説明

表示機能付き非接触式ICカード

【課題】非接触データ通信を行う際の磁場を遮蔽することがなく、良好に通信を行うことが可能な表示機能付き非接触式ICカードを提供する。
【解決手段】本発明は、金属基板110と、前記金属基板110上に設けられた絶縁基板120と、前記絶縁基板120上に設けられたアンテナコイル部130と、前記絶縁基板120上に設けられたディスプレイ部140と、を有する表示機能付き非接触式ICカード100において、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部111と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部112とを除き、前記金属基板110をエッチング処理したことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で表示変更を行うことが可能なディスプレイ部が設けられた表示機能付き非接触式ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Suica(登録商標)などのカード内のデータの読み書きをRF−ID技術により非接触式で行う非接触式ICカードが広く普及している。現在、このような非接触式ICカードにおける表示部には、熱を利用した書き込み方式が採用されているが、このような方式では、非接触で表示を変更することが不可能である、という問題があった。そこで、非接触式ICカードの表示部に、非接触で表示変更可能なディスプレイ部を設ける技術が提案されている。
【0003】
このようなものの一つとして、例えば、特許文献1(特開2005−165814号公報)には、無線でデータの送信および/または受信を行うよう構成された、非接触でデータのやりとりを行うことができるRF−ID機器において、データに関する情報を表示するための、表示メモリー性を有するディスプレイを表示部として備えることを特徴とするRF−ID機器が開示されている。
【特許文献1】特開2005−165814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、非接触データ通信を可能とするアンテナコイル部と共に、ディスプレイ表示部を有する表示機能付き非接触式ICカードを製造する際、基板材料としてステンレスを用いることを提案している。
【0005】
表示機能付き非接触式ICカードの製造工程においては、半導体材料にディスプレイ表示部を作り込む際に高温の処理プロセスが実施されるが、基板材料としてプラスチックを用いると、耐熱性の観点から、当該プロセスの実施が困難となる。そこで、発明者らの提案としては、上述のように基板材料として耐熱性があるステンレスなどの金属基板を用いて表示機能付き非接触式ICカードを製造することで、このような困難を解消するものである。ステンレスなどの耐熱性がある金属基板を用いることにより、ガラス基板と同レベルの高温プロセスを通すことが可能となる。
【0006】
しかしながら、ステンレスなどの金属基板を表示機能付き非接触式ICカード用の基板材料として用いる場合、非接触データ通信を行う際の磁場を遮蔽してしまい、通信障害を引き起こすという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためのものであり、請求項1に係る発明は、金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプ
レイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部と、前記金属基板平面に対して垂直な方向に投影を行ったとき、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部の投影を包含する投影を形成するバリア補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部と、前記絶縁基板の周縁における枠状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部と、前記金属基板平面に対して垂直な方向に投影を行ったとき、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部の投影を包含する投影を形成するバリア補強部と、前記絶縁基板の周縁における枠状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、前記絶縁基板の周縁における枠状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の表示機能付き非接触式ICカードにおいて、前記ディスプレイ部が有機EL表示装置であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の表示機能付き非接触式ICカードにおいて、前記ディスプレイ部は半導体層を有しており、前記半導体層にはIn、Ga、Znのうち少なくとも1つの金属を含む酸化物半導体が用いられることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の表示機能付き非接触式ICカードにおいて、前記ディスプレイ部が電子ペーパーであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に係る発明は、金属基板上に絶縁基板を設ける工程と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部を設ける工程と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部を設ける工程と、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理する工程と、を有することを特徴とする表示機能付き非接触式ICカードの製造方法である。
【0016】
また、請求項10に係る発明は、請求項9に記載の表示機能付き非接触式ICカードの製造方法において、前記ディスプレイ部が有機EL表示装置であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項11に係る発明は、請求項9又は請求項10に記載の表示機能付き非接触式ICカードの製造方法において、前記ディスプレイ部は半導体層を有しており、前記半導体層にはIn、Ga、Znのうち少なくとも1つの金属を含む酸化物半導体が用いられることを特徴とする。
【0018】
また、請求項12に係る発明は、請求項9に記載の表示機能付き非接触式ICカードの製造方法において、前記ディスプレイ部が電子ペーパーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の表示機能付き非接触式ICカードによれば、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理した構成となっているので、非接触データ通信を行う際の磁場を遮蔽することがなく、良好に通信を行うことが可能となると共に、補強部によって剛性を保つことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカードのエッチング処理前の内部構造の概略を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカードのエッチング処理後の内部構造の概略を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカードのエッチング処理後の内部構造の概略を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。
【図15】本発明の表示機能付き非接触式ICカードにおけるディスプレイ部140の一例を示す概略断面図である。
【図16】本発明の表示機能付き非接触式ICカードにおけるディスプレイ部140の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1本発明の第1実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理前の内部構造の概略を模式的に示す図であり、図2は本発明の第1実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の内部構造の概略を模式的に示す図である。本実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100は、非接触型のICカード等と称される近距離無線通信機能を備えたRFID(Radio Frequency Identificati on)を内蔵した電子機器である。
【0022】
図1(A)はエッチング処理前の表示機能付き非接触式ICカード100を一方の主面側から内部構造を見た図であり、図1(B)は図1(A)及び図1(C)におけるX−X’断面を模式的に示す図であり、図1(C)は表示機能付き非接触式ICカード100を他方の主面側から内部構造を見た図である。
【0023】
同様に、図2(A)はエッチング処理後の表示機能付き非接触式ICカード100を一方の主面側から内部構造を見た図であり、図2(B)は図2(A)及び図2(C)におけるX−X’断面を模式的に示す図であり、図2(C)は表示機能付き非接触式ICカード100を他方の主面側から内部構造を見た図である。
【0024】
まず、図2を参照してエッチング処理前の表示機能付き非接触式ICカード100について説明する。なお、本発明においては、アンテナコイル部130、ディスプレイ部140や電子回路部150などの平面上の配置関係が重要であるところ、アンテナコイル部130、ディスプレイ部140や電子回路部150の厳密な積層構造については図示省略している。また、アンテナコイル部130、ディスプレイ部140、電子回路部150それぞれの配線関係についても詳細は図示省略している。また、ンテナコイル部130、ディスプレイ部140、電子回路部150などを保護するための保護膜などについても図示省略している。
【0025】
本実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100においては、基板材料としてはステンレス製の金属基板110がベースとして用いられており、この金属基板110の上にポリイミドなどの絶縁基板120が設けられる。このような絶縁基板120を設ける工程としては、スピンコートや塗布など適当な方法を採用することができる。
【0026】
例えば、絶縁基板120の周縁部に近いところには、アンテナコイル部130の導体が図示するように配される。このようなアンテナコイル部130は、不図示のリーダーライタからの電力を得て、データ通信を行うために供される。
【0027】
また、絶縁基板120の中心部には、ディスプレイ部140が配されている。このディスプレイ部140は酸化物半導体材料で作製されているが、このような酸化物半導体材料にディスプレイ部140などの表示部を作り込むプロセスでは、前述のように比較的高い温度のプロセス処理が用いられる。
【0028】
150はICチップなどの電子回路部であり、当該電子回路部150は先のアンテナコイル部130から得た電力により起動され、リーダーライタからのデータを処理すると共に、ディスプレイ部140を駆動して表示動作を行わせたり、さらに処理データをリーダーライタ側に伝えるべくアンテナコイル部130を動作させたりすることができるように構成されている。
【0029】
図1に示すように、絶縁基板120上にアンテナコイル部130及びディスプレイ部140が作り込まれ、電子回路部150が取り付けられ、不図示の配線がなされた後、第1実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100においては、図2に示すように、
ステンレス製の金属基板110をエッチング処理して一部を除去する工程を実施する。
【0030】
このようなエッチング処理によって残す金属基板110を本発明では補強部と称する。図2において、表示機能付き非接触式ICカード100の長辺の方向を第1の方向と定義し、短辺の方向を第2の方向として定義する。第1実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100においては、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部111と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部112とを除き、金属基板110をエッチング処理した構成としている。
【0031】
このような第1実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100によれば、第1短冊状補強部111と第2短冊状補強部112とを除き、金属基板110が除去されて、不図示のリーダーライタとの間で非接触データ通信を行う際の磁場を遮蔽するものがなくなり、良好に通信を行うことが可能となる。また、第1実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100によれば、エッチング処理されることなく残存している第1短冊状補強部111と第2短冊状補強部112とがカードの剛性を維持するように機能するので、表示機能付き非接触式ICカード100の耐久性が向上する。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は本発明の第2実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の内部構造の概略を模式的に示す図である。他の実施形態においてもエッチング処理前の様子などは、先の実施形態と同様のものであるので図示省略する。
【0033】
本実施形態が先の実施形態と異なる点は、第1実施形態では、第1短冊状補強部111と第2短冊状補強部112を残すようにエッチング処理がなされていたが、本実施形態においては、金属基板110平面に対して垂直な方向に投影を行ったとき、絶縁基板120上に設けられたディスプレイ部140の投影を包含する投影を形成するバリア補強部115を残すようにエッチング処理がなされることである。本実施形態では、バリア補強部115は、図3に示すように、ディスプレイ部140、電子回路部150の投影を包含するような投影を形成するものである。このように本実施形態においては、少なくともディスプレイ部140の投影を包含するような投影を形成するバリア補強部115が、エッチング処理によって残留するように構成されている。
【0034】
なお、本明細書及び特許請求の範囲では、上記のような「投影」という概念を用いて、バリア補強部115やディスプレイ部140などの平面構成部同士の関連性について記述を行うものとする。より詳しくは、本明細書及び特許請求の範囲においては、金属基板110などの平面構成部に対して垂直な方向に投影を行ったとき、(すなわち、図1(A)や図1(C)などにおいて紙面に対する垂直方向の投影を行ったとき)に仮想的な水平面上に形成される、バリア補強部115やディスプレイ部140などの平面構成部の投影同士を比較することによって、それぞれの平面構成部の大小関係や、鉛直方向から透過的にみたときにおけるそれぞれの平面構成部の包含関係を表現する。
【0035】
ディスプレイ部140は酸化物半導体材料で作製されているが、酸化物半導体は空気中からカード内に進入してくる水分によって劣化するという問題がある。これに対応する形で、本実施形態は、上記のように金属基板110平面に対して垂直な方向に投影を行ったとき、絶縁基板120上に設けられたディスプレイ部140の投影を包含する投影を形成するバリア補強部115が残されるようにエッチング処理されている。
【0036】
したがって、本実施形態によれば、先の実施形態で享受される効果に加え、エッチング処理によって残されたバリア補強部115により、水分のカード内進入を抑止することが可能となるので、ディスプレイ部140の劣化を抑制することが可能となるのである。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図4は本発明の第3実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。図4は、図2(C)や図3(C)に対応する面を示すものである。
【0038】
本実施形態が第1の実施形態と相違する点は、第1実施形態では、第1短冊状補強部111と第2短冊状補強部112を残すようにエッチング処理がなされていたが、本第3実施形態においては、縁基板120の周縁における枠状補強部116を残すようにエッチング処理がなされることである。枠状補強部116は図4に示すように、カードの周縁部に帯状の枠で形成された残留金属薄膜110である。
【0039】
このような枠状補強部116が設けられる実施形態によれば、不図示のリーダーライタとの間で非接触データ通信を行う際の磁場を遮蔽するものがなくなり、良好に通信を行うことが可能となる。また、第3実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100によれば、エッチング処理されることなく残存している枠状補強部116がカードの剛性を維持するように機能するので、表示機能付き非接触式ICカード100の耐久性が向上する。
【0040】
なお、第3実施形態のように枠状補強部116を残存させるようにする場合、第1実施形態に示すような短冊状補強部が残存されている状況に加えて、これを行う場合と、第2実施形態に示すように短冊状補強部とバリア補強部とが残存されている状況に加えて、これを行う場合の2通りが本発明に含まれるものである。図5は後者に係る実施形態を示すものである。
【0041】
以上のような各実施形態においても、これまで説明したような効果を享受することが可能となる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図6は本発明の第4実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。図6は、図2(C)や図3(C)、図4、図5に対応する面を示すものである。
【0043】
第1実施形態においては、長辺方向(第1方向)に延びる第1短冊状補強部111と、短辺方向(第2方向)に延びる第2短冊状補強部112の2つの短冊状補強部が残存するように金属基板110がエッチング処理されていた。前記第1方向と45°をなす方向を第3方向と定義し、前記第2方向と45°をなす方向を第4方向と定義すると、第4実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100においては、第3の方向に向かって延びる複数の第3短冊状補強部113と、前記第3の方向と異なる第4の方向に向かって延びる複数の第4短冊状補強部114とを除き、金属基板110をエッチング処理した構成としている。
【0044】
このような第4実施形態によっても、先の実施形態と同様の作用効果を享受することが可能である。
【0045】
なお、上記のような第4実施形態において、金属基板110平面に対して垂直な方向に投影を行ったとき、絶縁基板120上に設けられたディスプレイ部140の投影を包含する投影を形成するバリア補強部を残すようにエッチング処理(図7参照)を行うことも可能であるし、さらに、絶縁基板120の周縁における枠状補強部を残すようにエッチング処理(図8参照)を行うことも可能であるし、さらに、バリア補強部と枠状補強部の双方を残すようにエッチング処理(図9参照)を行うことも可能である。
【0046】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図10は本発明の第5実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。図10は、図2(C)や図3(C)、図4、図5、図6に対応する面を示すものである。
【0047】
第1実施形態においては、長辺方向(第1方向)に延びる第1短冊状補強部111と、短辺方向(第2方向)に延びる第2短冊状補強部112の2つの短冊状補強部が残存するように金属基板110がエッチング処理されていたし、また、第4実施形態においては、第3方向に延びる第3短冊状補強部113と、第4方向に延びる第4短冊状補強部114の2つの短冊状補強部が残存するように金属基板110がエッチング処理されていた。
【0048】
本第5実施形態においては、第1短冊状補強部111、第2短冊状補強部112、第3短冊状補強部113、第4短冊状補強部114を除き、金属基板110をエッチング処理した構成としている。
【0049】
このような第5実施形態によっても、先の実施形態と同様の作用効果を享受することが可能である。
【0050】
なお、上記のような第5実施形態において、金属基板110平面に対して垂直な方向に投影を行ったとき、絶縁基板120上に設けられたディスプレイ部140の投影を包含する投影を形成するバリア補強部を残すようにエッチング処理(図11参照)を行うことも可能であるし、さらに、絶縁基板120の周縁における枠状補強部を残すようにエッチング処理(図12参照)を行うことも可能であるし、さらに、バリア補強部と枠状補強部の双方を残すようにエッチング処理(図13参照)を行うことも可能である。
【0051】
以上、本発明の表示機能付き非接触式ICカードによれば、少なくとも、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理した構成となっているので、非接触データ通信を行う際の磁場を遮蔽することがなく、良好に通信を行うことが可能となると共に、補強部によって剛性を保つことも可能となる。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図14は本発明の第6実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100のエッチング処理後の一面の様子を示す図である。図14は、図2(C)や図3(C)に対応する面を示すものである。
【0053】
本実施形態がこれまで説明した実施形態と相違する点は、本第6実施形態においては、縁基板120の周縁における枠状補強部116のみを残すようにエッチング処理がなされることである。枠状補強部116は図14に示すように、カードの周縁部に帯状の枠で形成された残留金属薄膜110である。
【0054】
このような枠状補強部116が設けられる実施形態によれば、不図示のリーダーライタとの間で非接触データ通信を行う際の磁場を遮蔽するものがなくなり、良好に通信を行うことが可能となる。また、第6実施形態に係る表示機能付き非接触式ICカード100によれば、エッチング処理されることなく残存している枠状補強部116がカードの剛性を維持するように機能するので、表示機能付き非接触式ICカード100の耐久性が向上する。
【0055】
最後に、絶縁基板120上に設けられるディスプレイ部140の積層構造についてより詳細に説明する。
【0056】
図15は本発明の表示機能付き非接触式ICカードにおけるディスプレイ部140の一例を示す概略断面図である。図15に例示するディスプレイ部140は有機EL表示装置であり、金属基板110と絶縁基板120との積層体上に形成される。絶縁基板120の直上には密着層204が設けられており、ディスプレイ部140はこの密着層4上に形成された駆動用TFT216Aおよびスイッチング用TFT216Bと、駆動用TFT216Aおよびスイッチング用TFT216Bを覆うように形成された保護膜215と、保護膜215上に形成され、スルーホールを介して駆動用TFT216Aのドレイン電極212Dと電気的に接続された背面電極層(画素電極)231と、背面電極層231上に形成され、有機発光層を含むEL層232と、EL層232上に形成された透明電極層233と、を有している。
【0057】
駆動用TFT216Aおよびスイッチング用TFT216Bはいずれもボトムゲート・トップコンタクト構造を有し、密着層204上に形成されたゲート電極213Gと、ゲート電極213G上に形成されたゲート絶縁膜214と、ゲート絶縁膜214上に形成された半導体層211ならびにソース電極212Sおよびドレイン電極212Dとを有している。
【0058】
なお、ディスプレイ部140を構成する半導体層としては、フレキシブルデバイス用基板上に形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン、酸化物半導体、有機半導体が用いられる。
【0059】
シリコンとしては、ポリシリコン、アモルファスシリコンを用いることができる。
【0060】
酸化物半導体としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム亜鉛(MgxZn1-xO)、酸化カドミウム亜鉛(CdxZn1-xO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化インジウム(In23)、酸化ガリウム(Ga23)、酸化スズ(SnO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化タングステン(WO)、InGaZn
O系、InGaSnO系、InGaZnMgO系、InAlZnO系、InFeZnO系、InGaO系、ZnGaO系、InZnO系を用いることができる。
【0061】
また、ディスプレイ部140を構成するゲート電極、ソース電極およびドレイン電極としては、所望の導電性を備えるものであれば特に限定されるものではなく、一般的にTFTに用いられる導電性材料を用いることができる。このような材料の例としては、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Nb、Hf、Mo、Au、Ag、Pt、Mo−Ta合金、W−Mo合金、ITO、IZO等の無機材料、および、PEDOT/PSS等の導電性を有する有機材料を挙げることができる。
【0062】
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0063】
また、ディスプレイ部140を構成するゲート絶縁膜としては、一般的なTFTにおけるゲート絶縁膜と同様のものを用いることができ、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の絶縁性無機材料、および、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の絶縁性有機材料等の絶縁性有機材料を用いることができる。
【0064】
ゲート絶縁膜の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0065】
次に、絶縁基板120上に設けられるディスプレイ部140が電子ペーパーである場合の積層構造についてより詳細に説明する。図16は本発明の表示機能付き非接触式ICカードにおけるディスプレイ部140が電子ペーパーである例を示す概略断面図である。
【0066】
図16に示す電子ペーパーは、金属箔、上記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層、および上記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層を有するフレキシブルデバイス用基板と、上記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された背面電極層およびTFTと、上記背面電極層上に形成された表示層と、上記表示層上に形成された透明電極層とを有することを特徴とするものである。
【0067】
図16に例示するディスプレイ部140(電子ペーパー)は、金属基板部110、絶縁基板部120と、これら金属基板部110、絶縁基板部120の密着層304上に形成されたTFT316と、TFT316を覆うように形成された保護膜315と、保護膜315上に形成され、スルーホールを介してTFT316のドレイン電極312Dと電気的に接続された背面電極層(画素電極)341と、背面電極層341上に形成された表示層342と、表示層342上に形成された透明電極層343とを有している。
【0068】
TFT316はボトムゲート・トップコンタクト構造を有し、密着層304上に形成されたゲート電極313Gと、ゲート電極313G上に形成されたゲート絶縁膜314と、ゲート絶縁膜314上に形成された半導体層311ならびにソース電極12Sおよびドレイン電極312Dとを有している。
【0069】
電子ペーパーの表示方式としては、公知のものを適用することができ、例えば、電気泳動方式、ツイストボール方式、粉体移動方式(電子粉流体方式、帯電トナー型方式)、液晶表示方式、サーマル方式(発色方式、光散乱方式)、エレクトロデポジション方式、可動フィルム方式、エレクトロクロミック方式、エレクトロウェッティング方式、磁気泳動方式などが挙げられる。
電子ペーパーを構成する表示層としては、電子ペーパーの表示方式に応じて適宜選択される。
【0070】
なお、図15及び図16においては、ディスプレイ部140の構造として、ボトムゲート・トップコンタクト構造に係るものを例示したが、ディスプレイ部140の構造はこれに限定されるものではなく、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、トップゲート・トップコンタクト構造、トップゲート・ボトムコンタクト構造、あるいは、コプレーナ構造などのいずれの構造も採用することが可能であること付記しておく。
【0071】
以上、本発明の表示機能付き非接触式ICカードによれば、第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理した構成となっているので、非接触データ通信を行う際の磁場を遮蔽することがなく、良好に通信を行うことが可能となると共に、補強部によって剛性を保つことも可能となる。
【符号の説明】
【0072】
100・・・表示機能付き非接触式ICカード
110・・・金属基板
111・・・第1短冊状補強部
112・・・第2短冊状補強部
113・・・第3短冊状補強部
114・・・第4短冊状補強部
115・・・バリア補強部
116・・・枠状補強部
120・・・絶縁基板
130・・・アンテナコイル部
140・・・ディスプレイ部
150・・・電子回路部
204・・・密着層
211・・・半導体層
212S・・・ソース電極
212D・・・ドレイン電極
213G・・・ゲート電極
214・・・ゲート絶縁膜
215・・・保護膜
216A・・・駆動用TFT
216B・・・スイッチング用TFT
231・・・背面電極層
232・・・EL層
233・・・透明電極層
304・・・密着層
311・・・半導体層
312S・・・ソース電極
312D・・・ドレイン電極
313G・・・ゲート電極
314・・・ゲート絶縁膜
315・・・保護膜
316・・・TFT
341・・・背面電極層
342・・・表示層
343・・・透明電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、
第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、
前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする表示機能付き非接触式ICカード。
【請求項2】
金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、
第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、
前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部と、
前記金属基板平面に対して垂直な方向に投影を行ったとき、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部の投影を包含する投影を形成するバリア補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする表示機能付き非接触式ICカード。
【請求項3】
金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、
第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、
前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部と、
前記絶縁基板の周縁における枠状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする表示機能付き非接触式ICカード。
【請求項4】
金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、
第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、
前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部と、
前記金属基板平面に対して垂直な方向に投影を行ったとき、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部の投影を包含する投影を形成するバリア補強部と、
前記絶縁基板の周縁における枠状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする表示機能付き非接触式ICカード。
【請求項5】
金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部と、前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部と、を有する表示機能付き非接触式ICカードにおいて、
前記絶縁基板の周縁における枠状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理したことを特徴とする表示機能付き非接触式ICカード。
【請求項6】
前記ディスプレイ部が有機EL表示装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の表示機能付き非接触式ICカード。
【請求項7】
前記ディスプレイ部は半導体層を有しており、前記半導体層にはIn、Ga、Znのうち少なくとも1つの金属を含む酸化物半導体が用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の表示機能付き非接触式ICカード。
【請求項8】
前記ディスプレイ部が電子ペーパーであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいず
れかに記載の表示機能付き非接触式ICカード。
【請求項9】
金属基板上に絶縁基板を設ける工程と、
前記絶縁基板上に設けられたアンテナコイル部を設ける工程と、
前記絶縁基板上に設けられたディスプレイ部を設ける工程と、
第1の方向に向かって延びる複数の第1短冊状補強部と、
前記第1の方向と異なる第2の方向に向かって延びる複数の第2短冊状補強部とを除き、前記金属基板をエッチング処理する工程と、を有することを特徴とする表示機能付き非接触式ICカードの製造方法。
【請求項10】
前記ディスプレイ部が有機EL表示装置であることを特徴とする請求項9に記載の表示機能付き非接触式ICカードの製造方法。
【請求項11】
前記ディスプレイ部は半導体層を有しており、前記半導体層にはIn、Ga、Znのうち少なくとも1つの金属を含む酸化物半導体が用いられることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の表示機能付き非接触式ICカードの製造方法。
【請求項12】
前記ディスプレイ部が電子ペーパーであることを特徴とする請求項9に記載の表示機能付き非接触式ICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−64097(P2012−64097A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209047(P2010−209047)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】