説明

表示パネルの製造方法

【課題】多面取りプロセスにおいて、露光位置の精度許容範囲を拡大できる製造方法を提供する。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルのアドレス電極21は、複数のパネル領域41に跨って連続するように電極パターンが形成される。このとき、各パネル領域41の外側に形成される領域外アドレス電極21Aは、パネル領域41内側に形成される領域内アドレス電極21Bに比べて線幅が太く形成された太幅アドレス電極部21Cを有する。
このため、露光位置を第一露光領域42Aから第二露光領域42Bへと移動させて露光する際、露光位置が多少ずれたとしても、太幅アドレス電極部21Cの線幅が太いため、各パネル領域41の間を連続するように電極を形成することができ、領域外アドレス電極21Aの線幅が太くない場合に比べて露光位置の精度許容範囲が拡大できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示させる表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットパネルディスプレイパネルは、生産性の向上、製造コストの削減などを目的として、1枚のガラス基板に、多数のパネル領域を形成する多面取りプロセスが導入されてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1は、多面取りプロセスを用いる際、各面付け毎の電極パターンを接続し、多面取り基板を1面取り基板のようにすることで、電極検査工程において多数面の電極パターンを1面分の電極パターンの検査時間に短縮する。例えば、2面取りプロセスを用いた場合、電極検査工程に要する時間は1面取りプロセスと同じであるから、1面あたりの電極検査工程の時間は半分となる。
【0004】
【特許文献1】特開2005-25949号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多面取りプロセスを用いる際、1枚のガラス基板上に多数面の電極パターンを形成するため、ガラス基板を大型化することで、より多面な電極パターンを形成することができる。また、多面取りプロセスの有力な方法として、ある面を露光して電極パターンを形成した後、ガラス基板に対して露光する装置である露光マスクの位置を移動させて、同一ガラス基板上に同様な電極パターンを露光する方法、いわゆるステップ露光という方法がある。
しかしながら、特許文献1のような、電極検査工程において多面取り基板を1面取り基板のように検査する場合には、各面付け毎の電極パターンを接続する必要があるため、移動させる露光マスクとガラス基板との位置関係に高度な精度が要求されるという問題が一例として挙げられる。
【0006】
本発明は、多面取りプロセスにおいて、露光位置の精度許容範囲を拡大できる表示パネルの製造方法を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、互いに対向配置される一対の基板を備えた表示パネルの製造方法であって、複数の前記基板を形成可能なマザー基板上に、複数の前記基板に対応する複数のパネル領域に跨って連続した複数の電極を形成する電極形成工程と、前記電極形成工程において形成された前記電極に対して、各電極の長手方向導端部間、および隣り合う前記電極間の導通検査を実施する検査工程と、前記検査工程の後に、前記マザー基板における各パネル領域を切断し、前記電極を備えた各基板を分断する分断工程と、を備え、前記電極形成工程において、複数のパネル領域間の電極パターンをパネル領域内の電極パターンに比して太幅に形成することを特徴とする表示パネルの製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
以下、本実施の形態を図1から図5に基づいて説明する。図1は、従来のプラズマディスプレイパネルの電極構造を示した模式図である。図2は、本実施形態の両側アドレス電極駆動の同期露光背面マザー基板を示した平面図である。図3は、本実施形態の片側アドレス電極駆動の同期露光背面マザー基板を示した平面図である。図4は、本実施形態の両側アドレス電極駆動の別露光された背面マザー基板を示した平面図である。図5は、本実施形態の片側アドレス電極駆動の別露光された背面マザー基板を示した平面図である。
【0010】
〔本発明の実施の形態〕
(本実施の形態の構成)
図1に示すように、本実施の形態において、プラズマディスプレイパネル1は、例えば略平面長方形状に形成され、プラズマ放電による発光を利用して画像を表示させる装置である。このプラズマディスプレイパネル1は、画像表示領域を構成する放電空間Hを介して、互いに対向配置された一対の基板である第一基板としての背面基板2および第二基板としての前面基板3を備えている。
【0011】
これらの背面基板2および前面基板3は、それぞれ外周縁に図示しないシールフリットが設けられて封着されている。そして、封着された当該空間内部は例えば6.7×10Pa(500Torr)程度の減圧状態とされ、例えばHe−Xe(ヘリウム−キセノン)系やNe−Xe(ネオン−キセノン)系などの不活性ガスが充填されている。
【0012】
背面基板2は、例えば板状ガラス材にて平面長方形状に形成されている。この背面基板2の内面上には、複数のアドレス電極21と、これらのアドレス電極21上を覆うアドレス電極保護層22と、このアドレス電極保護層22上に一体的に設けられた隔壁23と、この隔壁23の放電セル231内部に充填された蛍光体層24(24R,24G,24B)と、などがそれぞれ設けられている。
【0013】
アドレス電極保護層22は、例えばガラスペーストなどにて形成され、背面基板2の内面上におけるアドレス電極引出部を除いた略全面に亘り設けられている。このアドレス電極保護層22は、パネル駆動時において、放電によるアドレス電極21の損耗を防止するとともに、駆動に必要な電荷を蓄積する誘電体層として機能する。なお、アドレス電極保護層22の外周縁部上には前述のシールフリットが設けられている。
【0014】
隔壁23は、例えば、アドレス電極保護層22と同一成分のガラスペーストにて略梯子状に形成されている。そして、アドレス電極保護層22上において、アドレス電極21と略直交する複数の直線状の隙間をそれぞれ間に挟んで、複数並列して設けられている。この隔壁23により放電空間Hが複数に区画され、これにて複数の矩形状の放電セル231が形成されている。そして、隔壁23は、その基端部から頂部までの高さがそれぞれ所定の高さ寸法に設定されており、背面基板2と前面基板3との間隙寸法を規定する。
【0015】
蛍光体層24R,24G,24Bは、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体ペーストが放電セル231内部に順に充填され、これが焼成されることにより形成される。これら蛍光体層24R,24G,24Bは、それぞれの放電セル231で発生した紫外光により励起され、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の可視光を発光する。
【0016】
前面基板3は、プラズマディスプレイパネル1の表示面を構成し、例えば、背面基板2と同一材料にて略同一形状に形成されている。この前面基板の内面上には、アドレス電極21と略直交して一定の間隔で配列された複数の表示電極対31と、これら表示電極対31間にそれぞれ設けられた複数のブラックストライプ32と、これら表示電極対31およびブラックストライプ32上を覆う誘電体層33と、この誘電体層33を覆う保護層34と、などがそれぞれ設けられている。
【0017】
表示電極対31は、放電ギャップGを介して対向する複数対の透明電極311と、これら透明電極311の一端部に積層する一対の直線状のバス電極312とを備えて構成されている。
【0018】
透明電極311は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜で略T字形状に形成されており、所定の放電セル231に対応して一対ずつ設けられている。
【0019】
バス電極312は、一対の透明電極311における放電ギャップGに対して反対側の端部に、それぞれ積層して設けられている。これらバス電極312のそれぞれの一端には図示しないバス電極引出部が形成され、このバス電極引出部を介して各透明電極311に図示しない行電極駆動部からの電圧パルスが印加されるようになっている。
このようなバス電極312は、透明電極311上に積層して設けられた黒色無機顔料などからなる図示しないバス電極黒層と、これらバス電極黒層に積層して設けられたAg(銀)などを主成分とする金属材料からなる図示しない主導電層とを備えた2層構造となっている。
【0020】
ブラックストライプ32は、バス電極黒層と同質の材料にて、直線状に形成されている。このブラックストライプ32およびバス電極黒層にて、前面基板3の外方から照射された可視光が吸収されるようになっている。
【0021】
誘電体層33は、例えばガラスペーストなどにて形成され、背面基板2のアドレス電極保護層22と対向して設けられている。この誘電体層33は、パネル駆動時において、放電による表示電極対31の損耗を防止するとともに、駆動に必要な電荷を蓄積する。
【0022】
保護層34は、誘電体層33上面を被覆するMgO(酸化マグネシウム)により層状に設けられている。このような保護層34は、誘電体層33が放電によりスパッタリングされることを防ぐ機能を有している。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の第一マザー基板である背面マザー基板40は、2枚の背面基板2を形成可能であり、露光領域42において露光され、アドレス電極21が形成される。この露光領域42は、第一露光領域42Aと第二露光領域42Bとに区分けされ、この第一露光領域42Aと第二露光領域42Bとは、それぞれ第一パネル領域41Aと第二パネル領域41Bとを含んだ領域である。これらの領域が露光されることによりアドレス電極21が背面マザー基板40上に設けられる。
このアドレス電極21は、パネル領域41の外側に形成される領域外アドレス電極21Aとパネル領域の内側に形成される領域内アドレス電極21Bとを備えている。この領域外アドレス電極21Aは、領域内アドレス電極21Bより太幅に形成された太幅アドレス電極部21Cを有している。
そして、背面マザー基板40は、第一パネル領域41Aと第二パネル領域41Bとの間で分断されることで2枚の背面基板2を形成する。この分断された背面基板2は、パネル領域41の両端側にアドレス電極引出部が形成される、いわゆる両側アドレス駆動タイプである。
【0024】
図3は、図2で示される背面マザー基板40とは異なる電極パターンの背面マザー基板40が示されている。
図3に示した背面マザー基板40は、図2と同様に、第一パネル領域41Aと第二パネル領域41Bとの間で分断されることで2枚の背面基板2を形成する。この背面基板2は、パネル領域41の片端側にのみアドレス電極引出部が形成される、いわゆる片側アドレス駆動タイプである点において図2の背面マザー基板と異なっている。
【0025】
図4は、図2および図3で示される背面マザー基板40とは異なる電極パターンの背面マザー基板40が示されている。
図4に示した背面マザー基板40は、図2と同様に、第一パネル領域41Aと第二パネル領域41Bとの間で分断されることで2枚の背面基板2が形成される両側アドレス電極駆動タイプであるが、第一露光領域42Aと第二露光領域42Bとの間に中継露光領域43が設けられる点において図2と異なっている。この中継露光領域43では、第一露光領域42Aと第二露光領域42Bとにおいてアドレス電極21が形成された後、別露光されることにより太幅アドレス電極部21Cが形成されることで、図2に示したアドレス電極21と同様な電極パターンが形成される。
【0026】
図5に示した背面マザー基板40は、図3と同様に、第一パネル領域41Aと第二パネル領域41Bとの間で分断されることで2枚の背面基板2が形成される片側アドレス電極駆動タイプであるが、第一露光領域42Aと第二露光領域42Bとの間に中継露光領域43が設けられる点において図3と異なっている。この中継露光領域43では、第一露光領域42Aと第二露光領域42Bとにおいてアドレス電極21が形成された後、別露光されることにより太幅アドレス電極部21Cが形成されることで、図2に示したアドレス電極21と同様な電極パターンが形成される。
【0027】
(プラズマディスプレイパネルの製造方法)
次に、上述した構成のプラズマディスプレイパネル1の製造方法を図2、図6および図7に基づいて説明する。
図2は、本実施形態の両側アドレス電極駆動の同期露光背面マザー基板を示した平面図である。図6は、プラズマディスプレイパネルの製造プロセスを示すフローチャートである。図7は、構造物形成工程を実施した後の背面マザー基板の断面図、および分断工程の実施により分断された背面基板の断面図である。
【0028】
プラズマディスプレイパネル1の製造では、先ず、背面基板2および前面基板3をそれぞれ製造する(背面基板製造工程および前面基板製造工程)。
【0029】
図6に示すように、背面基板製造工程は、ステップS101からステップS105を実施して背面基板2を製造する。なお、本実施の形態では、図2に示すように、背面マザー基板40は、2つのパネル領域41(第一パネル領域41A、第二パネル領域41B)が形成される例について説明する。
【0030】
背面基板製造工程では、先ず、背面マザー基板40の表面上にアドレス電極21を形成する(ステップS101:電極形成工程としてのアドレス電極形成工程)。このアドレス電極形成工程では、背面マザー基板40の一面(背面基板2の前面基板3と対向する内面側)に、スパッタリング法などにより、アドレス電極21の材料となるAl電極材料層を形成する。この後、背面マザー基板40は、フォトリソグラフィ法などを用いて、露光マスクにより露光されてアドレス電極21の電極パターンを形成する。
図2に示すように、このアドレス電極形成工程では、背面マザー基板40全体へ一度に露光せず、露光位置を変えながら複数回露光させる、いわゆるステップ露光によりアドレス電極21を形成する。具体的には、第一パネル領域41Aを包含する第一露光領域42Aへ露光させて第一露光領域42A内のアドレス電極21を形成し、その後、第二パネル領域41Bを包含する第二露光領域42Bへ露光させて第二露光領域42B内のアドレス電極21を形成する。
このとき、アドレス電極21は、2つのパネル領域41(41A、41B)に跨って連続するような電極パターンが形成される。また、各パネル領域41の外側に形成される領域外アドレス電極21Aには、パネル領域41内側に形成される領域内アドレス電極21Bに比べて線幅が太く形成された太幅アドレス電極部21Cが形成される。
また、図4および図5に示すような中継露光領域43が別露光される場合は、第一露光領域42A内のアドレス電極21を形成し、その後、第二露光領域42B内のアドレス電極21を形成した後、中継露光領域43へ露光させて太幅アドレス電極部21Cを形成する。
【0031】
ステップS101のアドレス電極形成工程の後、アドレス電極検査工程を実施する(ステップS102)。このアドレス電極検査工程では、ステップS101にて形成された各アドレス電極21に導通検査を実施して、断線や短絡の有無を検査する。
【0032】
このアドレス電極検査工程では、各アドレス電極21の両端部間に図示しない検査装置の検査配線を接続して、所定の検査用電圧を印加して、断線の有無を検査する。
この時、ステップS101において各アドレス電極21は、第一パネル領域41Aおよび第二パネル領域41Bに跨って連続形成されているため、第一パネル領域41Aに配設されるアドレス電極21および第二パネル領域41Bに配設されるアドレス電極21を同時に導通検査することが可能である。
【0033】
このステップS102のアドレス電極検査工程において、断線や短絡が検出された場合、欠陥部位を検出して、その部位におけるアドレス電極21を修復する。なお、全てのアドレス電極21を除去して再度ステップS101のアドレス電極形成工程を実施してもよく、不良基板として廃棄処理してもよい。
【0034】
一方、ステップS102のアドレス電極検査工程において、断線や短絡が検出されなかった場合、背面構造物形成工程を実施する(ステップS103)。この背面構造物形成工程では、アドレス電極21が形成された背面マザー基板40の各パネル領域41上に、アドレス電極保護層22、隔壁23、および蛍光体層24を形成する。
具体的には、図7に示すように、各パネル領域41のアドレス電極21の上に、誘電体ペーストを塗布し、この誘電体ペーストを成形・焼成することにより、アドレス電極保護層22および隔壁23を形成する。また、隔壁23により形成される各放電セル231内部にスクリーン印刷法などにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体ペーストを塗布し、これを焼成して蛍光体層24を形成する。
【0035】
そして、このステップS103の後、背面マザー基板40の第一パネル領域41Aおよび第二パネル領域41Bを、アドレス電極21および背面構造物(アドレス電極保護層22、隔壁23、および蛍光体層24)とともに切断する(ステップS104:背面基板分断工程)。なお、この背面基板分断工程における、背面基板2の分断方法としては、カッターによる切断、レーザによる切断など、いかなる切断手段を用いてもよい。
【0036】
また、この背面基板分断工程の後、得られた背面基板2のアドレス電極21の端部の形状が異なるため、背面基板2の端部を、例えば、表面研磨やレーザ切断などの加工法により、全ての背面基板2が同一形状となるように整形する(ステップS105:背面基板整形工程)。また、整形した背面基板2は、背面基板2の短辺方向の略中心線に沿ってアドレス電極21を表面研磨されることで、アドレス電極21の中心位置を除去し、両側アドレス駆動タイプの背面基板2の電極パターンが形成される。
その後、背面基板2には、例えば、低融点ガラス粉末と、アクリルなどの樹脂と、ターピネオールなどの溶剤とを混練したペーストを図示しないシールフリットとしてアドレス電極保護層22の周縁に沿う状態に設ける。
【0037】
前面基板形成工程は、背面基板形成工程を略同様の製造方法により前面基板3を製造する。この前面基板形成工程では、図6におけるステップS106〜ステップS110を実施して、前面基板3と同一材質からなる図示しない第二マザー基板である前面マザー基板から、複数の前面基板3を分断し、前面基板3を製造する。なお、前面基板3の製造に関して、背面基板2の製造と略同様の手法により製造されるため、詳細な図を省略する。
【0038】
前面基板形成工程では、まず、前面マザー基板の表面上に表示電極対31(透明電極311およびバス電極312)を形成する(ステップS106:電極形成工程としての前面側電極形成工程)。
この前面側電極形成工程では、前面マザー基板の一面(前面基板3の背面基板2と対向する内面側)に、フォトリソグラフィ法などにより透明電極311の電極パターンを形成する。そして、透明電極311上に、例えば、スクリーン印刷法などにより導電性ペーストのパターンを積層形成し、これを焼成してバス電極312を形成する。
この前面側電極形成工程では、アドレス電極形成工程と同様に、前面マザー基板全体へ一度に露光せず、露光位置を変えながら複数回露光させる、いわゆるステップ露光により表示電極対31を形成する。
このとき、表示電極対31は、複数のパネル領域に跨って連続するように電極パターンが形成される。また、各パネル領域の外側に形成される領域間表示電極対は、パネル領域内に形成される領域内表示電極対に比べて線幅が太く形成される。
【0039】
ステップS106の前面側電極形成工程の後、バス電極検査工程を実施する(ステップS107)。このバス電極検査工程では、ステップS106にて形成された各バス電極312に導通検査を実施して、断線や短絡の有無を検査する。
【0040】
具体的には、バス電極検査工程では、各バス電極312の両端部間に図示しない検査装置の検査配線を接続して、所定の検査用電圧を印加して、断線の有無を検査する。また、バス電極検査工程では、隣り合うバス電極312間の導通状態を検査し、短絡の有無を検査する。
この時、ステップS106において各バス電極312は、複数のパネル領域に跨って連続形成されているため、全てのバス電極312を検査することで、これらのパネル領域に配設される全てのバス電極312を同時に導通検査することが可能となる。
【0041】
このステップS107のバス電極検査工程において、断線や短絡が検出された場合、欠陥部位を検出して、その部位におけるバス電極312を修復する。なお、全てのバス電極312の電極パターンを除去して再度ステップS106の前面側電極形成工程を実施してもよく、不良基板として廃棄処理してもよい。
【0042】
一方、ステップS107のバス電極検査工程において、断線や短絡が検出されなかった場合、前面構造物形成工程を実施する(ステップS108)。
この前面構造物形成工程では、バス電極312間にスクリーン印刷法などにより黒色ペーストのパターンを形成し、これを焼成してブラックストライプ32を形成する。また、ダイコータなどにより透明電極311、バス電極312およびブラックストライプ32を被覆する状態に誘電体ペーストを塗布し、これを焼成して誘電体層33を形成する。さらに、誘電体層33上に、蒸着法やスパッタリング法などの成膜法にて、保護層34としてのMgO膜を形成し、焼成処理を実施する。
【0043】
この後、前面マザー基板の各パネル領域を、バス電極312、透明電極311、および前面構造物(ブラックストライプ32、誘電体層33、および保護層34)とともに切断し、前面基板3を生成する(ステップS109:前面基板分断工程)。なお、この前面基板分断工程における、前面基板3の分断方法としては、カッターによる切断、レーザによる切断など、いかなる切断手段を用いてもよい。
【0044】
また、この前面基板分断工程の後、得られた前面基板3のバス電極312の端部の形状が異なる場合、前面基板3の端部を、例えば、表面研磨やレーザ切断などの加工法により、全ての前面基板3が同一形状となるように整形する(ステップS110:前面基板整形工程)。
【0045】
そして、上記のような背面基板製造工程および前面基板製造工程の後、ステップS105およびステップS110にてそれぞれ整形された背面基板2および前面基板3を重ね合わせる重ね合わせ工程を実施する(ステップS111)。
【0046】
また、ステップS111の後、封着工程を実施する(ステップS112)。この封着工程では、ステップS111の重ね合わせ工程で重ね合わされた前面基板3と背面基板2とを、シールフリット中の低融点ガラスが溶解する温度以上の所定温度まで加熱し、所定時間この温度を維持させて低融点ガラスを軟化溶融させる。この後、低融点ガラスが凝固する温度まで降温させて、前面基板3および背面基板2間の内部空間を封止する。また、この時、例えば、シールフリットに設けられる図示しない通気孔から真空ポンプなどにより、内部空間の気体を排気し、この後、この通気孔から放電ガスを導入して、内部空間が所定圧力に達すると通気孔を封鎖して内部空間を密封する。
【0047】
(本実施の形態の作用効果)
上記のような構成の本実施の形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)上述したように、上記プラズマディスプレイパネル1の製造方法では、アドレス電極21は、複数のパネル領域41に跨って連続するように電極パターンが形成される。そして、各パネル領域41の外側に形成される領域外アドレス電極21Aは、パネル領域41内側に形成される領域内アドレス電極21Bに比べて線幅が太く形成された太幅アドレス電極部21Cを有する。
また、前面側電極形成工程においても、アドレス電極形成工程と同様に、表示電極対31は、複数のパネル領域に跨って連続するように電極パターンが形成される。そして、各パネル領域の外側に形成される領域間表示電極対は、パネル領域内に形成される領域内表示電極対に比べて線幅が太く形成された太幅表示電極部を有する。
従って、アドレス電極形成工程および前面側電極形成工程において、背面マザー基板40や前面マザー基板全体へ一度に露光せず、露光位置を変えながら複数回露光させる、いわゆるステップ露光によりアドレス電極21や表示電極対31を形成するような場合、具体的に、アドレス電極形成工程では、第一パネル領域41Aを包含する第一露光領域42Aへ露光させて第一露光領域42A内のアドレス電極21を形成し、その後、第二パネル領域41Bを包含する第二露光領域42Bへ露光させて第二露光領域42B内のアドレス電極21を形成するような場合、露光位置を第一露光領域42Aから第二露光領域42Bへと移動させて露光する際、露光位置が多少ずれたとしても、領域外アドレス電極21Aの線幅が太いため、各パネル領域41の間を連続するように電極を形成することができる。
このため、領域外アドレス電極21Aや領域外表示電極対の線幅が太くない場合に比べて露光位置の精度許容範囲が拡大できる。
【0048】
(2)背面基板製造工程において、ステップS102のアドレス電極検査工程の後、背面構造物形成工程を実施して、アドレス電極保護層22、隔壁23、および蛍光体層24を形成し、この背面構造物形成工程の後、背面基板分断工程を実施する。また、前面基板製造工程において、ステップS107のバス電極検査工程の後、前面構造物形成工程を実施して、ブラックストライプ32、誘電体層33、および保護層34を形成し、この後、前面基板分断工程を実施する。
このため、アドレス電極検査工程やバス電極検査工程により、断線や短絡がないと確認された後に、各構造物を形成することができ、構造物を形成するための材料の無駄を無くすことができる。すなわち、アドレス電極21やバス電極312に断線や短絡がある場合、その背面基板2または前面基板3は不良基板となり、正常な画像表示動作を実施することができない。このような不良基板に、アドレス電極保護層22、隔壁23、蛍光体層24、ブラックストライプ32、誘電体層33、および保護層34などといった構造物を形成すると、これらの構造物までも無駄になってしまう。これに対して、上記実施の形態のように、アドレス電極検査工程およびバス電極検査工程の後、背面構造物形成工程や前面構造物形成工程を実施することで、不良基板上に構造物を形成してしまう不都合を回避することができ、プラズマディスプレイパネル1の製造における製造コストの低減を図ることができる。
【0049】
(3)背面基板2は、アドレス電極形成工程から背面基板形成工程を経て製造される。また、これとは独立して、前面基板3は、前面側電極形成工程から前面基板形成工程を経て製造される。そして、重ね合わせ工程において、上記製造された背面基板2および前面基板3を重ね合わせ、封着工程において、これら背面基板2および前面基板3を封着している。
このため、背面基板2の製造工程および前面基板3の製造工程を同時並行して行うことができるので、プラズマディスプレイパネル1の製造に係る時間をより大きく削減することができる。
【0050】
(4)背面基板整形工程および前面基板整形工程において、背面マザー基板40および前面マザー基板から分断された背面基板2および前面基板3を整形している。すなわち、背面マザー基板40におけるアドレス電極は、第一パネル領域41Aおよび第二パネル領域41Bに跨って連続形成されるため、分断されて製造された各背面基板2は、それぞれアドレス電極の端部の形状が異なる場合がある。前面基板3におけるバス電極312の端部形状も同様である。これに対して、背面基板整形工程および前面基板整形工程において、表面研磨やレーザ切断などを実施することにより、全ての背面基板2および全ての前面基板3の形状が同一となるように整形している。
このため、各背面基板2や、各前面基板3の形状を統一することができるので、重ね合わせ工程における背面基板2と前面基板3との重ね合わせの際に、基板に応じて適宜位置調整を実施するなどの煩雑な作業を省略することができ、プラズマディスプレイパネル1の製造に係る製造時間を短縮することができる。
【0051】
(5)背面基板2の端部を、例えば、表面研磨やレーザ切断などの加工法により、全ての背面基板2が同一形状となるように整形する(ステップS105:背面基板整形工程)。また、整形した背面基板2は、背面基板2の短辺方向の略中心線に沿ってアドレス電極21を表面研磨されることで、アドレス電極21の中心位置を除去し、両側アドレス駆動タイプの背面基板2の電極パターンが形成される。
このため、アドレス電極形成工程の後、アドレス電極検査工程を実施し、背面基板2を分断した後に両面アドレス駆動に対応するように表面研磨を実施するので、アドレス電極検査工程において導通検査するアドレス電極21の数が増大しないので、従来のように完成した背面基板2に対してアドレス電極21の導通検査を実施する場合に比べて、アドレス電極検査工程に係る時間を低減させることができる。
【0052】
〔実施の形態の変形〕
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
【0053】
本実施の形態では、図2に示したような2枚の背面基板2を形成可能な背面マザー基板40を用いたがこれに限らない。すなわち、例えば、図8に示したような3枚の背面基板2を形成可能な背面マザー基板40を用いてもよい。この場合、アドレス電極検査工程は、1枚の背面基板2のアドレス電極21を検査する作業時間で3枚の背面基板2のアドレス電極21を検査することができるので、アドレス電極検査工程の工程時間が更に短縮できる。
【0054】
本実施形態では、図4および図5のような別露光された背面マザー基板40において、第一露光領域42Aおよび第二露光領域42Bへ露光した後、中継露光領域43へ露光を行ったが、この露光順序に限らない。従って、例えば、中継露光領域43へ露光を行った後、第一露光領域42Aおよび第二露光領域42Bへ露光してもよい。すなわち、目的とするアドレス電極21の電極パターンが得られれば、それでよく、露光順序はいずれでもよい。
【0055】
上述したように、上記プラズマディスプレイパネル1の製造方法では、アドレス電極21は、複数のパネル領域41に跨って連続した複数の電極を形成する電極形成工程と、この電極形成工程において形成された電極に対して、各電極の長手方向導端部間、および隣り合う電極間の導通検査を実施する検査工程と、この検査工程の後に、マザー基板における各パネル領域を切断し、電極を備えた各基板を分断する分断工程と、を備える。そして、前記電極形成工程において、各パネル領域41の外側に形成される領域外アドレス電極21Aは、パネル領域41内側に形成される領域内アドレス電極21Bに比べて線幅が太く形成する。
従って、アドレス電極形成工程および前面側電極形成工程において、背面マザー基板40や前面マザー基板全体へ一度に露光せず、露光位置を変えながら複数回露光させる、いわゆるステップ露光によりアドレス電極21や表示電極対31を形成するような場合、具体的に、アドレス電極形成工程では、第一パネル領域41Aを包含する第一露光領域42Aへ露光させて第一露光領域42A内のアドレス電極21を形成し、その後、第二パネル領域41Bを包含する第二露光領域42Bへ露光させて第二露光領域42B内のアドレス電極21を形成するような場合、露光位置を第一露光領域42Aから第二露光領域42Bへと移動させて露光する際、露光位置が多少ずれたとしても、領域外アドレス電極21Aの線幅が太いため、各パネル領域41の間を連続するように電極を形成することができる。
このため、領域外アドレス電極21Aや領域外表示電極対の線幅が太くない場合に比べて露光位置の精度許容範囲が拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来のプラズマディスプレイパネルの電極構造を示した模式図である。
【図2】本実施形態の両側アドレス電極駆動の同期露光背面マザー基板を示した平面図である。
【図3】本実施形態の片側アドレス電極駆動の同期露光背面マザー基板を示した平面図である。
【図4】本実施形態の両側アドレス電極駆動の別露光された背面マザー基板を示した平面図である。
【図5】本実施形態の片側アドレス電極駆動の別露光された背面マザー基板を示した平面図である。
【図6】プラズマディスプレイパネルの製造プロセスを示すフローチャートである。
【図7】構造物形成工程を実施した後の背面マザー基板の断面図、および分断工程の実施により分断された背面基板の断面図である。
【図8】本実施形態の変形例における背面マザー基板を示した平面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…プラズマディスプレイパネル
2…背面基板
3…前面基板
21…アドレス電極
21A…領域外アドレス電極
21B…領域内アドレス電極
21C…太幅アドレス電極部
40…背面マザー基板
41…パネル領域
41A…第一パネル領域
41B…第二パネル領域
312…バス電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置される一対の基板を備えた表示パネルの製造方法であって、
複数の前記基板を形成可能なマザー基板上に、複数の前記基板に対応する複数のパネル領域に跨って連続した複数の電極を形成する電極形成工程と、前記電極形成工程において形成された前記電極に対して、各電極の長手方向導端部間、および隣り合う前記電極間の導通検査を実施する検査工程と、前記検査工程の後に、前記マザー基板における各パネル領域を切断し、前記電極を備えた各基板を分断する分断工程と、を備え、前記電極形成工程において、複数のパネル領域間の電極パターンをパネル領域内の電極パターンに比して太幅に形成することを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表示パネルの製造方法において、
前記検査工程の後、前記マザー基板上の各パネル領域上に、前記表示パネルを構成する構造物を形成する構造物形成工程を備え、前記分断工程は、前記構造物形成工程の後に実施されることを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示パネルの製造方法において、
前記基板は、電極として第一電極が形成される第一基板と、電極として第二電極が形成される第二基板とを備え、前記マザー基板に前記第一基板用の第一マザー基板と第二マザー基板とを備え、前記電極形成工程は、前記第一基板用の前記第一マザー基板に前記第一電極を形成するとともに、前記第二基板用の前記第二マザー基板に前記第二電極を形成し、前記分断工程は、前記第一マザー基板から前記第一基板を分断するとともに、前記第二マザー基板から前記第二基板を分断し、前記分断工程により分断された前記第一基板と前記第二基板とを張り合わせる張り合わせ工程を備えることを特徴とする表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−129765(P2009−129765A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304518(P2007−304518)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】