説明

表示制御装置、表示制御方法およびプログラム

【課題】 表示面積をフルに使って、ドキュメント全体を俯瞰しつつドキュメント情報の拡大表示を行うことができ、表示面積の減少を招かない表示制御装置、表示制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 縦横所定の画面サイズを有する表示装置(5)に、前記画面サイズよりも大きな情報(16)を表示する際に、前記情報を加工してから前記表示装置に表示する。前記情報の加工は、当該情報を前記表示装置のほぼ画面全体に表示した状態で、当該情報の任意部分を拡大し、且つ、残りの部分を、前記表示装置の画面周縁部に至るにつれて徐々に縮小する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、表示制御方法およびプログラムに関し、とりわけ、携帯電話等の電子機器に搭載された小さな画面サイズの表示装置を制御するために用いて好適な表示制御装置、表示制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の電子機器用の表示装置は、筐体の小型化要求といった物理的制約から、その画面サイズは小さく(高々数インチ程度しかない)、たとえば、パソコン用に設計された大きなドキュメント(ホームページ等)を閲覧する際に、ドキュメントの一部しか見ることができないという不都合がある。
【0003】
図10は、大きなドキュメントを小さな画面サイズの表示装置100でも閲覧できるように工夫した例を示す図である。この例では、大きなドキュメント101は、不図示の電子機器の内部において、表示装置100の大きさに合わせて縮小リサイズされるようになっており、したがって、もともと大きなドキュメント101であっても、数インチ程度しかない表示装置100に、その全体を支障なく表示できるようになっている。
【0004】
しかしながら、このような縮小方向へのリサイズは、ドキュメント101の情報(図示の例ではABC・・・・)が小さくなって見にくくなるという新たな欠点を招くから、特に視力が衰えた年配者にとって好ましくない対策ということができる。
【0005】
図11は、視力が衰えた年配者にとっても好ましい解決策を示す図である(たとえば、下記の特許文献1参照)。この図において、表示装置102には、大きなドキュメント101(図10参照)の一部が拡大表示されており、この表示状態では、ドキュメント101の情報(図ではBCSD)が大きく見えているので、視力が衰えた年配者であっても十分な視認性を得ることができる。
【0006】
加えて、この解決策では、表示装置102の片隅(図では右下隅)にドキュメント全体の俯瞰表示枠103が設定されており、この俯瞰表示枠103の内部に矩形状のカーソル104が表示されている。カーソル104は、不図示の操作ボタンによってその位置を変更できるようになっており、このカーソル104の動きに合わせて、表示装置102に表示中のドキュメント拡大像が上下左右に移動するようになっている。
【0007】
したがって、この解決策にあっては、(1)小サイズの表示装置102に大きく拡大した情報を表示できる、(2)表示対象ドキュメントの全体を俯瞰して、どの部分が拡大表示されているのかを常に把握できる、という利点が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−146951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図11の解決策にあっては、ドキュメント全体の俯瞰と、ドキュメント情報の拡大表示とを共に達成できるという利点がある一方で、「ドキュメント全体の俯瞰」のための表示枠(図11の俯瞰表示枠103参照)が必要であることから、その表示枠の占有分だけ、表示装置の表示面積が減少してしまうという問題点がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、表示面積をフルに使って、ドキュメント全体を俯瞰しつつドキュメント情報の拡大表示を行うことができ、表示面積の減少を招かない表示制御装置、表示制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、縦横所定の画面サイズを有する表示装置に、前記画面サイズよりも大きな情報を表示する際に、前記情報を加工してから前記表示装置に表示する表示制御装置において、前記情報の加工は、当該情報を前記表示装置のほぼ画面全体に表示した状態で、当該情報の任意部分を拡大し、且つ、残りの部分を、前記表示装置の画面周縁部に至るにつれて徐々に縮小するものであることを特徴とする表示制御装置である。
請求項2記載の発明は、前記拡大と縮小を行うために、前記情報の行間と列間の拡大/縮小係数を発生する係数発生手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置である。
請求項3記載の発明は、略半円形の断面形状を有する蒲鉾状の仮想物体の湾曲外周面に前記情報を沿わせた状態を再現する再現手段と、前記情報を前記仮想物体の湾曲外周面に沿わせた状態で、当該情報に対する視線方向を前記仮想物体の頭頂部付近に定めたときの前記情報の見え方に基づいて前記情報の拡大と縮小を行う加工手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置である。
請求項4記載の発明は、略半球状の仮想物体の外周面に前記情報を沿わせた状態を再現する再現手段と、前記情報を前記仮想物体の外周面に沿わせた状態で、当該情報に対する視線方向を前記仮想物体の頭頂部付近に定めたときの前記情報の見え方に基づいて前記情報の拡大と縮小を行う加工手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置である。
請求項5記載の発明は、頭頂部を曲面に仕上げたピラミッド状の仮想物体の外周面に前記情報を沿わせた状態を再現する再現手段と、前記情報を前記仮想物体の外周面に沿わせた状態で、当該情報に対する視線方向を前記仮想物体の頭頂部付近に定めたときの前記情報の見え方に基づいて前記情報の拡大と縮小を行う加工手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置である。
請求項6記載の発明は、前記表示装置の画面前面に光学的な拡大作用を有するレンズ体を介在させたことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の表示制御装置である。
請求項7記載の発明は、縦横所定の画面サイズを有する表示装置に、前記画面サイズよりも大きな情報を表示する際に、前記情報を加工してから前記表示装置に表示する表示制御方法において、前記情報の加工は、当該情報を前記表示装置のほぼ画面全体に表示した状態で、当該情報の任意部分を拡大し、且つ、残りの部分を、前記表示装置の画面周縁部に至るにつれて徐々に縮小するものであることを特徴とする表示制御方法である。
請求項8記載の発明は、縦横所定の画面サイズを有する表示装置のコンピュータに適用するプログラムであって、前記画面サイズよりも大きな情報を前記表示装置に表示する際に、当該情報を前記表示装置のほぼ画面全体に表示した状態で、当該情報の任意部分を拡大し、且つ、残りの部分を、前記表示装置の画面周縁部に至るにつれて徐々に縮小するように前記情報の加工を行うという機能を前記コンピュータに実現させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表示面積をフルに使って、ドキュメント全体を俯瞰しつつドキュメント情報の拡大表示を行うことができ、表示面積の減少を招かない表示制御装置、表示制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】携帯電話機1の概念構成図である。
【図2】本実施形態の特徴的事項を示す概念ブロック図である。
【図3】拡大/縮小係数の概念説明図である。
【図4】注目エリア18の位置変更概念図である。
【図5】第1の変形例を示す概念図である。
【図6】ドキュメント20と物体21との関係図である。
【図7】第2の変形例を示す概念図である。
【図8】第3の変形例を示す概念図である。
【図9】第4の変形例を示す概念図である。
【図10】大きなドキュメントを小さな画面サイズの表示装置100でも閲覧できるように工夫した例を示す図である。
【図11】視力が衰えた年配者にとっても好ましい解決策を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、携帯電話機を例にして図面を参照しながら説明する。
図1は、携帯電話機1の概念構成図である。この図において、携帯電話機1は通信部2、カメラ部3、操作部4、表示部5、記憶部6、受話部7、送話部8、制御部9および電源部10を備える。
【0015】
通信部2は、携帯電話会社に割り当てられた周波数帯の電波を使って最寄りの基地局との間で音声通信やデータ通信を行い、また、カメラ部3は、この携帯電話機1をカメラとして使用する際に任意の被写体を撮像して、その画像データを制御部9に出力する。操作部4は、この携帯電話機1の動作に必要な各種操作コマンド(電話モードやカメラモード等の動作モード切り替えコマンド、オンフックやオフフックコマンド、テンキーコマンド、カーソル操作コマンド・・・・等)をユーザ操作に応答して発生し、また、表示部5は数インチ程度の小型の液晶ディスプレイやELディスプレイなどの平面表示デバイスからなり、さらに、記憶部6はカメラ部3によって撮影された画像ファイルや電話帳などのユーザデータを記憶するための固定型または着脱可能型半導体メモリ等の大容量記憶デバイスを含む。また、受話部7は電話交信時の拡声用スピーカ、送話部8は同交信時の拾音マイクであり、制御部9は、この携帯電話機1の動作を統括制御するための中央処理装置、電源部10は、携帯電話機1の各部に電源を供給する二次電池と、この二次電池の充電機能とを含む。
【0016】
制御部9は、この図では、コンピュータ(以下、CPU)9a、不揮発性半導体メモリ(以下、ROM)9b、揮発性半導体メモリ(以下、RAM)9cおよび書き換え可能不揮発性半導体メモリ(以下、PROM)9dを含んで構成されており、ROM9bにあらかじめ書き込まれている制御プログラムをRAM9cにロードしてCPU9aで実行することにより、この携帯電話機1の各部の動作を集中制御する、いわゆるプログラム制御型の中央処理装置であるが、これに限定されない。制御機能のすべてまたは一部をハードロジックで構成したものであってもよい。
【0017】
本実施携帯の携帯電話機1は、電話機やカメラとして動作するほか、電子メール端末やホームページ閲覧端末としても動作することができる。すなわち、ユーザが操作部4の所定キーを操作して電話モードの選択コマンドを発生すれば電話機として動作し、カメラモードの選択コマンドを発生すればカメラとして動作することに加え、電子メールの送信コマンドや受信コマンドを発生すれば電子メール端末としても動作し、さらに、ホームページの閲覧コマンドを発生すればホームページ閲覧端末としても動作するものである。
【0018】
ホームページの閲覧動作において、閲覧しようとするドキュメントが携帯電話向けのもの、つまり、表示部5の表示サイズに適合した大きさのものであれば、そのドキュメント全体を表示部5に支障なく表示して閲覧することできる。しかも、携帯電話向けに設計されたドキュメントは、文字の大きさも適切になっているので、多くの場合、小サイズの表示装置5であっても文字が見にくくなることはない。
【0019】
しかしながら、冒頭でも述べたとおり、大きなドキュメント(たとえば、パソコン向けに設計されたもの)を携帯電話機1で表示する場合は、何らかの工夫が必要になる。ドキュメントの一部を拡大表示した場合は文字が見にくくならない反面、ドキュメントの全体を見通せなくなり、一方、ドキュメントを縮小リサイズした場合は文字が見にくくなって、特に視力が衰えた年配者に不都合を招くからである。ドキュメントの全体を俯瞰でき、且つ、文字の見にくさも解消した従来技術は、たとえば、冒頭の特許文献1にも示されているように公知であるが、この従来技術は、「ドキュメント全体の俯瞰」のための表示枠(図11の俯瞰表示枠103参照)が必要であるため、その表示枠の占有分だけ、表示装置の表示面積が減少してしまうという問題点がある。
【0020】
そこで、本実施形態では、この問題点を解決するために、ドキュメント全体を俯瞰しつつドキュメント情報の拡大表示を行うことができ、しかも、表示面積の減少を招かないための工夫として、以下の技術的改善策を講じたものである。
【0021】
図2は、本実施形態の特徴的事項を示す概念ブロック図である。この図において、便宜的に示す各部、すなわち、注目エリア指示部11、表示画面情報保持部12、行方向拡大/縮小係数発生部13、列方向拡大/縮小係数発生部14およびドキュメント変形処理部15は、制御部9において、ソフトウェアで機能的に実現されたものであるが、これは実現可能なひとつの態様例を示しているに過ぎない。いうまでもなく、その機能のすべてまたは一部をハードロジックで実現してもかまわない。
【0022】
まず、注目エリア指示部11は、操作部4からの操作コマンドに応答して閲覧対象のドキュメント16のどの部分を見やすくするのかを指示するためのものである。この注目エリア(後述の注目エリア18参照)の指示位置は、ドキュメント16の平面上の任意位置に設定することができるが、以下の説明では、便宜的にドキュメント16の中央部分としている。
【0023】
次に、表示画面情報保持部12は、携帯電話機1の表示部5の表示画面情報(少なくとも表示画面の大きさを示す情報であり、具体的には縦横のピクセル数など)を保持するためのものである。この表示画面情報は、携帯電話機1の機種ごとに異なる。
【0024】
次に、行方向拡大/縮小係数発生部13と列方向拡大/縮小係数発生部14は、ドキュメント16の行方向(縦方向:ロウ方向ともいう)と列方向(横方向:カラム方向ともいう)の拡大/縮小係数を発生するためのものである。
【0025】
図3は、拡大/縮小係数の概念説明図である。この図において、ドキュメント17は、拡大/縮小係数を“適用後”のものを示している。ドキュメント17は説明の便宜上、7行×7列の構造を有しているものとし、行間距離をR1〜R8、列間距離をC1〜C8で示すことにすると、この例においては、行間距離が「R1<R2<R3<R4=R5>R6>R7>R8」、列間距離が「C1<C2<C3<C4=C5>C6>C7>C8」の関係になっている。
【0026】
すなわち、ドキュメント17の中央部分(注目エリア18)の行間距離と列間距離が最大で、周縁部に至るにつれて同距離が徐々に小さくなる関係に設定されている。拡大/縮小係数は、これらの関係を実現するための値であり、ドキュメント17の本来の行間距離および列間距離を“1”として、それよりも小さければ縮小係数、それよりも大きければ拡大係数となる。たとえば、R4やR5は行方向の拡大係数、R1やR8は行方向の縮小係数であり、また、C4やC5は列方向の拡大係数、C1やC8は列方向の縮小係数である。
【0027】
再び図2に戻り、次に、ドキュメント変形処理部15は、上記のようにして得られた行方向と列方向の拡大/縮小係数を閲覧対象のドキュメント16に適用して、このドキュメント16を変形加工し、変形後のドキュメント17を生成して表示部5に出力する。
【0028】
変形後のドキュメント17は、図3に示したとおり、行間距離と列間距離が調節されると共に、それらの行間距離と列間距離に合わせてドキュメント17内の情報の大きさも拡大/縮小されている。図示の例では、注目エリア指示部11において、ドキュメント17の中央部が見やすくなるように指示(注目エリア18参照)されているため、この場合、注目エリア18の内部の情報が大きく拡大されると共に、それ以外の情報が縮小されている。
【0029】
このように、本実施形態では、表示装置5の画面サイズよりも大きなドキュメント16を閲覧する際に、このドキュメント16の注目エリア18の行間距離と列間距離とを最大にする一方、それ以外の部分の行間距離と列間距離とをドキュメント16の周縁部にかけて徐々に小さくするように調節し、さらに、それらの行間距離および列間距離の調節に合わせて、各々の部分の情報の大きさを大から小へと変形加工しているので、変形加工後のドキュメント17の全体を小さな画面サイズの表示装置5に支障なく表示できる(したがって、ドキュメント17の全体を俯瞰できる)と共に、注目エリア18の情報を拡大表示することができるから、たとえば、視力が衰えた年配者にとっても好ましいものとすることができる。
【0030】
また、注目エリア18の位置をユーザが任意に指定できるので、ドキュメント17のどの部分でも自由に拡大表示することができる。
図4は、注目エリア18の位置変更概念図である。この図では、注目エリア18がドキュメント17の中央部に位置しているが、この注目エリア18は、ユーザ操作(たとえば、操作部4のカーソル操作等)に応答してドキュメント17の上を任意の方向に移動できるようになっており、たとえば、図中の白抜き矢印19で示すように、上下左右や斜め方向(もちろん図示以外の角度でもよい)に移動可能であり、ドキュメント17の好きな部分を注目エリア18に指定して当該部分を拡大表示させることができるようになっている。
このため、上記の俯瞰効果(ドキュメント17の全体を俯瞰できる)と相まって、ドキュメント17の閲覧自在性を高めることができる。
【0031】
なお、本発明の技術思想は、上記の実施形態に限定されず、その思想の範囲内において様々な変形例や発展例を包含するものであり、たとえば、以下のようなものであってもよい。
【0032】
図5は、第1の変形例を示す概念図である。まず、上記の実施形態では、ドキュメントの行間距離と列間距離とを調節すると共に、それらの行間距離と列間距離に合わせてドキュメント内の情報の大きさを拡大/縮小している。この変形は、いわばドキュメントの二次元的な変形であるが、これに限定されない。次に説明するような三次元的な変形であってもよい。図5において、変形対象のドキュメント20の下に、略半円形の断面形状を有する蒲鉾状の物体21が位置している。この物体21は説明上の仮想体である。いま、白抜き矢印22で示すように、物体21の湾曲外周面にドキュメント20を沿わせたと仮定する。
【0033】
図6は、ドキュメント20と物体21との関係図である。この図において、ほぼ半円状の湾曲外周面を持つ物体21の半径をrとしたとき、物体21の外周長Lは2πr/2となるから、このLと、ドキュメント20の横長Fとを等しいとすれば、ドキュメント20の全体を物体21の湾曲外周面に余すことなくぴったりと沿わせることができる。
【0034】
このように、物体21の湾曲外周面にドキュメント20を沿わせた状態で、図面の上方向(矢印23参照)からドキュメント20を目視した場合、ドキュメント20上の情報は、ドキュメント20の中央部分(物体21の頭頂部付近)で最も大きく見え、物体21の頭頂部から側面を経て底面に至るにつれて徐々に小さくなって見える。このような情報の見え方は、たとえば、缶ジュースの側面を眺めたときと同じ(正面の文字が大きく見え、側面の文字が小さく見える)である。このとき、側面の文字は「小さく見える」ものの、側面情報のすべては目視可能な状態にあり、一切の情報喪失はない。したがって、このような仮想的な蒲鉾体(物体21)を用いた三次元的な変形をドキュメント20に対して行ってもよい。
【0035】
なお、このような三次元的な変形を行うためのアルゴリズムは、医療や設計、シミュレーションなどの分野で諸々知られており、それらはいずれもコンピュータプログラムの形で提供されているから、それらのプログラムをそのまま、あるいは、一部変更して本実施形態の制御部9に組み込むことに特段の困難はない。したがって、本実施形態の制御部9に、上記の三次元的な変形を行うための機能を実装することは十分可能であるということができ、この場合、制御部9は上記の三次元的な変形を行う要素として機能する。
【0036】
図7は、第2の変形例を示す概念図である。第1の変形例との違いは、蒲鉾状の物体21の代わりに略半球状の物体24を用いた点にある。この物体24も仮想上のものである。
第1の変形例と同様に、物体24の外周面にドキュメント(図6のドキュメント20参照)を沿わせた状態で、図面の上方向からドキュメントを目視した場合、ドキュメント上の情報は、ドキュメントの中央部分(物体24の頭頂部付近)で最も大きく見え、物体24の頭頂部から側面を経て底面に至るにつれて徐々に小さくなって見える。このような情報の見え方は、たとえば、地球儀を上から眺めたときと同じ(北極付近の文字が大きく見え、緯度が下がるにつれて文字が小さく見える)である。このとき、低緯度部分の文字は「小さく見える」ものの、すべての文字情報は目視可能な状態にあり、一切の情報喪失はない。したがって、このような仮想的な半球体(物体24)を用いた三次元的な変形をドキュメントに対して行ってもよい。
【0037】
図8は、第3の変形例を示す概念図である。第1および第2の変形例との違いは、蒲鉾状の物体21や半球状の物体24の代わりに、同図(a)に示すようなピラミッド状の物体25を用いた点にある。この物体25も仮想上のものである。
【0038】
ただし、本来の“ピラミッド”は四角錐体であり、その頭頂部が先鋭である(尖っている)ため、この頭頂部を曲面化する必要がある。この曲面化のための方法としては、たとえば、同図(b)に示すように、四角錐型の物体26と、その物体26の頭頂部付近に内接する適宜直径の球体27とを組み合わせ、この球体27の一部表面が露出するように、四角錐型の物体26の頭頂部を取り除くことによって得ることができる。物体25の頭頂部の曲面の大きさと曲がり方は、球体27の直径によってコントロールできる。直径を大きくすればなだらかで大きな曲面となり、その逆に直径を小さくすれば急激に変化する小さな曲面となる。
【0039】
この第3の変形例においても第1および第2の変形例と同様に、ピラミッド状の物体25の外周面にドキュメント(図6のドキュメント20参照)を沿わせた状態で、図面の上方向からドキュメントを目視した場合、ドキュメント上の情報は、ドキュメントの中央部分(物体25の頭頂部付近)で最も大きく見え、物体25の頭頂部から側面を経て底面に至るにつれて小さくなって見えるから、このような仮想ピラミッド体(物体25)を用いた三次元的な変形をドキュメントに対して行ってもよい。
【0040】
図9は、第4の変形例を示す概念図であり、前記の実施形態や第1〜第3の変形例と組み合わせて使用することができるものである。この図において、携帯電話機28の表示装置29の上には、横方向に曲面を描くレンズ体30が取り付けられている。このレンズ体30は、いわゆる凸レンズであり、このレンズ体30を通して表示装置29の画面を見ることにより、画面の情報を拡大して見ることができる。
【0041】
前記の実施形態や第1〜第3の変形例の狙いは、要するに、表示装置30に、たとえば、パソコン用の大きなドキュメントを表示する際に、そのドキュメントの全体を余すことなく表示することができ、且つ、任意の部分を注目エリア18に指定して拡大表示することにより、たとえば、視力が衰えた年配者にも情報を見やすくすることにあるが、この第4の変形例の技術(レンズ体30)を組み合わせることによって情報の拡大率をさらに高めることができるから、より年配者等にやさしい情報の表示技術を実現することができるので好ましい。
【0042】
なお、レンズ体30に凸レンズ以外のものを使用してもよい。すなわち、レンズ体30に求められる機能は情報の「光学的な拡大」であるので、拡大作用を有する光学系であればいかなるもの(たとえば、フレネルレンズ等)であってもかまわない。
【0043】
また、以上の説明では携帯電話機への適用を例にしたが、これに限らない。小さな画面サイズの表示装置を備える電子機器であって、しかも、その表示装置の画面サイズよりも大きなドキュメント(文書、画像またはそれらの混在物)を表示する可能性があるすべての電子機器に適用できる。
【符号の説明】
【0044】
5 表示部(表示装置)
9 制御部(再現手段、加工手段)
13 行方向拡大/縮小係数発生部(係数発生手段)
14 列方向拡大/縮小係数発生部(係数発生手段)
16 ドキュメント(情報)
18 注目エリア(任意部分)
20 ドキュメント(情報)
21 物体(仮想物体)
24 物体(仮想物体)
25 物体(仮想物体)
30 レンズ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦横所定の画面サイズを有する表示装置に、
前記画面サイズよりも大きな情報を表示する際に、
前記情報を加工してから前記表示装置に表示する表示制御装置において、
前記情報の加工は、
当該情報を前記表示装置のほぼ画面全体に表示した状態で、
当該情報の任意部分を拡大し、
且つ、残りの部分を、前記表示装置の画面周縁部に至るにつれて徐々に縮小するものである
ことを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記拡大と縮小を行うために、
前記情報の行間と列間の拡大/縮小係数を発生する係数発生手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
略半円形の断面形状を有する蒲鉾状の仮想物体の湾曲外周面に前記情報を沿わせた状態を再現する再現手段と、
前記情報を前記仮想物体の湾曲外周面に沿わせた状態で、当該情報に対する視線方向を前記仮想物体の頭頂部付近に定めたときの前記情報の見え方に基づいて前記情報の拡大と縮小を行う加工手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
略半球状の仮想物体の外周面に前記情報を沿わせた状態を再現する再現手段と、
前記情報を前記仮想物体の外周面に沿わせた状態で、当該情報に対する視線方向を前記仮想物体の頭頂部付近に定めたときの前記情報の見え方に基づいて前記情報の拡大と縮小を行う加工手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項5】
頭頂部を曲面に仕上げたピラミッド状の仮想物体の外周面に前記情報を沿わせた状態を再現する再現手段と、
前記情報を前記仮想物体の外周面に沿わせた状態で、当該情報に対する視線方向を前記仮想物体の頭頂部付近に定めたときの前記情報の見え方に基づいて前記情報の拡大と縮小を行う加工手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記表示装置の画面前面に光学的な拡大作用を有するレンズ体を介在させたことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の表示制御装置。
【請求項7】
縦横所定の画面サイズを有する表示装置に、
前記画面サイズよりも大きな情報を表示する際に、
前記情報を加工してから前記表示装置に表示する表示制御方法において、
前記情報の加工は、
当該情報を前記表示装置のほぼ画面全体に表示した状態で、
当該情報の任意部分を拡大し、
且つ、残りの部分を、前記表示装置の画面周縁部に至るにつれて徐々に縮小するものである
ことを特徴とする表示制御方法。
【請求項8】
縦横所定の画面サイズを有する表示装置のコンピュータに適用するプログラムであって、
前記画面サイズよりも大きな情報を前記表示装置に表示する際に、
当該情報を前記表示装置のほぼ画面全体に表示した状態で、
当該情報の任意部分を拡大し、
且つ、残りの部分を、前記表示装置の画面周縁部に至るにつれて徐々に縮小するように前記情報の加工を行う
という機能を前記コンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−112678(P2011−112678A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266066(P2009−266066)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】