説明

表示パネル収納装置および表示パネル収納構造

【課題】コストアップを回避しつつ、異形形状の表示パネルが、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から傷、クラックなどのダメージを受けないようにする表示パネル収納装置および表示パネル収納構造を提供すること。
【解決手段】本発明に係る表示パネル収納装置10は、表示パネル1を収納する矩形状の収納部2と、前記収納部の側面により包囲される領域21よりも狭く、前記表示パネル1の主面よりも広い矩形状の保護シート3と、を備え、前記保護シート3は、シート基材31と、当該シート基材の一方の面に前記表示パネルを剥離可能に固定する粘着剤層32と、を有し、シート基材の厚みが1〜5mmである表示パネル収納装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネル収納装置および表示パネル収納構造に関し、特に、異形形状の表示パネルを収納する表示パネル収納装置および表示パネル収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、表示装置において、画像の表示を行う表示パネルは、例えば、素子基板と、素子基板に対向して配置された対向基板との間に液晶を挟持した構成を有している。ここで、素子基板の材料は主にガラス材料が使用されている。従来、ガラス材料の加工性の観点から、素子基板は四角形の形状が主流であった。この四角形の素子基板から構成された表示パネルを輸送する際には、四角形状の開口を有し、表示パネルを収納する凹形状の収納部を複数有する表示パネル収納装置が使用されていた。ここで、表示パネル収納装置の材料としては、発泡スチロール等の発泡材料や、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの非発泡材料が一般的に使用されている。さらに、これらの材料でできた表示パネル収納装置と、素子基板との接触により素子基板主面に傷などを付けないようにするために、素子基板主面を保護する保護フィルムが使用されている。ここで、保護フィルムの材料としては、基材主面に粘着剤を有する200μm程度のフィルムが用いられている。具体的に保護フィルムの材料を述べれば、フィルム基材には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等を使用し、粘着剤には、ゴム系又はアクリル系が使用されている。
【0003】
しかし、近年、デザイン性による付加価値を高めるため、表示パネルが四角形以外の形状、例えば、一部に弧を有する形状や、多角形の形状等からなる異形形状の需要が高まっている。このような異形形状の表示パネルを、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から傷、クラックなどのダメージを受けないようにするためには、このような異形形状に沿って形どった収納部を有する表示パネル収納装置が使用される必要があった。このような従来の表示パネル収納装置を特許文献1は開示している。また図5は従来の表示パネル収納装置を説明するための図である。図5に示すように、輸送中のダメージを抑えるためには、異形形状の表示パネル1の形状に極力合わせた異形形状の収納部102が必要であり、表示パネルの形状が変わる度に、それ専用の収納部を有する表示パネル収納装置100が必要であった。また、異形形状の表示パネル1の形状が変わる度に、その素子基板主面を保護する異形形状の保護フィルム103が必要であった。このような表示パネルの異形形状に合わせた収納部102を有する表示パネル収納装置100や異形形状の保護フィルム103を作製するには、新規の金型や治工具が必要となり、コストアップの原因となっていた。
【0004】
【特許文献1】特開平9−315487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、異形形状の表示パネル1を、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から傷、クラックなどのダメージを受けないようにするためには、異形形状に極力合わせた異形形状の収納部102を有する表示パネル収納装置100、および異形形状に極力合わせた異形形状の保護フィルム103が必要であった。このような表示パネル収納装置100や保護フィルム103を作製するには、新規に金型や治工具が必要となり、コストがアップするという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、コストアップを回避しつつ、異形形状の表示パネルが、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から傷、クラックなどのダメージを受けないようにする表示パネル収納装置および表示パネル収納構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表示パネル収納装置は、異形形状の表示パネルを収納する矩形状の収納部と、前記収納部の側面により包囲される領域よりも狭く、前記表示パネルの主面よりも広い矩形状の保護シートと、を備え、前記保護シートは、肉厚部材からなるシート基材と、当該シート基材の一方の面に前記表示パネルを剥離可能に固定する粘着剤層と、を有していることを特徴としている。
【0008】
このような表示パネル収納装置は、異形形状の表示パネルを、矩形状の収納部の内において、表示パネルの主面よりも広い矩形状であって、肉厚部材からなる保護シートに接着固定している。よって、異形形状の表示パネルは、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から傷、クラックなどのダメージを受けない。また矩形状の収納部、矩形状の保護シートにより、新規の金型や治工具が不必要となり、加工効率も良く、コストアップを抑えることができる。
【0009】
また、このような表示パネル収納装置として、前記肉厚部材からなるシート基材の厚みが、1〜5mmであるように構成されていてもよい。
【0010】
このようなシート基材は、コストアップすることなく、異形形状の表示パネルを、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から傷、クラックなどのダメージから守ることができる。
【0011】
また、このような表示パネル収納装置として、前記矩形状の収納部が、当該表示パネル収納装置における縦方向および横方向に複数個備えられているように構成されていてもよい。
【0012】
表示パネル収納装置に、収納部が複数個備えられていることにより、複数個の表示パネルを一度に輸送することができ、輸送コストを極力抑えることができる。
【0013】
また、このような表示パネル収納装置として、一つの前記表示パネルに対し、前記収納部と前記保護シートが一つずつ対応するように構成されていてもよい。
【0014】
このように構成することにより、表示パネルを一つずつ、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から傷、クラックなどのダメージを受けないように、安全かつ確実に、輸送することができる。
【0015】
また、このような表示パネル収納装置として、複数の前記表示パネルに対し、前記収納部と前記保護シートが一つずつ対応するように構成されていてもよい。
【0016】
このように構成することにより、表示パネルが小さい場合、矩形状の収納部に複数個の表示パネルを配置して輸送できる。よって、輸送効率をあげることができるので、輸送コストを極力抑えることができる。
【0017】
本発明に係る表示パネル収納構造は、異形形状の表示パネルと、前記表示パネルを収納可能な矩形状の収納部と、前記収納部の側面により包囲される領域よりも狭く、前記表示パネルの主面よりも広い矩形状の保護シートと、を備え、前記保護シートは、肉厚部材からなるシート基材と、前記表示パネルを剥離可能に固定する粘着剤層とを有し、前記表示パネルは、当該表示パネルの上側主面または下側主面に前記保護シートが剥離可能に固定された状態で、前記矩形状の収納部に収納されていることを特徴としている。
【0018】
このような表示パネル収納構造は、矩形状の収納部内において、異形形状の表示パネルが、当該表示パネルの主面よりも広い矩形状であって、肉厚部材からなる保護シートを、表示パネルの上側主面または下側主面に剥離可能に固定した状態で、収納されている。よって、異形形状の表示パネルは、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的付加から傷、クラックなどのダメージを受けないように、安全かつ確実に、輸送することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、コストアップを回避しつつ、異形形状の表示パネルが、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から傷、クラックなどのダメージを受けないようにする表示パネル収納装置および表示パネル収納構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る表示パネル収納装置10の構成について、表示パネル収納装置10の平面図である図1を参照して説明する。図1に示されるように、本発明の実施の形態1に係る表示パネル収納装置10は、ガラス材料でできた異形形状の素子基板と、素子基板に対向して配置されたガラス材料でできた異形形状の対向基板との間に液晶を挟持した構成を有している異形形状の表示パネル1を収納する矩形状の収納部2を、備えている。また、異形形状の表示パネル1と横断面形状が矩形状の収納部2との間に配置する矩形状の保護シート3を備えている。異形形状の表示パネル1および矩形状の保護シート3が表示パネル収納装置10における矩形状の収納部2に収納された状態を、図1のII−II線に対応する断面図である図2に示す。
【0021】
また、本発明の実施の形態1に係る表示パネル収納装置10は、一つの異形形状の表示パネル1に対して、矩形状の収納部2と矩形状の保護シート3が一つずつ対応するように構成されている。さらにまた、本発明の実施の形態1に係る表示パネル収納装置10には、図3に示すように、矩形状の収納部2が表示パネル収納装置10の縦方向と横方向に複数個形成されている。
【0022】
表示パネル収納装置10は、発泡スチロール等の発泡材料や、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの非発泡材料から形成されたものである。また、矩形状の収納部2は、横断面が矩形状で、その深さは異形形状の表示パネル1の厚みより深く切削加工したものであり、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から異形形状の表示パネル1の特に端部が破損、傷、クラックなどのダメージを受けないようにしている。
【0023】
矩形状の保護シート3は、シート基材31の主面に粘着剤層32を有し、シート基材31の厚みが1〜5mmのシートである。粘着剤層32の粘着剤には、ゴム系又はアクリル系を使用し、異形形状の表示パネル1を剥離可能に固定している。またシート基材31には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等を使用している。矩形状の保護シート3は、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷から異形形状の表示パネル1のパネル主面への破損、傷、クラックなどのダメージを受けないようにしている。
【0024】
ここで、矩形状の保護シート3の厚みが1mmより薄いシートになると、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷と、異形形状の表示パネル1の重量によりシートがたわんでしまう。よって、異形形状の表示パネル1の特に端部が、収納部2に接触し、破損、傷、クラックなどのダメージを受ける場合がある。また矩形状の保護シート3の厚みが5mmより厚いシートになれば、保護シートの材料費がアップしてしまう。
【0025】
本発明の実施の形態1によれば、異形形状の表示パネル1のパネル主面が、矩形状の保護シート3の粘着剤層32で剥離可能に固定されている。また、異形形状の表示パネル1は、表示パネル1の主面より大きく、矩形状の収納部2の側面により包囲される領域21より狭いサイズであって、厚みが1〜5mmの保護シート3で保持された状態で、矩形状の収納部2に収納されている。また、矩形状の収納部2の側面により包囲される領域21と矩形状の保護シート3は、相似形である。よって、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷と、異形形状の表示パネル1の重量により、保護シート3がたわむことがない。また、異形形状の表示パネル1の特に端部が、収納部2の断面に接触することが無く、破損、傷、クラックなどのダメージを受けることがない。さらに、異形形状の表示パネル1の形状にかかわらず、常に、加工効率の良い、矩形状の収納部2と矩形状の保護シート3を使用することができるので、コストアップを回避することができる。
【0026】
また表示パネル1よりも、矩形状の保護シート3の方が、サイズが大きいので、表示パネルの輸送後、表示パネルを使用する時には不要な、保護シートを剥がす際に使用する、プルタブを付ける必要がなく、容易に剥がすことができる。よって、プルタブの材料費を抑え、作業効率を向上させることができる。
【0027】
尚、本発明の実施の形態1は、図2に示すように、保護シート3を異形形状の表示パネル1と矩形状の収納部2との間に配置しているが、異形形状の表示パネル1を、保護シート3と矩形状の収納部2との間に配置する構成にしても良い。
【0028】
発明の実施の形態2.
次に本発明の実施の形態2に係る表示パネル収納装置10について、図4を参照して説明する。尚、この発明の実施の形態2に係る表示パネル収納装置の全体構成は図1、2、3に示す構成と同様であり、説明を省略する。この発明の実施の形態2では、複数の表示パネルに対し、矩形状の収納部2と矩形状の保護シート3が一つずつ対応するように構成されている点に特徴を有する。
【0029】
本発明の実施の形態2によれば、一枚の矩形状の保護シート3の粘着剤層32に、複数個の表示パネルが、剥離可能に固定され、一箇所の矩形状の収納部2に収納されている。このように収納される表示パネルは、携帯電話などの比較的小さい表示パネルである場合に特に有効である。比較的小さい表示パネルであれば、異形形状の表示パネル1の重量と、輸送中の振動、落下、横倒し及び傾き等の外的負荷により、保護シート3がたわむことがない。また、個々の表示パネルの主面が粘着剤により保護シート3に固定されているので、異形形状の表示パネル1同士が接触することがない。また異形形状の表示パネル1の特に端部が、収納部2の断面に接触することが無く、破損、傷、クラックなどのダメージを受けることがない。よって、異形形状の表示パネル1に輸送途中のダメージを与えず、常に、加工効率の良い、矩形状の収納部2と矩形状の保護シート3を使用することができるので、コストアップを回避することができる。さらに、矩形状の収納部に複数個の表示パネルを配置して輸送できので、輸送効率をさらに向上させ、輸送コストを極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る表示パネル収納装置10の一例を示す平面図である。
【図2】本発明に係る表示パネル収納装置10の一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る表示パネル収納装置10の一例を示す平面図である。
【図4】本発明に係る表示パネル収納装置10の一例を示す平面図である。
【図5】従来の表示パネル収納装置100を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 異形形状の表示パネル
2 矩形状の収納部
3 矩形状の保護シート
21 側面により包囲される領域
31 シート基材
32 粘着剤層
101 異形形状の収納部
103 異形形状の保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形形状の表示パネルを収納する矩形状の収納部と、
前記収納部の側面により包囲される領域よりも狭く、前記表示パネルの主面よりも広い矩形状の保護シートと、を備え、
前記保護シートは、肉厚部材からなるシート基材と、当該シート基材の一方の面に前記表示パネルを剥離可能に固定する粘着剤層と、を有している表示パネル収納装置。
【請求項2】
前記肉厚部材からなるシート基材の厚みが、1〜5mmであることを特徴とする請求項1記載の表示パネル収納装置。
【請求項3】
前記矩形状の収納部が、当該表示パネル収納装置における縦方向および横方向に複数個備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示パネル収納装置。
【請求項4】
一つの前記表示パネルに対し、前記収納部と前記保護シートが一つずつ対応する請求項1から3のいずれかに記載の表示パネル収納装置。
【請求項5】
複数の前記表示パネルに対し、前記収納部と前記保護シートが一つずつ対応する請求項1から3のいずれかに記載の表示パネル収納装置。
【請求項6】
異形形状の表示パネルと、
前記表示パネルを収納可能な矩形状の収納部と、
前記収納部の側面により包囲される領域よりも狭く、前記表示パネルの主面よりも広い矩形状の保護シートと、を備え、
前記保護シートは、肉厚部材からなるシート基材と、前記表示パネルを剥離可能に固定する粘着剤層とを有し、
前記表示パネルは、当該表示パネルの上側主面または下側主面に前記保護シートが剥離可能に固定された状態で、前記矩形状の収納部に収納されている表示パネル収納構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−139397(P2008−139397A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323251(P2006−323251)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】