説明

表示媒体、および表示装置

【課題】電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得る表示媒体を提供する。
【解決手段】透光性を有する第1の基板20と、第1の基板20に対向して配置される第2の基板22と、第1の基板20および第2の基板22の少なくとも一方に保持される電極40、46と、第1の基板20および第2の基板22に挟まれる領域に封入された分散媒50と、分散媒50中に分散され、第1の基板20および第2の基板22に挟まれる領域に形成された電界に応じて分散媒50中を移動する、色および帯電する極性が異なる複数種の泳動粒子34、35を含む粒子群と、第1の基板20の第2の基板22に対向する面に設けられた第1の処理層21と、第2の基板22の第1の基板20に対向する面に設けられ、泳動粒子34、35との離脱性が第1の処理層21とは異なる第2の処理層23と、を有する表示媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体、および表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繰り返し書き換えが可能な表示媒体として、粒子を用いた表示媒体が知られている。この表示媒体は、例えば一対の基板と、一対の基板間に形成された電界に応じて基板間を移動可能に該基板間に封入された粒子群と、を含んで構成されている。また、基板間には、粒子が基板内の特定の領域に偏るのを防ぐため等の理由により、基板間を複数のセルに仕切るための間隙部材が設けられる場合もある。
【0003】
一対の基板間に封入された粒子群としては、特定の色に着色された1種類の粒子群である場合や、互いに色および移動に必要な電界強度の異なる複数種類の粒子群である場合等がある。
【0004】
表示媒体では、一対の基板間に電圧を印加することにより封入されている粒子を移動させることで、何れか一方の基板側に移動した粒子の量および移動した粒子の色に応じた色の画像を表示させている。すなわち、表示対象となる画像の色および濃度に応じて、移動させる対象となる粒子群を移動させるための強度の電圧を基板間に印加することで、移動対象となる粒子群を一対の基板の何れか一方側へ移動させて表示対象の画像の色および濃度に応じた画像を表示している。
【0005】
ここで、表示媒体の基板に粒子の固着を抑制する目的で、例えば、粒子群と接する側の表面を疎水化処理(ヘキサメチルシラザンによる処理)したり、電荷減衰性の小さい材料(フッ素樹脂)で処理することが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、電極上に吸着防止層(アナターズ形結晶構造を有するTiO、SiO、ZnO等の粒子を分散させた層)を形成し、これにより表面に粒子の粒子径よりも小さい凹凸ピッチを設けて、粒子の固着を防止することが提案されている(例えば特許文献2)。
その他、表示媒体の基板に粒子の固着を抑制する技術が提案されている(例えば特許文献3乃至7参照)。
【0006】
また、粒子の定着面に着色帯電粒子と逆極性の表面電荷を定常的に帯電し荷電膜を有する発明が提案されている(例えば特許文献8参照)。
更に、粒子の定着面に形成された荷電膜が、定着面に電界密度の差異を生じさせる差異発生部を有し、該差異発生部が荷電膜に形成された凹部からなる発明が提案されている(例えば特許文献9参照)。
また更に、表示基板および背面基板の表面層の平均表面粗さを調整することで、拘束力および離脱力を調整する発明が提案されている(例えば特許文献10参照)
【特許文献1】WO2004/077140
【特許文献2】特許4035550号公報
【特許文献3】特開2003−140202号公報
【特許文献4】特開2004−279647号公報
【特許文献5】特開2005−128501号公報
【特許文献6】特開2005−275215号公報
【特許文献7】特許2729299号公報
【特許文献8】特開2000−258805号公報
【特許文献9】特開2006−215473号公報
【特許文献10】特開2007−249188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得る表示媒体および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に係る発明は、
透光性を有する第1の基板と、
前記第1の基板に対向して配置される第2の基板と、
前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方に保持される電極と、
前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に封入された分散媒と、
前記分散媒中に分散され、前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に形成された電界に応じて前記分散媒中を移動する、色および帯電する極性が異なる複数種の泳動粒子を含む粒子群と、
前記第1の基板の前記第2の基板に対向する面に設けられた第1の処理層と、
前記第2の基板の前記第1の基板に対向する面に設けられ、前記泳動粒子との離脱性が前記第1の処理層とは異なる第2の処理層と、
を有する表示媒体である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記第1の処理層が、シリコーン鎖を持つ第1の高分子化合物を含み、
前記第2の処理層が、前記第1の高分子化合物におけるシリコーン鎖よりも重量平均分子量の小さいシリコーン鎖を持つ第2の高分子化合物を含む請求項1に記載の表示媒体である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記第1の処理層が、シリコーン鎖を持つ第1の高分子化合物を含み、
前記第2の処理層が、前記第1の高分子化合物におけるシリコーン鎖よりも重量平均分子量の大きいシリコーン鎖を持つ第2の高分子化合物を含む請求項1に記載の表示媒体である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記第1の処理層が、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を含み、
前記第2の処理層が、前記第1の処理層よりもシリコーン鎖の濃度が高くなるようシリコーン鎖を持つ高分子化合物を含む請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の表示媒体である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
前記第1の処理層が、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を含み、
前記第2の処理層が、前記第1の処理層よりもシリコーン鎖の濃度が低くなるようシリコーン鎖を持つ高分子化合物を含む請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の表示媒体である。
【0013】
請求項6に係る発明は、
前記分散媒がシリコーンオイルである請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の表示媒体である。
【0014】
請求項7に係る発明は、
透光性を有する第1の基板と、
前記第1の基板に対向して配置される第2の基板と、
前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方に保持される電極と、
前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に封入された分散媒と、
前記分散媒中に分散され、前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に形成された電界に応じて前記分散媒中を移動する、色および帯電する極性が異なる複数種の泳動粒子を含む粒子群と、
前記第1の基板の前記第2の基板に対向する面に設けられた第1の処理層と、
前記第2の基板の前記第1の基板に対向する面に設けられ、前記泳動粒子との離脱性が前記第1の処理層とは異なる第2の処理層と、
を有する表示媒体、
並びに、前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に電圧を印加する電圧印加手段を備えた表示装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得る表示媒体が提供される。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得ると共に、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を用いない場合に比べ、処理層表面に対する泳動粒子の固着が抑制された表示媒体が提供される。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得ると共に、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を用いない場合に比べ、処理層表面に対する泳動粒子の固着が抑制された表示媒体が提供される。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得ると共に、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を用いない場合に比べ、処理層表面に対する泳動粒子の固着が抑制された表示媒体が提供される。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得ると共に、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を用いない場合に比べ、処理層表面に対する泳動粒子の固着が抑制された表示媒体が提供される。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、シリコーンオイルを用いない場合に比べ、処理層表面に対する泳動粒子の固着が抑制された表示媒体が提供される。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得る表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態にかかる表示媒体は、透光性を有する第1の基板と、前記第1の基板に対向して配置される第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方に保持される電極と、前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に封入された分散媒と、前記分散媒中に分散され、前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に形成された電界に応じて前記分散媒中を移動する、色および帯電する極性が異なる複数種の泳動粒子を含む粒子群と、前記第1の基板の前記第2の基板に対向する面に設けられた第1の処理層と、前記第2の基板の前記第1の基板に対向する面に設けられ、前記泳動粒子との離脱性が前記第1の処理層とは異なる第2の処理層と、を有することを特徴とする。
【0023】
上記本実施形態に係る表示媒体は、泳動粒子との離脱性が異なる第1の処理層と第2の処理層とを有していることから、電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得る。
ここで具体的に、正帯電の泳動粒子と負帯電の泳動粒子との2種の泳動粒子を含む粒子群を用いる場合について説明する。
【0024】
・第1の処理層の離脱性がより高い場合
まず第1の基板側に形成される第1の処理層における泳動粒子との離脱性が、第2の基板側に形成される第2の処理層における泳動粒子との離脱性より高い(即ち付着性が低い)場合について述べる。
【0025】
離脱性がより低い(付着性がより高い)第2の処理層上に存在する泳動粒子が、該第2の処理層から離脱する閾値以上の電圧を電極に印加する場合、第1の処理層上および第2の処理層上の何れに存在する泳動粒子も移動し得る。つまり、プラス側の電極に負帯電の泳動粒子が移動し、マイナス側の電極に正帯電の泳動粒子が移動する。
従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、第1の基板側の電極がプラスとなるように上記の電圧を印加すると、負帯電の泳動粒子の色が観察され、一方第1の基板側の電極がマイナスとなるように上記の電圧を印加すると、正帯電の泳動粒子の色が観察される。
【0026】
また、離脱性がより高い(付着性がより低い)第1の処理層上に存在する泳動粒子が、該第1の処理層から離脱する閾値以上の電圧であって、離脱性がより低い(付着性がより高い)第2の処理層上に存在する泳動粒子が、該第2の処理層から離脱する閾値未満の電圧を電極に印加する場合、第1の処理層上に存在する泳動粒子は移動し得るが、第2の処理層上に存在する泳動粒子は移動しない。
つまり、第1の処理層上に正帯電の泳動粒子が存在し、且つ第2の処理層上に負帯電の泳動粒子が存在し、第1の基板側の電極がプラスとなるように、上記の電圧を印加する場合であれば、第1の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子は第2の基板側に移動するが、第2の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子は第1の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、泳動粒子の色は観察されず、分散媒の色(分散媒中に着色浮遊粒子を有する場合には該着色浮遊粒子の色)が観察される。
【0027】
逆に、第1の処理層上に負帯電の泳動粒子が存在し、且つ第2の処理層上に正帯電の泳動粒子が存在し、第1の基板側の電極がマイナスとなるように、上記の電圧を印加する場合も、第1の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子は第2の基板側に移動するが、第2の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子は第1の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、泳動粒子の色は観察されず、分散媒の色(分散媒中に着色浮遊粒子を有する場合には該着色浮遊粒子の色)が観察される。
【0028】
・第1の処理層の離脱性がより低い場合
次いで第1の基板側に形成される第1の処理層における泳動粒子との離脱性が、第2の基板側に形成される第2の処理層における泳動粒子との離脱性より低い(即ち付着性が高い)場合について述べる。
【0029】
離脱性がより低い(付着性がより高い)第1の処理層上に存在する泳動粒子が、該第1の処理層から離脱する閾値以上の電圧を電極に印加する場合、第1の処理層上および第2の処理層上の何れに存在する泳動粒子も移動し得る。つまり、プラス側の電極に負帯電の泳動粒子が移動し、マイナス側の電極に正帯電の泳動粒子が移動する。
従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、第1の基板側の電極がプラスとなるように上記の電圧を印加すると、負帯電の泳動粒子の色が観察され、一方第1の基板側の電極がマイナスとなるように上記の電圧を印加すると、正帯電の泳動粒子の色が観察される。
【0030】
また、離脱性がより高い(付着性がより低い)第2の処理層上に存在する泳動粒子が、該第2の処理層から離脱する閾値以上の電圧であって、離脱性がより低い(付着性がより高い)第1の処理層上に存在する泳動粒子が、該第1の処理層から離脱する閾値未満の電圧を電極に印加する場合、第2の処理層上に存在する泳動粒子は移動し得るが、第1の処理層上に存在する泳動粒子は移動しない。
つまり、第1の処理層上に正帯電の泳動粒子が存在し、且つ第2の処理層上に負帯電の泳動粒子が存在し、第1の基板側の電極がプラスとなるように、上記の電圧を印加する場合であれば、第2の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子は第1の基板側に移動するが、第1の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子は第2の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、正帯電の泳動粒子の色と負帯電の泳動粒子の色との混色が観察される。
【0031】
逆に、第1の処理層上に負帯電の泳動粒子が存在し、且つ第2の処理層上に正帯電の泳動粒子が存在し、第1の基板側の電極がマイナスとなるように、上記の電圧を印加する場合も、第2の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子は第1の基板側に移動するが、第1の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子は第2の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、正帯電の泳動粒子の色と負帯電の泳動粒子の色との混色が観察される。
【0032】
・泳動粒子の離脱性の判定
前記第1の処理層と前記第2の処理層とにおいて、泳動粒子との離脱性が異なるか否かは、泳動粒子が離脱する閾値電圧を測定することによって判定される。即ち、泳動粒子が離脱する閾値電圧がより高い処理層が「離脱性がより低い(付着性がより高い)」処理層であり、泳動粒子が離脱する閾値電圧がより低い処理層が「離脱性がより高い(付着性がより低い)」処理層である。
前記第1の処理層または前記第2の処理層から、前記の泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定は、以下の方法によって行われる。本明細書に記載の閾値電圧は該方法によって測定したものである。
電極としてITOを形成したガラス基板のITO面上に前記第1の処理層または前記第2の処理層を形成した基板をそれぞれ用意し、100μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとして、クリップにて固定する。その後、泳動粒子と、泳動粒子と色が異なる浮遊粒子とを分散させた分散媒を上記基板の間隙部に注入する。2枚のITO電極に、一方の基板表面から泳動粒子の色が観察されるように電圧を印加した後、徐々に逆極性電圧を印加し、色の変化が起こり始めたときの電圧を閾値電圧とする。色の変化は分光器にて計測する。
【0033】
尚、第1の処理層と第2の処理層との閾値電圧の差は、0.1V以上99.9V以下であることが好ましく、1V以上49V以下であることがより好ましく、1V以上29V以下であることが特に好ましい。
そのため、泳動粒子との離脱性がより高い処理層における閾値電圧は、0.2V以上100V以下であることが好ましく、2V以上50V以下であることがより好ましく、2V以上30V以下であることが特に好ましい。
また、泳動粒子との離脱性がより低い処理層における閾値電圧は、0.1V以上99.9V以下であることが好ましく、1V以上49V以下であることがより好ましく、1V以上29V以下であることが特に好ましい。
【0034】
また、3種以上の泳動粒子を含む粒子群を用いる場合について説明する。ここでは、例として、正帯電の泳動粒子Aと負帯電の泳動粒子B、及び泳動粒子Aよりも帯電量の大きい正帯電の泳動粒子Cの3種の泳動粒子を含む粒子群を用いる場合について説明する。
【0035】
・第1の処理層の離脱性がより高い場合
まず第1の基板側に形成される第1の処理層における泳動粒子との離脱性が、第2の基板側に形成される第2の処理層における泳動粒子との離脱性より高い(即ち付着性が低い)場合について述べる。
【0036】
離脱性がより低い(付着性がより高い)第2の処理層上に存在する泳動粒子全てが、該第2の処理層から離脱する閾値以上の電圧を電極に印加する場合、第1の処理層上および第2の処理層上の何れに存在する泳動粒子も移動し得る。つまり、プラス側の電極に負帯電の泳動粒子Bが移動し、マイナス側の電極に正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cが移動する。
従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、第1の基板側の電極がプラスとなるように上記の電圧を印加すると、負帯電の泳動粒子Bの色が観察され、一方第1の基板側の電極がマイナスとなるように上記の電圧を印加すると、正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cの混色が観察される。
【0037】
また、離脱性がより高い(付着性がより低い)第1の処理層上に存在する泳動粒子Aまたは泳動粒子Bが、該第1の処理層から離脱する閾値以上の電圧であって、泳動粒子Cが第1の処理層から離脱する閾値未満の電圧であり、且つ、離脱性がより低い(付着性がより高い)第2の処理層上に存在する泳動粒子全てが、該第2の処理層から離脱する閾値未満の電圧(第2の処理層上に存在する全ての泳動粒子が離脱しない電圧)を電極に印加する場合、第1の処理層上に存在する泳動粒子Aまたは泳動粒子Bは移動し得るが、泳動粒子Cおよび第2の処理層上に存在する泳動粒子は移動しない。
つまり、第1の処理層上に正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cが存在し、且つ第2の処理層上に負帯電の泳動粒子Bが存在し、第1の基板側の電極がプラスとなるように、上記の電圧を印加する場合であれば、第1の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子Aは第2の基板側に移動するが、泳動粒子Cは第2の基板側に移動せず、また、第2の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子Bは第1の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、泳動粒子Cの色が観察される。
【0038】
更に、離脱性がより高い(付着性がより低い)第1の処理層上に存在する泳動粒子全てが、該第1の処理層から離脱する閾値以上の電圧であって、離脱性がより低い(付着性がより高い)第2の処理層上に存在する泳動粒子全てが、該第2の処理層から離脱する閾値未満の電圧(第2の処理層上に存在する全ての泳動粒子が離脱しない電圧)を電極に印加する場合、第1の処理層上に存在する泳動粒子全てが移動し得るが、第2の処理層上に存在する泳動粒子は移動しない。
つまり、第1の処理層上に正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cが存在し、且つ第2の処理層上に負帯電の泳動粒子Bが存在し、第1の基板側の電極がプラスとなるように、上記の電圧を印加する場合であれば、第1の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cは第2の基板側に移動するが、第2の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子Bは第1の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、泳動粒子の色は観察されず、分散媒の色(分散媒中に着色浮遊粒子を有する場合には該着色浮遊粒子の色)が観察される。
【0039】
逆に、第1の処理層上に負帯電の泳動粒子Bが存在し、且つ第2の処理層上に正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cが存在し、第1の基板側の電極がマイナスとなるように、上記の電圧を印加する場合も、第1の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子Bは第2の基板側に移動するが、第2の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cは第1の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、泳動粒子の色は観察されず、分散媒の色(分散媒中に着色浮遊粒子を有する場合には該着色浮遊粒子の色)が観察される。
【0040】
・第1の処理層の離脱性がより低い場合
次いで第1の基板側に形成される第1の処理層における泳動粒子との離脱性が、第2の基板側に形成される第2の処理層における泳動粒子との離脱性より低い(即ち付着性が高い)場合について述べる。
【0041】
離脱性がより低い(付着性がより高い)第1の処理層上に存在する泳動粒子全てが、該第1の処理層から離脱する閾値以上の電圧を電極に印加する場合、第1の処理層上および第2の処理層上の何れに存在する泳動粒子も移動し得る。つまり、プラス側の電極に負帯電の泳動粒子Bが移動し、マイナス側の電極に正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cが移動する。
従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、第1の基板側の電極がプラスとなるように上記の電圧を印加すると、負帯電の泳動粒子Bの色が観察され、一方第1の基板側の電極がマイナスとなるように上記の電圧を印加すると、正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cの混色が観察される。
【0042】
また、離脱性がより高い(付着性がより低い)第2の処理層上に存在する泳動粒子全てが、該第2の処理層から離脱する閾値以上の電圧であって、離脱性がより低い(付着性がより高い)第1の処理層上に存在する泳動粒子全てが、該第1の処理層から離脱する閾値未満の電圧(第1の処理層上に存在する全ての泳動粒子が離脱しない電圧)を電極に印加する場合、第2の処理層上に存在する泳動粒子は移動し得るが、第1の処理層上に存在する泳動粒子は移動しない。
つまり、第1の処理層上に正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cが存在し、且つ第2の処理層上に負帯電の泳動粒子Bが存在し、第1の基板側の電極がプラスとなるように、上記の電圧を印加する場合であれば、第2の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子Bは第1の基板側に移動するが、第1の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cは第2の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、正帯電の泳動粒子Aの色と泳動粒子Cの色と負帯電の泳動粒子Bの色との混色が観察される。
【0043】
逆に、第1の処理層上に負帯電の泳動粒子Bが存在し、且つ第2の処理層上に正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cが存在し、第1の基板側の電極がマイナスとなるように、上記の電圧を印加する場合も、第2の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cは第1の基板側に移動するが、第1の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子Bは第2の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、正帯電の泳動粒子Aの色と泳動粒子Cの色と負帯電の泳動粒子Bの色との混色が観察される。
【0044】
また、離脱性がより高い(付着性がより低い)第2の処理層上に存在する泳動粒子Aまたは泳動粒子Bが、該第2の処理層から離脱する閾値以上の電圧であって、泳動粒子Cが第2の処理層から離脱する閾値未満の電圧であり、且つ、離脱性がより低い(付着性がより高い)第1の処理層上に存在する泳動粒子全てが、該第1の処理層から離脱する閾値未満の電圧(第1の処理層上に存在する全ての泳動粒子が離脱しない電圧)を電極に印加する場合、第2の処理層上に存在する泳動粒子Aまたは泳動粒子Bは移動し得るが、泳動粒子Cおよび第1の処理層上に存在する泳動粒子は移動しない。
つまり、第2の処理層上に正帯電の泳動粒子Aおよび泳動粒子Cが存在し、且つ第1の処理層上に負帯電の泳動粒子Bが存在し、第1の基板側の電極がプラスとなるように、上記の電圧を印加する場合であれば、第2の処理層上に存在する正帯電の泳動粒子Aは第1の基板側に移動するが、泳動粒子Cは第1の基板側に移動せず、また、第1の処理層上に存在する負帯電の泳動粒子Bは第2の基板側に移動しない。従って、第1の基板側から観察する場合(即ち第1の基板が表示基板)であれば、泳動粒子Aと泳動粒子Bの混色が観察される。
【0045】
上記の通り、本実施形態に係る表示媒体は、電極に印加される電圧の高さによって泳動粒子の挙動を制御し得る。
【0046】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、作用・機能が同じ働きを担う部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する場合がある。
【0047】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
第1実施形態に係る表示装置10は、図1に示すように、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18と、を含んで構成されている。
【0048】
表示媒体12は、画像表示面とされる表示基板(第1の基板)20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板(第2の基板)22、これらの基板間を定められた間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との基板間を複数のセルに区画する間隙部材24、各セル内に封入され正に帯電した泳動粒子34および各セル内に封入され色が前記泳動粒子34とは異なると共に負に帯電した泳動粒子35(泳動粒子34と35とで粒子群を構成している)、粒子群(泳動粒子34および35)とは異なる光学的反射特性を有する着色浮遊粒子群36、前記表示基板(第1の基板)20のセル側表面に形成された表示側処理層(第1の処理層)21、前記背面基板(第2の基板)22のセル側表面に形成された背面側処理層(第2の処理層)23を含んで構成されている。尚、表示側処理層(第1の処理層)21は背面側処理層(第2の処理層)23よりも、前記泳動粒子34および35との離脱性が低く(付着性が高く)設定されている。
【0049】
上記セルとは、表示基板20表面に形成された表示側処理層21と、背面基板22表面に形成された背面側処理層23と、間隙部材24と、によって囲まれた領域を示している。このセル中には、分散媒50が封入されている。泳動粒子34および35(詳細後述)は、複数の粒子から構成されており、この分散媒50中に分散され、セル内に形成された電界強度に応じて表示基板20と背面基板22との基板間を着色浮遊粒子群36の間隙を通じて移動する。
【0050】
なお、前述の通り第1実施形態では、1つのセル内に封入されている泳動粒子34は、予め定められた色を有すると共に正帯電処理され、一方泳動粒子35は、泳動粒子34とは異なる色を有すると共に負帯電処理されて予め調製されている。
【0051】
なお、この表示媒体12に画像を表示したときの各画素に対応するように間隙部材24を設け、各画素に対応するようにセルを形成することで、表示媒体12を、画素毎の表示が可能となるように構成にしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、説明を簡易化するために、1つのセルに注目した図を用いて本実施形態を説明する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0053】
・表示基板(第1の基板)および背面基板(第2の基板)
まず、一対の基板について説明する。表示基板20は、支持基板38上に、表面電極40を積層した構成となっている。背面基板22は、支持基板44上に、背面電極46を積層した構成となっている。
【0054】
表示基板20、または表示基板20と背面基板22との双方は、透光性を有している。ここで、本実施形態における透光性とは、可視光の透過率が60%以上であることを示している。
【0055】
支持基板38および支持基板44としては、ガラスや、プラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0056】
表面電極40および背面電極46には、インジウム、スズ、カドミウム、アンチモン等の酸化物、ITO等の複合酸化物、金、銀、銅、ニッケル等の金属、ポリピロールやポリチオフェン等の有機材料等が使用される。これらは単層膜、混合膜あるいは複合膜として使用され、蒸着法、スパッタリング法、塗布法等で形成される。また、その厚さは、蒸着法、スパッタリング法によれば、通常100Å以上2000Å以下である。背面電極46および表面電極40は、従来の液晶表示媒体あるいはプリント基板のエッチング等従来公知の手段により、予め定められたパターン、例えば、マトリックス状、またはパッシブマトリックス駆動を可能とするストライプ状に形成してもよい。
【0057】
また、表面電極40を支持基板38に埋め込んでもよい。また、背面電極46を支持基板44に埋め込んでもよい。
【0058】
なお、背面電極46および表面電極40各々を表示基板20および背面基板22と分離させ、表示媒体12の外部に配置してもよい。
【0059】
なお、上記では、表示基板20と背面基板22の双方に電極(表面電極40および背面電極46)を備える場合を説明したが、何れか一方にだけ設けるようにして、アクティブマトリクス駆動させるようにしてもよい。
【0060】
また、アクティブマトリックス駆動を可能にするために、支持基板38および支持基板44は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)を備えていてもよい。配線の積層化および部品実装が容易であることから、TFTは表示基板ではなく背面基板22に形成することが望ましい。
【0061】
・表示側処理層(第1の処理層)および背面側処理層(第2の処理層)
次に、処理層について説明する。表示基板20と背面基板22の対向面には、各々、表示側処理層21および背面側処理層23が設けられている。尚、表示側処理層21は背面側処理層23よりも、前記泳動粒子34および35との離脱性が低く(付着性が高く)設定されている。
【0062】
表示側処理層21および背面側処理層23の各々は、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を表示基板20と背面基板22各々の対向面に対して処理することにより形成することが好ましい。ここで、処理とは、各基板に対して、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を被覆させる処理を意味する。
【0063】
ここで、泳動粒子との離脱性が異なる処理層を形成する方法について説明する。
(I)高分子化合物におけるシリコーン鎖の重量平均分子量
シリコーン鎖の重量平均分子量がより大きい(即ちシリコーン鎖がより長い)高分子化合物を用いて処理層を形成することにより、離脱性が高い(即ち付着性が低く、閾値電圧が低い)処理層が形成される。具体的には、シリコーン鎖の重量平均分子量がより大きいマクロマーを重合して得た高分子化合物により処理層を形成する方法が挙げられる。
【0064】
従って、表示側処理層21を、背面側処理層23よりも泳動粒子との離脱性が低く(付着性が高く)なるよう設定するには、表示側処理層21の形成の際に、背面側処理層23よりもシリコーン鎖の重量平均分子量が小さい(即ちシリコーン鎖がより短い)高分子化合物を用いる。
【0065】
ここで、高分子化合物におけるシリコーン鎖の重量平均分子量は、処理層として用いる高分子化合物を合成する際に用いるシリコーンマクロマーの重量平均分子量により決定される。即ち、重量平均分子量が大きいシリコーンマクロマー用いると、重量平均分子量の大きいシリコーン鎖をもった高分子化合物となる。
尚、高分子化合物におけるシリコーン鎖の重量平均分子量の測定は、以下のようにして行われ、本明細書に記載の数値は該方法にて測定されたものである。まず、シリコーン鎖を有する高分子化合物を10質量%水酸化カリウム水溶液中で攪拌し、加水分解させる。その後、不溶物をろ過回収し、減圧乾燥させた後、GPC(ゲルパミエーションクロマトグラフィー)にて分子量を測定することにより、シリコーン鎖の重量平均分子量を求める。
【0066】
泳動粒子との離脱性がより高い処理層(即ち第1実施形態においては背面側処理層23)に含まれる高分子化合物のシリコーン鎖の重量平均分子量と、泳動粒子との離脱性がより低い処理層(即ち第1実施形態においては表面側処理層21)に含まれる高分子化合物のシリコーン鎖の重量平均分子量と、の差は、高分子化合物中のシリコーン鎖の濃度にも依存するため、一概に決めることはできないが、概ね500以上10000以下であることが好ましく、5000以上10000以下であることがより好ましい。
そのため、泳動粒子との離脱性がより高い処理層(即ち第1実施形態においては背面側処理層23)に含まれる高分子化合物のシリコーン鎖の重量平均分子量は、400以上10000以下であることが好ましく、5000以上10000以下であることがより好ましい。
また、泳動粒子との離脱性がより低い処理層(即ち第1実施形態においては表面側処理層21)に含まれる高分子化合物のシリコーン鎖の重量平均分子量は、400以上10000以下であることが好ましく、400以上5000以下であることがより好ましい。
【0067】
(II)シリコーン鎖の濃度
シリコーン鎖の濃度がより高く(即ち密度が大きく)なるよう処理層を形成することにより、離脱性が高い(即ち付着性が低く、閾値電圧が低い)処理層が形成される。具体的には、処理層中に含有させる上記高分子化合物の濃度を高くする方法が挙げられる。
【0068】
従って、表示側処理層21を、背面側処理層23よりも泳動粒子との離脱性が低く(付着性が高く)なるよう設定するには、表示側処理層21の形成の際に、背面側処理層23よりもシリコーン鎖の濃度を低く(即ち密度を小さく)する。
【0069】
ここで、処理層におけるシリコーン鎖の濃度(密度)は、処理層として用いる高分子化合物を合成する際に用いるシリコーンマクロマーの濃度により決定される。
尚、処理層におけるシリコーン鎖の濃度(密度)測定は、以下のようにして行われ、本明細書に記載の数値は該方法にて測定されたものである。高分子化合物を重クロロホルムに溶解し、NMRにてH−NMRスペクトルを測定し、シリコーンマクロマ由来のプロトンシグナルと、シリコーンマクロマ以外のプロトンシグナルの積分値の比からシリコーングラフト鎖濃度を求める。
【0070】
泳動粒子との離脱性がより高い処理層(即ち第1実施形態においては背面側処理層23)におけるシリコーン鎖の濃度と、泳動粒子との離脱性がより低い処理層(即ち第1実施形態においては表面側処理層21)におけるシリコーン鎖の濃度と、の差は、シリコーン鎖の重量平均分子量にも依存するため、一概に決めることはできないが、概ね、0.01質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
そのため、泳動粒子との離脱性がより高い処理層(即ち第1実施形態においては背面側処理層23)におけるシリコーン鎖の濃度は、0.01質量%以上95質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0071】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物としては、例えば、主高分子化合物の主鎖に対して、シリコーン鎖(シリコーングラフト鎖)を側鎖として有するシリコーン系高分子化合物が挙げられる。シリコーン系高分子化合物としては、例えば、少なくとも、シリコーン鎖を持つ単量体(以下、A’.シリコーン鎖成分)と、シリコーン鎖を持たない単量体(B’.非シリコーン鎖成分)と、の共重合体が挙げられる。以下、各単量体(成分)について説明する。
【0072】
A’.シリコーン鎖成分
シリコーン鎖成分としては、片末端に(メタ)アクリレート基を持つジメチルシリコーンモノマ(例えば、チッソ社製:サイラプレーン:FM−0711,FM−0721,FM−0725等、信越シリコーン(株):X−22−174DX,X−22−2426,X−22−2475等)が挙げられる。
【0073】
B’非シリコーン鎖成分
非シリコーン鎖成分としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−オ クチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族アミノ基を有する(メタ)アクリレート類;、
N−メチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−フェニルメチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−p−メトキシ−フェニルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;、
ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジオクチルアミノスチレン等の含窒素基を有する芳香族置換エチレン系単量体類;、
ビニル−N−エチル −N−フェニルアミノエチルエーテル、ビニル−N−ブチル−N−フェニルアミノエチルエーテル、トリエタノールアミンジビニルエーテル、ビニルジフェニルアミノエチルエーテル、N−ビニルヒドロキシエチルベンズアミド、m−アミノフェニルビニルエーテル等の含窒素ビニルエーテル単量体類;
【0074】
N−ビニルピロール等のピロール類;、
N−ビニル−2−ピロリン、N−ビニル−3−ピロリン等のピロリン類;、
N−ビニルピロリジン、ビニルピロリジンアミノエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリジン類;、
N−ビニル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;、
N−ビニルイミダゾリン等のイミダゾリン類;、
N−ビニルインドール等のインドール類;、
N−ビニルインドリン等のインドリン類;、
N−ビニルカルバゾール、3,6−ジブロム−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール類;、
2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等のピリジン類;、
(メタ)アクリルピペリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン等のピペリジン類;、
2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン等のキノリン類;、
N−ビニルピラゾール、N−ビニルピラゾリン等のピラゾール類;、
2−ビニルオキサゾール等のオキサゾール類;、
4−ビニルオキサジン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等のオキサジン類;、
【0075】
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、またはそれらの無水物およびそのモノアルキルエステルやカルボキシエチルビニルエーテル、カルボキシプロピルビニルエーテルの如きカルボキシル基を有するビニルエーテル類;、
スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホニックアシッド、3−スルホプロピル(メタ)アクリックアシッドエステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコニックアシッドエステル等およびその塩;、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸の硫酸モノエステルおよびその塩;
ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート;、
などが挙げられる。
【0076】
なお、上記2成分の共重合比はA’.シリコーン鎖成分が0.01質量%以上95質量%以下、望ましくは0.1質量%以上80質量%以下あることが望ましい。なお、この割合は、高分子化合物を合成する際の仕込み量の割合である。
【0077】
シリコーン系高分子化合物を用いた処理層は、例えば、これを含む塗布液を基板に塗布・乾燥することで形成される。
シリコーン系高分子による処理層の厚みとしては、例えば、0.01μm以上10μm以下、より望ましくは0.05μm以上1μm以下である。
【0078】
・間隙部材
次に、間隙部材について説明する。表示基板20と背面基板22との間隙を保持するための間隙部材24は、表示基板20の透光性を損なわないように形成され、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化樹脂、ゴム、金属等で形成される。
【0079】
間隙部材24は表示基板20および背面基板22の何れか一方と一体化されてもよい。この場合には、支持基板38または支持基板44をエッチングするエッチング処理、レーザー加工処理、予め作製した型を使用してプレス加工処理または印刷処理等を行うことによって作製する。
この場合、間隙部材24は、表示基板20側、背面基板22側のいずれか、または双方に作製する。
【0080】
間隙部材24は有色でも無色でもよいが、表示媒体12に表示される表示画像に悪影響を及ぼさないように無色透明であることが望ましく、その場合には、例えば、ポリスチレンやポリエステルやアクリルなどの透明樹脂等が使用される。
【0081】
また、粒子状の間隙部材24もまた透明であることが望ましく、ポリスチレン、ポリエステルまたはアクリル等の透明樹脂粒子の他、ガラス粒子も使用される。
【0082】
なお、「透明」とは、可視光に対して、透過率60%以上有することを示している。
【0083】
・分散媒
次に、分散媒について説明する。泳動粒子34および35が分散される分散媒50としては、絶縁性液体であることが望ましい。ここで、「絶縁性」とは、体積固有抵抗が1011Ωcm以上であることを示しており、本明細書において統一の定義である。
【0084】
上記絶縁性液体として具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジククロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、アルコール類、エーテル類、エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用される。これらの中でも、シリコーンオイルを適用することがよい。シリコーンオイルを用いることで、処理層を構成する高分子化合物のシリコーン鎖が分散媒50側へ存在し易くなることから、粒子固着抑制効果が向上される。
【0085】
また、下記体積抵抗値となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も、分散媒50として好適に使用される。該体積抵抗値としては、10Ωcm以上であることが望ましく、10Ωcm以上1019Ωcm以下であることがより好適であり、さらに1010Ωcm以上1019Ωcm以下であることがより良い。
【0086】
なお、絶縁性液体には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加してもよいが、上記で示した特定の体積抵抗値の範囲となるように添加することが望ましい。
【0087】
また、絶縁性液体には、帯電制御剤として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、金属石鹸、アルキルリン酸エステル類、コハク酸イミド類等を添加して使用してもよい。
【0088】
イオン性および非イオン性の界面活性剤としては、より具体的には以下があげられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸等がある。カチオン界面活性剤としては、第一級ないし第三級のアミン塩、第四級アンモニウム塩等があげられる。
これら帯電制御剤は、粒子固形分に対して0.01質量%以上20質量%以下が望ましく、特に0.05質量%以上10質量%以下の範囲が望ましい。
【0089】
なお、分散媒50は、前記絶縁性液体と共に高分子樹脂を併用してもよい。この高分子樹脂としては、高分子ゲル、高分子ポリマー等であることも望ましい。
【0090】
この高分子樹脂としては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等の天然高分子由来の高分子ゲルが挙げられる他、合成高分子の場合にはほとんどすべての高分子ゲルが挙げられる。
【0091】
更に、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、およびアミドの官能基を繰り返し単位中に含む高分子等が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドやこれら高分子を含む共重合体が挙げられる。
【0092】
これら中でも、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド等が望ましく用いられる。
【0093】
また、この分散媒50に下記着色剤を混合することで、表示媒体12に泳動粒子34および35の色とは異なる色を表示させてもよい。
【0094】
この分散媒50に混合する着色剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして挙げられる。
【0095】
分散媒50はその中で泳動粒子34および35が移動することから、分散媒50の粘度が特定の値以上であると、背面基板22および表示基板20への力のばらつきが大きく、電界に対する粒子移動の閾値がとれない。従って、分散媒50の粘度についても、調整することがよい。
【0096】
分散媒50の粘度は、温度20℃の環境下において、0.1mPa・s以上100mPa・s以下であることが望ましく、0.1mPa・s以上50mPa・s以下であることがより望ましく、0.1mPa・s以上20mPa・s以下であることが更に望ましい。
【0097】
分散媒50の粘度の調整は、分散媒の分子量、構造、組成等を調整することによって可能である。なお、この粘度の測定には、東京計器製B−8L型粘度計を用いる。
【0098】
・泳動粒子
次に、粒子群について説明する。泳動粒子34および35は、複数の粒子から構成され、泳動粒子34は正(+)に、泳動粒子35は負(−)に帯電されており、表面電極40と背面電極46との電極間に(すなわち、表示基板20と背面基板22と基板間に)、特定の電圧が印加されて表示基板20と背面基板22との基板間に特定の電界強度以上の電界が形成されることで分散媒50中を移動するものである。
表示媒体12における表示色の変化は、この泳動粒子34および35を構成する各粒子の分散媒50中の移動によって生じる。
【0099】
この泳動粒子34および35の各粒子としては、ガラスビーズ、アルミナ、酸化チタン等の絶縁性の金属酸化物粒子等、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂粒子、これらの樹脂粒子の表面に着色剤を固定したもの、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂中に着色剤を含有する粒子、およびプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子等が挙げられる。
【0100】
粒子の製造に使用される熱可塑性樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体あるいは共重合体が例示される。
【0101】
また、粒子の製造に使用される熱硬化性樹脂としては、ジビニルベンゼンを主成分とする架橋共重合体や架橋ポリメチルメタクリレート等の架橋樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0102】
着色剤としては、有機若しくは無機の顔料や、油溶性染料等を使用することができ、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして例示される。
【0103】
粒子の樹脂には、必要に応じて、帯電制御剤を混合してもよい。帯電制御剤としては、電子写真用トナー材料に使用される公知のものが使用でき、例えば、セチルピリジルクロライド、BONTRON P−51、BONTRON P−53、BONTRON E−84、BONTRON E−81(以上、オリエント化学工業社製)等の第4級アンモニウム塩、サリチル酸系金属錯体、フェノール系縮合物、テトラフェニル系化合物、酸化金属粒子、各種カップリング剤により表面処理された酸化金属粒子が挙げられる。
【0104】
粒子の内部や表面には、必要に応じて、磁性材料を混合してもよい。磁性材料は必要に応じてカラーコートした無機磁性材料や有機磁性材料を使用する。また、透明な磁性材料、特に、透明有機磁性材料はより望ましい。
着色した磁性粉として、例えば、特開2003−131420号公報記載の小径着色磁性粉を用いてもよい。核となる磁性粒子と該磁性粒子表面上に積層された着色層とを備えたものが用いられる。そして、着色層としては、顔料等により磁性粉を不透過に着色する等選定して差し支えないが、例えば光干渉薄膜を用いるのが望ましい。この光干渉薄膜とは、SiOやTiO等の無彩色材料を光の波長と同等な厚みを有する薄膜にしたものであり、薄膜内の光干渉により光を波長選択的に反射するものである。
【0105】
粒子の表面には、必要に応じて、外添剤を付着させてもよい。外添剤の色は、粒子の色に影響を与えないように、透明であることが望ましい。
【0106】
外添剤としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物等の無機粒子が用いられる。粒子をカップリング剤やシリコーンオイルで表面処理してもよい。
【0107】
カップリング剤には、アミノシラン系カップリング剤、アミノチタン系カップリング剤、ニトリル系カップリング剤等の正帯電性のものと、窒素原子を含まない(窒素以外の原子で構成される)シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、エポキシシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤等の負帯電性のものがある。また、シリコーンオイルには、アミノ変性シリコーンオイル等の正帯電性のものと、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α−メチルスルホン変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等の負帯電性のものが挙げられる。これらは外添剤の抵抗に応じて選択される。
【0108】
上記外添剤の中では、よく知られている疎水性シリカや疎水性酸化チタンが望ましく、特に特開平10−3177号公報記載のTiO(OH)と、シランカップリング剤等のシラン化合物との反応で得られるチタン化合物が好適である。シラン化合物としてはクロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤のいずれのタイプを使用することも可能である。このチタン化合物は、湿式工程の中で作製されるTiO(OH)にシラン化合物あるいはシリコーンオイルを反応、乾燥させて作製される。
【0109】
外添剤の一次粒子は、一般的には1nm以上100nm以下であり、5nm以上50nm以下であることがより良いが、これに限定されない。
【0110】
外添剤と粒子の配合比は粒子の粒径と外添剤の粒径の兼ね合いから調整される。一般的には、外添剤の量は、粒子100質量部に対して、0.01質量部以上3質量部以下、また0.05質量部以上1質量部以下であることがより良い。
【0111】
外添剤は、複数種類の粒子の何れか1種にだけ添加してもよいし、複数種または全種類の粒子へ添加してもよい。全粒子の表面に外添剤を添加する場合は、粒子表面に外添剤を衝撃力で打込んだり、粒子表面を加熱して外添剤を粒子表面に強固に固着したりすることが望ましい。
【0112】
泳動粒子34および35を作製する方法としては、従来公知のどの方法を用いてもよい。例えば、特開平7−325434号公報記載のように、樹脂、顔料および帯電制御剤を定められた混合比になるように計量し、樹脂を加熱溶融させた後に顔料を添加して混合、分散させ、冷却した後、ジェットミル、ハンマーミル、ターボミル等の粉砕機を用いて粒子を調製し、得られた粒子をその後分散媒に分散する方法が使用される。また、懸濁重合、乳化重合、分散重合等の重合法やコアセルベーション、メルトディスパージョン、エマルジョン凝集法で帯電制御剤を粒子中に含有させた粒子を調製し、その後分散媒に分散して粒子分散媒を作製してもよい。さらにまた、樹脂が可塑化可能で、分散媒が沸騰せず、かつ、樹脂、帯電制御剤および着色剤の少なくとも一方の分解点よりも低温で、前記の樹脂、着色剤、帯電制御剤および分散媒の原材料を分散および混錬する適当な装置を用いる方法がある。具体的には、流星型ミキサー、ニーダー等で顔料と樹脂、帯電制御剤を分散媒中で加熱溶融し、樹脂の溶媒溶解度の温度依存性を利用して、溶融混合物を攪拌しながら冷却し、凝固/析出させて粒子を作製する。
【0113】
さらにまた、分散および混練のための粒状メデイアを装備した適当な容器、例えばアトライター、加熱したボールミル等の加熱された振動ミル中に上記の原材料を投入し、この容器を望ましい温度範囲、例えば80℃以上160℃以下で分散および混練する方法を使用してもよい。粒状メデイアとしては、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼、アルミナ、ジルコニア、シリカ等が望ましく用いられる。この方法によって粒子を作製するには、あらかじめ流動状態にした原材料をさらに粒状メデイアによって容器内に分散させた後、分散媒を冷却して分散媒から着色剤を含む樹脂を沈殿させる。粒状メデイアは冷却中および冷却後にも引き続き運動状態を保ちながら、剪断および/または、衝撃を発生させ粒子径を小さくする。
【0114】
泳動粒子34および35の含有量(セル中の全質量に対する含有量(質量%))は、求められる色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、セルの厚さ(すなわち、表示基板20と背面基板22との基板間の距離)により含有量を調整することが、表示媒体12としては有効である。即ち、上記色相を得るために、セルが厚くなるほど含有量は少なくなり、セルが薄くなるほど含有量は多くなる。一般的には、0.01質量%以上50質量%以下である。
【0115】
・着色浮遊粒子群
次に、着色浮遊粒子群について説明する。着色浮遊粒子群36は、帯電されていない粒子群であり、泳動粒子34および35とは異なる光学的反射特性を有する着色粒子から構成され、泳動粒子34および35とは異なる色を表示する反射部材として機能するものである。そして、表示基板20と背面基板22との基板間の移動を阻害することなく、移動させる空隙部材としての機能も有している。
本実施形態では、着色浮遊粒子群36は白色である場合を説明するが、この色に限定されることはない。
【0116】
着色浮遊粒子群36は、例えば、酸化チタンや酸化ケイ素、酸化亜鉛などの白色顔料を、ポリスチレンやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PMMA、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド縮合物などに分散した粒子が使用される。また、着色部材を構成する粒子として、白色以外の粒子を適用する場合、例えば、求められる色の顔料あるいは染料を内包した前記した樹脂粒子を使用してもよい。顔料や染料は、例えばRGBやYMC色であれば、印刷インキやカラートナーに使用されている一般的な顔料あるいは染料を使用してもよい。
【0117】
着色浮遊粒子群36を基板間へ封入するには、例えば、インクジェット法などにより行う。また、着色浮遊粒子群36を固定化する場合、例えば、着色浮遊粒子群36を封入した後、加熱(および必要があれば加圧)して、着色浮遊粒子群36の粒子群表層を溶かすことで、粒子間隙を維持させつつ行われる。
【0118】
・表示媒体
表示媒体12における上記セルの大きさとしては、表示媒体12の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な画像を表示可能な表示媒体12を作製することができ、通常、表示媒体12の表示基板20の板面方向の長さが10μm以上1mm以下である。
【0119】
上記表示基板20および背面基板22を、間隙部材24を介して互いに固定するには、ボルトとナットの組み合わせ、クランプ、クリップ、基板固定用の枠等の固定手段を使用する。また、接着剤、熱溶融、超音波接合等の固定手段も使用してもよい。
【0120】
このように構成される表示媒体12は、例えば、画像の保存および書換えが可能な掲示板、回覧版、電子黒板、広告、看板、点滅標識、電子ペーパー、電子新聞、電子書籍、および複写機・プリンタと共用するドキュメントシート等に使用する。
【0121】
上記に示したように、本実施形態に係る表示装置10は、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18とを含んで構成されている(図1参照)。
【0122】
・電圧印加部および制御部
電圧印加部16は、表面電極40および背面電極46に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、表面電極40および背面電極46の双方が、電圧印加部16に電気的に接続されている場合を説明するが、表面電極40および背面電極46の一方が、接地されており、他方が電圧印加部16に接続された構成であってもよい。
【0123】
電圧印加部16は、制御部18に信号授受可能に接続されている。
【0124】
制御部18は、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、装置全体を制御する制御プログラム等の各種プログラムが予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、を含むマイクロコンピュータとして構成されていることも可能である。
【0125】
電圧印加部16は、表面電極40および背面電極46に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部18の制御に応じた電圧を表面電極40および背面電極46間に印加する。
【0126】
次に、第1実施形態に係る表示装置10の作用を説明する。この作用は制御部18の動作に従って説明する。
【0127】
ここで、表示媒体12に封入されている泳動粒子34の色はシアン(C)であり且つ正極性(+)に帯電され、一方泳動粒子35の色はマゼンタ(M)であり且つ負極性(−)に帯電されている場合を説明する。また、分散媒50は透明であり、着色浮遊粒子群36が白色であるものとして説明する。
【0128】
まず、電圧を、定められた時間、表面電極40が正極となり背面電極46が負極となるように印加することを示す初期動作信号を、電圧印加部16へ出力する。基板間に、泳動粒子との離脱性がより低い(付着性がより高い)表面側処理層21から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が終了する閾値)以上の電圧が印加されると、正極である表面電極40側に負極性に帯電された泳動粒子35(マゼンタ)が移動し、負極である背面電極46側に正極性に帯電された泳動粒子34(シアン)が移動する(動作A/図1参照)。このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、泳動粒子35の色としてのマゼンタとして視認される。
【0129】
尚、この時間(T1)は、初期動作における電圧印加における電圧印加時間を示す情報として、予め制御部18内の図示を省略するROM等のメモリ等に記憶しておけばよい。そして、処理実行のときに、この時間を示す情報を読み取るようにすればよい。
【0130】
次に、表面電極40と背面電極46との電極間に、前記動作Aにおいて基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を負極とし背面電極46を正極とし、且つ基板間に、泳動粒子との離脱性がより低い(付着性がより高い)表面側処理層21から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が終了する閾値)以上の電圧が印加されると、負極である表面電極40側に正極性に帯電された泳動粒子34(シアン)が移動し、正極である背面電極46側に負極性に帯電された泳動粒子35(マゼンタ)が移動する(動作B/図2参照)。このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、泳動粒子34の色としてのシアンとして視認される。
【0131】
また、表面電極40と背面電極46との電極間に、前記動作Aにおいて基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を負極とし背面電極46を正極とし、且つ基板間に、泳動粒子との離脱性がより高い(付着性がより低い)背面側処理層23から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が終了する閾値)以上の電圧であって、泳動粒子との離脱性がより低い(付着性がより高い)表面側処理層21から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が開始する閾値)未満の電圧が印加されると、負極である表面電極40側に存在する負極性に帯電された泳動粒子35(マゼンタ)は移動せず、一方正極である背面電極46側に存在する正極性に帯電された泳動粒子34(シアン)は、負極である表面電極40側に移動する(図3参照)。即ち、泳動粒子34(シアン)と泳動粒子35(マゼンタ)とが負極である表面電極40側に存在する状態となる。このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、泳動粒子34と泳動粒子35との混色としての青色として視認される。
【0132】
また、表面電極40と背面電極46との電極間に、前記動作Bにおいて基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を正極とし背面電極46を負極とし、且つ基板間に、泳動粒子との離脱性がより高い(付着性がより低い)背面側処理層23から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が終了する閾値)以上の電圧であって、泳動粒子との離脱性がより低い(付着性がより高い)表面側処理層21から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が開始する閾値)未満の電圧が印加された場合も、負極である表面電極40側に存在する負極性に帯電された泳動粒子35(マゼンタ)は移動せず、一方正極である背面電極46側に存在する正極性に帯電された泳動粒子34(シアン)は、負極である表面電極40側に移動する(図3参照)。即ち、泳動粒子34(シアン)と泳動粒子35(マゼンタ)とが負極である表面電極40側に存在する状態となる。このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、泳動粒子34と泳動粒子35との混色としての青色として視認される。
【0133】
こうして、第1実施形態に係る表示装置10では、泳動粒子34および35が表示基板20または背面基板22に到達して、付着することで表示が行われる。
【0134】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る表示装置は、前記第1実施形態に係る表示装置において、表示側処理層(第1の処理層)21と背面側処理層(第2の処理層)23とにおける、前記泳動粒子34および35との離脱性が逆に設定されている(即ち、表示側処理層(第1の処理層)21は背面側処理層(第2の処理層)23よりも、前記泳動粒子34および35との離脱性が高く(付着性が低く)設定されている。)こと以外、前記第1実施形態に係る表示装置に記載の構成が採用されている。
【0135】
第2実施形態に係る表示装置の作用を説明する。
【0136】
図1に示す表示媒体12に封入されている泳動粒子34の色はシアン(C)であり且つ正極性(+)に帯電され、一方泳動粒子35の色はマゼンタ(M)であり且つ負極性(−)に帯電されている場合を説明する。また、分散媒50は透明であり、着色浮遊粒子群36が白色であるものとして説明する。
【0137】
まず、電圧を、定められた時間、表面電極40が正極となり背面電極46が負極となるように印加することを示す初期動作信号を、電圧印加部16へ出力する。基板間に、泳動粒子との離脱性がより低い(付着性がより高い)背面側処理層23から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が終了する閾値)以上の電圧が印加されると、正極である表面電極40側に負極性に帯電された泳動粒子35(マゼンタ)が移動し、負極である背面電極46側に正極性に帯電された泳動粒子34(シアン)が移動する(動作A’/図1参照)。このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、泳動粒子35の色としてのマゼンタとして視認される。
【0138】
尚、この時間(T1)は、初期動作における電圧印加における電圧印加時間を示す情報として、予め制御部18内の図示を省略するROM等のメモリ等に記憶しておけばよい。そして、処理実行のときに、この時間を示す情報を読み取るようにすればよい。
【0139】
次に、表面電極40と背面電極46との電極間に、前記動作A’において基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を負極とし背面電極46を正極とし、且つ基板間に、泳動粒子との離脱性がより低い(付着性がより高い)背面側処理層23から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が終了する閾値)以上の電圧が印加されると、負極である表面電極40側に正極性に帯電された泳動粒子34(シアン)が移動し、正極である背面電極46側に負極性に帯電された泳動粒子35(マゼンタ)が移動する(動作B’/図2参照)。このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、泳動粒子34の色としてのシアンとして視認される。
【0140】
また、表面電極40と背面電極46との電極間に、前記動作A’において基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を負極とし背面電極46を正極とし、且つ基板間に、泳動粒子との離脱性がより高い(付着性がより低い)表面側処理層21から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が終了する閾値)以上の電圧であって、泳動粒子との離脱性がより低い(付着性がより高い)背面側処理層23から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が開始する閾値)未満の電圧が印加されると、正極である背面電極46側に存在する正極性に帯電された泳動粒子34(シアン)は移動せず、一方負極である表面電極40側に存在する負極性に帯電された泳動粒子35(マゼンタ)は、正極である背面電極46側に移動する(図4参照)。即ち、泳動粒子34(シアン)と泳動粒子35(マゼンタ)とが正極である背面電極46側に存在する状態となる。このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、着色浮遊粒子群36としての白色として視認される。
【0141】
また、表面電極40と背面電極46との電極間に、前記動作B’において基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を正極とし背面電極46を負極とし、且つ基板間に、泳動粒子との離脱性がより高い(付着性がより低い)表面側処理層21から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が終了する閾値)以上の電圧であって、泳動粒子との離脱性がより低い(付着性がより高い)背面側処理層23から泳動粒子34および35が離脱する閾値(濃度変動が開始する閾値)未満の電圧が印加されると、負極である背面電極46側に存在する負極性に帯電された泳動粒子35(マゼンタ)は移動せず、一方正極である表面電極40側に存在する正極性に帯電された泳動粒子34(シアン)は、負極である背面電極46側に移動する(図4参照)。即ち、泳動粒子34(シアン)と泳動粒子35(マゼンタ)とが負極である背面電極46側に存在する状態となる。このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、着色浮遊粒子群36としての白色として視認される。
【0142】
こうして、第2実施形態に係る表示装置10では、泳動粒子34および35が表示基板20または背面基板22に到達して、付着することで表示が行われる。
【実施例】
【0143】
以下に本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0144】
<シリコーン鎖を持つ高分子化合物の合成>
−高分子化合物(1)の合成−
2−ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部とシリコーンマクロマー(チッソ社製、サイラプレーンFM0721、重量平均分子量:5000、シリコーン鎖の重量平均分子量:5000)10質量部とをイソプロピルアルコール100質量部に溶解し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製、V−65)を0.5質量部加えてよく攪拌し、55℃で18時間反応させた。その後、イソプロピルアルコールを除去し、減圧乾燥機によって乾燥させることにより、高分子化合物全体におけるシリコーングラフト鎖の濃度が33質量%である高分子化合物を得た。
【0145】
−高分子化合物(2)の合成−
2−ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部とシリコーンマクロマー(チッソ社製、サイラプレーンFM0721、重量平均分子量:5000、シリコーン鎖の重量平均分子量:5000)0.2質量部とをイソプロピルアルコール100質量部に溶解し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製、V−65)を0.5質量部加えてよく攪拌し、55℃で18時間反応させた。その後、イソプロピルアルコールを除去し、減圧乾燥機によって乾燥させることにより、高分子化合物全体におけるシリコーングラフト鎖の濃度が0.1質量%である高分子化合物を得た。
【0146】
−高分子化合物(3)の合成−
2−ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部とシリコーンマクロマー(チッソ社製、サイラプレーンFM0725、重量平均分子量:10000、シリコーン鎖の重量平均分子量:10000)2質量部とをイソプロピルアルコール100質量部に溶解し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製、V−65)を0.5質量部加えてよく攪拌し、55℃で18時間反応させた。その後、イソプロピルアルコールを除去し、減圧乾燥機によって乾燥させることにより、高分子化合物全体におけるシリコーングラフト鎖の濃度が9質量%である高分子化合物を得た。
【0147】
−高分子化合物(4)の合成−
2−ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部とシリコーンマクロマー(チッソ社製、サイラプレーンFM0711、重量平均分子量:1000、シリコーン鎖の重量平均分子量:1000)2質量部とをイソプロピルアルコール100質量部に溶解し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製、V−65)を0.5質量部加えてよく攪拌し、55℃で18時間反応させた。その後、イソプロピルアルコールを除去し、減圧乾燥機によって乾燥させることにより、高分子化合物全体におけるシリコーングラフト鎖の濃度が9質量%である高分子化合物を得た。
【0148】
<処理層の形成方法>
後述の実施例において、基板上に前記高分子化合物(1)乃至(4)を用いて処理層を形成する方法について説明する。
得られた高分子化合物をイソプロピルアルコールに溶解(濃度4質量%)し、スピンコーターにてITO基板上に塗布膜を形成し、120℃で60分間乾燥させることにより処理層を形成した。
【0149】
<着色浮遊粒子(1)の調製>
還流冷却管を取り付けた100ml三口フラスコに、2−ビニルナフタレン(新日鐵化学社製)を5質量部、シリコーンマクロマーFM−0721(チッソ社製)を5質量部、開始剤として過酸化ラウロイル(和光純薬社製)を0.3質量部、シリコーンオイルKF−96L−1CS(信越化学社製)を20質量部加え、窒素ガスによるバブリングを15分間行った後、窒素雰囲気下にて65℃、24時間の重合を行った。
得られた白色粒子をシリコーンオイルにて固形分濃度30質量%に調製し、着色浮遊粒子とした。このとき、着色浮遊粒子(1)の粒子径は450nmであった。
【0150】
<マゼンタ粒子(負帯電)(1)の調製>
シリコーン変性ポリマーKP−545(信越化学社製)3質量部をジメチルシリコーンオイル(信越化学社製KF−96−2CS)97質量部に溶解して溶液Aを調製した。
次に、スチレンアクリル系ポリマー(ジメチルエタノールアミン中和)10質量部、水分散顔料溶液(Ciba社製、ユニスパース・マゼンタ色、顔料濃度20質量%)5質量部、純水85質量部を混合して溶液Bを調製した。
得られた溶液Aと溶液Bとを混合し、超音波破砕機(エスエムテー社製、UH−600S)にて分散・乳化を行った。
【0151】
次に、この懸濁液を減圧(2KPa)、加熱(70℃)して水分を除去し、濃度を調整することにより、シリコーンオイル中にマゼンタ顔料を含んだ着色粒子が分散したシリコーンオイル分散液(粒子固形分5質量%)を得た。
作製した粒子分散液における粒子の体積平均粒子径を測定(ホリバLA−300:レーザー光散乱・回折式粒度測定装置)した結果、290nmであった。
本分散系中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚の電極基板間に該分散液を封入し、直流電圧を印加して泳動方向を評価した結果、負帯電であった。
【0152】
<シアン粒子(正帯電)(1)の調製>
シリコーン系モノマーであるサイラプレーンFM−0711:95質量部、メタクリル酸メチル:3質量部、グリシジルメタクリレート2質量部をシリコーンオイル50質量部と混合し、重合開始剤としてアゾビスバレロニトリルを0.5質量部添加して、重合を実施し、エポキシ基をもった反応性シリコーン系高分子B(反応性分散剤)を作製した。重量平均分子量は40万であった。そして、反応性シリコーン系高分子Bの3質量%シリコーンオイル溶液を準備した。尚、シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル(信越化学社製KF−96L−2CS)を使用した。
【0153】
次に、N−ビニルピロリドンとN,N−ジエチルアミノエチルアクリレートとの質量比で9/1の共重合体(重量平均分子量6万)を通常のラジカル溶液重合で合成して使用した。
次に、水分散顔料溶液(Ciba社製、ユニスパース・シアン色:顔料濃度26質量%)1質量部に、上記共重合体の10質量%水溶液3質量部を混合し、この混合溶液を上記反応性シリコーン系高分子Bの3質量%シリコーン溶液10質量部に混合し、これを超音波破砕機で10分間攪拌し、高分子および顔料を含む水溶液をシリコーンオイル中に分散・乳化した懸濁液を調製した。
【0154】
次に、この懸濁液を減圧(2KPa)、加熱(70℃)して水分を除去し、シリコーンオイル中に高分子および顔料を含んだ着色粒子が分散したシリコーンオイル分散液を得た。さらに、この分散液を100℃で3時間加熱して上記反応性シリコーン系高分子に反応させて結合させた。次に分散液中に粒子固形分中のN,N−ジエチルアミノエチルアクリレートのモル量の50%に相当する臭化ブチルを添加し80℃で3時間加熱し、アミノ基の4級化処理を行なった後、遠心分離装置を用いて粒子を沈降、シリコーンオイルでの洗浄と沈降を繰り返し、精製を行なった。このようにして、粒子固形分が5質量%の、シアン顔料を含んだ着色粒子が分散した分散液を作製した。
作製した粒子分散液の体積平均粒子径を測定(ホリバLA−300:レーザー光散乱・回折式粒度測定装置)した結果、680nmであった。
本分散系中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚の電極基板間に該分散液を封入し、直流電圧を印加して泳動方向を評価した結果、正帯電であった。
【0155】
〔実施例1〕
以下の方法により、表示面側基板の処理層における高分子化合物のシリコーン鎖の濃度が高い表示媒体を準備した。
【0156】
(背面基板の準備)
厚さ0.7mmのガラスからなる背面基板上に背面電極としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜した。このITP/ガラス基板のITO面上に、前述の処理層の形成方法に従い高分子化合物(2)による処理層を形成した。
【0157】
(表示基板の準備)
背面基板に記載の方法により準備したITO/ガラス基板のITO面上に、前述の処理層の形成方法に従い高分子化合物(1)による処理層を形成した。
【0158】
(表示媒体の作製)
前記表示基板を、100μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとして用いて、前記背面基板上に重ね合わせて、クリップにて固定した。その後、前記着色浮遊粒子(1)10質量部と前記マゼンタ粒子(1)5質量部と前記シアン粒子(1)5質量部とを混合した混合液を、上記表示基板と背面基板とスペーサーとで囲まれた領域に注入し、表示媒体(評価用セル)とした。
【0159】
(泳動粒子の離脱性の評価(泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定))
前述の方法により、背面基板の処理層と表示基板の処理層とにおける泳動粒子(前記マゼンタ粒子(1)および前記シアン粒子(1))が離脱する閾値電圧を測定した。その結果、泳動粒子には因らずに、それぞれ50V、15Vであった。
【0160】
(評価)
このようにして作製した表示媒体(評価用セル)を用いて、表示電極がプラスとなるように両電極に50Vの電圧を印加した。分散されたマゼンタ粒子(1)はマイナスに帯電していたため、マゼンタ粒子(1)はプラス側電極、即ち表示電極側への移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示電極がマイナスとなるように両電極に50Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)は、プラス側電極、即ち背面電極側へ移動し、シアン粒子(1)が表示電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
その状態で、次に、表示電極がプラスとなるように両電極に15Vの電圧を印加したところ、シアン粒子(1)が背面電極側へ移動し、表示電極側から観察すると白色が観察された。
【0161】
その後、評価用セルを分解して、背面基板および表示基板の各表面(処理層が形成されたセル構成面)を光学顕微鏡にて観察したところ、背面基板表面にはシアン粒子(1)およびマゼンタ粒子(1)の両方が観察されたが、表示基板表面にはシアン粒子(1)もマゼンタ粒子(1)も観察されなかった。即ち、背面基板および表示基板の処理層における泳動粒子の耐固着性が良好であることが確認された。
【0162】
〔実施例2〕
以下の方法により、表示面側基板の処理層における高分子化合物のシリコーン鎖の濃度が低い表示媒体を準備した。
【0163】
(背面基板の準備)
厚さ0.7mmのガラスからなる背面基板上に背面電極としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜した。このITP/ガラス基板のITO面上に、前述の処理層の形成方法に従い高分子化合物(1)による処理層を形成した。
【0164】
(表示基板の準備)
背面基板に記載の方法により準備したITO/ガラス基板のITO面上に、前述の処理層の形成方法に従い高分子化合物(2)による処理層を形成した。
【0165】
(表示媒体の作製)
前記表示基板を、100μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとして用いて、前記背面基板上に重ね合わせて、クリップにて固定した。その後、前記着色浮遊粒子(1)10質量部と前記マゼンタ粒子(1)5質量部と前記シアン粒子(1)5質量部とを混合した混合液を、上記表示基板と背面基板とスペーサーとで囲まれた領域に注入し、表示媒体(評価用セル)とした。
【0166】
(泳動粒子の離脱性の評価(泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定))
前述の方法により、背面基板の処理層と表示基板の処理層とにおける泳動粒子(前記マゼンタ粒子(1)および前記シアン粒子(1))が離脱する閾値電圧を測定した。その結果、泳動粒子には因らずに、それぞれ15V、50Vであった。
【0167】
(評価)
このようにして作製した表示媒体(評価用セル)を用いて、表示電極がプラスとなるように両電極に50Vの電圧を印加した。分散されたマゼンタ粒子(1)はマイナスに帯電していたため、マゼンタ粒子(1)はプラス側電極、即ち表示電極側への移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示電極がマイナスとなるように両電極に50Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)は、プラス側電極、即ち背面電極側へ移動し、シアン粒子(1)が表示電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
その状態で、次に、表示電極がプラスとなるように両電極に15Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)が表示電極側へ移動し、表示電極側から観察すると青色が観察された。
【0168】
その後、評価用セルを分解して、背面基板および表示基板の各表面(処理層が形成されたセル構成面)を光学顕微鏡にて観察したところ、表示基板表面にはシアン粒子(1)およびマゼンタ粒子(1)の両方が観察されたが、背面基板表面にはシアン粒子(1)もマゼンタ粒子(1)も観察されなかった。即ち、背面基板および表示基板の処理層における泳動粒子の耐固着性が良好であることが確認された。
【0169】
〔実施例3〕
以下の方法により、表示面側基板の処理層における高分子化合物のシリコーン鎖の重量平均分子量が大きい表示媒体を準備した。
【0170】
(背面基板の準備)
厚さ0.7mmのガラスからなる背面基板上に背面電極としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜した。このITP/ガラス基板のITO面上に、前述の処理層の形成方法に従い高分子化合物(4)による処理層を形成した。
【0171】
(表示基板の準備)
背面基板に記載の方法により準備したITO/ガラス基板のITO面上に、前述の処理層の形成方法に従い高分子化合物(3)による処理層を形成した。
【0172】
(表示媒体の作製)
前記表示基板を、100μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとして用いて、前記背面基板上に重ね合わせて、クリップにて固定した。その後、前記着色浮遊粒子(1)10質量部と前記マゼンタ粒子(1)5質量部と前記シアン粒子(1)5質量部とを混合した混合液を、上記表示基板と背面基板とスペーサーとで囲まれた領域に注入し、表示媒体(評価用セル)とした。
【0173】
(泳動粒子の離脱性の評価(泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定))
前述の方法により、背面基板の処理層と表示基板の処理層とにおける泳動粒子(前記マゼンタ粒子(1)および前記シアン粒子(1))が離脱する閾値電圧を測定した。その結果、泳動粒子には因らずに、それぞれ13V、45Vであった。
【0174】
(評価)
このようにして作製した表示媒体(評価用セル)を用いて、表示電極がプラスとなるように両電極に50Vの電圧を印加した。分散されたマゼンタ粒子(1)はマイナスに帯電していたため、マゼンタ粒子(1)はプラス側電極、即ち表示電極側への移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示電極がマイナスとなるように両電極に50Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)は、プラス側電極、即ち背面電極側へ移動し、シアン粒子(1)が表示電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
その状態で、次に、表示電極がプラスとなるように両電極に15Vの電圧を印加したところ、シアン粒子(1)が背面電極側へ移動し、表示電極側から観察すると白色が観察された。
【0175】
その後、評価用セルを分解して、背面基板および表示基板の各表面(処理層が形成されたセル構成面)を光学顕微鏡にて観察したところ、背面基板表面にはシアン粒子(1)およびマゼンタ粒子(1)の両方が観察されたが、表示基板表面にはシアン粒子(1)もマゼンタ粒子(1)も観察されなかった。即ち、背面基板および表示基板の処理層における泳動粒子の耐固着性が良好であることが確認された。
【0176】
〔実施例4〕
以下の方法により、表示面側基板の処理層における高分子化合物のシリコーン鎖の重量平均分子量が小さい表示媒体を準備した。
【0177】
(背面基板の準備)
厚さ0.7mmのガラスからなる背面基板上に背面電極としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜した。このITP/ガラス基板のITO面上に、前述の処理層の形成方法に従い高分子化合物(3)による処理層を形成した。
【0178】
(表示基板の準備)
背面基板に記載の方法により準備したITO/ガラス基板のITO面上に、前述の処理層の形成方法に従い高分子化合物(4)による処理層を形成した。
【0179】
(表示媒体の作製)
前記表示基板を、100μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとして用いて、前記背面基板上に重ね合わせて、クリップにて固定した。その後、前記着色浮遊粒子(1)10質量部と前記マゼンタ粒子(1)5質量部と前記シアン粒子(1)5質量部とを混合した混合液を、上記表示基板と背面基板とスペーサーとで囲まれた領域に注入し、表示媒体(評価用セル)とした。
【0180】
(泳動粒子の離脱性の評価(泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定))
前述の方法により、背面基板の処理層と表示基板の処理層とにおける泳動粒子(前記マゼンタ粒子(1)および前記シアン粒子(1))が離脱する閾値電圧を測定した。その結果、泳動粒子には因らずに、それぞれ45V、13Vであった。
【0181】
(評価)
このようにして作製した表示媒体(評価用セル)を用いて、表示電極がプラスとなるように両電極に50Vの電圧を印加した。分散されたマゼンタ粒子(1)はマイナスに帯電していたため、マゼンタ粒子(1)はプラス側電極、即ち表示電極側への移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示電極がマイナスとなるように両電極に50Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)は、プラス側電極、即ち背面電極側へ移動し、シアン粒子(1)が表示電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
その状態で、次に、表示電極がプラスとなるように両電極に15Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)が表示電極側へ移動し、表示電極側から観察すると青色が観察された。
【0182】
その後、評価用セルを分解して、背面基板および表示基板の各表面(処理層が形成されたセル構成面)を光学顕微鏡にて観察したところ、表示基板表面にはシアン粒子(1)およびマゼンタ粒子(1)の両方が観察されたが、背面基板表面にはシアン粒子(1)もマゼンタ粒子(1)も観察されなかった。即ち、背面基板および表示基板の処理層における泳動粒子の耐固着性が良好であることが確認された。
【0183】
〔実施例5〕
<着色浮遊粒子(2)の調製>
前述の<着色浮遊粒子(1)の調製>において、24時間の重合後に、遠心沈降法により溶媒をシリコーンオイルからアイソパーM(エクソンモービル化学社製)に置換し、固形分濃度を30質量%に調整して、着色浮遊粒子(2)とした。このとき、着色浮遊粒子(2)の粒子径は450nmであった。
【0184】
<マゼンタ粒子(負帯電)(2)の調製>
前述の<マゼンタ粒子(負帯電)(1)の調製>において、得られたマゼンタ粒子を遠心沈降法により溶媒をシリコーンオイルからアイソパーM(エクソンモービル化学社製)に置換し、固形分濃度を5質量%に調整して、マゼンタ粒子(2)を得た。このときのマゼンタ粒子(2)の体積平均粒子径は290nmであり、帯電極性は負帯電であった。
【0185】
<シアン粒子(正帯電)(2)の調製>
前述の<シアン粒子(正帯電)(1)>の調製において、得られたシアン粒子を遠心沈降法により溶媒をシリコーンオイルからアイソパーM(エクソンモービル化学社製)に置換し、固形分濃度を5質量%に調整して、シアン粒子(2)を得た。このときのシアン粒子(2)の体積平均粒子径は680nmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0186】
実施例1において用いられた着色浮遊粒子(1)、マゼンタ粒子(1)、シアン粒子(1)に代えて、上記の着色浮遊粒子(2)、マゼンタ粒子(2)、シアン粒子(2)を用いた以外は、全て実施例1に記載の方法により表示媒体(評価用セル)を作製した。
【0187】
(泳動粒子の離脱性の評価(泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定))
前述の方法により、背面基板の処理層と表示基板の処理層とにおける泳動粒子(前記マゼンタ粒子(2)および前記シアン粒子(2))が離脱する閾値電圧を測定した。その結果、泳動粒子には因らずに、それぞれ50V、15Vであった。
【0188】
(評価)
このようにして作製した表示媒体(評価用セル)を用いて、表示電極がプラスとなるように両電極に50Vの電圧を印加した。分散されたマゼンタ粒子(2)はマイナスに帯電していたため、マゼンタ粒子(2)はプラス側電極、即ち表示電極側への移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示電極がマイナスとなるように両電極に50Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(2)は、プラス側電極、即ち背面電極側へ移動し、シアン粒子(2)が表示電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
その状態で、次に、表示電極がプラスとなるように両電極に15Vの電圧を印加したところ、シアン粒子(2)が背面電極側へ移動し、表示電極側から観察すると白色が観察された。
【0189】
その後、評価用セルを分解して、背面基板および表示基板の各表面(処理層が形成されたセル構成面)を光学顕微鏡にて観察したところ、背面基板表面にはシアン粒子(2)およびマゼンタ粒子(2)の両方が観察され、表示基板表面には少量のシアン粒子(2)とマゼンタ粒子(2)が観察されたが、実用上問題ないレベルであった。即ち、背面基板および表示基板の処理層における泳動粒子の耐固着性が良好であることが確認された。
【0190】
〔実施例6〕
<マゼンタ粒子(負帯電)(3)の調製>
−分散液BAの調製−
下記成分を混合し、10mmΦのジルコニアボールにてボールミル粉砕を20時間実施して分散液BAを調製した。
<組成>
・メタクリル酸シクロヘキシル:53質量部
・マゼンタ顔料(カーミン6B:大日精化社製):3質量部
・帯電制御剤(COPYCHARGENY VP 2351:クラリアントジャパン製)
:2質量部
【0191】
−炭酸カルシウム分散液BBの調製−
下記成分を混合し、上記分散液BAの調製に記載のごとくボールミルにて粉砕して炭酸カルシウム分散液BBを調製した。
<組成>
・炭酸カルシウム:40質量部
・水:60質量部
【0192】
−混合液BCの調製−
下記成分を混合し、超音波機で脱気を10分間行い、ついで乳化機で攪拌して混合液BCを調製した。
<組成>
・2質量%セロゲン水溶液:4.3g
・前記炭酸カルシウム分散液BB:8.5g
・20質量%食塩水:50g
【0193】
前記分散液BA35g、ジビニルベンゼン1g、および重合開始剤AIBN:0.35gをはかりとり、充分混合し、超音波機で脱気を10分行った。これを前記混合液BCに加え、乳化機で乳化を実施した。次にこの乳化液をビンにいれ、シリコーン詮をし、注射針を使用し、減圧脱気を充分行い、窒素ガスで封入した。次に60℃で10時間反応させ粒子を調製した。冷却後、得られた粒子をイオン交換水中に分散させ、塩酸水で炭酸カルシウムを分解させ、ろ過を行った。その後充分な蒸留水で洗浄し、これを乾燥させた。得られた粒子2質量部をノニオン系界面活性剤ポリオキシエチレンアルキルエーテル2質量部と共に、シリコーンオイル98質量部に投入し、攪拌分散してマゼンタ粒子(3)の分散液を調製した。
マゼンタ粒子(3)の粒子の体積平均粒子径は800nmであった。このようにして作製したマゼンタ粒子(3)は、負帯電であった。
【0194】
<シアン粒子(正帯電)(3)の調製>
−分散液CAの調製−
下記成分を混合し、10mmΦのジルコニアボールにてボールミル粉砕を20時間実施して分散液CAを調製した。
<組成>
・スチレンモノマ:53質量部
・シアン顔料(シアニンブルー4933M:大日精化社製):3質量部
・帯電制御剤(COPYCHARGEPSY:クラリアントジャパン製):2質量部
【0195】
−炭酸カルシウム分散液CBの調製−
下記成分を混合し、上記分散液CAの調製に記載のごとくボールミルにて粉砕して炭酸カルシウム分散液CBを調製した。
<組成>
・炭酸カルシウム:40質量部
・水:60質量部
【0196】
−混合液CCの調製−
下記成分を混合し、超音波機で脱気を10分間行い、ついで乳化機で攪拌して混合液CCを調製した。
<組成>
・2質量%セロゲン水溶液:4.3g
・炭酸カルシウム分散液B:8.5g
・20質量%食塩水:50g
【0197】
前記分散液CA35g、ジビニルベンゼン1g、および重合開始剤AIBN:0.35gをはかりとり、充分混合し、超音波機で脱気を10分行った。これを前記混合液CCに加え、乳化機で乳化を実施した。次にこの乳化液をビンにいれ、シリコーン詮をし、注射針を使用し、減圧脱気を充分行い、窒素ガスで封入した。次に60℃で10時間反応させ粒子を調製した。冷却後、得られた粒子をイオン交換水中に分散させ、塩酸水で炭酸カルシウムを分解させ、ろ過を行った。その後充分な蒸留水で洗浄し、これを乾燥させた。得られた粒子2質量部をノニオン系界面活性剤ポリオキシエチレンアルキルエーテル2質量部と共に、シリコーンオイル98質量部に投入し、攪拌分散してシアン粒子(3)の分散液を調製した。
シアン粒子(3)の粒子の体積平均粒子径は800nmであった。このようにして作製したシアン粒子(3)は、正帯電であった。
【0198】
実施例1において用いられたマゼンタ粒子(1)、シアン粒子(1)に代えて、上記のマゼンタ粒子(3)、シアン粒子(3)を用いた以外は、全て実施例1に記載の方法により表示媒体(評価用セル)を作製した。
【0199】
(泳動粒子の離脱性の評価(泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定))
前述の方法により、背面基板の処理層と表示基板の処理層とにおける泳動粒子(前記マゼンタ粒子(3)および前記シアン粒子(3))が離脱する閾値電圧を測定した。その結果、泳動粒子には因らずに、それぞれ45V、12Vであった。
【0200】
(評価)
このようにして作製した表示媒体(評価用セル)を用いて、表示電極がプラスとなるように両電極に50Vの電圧を印加した。分散されたマゼンタ粒子(3)はマイナスに帯電していたため、マゼンタ粒子(3)はプラス側電極、即ち表示電極側への移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示電極がマイナスとなるように両電極に50Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(3)は、プラス側電極、即ち背面電極側へ移動し、シアン粒子(3)が表示電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
その状態で、次に、表示電極がプラスとなるように両電極に15Vの電圧を印加したところ、シアン粒子(3)が背面電極側へ移動し、表示電極側から観察すると白色が観察された。
【0201】
その後、評価用セルを分解して、背面基板および表示基板の各表面(処理層が形成されたセル構成面)を光学顕微鏡にて観察したところ、背面基板表面にはシアン粒子(3)およびマゼンタ粒子(3)の両方が観察され、表示基板表面にはシアン粒子(3)もマゼンタ粒子(3)も観察されなかった。即ち、背面基板および表示基板の処理層における泳動粒子の耐固着性が良好であることが確認された。
【0202】
〔比較例1〕
実施例1において、背面基板および表示基板に処理層を形成しなかったこと以外、実施例1に記載の方法により表示媒体(評価用セル)を作製した。
【0203】
(泳動粒子の離脱性の評価(泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定))
前述の方法により、背面基板の処理層と表示基板の処理層とにおける泳動粒子(前記マゼンタ粒子(1)および前記シアン粒子(1))が離脱する閾値電圧を測定した。その結果、泳動粒子には因らずに、両者とも50Vであった。
【0204】
(評価)
このようにして作製した表示媒体(評価用セル)を用いて、表示電極がプラスとなるように両電極に50Vの電圧を印加した。分散されたマゼンタ粒子(1)はマイナスに帯電していたため、マゼンタ粒子(1)はプラス側電極、即ち表示電極側への移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示電極がマイナスとなるように両電極に50Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)は、プラス側電極、即ち背面電極側へ移動し、シアン粒子(1)が表示電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
その状態で、次に、表示電極がプラスとなるように両電極に15Vの電圧を印加したところ、粒子の移動は観察されず、表示電極側から観察するとシアン色のままであった。
【0205】
その後、評価用セルを分解して、背面基板および表示基板の各表面(処理層が形成されたセル構成面)を光学顕微鏡にて観察したところ、背面基板表面には多くのシアン粒子(1)に少量のマゼンタ粒子(1)が混合した状態が観察され、一方、表示基板表面には多くのマゼンタ粒子(1)に少量のシアン粒子(1)が混合した状態が観察された。即ち、背面基板および表示基板の表面において泳動粒子の固着が発生していることが確認された。
【0206】
〔比較例2〕
実施例1において、背面基板および表示基板の処理層を、それぞれ以下の方法により形成されるポリカーボネート層(200nm)に変更したこと以外、実施例1に記載の方法により表示媒体(評価用セル)を作製した。
【0207】
(ポリカーボネート層の形成方法)
分子量4万のポリカーボネート樹脂をトルエンに溶解(濃度4質量%)し、スピンコーターにてITO基板上に塗布膜を形成し、120℃で60分間乾燥させることにより処理層を形成した。
【0208】
(泳動粒子の離脱性の評価(泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定))
前述の方法により、背面基板の処理層と表示基板の処理層とにおける泳動粒子(前記マゼンタ粒子(1)および前記シアン粒子(1))が離脱する閾値電圧を測定した。その結果、泳動粒子には因らずに、両者とも50Vであった。
【0209】
(評価)
このようにして作製した表示媒体(評価用セル)を用いて、表示電極がプラスとなるように両電極に50Vの電圧を印加した。分散されたマゼンタ粒子(1)はマイナスに帯電していたため、マゼンタ粒子(1)はプラス側電極、即ち表示電極側への移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示電極がマイナスとなるように両電極に50Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)は、プラス側電極、即ち背面電極側へ移動し、シアン粒子(1)が表示電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
その状態で、次に、表示電極がプラスとなるように両電極に15Vの電圧を印加したところ、粒子の移動は観察されず、表示電極側から観察するとシアン色のままであった。
【0210】
その後、評価用セルを分解して、背面基板および表示基板の各表面(処理層が形成されたセル構成面)を光学顕微鏡にて観察したところ、背面基板表面には多くのシアン粒子(1)に少量のマゼンタ粒子(1)が混合した状態が観察され、一方、表示基板表面には多くのマゼンタ粒子(1)に少量のシアン粒子(1)が混合した状態が観察された。即ち、背面基板および表示基板の表面(ポリカーボネート層)において泳動粒子の固着が発生していることが確認された。
【0211】
〔比較例3〕
実施例1において、背面基板の処理層を高分子化合物(1)による処理層に変更した、即ち背面基板と表示基板との何れにも高分子化合物(1)による処理層を形成したこと以外、実施例1に記載の方法により表示媒体(評価用セル)を作製した。
【0212】
(泳動粒子の離脱性の評価(泳動粒子が離脱する閾値電圧の測定))
前述の方法により、背面基板の処理層と表示基板の処理層とにおける泳動粒子(前記マゼンタ粒子および前記シアン粒子)が離脱する閾値電圧を測定した。その結果、泳動粒子には因らずに、両者とも15Vであった。
【0213】
(評価)
このようにして作製した表示媒体(評価用セル)を用いて、表示電極がプラスとなるように両電極に50Vの電圧を印加した。分散されたマゼンタ粒子(1)はマイナスに帯電していたため、マゼンタ粒子(1)はプラス側電極、即ち表示電極側への移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示電極がマイナスとなるように両電極に50Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)は、プラス側電極、即ち背面電極側へ移動し、シアン粒子(1)が表示電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
その状態で、次に、表示電極がプラスとなるように両電極に15Vの電圧を印加したところ、マゼンタ粒子(1)が表示電極側へ移動し、シアン粒子(1)が背面電極側へ移動し、表示基板側から観察すると、マゼンタ色が観察された。
【0214】
その後、評価用セルを分解して、背面基板および表示基板の各表面(処理層が形成されたセル構成面)を光学顕微鏡にて観察したところ、背面基板表面にはシアン粒子(1)が観察され、表示基板表面にはマゼンタ粒子(1)が観察された。即ち、背面基板および表示基板の処理層における泳動粒子の耐固着性が良好であることが確認された。
【0215】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、粒子の固着が抑制されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】第1および第2実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
【図2】第1および第2実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【図3】第1実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【図4】第2実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0217】
10 表示装置
12 表示媒体
16 電圧印加部
18 制御部
20 表示基板
21 表示側処理層
22 背面基板
23 背面側処理層
24 間隙部材
34、35 泳動粒子
36 着色浮遊粒子群
38 支持基板
40 表面電極
44 支持基板
46 背面電極
50 分散媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する第1の基板と、
前記第1の基板に対向して配置される第2の基板と、
前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方に保持される電極と、
前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に封入された分散媒と、
前記分散媒中に分散され、前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に形成された電界に応じて前記分散媒中を移動する、色および帯電する極性が異なる複数種の泳動粒子を含む粒子群と、
前記第1の基板の前記第2の基板に対向する面に設けられた第1の処理層と、
前記第2の基板の前記第1の基板に対向する面に設けられ、前記泳動粒子との離脱性が前記第1の処理層とは異なる第2の処理層と、
を有する表示媒体。
【請求項2】
前記第1の処理層が、シリコーン鎖を持つ第1の高分子化合物を含み、
前記第2の処理層が、前記第1の高分子化合物におけるシリコーン鎖よりも重量平均分子量の小さいシリコーン鎖を持つ第2の高分子化合物を含む請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記第1の処理層が、シリコーン鎖を持つ第1の高分子化合物を含み、
前記第2の処理層が、前記第1の高分子化合物におけるシリコーン鎖よりも重量平均分子量の大きいシリコーン鎖を持つ第2の高分子化合物を含む請求項1に記載の表示媒体。
【請求項4】
前記第1の処理層が、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を含み、
前記第2の処理層が、前記第1の処理層よりもシリコーン鎖の濃度が高くなるようシリコーン鎖を持つ高分子化合物を含む請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の表示媒体。
【請求項5】
前記第1の処理層が、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を含み、
前記第2の処理層が、前記第1の処理層よりもシリコーン鎖の濃度が低くなるようシリコーン鎖を持つ高分子化合物を含む請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の表示媒体。
【請求項6】
前記分散媒がシリコーンオイルである請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の表示媒体。
【請求項7】
透光性を有する第1の基板と、
前記第1の基板に対向して配置される第2の基板と、
前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方に保持される電極と、
前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に封入された分散媒と、
前記分散媒中に分散され、前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に形成された電界に応じて前記分散媒中を移動する、色および帯電する極性が異なる複数種の泳動粒子を含む粒子群と、
前記第1の基板の前記第2の基板に対向する面に設けられた第1の処理層と、
前記第2の基板の前記第1の基板に対向する面に設けられ、前記泳動粒子との離脱性が前記第1の処理層とは異なる第2の処理層と、
を有する表示媒体、
並びに、前記第1の基板および前記第2の基板に挟まれる領域に電圧を印加する電圧印加手段を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−224389(P2010−224389A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73780(P2009−73780)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】