説明

表示塔

【課題】山形状をなす一対の板体を備えた表示塔において、不当な変形を防止するのに適した表示塔を提供する。
【解決手段】水平方向に延びる連結部11、および、この連結部11を介して上端部121どうしが連結され、内面12cどうしが向かい合うとともに下方に向かうにつれて遠ざかるように傾斜する金属製の一対の板体12、を有する表示塔本体1と、一対の板体12の下端部122に取り付けられるベース部材2と、を備えた表示塔Aであって、一対の板体12は、連結部11が延びる第1方向に直角であるY方向の断面において、外側が凸となるように湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路における通行区域や駐輪・駐車区域などを規制するのに用いられる表示塔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩道や車道などに配置される交通規制用の表示塔として、たとえば鉄板を折り曲げて山形状に構成したものが知られている(たとえば、特許文献1を参照)。このような表示塔は、頂部が水平方向に延びる連結部とされており、この連結部を介して上端部どうしが連結されることより、内面どうしが向かい合う一対の板体を有する構成とされている。一対の板体の外面(外側を向く面)には、適当な表記が施される。
【0003】
特許文献1に開示された表示塔においては、板体の下端部に保護部材が取り付けられている。このように保護部材が装着される構成によれば、たとえば表示塔が道路上に落下させられるなどによって板体の下端部に大きな衝撃が加わった場合でも、保護部材により衝撃を吸収し、当該下端部の変形を防止することができる。
【0004】
しかしながら、道路上に配置された表示塔については、様々な外力が加わる場合がある。たとえば、歩道に置かれた表示塔に対して、歩行者や自転車が不用意に衝突する場合があり、比較的大きい面積を有する板体においては、衝突時の衝撃荷重等によって曲げなどの変形が生じるおそれがあった。また、歩行者が表示塔に座ったり、あるいはもたれかかったりすると、表示塔の上端に位置する連結部に対して、下向きに比較的大きい荷重が作用する。これにより、一対の板体の下端部が開くように変形するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−317331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、山形状をなす一対の板体を備えた表示塔において、不当な変形を防止するのに適した表示塔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明によって提供される表示塔は、水平方向に延びる連結部、および、この連結部を介して上端部どうしが連結され、内面どうしが向かい合うとともに下方に向かうにつれて遠ざかるように傾斜する金属製の一対の板体、を有する表示塔本体と、上記一対の板体の下端部に取り付けられるベース部材と、を備えた表示塔であって、上記一対の板体のうち少なくとも一方は、上記連結部が延びる第1方向に直角である断面において、外側が凸となるように湾曲していることを特徴としている。
【0009】
上記構成の表示塔によれば、上端に位置する連結部を介して連結されることによって山形をなす一対の板体(表示塔本体)は、これら板体の下端部がベース部材によって一体的につながる構成とされている。このような構成によれば、一対の板体の下端部どうしの間隔がベース部材によって規制されるため、連結部に対して下向きに比較的大きい荷重が作用しても、これら下端部どうしが開くように変形することを防止することができる。
【0010】
また、各板体は、外側が凸となるように湾曲しているため、たとえば板体の外側から内側に向けて荷重が作用しても、湾曲状の板体が真っ直ぐに延びる方向(下端部から連結部に向かう板体の長手軸方向)へ弾性変形する余地がある。したがって、湾曲状の板体は、上記荷重に対して長手軸方向へのフレキシビリティが十分にある。このようなことから理解されるように、板体に上記荷重が作用しても、湾曲状の板体によって上記荷重を吸収することができ、板体の変形を防止することができる。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記表示塔本体は、一枚の板材を折り曲げることにより、上記連結部および上記一対の板体を一体に有するように形成されている。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記各板体は、上下方向の辺の長さが横方向の辺の長さより大とされた長矩形状である。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記各板体の下端部には係止部が設けられており、上記ベース部材は、上記係止部を開口部から差し込んで係止させる一対の被係止部を有する。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記各係止部は、所定幅を有し、かつ上記第1方向に直角である断面において外側に屈曲するL字状とされており、上記各被係止部は、上記係止部に対応する凹状形状とされている。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記ベース部材には、上記開口部における内側の端縁から外側に向けて延び、かつ弾性的に折り曲げ可能な庇部が設けられている。
【0016】
好ましい実施の形態においては、上記係止部は、上記各板体の下端部において上記横方向の辺に対して部分的に設けられている。
【0017】
好ましい実施の形態においては、上記ベース部材は、所定の厚さを有し、かつ一体形成されたゴム製プレートからなり、弾性的に折り曲げ可能である。
【0018】
好ましい実施の形態においては、上記ベース部材の底面には、上記第1方向と平行に延びる切り込みが形成されている。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る表示塔の斜視図である。
【図2】図1に示す表示塔の側面図である。
【図3】図1に示す表示塔の正面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿う拡大断面図である。
【図7】図2のVII−VII線に沿う拡大断面図である。
【図8】自然状態における表示塔本体を表し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】作用を説明するための概略側面図である。
【図10】作用を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1〜図7は、本発明に係る表示塔を示している。図1〜図3に表れているように、本実施形態の表示塔Aは、表示塔本体1と、ベース部材2とを備えて構成されている。本実施形態において、表示塔本体1は、所定形状を有する金属製の板材(たとえば鉄板)に折り曲げ加工を施すことによって形成されたものであり、全体として山形状に構成されている。具体的には、表示塔本体1は、頂部に位置し、水平方向であるX方向(第1方向)に延びる連結部11と、この連結部11を介して上端部121どうしが連結された一対の板体12とを有する。一対の板体12は、内面12cどうしが向かい合うとともに下方に向かうにつれて遠ざかるように傾斜しており、山形をなしている。
【0023】
図3によく表れているように、各板体12は、長矩形状とされており、上下方向の辺12aの長さが横方向の辺12bの長さよりも大である。各板体12の外面12dには、適宜、文字や図形等を用いた表記(図示略)が施される。また、図2および図4に表れているように、各板体12は、連結部11が延びるX方向に直角である断面において、外側が凸となるように緩やかに湾曲している。ここで、外側とは、一方の板体12から見て他方の板体12が位置する側とは反対側(当該一方の板体12の外面12d側)を意味する。板体12の各部の寸法の一例を挙げると、上下方向の辺12aの長さが67cm程度、横方向の辺12bの長さが25cm程度、板体12の厚さが1mm程度である。また、板体12の曲率半径は、たとえば405cm程度である。
【0024】
各板体12の下端部122には、係止部13が設けられている。係止部13は、後述するベース部材2の被係止部212に係止される部分であり、図4および図5に表れているように、X方向に直角である断面において、外側に屈曲するL字状とされている。また、図3および図8に表れているように、係止部13は、一定幅を有し、横方向の辺12bに対して、その中央に部分的に設けられている。本実施形態では、係止部13は、板体12と一連につながっており、板体12の下端部122に相当する部位から突出する板片に対して、折り曲げ加工を施すことにより形成される。
【0025】
ベース部材2は、表示塔Aの土台となる部分であり、図1および図2に表れているように、一対の板体12の下端部122に取り付けられている。ベース部材2は、平面視において概略矩形状を有するゴム製プレートであり、たとえば金型成型により一体形成されたものである。ベース部材2は、弾性的に折り曲げ可能とされている。
【0026】
ベース部材2は、一対の取付部21と、これら取付部21の間に位置する中央部22とを有する。一対の取付部21は、平面視においてX方向に直角であるY方向の両端部に配されており、両板体12の下端部122に対応する位置にある。
【0027】
図4、図5に表れているように、各取付部21は、開口部211と、被係止部212と、庇部213とを有する。開口部211は、係止部13を上方から差し込むために形成された開口である。本実施形態では、開口部211は、取付部21の厚さ方向に貫通状に形成されており、平面視において、係止部13を上方から差し込み可能なサイズとされている。取付部21の厚さは、たとえば30mm程度とされる。
【0028】
被係止部212は、開口部211を通じて差し込まれた係止部13を係止させる部分であり、係止部13の形状に対応する凹状形状とされている。
【0029】
庇部213は、開口部211における内側の端縁から外側に向けて延びるシート状とされており、弾性的に折り曲げ可能である。本実施形態では、係止部13が被係止部212に係止させられた状態において、係止部13と庇部213の先端縁との間には、僅かな隙間を有する。
【0030】
中央部22は、一対の取付部21を一体的につなぐ部分である。中央部22の厚さは、たとえば20mm程度とされており、取付部21の厚さ(30mm程度)よりも小とされている。また、中央部22の底面には、Y方向の中央において、X方向と平行に延びる切り込み221が形成されている。
【0031】
上記構成の表示塔本体1は、図8に表れているように、自然状態において、一対の板体12のそれぞれが上端部121から下端部122までほぼ真っ直ぐに延びており、板体12の下端部122(係止部13)どうしの間隔は、ベース部材2が取り付けられたときよりも大きい。一対の板体12の下端部122に対して、自然状態におけるこれら下端部122どうしの間隔よりも狭めた状態にてベース部材2を取り付けることにより、板体12は、弾性復元力により外側に凸となるように湾曲する。また、この板体2の弾性復元により、断面L字状の係止部13は、被係止部212に係止される。
【0032】
上記構成の表示塔Aは、たとえば歩道などの道路上に配置されて使用される。
【0033】
次に、上記した表示塔Aの作用について説明する。
【0034】
本実施形態の表示塔Aにおいて、上端に位置する連結部11を介して連結されることによって山形をなす一対の板体12(表示塔本体1)は、これら板体12の下端部122がベース部材2によって一体的につながる構成とされている。このような構成によれば、一対の板体12の下端部122どうしの間隔がベース部材2によって規制されるため、連結部11に対して下向きに比較的大きい荷重が作用しても、これら下端部122どうしが開くように変形することを防止することができる。
【0035】
また、各板体12は、外側が凸となるように湾曲している。このため、たとえば図9において模式的に表すように、板体12の外側から内側に向けて衝撃荷重等の荷重Pが作用しても、湾曲状の板体12が真っ直ぐに延びる方向(下端部122から連結部11に向かう板体12の長手軸方向N1)へ弾性変形する余地がある。したがって、湾曲状の板体12は、荷重Pに対して長手軸方向N1へのフレキシビリティが十分にある。また、本実施形態では、他方の板体12も外側が凸となるように湾曲しているため、当該他方の板体12においても下端部122から連結部11に向かう長手軸方向N2へのフレキシビリティが十分にある。このようなことから理解されるように、板体12に荷重Pが作用しても、湾曲状の板体12によって荷重Pを吸収することができ、板体12の変形を防止することができる。
【0036】
本実施形態と異なり、板体12’が湾曲せずに下端部から上端部にかけて真っ直ぐな平面状である場合について、図10を参照して説明する。当該板体12’の外側から内側に向けて衝撃荷重等の荷重Pが作用する場合には、上方へのフレキシビリティが殆どないため、連結部11’が矢印方向N3に変位しやすい。そして、上下方向の辺12a’の長さが相対的に長い板体12’においては、荷重Pが作用する位置で折れ曲がりやすく、板体12’が変形するおそれがある。
【0037】
表示塔本体1は、一枚の板材を折り曲げることにより、連結部11および一対の板体12を一体に有するように形成されている(図8参照)。このような構成によれば、一対の板体12の下端部122にベース部材2を取り付けることにより、外側が凸となるように湾曲した板体12を容易に形成することができる。
【0038】
各板体12の下端部122には、係止部13が設けられている。ベース部材2の一対の取付部21には、一対の開口部211と、当該開口部211につながる一対の被係止部212とが設けられている。そして係止部13をそれぞれ対応する開口部211から差し込むことにより、被係止部212に係止させることができる。このような構成によれば、下端部122へのベース部材2の取り付けを簡単に行うことができる。
【0039】
図4および図5を参照して上述したように、各係止部13は、X方向に直角である断面において外側に屈曲するL字状とされており、各被係止部212は、係止部13に対応する凹状形状とされている。このような外側に屈曲するL字状の係止部13を有する構成によれば、L字状の係止部13は被係止部212に的確に係止される。その一方、被係止部212の内側には、係止部13を差し込むための空間として開口部211がつながっている。これにより、板体12の外側から内側に向けて荷重Pが作用した場合(図9参照)、係止部13が内側の開口部211へ変位する余地がある。このような構成は、板体12の変形を防止するうえで好ましい。
【0040】
係止部13は、各板体12の下端部122において横方向の辺12bに対して部分的に設けられている。これにより、係止部13を開口部211から差し込む際には、上記横方向の辺12bのうち係止部13が設けられていない部分がベース部材2の取付部21上面に当接し、係止部13の開口部211への差し込み寸法が適切に規制される。このような構成によれば、係止部13を被係止部212に係止させる作業を的確に行うことができる。
【0041】
ベース部材2は、弾性的に折り曲げ可能とされている。このため、ベース部材2を表示塔本体1に取り付けるに際し、係止部13を取付部21の開口部211に順次差し込むときには、図5において仮想線で表するように、ベース部材2の取付部21上面が板体12の長手軸方向に対して略直角となるようにベース部材2を適宜折り曲げることによって、係止部13の差し込み作業を容易に行うことが可能となる。ベース部材2の中央部22底面には、X方向と平行に延びる切り込み221が形成されている。このため、上記のようなベース部材2の折り曲げ作業は、より容易に行うことができる。また、中央部22の厚さが取付部21の厚さよりも小とされていることも、ベース部材2の上記のような折り曲げ作業を容易に行ううえで好ましい。
【0042】
ベース部材2には、開口部211における内側の端縁から外側に向けて延びる庇部213が設けられている。このため、図5によく表れているように、開口部211の大半は庇部213によって覆われており、開口部211内にゴミ等が侵入するのを防止することができる。また、この庇部213は、弾性的に折り曲げ可能であるため、係止部13を開口部211に差し込む際に庇部213が当該差し込み作業の妨げとなることはない。
【0043】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係る表示塔の各部の具体的な形状や材質なども、上記実施形態に限定されるものではない。
【0044】
上記実施形態において、表示塔本体については、連結部および一対の板体が一枚の板材を折り曲げることにより一体に形成される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。たとえば、連結部としてヒンジ機構を採用し、一対の板体12が連結部を中心として相対回動可能に連結された構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
A 表示塔
X 方向(第1方向)
1 表示塔本体
11 連結部
12 板体
12a (上下方向の)辺
12b (横方向の)辺
12c 内面
12d 外面
121 上端部
122 下端部
13 係止部
2 ベース部材
21 取付部
211 開口部
212 被係止部
213 庇部
22 中央部
221 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる連結部、および、この連結部を介して上端部どうしが連結され、内面どうしが向かい合うとともに下方に向かうにつれて遠ざかるように傾斜する金属製の一対の板体、を有する表示塔本体と、
上記一対の板体の下端部に取り付けられるベース部材と、を備えた表示塔であって、
上記一対の板体のうち少なくとも一方は、上記連結部が延びる第1方向に直角である断面において、外側が凸となるように湾曲していることを特徴とする、表示塔。
【請求項2】
上記表示塔本体は、一枚の板材を折り曲げることにより、上記連結部および上記一対の板体を一体に有するように形成されている、請求項1に記載の表示塔。
【請求項3】
上記各板体は、上下方向の辺の長さが横方向の辺の長さより大とされた長矩形状である、請求項1または2に記載の表示塔。
【請求項4】
上記各板体の下端部には係止部が設けられており、
上記ベース部材は、上記係止部を開口部から差し込んで係止させる一対の被係止部を有する、請求項3に記載の表示塔。
【請求項5】
上記各係止部は、所定幅を有し、かつ上記第1方向に直角である断面において外側に屈曲するL字状とされており、
上記各被係止部は、上記係止部に対応する凹状形状とされている、請求項4に記載の表示塔。
【請求項6】
上記ベース部材には、上記開口部における内側の端縁から外側に向けて延び、かつ弾性的に折り曲げ可能な庇部が設けられている、請求項5に記載の表示塔。
【請求項7】
上記係止部は、上記各板体の下端部において上記横方向の辺に対して部分的に設けられている、請求項4ないし6のいずれかに記載の表示塔。
【請求項8】
上記ベース部材は、所定の厚さを有し、かつ一体形成されたゴム製プレートからなり、弾性的に折り曲げ可能である、請求項1ないし7のいずれかに記載の表示塔。
【請求項9】
上記ベース部材の底面には、上記第1方向と平行に延びる切り込みが形成されている、請求項8に記載の表示塔。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−11111(P2013−11111A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144938(P2011−144938)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000133928)株式会社テラモト (62)
【Fターム(参考)】