(precursor)を生じるHSCを用いて階層的な様式において通常、表される。特定の系統に拘束された細胞の可塑性を調べる研究によって、系統の転換の過程は形質転換および/または腫瘍遺伝子の発現を必要としたが見出されている。さらに、系統の転換についての証拠が認められたときに、系統の転換は小さい割合の細胞にのみ生じていると分かった(Klinken et al, Cell 53: 857-867, 1988; Graf et at, Blood 99: 3089-3101, 2002)。
【0005】
5−アザシスチジンを用いて処理したアベルソンウイルス性の形質転換したプレB細胞を用いた実験によって、マクロファージ様の特性(プラスティックに付着する能力、ならびに食作用およびエステラーゼ活性が挙げられる)を示す細胞の部分集合が生じた(Boyd et al, Nature 297:691-693, 1982)。より最近の実験によって、Bリンパ細胞株または前白血病骨髄B細胞系統における腫瘍遺伝子E−mycおよびv−rafの同時発現は、それらのマクロファージへの転換を導き得ることが証明されている。これらのトランスフェクトされたマクロファージ様細胞は、骨髄性単球の複数のマーカー(例えばコロニー刺激受容体1)を有しており、リゾチームを発現していたが、元の細胞の特徴(例えば免疫グロブリンの再構成)を保持していた。また、マクロファージへの変化に加えて、B細胞系統はmax遺伝子のトランスフェクションによって顆粒球への変化について報告された(Lindeman et al, Immunity 1: 517-527, 1994)。注目すべきことに、導入遺伝子を発現している細胞の非常にわずかな割合のみが実際に系統を転換しており、1つの系統から他の系統への変化は、完全に理解されていない複雑な過程であることを示している(Klinken et al, Cell 53: 857-867, 1988; Borzello et al, Mol. Cell Biol. 10:2703-2714, 1990)。
【0006】
造血性系統の可塑性を研究する代替の実験的な方法は、遺伝子ノックアウトマウスの生成に関していた。特に、Pax−5をノックアウトしたマウスに由来するB細胞系統は、プレB細胞の特性(例えば、CD19ではなく、B220、AA4.1、SL鎖およびc−Kit(低い)の発現)を示した。また、これらの細胞は、多能性の幹細胞の特性(例えば、インターロイキン7(IL−7)の存在下におけるストロマ細胞に対する継続的な自己再生、移植後の骨髄へのホーミング、ならびにインビボおよびインビトロの両方における造血細胞のほとんどの種類への分化能)を示した。異なるサイトカインまたは異なる成長因子の存在下において増殖させると、それらは異なる細胞の種類の範囲に分化した。例えば、IL−2を用いた処理によってナチュラルキラー細胞(NK細胞)への転換が生じ、CSF−1および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を用いた処理によって樹状細胞への転換を生じ、CSF−1を用いた処理によってマクロファージへの転換を生じ、IL−3、IL−6、幹細胞因子(SCF)および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を用いた処理によって好中球への転換を生じた(Nutt et al, Nature 401: 556-562, 1999)。
【0007】
可塑性がPax−5ノックアウトマウスに由来する細胞を用いて証明されると思われるが、野生型のマウスからのプレB細胞の培養物には疑問があるため、Pax−5ノックアウトのプレB細胞と類似の表現型を示す細胞は、野生型の動物にほとんど存在していない(Kee et al, Curr. Opin. Immunol. 13: 180-185, 2001)。
【0008】
リンパ系の共通前駆細胞(CLP)の可塑性を調べる、遺伝子導入マウスを用いた他の研究によって、IL−7の存在下においてストロマ細胞上で培養され場合にヒトIL−2受容体β鎖を遺書的に発現する遺伝子導入マウスの系統に由来するCLPはB細胞およびNK細胞に分化することが示された。IL−2が培養物に加えられた場合、それらは顆粒球およびマクロファージを形成した。しかし、これらの結果は、同じ条件下に成長させた対照CLPから再現され得なかった(Kondo et al, Nature 407: 383-386, 2000)。したがって、これらの研究の結果は、細胞の可塑性の誘導が拘束された細胞によって通常に発現されない遺伝子の発現を必要とすることを示唆していると考えられる。
【0009】
上述の実験において詳述された表現型の可塑性を示す細胞は、マウスのリンパ腫に由来するか、腫瘍遺伝子によって形質転換された細胞であるか、または変異によって変化したかのいずれかであった。通常のB細胞の可塑性に関するデータがわずかに存在している。一連の実験によって、IL−3、IL−6およびGM−CSFとともに培養した場合に、成体のマウスに由来するCD19陽性、DJ再構成陽性、およびB220陰性のB細胞の、接着性のマクロファージ様細胞への転換が説明された。しかし、NK細胞またはT細胞への転換は実現不可能であった(Montecino-Rodriguez et al, Nat. Immunol. 2: 83-88, 2001)。
【0010】
骨髄球系統からBリンパ球系統への逆転換についてごくわずかなデータが利用できる。試みられている実験は、E2A遺伝子、EBF遺伝子およびRAG遺伝子によってコードされている初期のBリンパ球系統に特異的な転写因子の強制的な発現について主に関していた。例えば、E2Aの強制的な発現は、細胞にそれらの吸着特性を失わさせ、Mac−1およびc−fmsの発現を下方制御させ、Bリンパ球系統に特異的な多くの遺伝子を誘導(ミトゲンに応じたκ鎖の形成能が挙げられる)させた(Kee et al, J. Exp. Med. 188: 699-713, 1998)。これらの細胞が完全なBリンパ球系統の表現型を獲得しなかったことは、E2A遺伝子、EBF遺伝子およびRAG遺伝子の発現の組合せが系統の特異化に十分ではなく、付加的な遺伝子が関与する必要があることを示唆している(Romanow et al, Mol. Cell 5: 343-353, 2000)。
【0011】
また、Tリンパ球系統およびマクロファージの間における起こり得る転換の例がある。胸腺のストロマ細胞株に由来する純化されたプロT細胞の部分集合は、条件培地において培養された場合に機能的なマクロファージを生成した。同じ転換は、IL−6、IL−7およびマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF;CSF−1)の存在下に認められたが、非常に低い頻度であった(Lee et al, J. Immunol. 166: 5964-5989, 2001)。
【0012】
最も説明がなされている分化転換は、ほぼ間違いなく、骨髄球−赤血球の区分内における可塑性である。この分野におけるほとんどの実験は、強制的な転写因子の発現に基づいている。1つの系統から他の系統への培養した細胞株の直接的な分化を可能にする最も再現性があり、予測可能な実験系は、Myb−Etsをコードしている白血球ウイルスによるトリの赤血球巨核球の前駆細胞の形質転換に基づいている。これらのE26−MEP細胞は、巨核球細胞および幹細胞の表面マーカー(例えば、MEP21/トロンボムチン/PCLP1およびGPIIaIIb/CD41(Graf et al, Cell 70:201-213, 1992; McNagny et al, J. Cell. Biol. 138:1395-14-7, 1997)、ならびにGATA−1およびFOG−1)の多くを発現しているが、骨髄性単核球の表面マーカーを発現しておらず、PU.1、C/EBPαおよびC/EBPβを発現していないか、または低レベルに発現している。v−Etsがこれらの細胞において不活性化される場合、それらは赤血球細胞に分化する(Golay et al, Cell 55: 1147-1158, 1987; Rossi et al, Curr. Biol. 6: 866-872, 1988)。代替的に、Mybの不活性化はこれらの細胞の血小板への分化を導く(Frampton et al, EMBO J. 14: 2866-2875, 1995)。レトロウイルス性の形質転換を介してか、またはタンパク質キナーゼC(PKC)の活性化によってras経路の腫瘍遺伝子の導入を通じて、細胞は拘束されて、シグナルの強度に依存して好酸球または骨髄芽球になる(Graf et al, Cell 70:201-213, 1992; Rossi et al, EMBO J. 15: 1894-1901, 1996)。
【0013】
多能性または分化状態の維持は、持続的な過程の結果であること、および単一(または少数)の核制御因子の活性化もしくは抑制は、分化、系統の転換、もしくは脱分化を導き得ることが広く知られている(Orkin, Nature Rev. Genet. 1: 57-64, 2000)。これに関連して、それらの発現において特定の系統に制限されている核の転写因子の研究は、それらが細胞の分化に対して固有の遺伝子発現プログラムを確立しているので、特に関心がもたれている。成長因子は、造血の維持、細胞の生存能力および増殖に重要であり、それらは経路の分化にとって必ずしも指導的ではない(Sokolovsky et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 6573-6575, 1998; Stoffel et al, Proc Natl. Acad. Sci. USA 96: 698-702, 1999)。
【0014】
系統分化の複雑さは、所定の因子が発現されている濃度またはレベルが系統の分化の方向に影響し得ることを示す研究によってさらに証明されている。特に、形質転換されたトリの前駆体の系(Kulessa et al, Genes Dev. 9: 1250-1262, 1995)において、系統の結果はGATA−1発現のレベルと相関した。低レベルにおいてそれは好酸球を生じ、高レベルにおいてそれは赤血球細胞および巨核球細胞を産生した。また最近、高レベルのPU.1がマクロファージの発生を支持し、低レベルにおいてB細胞が生成されることが見出されている(DeKoter et al, Science 288: 146-149, 2000)。
【0015】
また最近、HSCは組織の異なる種類に寄与する顕著な能力を有していることが明らかになっている。したがって、細胞の可塑性を制御する能力または導入する能力は、潜在的に多くの有用な用途を有している。例えば、FAHチロシナーゼ欠乏症の機能的な肝臓の再構成は、高度に純化されたHSCを用いることによって実現された。肝細胞は、内胚葉に由来しており、したがって中胚葉に由来するHSCは内胚葉性の派生物に転換する能力を有していると思われる(Lagasse et al, Nature Med. 6: 1229-1234, 2000)。他の一連の実験はHSCの非常に高い可塑性を指摘しており、これらの細胞の機能的な能力に関するデータは示されていないが、これによって、骨髄に由来する単一の幹細胞は多くの器官における種々の表皮組織に対する低レベルの寄与を証明している(Krause et al, Cell 105: 369-377, 2001)。濃縮された骨髄性の集団に由来する成体の幹細胞を用いた最近の実験によって、心筋梗塞の後に筋細胞を修復する能力がさらに示された(Orlic et al, Ann. NY Acad. Sci. 938: 221-230, 2001; Orlic et al, Nature 410: 701-705, 2001; Jackson et al, J. Clin. Invest. 107: 1395-1402, 2001)。
【0016】
以上において詳述した研究によって、細胞に可塑性を導入することの理解および可能性は、例えば組織再生における、潜在的に有用な用途を有していることが明らかに示されている。
【0017】
また、造血細胞はより初期の前駆状態に逆分化し得るか、または脱分化し得るという証拠が増えている。例えば、v−mybの温度感受性(ts)変異体によって形質転換されたトリの骨髄単球性の細胞は、未成熟な表現型を示し、許容性の温度において骨髄芽球と類似している。しかし、非許容性の温度において、それらは、食作用を示す吸着性のマクロファージ様細胞に移行し、分裂を中断する。低速度撮影の実験によって、許容性の温度に変化した後の2または3日以内に、この過程は芽細胞の形態を獲得し、細胞周期にふたたび入ることをともなって可逆性であったことが示された(Beug et al, Genes Dev. 1: 277-286, 1987)。
【0018】
環境の操作によって単一の細胞集団から機能的に分化した骨髄性細胞またはリンパ系細胞の生成を可能にする再生可能で安定なモデルが存在しないため、今のところ、分化転換を調べる研究の大部分は非ヒト細胞を用いてなされている。
【0019】
現在、造血系統内のすべての分化転換の研究は生体宿主への移植を必要とする非ヒトモデルにおいて実施されている。さらに、これらのモデル系は異なる系統に切り替わる高頻度の細胞について証明されておらず、したがってインビトロおよびインビボにおける研究の効率を制限している。最も注目すべきことに、これらのモデル(例えば、遺伝子導入動物から単離された細胞または人工的に形質転換された細胞)は、天然に存在していない細胞の表現型の使用をしばしば含んでいる。
【0020】
成熟エフェクター細胞の分化転換に関する利用可能なデータは限られているか、またはない。これは、B細胞、T細胞および骨髄性細胞の成熟した表現型のマーカー、特にCD19、CD4もしくはCD3、およびCD15といったマーカーを含んでいる細胞系または動物モデルが不足していることから生じている。Bリンパ球系統の分化転換をともなう実験の大部分は、成熟したCD19陽性細胞への転換について非常に低い頻度を有しているプレB細胞に関する。Bリンパ球系統および骨髄球、Tリンパ球および骨髄球の間における転換はわずかな成功を収めているが、Bリンパ球系統およびTリンパ球系統の間の転換は認められていない。
【0021】
従来技術の少なくとも1つの不都合の克服もしくは改善、または有用な代替物を提供することが本発明の目的である。
【0022】
〔発明の概要〕
多重の融合細胞は不安定であり、融合に関連する細胞が多いほど、生じるハイブリッド細胞の不安定性が増すことが一般的に認められている。意外にも、本発明において、いくつかの細胞(例えば、3つの細胞)の融合から生じるハイブリッド細胞は、機能的な安定性を示す。特に、異なる系統に由来する細胞は体細胞性に融合されるか、またはハイブリダイズされて、実質的に安定なキメラ/ハイブリッド細胞を形成し得ることを見出している。より詳細には、本発明は、三重のハイブリッドを生じる少なくとも3つの親細胞のハイブリダイゼーションに基づいて生成される系統交雑のキメラ/ハイブリッド細胞に関する。ここで、少なくとも2つの親細胞は、異なる系統に由来しており、骨髄腫細胞はハイブリダイゼーションに関わっていない。
【0023】
意外にもまた、本発明の安定なキメラ/ハイブリッド細胞は、所望の表現型(例えば、(複数の)所定の外来因子を用いた処理による所望の系統)の細胞に変化可能な表現型的可塑性を示すことを見出している。これらの因子としては、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンド、細胞(例えば、ストロマ細胞)またはこれらの組合せが挙げられ得る。
【0024】
細胞の表現型を変えるこれまでに公知の方法は、例えば腫瘍遺伝子発現の変更または形質転換動物からの細胞の単離による、細胞の形質転換を包含している。これらの方法は、技術的に複雑であり、細胞の表現型的可塑性の低いレベルを常にともなっている非能率的な結果をもたらす。さらに、これらの公知の方法は、ヒト細胞に対して容易に採用され得ない。
【0025】
本発明は、効率的な分化転換(trans-differentication)または脱分化を可能にする安定な細胞系を提供するという点について、これまでに公知の方法を超えて顕著な利点を提供する。さらに、本発明は、ヒト細胞の分化転換または脱分化を可能にする。
【0026】
一実施形態において、本発明は、細胞分化の過程(例えば血液細胞の分化(すなわち造血))を調べるための多用途の簡便なモデル系を提供することに関する。また、本発明は、遺伝的なプログラムが脊椎動物においてどのように確立され、実行されているのかを試験するための有用なモデルを提供することに関する。また、本発明は、細胞の悪性腫瘍化の機能(例えば、血液形成の恒常性がどのようにして白血病に変質されるのか)の理解をもたらすことに関する。
【0027】
また、代替的な実施形態において、本発明は、疾患の処置の用途(例えば、特定の細胞または組織の生成)に使用され得る表現型可塑性を発現する細胞の生成に関する。
【0028】
本発明は、分化過程のモデル系の研究の代わりを果たし得る。また、成熟した細胞から特定の細胞への分化能または脱分化能が好都合であり得る状況があり得る。例えば、ある患者は、分化経路におけるある点における変異に起因して特定の表現型を有している細胞を十分に産生する能力を欠いている。例えば、彼らは、プレB細胞を有し得るが、成熟B細胞を有し得ない。そのような患者からプレB細胞を単離すること、およびそれらをB細胞にすることは、役には立たない。しかし、変異のない、彼らの他の細胞種は本発明を用いてB細胞に分化転換され得る。
【0029】
ある実施形態において、本発明は、必要に応じてB細胞、T細胞または骨髄性単球細胞を生成可能な造血性分化転換系(HTS)の創出に関する。
【0030】
一実施形態において、細胞の可塑性を示す3種のハイブリッド細胞は、1つの骨髄単核性の前駆体(不死または初代培養(primary)のいずれか)、1つのB細胞(不死または初代培養のいずれか)、および1つのT細胞(不死または初代培養のいずれか)のハイブリダイゼーションによって生成され得る。ここで、上記ハイブリッド細胞は、ハイブリダイゼーションに使用したすべての細胞種に由来する特定のCDマーカー(例えば、CD15、CD19、CD4)を発現している。しかし、当業者は、本発明がこれらの特定のマーカーを発現するハイブリッド細胞に限定されないことを理解する。
【0031】
ある特定の実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は、例えば
1つの骨髄単球性の共通前駆体K562(CD72+CD15+)、1つの初代B細胞(CD19)、および1つのT細胞(CD4)−KBT;
1つの骨髄単球性の共通前駆体K562、不死のB細胞WIL2NS、および不死のT細胞MOLT−KMW;または
初代培養された骨髄CD34+CD15+細胞に由来する1つの骨髄単球性の共通前駆体、1つの不死のB細胞WIL2NSおよび初代培養された1つのT細胞−WTM
のハイブリダイゼーションによって生成され得る。
【0032】
特に好ましい実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は、種々の因子(例えば、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンド、ストロマ細胞といった細胞もしくはこれらの組合せ)にそれらをさらすこと、または所望の細胞種とさらにハイブリダイズすることのいずれかによって、必要に応じてB細胞、T細胞または骨髄単球性の細胞に分化され得る。他の実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は、他の細胞(例えば、例えばCD34を発現する前駆細胞、またはCD34を発現する細胞)とさらにハイブリダイズすることによって分化され得る。
【0033】
第1の局面によれば、本発明は、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供する。当該方法は、
未拘束(uncommitted)の前駆細胞に由来する細胞、または幹細胞である第1の細胞;
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第2の細胞;および
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第3の細胞をハイブリダイズして、ハイブリッド細胞を生成する工程、ならびに
当該ハイブリッド細胞が所定の表現型の上記細胞になる所定の環境に当該ハイブリッド細胞をさらす工程を包含している。
【0034】
一実施形態において、上記所定の表現型は、B細胞、T細胞または骨髄性細胞である。代替的な実施形態において、上記表現型は、例えばCD34、CD10、Pax−5またはλ様のうちの1つ以上の発現を包含している。
【0035】
ある実施形態において、上記第1の細胞は骨髄性の共通前駆細胞に由来し、上記第2の細胞はBリンパ球系統に由来する細胞であり、上記第3の細胞はTリンパ球系統に由来する細胞である。
【0036】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球であることが好ましい。したがって、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズする工程を包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0037】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示していることが好ましい。したがって、本発明は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示している骨髄性の共通前駆細胞、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0038】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は単球である。したがって、本発明は、単球、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0039】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は初代培養された骨髄単球性の前駆細胞である。したがって、本発明は、初代培養された骨髄単球性の前駆細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0040】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球から選択される不死化された細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0041】
他の実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来するものである。したがって、本発明は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来する骨髄性の共通前駆細胞、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0042】
他の実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞、またはエフェクターB細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞、またはエフェクターB細胞から選択されるBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0043】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞はプラズマ細胞または抗原を経験した(antigen-experienced)B細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、プラズマ細胞または抗原を経験したB細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0044】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示している。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示しているBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0045】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞、ならびにプレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞から選択されるTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0046】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示している。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞、ならびに以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示しているTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0047】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、不死化されたBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0048】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞、ならびに不死化されたTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0049】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、リンパ組織に由来するBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0050】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞、ならびにリンパ組織に由来するTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0051】
ここで、本発明の方法に包含されているBリンパ細胞またはTリンパ細胞はリンパ組織に由来するものである。当該リンパ組織は、末梢血、臍帯血、脾臓、骨髄、胸腺、扁桃腺、咽頭扁桃腺および領域リンパ節から好ましく選択される。
【0052】
一実施形態において、本発明の方法に包含されている細胞の少なくとも1つはヒト細胞である。また、本発明の方法はヒト細胞以外(例えばマウス細胞)の細胞を包含し得ることが明らかである。
【0053】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する細胞はK562細胞である。したがって、本発明は、K562細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。
【0054】
一実施形態において、上記第2の細胞または上記第3の細胞はそれぞれWIL2NSまたはMOLT5細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞、WIL2NS細胞およびTリンパ細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供することが明らかである。また、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞、Bリンパ細胞およびMOLT4細胞をハイブリダイズすることを包含している、所定の表現型の細胞を生成する方法を提供する。
【0055】
一実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞はMOLT4細胞である。
【0056】
他の実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞は初代培養されたB細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0057】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたヒト単球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0058】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたヒト骨髄単球性の前駆体であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたヒトT細胞である。
【0059】
他の実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0060】
さらなる実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたマウス単球であり、上記第2の細胞はSP2細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたマウスT細胞である。
【0061】
ある実施形態において、上記B細胞および上記T細胞はCD5を発現している、代替的な実施形態において、上記B細胞はCD20およびCD72を発現しており、上記T細胞はCD4およびCD8を発現している。
【0062】
ある実施形態において、本発明の方法によって生成された上記ハイブリッド細胞は他の細胞とさらにハイブリダイズされる。ここで、当該他の細胞は例えば、幹細胞または前駆細胞であり得る。
【0063】
ある実施形態において、上記所定の環境は、胸腺のストロマ細胞、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンドまたはこれらの組合せを包含している。したがって、本発明の方法は、上述のような3つの細胞:例えば
未拘束の前駆細胞に由来する第1の細胞;
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第2の細胞;および
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第3の細胞
をハイブリダイズして、ハイブリッド細胞を生成すること、ならびに当該ハイブリッド細胞が所定の表現型の細胞になるような胸腺のストロマ細胞、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンドまたはこれらの組合せに当該ハイブリッド細胞をさらすことを提供することが明らかである。
【0064】
ある実施形態において、上記所定の環境に包含されている上記サイトカインまたは成長因子は、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−1β、IL−7、IL−23、TGF−β、M−CSF、GM−CSF、およびIFN−γからなる群から選択される。
【0065】
ある実施形態において、上記免疫グロブリンは、抗IL−4、抗IFN−γおよび抗CD3/CD28からなる群から選択される。
【0066】
ある実施形態において、上記受容体リガンドはFit3リガンドまたはCD40である。
【0067】
ある局面において、本発明は、
未拘束の前駆細胞に由来する第1の細胞;
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第2の細胞;および
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第3の細胞
のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。ここで、上記第1の細胞は骨髄腫細胞ではない。
【0068】
一実施形態において、上記第2の細胞はBリンパ球系統に由来する細胞であり、上記第3の細胞はBリンパ球系統に由来する細胞である。
【0069】
他の実施形態において、上記第2の細胞はBリンパ球系統に由来する細胞であり、上記第3の細胞はTリンパ球系統に由来する細胞である。
【0070】
上記第1の細胞は骨髄性の共通前駆細胞に由来する細胞であることが好ましい。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、および2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞もしくは幹細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0071】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球であることが好ましい。したがって、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0072】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示していることが好ましい。したがって、本発明は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示している骨髄性の共通前駆細胞、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示している骨髄性の共通前駆細胞、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0073】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は単球である。したがって、本発明は、単球ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、単球、Bリンパ細胞ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0074】
他の実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は初代培養された骨髄単球性の前駆細胞である。したがって、本発明は、初代培養された骨髄単球性の前駆細胞、および2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、初代培養された骨髄単球性の前駆細胞、Bリンパ細胞、およびTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0075】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球から選択される不死化された細胞、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄単球性の前駆細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞または好塩基球から選択される不死化された細胞、Bリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0076】
他の実施形態において、骨髄性の共通前駆体細胞に由来する上記細胞は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来するものである。したがって、本発明は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来する骨髄性の共通前駆体細胞、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、脾臓、末梢血、臍帯血または骨髄に由来する骨髄性の共通前駆体細胞、Bリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0077】
他の実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞またはエフェクターB細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびにプレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞、またはエフェクターB細胞から選択される2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞またはエフェクターB細胞から選択されるBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0078】
一実施形態において、上記エフェクターB細胞はプラズマ細胞または抗原を経験したB細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびにプラズマ細胞または抗原を経験したB細胞から選択される2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、プラズマ細胞または抗原を経験したB細胞から選択されるBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0079】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示している。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびに以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示している2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示しているBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0080】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、、Bリンパ細胞、ならびにプレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞から選択されるTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0081】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示している。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、、Bリンパ細胞、ならびに以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示しているTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0082】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびに不死化された細胞の少なくとも1つであり得る2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、不死化されたBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0083】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、Bリンパ細胞、ならびに不死化されたTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0084】
一実施形態において、Bリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、ならびにリンパ組織に由来する2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。また、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、リンパ組織に由来するBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0085】
一実施形態において、Tリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆体細胞または幹細胞、Bリンパ細胞、ならびにリンパ組織に由来するTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0086】
ここで、本発明のハイブリッド細胞に含まれている上記Bリンパ細胞または上記Tリンパ細胞はリンパ組織に由来しており、当該リンパ組織は、末梢血、臍帯血、脾臓、骨髄、胸腺、扁桃腺、咽頭扁桃腺、および領域リンパ節から好ましく選択される。
【0087】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に包含されている上記細胞の少なくとも1つはヒト細胞である。また、本発明のハイブリッド細胞はヒト細胞以外の細胞(例えばマウス細胞)を包含し得ることが明らかである。
【0088】
一実施形態において、骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞はK562細胞である。したがって、本発明は、K562細胞、ならびに2つのBリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供することが明らかである。また、本発明は、K562細胞、不死化されたBリンパ細胞、ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0089】
一実施形態において、上記第2の細胞または上記第3の細胞はそれぞれWIL2NS細胞またはMOLT4細胞である。したがって、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞または幹細胞、WIL2NS細胞ならびにTリンパ細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供することが明らかである。また、本発明は、骨髄性の共通前駆細胞または幹細胞、Bリンパ細胞、ならびにMOLT4細胞のハイブリダイゼーションによって生成されたハイブリッド細胞を提供する。
【0090】
一実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞はMOLT4細胞である。
【0091】
他の実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞は初代培養されたB細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0092】
他の実施形態において、上記第1の細胞はヒト単球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0093】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたヒト骨髄性単球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0094】
他の実施形態において、上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である。
【0095】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養された単球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞はWIL2NS細胞である。
【0096】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養された単球であり、上記第2の細胞はSP2細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたマウス細胞である。
【0097】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたマウス単球であり、上記第2の細胞はSP2細胞であり、上記第3の細胞はSP2細胞である。
【0098】
他の実施形態において、上記第1の細胞は初代培養されたヒト単球またはマウス単球であり、上記第2の細胞はWIL2−NS細胞であり、上記第3の細胞はSP2細胞である。
【0099】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は所望のタンパク質を発現する。一実施形態において、上記タンパク質は外来性のタンパク質である。他の実施形態において、上記タンパク質は組換えタンパク質である。上記タンパク質はサイトカイン(すなわちコロニー刺激因子またはインターロイキン)であることが好ましい。一実施形態において、上記タンパク質はGM−CSFである。他の実施形態において、上記タンパク質はインターロイキン2である。さらに他の実施形態において、上記タンパク質は受容体またはそれらの断片である。さらに他の実施形態において、上記タンパク質は可溶性の受容体である。
【0100】
一実施形態において、上記タンパク質はヒトIL−4受容体α鎖である。他の実施形態において、上記タンパク質はIgMである。さらに他の実施形態において、上記タンパク質はIgGである。さらに他の実施形態において、上記タンパク質はCD54である。
【0101】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に使用されるハイブリダイゼーションは電気的な手段によって実現される。他の実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に使用されるハイブリダイゼーションは化学的な手段によって実現される。
【0102】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は所望のタンパク質を発現している細胞とさらにハイブリダイズされる。
【0103】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に使用されるハイブリダイゼーションは3つの個々の細胞をハイブリダイズすることによって実施される。
【0104】
他の実施形態において、本発明のハイブリッド細胞の生成に使用されるハイブリダイゼーションは細胞の3つの集団を用いて実施される。ここで、各細胞集団は同一の細胞種または表現型を複数含んでいる。
【0105】
一実施形態において、本発明のハイブリッド細胞は、特定の細胞種を規定するマーカーに関して濃縮されて、タンパク質の発現が所望の翻訳後修飾または所望の機能性を示すことを可能にする。
【0106】
〔定義〕
本発明に照らして、「含んでいる(comprise)」および「含んでいる(comprising)」などは、それらの排他的な意味ではなく、「包含しているが、これに限定されない」というそれらの包括的な意味において解釈されるべきである。
【0107】
(ハイブリッド細胞)
ハイブリッド細胞は、2以上のゲノムに由来する構成要素を含んでいる細胞(接合体およびそれらの派生物以外)である。それは、例えば2以上の生物学的な細胞(親細胞)の、体細胞ハイブリダイゼーション(または全細胞ハイブリダイゼーション)から構築される細胞である。親細胞は、同じ系統(または種)または異なる系統(または種)のいずれかから入手され得る。同じ系統および種から生成されたハイブリッド細胞は自己ハイブリッド(auto-hybrid)と呼ばれ、一方、異なる系統のハイブリッド細胞は異種ハイブリッドと呼ばれる。
【0108】
(キメラ細胞)
キメラ細胞は、2以上の異なる種に由来するゲノムを有している、人工的に生成されたハイブリッド細胞である。
【0109】
(系統交雑のハイブリッド細胞)
系統交雑のハイブリッド細胞は、異なる細胞系統に由来する2以上の細胞に由来するゲノムを有している人工的に生成されたハイブリッド細胞である。造血細胞は2つの主な系統:リンパ球系(T細胞、B細胞およびNK細胞)ならびに骨髄系(単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球および好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)に分けられる。
【0110】
(トリハイブリッド細胞(tri-hybrid cell))
トリハイブリッド細胞は、3つの細胞に由来するゲノムを有している、人工的に生成されたハイブリッド細胞である。
【0111】
(安定な)
細胞に言及するときに、「安定な」という用語は、所定の成長パラメータもしくは生産パラメーターの一貫性を証明する細胞の能力、または増加する世代数に対して細胞株の生産特性の一貫性を意味する。安定な形質転換体に言及して用いられるとき、それは、比較的に一定のレベルにおいて導入遺伝子を、実質的に無期限に発現する細胞株を意味する。
【0112】
(体細胞ハイブリダイゼーション)
本明細書に照らして、「体細胞ハイブリダイゼーション」という用語は、細胞の原形質膜が良好に接触するよう誘導され、接触点において親細胞の原形質膜の可逆的な破壊が同時に誘導され、新たに形成された単一細胞の外膜の内部にそれぞれの親細胞の本体または細胞小器官が組み込まれるような方法において、単一の生細胞が2以上の二倍体(非生殖細胞)の細胞(親細胞)から生成される過程を指す。新たに形成された単一の細胞はハイブリダイズされた細胞またはハイブリッド細胞と呼ばれる。
【0113】
(幹細胞)
「幹細胞」という用語は、有糸分裂による分裂能および種々の異なる細胞型への分化能を有している特殊化していない細胞(unspecialised cell)を指す。幹細胞は、胚性幹細胞、臍帯に由来する「成熟な」幹細胞または成体に由来する幹細胞を包含し得る。幹細胞は、すべての細胞型に分化する無制限の能力を有している細胞、すなわち全能細胞を包含している。また、幹細胞は、特殊化した細胞(例えば、全能性、多能性、低能性(oligopotent)または単能性幹細胞)への分化能に制限されている細胞を包含し得る。
【0114】
(不死化された細胞)
「不死化された細胞」という用語は、無制限に成長する能力を有している細胞を指す。不死化された細胞はインビボの悪性腫瘍または胚に由来し得ることが明確であろう。代替的に、不死化された細胞は、無制限に成長する能力を誘導する処理を細胞に施すことによって入手し得る。これら処理は、例えば、インビトロの形質転換処理(例えばウイルス遺伝子の導入)を包含し得る。当該ウイルス遺伝子は、例えば、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、シミアンウイルス40(SV40) T抗原、アデノウイルス E1AおよびE1B、ならびにヒトパピローマウイルス(HPV) E6およびE7である。代替的に、不死化された細胞はテロメラーゼ逆転写酵素タンパク質(TERT)の発現または他の方法を経た細胞に由来し得る。また、不死化された細胞は、発癌遺伝子の発現が改変されている細胞に由来し得る。不死化された細胞は無制限に成長する能力を誘導する任意の処理(UV照射、または不死化の機構が不明である任意の形質転換を包含しているが、これらに限定されない)に由来し得る。
【0115】
(骨髄腫細胞)
「骨髄腫細胞」という用語は、プラズマ細胞の悪性腫瘍を指す。
【0116】
(ハイブリドーマ)
「ハイブリドーマ」という用語は、免疫化された動物の脾臓に由来するB細胞と、骨髄腫細胞とのハイブリダイゼーションによって生成される細胞を指す。ハイブリドーマはモノクローナル抗体の産生能を有している不死化された細胞である。
【0117】
(未拘束の前駆細胞)
「未拘束の前駆細胞」という用語は、任意の特定の系統に拘束されることなく、一部の種類の細胞にのみ分化し得るが、自己をもはや回復し得ない幹細胞の初期の子孫を指す。
【0118】
(骨髄性の共通前駆細胞)
骨髄性の共通前駆細胞は、骨髄系統に制限された造血幹細胞の子孫であり、巨核球/赤血球または顆粒球/マクロファージ前駆細胞のいずれかになり得るが、リンパ球系細胞になり得ない。
【0119】
(リンパ系の共通前駆細胞)
リンパ系の共通前駆細胞は、リンパ球系統に制限された造血幹細胞の子孫であり、B、T細胞およびナチュラルキラー細胞になり得るが、骨髄細胞になり得ない。
【0120】
(Bリンパ球系統に由来する細胞)
Bリンパ球系統に由来する細胞は、B細胞の任意の型になるB系統の分化の後の、リンパ系の共通前駆細胞に由来する任意の細胞である。
【0121】
(Tリンパ球系統に由来する細胞)
Tリンパ球系統由来の細胞は、T細胞の任意の型になるT系統の分化の後の、リンパ球共通前駆体に由来する任意の細胞である。
【0122】
(顆粒球−マクロファージ前駆細胞)
顆粒球−マクロファージ前駆細胞は、骨髄性の共通前駆細胞に由来しており、顆粒球および単球の系統に分化するが、巨核球および赤血球の系統には分化しない前駆細胞である。
【0123】
(巨核球−赤血球前駆細胞)
巨核球−赤血球前駆細胞は、骨髄性の共通前駆細胞に由来しており、巨核球および赤血球の系統に分化するが、顆粒球および単球の系統には分化しない前駆細胞である。
【0124】
(プレB細胞)
プレB細胞は、膜結合型IgMの重鎖が代替軽鎖と共に発現している段階において発達中のB細胞である。
【0125】
(未成熟なB細胞)
未成熟なB細胞は、抗体の位置の組換え段階においてVJがL鎖上に再構成され、VDJがH鎖上(IgM受容体の発現がみられる)に再構成される骨髄において発達中のB細胞を指す。
【0126】
(ナイーブB細胞)
ナイーブB細胞は、その表面の免疫グロブリンの無作為な遺伝子再構成を経て骨髄において分化し、成熟しているが、末梢において対応する抗原といまだに接触していない成熟B細胞である。
【0127】
(活性化B細胞)
T依存性の様式または非依存性の様式におけるクローン性増殖、およびプラズマ細胞への最終分化の組合せを生じるBCRを介した抗原認識を通じて、末梢において対応する抗原に接触した成熟B細胞型である。
【0128】
(エフェクターB細胞)
エフェクターB細胞は、特定の抗原に特異的な抗体および免疫系の他の細胞を機能させるために過剰のサイトカインを分泌する短期生存型のB細胞の一種である、抗体分泌プラズマ細胞としばしば同義である。
【0129】
(記憶B細胞)
記憶B細胞は、初期の免疫反応の間に接触した抗原に特異的である活性化B細胞から形成された長期生存型のB細胞であり、同じ抗原に対する2回目のばくろに続く迅速な応答が可能である。
【0130】
(プラズマ細胞)
プラズマ細胞は、最終的な有糸分裂後の短期生存型の免疫系の細胞であり、CD4+リンパ球(Th細胞)による刺激によってB細胞から分化し、大量の抗体を分泌する。
【0131】
(前T細胞)
前T細胞は、TCRのβ鎖が二重陰性(CD4−CD8−)のT細胞(CD3+)において発現しており、VbDbJbが揃いっている段階において発達中のT細胞である。
【0132】
(未成熟T細胞)
未成熟T細胞は、骨髄から胸腺に移動しているが、そのTCRの再構成もしくは自己の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子上に提示された自己ペプチドに対するTCR結合能についての選択が完了していないか、またはそれぞれMHCクラスIもしくはII分子に対する細胞のTCR特異性と正確に相互関係を示すTキラー系統もしくはTヘルパー系統への分化を経ていない発達中のT細胞である。系統分化は補助受容体分子であるCD8またはCD4の一方の発現を喪失することによって表現型として特徴付けられる。
【0133】
(ナイーブT細胞)
骨髄において分化し、そのTCRの再構成を伴う胸腺における中心的な選択のポジティブおよびネガティブな過程および補助受容体分子の1つの喪失を首尾よく経ているが、末梢において対応する抗原といまだに接触していない成熟T細胞。
【0134】
(活性化T細胞)
活性化T細胞は、抗原提示細胞上における主要組織適合遺伝子複合体ペプチド(ペプチド:MHCの複合体)およびB7ファミリーメンバーのそれぞれによる、細胞表面上のTCRおよびCD28の両方の結合を通して、抗原特異的なエフェクターT細胞になりつつあるT細胞である。
【0135】
(エフェクターT細胞)
エフェクターT細胞は、細胞に適切なペプチド:MHCの複合体を有している当該細胞との接触によって即座に応答可能な短期生存型のTリンパ球の一種である。
【0136】
〔図面の簡単な説明〕
図1.同定および分取−精製したCD71+K562細胞。
【0137】
図2.CD15陽性およびCD71陽性のK562細胞のFACSプロファイル;(a)元のCD71に関して濃縮されたK562細胞の集団の約18%がCD15について陽性(R1領域)であり、(b)培養物における2ヵ月後のCD15陽性のK562細胞の再分析。
【0138】
図3.培養物における48時間後の、CD34+に関して濃縮されたAMLの単球細胞からの、CD34陽性、およびCD34+およびCD34+CD15+の細胞の分取。
【0139】
図4.マウス抗ヒトCD19抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイル。
【0140】
図5.マウス抗ヒトCD3抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイル。
【0141】
図6.マウス抗ヒトCD20抗体およびマウス抗ヒトCD72抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイル。
【0142】
図7.CD3およびCD54について染色した扁桃腺の単球細胞の典型的なFACSプロファイル。
【0143】
図8.IgMおよびIgG陽性の培養リンパ球の存在;(A)5日後の培養物において、CD19+細胞の18%がIgM陽性であり、1%のみがその表面に検出可能なIgGを有しており、(B)1日後の、IgM陽性のリンパ球の割合がわずか2%まで減少し、IgG陽性の細胞の割合が15%まで増加した。
【0144】
図9.HTS−KMW細胞についてのCD発現のFACSプロファイル、および異なる表現型の細胞集団についての分取領域。
【0145】
図10.初代培養された混合した脾臓のリンパ球上におけるCD4およびCD19の発現、分取したCD4およびCD19の集団、ならびに生じたHTS−KBT細胞株;(a)初代培養された脾臓のリンパ球のCD4およびCD19の発現;(b)分取したCD19+細胞の純度のプロファイル(98.1%);(c)分取したCD4+細胞の純度のプロファイル(96.8%);(d)HTS−KBT細胞上におけるCD19およびCD4の共発現。HTS−KBT細胞集団の99%以上がB細胞およびT細胞の両方についてのマーカーを共発現している。
【0146】
図11.不死化した1つの骨髄性細胞、および抗原を経験した、初代培養された2つのリンパ球に由来するHTS−KBTAE上におけるCD19、CD3およびCD5の発現:(a)HTS−KBTAE細胞表面上におけるCD19およびCD5の発現;(b)HTS−KBTAE細胞上におけるCD3およびCD5の発現。
【0147】
図12.不死化した1つの骨髄性細胞、および骨髄および胸腺に由来する初代培養された2つのリンパ球に由来するHTS−KBTDP細胞上におけるCD4、CD8、CD72およびCD20の表面発現:(a)HTS−KBTDPの表面上におけるCD4およびCD8の発現;(b)HTS−KBTDPの表面上におけるCD4およびCD72の発現;(c)HTS−KBTDPの表面上におけるCD20およびCD8の発現。
【0148】
図13.骨髄単球性の前駆細胞に由来するHTS−WTM細胞の表面上におけるCD発現:(A)CD19、CD4およびCD15を用いた3色染色、(B)
骨髄単球性の前駆体に由来するCD34およびCD15、ならびにエフェクターT細胞に由来するCD4を用いた3色染色。
【0149】
図14.CD4表現型を促進する環境における8日後の、HTS−KMW.6、HTS−WTM.6およびHTS−.12の培養物におけるCD4、CD19およびCD15の代表的な染色プロファイル(ここで、100%の細胞がそれらの細胞表面におけるマーカーとしてCD4のみを保持していた(CD4のみが陽性の細胞))。図示していないが、HTS−KMW.1培養物において、単独のCD4+細胞は三重陽性のCD15+CD19+CD4+の細胞の100%のからなる開始集団のうち49%を示し、HTS−KBTにおいて、二重陽性のCD19+CD4+の集団の最初の100%のうち50%に達し、HTS−KBTAE.1において、三重陽性のCD3+CD19+CD5+の集団のうち100%のうち61%に達し、HTS−KBTAE.4において、CD3+細胞の100%のうち74%に達し、HTS−WTM.1において、三重陽性のCD15+CD19+CD4+の集団のうち82%に達し、HTS−WTM.7において、CD15+CD34+CD4+の表現型の三重陽性の集団の100%のうち71%に達した。
【0150】
図15.HTS−KBTDP.12培養物におけるCD8、CD19およびCD15についての代表的な染色プロファイル(ここで、CD8+を促進する環境へのばくろの14日後に100%の細胞がCD8について陽性に染色された)。図示していないが、KBTAE.1において、CD8のみが陽性の細胞の数は三重陽性のCD3+CD19+CD5+の集団の100%のうち53%に達し、KBTAE.4において、単独のCD3+の手段の100%のうち61%に達し、HTS KBTDP.1およびHTS KBTDP.4において、これらの数はCD4+CD8+CD20+CD72+およびCD4+CD8+CD20−CD72−の集団の100%のうち、それぞれ72%および86%であった。
【0151】
図16.HTS−KBTAE.4培養物(A)およびHTS−KBTDP.12培養物(B)のうちCD8のみが陽性の細胞における、ヒトIL−2およびヒトIFN−γの細胞内産生。両方の培養物は、IL−2、IFN−γまたは両方を産生する細胞を含んでおり、HTS−KBTDP.12培養物は広範囲のIL−2の産生レベルを有しており、一方でHTS−KBTAE.4培養物は広範囲のIFN−γ濃度を示した。
【0152】
図17.HTS−KBTAE.4培養物(A)およびHTS−KBTDP.12培養物(B)のうちCD8のみが陽性の細胞における、細胞内のパーフォリンおよびグランザイムAの典型的なプロファイル。
【0153】
図18.Bリンパ球を促進する環境における7日後の、抗CD19抗体、抗CD4抗体および抗CD15抗体を用いたHTS−KBTAE.6培養物の典型的な染色。
【0154】
図19.マクロファージを許容する成長培地における8日後のHTS培養物から生成された細胞の付着性の形態。
【0155】
図20.細胞の少ない割合がいまだにCD4について陽性であり、7%の細胞が骨髄性単球のCD15を保持しており、CD19の発現が完全に消失していることを示している、マクロファージを許容する成長培地における8日後のHTS−WTM.4細胞上におけるCD19、CD15およびCD4発現のプロファイル。
【0156】
図21.マクロファージを許容する成長培地における8時間後のHTS−WTM.4細胞の表面におけるマクロファージ様マーカーの発現。
【0157】
図22.マクロファージを許容する成長培地における8時間後のHTS−WTM.4培養物に由来するCD64陽性のマクロファージによる1000nmの微粒子の食作用。
【0158】
図23.マクロファージを許容する成長培地における8時間後のLPS刺激したHTS−WTM.4細胞による一酸化窒素の生成。
【0159】
図24.初代培養されたCD54+のヒトT細胞を用いた体細胞ハイブリダイゼーションによってT細胞に分化転換されたHTS−KBTAE.6に由来するCD19+Bリンパ球によるCD3およびCD54発現の典型的なプロファイル。
【0160】
図25.CD3発現の消失および表面IgGの獲得を示している、CD40活性化のIgM陽性のB細胞を用いた体細胞ハイブリダイゼーション後のCD3+HTS−KBTAE.4細胞の分化転換の代表的なプロファイル。
【0161】
図26.CD19+細胞の100%の同質な培養物から開始され、HTS−KMW.1と比べて脱分化の徴候を示しているHTS−WTM培養物1および7における初期B細胞の発生マーカーについてのRT−PCR転写物。両方のHTS−WTMにおけるCD10の上方制御およびるHTS−WTM.7におけるCD34の出現をともなう、Pax−5およびλ様転写物の存在は、環境条件の変化に応じた初期段階のB細胞への、成熟なB細胞の分化転換を示している。
【0162】
図27.単一細胞の操作/供給系。
【0163】
図28.ガラスのマイクロピペット。
【0164】
図29.微小電極。
【0165】
図30.平行な2つの微小電極。
【0166】
図31.組織培養プレートのウェルにおける2つの微小電極。
【0167】
図32.2つの微小電極の中間にある3つの細胞の上面図。
【0168】
図33.図32の側面図。
【0169】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照した以下の非限定的な例によってさらに説明される。
【0170】
<実施例1>
1.細胞の選択、細胞の操作、および単一細胞のクローニング
以下の実施例は、HTSの生成および所望のタンパク質の発現に用いる哺乳類細胞株および初代培養された細胞の、選択および単離(または分取)を包含している細胞の調製について記載している。特定の特性を有している細胞の単一集団を得るための特定の選択法の選択、または特定の表現型の細胞を単離するための特定の(複数の)マーカーの使用は、まったく限定的ではなく、むしろ暗示的である。他の細胞マーカーまたは分取の手順は、同様の結果を出すために用いられ得る。
【0171】
1.1.不死化したヒト細胞株からの細胞の選択
NaHCO3(JRH Biosciences)、20mMのHepes(Sigma)、4mMのL−グルタミン(Sigma)によって改変し、10%のウシ胎児血清FCS(JRH Biosciences)を補ったRPMI1640(Roswell Park Memorial Institute培地)を用いて、加湿した5%のCO2雰囲気の37℃のCO2インキュベーターにおいて、標準的な(通常の)条件下において、すべての不死の細胞株(下記を参照)を懸濁培養において成長させた。特に記載がない限り、本明細書に記載の組織培養培地(TC培地)は、本発明に関するすべての不死の細胞株、初代培養された癌細胞、初代培養された細胞培養および樹立したトリハイブリッド細胞株を培養するための標準培地である。一般的に、用いたすべての不死の細胞株、初代培養された癌細胞および初代培養された細胞を抗生物質のない環境において培養した。しかし、危険性の高いバクテリアおよび/または真菌による汚染の疑いがある場合、2%のアンピシリン(5000ユニット)/ストレプトマイシン(5mg)溶液(Sigma)を標準培地に加えた。
【0172】
本発明に使用されたヒトの細胞株は以下の通りである:
骨髄性の共通前駆体系統、K562(ヒトの慢性骨髄性白血病に由来する細胞株)、
Tリンパ球系統、MOLT4(ヒトのTリンパ芽球)および
Bリンパ球系統、WIL2NS(ヒトBTリンパ芽球)。
【0173】
1.1.1.単一細胞の供給系(single-cell delivering system)
細胞の単離または分取、細胞の操作および単一細胞のクローニングは、本発明を通して重要な工程である。ここには、我々は目的の単一細胞の操作および/またはクローニングのために確立した単一細胞の供給系について説明する。単一細胞の供給系(図27)は、ガラスのマイクロピペット、1mlのシリンジおよび1次元簡易操作装置(one-dimensional coarse manipulator)から主に構成される。図28は、目的の単一細胞を拾い上げるために用いられるガラスのL字型マイクロピペットを示す。このピペットを、ヘマトクリットキャピラリーチューブ(75ミリメートル(mm)の長さ、それぞれ1.5mmおよび1.10mmの外径および内径)から作製した。熱を用いることによって、チューブの一端を、約250〜300マイクロメートル(μm)の内径および約30μmの先端の壁厚を有している先端(1)が得られるように引っ張った。マイクロピペットの他端には手を加えなかった(2)。細胞供給系(図27)において、シリンジ(4)を簡易操作装置上に載せ、同様に簡易操作装置を磁気スタンド(16)に載せている。この系は、シリンジのピストン(6)がシリンジに対して前方または後方に非常にゆっくりと動かされ得るように機能する。目的の単一細胞を操作するために、柔軟性のある医療用品質のチューブ(3)を用いて、図に示されるようにシリンジをマイクロピペット(2)の手を加えていない端に接続しなければならない。この単一細胞の供給系は、任意の細胞操作の前に、70%のアルコールを用いて数回にわたって洗浄することによって殺菌し、最終的に、必要なあらゆる適切な組織培養培地または溶液によって気泡を含ずに満たされる必要がある。
【0174】
1.1.2.単一細胞のクローニング
各細胞株由来の細胞のクローンを単一細胞のクローニングによって樹立した。本発明において用いられる任意の生物学的な細胞(例えば、K562細胞株の細胞)の単一細胞のクローニングまたは操作の方法を以下に記載する。
【0175】
5μlのK562細胞の細胞懸濁液を、対数期においてその培養物から採取し、150μlのTC培地が入っている組織培養96ウェルプレート(TCプレート, Becton and DickinsonまたはBD)のウェルの中に入れた。このウェルを「細胞保存ウェル」と称した。このプレートを倒立顕微鏡(Axiovert 40C, Carl Zeiss)のXY顕微鏡ステージの上に置いた。単一細胞の操作/クローニング工程の前に、気泡を含んでいないTC培地によってマイクロピペット(図28)を完全に満たした。単一細胞の供給系(図27)のマイクロピペット、チューブおよびシリンジを、1次元簡易操作装置(5)(Narishege)の上に載せた。マイクロピペットの先端(1)を、顕微鏡の視野の中心に位置するように配置した。K562の単一細胞の操作およびクローニングのために、マイクロピペットを細胞保存ウェルの中へ挿入した。シリンジのピストンを吸い込む方向へ非常にゆっくりと動かすことによって、K562の単一細胞をマイクロピペットの中に入れた。マイクロピペットを細胞保存ウェルから引き出した。顕微鏡のステージを細胞保存ウェルから隣接したウェル(「クローニングウェル」と称する)へ横方向に動かし、その後マイクロピペットをこのクローニングウェルに挿入することによって、マイクロピペット中の単一細胞をマイクロピペットから静かに放出した。シリンジのピストンを放出する方向へ非常にゆっくりと動かすことによって、これを行った。細胞保存ウェルから単一細胞を採取し、この単一細胞をクローニングウェルに入れる工程を、TCプレートあたり60個の単一細胞クローンを得るまで複数回にわたって繰り返した。37℃、5%CO2において管理した加湿したインキュベーター(Thermoline Scientific)において、このクローニングプレートを10日間にわたってインキュベートした。インキュベーションの期間中、定期的に各クローニングウェル中の培地を新鮮なTC培地と交換した。各クローニングウェルからの各クローンの細胞増殖を24時間毎に記録した。インキュベーションの期間の終了時において、K562細胞のクローン数を決めた。増殖速度が最大であるクローンまたは細胞表面上に発現している目的のマーカー(例えば、K562細胞上におけるCD71トランスフェリン受容体)のレベルが最大であるクローンを、トリハイブリッドの生成またはさらなる実験のために選択した。
【0176】
1.1.3 CD71+細胞の分取
一例として、以下の方法は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いた、K562細胞株からの、骨髄単球性の系統のCD71陽性細胞の細胞選択および分取について説明する。
【0177】
この目的のために、2%のウシ血清アルブミンBSA(Sigma)を含んでいる100μlのリン酸緩衝溶液(Dulbeco PBS)に懸濁させた1×105個のK562細胞を、20μlの抗CD71(BD Pharmingen)に結合させたフィコエリスリン(PE)またはPEを結合させた同位体対照抗体IgG2a,κ(BD Pharmingen)のいずれかとともに、30分間にわたって、室温の暗所においてインキュベートした。インキュベーション混合物を1mlのPBSを用いて希釈し、染色した細胞を300gにおいて10分間にわたって遠心することによって回収した。1mlのPBSを用いてさらに洗浄した後、染色した細胞を1mlのPBSに懸濁して、直ちにFACS(BD FACSCalibur)を用いて分析した。図1はK562細胞株のCD71+細胞のプロファイルを示す。CD71+陽性細胞を絞り込み(gate)、分取した(図1a)。元のK562集団の約65%がCD71について陽性であった。さらなる実験のために、分取した細胞を300gにおいて10分間にわたって遠心分離し、1mlのPBSに懸濁させた。図1bにおいて示されるような純度分析のために、100mlの懸濁したCD71+の分取した細胞を回収した。99%の純度のCD71+の分取した細胞を得た。細胞分取の後、このK562細胞株のCD71+細胞をさらなる実験に用いたか、または標準的な培養条件下の培養に置き、CD71に関して濃縮されているK562細胞として特徴付けた。CD71に関して濃縮されているWIL2NSおよびCD71に関して濃縮されているMOLT4の培養を確立するために、同様の方法論を用いた。
【0178】
1.2 骨髄単球性の細胞の単離
骨髄単球性の前駆細胞は、不死化した骨髄単球性の任意の細胞株または初代培養された造血組織(例えば骨髄)に由来し得る。以下は、ヒトの骨髄細胞株K562および骨髄サンプルからの骨髄単球性の前駆細胞を単離する例である。
【0179】
1.2.1 CD71+K562培養物からの骨髄性単球細胞の選択
細胞のハイブリダイゼーション実験にとっての細胞の骨髄単球性の表現型を確認するために、CD71+K562細胞はFACS分析および続く分取を用いてCD15+細胞に関してさらに濃縮された。
【0180】
項目1.1.3に記載のCD71に関して濃縮された細胞を、PE抗ヒトCD71およびFITC抗ヒトCD15(BD Pharmingen)を用いて標識した。洗浄したCD71に関して濃縮された1×105のK562細胞を2%のBSAを含有している100μlのPBSに懸濁させ、抗ヒトCD71−PE抗体および抗ヒトCD15−FITC抗体、または陰性の同位体対照の抗体、またはFITCおよびPE標識した陰性の同位体対照の抗体のいずれかとともに、室温の暗所において30分間にわたってインキュベートした。1mlのPBSを用いてインキュベーション混合物を希釈し、染色した細胞を10分間にわたる300gにおける遠心分離によって回収した。1mlのPBSを用いた付加的な洗浄の後に、染色した細胞を1mlのPBSに懸濁させ、FACS Calibur(BD)を用いて直ちに分析した。
【0181】
典型的なFACSプロファイルを図2aに示す。培養物における5ヶ月の後に、CD−に関して濃縮されたK562細胞の99%はCD71について陽性を保持しており、約18%が表面にCD15を発現していた。CD71およびCD15の両方について陽性の細胞が絞り込まれ(図2a)、分取された。分取された細胞は10分間にわたる300gにおける遠心分離によって回収され、さらなる実験のために1mlのPBSに懸濁された。2ヶ月間の培養に続いて、分取された細胞はCD71およびCD15の共発現についてふたたび分析された(図2b)。その結果は、精製された細胞の約98%がCD71およびCD15の両方を保持していたことを示している。その表面にCD71およびCD15の両方をより初期に発現していた細胞のいくつかはそれらのCD15の発現を消失することが見出され(図2b)、K562細胞における骨髄単球性の系統に対する拘束が安定ではなく可逆的であることを示唆している。
【0182】
1.2.2 初代細胞からの未拘束の骨髄単球性の前駆細胞の選択
一例として、以下の方法は、急性骨髄性白血病(AML)の患者から得られた骨髄サンプルに由来する未拘束の細胞または骨髄性の細胞の選択について説明する。
【0183】
AMLの患者からの骨髄吸引物は説明および同意の後に得られた。実験の実施前にAMLであると明らかに診断されている患者からサンプルを取り出した。項目1.3.1に記載のように同じ密度勾配遠心分離手法を用いてAMLの単核細胞を単離し、FACSを用いてサンプルからCD34+細胞を分取するか、または単離した。
【0184】
上記において得られた単核細胞を染色するか、または標識するために、マウス抗ヒトCD34−PE抗原(BD Pharmingen)またはPE同位体対照抗体(BD Pharmingen)の10μlを、染色培地(PBS+5%のBSA)における1×106の単核細胞の所定の分取物の100μlに加えた。所定の分取物について、染色混合物を30分間にわたって氷上においてインキュベートした。10mlの氷冷した染色培地を細胞のペレットに加え、350gおよび4℃において7分間にわたって遠心分離した。上清を吸出し、それから同じ体積の氷冷した染色培地を加えたチューブを軽く叩くことによって細胞のペレットを再懸濁させた。染色した細胞を遠心分離し、もう一度、氷冷した染色培地において洗浄した。標識した細胞を染色培地に懸濁させ、FACSにかけた。CD34+細胞の集団について適切に分取するゲートを設定した後に、細胞の画分を回収した。CD34+細胞を、直ちに使用したか、または骨髄単球性の細胞に関する濃縮のために培養物として置かれた。
【0185】
集積培養のために、40×103の濃縮されたCD34+細胞を、合成細胞外マトリクスを用いてあらかじめ被覆された12ウェルのプレートに播いた。57mMのβ−メルカプトエタノール(Sigma)、1mMのヒドロコルチゾン、20ng/mlのヒトのインターロイキン−3(IL−3)および20ng/mlのヒトの顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を補った完全TC培地において細胞を広げた。培養の48時間後に、細胞をFACSを用いてCD15発現についてさらに選択した。
【0186】
細胞の蛍光染色のために、マウス抗ヒトCD15−FITC(BD Pharmingen)およびマウス抗ヒトCD34−PE(BD Pharmingen)を使用し、また、この項目の前半に記載した類似の細胞染色方法を採用した。FACSを用いて染色したサンプルを分析した。CD34およびCD15陽性の細胞集団(CD34+CD15+)およびCD34陽性およびCD15陰性の細胞集団(CD34+CD15−)について適切に分取するゲートを設定した後に、画分を回収した。
【0187】
培養の48時間後における、CD34+細胞およびCD34+AML細胞上のCD15発現についての典型的な発現プロファイルおよび分取するゲートを図3に示す。試験したAML単核細胞の約54%はCD15について陽性であり、CD34発現を維持しており、残りの細胞集団は骨髄単球系統に拘束されることなくCD34発現を維持していた。CD34+CD15+細胞を分化転換系を構築する実験に使用し、未拘束のCD34+細胞を脱分化実験に使用した。
【0188】
1.3 リンパ球の単離
分化転換系の確立のために、リンパ球を不死化した特定の細胞の任意の種類、または初代培養されたリンパ球のいずれかから誘導し得る。不死化されたWIL2NS細胞株およびMOLT4細胞株にそれぞれ由来するBリンパ球およびTリンパ球の調製は、項目1.1.3に記載されている。初代培養されたリンパ球は任意のリンパ組織(例えば、末梢血、臍帯血、脾臓、骨髄、胸腺、扁桃腺、咽頭扁桃腺および領域リンパ節)から単離され得る。第1の段階において、単核細胞を分離するためにすべてのリンパ組織を処理した。
【0189】
1.3.1.骨髄、末梢血または臍帯血からのヒトの単核細胞の単離
説明および同意の後に、末梢血のサンプルを健康な個人から収集した。各血液サンプルはヘパリン処理されたチューブ(Vacutainer, BD)に回収し、プールし、RPMI1640を用いて希釈した。
【0190】
骨髄生検を受け、血液異常のない正常な骨髄を有している患者から、ヒト骨髄の吸引物を得た。このサンプルをRPMI1640を用いて1:3の割合に希釈した。
【0191】
ヒト臍帯血のサンプルを、説明および同意の後、正常な満期経膣出産児から得た。乳児の出産および臍帯の結さつの後、胎盤の娩出の前に、各臍帯血をヘパリン処理した60mlのシリンジを用いて収集した。各サンプルをRPMI1640を用いて希釈した。
【0192】
末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄単核細胞(BMMC)および臍帯血単核細胞(UCBMC)をFicoll-Paque(Amersham Pharmacia)による密度遠心分離によって調製した。要約すると、20mlのシリンジに取り付けたカニューレチューブを用いて、10mlのFicoll-Paqueを20mlの細胞懸濁液の下に層化した。サンプルの細胞を4℃、1700rpm(700g)において、40分間にわたって遠心分離した。境界面にある細胞を回収し、50mlのRPMI1640、2000rpm(1000g)における10分間にわたる遠心によって洗浄した。上清を捨て、ペレット化した細胞を40mlのRPMI1640に再懸濁させ、1300rpm(400g)において10分間にわたって遠心分離した。赤血球および血小板を、それぞれ0.83%(wt/vol)のNH4Clを用いた溶解およびPBSを用いて1:2の割合に希釈したFicoll-Paqueによる2回目の遠心によって除去した。
【0193】
単離した単核細胞を、培養、またはFACSを介した細胞の特異的な画分への分析および分取に用いた。
【0194】
1.3.2.固形のリンパ組織からのヒト単核細胞の単離
以下の方法は、脾臓から単核細胞を単離するために本発明において使用された手法を説明する。同じ方法は、胸腺、扁桃腺または領域リンパ節から単核細胞を単離するために使用され得る。また、細胞の染色方法および分取方法が示されている。
【0195】
脾臓のサンプルを、国際的な倫理指針にしたがって、臓器移植ドナーから得た。脾臓細胞を単離するまでの間、約2×2×3cmの脾臓のブロックのそれぞれを、4℃のRPMI1640に保存した。シリンジのピストンを用いて無菌のふるいのメッシュに各ブロックを通して、小さい断片に切断した。それから、20U/mlのタイプVIIコラーゲナーゼ(Sigma)および20U/mlのDNase(Sigma)を用いて、室温の完全培地において30分間にわたって消化することによって、細胞を酵素的に分離した。10mMになるようEDTAを加えて、室温において5分間にわたって攪拌することによって、この細胞集団をさらに分離した。それから、酵素消化を停止させるために完全培地を用いて脾臓細胞を2回にわたって洗浄し、RPMI1640に再懸濁させた。これらの条件は非酵素的な分離工程と比べて表面分子の発現に影響を与えなかった(McIlroy et al 1995)。赤血球の除去を除いて、項目1.3.1に記載のように、密度勾配遠心分離によってこれらの脾臓細胞の懸濁液から脾臓の単核細胞を単離した。この脾臓の単核細胞をRPMI1640に再懸濁させ、細胞濃度を1mlあたり1×106に調節した。細胞の生存率は、トリパンブルー排除によって決定したところ、98%を超えていた。
【0196】
1.3.3.ヒトの脾臓および末梢血からの成熟B細胞およびヘルパーT細胞の単離
組織サンプルをまず、項目1.3.1および項目1.3.2に記載のように単核細胞集団を抽出するために処理した。次いで、蛍光細胞染色、続いて細胞分取を、単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。この細胞を、染色するまで標準的な培養条件(項目1.1参照)下に完全培地に懸濁させた。
【0197】
以下は、初代培養された細胞からのB細胞およびT細胞の染色および分取の例である。通常、B細胞およびヘルパーT細胞の選択はそれぞれCD19およびCD4の表面発現に基づいていた。
【0198】
要約すると、それぞれ10μlのマウス抗ヒトCD19−FITC結合抗体(BD Pharmingen)およびマウス抗ヒトCD4−PE結合抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照を、染色用培地(PBS+5%BSA)における単核細胞の100μlの分取物(1×105の細胞を含んでいる)に加えた。分取物の単核細胞集団のために、染色混合物を氷上で30分間にわたってインキュベートした。10mlの氷冷した染色用培地を染色混合物に加え、350g、4℃において7分間にわたって遠心分離した。上清を吸引し、次いで同じ容積の氷冷した染色用培地を加えたチューブを軽くたたくことによって細胞ペレットを再懸濁させ。染色した細胞を遠心分離し、氷冷した染色用培地において再び洗浄した。この工程を他の分取物に対して繰り返した。FACSを用いて染色した細胞を分析した。少なくとも20000の絞り込んだ結果を各サンプルに関して分析した。CD19陽性B細胞集団(CD19+CD4−)またはCD4陽性T細胞集団(CD4+CD19−)にとって適切な分取ゲートを設定し、画分を回収した。各画分のうち1mlを純度分析のために回収し、各画分の残りをさらなる実験のために完全培地に懸濁させた。
【0199】
適切なアダプターを備えているマイクロ遠心チューブに少数の細胞(≦5×105個)を直接分取した。分取の前に、補完したRPMI1640の少量(0.1から0.2ml)を回復チューブに加えて、分取したサンプルと混合させ、分取した細胞の生存性を向上させた。許容される回復した細胞の数が供給された分取の後、20μlの分取した細胞の各サンプルをその純度の変化を再分析するために染色用培地を用いて1:10に希釈した。許容可能な純度は≧95%であった。分取したサンプルの1mlにつき、20から40μlのFCSをさらに加え、続いて350g、4℃において7分間にわたって遠心分離した。次いで、細胞を標準的な組織培養培地に再懸濁させた。十分な細胞が利用可能であれば、収量を決定するためにその数を数えた。
【0200】
抗ヒトCD19−FITCおよび抗ヒトCD4−PEによって標識した脾臓のサンプルのFACSプロファイルを図01aに示し、分取したCD19+B細胞およびCD4+T細胞の純度分析のプロファイルを図10bおよび図10cに示す。画分における細胞の純度は、CD19+細胞については98%を超え、CD4+細胞については96%を超えた。
【0201】
末梢血由来のCD19+およびCD4+細胞についての分取および純度のプロファイルは基本的に脾臓のサンプル由来のものと同様であるが、わずかな数の各細胞集団を得たのみであった。
【0202】
1.3.4.ヒトの臍帯血からのCD5陽性の(抗原を経験した)B細胞およびCD5陰性の(ナイーブ)B細胞の単離
項目1.3.1に記載のように、単核細胞を臍帯血のサンプルから調製した。蛍光細胞染色、続く細胞分取を単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。この特定の例において、上述の方法(項目1.3.3)にしたがって、ヒトの臍帯血からのCD5陰性(ナイーブ)B細胞およびCD5陽性(抗原を経験した)B細胞の分取を、マウス抗ヒトCD5−FITC抗体(BD Pharmingen)、マウス抗ヒトCD19−PE抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照を用いて行った。
【0203】
FACSを用いて染色した細胞を分析した。少なくとも20000のゲートした結果を各サンプルについて分析した。CD5陰性B細胞集団(CD19+CD5−)またはCD5陽性B細胞集団(CD19+CD5+)にとって適切な分取ゲートを設定し、多数の画分を回収した。図4はマウス抗ヒトCD19およびマウス抗ヒトCD5を用いて染色したサンプルの典型的なプロファイルを示す。
【0204】
サンプル中のB細胞の割合は4から19.2%に及び、CD5+B細胞は移動した全リンパ球の0.8から7.2%に及んだ。
【0205】
1.3.5.ヒトの臍帯血からのCD5陽性の(抗原を経験した)T細胞およびCD5陰性の(ナイーブ)T細胞の単離
項目1.3.1の記載と同様の方法を用いて、単核細胞を臍帯血のサンプルから調製した。蛍光細胞染色、続いて細胞分取を単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。この特定の実施例において、上述した細胞の方法(項目1.3.3)にしたがって、ヒトの臍帯血からのCD5陽性(抗原を経験した)T細胞およびCD5陰性(ナイーブ)T細胞の分取を、マウス抗ヒトCD5−FITC抗体(BD Pharmingen)、マウス抗ヒトCD3−PE抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照を用いて行った。FACSを用いて染色した細胞を分析した。少なくとも20000の絞り込んだ結果を分析した。CD5陰性T細胞(CD3+CD5−)またはCD5陽性T細胞(CD3+CD5+)のいずれか一方を含んでいる画分を回収するために、分取ゲートを設定した。図5はマウス抗ヒトCD3抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色したサンプルの典型的なプロファイルを示す。
【0206】
分取した集団を回復および分析するために用いた実質的に同様の方法については、項目1.3.3に記載している。
【0207】
サンプルにおけるT細胞の割合は1.7から13.5%に及び、CD5+T細胞は移動した全リンパ球の0.4から1.3%に及んだ。
【0208】
1.3.6.骨髄性のヒト単核細胞の集団からの、初期B細胞、CD20およびCD72に基づいて活性化されて生じたB細胞の単離
上述の方法(項目1.3.1)を用いて、単核細胞を骨髄から抽出した。蛍光細胞染色に続く細胞分取を単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。活性化B細胞の染色および分取は、上記の項目1.3.3に記載されている。すなわち、10μlのマウス抗ヒトCD72−FITC抗体(BD Pharmingen)および20μlのマウス抗ヒトCD20−PE抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照(PEマウスIgG2b,κ抗体)を用いた。FACSを用いて染色した細胞を分析した。プレB細胞、休止B細胞、活性化B細胞、濾胞樹状細胞からなるCD20陽性集団(CD20+CD72−)、または初期B細胞(CD20−CD72+)もしくは活性化B細胞(CD20+CD72+)からなるCD72陽性細胞のいずれか一方を含んでいる画分を回収するために、分取ゲートを設定した。図6はマウス抗ヒトCD20およびマウス抗ヒトCD72抗体を用いて染色したサンプルの典型的なプロファイルを示す。
【0209】
項目1.3.3の記載と実質的に同様の方法を、分取した細胞を回復および分析するために用いた。
【0210】
代表的に、骨髄単核細胞集団の約10〜15%がCD20およびCD72の両方について陽性であり;細胞の9〜12%がCD20について陽性であるが、CD72について陰性であり;約8%がCD72のみについて陽性であった。
【0211】
1.3.7.磁気ビーズ分取による胸腺細胞の亜集団の単離
MACS CD4 Multisortキット(Miltenyi Biotec GmbH)を用いて、CD4−CD8−二重陰性の胸腺細胞、CD4+CD8+二重陽性の胸腺細胞、ならびにCD4+およびCD8+単独陽性の胸腺細胞の集団を、製造者の手順にしたがって分取した。要約すると、項目1.3.2の記載と同様の方法を用いて回収した胸腺細胞をCD4 Multisort CD4マイクロビーズと共に30分間にわたってインキュベートした。5mMのEDTAおよび0.5%のBSAを含んでいるPBSを用いて洗浄した後、標識した細胞を磁気カラムによって分離した。陽性として選択された胸腺細胞(磁気カラム上に保持された)はCD4+単独陽性およびCD4+CD8+二重陽性の細胞集団を含んでいた。一方、CD4が減少した細胞集団(カラムから逃れた)はCD8+単独陽性およびCD4−CD8−二重陰性の細胞を含んでいた。CD4陽性として選択された細胞集団からマイクロビーズを除去するために、MACS Multisort分離試薬と共に細胞をインキュベートした。20分後に消化を止め、細胞をCD8マイクロビーズによって30分間にわたって標識した。CD4+CD8+二重陽性の胸腺細胞を正の選択によって得た。一方、CD4+単独陽性細胞は細胞集団が枯渇したことがわかった。CD4の枯渇した細胞集団をCD8マイクロビーズと共に30分間にわたってインキュベートした。標識した細胞を磁気カラムにかけた後、CD8+単独陽性の細胞を、CD4−CD8−二重陰性の胸腺細胞から分離できた。4つの異なる胸腺細胞亜集団の純度をフローサイトメトリー解析によって評価した。許容される純度は95%より高いものである。
【0212】
1.3.8 ヒトの扁桃腺からのCD54+T細胞の単離
項目1.3.2に記載の方法を用いて、単核細胞をヒト扁桃腺から抽出した。蛍光細胞染色に続く細胞分取を単核細胞集団の単離から4時間以内に行った。CD54+T細胞(細胞間接着分子−1またはICAM−1)を単核扁桃細胞集団から抽出し、マウス抗ヒトCD3−PE抗体(BD Pharmingen)およびマウス抗ヒトCD54−FITC抗体(BD Pharmingen)または適切な同位体対照の使用は項目1.3.5に記載のような細胞染色/分取方法を用いて選択した。FACSを用いて染色した細胞を分析した。CD3+T細胞(すなわちCD3+CD54−細胞)または活性化CD54+T細胞(すなわちCD3+CD54+細胞)のいずれか一方を含んでいる画分を回収するために、分取ゲートを設定した。図7はマウス抗ヒトCD3案乳亜およびマウス抗ヒトCD54抗体を用いて染色したサンプルのFACSプロファイルを示す。CD3+細胞をHTSの生成のために用い、一方でCD54+活性化T細胞を発現実験のために用いた。
【0213】
その結果は、T細胞が扁桃腺から単離した単核細胞の大部分(82%)を構成しているが、9%のみがCD54+T細胞であることを示した。
【0214】
1.4.IgMおよびIgGを分泌しているヒトのリンパ球の生成および選択
マウス抗ヒトCD154抗体(BD Pharmingen)によって被覆した丸底96ウェルプレート(Corning)のウェルに、精製したB細胞(項目1.3.3参照)を3.75×105/mlにおいて播いた。10%の熱不活性化尿素−低IgG 胎児ウシ血清、FBS(Gibco/BRL)ならびに100U/mlのヒトインターロイキン4(IL−4)(R&D systems)および50ng/mlのヒトインターロイキン10(IL10)を補った(培養3日目の後に加えた)完全RPMI2640培地において、この細胞を培養した。培養物を2から3日毎に培養培地の半分を交換することによって新しく補給した。細胞生存率および細胞数を、血球計算板を用いて、トリパンブルー排除によって3回にわたって評価した。5日目および10日目において、培養したリンパ球を、回収し、PBSにおいて2回にわたって洗浄して、マウス抗ヒトCD19−PE抗体、マウス抗ヒトIgM−FITC抗体またはマウス抗ヒトIgG−FITC抗体(全てBD Pharmingen製)を用いたFACSによって分析した。すべての染色を、1×106の細胞あたり1μgの各抗体を用いて4℃において行った。すべての分析において、95%を超える細胞が同位体適合の陰性対照の染色にしたがったマーカーの組について二重陰性であった。死細胞および残骸を含んでいる領域を分析から排除した。すべての分析を5000から10000の生細胞を絞り込むことによって行った。
【0215】
培養したリンパ球におけるIgMおよびIgG陽性細胞の典型的なプロファイルを図8に示す。5日間の培養の後、CD19+細胞の18%がIgM陽性であり、わずか1%が表面上に検出可能なIgGを有していた。一方、10日後には、IgG陽性細胞の割合は15%まで増加したが、IgM陽性単球の割合はわずか2%まで減少した。適切なゲートを設定した後、IgM陽性およびIgG陽性な画分を分取した。
【0216】
培養物におけるIgMおよびIgGの濃度を96ウェルのELISAプレートおよびプラスチックに吸着させたヒトμ鎖およびγ鎖に対するヤギの親和性精製した抗体を用いた標準的なELISAによって決定した。結合した抗体をHRPを結合させたヒツジ抗ヒトIg抗体によって明確にした。すべての抗体はSigma製であった。ABTSを基質として用い、405nmにおける吸光度を測定した。表1は、5日後および10日後にBリンパ球の培養物において検出されたIgMおよびIgGのレベルを要約したものである。
【0217】
【表1】
IgMの生産は5日間の培養の後に低下した一方で、IgGの生産は増加した。
【0218】
<実施例2>
2.体細胞ハイブリダイゼーション
体細胞ハイブリダイゼーションの種々の方法が当該技術において周知である。これらとしては、例えば、センダイウイルスのような融合性(fusagenic)ウイルスを用いる生物学的方法(Kohler and Milstein, 1975)、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる化学的方法(Wojciezsyn, et al, 1983)、および電界を用いる電気的方法(Neil, and Zimmermann, 1993)が挙げられるが、これらに限られない。各方法は目的の細胞の原形質膜が可逆的に透過可能となり、ハイブリダイズすることを誘導し得るか、または引き起こし得る。
【0219】
上述した細胞ハイブリダイゼーション法とは関係なく、細胞ハイブリダイゼーションを達成するために、2つの不可欠な段階が原則として必要とされる。第一に、ハイブリダイズさせたい細胞の原形質膜を、良好に細胞膜と接触させる必要がある。第二に、接触点における原形質膜の可逆的な破壊が同時に誘導される必要がある。
【0220】
電気的な細胞ハイブリダイゼーション法に関して、目的の細胞を、適切なフィールド周波数を有している交流電界(AC電界)を用いて良好に細胞膜と接触させ、次いでAC電界と同時に短い電気パルスにさらしたときにハイブリダイズを誘導し得る。
【0221】
さらに詳しく述べると、電気的な細胞ハイブリダイゼーションは次の物理現象;誘電泳動(DEP)および原形質細胞膜の電気的な破壊を伴う。
【0222】
誘電泳動(Pohl,1978)は、生物学な細胞のような誘電体粒子が適切な溶液に懸濁され、適切な周波数の不均一なAC電界にさらされる場合に、その誘電体粒子の運動を説明する現象である。細胞の運動は、(i)例えば100mMのソルビトールに懸濁されているSp2細胞に対する0.5〜2.0メガヘルツ(MHz)のフィールド周波数における、誘電体粒子の転移または移動(Mahaworasilpa, 1992)、および(ii)例えば100mMのソルビトールに懸濁されているSp2細胞に対する2〜10キロヘルツ(kHz)のフィールド周波数における、誘電体粒子の回転(Mahaworasilpa, 1992)として説明され得ることがよく報告される。不均一電界は1対の電極(例えば、多数の配置において設計され得る電気的な円筒形の金属線)を横切る電界を印加することによって発生させ得る。最も広く用いられている配置は平行な電極配置(図30)である。不均一電界の存在において、DEPは誘電体粒子(すなわち生物細胞)を互いに引きつけさせ、同時に最も強い電界の領域に向かって移動させ得る。その結果、一続きの細胞(a chain or string of cells)を形成し、次は良好な細胞膜の接触を誘引する。細胞が適度に低い電気伝導度の溶液に懸濁されている場合に、細胞の引き合いは強く促進される。
【0223】
適切なハイブリダイゼーション溶液に懸濁されている細胞が適切なパルス振幅およびパルス幅を伴っている電気パルスにさらされる場合に、細胞膜の電気的な破壊が誘導され得る(Zimmermann, 1982)。様々なパルス幅、例えば1から200マイクロ秒(μ秒)の方形波パルスが、ハイブリダイズされる細胞のタイプに依存して広く用いられる。
【0224】
2.1.電気的な細胞ハイブリダイゼーション系
本発明のいくつかの実施形態において、電気的な細胞技術をトリハイブリッドのようなハイブリダイズされた細胞の生成に用い得る。
【0225】
2.1.1.細胞操作系
細胞ハイブリダイゼーションの前に目的の個々の細胞を増殖させるため、上述した単一細胞の増殖/供給系(項目1.1.1)を本発明を通じて用いた。
【0226】
2.1.2.微小電極
本発明において、2つのL字型の微小電極を用いた。図29は被覆されていない直径128μmのニッケル合金から作製した微小電極(7)を示す。微小電極の柄を、外径1.5mmのヘマトクリットキャピラリーチューブ(8)によって覆った。微小電極のL字型部(9および10)を、電極の水平な部分および垂直な部分の両方の表面の一致する領域が、培地または適切な溶液にさらされるように配置した(Mahaworasilpa, 1992)。細胞ハイブリダイゼーションの工程の前に、2つの微小電極を2つの微細マイクロマニピュレーター(fine micromanipulators)(各微小電極について1つずつ)の上に載せた。これらの微小電極を各電極の平行な電極配置が得られるような方法において設計した(図30)。各微細マイクロマニピュレーターを水圧によって駆動させし、0.5μmの精度の動きがX、YまたはZ方向において行えるようにした。
【0227】
2.1.3.細胞チャンバおよび構成
図31は標準的な96ウェル平底TCプレートのウェルにおける2つの平行な電極を示す。このウェルは本発明のいくつかの実施形態において、細胞ハイブリダイゼーションのチャンバーの役割を果たす。細胞ハイブリダイゼーションを行うため、微小電極を標準的な96ウェル組織培養プレートのウェル(12)に入っている適切な培地(11)に沈めた。図32および図33はそれぞれ、平行な電極配置の上面図および側面図を示す。ここでは、例えば、ハイブリダイズされるべくあらかじめ選択された3つの細胞をそれらが適切なAC電界の存在において一続きの細胞に整列するまたは形成することを誘導し得るようにおいて、平行な電極の間に置く。
【0228】
<実施例3>
3.電気的な細胞ハイブリダイゼーション法による造血性の分化転換系を確立する例
以下の項目は、異なる系統もしくは細胞型であるか、または同じ系統/もしくは細胞型であるが異なる表現型である、いずれかに由来する細胞のハイブリダイゼーションによって得た造血性の分化転換系(HTS)の生成の例を提供する。安定な各トリハイブリッドが親細胞の表現型の特性を同時に有していることを確認するために分析を行った。この確認は系統特異的な細胞表面マーカー、系統特異的なマーカーの細胞内発現、系統特異的なマーカーのRNA転写産物の存在、核型分類、および/または系統特異的なタンパク質の分泌の分析に基づいた。以下の例は分化転換系の最も典型的な表現型の特性について説明する。しかし、これらの例は、選択した特定のマーカーに限定されない。
【0229】
3.1.不死化された1つの骨髄単球性の前駆体、不死化された1つのリンパ球および不死化された1つのTリンパ球に由来するHTS − HTS−KMW
一例として、この種のHTSを、1つの不死化した骨髄単球性の前駆体K562細胞、不死化した1つのTリンパ球MOLT4細胞、および不死化した1つのBリンパ球WIL2NS細胞をハイブリダイズすることによって生成した。このようにして得られたHTSをHTS−KMW系と名付けた(続いてその識別番号を付与した)。HTS−KMWを確立する工程に関する以下の段階、溶液(ハイブリダイゼーション、培養および回復培地)および本発明に用いるパラメーターを以下に記載する。
【0230】
3.1.1.HTS−KMWのための細胞調製
K562、WIL2NS、およびMOLT4細胞株を我々の標準培地(項目1.1参照)において培養し、5%のCO2の37℃の加湿インキュベータにおいてインキュベートした。定法にしたがって、各細胞株を3日毎に継代した。細胞ハイブリダイゼーションの前に、最も速い増殖速度を有している細胞型の安定な各クローンを、項目1.1.2に記載の手順を用いて樹立した。いくつかの実験において、項目1.1.3に記載のように樹立したCD71+に関して濃縮されている細胞集団を用いた。また、いくつかの事例において、CD71+に関して濃縮されているK562集団のCD15+細胞(項目1.1.3)を用いた。
【0231】
3.1.2.HTS−KMWを確立するための細胞ハイブリダイゼーション手法
TC96ウェルプレートの少数のウェルを細胞ハイブリダイゼーションウェルとして用いた。各ウェルを約150μlのハイブリダイゼーション培地によって満たした。この培地は、240mMのソルビトール(Sigma)、2.0mMのKH2PO4(Sigma)、0.4mMのCaCl2(Sigma)、0.2mMのMg(C2H3O2)2(Sigma)および0.2mMのCa(C2H3O2)2(Sigma)を含んでおり、0.2%のウシ血清アルブミン、BSA(Sigma)によって補われていた。電気的な細胞ハイブリダイゼーションの前に、あらかじめ選択した細胞型の各クローンの細胞を一度ハイブリダイゼーション培地において数分間にわたって洗浄し、新鮮なハイブリダイゼーション培地を含んでいるウェルに移した。このウェルはプレハイブリダイゼーションウェルとして設計した。細胞ハイブリダイゼーションの工程の前に、選択した各クローンの単一の洗浄した細胞を項目1.1.1にしたがって、3つの細胞(選択した各クローンから1つずつ)のみを1対の同一の平行な電極(ウェルの底に沈めた(図33において示されるように))の間に置くように操作した。電極の距離は400マイクロメートル(すなわち400μm)において設定した。
【0232】
電気的な細胞ハイブリダイゼーションを実施するために、まず、0.8MHzの周波数および1メートルあたり約50〜60キロボルト(例えば50〜60kV/m)の場の強度を有している交流(AC)電界を、誘電泳動,DEPによって3つの細胞の互いにおける引き合いを誘導するまで、数秒間にわたって電極の間に印加し、一続きの細胞を形成させた。この工程は良好な細胞膜接触をこれら細胞に起こさせた。細胞をK562細胞が細胞の列の中央にあるような方法において配置した(図32または33参照)。次いで、3秒間隔の2回にわたる電気的方形波パルスをAC電界と同時に印加した。約170kV/mの強度および75マイクロ秒(例えば75μ秒)のパルス幅を伴う各パルスを用いた。2回目の方形波パルスの終了後、AC電界をさらに5秒間にわたって連続的に維持し、単一のトリハイブリダイズされた細胞への細胞ハイブリダイゼーションが得られた。本発明のいくつかの実施形態に関して、3つの細胞のハイブリダイゼーションは同時に起こり得ないことが観察された。すなわち、まず3つのうち2つの細胞のハイブリダイゼーションがしばしば起こり、続いて3つ目の細胞のハイブリダイゼーションが起こる。いくつかの事例において、3つの細胞の完全なハイブリダイゼーションを得るために、さらなる方形波パルスを必要とした。新しく生成したトリハイブリダイズされた分化転換細胞を次いで、ハイブリダイゼーションウェルから回復ウェルに移した。1つの回復ウェルはハイブリダイゼーションウェルの列と異なる列に位置していた。各回復ウェルは150μlの標準TC培地(項目1.1参照)を含んでいた。新しく樹立した各分化転換細胞を、回復ウェルあたり1つの分化転換細胞において、37℃、5%のCO2容量に制御された加湿インキュベーターにおいて数日間にわたってインキュベートした。大多数の分化転換トリハイブリッド細胞は細胞ハイブリダイゼーションの実施後36時間以内に分裂することがわかった。インキュベーション期間の終了時において、各回復ウェル中の培地を新鮮な標準培地と適切に交換した。このことは各分化転換トリハイブリッドのクローンの細胞増殖を刺激した。2または3日後、分裂している細胞または生き残っている細胞を各回復ウェルから同定し、標準的な24ウェルTCプレートのウェルに播き、1組の分化転換トリハイブリッドのクローンの基とした。各分化転換トリハイブリッドのクローンを、10ミリリットル(ml)の我々の標準培養培地(項目1.1参照)を入れた25cm2TCフラスコに移してさらなる分析のために適切に標識する前に、24ウェルプレートにおいてさらに1週間にわたって培養した。一群の安定な分化転換トリハイブリッド細胞を生成するために、電気的な細胞ハイブリダイゼーションの全工程および分化転換トリハイブリッドの回復の工程を複数回にわたって繰り返した。
【0233】
3.1.3.HTS−KMWの系統マーカーのプロファイル
確立されたHTS−KMW細胞株上の系統特異的なマーカーの共発現の確認の例が以下に示されている。
【0234】
HTS−KMW細胞株を通常の培養条件下において6ヶ月間にわたって樹立した後、HTS−KMW細胞集団を、骨髄系統、Bリンパ系統、およびTリンパ系統に特異的なCDマーカーの発現について分析した。
【0235】
次のCDマーカー:WIL2NS由来のCD19、K562由来のCD15およびMOLT4由来のCD4の共発現を確認するために、三色のFACS分析(tri-colour FACS analysis)を用いた。
【0236】
要約すると、5%のBSAを含んでいるPBSにおいて1×106/mlの濃度であるHTS−KMW細胞のうち100μlを、100μlのPBSに懸濁させ、0.5mg/100mlのマウス抗ヒトCD15−PerCP抗体、0.25mg/100mlのマウス抗ヒトCD4−PE抗体および1.0mg/100mlのマウス抗ヒトCD19−FITC抗体、または適切な同位体対照と共に、4℃において30分間にわたってインキュベートした。すべてのマウス抗ヒト抗体はBD Pharmingenから入手した。PBSを用いた十分な洗浄の後、標識した細胞をFACSCaliburフローサイトメーターおよびCellQuest Proソフトウェアを用いて分析した。
【0237】
図9はHTS−KMW細胞の典型的なFACSプロファイルを示す。HTS−KMW細胞は系統特異的な特性が不死化表現型に由来するが、骨髄が支配的である、混合表現型(mixed phenotypes)の異種の細胞集団を含んでいることを、このFACSプロファイルは示唆している。しかし、62%のHTS−KMW細胞が骨髄およびTリンパ球の表現型を共有し、28%のHTS−KMW細胞がTおよびBリンパ球の表現型を発現している。
【0238】
3.1.4.HTS−KMWからの、異なる表現型の集団の単離
HTS−KMW細胞は、異なる6つの表現型の集団、詳細には:(1)CD15+CD19+CD4+;(2)CD15+CD19+CD4−;(3)CD15+CD19−CD4+;(4)CD15−CD19+CD4+;(5)CD15−CD19+CD4−;(6)CD15−CD19−CD4+にさらに分取された。
【0239】
分取領域は図9に示されているように設定された。異なる細胞集団についての分取ゲートは、以下に規定されている通りであった:(1)CD15+CD19+CD4+の細胞集団を、HTS−KMW.1と命名し、R3およびR6の領域の両方にあるものをカウントし;(2)CD15+CD19+CD4−の細胞集団を、HTS−KMW.2と命名し、R5およびR2の領域の両方にあるものをカウントし;(3)CD15+CD19−CD4+の細胞集団を、HTS−KMW.3と命名し、R6およびR1の領域の両方にあるものをカウントし;(4)CD15−CD19+CD4+の細胞集団を、HTS−KMW.4と命名し、R4およびR3の領域の両方にあるものをカウントし;(5)CD15−CD19+CD4−の細胞集団を、HTS−KMW.5と命名し、R7およびR2の領域の両方にあるものをカウントし;(6)CD15−CD19−CD4+の細胞集団を、HTS−KMW.6と命名し、R4およびR1の領域の両方にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0240】
3.2.不死化された1つの骨髄単球性の前駆体、初代培養された1つのBリンパ球および初代培養された1つのTリンパ球に由来するHTS − HTS−KBT
一例として、この種のHTSを、K562細胞に由来する不死化した1つの骨髄細胞、初代培養された1つのヒトB細胞および初代培養された1つのヒトT細胞の体細胞ハイブリダイゼーションによって生成した。この種のHTSをHTS−KBTと名付け、その後ろに識別番号を付与した。
【0241】
3.2.1.HTS−KBTを確立するための細胞調製
HTS−KBTのトリハイブリッドの生成前のK562細胞の調製については、上述の通りである(項目1.1.3)。(i)脾臓、末梢血または臍帯血に由来する成熟B細胞(CD19+);骨髄に由来する初期B細胞(CD20−CD72+);骨髄に由来する活性化B細胞(CD20+CD72+);臍帯血に由来する、抗原を経験したB細胞(CD19+CD5+)、および(ii)脾臓および末梢血に由来するヘルパーT細胞(CD4+)、脾臓、末梢血、臍帯血および胸腺に由来する細胞傷害性T細胞(CD8+);臍帯血に由来する、抗原を経験したT細胞(CD3+CD5+);臍帯血に由来するCD3+T細胞;胸腺に由来する二重陽性のT細胞(CD4+CD8+)を含んでいるKBT系統交雑のトリハイブリッドの生成に用いた初代培養された細胞を実験において用いた。初代培養された種々のリンパ球の、種々のリンパ組織からの単離は、項目1.3に上述されている。
【0242】
3.2.2.HTS−KBTを確立する細胞ハイブリダイゼーション手法
HTS−KBTの確立のための細胞ハイブリダイゼーションの手順は、培地ならびにAC電界およびパルスを変更したことを除いて、HTS−KBTの確立のために用いたもの(項目3.1.2)と同様である。これらの実験において用いたハイブリダイゼーション培地は、230mMのソルビトール、1.8mMのKH2PO4、0.5mMのCaCl2、0.2mMのMg(C2H3O2)2および0.3mMのCa(C2H3O2)2を含んでおり、0.3%のBSAによって補われていた。0.5MHzおよび65〜75kV/mのAC電界を、それぞれ100μ秒のパルス幅および175〜185kV/mの強度を伴う3秒間隔における3回にわたる連続した方形波パルスと同時に印加した。3回目の方形波パルスの終了後、AC電界をさらに5秒間にわたって連続的に出力し、細胞のハイブリダイゼーションが系統交雑のトリハイブリッドを生成するという結果になった。
この新しく作り出した分化転換ハイブリッド細胞のインキュベーションおよびHTSトリハイブリッドの回復手順は、上述されている(項目3.1.2)。
【0243】
3.2.3.HTS−KBTの系統マーカーのプロファイル
確立されたHTS−KBT細胞上における系統特異的なマーカーの共発現の確認の例が以下に示されている。
【0244】
3.2.3.1 不死化された1つの骨髄性細胞、初代培養された1つの成熟Bリンパ球および初代培養された1つのエフェクターTヘルパー細胞から確立されているHTS−KBTのマーカープロファイル
HTS−KBT細胞株を、例えば、通常の培養条件下において数ヶ月間にわたって樹立した後、この細胞株を系統特異的なCDマーカーの発現について分析した。ハイブリダイゼーション前の細胞の調製(項目1.3.3)についての記載と同様の手順を用いて、HTS−KBT細胞株の細胞をマウス抗ヒトCD19およびCD4抗体を用いて標識した。図10(d)は、1つの不死の骨髄単球細胞および初代培養された2つの細胞から樹立したHTS−KBT細胞株のFACSプロファイル(CD19およびCD4標識)を示す。代表的に、このような安定な系統交雑のトリハイブリッドにおける99%を超える細胞が、親である初代培養された細胞と同様の密度を伴って、BおよびT細胞の両方に関するCDマーカーを発現していた。
【0245】
3.2.3.2 不死化された1つの骨髄性細胞、および抗原を経験した、初代培養された2つのリンパ球(B細胞およびT細胞)から確立されているHTS−KBTのマーカープロファイル
他の実施形態において、1つのK562細胞、抗原を経験した1つのB細胞および抗原を経験した1つのT細胞に由来するHTS−KBT細胞株を樹立した。HTS−KBTのこのバリアントをHTS−KBTAEと命名した。この細胞をFACSを用いてCD19、CD3およびCD5の共発現について分析した。
【0246】
要約すると、細胞ハイブリダイゼーション前の細胞の調製(項目1.3.3)と同様の手順を用いて、この細胞をマウス抗ヒトCD5−FITC抗体およびマウス抗ヒトCD19−PE抗体またはマウス抗ヒトCD4−PE抗体を用いて標識した。図12はこのようなHTS−KBTAE細胞株の細胞のFACSプロファイルを示す。この結果は、HTS−KBTAE細胞集団の5〜10%がCD5分子の細胞表面発現を維持する一方で、CD3または/およびCD19について陽性であることによって、その抗原ばくろの記憶を保持していたことを示す。また、CD5陰性細胞集団の少なくとも83%がB系統(CD19)およびT系統(CD3)マーカーの両方を共発現していた。
【0247】
3.2.3.3 HTS−KBTAEからの異なる表現型の集団の単離
HTS−KBTAE細胞は、異なる6つの表現型の集団、詳細には:(1)CD3+CD19+CD5+;(2)CD3+CD19+CD5−;(3)CD3+CD19−CD5+;(4)CD3+CD19−CD5−;(5)CD3−CD19+CD5+;(6)CD3−CD19+CD5−にさらに分取された。
【0248】
分取領域は図11に示されるように設定された。異なる細胞の集団についての分取ゲートは以下のように規定された:(1)CD3+CD19+CD5+の細胞の集団をとHTS−KBTAE.1と命名し、R2およびR4の領域の両方においてカウントし;(2)CD3+CD19+CD5−の細胞の集団をとHTS−KBTAE.2と命名し、R1およびR3の領域の両方においてカウントし;(3)CD3+CD19−CD5+の細胞の集団をとHTS−KBTAE.3と命名し、R2の領域にはなくR4の領域にあるものをカウントし;(4)CD3+CD19−CD5−の細胞の集団をとHTS−KBTAE.4と命名し、R1の領域にはなくR3の領域にあるものをカウントし;(5)CD3−CD19+CD5+の細胞の集団をとHTS−KBTAE.5と命名し、R4の領域になくR2の領域にあるものをカウントし;(6)CD3−CD19+CD5−の細胞の集団をとHTS−KBTAE.6と命名し、R3の領域になくR1の領域にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0249】
3.2.3.4 不死化された1つの骨髄性の細胞、活性化されたB細胞、および初代培養された二重陽性の未拘束のエフェクターT細胞から確立されているHTS−KBTのマーカープロファイル
他の実施形態において、1つのK562、胸腺から単離した1つのT細胞(CD4+CD8+について二重陽性)および骨髄から単離した1つの活性化B細胞(CD20+およびCD72+)の細胞ハイブリダイゼーションに由来するHTS−KBT細胞株を樹立した。HTS−KBTのこのバリアントを、HTS−KBTDPと命名した。この細胞を細胞表面上におけるCD4、CD8、CD20およびCD72の共発現について分析した。
【0250】
要約すると、初代培養されたリンパ球の単離(項目1.3)についての記載と同様の手順を用いて、HTS−KBTDP細胞を、(1)マウス抗ヒトCD4−PEおよびマウス抗ヒトCD72−FITC抗体の組合せ、(2)マウス抗ヒトCD20−PEおよびマウス抗ヒトCD8−FITC抗体の組合せ、または(3)マウス抗ヒトCD4−PEおよびマウス抗ヒトCD8−FITC抗体の組み合わせのいずれかを用いて標識した。図12はこのようなHTS−KBTDP細胞のFACSプロファイルを示す。
【0251】
この結果(図12参照)は、HTS−KBTDP細胞の99%がその表面上に二重陽性のT細胞由来のCD4またはCD8のいずれかを発現しており、66〜71%の細胞がCD4について陽性であり、88〜89%の細胞がCD8について陽性であった。これらの細胞の60%において、CD4およびCD8の発現は同時に起こっていた。二重陽性の胸腺細胞に由来するCD4について陽性であるが、61%の細胞が同様に骨髄の活性化B細胞に由来するCD72について陽性であった。しかし、HTS−KBTDP集団の94%がそれらの表面上にCD72を発現していた。一方、CD8陽性細胞の31%がCD20を共発現していた。CD20陽性細胞の総数は39%であった。
【0252】
3.2.3.5 HTS−KBTDPからの異なる表現型の集団の単離
HTS−KBTDP細胞は、異なる15の表現型の集団、詳細には:(1)CD4+CD8+CD20+CD72+;(2)CD4+CD8+CD20+CD72−;(3)CD4+CD8+CD20−CD72+;(4)CD4+CD8+CD20−CD72−;(5)CD4+CD8−CD20+CD72+;(6)CD4+CD8−CD20+CD72−;(7)CD4+CD8−CD20−CD72+;(8)CD4+CD8−CD20−CD72−;(9)CD4−CD8+CD20+CD72+;(10)CD4−CD8+CD20+CD72−;(11)CD4−CD8+CD20−CD72+;(12)CD4+CD8+CD20−CD72−;(13)CD4−CD8−CD20+CD72+;(14)CD4−CD8−CD20+CD72−;(15)CD4−CD8−CD20−CD72+にさらに分取された。
【0253】
分取領域は図12に示されるように設定された。異なる細胞の集団についての分取ゲートは以下のように規定された:(1)CD4+CD8+CD20+CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.1と命名し、R2、R5およびR8のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(2)CD4+CD8+CD20+CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.2と命名し、R2、R8およびR4のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(3)CD4+CD8+CD20−CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.3と命名し、R2、R5およびR9のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(4)CD4+CD8+CD20−CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.4と命名し、R2、R4およびR9のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(5)CD4+CD8−CD20+CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.5と命名し、R1、R5およびR7のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(6)CD4+CD8−CD20+CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.6と命名し、R1、R4およびR7のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(7)CD4+CD8−CD20−CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.7と命名し、R1、R5およびR12のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(8)CD4+CD8−CD20−CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.8と命名し、R1、R4およびR12のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(9)CD4−CD8+CD20+CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.9と命名し、R3、R6およびR8のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(10)CD4−CD8+CD20+CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.10と命名し、R3、R11およびR8のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(11)CD4−CD8+CD20−CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.11と命名し、R3、R6およびR9のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(12)CD4+CD8+CD20−CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.12と命名し、R3、R11およびR9のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(13)CD4−CD8−CD20+CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.13と命名し、R10、R6およびR7のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(14)CD4−CD8−CD20+CD72−の細胞集団を、HTS−KBTDP.14と命名し、R10、R11およびR7のすべての3つの領域にあるものをカウントし;(15)CD4−CD8−CD20−CD72+の細胞集団を、HTS−KBTDP.15と命名し、R10、R6およびR12のすべての3つの領域にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0254】
3.3 骨髄単球性の初代培養された前駆体、不死化されたBリンパ球および初代培養されたTリンパ球に由来するHTS − HTS−WTM
一例として、骨髄に由来する初代培養された1つの骨髄性の前駆体、WIL2NS細胞株に由来する不死化された1つのヒトB細胞、および初代培養されたヒトT細胞の体細胞ハイブリダイゼーションによって、この種のHTSを作製した。
【0255】
3.3.1.HTS−WTMを確立するための細胞調製
HTS−WTMの作製に使用したWIL2NSの調製については、項目1.1.3にすでに記載されている。脾臓、末梢血、臍帯血および胸腺に由来するヘルパーT細胞(CD4+)の初代培養された細胞をこれらの実験に使用した。初代培養された種々のリンパ球の、種々のリンパ組織からの単離についてはすでに記載されている(項目1.3)。初代培養された骨髄性の前駆細胞は項目1.2.2に記載されているCD34+CD15+骨髄単核球に由来する。
【0256】
3.3.2.HTS−WTMを確立するための細胞ハイブリダイゼーション手法
HTS−WTMの生成のための細胞ハイブリダイゼーションの手順は、培地を変更したことを除いて、HTS−WTMの生成のために用いたもの(項目3.1.2参照)と同様であった。これらの実験において用いたハイブリダイゼーションの培地は、235mMのソルビトール、1.8mMのKH2PO4、0.5mMのCaCl2、0.3mMのMg(C2H3O2)2および0.25mMのCa(C2H3O2)2(Sigma)を含んでおり、0.3%のBSAによって補われていた。項目3.2.2の記載とまったく同じ電気的な手順をWTMの生成のために用いた。この新しく作り出した各分化転換ハイブリッド細胞のインキュベーションおよびHTSトリハイブリッド回復の手順については、項目3.1.2に記載されている。
【0257】
3.3.3.HTS−WTMの系統マーカーのプロファイル
確立されたHTS−WTM細胞上における系統特異的なマーカーの共発現の確認の例が以下に示されている。
【0258】
3.3.3.1 初代培養された骨髄性の1つの前駆体、不死化された1つのリンパ球および初代培養された1つのT細胞から確立されたHTS−WTMのマーカープロファイル
WIL2NS細胞株に由来する不死化された1つのBリンパ球、初代培養された1つのT細胞、および1つの骨髄単球性の前駆体の細胞ハイブリダイゼーションに由来するHTS−WTM細胞株を通常の条件の下(項目1.1を参照)に6ヶ月間にわたって培養した後に、HTS−WTM細胞の集団を系統特異的なCDマーカーの発現について分析した。CD19(B系統)、CD4(T系統)、CD15(骨髄系統)およびCD34(前駆細胞)に関する表面マーカーの発現を分析した。要約すると、マウス抗ヒトCD19−PE抗体、マウス抗ヒトCD4−FITC抗体(BD Pharmingen)およびマウス抗ヒトCD15PerCP抗体の組合せ、またはマウス抗ヒトCD34−PE抗体、マウス抗ヒトCD4−FITC抗体およびマウス抗ヒトCD15−PerCP抗体の組合せを用いて、このHTS−WTM細胞株の細胞を標識した。上述の手法(項目1.3.3)にしたがって細胞の染色を実施した。CD34+CD15+骨髄単球性の前駆細胞に由来するHTS−WTM細胞の典型的な発現プロファイルが図13に示されている。HTS−WTMの約81%はB系統および骨髄単球性の表現型を共有しており(CD34+CD15+)、またCD4+細胞の34%はそれらの表面にCD34を維持しており、CD34+細胞の68%はCD15を発現していることが分析によって示された。興味深いことに、CD34およびCD15が同じ起源(骨髄単球性の前駆細胞)に由来するにもかかわらず、CD34+細胞の28%はCD15の発現を維持していない。
【0259】
3.3.3.2 HTS−WTMからの異なる表現型の集団の単離
HTS−WTM細胞は、異なる6つの表現型の集団、詳細には:CD15、CD19およびCD4の発現に基づいて、(1)CD15+CD19+CD4+;(2)CD15−CD19−CD4−;(3)CD15+CD19−CD4+;(4)CD15−CD19+CD4+;(5)CD15−CD19+CD4−;(6)CD15−CD19−CD4+;またはCD15、CD34およびCD4の発現に基づいて、(7)CD15+CD34+CD4+;(8)CD15+CD34+CD4−;(9)CD15+CD34−CD4+;(10)CD15−CD34+CD4+;(11)CD15−CD34+CD4−;(12)CD15−CD34−CD4+にさらに分取された。
【0260】
分取領域を図13(A)および13(B)に示されるように設定した。CD15、CD19およびCD4の発現に基づく異なる細胞の集団についての分取ゲートは以下のように規定された:(1)CD15+CD19+CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.1と命名し、R3およびR6の両方の領域にあるものをカウントし;(2)CD15−CD19−CD4−の細胞集団を、HTS−WTM.2と命名し、R6およびR1の両方の領域にあるものをカウントし;(3)CD15+CD19−CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.3と命名し、R5およびR3の両方の領域にあるものをカウントし;(4)CD15−CD19+CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.4と命名し、R1、R2およびR3の領域にはなくR5の領域にあるものをカウントし;(5)CD15−CD19+CD4−の細胞集団を、HTS−WTM.5と命名し、R5およびR6のの領域にはなくR4の領域にあるものをカウントし;(6)CD15−CD19−CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.6と命名し、R4、R5およびR6の領域にはなくR2の領域にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0261】
図13BはCD15、CD34およびCD4の発現に基づく異なる細胞集団についての分取ゲートを示している。上記ゲートは以下のように規定された:(7)CD15+CD34+CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.7と命名し、R3およびR6の両方の領域にあるものをカウントし;(8)CD15+CD34+CD4−の細胞集団を、HTS−WTM.8と命名し、R1およびR6の両方の領域にあるものをカウントし;(9)CD15+CD34−CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.9と命名し、R2およびR5の両方の領域にあるものをカウントし;(10)CD15−CD34+CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.10と命名し、R3およびR4の両方の領域にあるものをカウントし;(11)CD15−CD34+CD4−の細胞集団を、HTS−WTM.11と命名し、R1およびR4の両方の領域にあるものをカウントし;(12)CD15−CD34−CD4+の細胞集団を、HTS−WTM.12と命名し、R2の領域にはなくR4、R5およびR6の領域にはなくR2の領域にあるものをカウントした。分取された細胞の集団を新たな培養培地に移し、通常の培養条件の下に別の培養物として成長させた。細胞の各集団の純度は、分取の直後に許容される98%の純度を有していることが確認された。
【0262】
<実施例4>
4.環境条件の変化による異なる細胞表現型へのHTS細胞の分化転換
この実施例は、細胞系統に許容性の環境または細胞系統を促進する環境への所定のHTS細胞のばくろを通じた、異なる表現型への細胞の分化転換の実現可能なモデルのいくつかを示している。
【0263】
4.1.CD4+T細胞へのHTS細胞の分化転換
以下の亜集団:HTS−KMW.1、HTS−KMW.6、HTS−KBT、HTS−KBTAE.1、HTS−KBTAE.4、HTS−WTM.1、HTS−WTM.6、HTS−WTM.7およびHTS−WTM.12に由来しており、項目3.1.4、項目3.2.3.1、項目3.2.3.3および項目3.3.3.2に記載されているように作製されたHTS細胞、ならびにK562細胞、WIL2NS細胞およびMOLT4細胞の対照培養物を新たな培養培地に移し、細胞の濃度を1mlにつき250000細胞または500000細胞に調整した。10U/mlのヒトIL−2(BD Biosciences)、1ng/mLのヒトIL−1β(BD Biosciences)、10ng/mlのヒトIL−23(R&D Systems)、1μg/mlの抗IL−4、1μg/mlの抗IFN−γおよび細胞につき1ビーズの割合の抗CD3/CD28活性化ビーズ(Invitrogen)を細胞培養物に補い、U底の96ウェルプレート(Corning)に、ウェルにつき200μlにおいて播いた。0.1、1および10ng/mlにおける増加する濃度のTGF−βを一連の4つのウェルに加えた。3日目および5日目に培養培地を、すべてのサイトカインおよび抗体を含んでいる新たな培地に置き換えた。8日目に、抗CD4、抗CD19およびCD15を用いて細胞を、染色し、項目1.3.3に記載の通りにフローサイトメトリーによって分析した。染色の前に50ng/mlのPMA、500ng/mlのイオノマイシンおよび1倍のBD GoldgiStopを用いて5時間にわたって細胞を活性化した。
【0264】
それから、項目3.1.3に記載の通りにマウス抗ヒトCD4−PE抗体、マウス抗ヒトCD19−FITC抗体、マウス抗ヒトCD15−PerCP抗体を用いて、細胞を標識した。図14は、培養物におけるCD4、CD19およびCD15についての三重染色の代表的なプロファイルを示しており、ここで、CD4+細胞への分化っを誘導された後に100%の細胞が表面上にCD4のみを発現した。HTS−KMW.1培養物において、CD4+単独の細胞は、三重陽性の(CD15+CD19+CD4+)細胞の純粋な集団から開始された細胞集団の全体のうち49%に達した。CD4+単独の細胞は、HTS−KBTにおいて、最初の二重陽性の(CD19+CD4+)集団の100%うち50%に達し;HTS−KBTAE.1において、三重陽性の(CD3+CD19+CD5+)集団の100%のうち61%に達し;HTS−KBTAE.4において、最初のCD3+細胞の100%のうち74%に達し;HTS−WTM.1において、三重陽性の(CD15+CD19+CD4+)集団の100%のうち82%に達し;HTS−WTM.7における715が、CD15+CD34+CD4+表現型の三重陽性の集団から単独のCD4陽性の細胞になった。K562細胞、WIL2NS細胞およびMOLT4細胞の対照細胞は、変わらないそれらのマーカー発現プロファイルを維持した。
【0265】
4.1.1 HTSから生成されたCD4+T細胞の性質決定
CD4+T細胞に誘導されたHTS培養物から生成された単独陽性のCD4+細胞を、マーカー発現および機能的な性質決定のさらなる分析のために分取した。許容される純度はCD4+T細胞の全体集団の98%であった。
【0266】
4.1.1.1 HTSから生成されたCD4+細胞の表現型プロファイル
Tリンパ球許容性のHTS培養物に由来する単独陽性のCD4細胞を、CD4+T細胞の表面に限定的に発現されているか、またはCD8+T細胞の機能にとって重要な、細胞表面上における以下の分子の発現について、さらに分析した。当該分子は、TCRαβ−T細胞受容体;CD25−活性化T細胞によって発現されるIL−2受容体αであり、CD4との組合せにおいてCD4+T細胞の制御性サブセットを意味する;CD27−T細胞の共刺激に関与する;CD28−ナイーブT細胞の活性化を意味する;CD62L−ナイーブT細胞およびメモリT細胞上に発現され、ホーミングに関与する;CD69−活性化T細胞上におけるシグナル伝達分子;CD95−活性化によって上方制御される;CD45RO−活性化T細胞またはメモリT細胞を意味する、である。各マーカーの発現をCD4と組み合わせて評価した。この目的のために、項目1.3.3に記載の同じ手法に本質的にしたがって、マウス抗ヒトCD4−PEと、マウス抗ヒトCD25−FITC、マウス抗ヒトCD27−FITC、マウス抗ヒトCD62L−FITC、マウス抗ヒトCD69−FITCまたはマウス抗ヒトCD95−FITCとの組合せを用いて、細胞を染色した。表2には、異なるHTS培養物に由来するCD4+Tリンパ球の表現型プロファイルが要約されている。
【0267】
種々の培養物からの細胞のすべてはそれらの表面上にTCRの成熟形態を発現しており、CD発現プロファイルはHTS培養物において生成された種々のCD4+サブセットを示している。種々の活性化分子について発現レベルと顕著に相関するCD62L発現による徴候として、細胞はホーミングついての異なる能力を示した。特に初代培養された骨髄単球性の前駆細胞から生じているTHS−WTMにおいて、活性化ヘルパーT細胞のサブセットだけでなく、T細胞のCD4+CD25+制御性サブセットを生成可能であった。
【0268】
【表2】
4.1.1.2 HTSから生成されたCD4+細胞によるサイトカイン産生
T細胞許容性のHTS培養物から生成された単独陽性のCD4+細胞を、10ng/mlのリポ多糖(LPS)を用いた4日間にわたるポリクロナル活性化に続いく、IL−2、IL−4、IL−8、IL−10、IFN−γおよびTNF−αの産生について、さらに分析した。平底の96ウェルプレートの1ウェルにつき、200μlの完全培地における200000細胞を播いた。上清を取り出し、それぞれのELISAキット(すべてInvitrogenから購入した)によって分析した。表3はHTS培養物に由来するポリクロナル性に刺激されたCD4+におけるサイトカイン産生の典型的なプロファイルを表している。
【0269】
【表3】
サイトカインプロファイルは、炎症性の優勢なプロファイルから制御性の優勢なプロファイルまでの範囲にあるT細胞許容性の環境においてHTS培養物から生成されたCD4+細胞における異なるT細胞サブセットの存在をを再確認している。
【0270】
4.2.細胞傷害性CD8+細胞へのHTS細胞の分化転換
以下のTHS集団:項目3.2.3.3に記載のHTS−KBTAE.1およびHTS−KBTAE.4;項目3.2.3.5に記載のHTS−KBTDP.1、HTS−KBTDP.4およびHTS−KBTDP.12に由来する細胞、ならびにK562の対照培養物を細胞傷害性のCD8+Tリンパ球の分化に使用した。
【0271】
この目的のために、対照のK562細胞、および各HTS集団に由来する細胞を、単層のヒト胸腺ストロマ細胞を用いて被覆した24ウェルプレートのウェルごとに100000細胞において播いた。0.5mg/mlのコラゲナーゼおよび1U/mlのDNaseIを有しているPBSにおいて、常に攪拌しながら60分間にわたって37℃においてインキュベートすることによって単一の細胞の懸濁物に消化された胸腺の細かく刻んだ小片から、胸腺ストロマ細胞を調製した。培養培地(RPMI1640:10%のFCS、10IU/mlのペニシリン、10pg/mlのストレプトマイシンおよび1mmol/LのL−グルタミン)を用いて1回にわたって、細胞の懸濁物を洗浄した。24ウェルプレートにおける2mlの培養培地の入った1ウェルごとに108細胞の新しい細胞または低温保存の細胞のいずれかを用いて、胸腺ストロマ細胞の培養物を確立した。2日後に、培養培地を用いて3回にわたって洗浄することによって、吸着していない細胞を除去した。それから、少なくとも週に2回、交換された培養培地に単層を維持させた。また、1%の非必須アミノ酸、10ng/mlのヒトIL−7および100U/mlのヒトIL−2(BD Bioscience)を、HTS培養物に補った。5日目および10日目に培養培地を、サイトカインを含んでいる新たな培地に交換した。
【0272】
14日目に、CD8、CD19およびCD15の発現についてHTS培養物を分析した。この目的のために、それから、項目1.3.3に記載の通りに、マウス抗ヒトCD8−PE、マウス抗ヒトCD19−FITCおよびマウス抗ヒトCD15−PerCpを用いて細胞を標識した。図15は、HTS−KBTDP.12における系統マーカーの典型的なプロファイルを示しており、ここで、CD8+細胞への分化を誘導した後に、100%の細胞が単独陽性(CD8+)の表現型を示した。KBTAE.1において、単独陽性のCD8細胞の数は、三重陽性のCD3+CD19+CD5+集団の100%に基づいて53%に達し、ここで、KBTAE.4における当該数は単独CD3+集団の100%に基づいて61%であった。HTS KBTDP.1およびHTS KBTDP.4において、単独CD8+細胞の割合は、CD4+CD8+CD20+CD72+の集団およびCD4+CD8+CD20−CD72−の集団の100%のうち72%および86%に上った。対照のK562培養物において変化は認められなかった。
【0273】
4.2.1. HTS細胞から生成されたCD8+細胞の性質決定
細胞傷害性のT細胞へと誘導されたHTS培養物から生成された単独陽性のCD8+細胞を、マーカー発現および機能的な性質決定のさらなる分析のために分取した。
【0274】
4.2.1.1 HTS細胞から生成されたCD8+細胞の表現型プロファイル
Tリンパ球許容性のHTS培養物に由来する単独陽性のCD8細胞を、細胞傷害性T細胞の表面に限定的に発現されているか、またはCD8+T細胞の機能にとって重要な、細胞表面上における以下の分子の発現について、さらに分析した。当該分子は、TCRαβ−T細胞受容体;CD8αおよびCD8β(ここで、β鎖の下方制御は抗原ばくろ前を意味する);CD27−T細胞の共刺激に関与する;CD28−ナイーブT細胞の活性化を意味する;CD62L−ナイーブT細胞およびメモリT細胞上に発現され、ホーミングに関与する;CD95−活性化によって上方制御される;CD45RO−活性化T細胞またはメモリT細胞を意味する、である。まず、項目1.3.3に記載の手法に本質的にしたがって、抗ヒトCD8α−PE(BD Pharmingen)および抗ヒトCD8β−FITC(BD Pharmingen)を用いて、細胞を標識した。続く染色において、抗ヒトTCRαβ−FITC、抗ヒトCD27−FITC、抗ヒトCD28−FITC、抗ヒトCD62L−FITCまたは抗ヒトCD45RO−FITC(すべてBD Pharmingenから購入した)と組み合わせて、抗ヒトCD8β−FITCを使用した。表4には、異なるHTS培養物に由来するCD8+Tリンパ球の表現型プロファイルが要約されている。
【0275】
【表4】
マーカーの分析によって、種々の集団におけるすべての細胞はCD8についてα鎖およびβ鎖の両方をともなう、TCRαβの発現について同質であることが明らかになった。しかし、細胞の集団は、他のマーカーの同質の発現を示すだけでなく、活性化、ホーミングおよびメモリに関与するマーカーの異なる程度の発現を示した。
【0276】
4.2.1.2 HTS細胞から生成されたCD8+細胞によるサイトカイン産生
THS培養物から生成された単独陽性のCD8細胞を、細胞内のIFN−γおよびIL−2の産生について分析した。この目的のために、50ng/mlのホルボールエステルおよび500ng/mlのイオナマイシン(ionamycyne)を用いた通常の培養条件において、Tリンパ球の条件におけるHTS培養物に由来する単独陽性のCD8細胞を刺激した。1時間後に、200ng/mlのブレフェルディンAを加え、15分間にわたって20℃の4%のパラホルムアルデヒドにおいて細胞を固定した。3回にわたる洗浄サイクルの後に、細胞を、サポニンを用いて透過化処理し、抗IL−2−PE(Pharmingen)、抗IFN−γーFITCまたは同位体対照を用いて染色した。図16は、HTS−KBTAE.4およびHTS−KBTDP.12の培養物の単独陽性のCD8細胞における細胞内のIL−2およびIFN−γの典型的なプロファイルを示している。両方の培養物はIL−2、IFN−γまたはその両方を産生している細胞を含んでおり、HTS−KBTDP.12培養物は、HTS−KBTAE.4培養物が広範囲のIFN−γ濃度を有しているのに対して、IL−2について広範囲の産生レベルを有していた。
【0277】
4.2.1.3 HTS細胞から生成されたCD8+細胞の細胞傷害性エフェクター機能
細胞内の細胞傷害性の顆粒の産生は、最終分化したT細胞を示す主なエフェクター機能である。細胞内の細胞傷害性の顆粒の検出のために、Tリンパ球許容性の条件におけるHTS培養物に由来する単独陽性のCD8細胞を、4%のパラホルムアルデヒドを用いて15分間にわたって20℃において固定した。洗浄後に、細胞を、サポニンを用いて透過化処理し、抗パーフォリン−PE抗体(BD Pharmingen)および抗グランザイムA−FITC抗体、同位体対照を用いて染色した。図17は、HTS−KBTAE.4およびHTS−KBTDP.12の培養物の単独陽性のCD8細胞における細胞内のパーフォリンおよびグランザイムAの典型的なプロファイルを示している。両方の内容物は、機能的に分化した細胞傷害性T細胞を示すパーフォリン、グランザイムAまたはその両方のいずれかについて陽性の細胞を含んでいた。両方の培養物における単独のCD8陽性細胞の約40%がそのような表現型を獲得していた。
【0278】
4.3.HTSからBリンパ球へのHTS細胞の分化転換
以下のHTS集団:項目3.1.4に記載のHTS−KMW.1およびHTS−KMW.5;項目3.2.3.1に記載のHTS−KBT;項目3.2.3.3に記載のHTS−KBTAE.1およびHTS−KBTAE.6;項目3.2.3.5に記載のHTS−KBTDP.1およびHTS−KBTDP.13;項目3.34に記載のHTS−WTM.1およびHTS−WTM.7に由来する細胞、ならびにK562、WIL2NSおよびMOLT4の対照培養物を、ヒトの骨髄ストロマ細胞株HS−5の存在下におけるBリンパ球の分化に使用した。4mMのL−グルタミン、1.5g/Lのジカルボン酸ナトリウムおよび10%(v/v)のFCSを補ったダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において、HS−5細胞を定法にしたがって維持した。分化実験の1日前または2日前に、HS−5細胞を、24ウェルのプレートの、1mlの培養培地の入ったウェルごとに60000細胞、または平底の96ウェルプレートの、100μlの培養培地の入ったウェルごとに6000細胞においてに播いた。HS−5成長培地の除去、ならびに24ウェルのプレートの、1mlのウェルごとに1000〜4000細胞、および96ウェルプレートの、100μlのウェルごとに100細胞において、選択したHTS細胞の集団を播くことによって、Bリンパ球分化の共培養を開始した。Bリンパ球系統を促進する添加剤、特に可溶性の4ng/mlのCD40L(Invitrogen)、10ngのヒトIL−4(Invitrogen)、5ng/mlのヒトIL−5(Invitrogen)、10ng/mlのヒトIL−6(Invitrogen)、10ng/mlのIL−10(Invitrogen)、5ng/mlのヒトIL−2(Invitrogen)、20ng/mlのIL−7(Invitrogen)、20ng/mlのFit3リガンド(Invitrogen)、20ng/mlの幹細胞由来因子(BD Bioscience)、10ng/mlのヒトIL−3(Invitrogen)および5μg/mlの抗CD40mAbのアゴニスト(クローンHM40−3、BD Bioscience)を、標準的な培養培地に補った。5日目および7日目に、培養培地をBリンパ球系統を促進する添加剤を補った新たな培地に交換した。HTS−KMW.1、HTS−KMW.5、HTS−KBT、HTS−WTM.1、HTS-WTM.7ならびにK562、MOLT4およびWIL2NSの対照培養物に由来する吸着しなった細胞を、回収し、マウス抗ヒトCD4−FITC、マウス抗ヒトCD19−PEおよびマウス抗ヒトCD15−PerCPを用いて染色し、項目1.3.3に記載の通りにフローサイトメトリーによって分析した。図18は、Bリンパ球に分化を誘導された後の、100%のCD19+細胞を有しているHTS−KBTAE.6の典型的な染色プロファイルを示している。HTS−KBTAE.1およびHTS−KBTAE.6の場合に、抗ヒトCD4−FITCの代わりに抗ヒトCD3−FITCを用いて、吸着しなかった細胞を染色した。HTS−KBTDP.1およびHTS−KBTDP.13の培養物について、マウス抗ヒトCD20−PEを抗CD19−PEの代わりに用いた。
【0279】
4.3.1 HTS細胞から生成されたCD19+細胞の性質決定
Bリンパ球のHTS培養物に由来する単独陽性のCD19細胞を分取し、B特異的な転写物および機能的な特性(例えば、免疫グロブリンの分泌およびプラズマ細胞への分化)の存在、B細胞マーカーについてさらに分析した。
【0280】
4.3.1.1 他のB細胞マーカー表面発現
Bリンパ球に関して促進されたHTS培養物に由来するCD19+細胞を、B細胞の表面上に限定的に発現されているか、またはB細胞の機能にとって重要な以下の分子の発現についてさらに分析した。当該分子は、CD1c−抗原提示における特殊な役割を有している、β2−ミクログロブリンと会合するMHCクラスI様分子;CD10−B細胞の発生に関与している亜鉛金属プロテアーゼ;CD20−B細胞活性化分子;CD22−単球およびT細胞とのB細胞の相互作用を担っている成熟B細胞上に発現されている接着分子;CD38−細胞活性化;CD40−アポトーシスからのB細胞の開放、およびアイソタイプ転換に関与するB細胞の分化および共刺激である;表面IgMおよびIgG、である。
【0281】
この目的のために、マウス抗ヒトCD1c−PE抗体、マウス抗ヒトCD10−FITC抗体、マウス抗ヒトCD20−PE抗体、マウス抗ヒトCD22−FITC抗体、マウス抗ヒトCD38−FITC抗体、マウス抗ヒトCD40−FITC抗体、マウス抗ヒトIgG−PE抗体、マウス抗ヒトIgM−PE抗体(BD Pharmingen)を用いて、Bリンパ球に関して促進されたHTS培養物に由来するCD19+細胞を標識した。本質的に同じ染色手法は、項目1.3.3に記載の通りにしたがった。表5には、異なるHTS培養物に由来するBリンパ球の表現型のプロファイルが要約されている。
【0282】
【表5】
K562、WIL2NSおよびMOLT4の対照培養物において、新たなマーカー発現、上方制御または下方制御は認められなかった。
【0283】
CD5+B細胞に本来的に由来するHST−KBTAEの集団を、Bリンパ球を促進する環境において培養した場合に、より活性化されたCD20+細胞、より成熟したCD22+細胞およびより成熟したCD40+細胞が検出された。また、LPS刺激後にこれらの培養物がIgG陽性の細胞をより含んでいた(表6)ことを考えると、結果は、機能的なB細胞およびプラズマ細胞への、これらの特定の集団の分化能を示している。
【0284】
細胞表面上(特にHTS−WTM培養物)におけるIgM発現の消失と結びついているプレB細胞にとってのマーカーである、細胞表面におけるCD10の出現は、より初期のプレB細胞へのCD19+細胞の脱分化を強く示唆している。
【0285】
4.3.1.2 プラズマ細胞への分化能
14日目に、3.5mg/mlのリポ多糖(Sigma)に培養物をさらして、Bリンパ球を活性化させ、プラズマ細胞の形成を誘導した。96ウェルのELISAプレート、およびヒトμ鎖およびγ鎖に対する親和性精製された、プラスティックに吸着させたヤギ抗体を用いた標準的なELISAによって、すべてのHTS−Bリンパ球の培養物について、分泌されたIgMおよびIgGを定量化した。HRPを結合させたヒツジ抗ヒトIg抗体を用いて、結合した抗体を顕示化した。使用したすべての抗体はSigmaから入手した。ABTSを基質として使用し、405nmにおける吸光度を測定した。表6には、LPSばくろ後のCD19+細胞の表現型プロファイルが示されており、表7には、7日後および17日後におけるBリンパ球培養物において検出されたIgMおよびIgGのレベルが要約されている。
【0286】
【表6】
CD22+細胞の数が、CD40+陽性の細胞およびIgGを有している細胞の増加をもとなって、増加しているので、HTS−KBT培養物における単独のCD19+細胞の数の減少はプラズマ細胞へのさらなる分化の結果と考えられ得る。また、WTM培養物におけるより未成熟なCD10+プレB細胞の数はCD40+およびCD22+の陽性細胞の増加にともなって減少した。
【0287】
ELISAの結果は、IgGが始めて検出された場合に、LPS刺激した培養物(特にHTS−KBT培養物)における成熟B細胞からプラズマ細胞へのある程度の発達があることを確かめている。
【0288】
【表7】
【0289】
4.4.マクロファージへのHTS細胞の分化転換
以下の亜集団HTS−WTM.4に由来しており、項目3.3に記載されているHTS細胞およびWIL2NSの対照培養物を新たな培養培地に移し、細胞濃度を1mlにつき100000〜200000細胞に調整した。50ng/mlのヒトIL−7(Invitrogen)、50ng/mlのヒトIL−6(Invitrogen)、10ng/mlのヒトIL−3(Invitrogen)、100ng/mlのヒトM−CSF(BD Bioscience)、30ng/mlのヒトGM−CSF(BD Bioscience)および50ng/mlのFit3L(Invitrogen)を細胞培養物に補い、当該細胞培養物を平底の24ウェルプレートの1ウェルにつき1mlにおいて播いた。3〜4日ごとに、新たな培養培地を培養培地の半分と置き換えることによって、新たな培養培地を継ぎ足した。図19は8日後におけるHTS培養物の形態を示しており、ここで、細胞を接着細胞の成長特性について評価した。
【0290】
それから、項目1.3.3に記載の通りにマウス抗ヒトCD4抗体、マウス抗ヒトCD19抗体およびマウス抗ヒトCD15抗体を用いて、細胞を標識した。図20は、8日間にわたるマクロファージ許容性の培養の後に、細胞の大部分がCD15を除いたすべてのマーカーの発現を消失していることを示しており、ここで、約7%の細胞が骨髄単球系統のマーカーについて陽性を維持していた。2%の細胞のみがCD4について陽性であり、CD19について陰性であった。対照のWIL2NS培養物には何らの変化も認められなかった。
【0291】
4.4.1 HTS細胞から生成されたマクロファージの性質決定
HTS細胞から生成されたマクロファージを、他のマクロファージ系統のマーカーおよび機能的な能力の発現についての分析に供した。
【0292】
4.4.1.1 他のマクロファージマーカーの発現
また、ヒトマクロファージを排他的に特徴付ける単一のマーカーがないので、マクロファージ系統の特徴であるCD11b、CD86、CD64、CD14およびCD115の発現について、HTS細胞から生成された接着性の細胞をさらに分析した。この目的のために、抗ヒトCD11b−PE抗体、抗ヒトCD86−FITC抗体、抗ヒトCD64−FITC抗体、抗ヒトCD14−PE抗体および抗ヒトCD115−PE抗体(BD Pharmingen)を用いて、マクロファージに関して促進されたHTS培養物を標識した。CD115−PE抗体を除くすべてのマーカーについての実質的に同じ染色手法は、項目1.3.3の記載にしたがった。M−CSFの、その受容体CD115に対する結合は、受容体の内部移行を生じ、したがって表面染色の強度を低減させ得る。したがって、表面および細胞内のCD115が評価され得るように、抗CD115−PEを用いた染色の前に、細胞を、固定し、Cytofix/Cytopermキット(BD Biosciences)を用いて透過化処理した。マクロファージ許容性の培地においてから8日後に細胞表面上におけるマクロファージ様因子の発現について、5つの別の培養物を分析した。図21には、HTS細胞上におけるマクロファージ様CDマーカーの分布(平均±標準偏差)が要約されており、ここで、約96%の細胞がCD11bについて陽性であり、95%の細胞がCD64について陽性であり、61%の細胞がCD86について陽性であり、56%の細胞がCD14について陽性であり、42%の細胞がCD115について陽性であった。これらのマーカーのいくつかが顆粒球および樹状細胞(DC)上において種々のレベルとして発現され得ることを考えて、ヒトのCD1a、CD83、CD15およびCD3についてのついての付加的な染色を、項目1.3.3に記載の手法を用いて実施した。染色は、わずかに認められた(CD15)か、認められなかった。これらの結果は、マクロファージ許容性の培地に移されると、HTS細胞がマクロファージの機能(例えば、吸着(CD11b)、増殖(M−CSFにとっての受容体であるCD115)、食作用(CD86)および免疫食作用(IgGにとっての受容体であるCD64))にとって決定的な表面分子を獲得することを示している。
【0293】
4.4.1.2 HTS細胞から生成されたマクロファージの機能的な性質決定
機能的な特性を評価するために、HTSにおいて生成されたマクロファージを、食作用能および一酸化窒素(NO)の生成についてさらに分析した。
【0294】
蛍光微粒子(分子プローブ)を捕食する能力によるフローサイトメトリーによって、食作用能を評価した。マクロファージ許容性の培地において8日後に、5μg/mlのLPS(Sigma)および蛍光フィコエリトリン(PE)標識を有しているカルボキシル化した40nmおよび100nmのポリスチレン微粒子とともに、24ウェルプレートにおいて1mlにつき1000000細胞として、18時間にわたってHTS細胞をインキュベートした。細胞を、回収し、氷冷した2%(w/v)のBSA/PBSにおけるCD64に対する抗ヒトのFITCを結合した抗体とともに45分間にわたって、氷上においてインキュベートし、2回にわたって洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。図22は、マクロファージに関して促進されたHTS細胞における食作用活性の典型的なプロファイルを示している。約94%の細胞が小さなビーズおよび大きなビーズに対する食作用活性を示した。
【0295】
10ng/mlのLPS、100U/mlのヒトインターフェロン−γ(IFN−γ)、またはその両方とともに、200μlの総量におけるウェルにつき200000細胞に播いた平底の96ウェルプレートにおいて、マクロファージに関して促進されたHTS細胞を培養することによって、NOの生成を評価した。一昼夜の刺激の後に、50μlのGriess試薬(1%のスルファニルアミド、0.1%のナフチレンジアミン2塩酸塩、2.5%のH3PO4)とともに、5分間にわたって室温において50μlの無細胞の上清をインキュベートし、550nmにおける吸光度をマクロプレートリーダにおいて選択した。硝酸ナトリウムの標準曲線の直線回帰からNOの濃度を決定した。図23に示されるように、マクロファージ許容性の培地にさらされた後のHST細胞は、LPSおよびIFNを用いた刺激に応じて一酸化炭素を生成した。
【0296】
<実施例5>
5.成熟した表現型の細胞とのハイブリダイゼーションによる異なる細胞表現型へのHTS細胞の分化転換
HTSの汎用性および利用される機序に対する非感受性をさらに証明するために、HTS細胞を、成熟エフェクターT細胞または成熟エフェクターB細胞とハイブリダイズした。また、異なる表現型の細胞を分化転換させるために、同じ方法が使用され得る。
【0297】
5.1 初代培養されたCD54+T細胞とのハイブリダイゼーションによるCD4陽性T細胞へのHTS細胞の分化転換
HTS亜集団に由来するB細胞を、電気的な細胞ハイブリダイゼーションを介したCD54+T細胞への分化転換に使用した。詳細には、項目3.1.4に記載のHTS−KMW.5(単独のCD19+細胞)、項目3.2.3.3に記載のHTS−KBTAE.6(単独のCD19+細胞)、および項目3.2.3.5に記載のHTS−KBTDP.13(CD20+CD72+細胞)に由来する細胞を、この特定の実施例における分化転換に使用した。項目1.3.8に記載の通りに単離した、初代培養されたヒトCD54陽性T細胞を、CD54+T細胞の供給源として使用した。ハイブリダイゼーション手法は対応するHTSの作製のために使用された手法(項目3.1.2を参照)と本質的に同じであった。生じた混成体が安定した後に、それらを、標準的な培養条件の下に細胞株として維持し(項目1.1を参照)、項目1.3.3に記載の手法にしたがって表面マーカー発現について分析した。すべてのB細胞の亜集団は、それらのCD19+を消失して分化転換し、図24Aにおける代表的な例による証拠としてCD3+になった。それらをCD54発現についてさらに分析した。簡単に説明すると、項目1.3.8(CD54+T細胞の単離)に記載と同じ手法にしたがって、マウス抗ヒトCD54−FITC抗体およびマウス抗ヒトCD3−PE抗体を用いて、100μlの分取物につき1×105細胞を標識した。CD54について陽性の細胞の数は図24(B)に示されているように42〜85%の範囲であった。
【0298】
5.2 初代培養されたIg分泌B細胞とのハイブリダイゼーションによるCD陽性B細胞へのHTS細胞の分化転換
以下のHTS亜集団に由来するT細胞を免疫グロブリン(Ig)分泌細胞への分化転換に使用した。この目的のために、項目3.1.4に記載のHTS−KMW.6(単独のCD4+集団)、項目3.2.3.3に記載のHTS−KBTAE.4(単独のCD3+集団)、項目3.2.3.5に記載のHTS−KBTDP.4(CD4+CD8+集団)を使用した。項目1.4に記載の通りに単離した、CD40活性化の初代培養されたIgM陽性B細胞またはIgG陽性B細胞を、初代培養された分泌B細胞の供給源として使用した。電気的な細胞ハイブリダイゼーション手法は、項目3.1.2に記載されているような対応するHTSの作製に使用した手法と本質的に同じであった。生じた混成体が安定した後に、それらを、維持し、CD19、CD40および表面Igについて分析した。すべてのHTS亜集団はそれらのT細胞マーカー(CD3、CD4およびCD8)を消失して分化転換し、CD19、CD40およびsIgの陽性細胞になった。図25は、CD3発現の消失および表面IgMの獲得を示しているCD40活性化のIgM陽性B細胞とのハイブリダイゼーションの後における分化転換したCD3+HTS−KBTAE.4細胞の代表的な例を示している。
【0299】
B細胞に分化転換したT細胞培養物の上清を、IgMまたはIgGの存在について、上述のELISA(項目1.4を参照)によって分析した。細胞を、ウェルにつき1×105細胞において丸底の96ウェルプレートに播き、標準的な培養条件の下に24時間にわたって培養した。結果は表8にまとめられている。各値は3つの独立した測定の平均値±標準偏差として示されている。
【0300】
【表8】
【0301】
<実施例6>
6.環境条件の変化へのばくろを介した、HTS細胞に由来する成熟Bリンパ球の脱分化
項目4.3.1.1に記載されている通りにBリンパ球を促進する環境において培養され、HTS−WTM.1およびHTS−WTM.7に由来するCD19+細胞は、他のBリンパ球マーカーの発現について調べたとき、低い程度に成熟したB細胞種への脱分化の徴候(特にCD10発現の上方制御および表面IgG発現の下方制御)を示した(項目4.3.1.1)。これらの培養物において惹起された脱分化過程を確認するために、項目7.1に記載の造血性の幹細胞を促進する環境に細胞を置き、そのような培養の5日後に、初期の他のB細胞マーカー(例えば、Pax−5、λ様およびCD34)の転写物の存在について確認した。
【0302】
簡単に説明すると、RNeasyキット(RNeasy Mini kit、Qiagen)を用いて培養した細胞から総RNAを調製した。cDNAキット(Amersham Pharmacia)を用いて製造者の手順にしたがってcDNA合成を実施し、本質的にSewing et alによって説明されている通りにPCRを実施した。PCR反応混合物っをアガロースゲル(2%)電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。オリゴヌクレオチドのプライマー対は以下の配列を有していた:
ヒトβ2ミクログロブリン:センス、
54℃における5’ACCCCCACTGAAAAAGATGA3’(配列番号1)、およびアンチセンス、5’ATCTTCAAACCTCCATGATG3’(配列番号2);CD34:64℃におけるセンス、5’CTCTTCTGTCCAGTCACAGACC3’(配列番号3)、およびアンチセンス、5’GAATAGCTCTGGTGGCTTGCAA3’(配列番号4);CD10:65℃におけるセンス、5’CTGTGACAATGATCGCACTCTATG3’(配列番号5)、およびアンチセンス、5’GATTCCAGTGCATTCATAGTAATCTC3’(配列番号6);λ様:67℃におけるセンス、5’ATGCATGCGGCCGCGGCATGTGTTTGGCAGC3’(配列番号7)、およびアンチセンス、5’ATCCGCGGCCGCATCGATAGGTCACCGTCAAGATT3’(配列番号8);Pax−5:64℃におけるセンス、5’AGCAGGACAGGACATGGAGGA3’(配列番号9)、およびアンチセンス5’ATCCTGTTGATGGAACTGACGC3’(配列番号10);CD19:67℃におけるセンス、5’TCACCGTGGCAACCTGACCATG3’(配列番号11)、およびアンチセンス5’GAGACAGCACGTTCCCGTTACTG3’(配列番号12);VHコンセンサス−Cμ:60℃におけるセンス、5’GACACGGCCGTGTATTACTG3’(配列番号13)、およびアンチセンス、5’ATCCGCGGCCGCGGAATTCTCACACAGGAGAC-GA3’(配列番号14);Vkコンセンサス、:67℃におけるセンス、5*ATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTG3*(配列番号15)、およびアンチセンス5’ATGCGGCCGCGGGAAGATGAAGACAGATG3’(配列番号16)。
【0303】
図26は、HTS−WTM培養物が初期のB細胞の発達のための転写物(例えばPax−5およびλ様)の発現を、当該転写物を含んでいないHTS−WTM.1培養物と比べたとき、実際に示したことを示している。さらに、CD34がまた、HTS−WTM.7培養物において転写されている。この結果は、環境条件の変化に応じた、初期段階のB細胞への成熟CD19+細胞の脱分化を強く示唆している。
【0304】
<実施例7>
7.体細胞ハイブリダイゼーションを介した、HTS細胞に由来する異なる表現型の成熟細胞の脱分化
HTSのさらなる可塑性を証明するために、種々のHTS培養物に由来する、表現型について区別される亜集団を、初期の造血性幹細胞との体細胞ハイブリダイゼーションを介した脱分化に供した。CD34+の骨髄幹細胞を項目1.2.2に記載のように選択した。体細胞ハイブリダイゼーションのための実質的に同じ手順を、項目3.1.2に記載のように利用した。
【0305】
7.1 HTS細胞から分化転換したB細胞の脱分化
Bリンパ球を促進する環境において成長させたKBTAE.6およびKMW.5の培養物に由来するB細胞を、この特定の例に使用した。両方の培養物におけるすべての細胞の100%がCD19+陽性であるような純度について、培養物を選択した。Bリンパ球促進環境にさらした後のこれらの培養物のマーカー発現プロファイルは、表5にまとめられている(項目4.3.1.1を参照)。KMW.5はHTSの生成に使用された3つの細胞のすべてが不死化の表現型を有していた場合を代表しており、KBTAE.6は、不死化の骨髄性の前駆細胞、初代培養されたBリンパ球および初代培養されたTリンパ球に由来していた。骨髄に由来するCD34+幹細胞とのハイブリダイゼーションの後に、20ng/mlのヒトIL−6、300ng/mlのヒトSCF、100ng/mlのヒトfms様チロシンキナーゼ3リガンド(hFT3L)、20ng/mlのヒトトロンボポエチン(hTPO)、および60ng/mlのヒトIL−3を補った標準的な培養培地において、HTS培養物を成長させた。培養の1ヶ月間後に、CD34およびCD130、ならびに項目4.3.1.1に記載のBリンパ球関連マーカーの発現について、細胞の集団を分析した。骨髄からのCD34+細胞の単離について記載されている通りの同じ方法を利用して(項目1.2参照)、項目1.2.2に記載の同じマウス抗体ならびにマウス抗ヒトCD34−PEおよびマウス抗ヒトCD130−FITCを用いて、細胞を標識した。表9には、脱分化開始後における細胞のCDプロファイルがまとめられている。
【0306】
【表9】
【0307】
7.2 HTS細胞から分化転換したCD4+T細胞の脱分化
Tリンパ球を促進する環境において成長させたKMW.6の培養物に由来するCD4+細胞を、この特定の例に使用した。培養物におけるすべての細胞の100%がCD4+陽性であるような純度について、培養物を選択した。Tリンパ球を促進する環境にさらした後のこれらのHTS培養物のマーカー発現プロファイルは表2にまとめられている(項目4.1.1.1参照)。骨髄に由来するCD34+幹細胞とのハイブリダイゼーションの後に、造血幹細胞(HSC)の成長を促進する種々のサイトカインを補った標準的な培養培地において、HTS培養物を成長させた(項目7.1参照)。HSC環境における1ヶ月間の後に、CD34およびCD130、ならびに項目4.1.1.1に記載のCD4+T細胞関連マーカーの発現について、細胞を分析した。以下の表10には、脱分化したCD4+細胞の表面上におけるCD発現のプロファイルが示されている。
【0308】
【表10】
【0309】
7.3 HTS細胞から分化転換したCD8+T細胞の脱分化
細胞の大部分は、それらのCD4およびTCRの発現を消失し、CD25の発現について上方制御を受け、CD34の発現を獲得していた。
【0310】
Tリンパ球を促進する環境において成長させたKBTDP.12の培養物に由来するCD8+細胞を、この特定の例に使用した。培養物におけるすべての細胞の100%がCD8+陽性であるような純度について、培養物を選択した。Tリンパ球を促進する環境にさらした後のこれらのHTS培養物のマーカー発現が、表4にまとめられている(項目4.2.1.1参照)。骨髄に由来するCD34+幹細胞とのハイブリダイゼーションの後に、造血幹細胞(HSC)の成長を促進する種々のサイトカインを補った標準的な培養培地において、細胞を成長させた(項目7.1参照)。HSC環境における1ヵ月間の後に、CD34およびCD130、ならびに項目4.2.1.1に記載のCD8+細胞関連マーカーについて、細胞を分析した。以下の表11には、脱分化したCD8+細胞の表面上におけるCD発現のプロファイルがまとめられている。
【0311】
【表11】
ほとんどすべての細胞がそれらのCD8およびTCRの発現を消失し、CD34の発現を獲得していた。
【0312】
特定の例を参照して本発明について説明しているが、本明細書に記載の本発明の広範な原理および精神にしたがって、本発明は多くの他の形態として具体化され得ることが、当業者によって適切に理解されるであろう。
【0313】
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【図面の簡単な説明】
【0314】
【図1】同定し、分取−精製したCD71+K562細胞を示す図である。
【図2】CD15陽性およびCD71陽性のK562細胞のFACSプロファイルを示す図である。
【図3】培養物における48時間後の、CD34+について濃縮されたAMLの単球細胞からの、CD34陽性、およびCD34+およびCD34+CD15+の細胞の分取を示す図である。
【図4】マウス抗ヒトCD19抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイルを示す図である。
【図5】マウス抗ヒトCD3抗体およびマウス抗ヒトCD5抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイルを示す図である。
【図6】マウス抗ヒトCD20抗体およびマウス抗ヒトCD72抗体を用いて染色した臍帯血の単球細胞のFACSプロファイルを示す図である。
【図7】CD3およびCD54について染色した扁桃腺の単球細胞の典型的なFACSプロファイルを示す図である。
【図8】IgMおよびIgG陽性の培養リンパ球の存在を示す図である。
【図9】HTS−KMW細胞についてのCD発現のFACSプロファイル、および異なる表現型の細胞集団についての分取領域を示す図である。
【図10】初代培養された混合した脾臓のリンパ球上におけるCD4およびCD19の発現、分取したCD4およびCD19の集団、ならびに生じたHTS−KBT細胞株を示す図である。
【図11】不死化した1つの骨髄性細胞、および抗原を経験した、初代培養された2つのリンパ球に由来するHTS−KBTAE上におけるCD19、CD3およびCD5の発現を示す図である。
【図12】不死化した1つの骨髄性細胞、および骨髄および胸腺に由来する初代培養された2つのリンパ球に由来するHTS−KBTDP細胞上におけるCD4、CD8、CD72およびCD20の表面発現を示す図である。
【図13】骨髄単球性の前駆細胞に由来するHTS−WTM細胞の表面上におけるCD発現を示す図である。
【図14】CD4表現型を促進する環境における8日後の、HTS−KMW.6、HTS−WTM.6およびHTS−.12の培養物におけるCD4、CD19およびCD15の代表的な染色プロファイルを示す図である。
【図15】HTS−KBTDP.12培養物におけるCD8、CD19およびCD15についての代表的な染色プロファイルを示す図である。
【図16】HTS−KBTAE.4培養物およびHTS−KBTDP.12培養物のうちCD8のみが陽性の細胞における、ヒトIL−2およびヒトIFN−γの細胞内産生を示す図である。
【図17】HTS−KBTAE.4培養物およびHTS−KBTDP.12培養物のうちCD8のみが陽性の細胞における、細胞内のパーフォリンおよびグランザイムAの典型的なプロファイルを示す図である。
【図18】Bリンパ球を促進する環境における7日後の、抗CD19抗体、抗CD4抗体および抗CD15抗体を用いたHTS−KBTAE.6培養物の典型的な染色を示す図である。
【図19】マクロファージを許容する成長培地における8日後のHTS培養物から生成された細胞の付着性の形態を示す図である。
【図20】マクロファージを許容する成長培地における8日後のHTS−WTM.4細胞上におけるCD19、CD15およびCD4発現のプロファイルを示す図である。
【図21】マクロファージを許容する成長培地における8時間後のHTS−WTM.4細胞の表面におけるマクロファージ様マーカーの発現を示す図である。
【図22】マクロファージを許容する成長培地における8時間後のHTS−WTM.4培養物に由来するCD64陽性のマクロファージによる1000nmの微粒子の食作用を示す図である。
【図23】マクロファージを許容する成長培地における8時間後のLPS刺激したHTS−WTM.4細胞による一酸化窒素の生成を示す図である。
【図24】初代培養されたCD54+のヒトT細胞を用いた体細胞ハイブリダイゼーションによってT細胞に分化転換されたHTS−KBTAE.6に由来するCD19+Bリンパ球によるCD3およびCD54発現の典型的なプロファイルを示す図である。
【図25】CD3発現の消失および表面IgGの獲得を示している、CD40活性化のIgM陽性のB細胞を用いた体細胞ハイブリダイゼーション後のCD3+HTS−KBTAE.4細胞の分化転換の代表的なプロファイルを示す図である。
【図26】HTS−WTM培養物1および7における初期B細胞の発生マーカーについてのRT−PCR転写物を示す図である。
【図27】単一細胞の操作/供給系を示す図である。
【図28】ガラスのマイクロピペットを示す図である。
【図29】微小電極を示す図である。
【図30】平行な2つの微小電極を示す図である。
【図31】組織培養プレートのウェルにおける2つの微小電極を示す図である。
【図32】2つの微小電極の中間にある3つの細胞の上面図である。
【図33】図32の側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の表現型の細胞を生成する方法であって、
未拘束の前駆細胞に由来する細胞、または幹細胞である第1の細胞;
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第2の細胞;および
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第3の細胞をハイブリダイズして、ハイブリッド細胞を製造する工程、ならびに
当該ハイブリッド細胞を所定の環境にさらし、上記所定の表現型の細胞にする工程を包含している工程を包含している、方法。
【請求項2】
上記所定の表現型は、B細胞、T細胞または骨髄性細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記所定の表現型は、上記ハイブリッド細胞に関連する脱分化した表現型である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記脱分化した表現型は、CD34、CD10、Pax−5またはλ様の少なくとも1つの発現を包含している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記第2の細胞がBリンパ球系統に由来する細胞であり、上記第3の細胞がTリンパ球系統に由来する細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記第1の細胞が骨髄性の共通前駆細胞に由来する細胞である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、骨髄性単球の前駆体、単核球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞、または好塩基球である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示している、請求項6に記載の方法ライン。
【請求項9】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は単核球である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は骨髄性単球の前駆体である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は不死化された細胞である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、脾臓、末梢血、臍帯血、または骨髄に由来するものである、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞、またはエフェクターB細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
上記エフェクターB細胞はプラズマ細胞または抗原を経験したB細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示している、請求項5または13に記載の方法。
【請求項16】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞である、請求項5〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示している、請求項5または16に記載の方法。
【請求項18】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である、請求項5〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
上記リンパ組織は、末梢血、臍帯血、脾臓、骨髄、胸腺、扁桃腺、咽頭扁桃腺、および領域リンパ節から選択される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
上記細胞の少なくとも1つはヒト細胞である、請求項1〜22に記載の方法。
【請求項24】
上記細胞の少なくとも1つはマウス細胞である、請求項1〜22に記載の方法。
【請求項25】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞はK562細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項26】
上記第2の細胞または第3の細胞はWIL2NS細胞またはMOLT4細胞である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞はWIL2NS細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項28】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞はMOLT4細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項29】
上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞はMOLT4細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞は初代培養されたB細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
上記B細胞およびT細胞はCD5を発現している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
上記B細胞はCD20およびCD72を発現しており、上記T細胞はCD4およびCD8を発現している、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
上記第1の細胞は初代培養されたヒト単核球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
上記第1の細胞は初代培養されたヒト骨髄単核球性の前駆体であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたヒトT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
上記ハイブリッド細胞が、幹細胞とさらにハイブリダイズされている、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
上記所定の環境は、胸腺のストロマ細胞、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンド、またはこれらの組合せを含んでいる、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
上記サイトカインまたは成長因子は、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−1β、IL−7、IL−23、TGF−β、M−CSF、GM−CSF、およびIFN−γからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
上記免疫グロブリンは、抗IL−4、抗IFN−γ、および抗CD3/CD28からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
上記受容体リガンドはFlt3リガンドまたはCD40リガンドである、請求項37に記載の方法。
【請求項1】
所定の表現型の細胞を生成する方法であって、
未拘束の前駆細胞に由来する細胞、または幹細胞である第1の細胞;
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第2の細胞;および
リンパ系の共通前駆細胞に由来する第3の細胞をハイブリダイズして、ハイブリッド細胞を製造する工程、ならびに
当該ハイブリッド細胞を所定の環境にさらし、上記所定の表現型の細胞にする工程を包含している工程を包含している、方法。
【請求項2】
上記所定の表現型は、B細胞、T細胞または骨髄性細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記所定の表現型は、上記ハイブリッド細胞に関連する脱分化した表現型である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記脱分化した表現型は、CD34、CD10、Pax−5またはλ様の少なくとも1つの発現を包含している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記第2の細胞がBリンパ球系統に由来する細胞であり、上記第3の細胞がTリンパ球系統に由来する細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記第1の細胞が骨髄性の共通前駆細胞に由来する細胞である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、骨髄性単球の前駆体、単核球、マクロファージ、好酸球、好中球、樹状細胞、または好塩基球である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD16、CD15またはCD14の少なくとも1つを提示している、請求項6に記載の方法ライン。
【請求項9】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は単核球である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は骨髄性単球の前駆体である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は不死化された細胞である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞は、脾臓、末梢血、臍帯血、または骨髄に由来するものである、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレB細胞、未成熟なB細胞、ナイーブB細胞、活性化B細胞、またはエフェクターB細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
上記エフェクターB細胞はプラズマ細胞または抗原を経験したB細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD19、CD20、CD72またはCD5の少なくとも1つを提示している、請求項5または13に記載の方法。
【請求項16】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、プレT細胞、未成熟なT細胞、ナイーブT細胞、活性化T細胞またはエフェクターT細胞である、請求項5〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞は、以下のCD抗原:CD3、CD4、CD5またはCD8の少なくとも1つを提示している、請求項5または16に記載の方法。
【請求項18】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞は不死化された細胞である、請求項5〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞はリンパ組織に由来するものである、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
上記リンパ組織は、末梢血、臍帯血、脾臓、骨髄、胸腺、扁桃腺、咽頭扁桃腺、および領域リンパ節から選択される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
上記細胞の少なくとも1つはヒト細胞である、請求項1〜22に記載の方法。
【請求項24】
上記細胞の少なくとも1つはマウス細胞である、請求項1〜22に記載の方法。
【請求項25】
骨髄性の共通前駆細胞に由来する上記細胞はK562細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項26】
上記第2の細胞または第3の細胞はWIL2NS細胞またはMOLT4細胞である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
Bリンパ球系統に由来する上記細胞はWIL2NS細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項28】
Tリンパ球系統に由来する上記細胞はMOLT4細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項29】
上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞はMOLT4細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞は初代培養されたB細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
上記B細胞およびT細胞はCD5を発現している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
上記B細胞はCD20およびCD72を発現しており、上記T細胞はCD4およびCD8を発現している、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
上記第1の細胞は初代培養されたヒト単核球であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
上記第1の細胞は初代培養されたヒト骨髄単核球性の前駆体であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたヒトT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
上記第1の細胞はK562細胞であり、上記第2の細胞はWIL2NS細胞であり、上記第3の細胞は初代培養されたT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
上記ハイブリッド細胞が、幹細胞とさらにハイブリダイズされている、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
上記所定の環境は、胸腺のストロマ細胞、サイトカイン、成長因子、免疫グロブリン、受容体リガンド、またはこれらの組合せを含んでいる、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
上記サイトカインまたは成長因子は、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−1β、IL−7、IL−23、TGF−β、M−CSF、GM−CSF、およびIFN−γからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
上記免疫グロブリンは、抗IL−4、抗IFN−γ、および抗CD3/CD28からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
上記受容体リガンドはFlt3リガンドまたはCD40リガンドである、請求項37に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2012−529271(P2012−529271A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514296(P2012−514296)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000716
【国際公開番号】WO2010/141990
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300617)スティーヴン サニグ リサーチ インスティテュート リミテッド. (1)
【氏名又は名称原語表記】STEPHEN SANIG RESEARCH INSTITUTE LTD.
【住所又は居所原語表記】SUITE G17,NATIONAL INNOVATION CENTRE,4 CORNWALLIS STREET,EVELEIGH,NEW SOUTH WALES 2015,AUSTRALIA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000716
【国際公開番号】WO2010/141990
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300617)スティーヴン サニグ リサーチ インスティテュート リミテッド. (1)
【氏名又は名称原語表記】STEPHEN SANIG RESEARCH INSTITUTE LTD.
【住所又は居所原語表記】SUITE G17,NATIONAL INNOVATION CENTRE,4 CORNWALLIS STREET,EVELEIGH,NEW SOUTH WALES 2015,AUSTRALIA
【Fターム(参考)】
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