説明

表示パネル

【課題】パネル構成部材同士の係合箇所からの棒材の意図しない抜け出しを防ぐと共に、係合箇所の状態を関係者や第三者に対して、視覚的に容易に確認させることができる表示パネルを提供することにある。
【解決手段】係合部3と被係合部4が当接して対峙する箇所には、挿入孔形成溝5a、5bをそれぞれ設けてあると共に、両挿入孔形成溝5a、5bが対面して挿入孔5を形成し、挿入孔5には、この挿入孔5の孔長と略同一の長さであり且つ孔径と略同一幅を有する棒材6を挿入してあり、前記両挿入孔形成溝5a、5bの各々の溝壁部7a、7bは、各々が挿入孔5の外周側に屈曲状又は湾曲状に形成してあると共に、内周面Uに薄肉部9a、9bを設けてあり、両溝壁部7a、7bは、各々の外周面Tを押圧したときに、挿入孔5の内部に向けて変形し、両溝壁部7a、7bの内周面Uが棒材6を両側からそれぞれ押圧して可締めることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路標識や店舗看板、各種案内パネルに適用する表示パネルに関し、特に中空押出形材によりパネル構成部材を形成する表示パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、断面略矩形状をなす中空押出形材からなるパネル構成部材同士を上下方向または左右方向に一列に配して係合し、その係合箇所に棒材を挿入して各パネル構成部材同士の係合強度を高める態様の表示パネルがあった。このような表示パネルは、主として道路標識などに使用されており、具体的には、隣り合って係合する各パネル構成部材同士の係合箇所にそれぞれ挿入孔形成溝を設け、互いを係合したときに孔形成溝同士が合わさって形成される挿入孔に棒材を圧入することで、パネル構成部材同士の係合を高めるものであった。
【特許文献1】特開平11−280175
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、棒材を圧入したのみでは、経年の使用により、自動車の往来や振動などの要因で棒材が係合箇所から次第に抜け出す懸念があり、仮に棒材が挿入孔から抜け出したときには、表示パネル下を往来する歩行者や自動者に落下する危険性があった。
【0004】
本発明は以上に述べたような実情に鑑み、パネル構成部材同士の係合箇所からの棒材の意図しない抜け出しを防ぐと共に、係合箇所の状態を関係者や第三者に対して、視覚的に容易に確認させることができる表示パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明は、複数のパネル構成部材を上下方向あるいは左右方向に一列に配して係合する表示パネルであって、連接して隣り合う一方および他方の両パネル構成部材が突き合せる側には、各々が係合する係合部と被係合部のいずれかを有しており、係合した係合部と被係合部が当接して対峙する箇所には、挿入孔形成溝をそれぞれ設けてあると共に、両挿入孔形成溝が対面して挿入孔を形成し、挿入孔には、この挿入孔の孔長と略同一の長さであり且つ孔径と略同一幅を有する棒材を挿入してあり、前記両挿入孔形成溝)の各々の溝壁部は、各々が挿入孔の外周側に屈曲状又は湾曲状に形成してあると共に、内周面に薄肉部を設けてあり、両溝壁部は、各々の外周面を押圧したときに、挿入孔の内部に向けて変形し、両溝壁部の内周面が棒材を両側からそれぞれ押圧して可締めることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2記載の発明では、前記棒材は、断面略矩形状をなすことを特徴とする。
ここで断面略矩形状とは、棒材の四方の各端面が略フラット面で形成してあるものをいい、例えば、角丸四角形状なども含んでいる。
【0007】
本発明の請求項3記載の発明では、前記棒材は、挿入孔の孔長よりも僅かに短く形成してあり、その棒材を挿入孔に挿入して溝壁部を可締めたときに、溝壁部の棒材よりも延出した部位が間隔を設けた状態で各々閉塞し、挿入孔の両孔開口は、棒材の抜け出しが不能となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、連接して隣り合う両パネル構成部材の挿入孔に棒材を入れ、挿入孔を形成する両溝壁部の外周面を工具などで押圧して変形させることにより、棒材をしっかりと両パネル構成部材の係合箇所に可締めることができる。これにより、棒材が挿入孔から簡単に抜け出さなくなり、自動車や歩行者などの表示パネル下通行者の頭上安全が確保される。
【0009】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、棒材が断面略矩形状をなすことで、棒材を挿入孔に入れて両溝壁部の外周面を各々押圧して可締めたときに、棒材が断面略矩形状であるため、棒材が使用時に受ける振動などの要因で、挿入孔内で長手方向軸に軸回転することがなく、棒材の不意な軸回転による挿入孔からの抜け出しが防がれる。しかも、変形した両溝壁部が棒材のフラットな端面に隙間無く可締められている様が外部から容易に目視できるため、棒材が挿入孔から抜け出し難い構造であることが視覚的に確認でき、結果、施工関係者はもちろん、通行人などの第三者においても広く表示パネルの安全性を理解させることが可能となる。
【0010】
本発明のうち請求項3記載の発明によれば、棒材を挿入孔の孔長よりも短く形成することで、溝壁部の孔開口側の棒材よりも延出する部位が棒材の長手方向の端部に被さるように可締められる。これにより、棒材が挿入孔から不用意に抜け出すことがなく、しかも、挿入孔は孔開口が狭められたのみであり、従って、棒材長手方向の両端面が挿入孔の外から覗くことのできる状態となることから、棒材が挿入孔から抜け出さない状態にあることを第三者が視覚的に確認できるため、より安全性の高い表示パネルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の表示パネルの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)(b)はそれぞれ、本発明の表示パネルの係合箇所を拡大して示す側面図であり、(a)は、棒材6を挿入孔5に挿入した状態を示し、(b)は、挿入した棒材6を可締めた状態を示すものである。図2(a)は、係合した両パネル構成部材1、2の全体を示す側面図であり、(b)は、一方のパネル構成部材1の側面図であり、(c)は、他方のパネル構成部材2の側面図であり、(d)は、棒材6の斜視図であり、(e)は、棒材6の側面図である。
本表示パネルAは、図4(a)(b)に示すように、例として道路標識として適用するものであり、具体的には、地面から垂直に起立する本柱10の上部に水平に延びる支柱11、11が上下に間隔をあけて2本配置してあり、この支柱11、11に補強部材13および固定具14によりパネル構成部材1、2を上下方向に一列に複数係合した本表示パネルAを取り付けるものである。
【0012】
本発明の表示パネルAを構成する複数のパネル構成部材1、2のうち、図2(a)のように、上下方向に隣接する一方のパネル構成部材1と他方のパネル構成部材2のうちの2枚のみの構成を抜粋して説明する。
一方および他方のパネル構成部材1、2は、表示側に位置する側に一方側壁部1a、2a、そして非表示側に位置する側に他方側壁部1b、2bを平行に配置し、さらに一方側壁部1a、2aと他方側壁部1b、2bの上下方向の両端部には、一方側壁部1a、2aと他方側壁部1b、2bをつなぐように小口側壁部1c、1d、2c、2dを各々設けてある。以上、本実施による表示パネルAを側面視したときに縦長略矩形状をなす中空の構造体であり、本実施のものは、押出成形により得られる中空押出形材を用いたものである。
また、本発明の表示パネルAは、係合して配設するパネル構成部材1、2の数について、図3(a)に示すものに限るものではなく、例えば、情報の表示内容など必要に応じてパネル構成部材1、2を連接する数は適宜変更するものである。
【0013】
一方および他方のパネル構成部材1、2は、本実施のものでは図2(a)に示すような非表示側において「溝付き」のものと、図2(b)に示すような「溝なし」のものとがあり、このうち「溝付き」のものは、図4(a)(b)のように、パネル構成部材2の上下方向の略中間部の非表示側に支柱10に取り付けた補強部材14を嵌合するための略水平方向に延びる凹溝12を有している。
一方および他方のパネル構成部材1、2同士が突き合せる側の各々の小口側壁部1d、2cには、垂直片3a、4aと、その垂直片3a、4aの先端から略水平方向に伸びる水平片3b、4bとからなる鉤状をなす一対の係合部3、もしくは被係合部4を両パネル構成部材1、2の一方側壁部1a寄りの箇所と、他方側壁部1b寄りの箇所の2箇所にそれぞれ設けてある。
そして係合部3と被係合部4は、互いの水平片3b、4b同士が上下に重なることで、両パネル構成部材1、2が上下方向に離れるのを規制している。また、両パネル構成部材1、2の各々の小口側壁部1d、2cの2箇所にある両係合部3、3間、もしくは両被係合部4,4間には、溝壁部7a、7bが外周側に略「くの字」型に窪んだ挿入孔形成溝5a、5bが設けてあり、溝壁部7a、7bの内周面Uの左右方向の略中央位置には、他の部分よりも肉厚を薄くする薄肉部9a、9bが設けてある。
これにより、連接して隣り合う一方および他方の両パネル構成部材1、2を係合したときに、両挿入孔形成溝5a、5bが上下に対面して合わさり、両パネル構成部材1、2の溝壁部7a、7bと、係合部3の垂直片3aと、被係合部4の垂直片4aとから四方を囲む略六角形状をなす挿入孔5を形成し、この挿入孔5には、図2(d)(e)に示すような断面略矩形状をなす棒材6を挿入することで、棒材6の左右両端面6c、6dが前述した両水平片3b、4bと各々当接し、挿入孔5内における棒材6の長手方向軸の不意な軸回転が略不能となる。
【0014】
前述した隣り合う一方および他方のパネル構成部材1、2の係合状態について、以下に詳しく説明する。
図1(b)のように、一方および他方のパネル構成部材1、2の互いの小口側壁部1d、2cの溝壁部7a、7bに対して、その溝壁部7a、7bの外周面Tを挿入孔5内に向かう方向に例えば、ペンチなどの工具を用いて押圧することにより、両溝壁部7a、7bの薄肉部9a、9bに応力が集中して内周側に変形し、この両溝壁部7a、7bの内周面Uによって棒材6が可締められる。これにより、棒材6の上下両端面6a、6bが両溝壁部7a、7bによって上方と下方から挟み込むように押圧され、最終的に、棒材6の上下両端面6a、6bと両溝壁部7a、7bがフラット面同士で当接・押圧し合い、前述した係合部3および被係合部4の両垂直片3a、4aと棒材6の左右両端面6c、6dとの当接箇所も合わせて、棒材6の四方のすべての端面6a、6b、6c、6dを可締めることができる。
【0015】
以上のように、挿入孔5内に棒材6を可締めることにより、例えば、本実施による表示パネルAが風圧を受けて係合箇所に応力が集中し、連接して隣り合う一方および他方の両パネル構成部材1、2がその係合箇所を中心に回転しようとしたときに、挿入孔5の内周面Uと棒材6の四方の各端面6a、6b、6c、6dが略フラットな状態で圧接することから、棒材6の可締め強度が極めて高くなる。しかも、棒材6の四方の各端面6a、6b、6c、6dがすべて略フラットな面同士で当接する状態で可締めてあるので、例えば、自動車通行による振動伝達や風圧などの外的な力により、棒材6が挿入孔5の内部で長手方向軸に回転し難くなることから、本実施による表示パネルAの経年設置などの各種要因による不意な抜け出しの可能性も極めて低い。また、本実施による表示パネルAの左右いずれかの側面から見たときに、棒材6が挿入孔5の内周面U全周に略一致する状態で可締めてあることが第三者からも認識できるので、本実施による表示パネルAが視覚的にも安全面が高いことを伝えられる。
【0016】
本発明の表示パネルAは、図3(a)(b)に示すように、棒材6を挿入孔5の孔長よりも短くすることで、両溝壁部7a、7bの棒材6よりも延出する挿入孔5の開放口側の延出した部位7c、7dを可締めたときに、両溝壁部7a、7bの延出した部位7c、7dが棒材6の長手方向の両端部に間隙Rを設けた状態で被さって、挿入孔5の開放口Ha、Hb側の孔幅を狭めることができる。これにより、挿入孔5に挿入した棒材6が不用意に外に抜け出さなくなるのは勿論、第三者からも挿入孔5に棒材6が挿入されている様が確認できる上、棒材6が挿入孔5から抜け出し不能な状態にあることが一目でき、視覚的にも本表示パネルAの安全性を確認できるようになる。
尚、本実施のものは、図3(b)に示すように、挿入孔5の両開放口Ha、Hb寄りの溝壁部7a、7bの複数箇所Kを工具等で他部よりさらに強く押圧し、その部分の溝壁部7a、7bの内周面Uを棒材6の上下の両端面6a、6bに深く食い込ませるようにして可締めており、これにより、棒材6の可締め強度をより一層強固にしている。
【0017】
本発明の表示パネルAは、本実施形態で例示した道路標識の他に、例えば店舗看板や案内標識等にも適用できる。また請求項および本実施形態では、表示パネルAの表示する方向について表示側と非表示側としているが、この表現には例えば、一方側および他方側、あるいは店舗であれば、店内側と店外側などの関係も含まれる。また、両挿入孔形成溝5a、5bの溝壁部7a、7bの内周面Uに設ける薄肉部9a、9bは、溝壁部7a、7bを他の部分に比べて部分的に肉厚を薄くするものであればよいので、例えば窪み状、溝状など、形状や大きさを限るものではない。さらに薄肉部9a、9bを設ける箇所も、本実施のもののように溝壁部7a、7bの内周面Uの略中央位置に限るものではなく、溝壁部7a、7bが内周側に変形しやすい位置にあればよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明の表示パネルにおいて、図2中Bの円で囲んだ部分を拡大し、連接して隣り合う両パネル構成部材の係合箇所を示す側面図であり、(b)は、棒材を可締めた後の状態を拡大して示す側面図である。
【図2】(a)は、連接して隣り合う一方および他方のパネル構成部材の全体を示す側面図であり、(b)は、一方(溝付き)のパネル構成部材を示す側面図であり、(c)は、他方(溝なし)のパネル構成部材を示す側面図であり、(d)は、棒材の斜視図であり、(e)は、棒材の側面図である。
【図3】(a)は、本発明の表示パネルの他の実施形態を示す縦断面図であり、(b)は、側面図である。
【図4】(a)は、本発明の表示パネルを適用した道路標識の全体を示す正面図であり、(b)は、そのうちの表示パネルのみを示す背面視した斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 一方のパネル構成部材
2 他方のパネル構成部材
3 係合部
4 被係合部
5 挿入孔
5a、5b 挿入孔形成溝
6 棒材
7a、7b 溝壁部
7c、7d 延出した部位
9a、9b 薄肉部
A 表示パネル
Ha、Hb 孔開口
R 間隙
T 外周面
U 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネル構成部材を上下方向あるいは左右方向に一列に配して係合する表示パネルであって、
連接して隣り合う一方および他方の両パネル構成部材(1、2)が突き合せる側には、各々が係合する係合部(3)と被係合部(4)のいずれかを有しており、係合した係合部(3)と被係合部(4)が当接して対峙する箇所には、挿入孔形成溝(5a、5b)をそれぞれ設けてあると共に、両挿入孔形成溝(5a、5b)が対面して挿入孔(5)を形成し、挿入孔(5)には、この挿入孔(5)の孔長と略同一の長さであり且つ孔径と略同一幅を有する棒材(6)を挿入してあり、
前記両挿入孔形成溝(5a、5b)の各々の溝壁部(7a、7b)は、各々が挿入孔(5)の外周側に屈曲状又は湾曲状に形成してあると共に、内周面(U)に薄肉部(9a、9b)を設けてあり、
両溝壁部(7a、7b)は、各々の外周面(T)を押圧したときに、挿入孔(5)の内部に向けて変形し、両溝壁部(7a、7b)の内周面(U)が棒材(6)を両側からそれぞれ押圧して可締めることを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記棒材(6)は、断面略矩形状をなすことを特徴とする請求項1記載の表示パネル。
【請求項3】
前記棒材(6)は、挿入孔(5)の孔長よりも僅かに短く形成してあり、
その棒材(6)を挿入孔(5)に挿入して溝壁部(7a、7b)を可締めたときに、溝壁部(7a、7b)の棒材(6)よりも延出した部位(7c、7d)が間隙(R)を設けた状態で各々閉塞し、挿入孔(5)の両孔開口(Ha、Hb)は、棒材(6)の抜け出しが不能となることを特徴とする請求項1又は2記載の表示パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−92754(P2009−92754A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261043(P2007−261043)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【出願人】(000112185)ビニフレーム工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】