説明

表示機能付きICカード、表示駆動回路

【課題】カード内の情報を可視化するためのディスプレイを搭載し、電力、表示データを送るための接触端子板を有する表示機能付き非接触ICカード等を提供する。
【解決手段】表示機能付きICカード1内に、非接触IC回路と完全に独立した表示制御回路を形成する。表示制御回路は、表示制御ICチップ2、画像表示ドライバ3、情報を表示するための画像表示部5を有し、接触端子板4を介して表示制御回路を駆動するための電力と表示データをリーダライタ20から受信する。非接触IC回路は、アンテナコイル6を介して非接触通信によりデータ転送を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示手段と非接触通信機能を有し、接触端子を介して情報表示手段が必要とする電力、データを送る非接触ICカード等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードは、簡易迅速に読み取りできる特性とリーダライタのメンテナンスの容易性から広範に使用されるようになっている。例えば、交通機関のゲートパスや特定施設への入場パスとしての用途である。この非接触ICカードに、「残高」や「残期間」等の可変情報を表示できれば、使用勝手を高められることは明らかである。
しかし、非接触ICカードの交信時間は瞬時であって、十分な電力が得られないという問題がある。そのため、実用的な可変情報を表示させることは困難であり、一定の用途のものに制限されているのが実情である。特に、内部に電源や蓄電池を持たない非接触ICカードに実用的な書き換え可能表示部を持たせた例は現時点では存在しない。
【0003】
近年開発された電子ペーパは、消去可能、多数回の書き換えが可能で、かつ、メモリ性を有していて好ましいが、書き込みに高電圧が必要で、通常の非接触通信では十分な電圧が得られないことが確認されている。特許文献3に示すように、可逆性感熱記録材料によるリライト記録層をICカードの表面に持たせる例はあるが、非接触交信による電力により動作するものではない。また、書き換え表示するためには、サーマルヘッドによるプリンタ装置が必要となり、繰り返し印字性に乏しいという問題もある。
一方、太陽電池は光が不十分では電力が得られないこと、内蔵電池は電池交換に手間がかかることのほか、カード構造が複雑化し、製造コストが増大するという問題がある。
【0004】
非接触ICカードに可視情報を表示するため、特許文献1では、非接触ICカードに強誘電性液晶を使用した表示装置を設けるという方法が提案されている。
また、特許文献2では、非接触ICカードに接続端子を設け、外部のリーダライタからCPU、メモリ、ディスプレイ、およびドライバ等に対し必要に応じて電圧を供給し、電気泳動式ディスプレイに継続して画像を表示させるという方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−154215号公報
【特許文献2】特開2003−271911号公報
【特許文献3】特開2003−346111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、非接触ICカードの交信時間は極めて短時間であることから、表示するために十分な駆動電力を非接触通信で得ることは困難である。一般に、電子ペーパは40〜90Vの高電圧駆動が必要で、非接触通信で得られる電力により表示書き換えを行うことは事実上不可能である。カード内のアンテナ特性を最適化することにより、リーダライタからの電力を最大効率で得ることもできるが、この場合、リーダライタからの電磁波が表示駆動回路に偏って供給され、非接触ICカード側の回路への電力供給が減少し、非接触ICカードとしての通信特性に悪影響を与える。また、非接触通信で電力を得るための回路の部品点数が多くなり、カード規格に準拠するサイズ、厚さ、物理特性を満足することが困難である。
【0007】
特許文献2の方法では一般的なICカードを対象としており、非接触ICカードで適用した場合、非接触通信を行う非接触ICカード側へ影響を与える可能性があり、通信距離の低下等が懸念される。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、カード内の情報を可視化するためのディスプレイを搭載し、電力、表示データを送るための接触端子板を有する表示機能付き非接触ICカード等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために第1の発明は、画像表示部、表示制御回路、接触端子板からなる表示駆動回路と、アンテナコイルを介して非接触通信を行う非接触IC回路とを有する非接触ICカードであって、前記表示駆動回路は、駆動電力と表示データを、前記接触端子板を介してリーダライタとの接点で結合して取得し、前記非接触IC回路は、非接触通信により前記非接触IC回路の駆動電力とデータを取得することを特徴とする表示機能付きICカードである。
【0010】
前記表示駆動回路と、前記非接触IC回路はそれぞれ独立した層で形成され、前記非接触IC回路は既存の任意のタイプを使用可能である。
また、表示駆動回路と非接触IC回路を完全に分離することにより、通信距離の低下のような通信特性への影響がない。非接触IC回路に使用されるセキュリティデータは、表示機能付きICカードの表示部とは分離されているため、表示駆動回路を分解、解析してもセキュリティデータを取り出せず、セキュリティを保持できる。
【0011】
表示駆動回路は、接触端子板から安定した電力を得ることができ、確実な表示駆動ができる前記画像表示部は電子ペーパで、前記駆動電力の供給が遮断しても表示状態を保持する。
更に、表示駆動回路として実装される部品は、画像表示部、表示制御回路、接触端子板等と部品点数が少なく、カード規格に準拠した厚み0.68mmから0.84mmの間で製造することが可能となり、カードの物理特性も満足することができる。
【0012】
第2の発明は、画像表示部、表示制御回路、接触端子板からなる表示駆動回路であって、前記表示駆動回路は、駆動電力と表示データを、前記接触端子板を介してリーダライタとの接点で結合して取得することを特徴とする表示駆動回路である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、カード内の情報を可視化するためのディスプレイを搭載し、電力、表示データを送るための接触端子板を有する表示機能付き非接触ICカード等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の表示機能付きICカード1の概略ブロック構成を示す図、図2は、表示機能付きICカード1のハードウエア構成の概略配置図、図3は、表示機能付きICカード1の概略断面構造を示す図、図4は、表示機能付きICカード1の表示書き換えシステムの構成を示す図、図5は、電子粉流体を使用した電子ペーパを説明する図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の表示機能付きICカード1は、表示制御回路として、カード表面に接触端子板4と画像表示部5を有し、カード基体10内に表示制御ICチップ2と画像表示ドライバ3を備えている。表示制御ICチップ2及び画像表示ドライバ3は、画像表示部5を表示制御するためのものであり、表示機能ICカード1が非接触通信を行う目的のものではない。
表示機能付きICカード1は、非接触通信のためのアンテナコイル6と非接触ICチップ7とからなる非接触IC回路を別途に備えている。本発明の表示機能付きICカード1では、表示制御回路と非接触IC回路は完全に切り離されており、相互に表示データの授受や電力の供給を直接行うことはない。表示制御回路は、表示機能付きICカード1の使用開始時や更新時に画像表示部5を書き換え表示するもので、書き換え表示以外の通常の表示機能付きICカード1の使用時における非接触通信は非接触IC回路により行われる。
【0016】
表示機能付きICカード1は、接触端子板4を介して外部のリーダライタ20からロジック電源、外部クロック(CLK)信号、表示データ用信号、接地(GND)線、表示駆動電源の供給を受ける。
ロジック電源は、表示制御ICチップ2及び画像表示ドライバ3を駆動するもので、通常5V程度である。
接触端子板4は、単に上記表示データ用信号等の授受と電力供給を受けるために介在している。そのため、表示機能付きICカード1は、通常の接触型ICカードのように、背面にCPU(Central Processing Unit)のような制御部やメモリを有する半導体チップを備えておらず、接触型ICカードの機能をすることはない。接触端子板4は、表面が8端子程度に分岐した金属板で、絶縁性基板を中心層とし、その背面にスルーホールで表面側と導通した必要数の端子またはバンプを有する形態である。
【0017】
接触端子板4は、表示機能付きICカード1のカード基体10の端面に小さな端子板面を配列した形態とし、差し込みによりリーダライタ20との接触を確保するものとしてよいが、ISO7816の規格に準拠した端子数、位置の外観を呈する接触端子板となるように構成するのが好ましい。
これは、表示機能付きICカード1の外周に設けるアンテナコイル6との関係で、表示機能付きICカード1の内側に接触端子板4がある方が回路の構成が容易になり、リーダライタ20も接触型ICカードと同様の接点構造を採用することができるという利点があるからである。また、ISO7816の規格に準拠した端子数、位置の外観とすることにより、利用者も接触型ICカードを使用するのと異ならない感触が得られる。
ただし、ISO7816の規格に準拠した端子数とした場合、接触端子板4は表面に8個の端子板面を有するが、本発明では全ての端子板を使用することにはならない。接触端子板4は、背面に端子またはバンプを設け、表示制御ICチップ2及び画像表示ドライバ3との間の配線により電気的接続を行うことができる。
【0018】
接触端子板4と表示制御ICチップ2の間は、ロジック電源、外部クロック(CLK)信号、表示データ用信号、接地(GND)線が接続される。接地電圧は、分岐して画像表示ドライバ3にも供給される。ロジック電源は、表示制御ICチップ2を駆動する電源である。表示制御ICチップ2により制御される表示データ用信号は、画像表示ドライバ3に供給される。
接触端子板4と画像表示ドライバ3の間には、表示駆動電源の回路が形成される。画像表示ドライバ3は、表示データ信号を画像表示部5に送信する。
【0019】
表示制御ICチップ2は、8ビットCPU等である。外形寸法は7mm×7mm程度、市販品の厚みは1mm程度であるが、本発明の表示機能付きICカード1に使用する場合は、背面を研磨して300μm程度にして使用する必要がある。画像表示ドライバ3の外形寸法は、1.5mm×10.0mmや2.0mm×22.5mm程度である。厚みがかなりあるので、表示制御ICチップ2と同様に背面を研磨して300μm程度にする必要がある。これらの部品を、図3に示すように表示駆動回路11の配線シートとする。
非接触ICチップ7は、機能にもよるが通常は4.0mm角以内の平面サイズ、厚みは200μm程度以内とする。非接触ICチップ7とアンテナコイル6から、非接触ICカード部13(図3参照)を形成する。
【0020】
図2は、表示機能付きICカード1のハードウエア構成の概略配置図である。接触端子板4は、接触型ICカードのICモジュールの端子板面の形態にされたものを示している。各端子板の機能は、接触型ICカードとは異なるが、同様の機能のものは同様の位置に接続してよい。例えば、表示駆動電圧はC1、クロック信号はC3、接地(GND)はC5、ロジック電源はC6、表示データ信号はC7端子等である。ただし、各端子板の配置は自由にできるので、カード内側にある部品との接続関係で配線部8の形成が容易になるように定めることができる。なお、配線部8とは、接触端子板4、表示制御ICチップ2、画像表示ドライバ3、画像表示部5間の配線をいうものとする。
【0021】
アンテナコイル6は、非接触ICチップ7と共に、非接触IC回路を構成するものであり、表示機能付きICカード1の周囲を周回する形態等に形成され、その両端が非接触ICチップ7に接続している。但し、表示機能付きICカード1の周囲を周回しない形態としてもよい。
表示制御回路は、接触端子板4、表示制御ICチップ2、画像表示ドライバ3、画像表示部5と、それらの間の配線部8からなる。
画像表示ドライバ3は、通常は画像表示部5の縁辺部にマトリックス配線と一体にして設けられる。
【0022】
上記において、画像表示部5には、コレステリック液晶でマトリックス回路を形成したフィルム基板に塗工してパッシブ駆動するもの、または電子粉流体を用いた電子ペーパのいずれかを採用することができる。コレステリック液晶を用いる場合は、配向状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態との間で変化させて、光を透過または反射させることにより、所定の情報を表示させるものである。例えば、プレーナ状態の反射光の波長帯域を550nm付近とし、液晶層の下に光吸収層(黒)を設け、背景色黒の上で緑色の単色表示を行うことができる。このコレステリック液晶タイプ電子ペーパは、富士通フロンテック株式会社が開発している。
【0023】
電子粉流体を用いる電子ペーパには、QR−LPD(Quick Response−Liquid Powder Display)といわれるものがある。これは、粒子と液体の中間的な特性を備え、浮遊状態に匹敵する高流動性を有し、かつ、電気に敏感に反応する白と黒の電子粉流体をパネル内に納めて、前面板の電圧を背面板より高くすると、白い電子粉流体が前面板側に移動し、ディスプレイは白く見えるようになり、その逆の電圧にすると、黒い電子粉流体が前面板側に移動してディスプレイは黒く見えるというものである。表示駆動電圧でパッシブ駆動し、白黒の切り替えが0.2m秒内で行われる。この電子ペーパは、株式会社ブリヂストンが開発している。
【0024】
図5は、電子粉流体を使用した電子ペーパを説明する図である。
透明な前面板51と背面板52の間に、黒の電子粉流体5bと白の電子粉流体5wを封入した構造となっている。黒の電子粉流体5bはプラスに、白の電子粉流体5wはマイナスに帯電している。
前面板51と背面板52の内面側には、ITOによる透明マトリクス電極54、55が形成されている。前面板51の電圧を背面板52よりも高くすると、図5(A)に示すように、白の電流粉流体5wが前面板51側に移動するので、前面板51側から見るとディスプレイは白く見える。逆に、前面板51の電圧を背面板52よりも低くすると、図5(B)に示すように、黒の電子粉流体5bが前面板51側に移動し、ディスプレイは黒く見える。マトリックス駆動による白と黒のドットの組み合わせにより、ひらがな、英数字、漢字のような文字や画像の表示が可能となる。
前面板51と背面板52の間は空気で満たされ、リブ53により一定間隔に保たれている。従来、前面板51と背面板52はガラス板が使用されていたが、最近、プラスチックシートを使用したフレキシブル構造が可能となった。
【0025】
表示量を十分にし、見やすい表示とするには、画像表示部5を縦30mm×横40mm程度の大きさにするのが好ましい。電子粉流体の場合は、黒文字と白地の2色表示となり、コレステリック液晶の場合は、緑文字と黒字の2色表示を採用できる。もっとも、コレステリック液晶電子ペーパはカラー表示も可能である。解像度は、100〜120dpiを実現することができる。
【0026】
電子ペーパの電力消費は表示書き換え時のみで、電力消費なしで表示画面を保持でき、ディスプレイの視認性も確保できる。表示画面は、通常の温度(0〜40℃)、湿度(40〜60%)の条件で30日間は保持できる。電子ペーパの1画面の書き換え時間は、実行開始から10秒以内に可能で、10000回の書き換え回数を満足することができる。
【0027】
図3は、表示機能付きICカード1の概略断面構造を示す図である。
カード基体10は、表示駆動回路11、非接触ICカード部13を中心層とし、その両側に外装フィルム15、17をそれぞれ積層する。
画像表示部5に表示を行うための表示駆動回路11と、非接触ICカード部13は完全に独立しており、非接触ICカード部13として既存の任意のタイプの非接触ICカードのアンテナシートを使用することが可能である。
外装フィルム15、17、表示駆動回路11、及び非接触ICカード部13はエポキシ系、ウレタン系等の液状の樹脂を充填し、各層を接着して硬化させる。
【0028】
外装フィルム15、17の厚さは約100μmである。表示駆動回路11は、基板部分が約50μm、表示制御ICチップ2及び画像表示ドライバ3、画像表示部5が約300μmである。また、非接触ICカード部13は、基板部分が50μm、非接触ICチップ7が約200μmである。表示制御ICチップ2、画像表示ドライバ3、非接触ICチップ7等の凸部は、その上部に重なる部分を穴あけして逃がす構成とし、表示機能付きICカード1の積層構造は、全体で0.68mmから0.84mmの厚みになるようにする。表示駆動回路11上の接触端子板4は、外装フィルム15の重なる部分を穴あけし、外部のリーダライタ20と接触することができるようにする。
【0029】
図4は、表示機能付きICカードの表示書き換えシステムの構成を示す図である。表示書き換えシステム100は、パソコン30、リーダライタ20及び表示機能付きICカード1から構成される。
パソコン30は、表示機能付きICカード1に送信する表示データ用信号の生成を行うコンピュータである。パソコン30は、インターネットまたは専用回線により、さらに上位機に接続するものとする。
パソコン30は、表示機能付きICカード1の表示書き換え用ソフトウエアを備え、表示書き換え用ソフトウエアにより生成した表示データをUSB(Universal Serial Bus)接続により、リーダライタ20にシリアル供給する。USBは、データ1及びデータ2の2本の信号線と、5V程度のバス電力供給線を有する。
【0030】
リーダライタ20は、パソコン30にUSB接続してシリアルデータを受信し、表示機能付きICカード1に表示データ用信号と表示駆動用電力を供給する。表示機能付きICカード1は非接触ICカードであるが、リーダライタ20から取得する表示データ等を接触端子板4から受信する。
【0031】
リーダライタ20は、USBデータを画像表示部5に適合したシリアルフォーマットに変換する画像表示制御回路21、表示機能付きICカード1に表示データ用信号と表示駆動用電力を供給する接触端子コネクタ22、表示機能付きICカード1と非接触通信を行うためのアンテナ23と非接触ICチップ情報制御回路24、パソコン30から表示駆動用電源を受信する電源部25等を有する。
表示駆動用電力、表示データ用信号等は、接触端子コネクタ22を介して表示機能付きICカード1に与えられる。
リーダライタ20は、パソコン30からのUSBバス電力により駆動するようにしてもよい。
【0032】
表示機能付きICカード1の非接触通信は、リーダライタ20のアンテナ23と、表示機能付きICカード1のアンテナコイル6間で行われる。表示機能付きICカード1の非接触IC回路とリーダライタ20は、通常採用される周知のものであり、特に詳述しない。
【0033】
以上説明したように、表示機能付き非接触ICカードは、情報を可視化するためのディスプレイを搭載し、接触端子板を介してリーダライタから電力と表示データ用信号を受信し、非接触ICカードとして必要となるデータ転送は、カード内の非接触通信用のアンテナを経由して行うことができる。接触端子板から安定した電力を供給することができるため、確実な表示駆動が可能となる。
【0034】
表示駆動回路と非接触ICカード部を完全に分離したことで、表示駆動回路への電力供給及び表示データの信号の転送はカード上に設けた接触端子板を介してリーダライタから送られ、表示駆動回路にはアンテナ等の電磁波を吸収する部品を使用しなくてもよいため、同一カード内に存在する非接触ICカード回路への影響はなく、非接触通信の通信距離低下等の悪影響を確実に回避することができる。
【0035】
また、非接触通信のためのリーダライタから放出される電磁波を電磁誘導によりカード内のアンテナに取り込んで、表示駆動回路のための電力として使用する方法と比較して、表示駆動回路の部品点数を大幅に低減することが可能となり、部品費の削減、製造歩留まり等の向上が見込まれ、ICカード製造のための費用低下が期待できる。
更に、カード内に実装する部品点数を削減することにより、カードとしての信頼性も向上し、カード規格に準拠するサイズ、厚さ及び物理特性を満足することが可能となる。
非接触ICカードに使用されるセキュリティデータは表示部とは分離されているため、表示駆動回路を分解、解析してもセキュリティデータには到達せず、セキュリティを保つことができる。
【0036】
本発明に係る表示機能付きICカードは、例えば、交通機関用のチケットや定期券、搭乗券や乗船券、あるいは各種入場券や娯楽施設券、当選券等として用いられる。例えば、交通機関用のチケットとして用いられる場合、家庭や駅等でコンピュータとリーダライタを用いて新幹線等のチケット情報をICカードに記憶させて、チケットの内容を画像表示部に表示させることで、顧客はペーパレスで新幹線等に乗車することができる。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る表示機能付きICカード等の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の表示機能付きICカード1の概略ブロック構成を示す図
【図2】表示機能付きICカード1のハードウエア構成の概略配置図
【図3】表示機能付きICカード1の概略断面構造を示す図
【図4】表示機能付きICカード1の表示書き換えシステムの構成を示す図
【図5】電子粉流体を使用した電子ペーパを説明する図
【符号の説明】
【0039】
1………表示機能付きICカード
2………表示制御ICチップ
3………画像表示ドライバ
4………接触端子板
5………画像表示部
6………アンテナコイル
7………非接触ICチップ
8………配線部
10………カード基体
11………表示駆動回路
13………非接触ICカード部
15、17………外装フィルム
20………リーダライタ
21………画像表示制御回路
22………接触端子コネクタ
23………アンテナ
24………非接触ICチップ情報制御回路
25………電源部
30………パソコン
31………USBコネクタ
51………前面板
52………平面板
53………リブ
54、55………電極
5b………黒の電子粉流体
5w………白の電子粉流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部、表示制御回路、接触端子板からなる表示駆動回路と、アンテナコイルを介して非接触通信を行う非接触IC回路とを有する非接触ICカードであって、前記表示駆動回路は、駆動電力と表示データを、前記接触端子板を介してリーダライタとの接点で結合して取得し、前記非接触IC回路は、非接触通信により前記非接触IC回路の駆動電力とデータを取得することを特徴とする表示機能付きICカード。
【請求項2】
前記表示駆動回路と、前記非接触IC回路はそれぞれ独立した層で形成され、前記非接触IC回路は既存の任意のタイプを使用可能であることを特徴とする請求項1記載の表示機能付きICカード。
【請求項3】
前記画像表示部は電子ペーパで、前記駆動電力の供給が遮断しても表示状態を保持することを特徴とする請求項1記載の表示機能付きICカード。
【請求項4】
厚みが、0.68mmから0.84mmの間であることを特徴とする請求項1記載の表示機能付きICカード。
【請求項5】
画像表示部、表示制御回路、接触端子板からなる表示駆動回路であって、
前記表示駆動回路は、駆動電力と表示データを、前記接触端子板を介してリーダライタとの接点で結合して取得することを特徴とする表示駆動回路。
【請求項6】
前記画像表示部は電子ペーパで、前記駆動電力の供給が遮断しても表示状態を保持することを特徴とする請求項5記載の表示駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−102489(P2010−102489A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273013(P2008−273013)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(593092482)ジェイアール東日本メカトロニクス株式会社 (85)
【Fターム(参考)】