説明

表示灯及びそれを備えた消火設備、並びに表示方法

【課題】消火設備の収容庫に用いられる表示灯において、輸送や運搬コストの低減と設置後の人や物の移動領域の拡大の実現のみならず、表示灯としての視認性を向上することが可能な表示灯を提供する。
【解決手段】表示灯10は、収容庫における前面の扉部102の平面領域が備える表示灯である。加えて、この表示灯10は、前述の平面領域に略平行な方向に向かうとともに互いに異なる方向に向いて発光する複数の第1発光部12・・・12と、その平面領域に略垂直な方向に向いて発光する1つ又は複数の第2発光部13・・・13と、その平面領域から1mm以上15mm以下の長さが突出する、第1発光部12・・・12及び第2発光部13・・・13を覆う透光性の蓋体16と、その第1発光部12・・・12からの発光を正面視において遮光する遮光体14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示灯及びそれを備えた消火設備、並びに表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示灯は、一般的に、特定物の存在及びその位置を周囲の人に知らせる重要な役割を果たすものである。斜視図である図17A及び断面図である図17Bに示すように、従来の表示灯910は、例えば、消火栓等の消火設備900に用いられる収容庫(以下、単に「収容庫」という。)904の前面にある扉部902の正面からかなり突出するように設けられる。通常、表示灯910は釣鐘状であり、常時赤色に点灯する。また、我が国では、表示灯910は、図18に示すように、それが設置された面(平面)に対して15°以上となる角度の範囲において、10m離れた場所から容易に視認できるように配置されている。
【0003】
他方、上述の表示灯910とは異なり、収容庫904の正面から突出しない状態と正面から突出した状態とを摺動するガイドを取り付けている表示灯も過去に提案されている(特許文献1を参照)。この表示灯(警告灯)は、消火栓格納箱の前面側のパネルの平面から突出しないが、複数の一様に並べられたLEDからの光により、その平面に対して15°以上となる角度の範囲において、10m離れた場所から視認できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−45419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から採用されている釣鐘状の表示灯910の突出は、例えば、消火設備の製造過程における部品の輸送や運搬コストを引き上げてきた経緯がある。具体的には、従来の表示灯910を、例えば、収容庫104に備え付けた態様では、数多く密集させて配置すると、損壊のリスクもあるため、輸送や運搬には不適である。したがって、表示灯910を収容庫904から取り外した後に輸送や運搬がされるため、その作業時間、作業コスト、及び輸送コストが上がってしまうことになる。加えて、表示灯910の突出は、例えば収容庫904が設置された場所によっては人や物が移動する際の邪魔になることもしばしば見受けられる。
【0006】
しかし、上述のような課題はあっても、従来の表示灯910が広く一般的に用いられているのが現状である。これは、表示灯は上述の役割を果たすために、正面からのみならず、側方に近い方向からであっても確実に認識されるように配置されなければならないからである。しかしながら、側方に近い位置に加えて、完全な側方(つまり、上述の表現を借りれば、図19に示すように、当該平面に対して0°の方向)からの視認性を確保しつつ、正面からの突出を可能な限り低減して表示灯Lを配置する手段は、本願出願人の知るかぎり未だ見出されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の技術課題を解決することにより、輸送や運搬コストの低減と設置後の人や物の移動領域の拡大の実現のみならず、表示灯としての視認性の更なる向上に大きく貢献するものである。
【0008】
本願発明者は、表示灯が周囲よりこれまで以上に視認され易くするためには、その表示灯が配置されている収容庫の前面の正面からの視認性と収容庫の側方からの視認性とを区別して対策することが適切であると考え、鋭意研究と開発を行った。さらに、発明者は、表示灯としての本来の機能を果たすためには、理想的には、上述のような完全な側方からの視認性を確保することが重要であると考え、従来の表示灯に要求されていた視認性を超える表示灯の研究にも精力的に取り組んだ結果、新たな構造を見出した。本発明は、そのような視点に基づいて創出された。
【0009】
本発明の1つの表示灯は、収容庫における前面の平面領域が備える表示灯である。加えて、この表示灯は、前述の収容庫の側方を含む前述の平面領域に略平行な方向に向かうとともに互いに異なる方向に向いて発光する複数の第1発光部と、その平面領域に略垂直な方向に向いて発光する1つ又は複数の第2発光部と、その平面領域から1mm以上15mm以下の長さが突出する、前述の第1発光部及び第2発光部を覆う透光性の蓋体と、その第1発光部からの発光を正面視において遮光する遮光体とを備える。
【0010】
この表示灯によれば、上述の遮光体の存在よって収容庫の側方を含む上述の平面領域に略平行な方向に向いた発光という役割を担う第1発光部と、その平面領域に略垂直な方向に向いて発光させることによって透光性の蓋体から光を通過させて正面視から視認させる役割を担う第2発光部との役割分担が実現されている。したがって、この表示灯によれば、その収容庫の完全な側方から見たときであっても確度高くその表示灯の存在を認識しうる。また、蓋体の突出する長さが限定されているため、設置後の人や物の移動領域を拡大できるのみならず、輸送や運搬コストの低減が実現できる。
【0011】
また、本発明のもう1つの表示灯は、収容庫における前面の平面領域が備える表示灯である。加えて、この表示灯は、前述の収容庫の側方を含む前述の平面領域に略平行な方向に向かうとともに互いに異なる方向に向いて発光する複数の第1発光部と、その平面領域に略垂直な方向に向いて発光する1つ又は複数の第2発光部と、その平面領域から1mm以上15mm以下の長さが突出する、前述の第1発光部及び第2発光部を覆う蓋体とを備えている。さらに、正面視において前述の蓋体が備える遮光部によってその第1発光部からの光が遮光され、かつ、正面視においてその蓋体が備える透光部をその第2発光部からの光が通過する。
【0012】
この表示灯によれば、上述の蓋体の遮光部の存在よって収容庫の側方を含む上述の平面領域に略平行な方向に向いた発光という役割を担う第1発光部と、その平面領域に略垂直な方向に向いて発光させることによって蓋体の透光部から光を通過させて正面視から視認させる役割を担う第2発光部との役割分担が実現されている。したがって、この表示灯によれば、その収容庫の完全な側方から見たときであっても確度高くその表示灯の存在を認識しうる。また、蓋体の突出する長さが限定されているため、設置後の人や物の移動領域を拡大できるのみならず、輸送や運搬コストの低減が実現できる。
【0013】
また、本発明の1つの表示方法は、収容庫における前面の平面領域が備える表示灯による表示方法である。加えて、この表示方法は、前述の収容庫の側方を含む前述の平面領域に略平行な方向に向かうとともに互いに異なる方向に向いた複数の第1発光部を、正面視において遮光するように、その平面領域から1mm以上15mm以下の長さが突出させた蓋体を介して発光させ、かつその蓋体を介して、前述の平面領域に略垂直な方向に向いて1つ又は複数の第2発光部を発光させる。
【0014】
この表示方法によれば、正面視において遮光するように蓋体を介して発光させる役割を担う第1発光体と、その蓋体を介して、前述の平面領域に略垂直な方向に向いて発光させる第2発光部との役割分担が実現されている。したがって、この表示灯によれば、その収容庫の完全な側方から見たときであっても確度高くその表示灯の存在を認識しうる。また、蓋体の突出する長さが限定されているため、その表示方法が採用されると、収容庫が設置された後の人や物の移動に対して邪魔にならない表示が可能となる。
【0015】
ところで、本出願において「第1発光部」とは、それ自体が発光する装置のみを示すものではなく、その発光する装置に加えて、その装置を補助してその発光された光の方向を変える器具(例えば、ミラーやプリズム)を含めたものを示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1つの表示灯によれば、収容庫の完全な側方から見たときであっても確度高くその表示灯の存在を認識しうる。また、蓋体の突出する長さが限定されているため、設置後の人や物の移動領域を拡大できるのみならず、輸送や運搬コストの低減が実現できる。したがって、特に上述の表示灯を備える消火設備は、その存在場所を表示する能力に優れるとともに、その設置後の人や物の移動領域を拡大と、輸送や運搬コストの低減とを実現することができる。
【0017】
また、本発明の1つの表示方法によれば、収容庫の完全な側方から見たときであっても確度高くその表示灯の存在を認識しうる。また、蓋体の突出する長さが限定されているため、その表示方法が採用されると、収容庫が設置された後の人や物の移動に対して邪魔にならない表示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態における消火設備の斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における表示灯の正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における図2に対応する断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における図2に対応する断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態における図2に対応する断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態における図2に対応する断面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態における図2に対応する断面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態における図3に対応する正面図である。
【図10】本発明の第7の実施形態における図2に対応する断面図である。
【図11】本発明の第7の実施形態における図3に対応する正面図である。
【図12】本発明の第8の実施形態における図2に対応する断面図である。
【図13】本発明の第9の実施形態における図2に対応する断面図である。
【図14】本発明のその他の実施形態における図3に対応する正面図である。
【図15】本発明のその他の実施形態における消火設備の斜視図である。
【図16】本発明のその他の実施形態における図3に対応する正面図である。
【図17A】従来の消火設備の斜視図である。
【図17B】従来の消火設備の断面図である。
【図18】従来の表示灯の可視領域を示す説明図である。
【図19】理想的な表示灯の可視領域を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
【0020】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態における消火設備100の斜視図である。また、図2は、図1におけるA−A断面図である。さらに、図3は、本実施形態における表示灯10の正面図である。
【0021】
本実施形態の消火設備100は、図1に示すように、いわゆる移動式消火設備が収容される収容庫104を備える。この収容庫104は、その前面に、ヒンジを介して開閉可能に収容庫104の側板に取り付けられた扉部102を備える。また、扉部102は、平板状であって、表示灯10及び開閉するための突出が殆どない把手106を備えている。なお、本実施形態において、収容庫104の前面に正対して図1のX方向から見ることを正面視とする。
【0022】
次に、表示灯10について詳しく見ると、図2及び図3に示すように、円盤状の基板11の周辺領域上に4つの第1発光部12・・・12としての発光ダイオード(以下、LEDという。)と、基板11の略中央部に3つの第2発光部13・・・13としてのLEDとが配置されている。また、本実施形態では、第1発光部12・・・12と第2発光部13・・・13とは、扉部102から突出する位置に配置されている。ここで、本実施形態の第1発光部12・・・12は、その発光が、収容庫104の扉部102の平面に略平行な方向に向かうとともに互いに異なる方向に向いて発光する。より具体的には、本実施形態の第1発光部12・・・12が向いている方向は、図3に示すように収容庫104の側方を含むとともに、互いに90°異なっている。一方、本実施形態の第2発光部13・・・13が向いている方向は、扉部102の平面に略垂直である。
【0023】
また、本実施形態では、上述の基板11が、第1発光部12・・・12及び第2発光部13・・・13の端子台18とともに、樹脂製の本体部15内に埋め込まれている。なお、上述のとおり、第1発光部12・・・12である複数のLEDは、扉部102の平面に略平行な方向に向かっていることを分かり易くする説明するため、簡略化された端子12aが基板11に到るように描かれている。また、本実施形態では、透光性の蓋体16が、基板11及び本体部15を露出させないように覆っている。加えて、図2及び図3に示すように、蓋体16の内壁上の一部(外周領域)には、正面視において第1発光部12・・・12からの光を遮光するように、遮光体14が形成されている。したがって、第1発光部12・・・12は、実質的に収容庫104の側方を含む扉部102の平面に略平行な方向への発光を担い、第2発光部13・・・13は、正面視において視認されるための発光を担うことになる。
【0024】
ところで、本実施形態の蓋体16には、公知のガラス又は、アクリル樹脂やポリカーボネートに代表される透光性樹脂が適用され得る。また、遮光体14は、公知の塗膜又は成膜プロセスによって形成される遮光性の膜(例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、クロム等を含む膜)が適用され得る。なお、本実施形態の表示灯10は、消火設備100用として設置されているため、通常、蓋体16は完全に透明ではなく、赤色に着色されている。また、本実施形態の1つの変形例として、遮光体14が蓋体16の内壁上に形成される代わりに、独立した部品として配置されることも採用可能な一つの例である。
【0025】
加えて、図2に示すように、本実施形態の表示灯10は、収容庫104の前面の扉部102から長さPだけ突出している。ここで、長さPは、少なくとも収容庫104の側方(本実施形態では、図1のX方向に垂直なY方向)から表示灯10が容易に視認されるだけの長さを有している。この長さが短すぎると(あるいは、扉部102内に埋め込まれていると)、側方(特に、完全な側方)からの視認が困難又は不可能になるためである。さらに、長さPは、消火設備100の設置後に、人や物の移動領域を従来と比較して拡大できる長さであるとともに、特に扉部102の輸送や運搬時に扉部102から表示灯10を取り外す又は分解する作業が不要となる程度の長さである。実際には、表示灯を外す作業は単に手間が掛かるだけでなく、取扱いを誤ると破損の可能性もある。他方、従来の表示灯を付設したままで扉部を輸送又は搬送することは、一度に運ぶ量を大幅に制限することになるとともに、この場合も表示等の破損の可能性が高まる。したがって、前述のような長さを採用することは、実務上において非常に有効である。上述の複数の観点から、本実施形態の表示灯10の突出長さPは、1mm以上15mm以下に設定される。なお、上述の複数の観点から、さらに好ましい表示灯10の突出長さPは、5mm以上10mm以下である。
【0026】
上述のとおり、本実施形態の表示灯10は、収容庫104の前面の扉部102から長さPだけ突出し、それぞれが異なる役割を果たすように配置された第1発光部12・・・12と第2発光部13・・・13とを備えている。その結果、例えば、収容庫104の完全な側方から見たときであっても確度高くその表示灯10の存在を認識しうる。また、蓋体16の突出する長さが限定されているため、消火設備100を設置した後の人や物の移動領域を拡大できるのみならず、扉部102を含む消火設備100の輸送や運搬コストの低減が実現できる。
【0027】
<第2の実施形態>
図4は、本実施形態の表示灯20の断面図であり、第1の実施形態の図2に相当する図面である。本実施形態では、第1の実施形態の表示灯10の遮光体14及び蓋体16が変更された点を除き、第1の実施形態の表示灯10、消火設備100、及びその表示方法と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0028】
本実施形態の表示灯20は、第1の実施形態の表示灯10の遮光体14の代わりに、蓋体16の外周領域に形成された遮光部16cが採用されている。すなわち、第1の実施形態の表示灯10とは異なり、蓋体16自身が透光部16aと遮光部16cとを備えている。本実施形態の蓋体16は、遮光性樹脂と透光性樹脂とを用いた2色の樹脂成形技術を用いることにより形成され得る。なお、図4に示すように、本実施形態の蓋体16の遮光部16cは、第1の実施形態の表示灯10の遮光体14よりも少し広い範囲を遮光している。具体的には、遮光部16cは、正面視において第1発光部12・・・12のみならず、それらの支持部及び端子12aの一部をも覆っている。
【0029】
上述のとおり、本実施形態の表示灯20は、第1の実施形態の表示灯10とは異なり、蓋体16自身が遮光部16cを備えている。しかしながら、本実施形態の表示灯20も、収容庫104の側方を含む扉部102の平面に略平行な方向に向いた発光という役割を担う第1発光部12・・・12と、その平面に略垂直な方向に向いて発光させることによって蓋体16の透光部16aから光を通過させて正面視から視認させる役割を担う第2発光部13・・・13との役割分担が実現されている。したがって、この表示灯20によれば、収容庫104の完全な側方から見たときであっても確度高く表示灯20の存在を認識しうる。また、蓋体16の突出する長さが限定されているため、消火設備が設置された後の人や物の移動領域を拡大できるのみならず、輸送や運搬コストの低減が実現できる。換言すれば、本実施形態の表示方法が採用されると、収容庫104が設置された後の人や物の移動に対して邪魔にならない表示が可能となる。
【0030】
<第3の実施形態>
図5は、本実施形態の表示灯30の断面図であり、第1の実施形態の図2に相当する図面である。本実施形態では、第1の実施形態の表示灯10が備える構造に加えて、反射面19が基板11上に形成されている点を除き、第1の実施形態の表示灯10、消火設備100、及びその表示方法と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0031】
本実施形態の表示灯30は、上述のとおり、第1の実施形態の表示灯10の反射面19が基板11上に形成されている。この反射面19は、公知の反射面を形成し得る材料(例えば、アルミニウム)が適宜パターニングされることによって形成され得る。その結果、第2発光部13・・・13からの光の幾分かが反射面19によって反射し、透光性の蓋体16を介して外部に至ることになるため、第1の実施形態と表示灯10に比べて効率的な発光が実現できる。
【0032】
<第4の実施形態>
図6は、本実施形態の表示灯40の断面図であり、第1の実施形態の図2に相当する図面である。本実施形態では、第1の実施形態の表示灯10が備える蓋体16の代わりに、凸状の曲面を備えた蓋体17が用いられている点を除き、第1の実施形態の表示灯10、消火設備100、及びその表示方法と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0033】
本実施形態の蓋体17は、透光性であり、第1発光部12・・・12を覆う平坦領域17bと、第2発光部13・・・13を主として覆う凸状の曲面領域17aとを有している。また、平坦領域17bの内壁上には、正面視において第1発光部12・・・12からの光を遮光するように、遮光体14が形成されている。したがって、第1発光部12・・・12は、実質的に収容庫104の側方を含む扉部102の平面に略平行な方向への発光を担い、第2発光部13・・・13は、正面視において視認されるための発光を担うことになる。
【0034】
特に、本実施形態では、第2発光部13・・・13からの光を拡散させるように、蓋体17が曲面領域17aを有しているため、第2発光部13・・・13の発光時には、正面視における表示灯40の視認性が向上する。なお、本実施形態の曲面領域17aは、前述の観点から形成された略球面又は楕球面である。また、正面視における視認性をさらに高める観点から、曲面領域17aの内面を、例えばブラスト処理することによって光散乱面に変えることは好ましい。
【0035】
加えて、本実施形態における蓋体17の曲面領域17aの扉部102からの突出長さ(図6の長さQ)は、2mm以上15mm以下である。したがって、蓋体17の突出する長さが限定されているため、消火設備を設置した後の人や物の移動領域を拡大できるのみならず、扉部102を含む消火設備の輸送や運搬コストの低減が実現できる。換言すれば、本実施形態の表示方法が採用されると、収容庫104が設置された後の人や物の移動に対して邪魔にならない表示が可能となる。なお、上述の観点から言えば、さらに好ましい表示灯10の突出長さQは、6mm以上11mm以下である。
【0036】
<第5の実施形態>
図7は、本実施形態の表示灯50の断面図であり、第1の実施形態の図2に相当する図面である。本実施形態では、第4の実施形態の表示灯40の遮光体14及び蓋体17が変更された点を除き、第4の実施形態と表示灯40と同様である。従って、第1及び第4の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0037】
本実施形態の表示灯50は、第4の実施形態の表示灯40の遮光体14の代わりに、蓋体17の平面領域に形成された遮光部17cが採用されている。すなわち、第4の実施形態の表示灯40とは異なり、蓋体17自身が透光部17aと遮光部17cとを備えている。本実施形態の蓋体17も、第2の実施形態と同様に、遮光性樹脂と透光性樹脂とを用いた2色の樹脂成形技術を用いることにより形成され得る。なお、本実施形態における蓋体17の曲面領域17aの扉部102からの突出長さも、第4の実施形態における突出長さと同じである。
【0038】
上述のとおり、本実施形態の表示灯50は、第4の実施形態の表示灯40とは異なり、蓋体17自身が遮光部17cを備えている。しかしながら、本実施形態の表示灯50も、収容庫104の側方を含む扉部102の平面に略平行な方向に向いた発光という役割を担う第1発光部12・・・12と、その平面に略垂直な方向に向いて発光させることによって蓋体17の透光部17aから光を通過させて正面視から視認させる役割を担う第2発光部13・・・13との役割分担が実現されている。したがって、この表示灯50によれば、収容庫104の完全な側方から見たときであっても確度高く表示灯50の存在を認識しうる。また、蓋体17の突出する長さが限定されているため、消火設備が設置された後の人や物の移動領域を拡大できるのみならず、輸送や運搬コストの低減が実現できる。換言すれば、本実施形態の表示方法が採用されると、収容庫104が設置された後の人や物の移動に対して邪魔にならない表示が可能となる。
【0039】
<第6の実施形態>
図8は、本実施形態の表示灯60の断面図であり、第1の実施形態の図2に相当する図面である。また、図9は、本実施形態における表示灯60の正面図である。本実施形態では、第1の実施形態の表示灯10の第2発光部13の位置及び数が変更された点を除き、第1の実施形態と表示灯10と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0040】
本実施形態では、図8及び図9に示すように、第2発光部13が略中央に1つだけ配置されている。このような表示灯60であっても、第2発光部13が所定の距離(例えば、表示灯から10mは慣れた場所)から視認できる程度の十分な明るさを有する限り、第1の実施形態と表示灯10と同等の効果が奏され得る。すなわち、第2発光部13としてのLEDの数は、複数の場合のみならず、1つの場合であってもよい。
【0041】
<第7の実施形態>
図10は、本実施形態の表示灯70の断面図であり、第1の実施形態の図2に相当する図面である。また、図11は、本実施形態における表示灯70の正面図である。本実施形態では、第1の実施形態の表示灯10の第2発光部13・・・13の位置が変更された点を除き、第1の実施形態と表示灯10と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0042】
本実施形態では、図10及び図11示すように、第2発光部13が第1の実施形態の第2発光部13・・・13よりも外周側に配置されている。このような表示灯70であっても、第2発光部13・・・13が所定の距離(例えば、表示灯から10mは慣れた場所)から視認できる程度の十分な明るさを有する限り、第1の実施形態と表示灯10と同等の効果が奏され得る。すなわち、第2発光部13としてのLEDの位置は、中央付近の場合のみに限定されない。
【0043】
<第8の実施形態>
図12は、本実施形態の表示灯80の断面図であり、第1の実施形態の図2に相当する図面である。
【0044】
本実施形態では、LED812・・・812及び第2発光部13・・・13が、扉部102から突出していない。一方、本実施形態の透光性の蓋体16は、第1の実施形態の表示灯10と同じ長さだけ扉部102から突出している。また、本実施形態の第2発光部13・・・13の正面視における配置は、第1の実施形態における第2発光部13・・・13の配置と同様である。
【0045】
ここで、LED812・・・812が向いている方向は、第2発光部13・・・13と同様に、扉部102の平面に略垂直である。しかしながら、LED812・・・812からの光の方向を扉部102の平面に略平行な方向に向かわせるとともに互いに異なる方向に向かわせるようにミラー812b・・・812bが配置されている。したがって、本実施形態では、LED812・・・812とミラー812b・・・812bとが一体となって、第1発光部12z・・・12zが形成されている。加えて、本実施形態の表示灯70蓋体16の内壁上の一部(外周領域)に、正面視においてLED812・・・812からの光を遮光するように、遮光体14が形成されている。
【0046】
上述のとおり、第1発光部12z・・・12zのLED812・・・812自身が扉部102から突出するように配置されていない場合であっても、例えば、本実施形態のようなミラー812b・・・812bを配置することによって、第1発光部12z・・・12zは、LED812・・・812からの発光を扉部102の平面に略平行な方向に向かわせる役割を担うことができる。一方、第2発光部13・・・13は、第1の実施形態と同様に、扉部102の平面に略垂直な方向に向いて発光することにより、正面視から視認させる役割を担うことができる。
【0047】
したがって、本実施形態の表示灯80によれば、収容庫104の完全な側方から見たときであっても確度高くその表示灯80の存在を認識しうる。また、蓋体16の突出する長さが限定されているため、消火設備を設置した後の人や物の移動領域を拡大できるのみならず、扉部102を含む消火設備の輸送や運搬コストの低減が実現できる。
【0048】
<第9の実施形態>
図13は、本実施形態の表示灯90の断面図であり、第1の実施形態の図2に相当する図面である。
【0049】
本実施形態では、本体部15a及び基板11aが段差を備えた構造を有しているため、
第2発光部13・・・13が扉部102から突出していないが、第1発光部12・・・12は扉部102から突出している。また、本実施形態の透光性の蓋体16は、第1の実施形態の表示灯10と同じ長さだけ扉部102から突出している。また、本実施形態の第2発光部13・・・13の正面視における配置は、第1の実施形態における第2発光部13・・・13の配置と同様である。
【0050】
上述のとおり、第2発光部13・・・13が扉部102から突出していない場合であっても、第1の実施形態と同様に、扉部102の平面に略垂直な方向に向いて発光することにより、正面視から視認させる役割を担うことができる。他方。第1発光部12・・・12は、第1の実施形態と同様に、扉部102の平面に略平行な方向に向かわせる役割を担うことができる。
【0051】
したがって、本実施形態の表示灯90によれば、収容庫104の完全な側方から見たときであっても確度高くその表示灯90の存在を認識しうる。また、蓋体16の突出する長さが限定されているため、消火設備を設置した後の人や物の移動領域を拡大できるのみならず、扉部102を含む消火設備の輸送や運搬コストの低減が実現できる。
【0052】
<その他の実施形態>
ところで、上述の各実施形態では、遮光体14又は遮光部16c,17cが採用されているが、これらの遮光性は、略完全に光の透過を遮断するものに限定されない。例えば、遮光性がそれほど高くない材料又は膜厚を有する遮光体が、遮光体14又は遮光部16c,17cに代わって適用されることも、採用可能な一つの例である。例えば、半透明の遮光体又は遮光部が採用されれば、収容庫104の側方を含む扉部102の平面に略平行な方向に向いた発光が実質的に実現するといえる。
【0053】
また、第4の実施形態で述べたとおり、上述の各実施形態における蓋体16,17の透光性を有する領域の内面を、例えばブラスト処理することによって光散乱面に変えることは、正面視における視認性を均質化させて高める観点から、他の好ましい一態様である。
【0054】
また、上述の各実施形態では表示灯が4つの第1発光部12・・・12を備えていたが、第1発光部の数は4つに限定されない。例えば、図14に示す表示灯92のように、収容庫104の側方への発光を担う2つの第1発光部12,12が配置される例も、上述の各実施形態の変形例として採用され得る。さらに、上述の各実施形態では表示灯が最大で3つの第2発光部13を備えていたが、第2発光部の数は、4つ以上であっても良い。正面視における視認性の向上の観点から、多数の第2発光部を備えることも好適な一態様である。
【0055】
また、上述の各実施形態では扉部102が一様な平面を有していたが、扉部102の代わりに、図15に示す、本願出願人が特開2010−178931において提案した移動式消火設備200の扉部204が採用されても、上述の各実施形態の表示灯の効果は実質的に妨げられない。この移動式消火設備200は、従来の移動式消火設備が備える器具に加えて可搬式消火器も収容される。したがって、移動式消火設備200の扉部204は、平面領域に加えて、可搬式消火器を収容する収容部208が有する曲面領域も備えている。このような消火設備が上述の各実施形態の表示灯を備えることも、他の変形例としての一態様である。
【0056】
また、上述の各実施形態では、遮光体14又は遮光部16c,17cが切れ目のないドーナツ状に形成されていたが、その形状に限定されない。例えば、遮光体14又は遮光部16c,17cが、図16に示す表示灯94のように、一部が切れているドーナツ形状であっても上述の各実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。但し、その遮光性を十分に発揮させるためには、図16の例で言えば、第1発光部12・・・12が配置された位置を中心に、20°以上の領域(図16のαの角度、但し、図中の破線は説明の便宜上のもの。)で遮光体14又は遮光部16c,17cが形成されることが好ましい。
【0057】
加えて、上述の各実施形態では、第1発光部12及び第2発光部13としてLEDが採用されているが、発光装置はLEDに限定されない。例えば、公知の電球であっても、上述の各実施形態に適用され得る。しかしながら、長寿命、チラつきの無さ、及び低発熱性といった多くの利点を備えるLEDを採用することが非常に好ましい。
【0058】
さらに、上述の各実施形態では、表示灯が移動式消火設備の収容庫に適用される例を示してきたが、各実施形態の表示灯の適用例はこれに限定されない。例えば、消火設備でいえば、消火栓の収容庫や、屋内の代替消火栓としての、いわゆるパッケージ型の消火設備の収容庫に適用されることも、他の好ましい一態様である。なお、上述の各実施形態の表示灯は、特に消火設備に適したものではあるが、消火設備以外の収容庫にも適用されることにより、上述の各実施形態の効果が奏され得る。
【0059】
なお、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の表示灯及び表示方法は、特定物の存在及びその位置を周囲の人に確度高く知らせることができ、その輸送や運搬コストの低減を実現できため、非常に有用である。特に、本発明の表示灯及び表示方法が消火設備に適用されることは、消火設備の緊急性に代表される当該設備に対する社会的要請を踏まえると、極めて有用である。
【符号の説明】
【0061】
11,11a 基板
12,12z 第1発光部
12a 端子
13 第2発光部
14 遮光体
15,15a 本体部
16,17 蓋体
16a 透光部
16b 遮光部
17a 曲面領域
17b 平坦領域
18 端子台
19 反射面
10,20,30,40,50,60,70,80,90,92,94 表示灯
100,200 移動式消火設備
104 収容庫
106 把手
204 扉部
208 収容部
812 LED
812b ミラー
900 消火設備
910 従来の表示灯


【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容庫における前面の平面領域が備える表示灯であって、
前記収容庫の側方を含む前記平面領域に略平行な方向に向かうとともに互いに異なる方向に向いて発光する複数の第1発光部と、
前記平面領域に略垂直な方向に向いて発光する1つ又は複数の第2発光部と、
前記平面領域から1mm以上15mm以下の長さが突出する、前記第1発光部及び前記第2発光部を覆う透光性の蓋体と、
前記第1発光部からの発光を正面視において遮光する遮光体と、を備える、
表示灯。
【請求項2】
収容庫における前面の平面領域が備える表示灯であって、
前記収容庫の側方を含む前記平面領域に略平行な方向に向かうとともに互いに異なる方向に向いて発光する複数の第1発光部と、
前記平面領域に略垂直な方向に向いて発光する1つ又は複数の第2発光部と、
前記平面領域から1mm以上15mm以下の長さが突出する、前記第1発光部及び前記第2発光部を覆う蓋体と、を備え、
正面視において前記蓋体が備える遮光部によって前記第1発光部からの光が遮光され、かつ、正面視において前記蓋体が備える透光部を前記第2発光部からの光が通過する、
表示灯。
【請求項3】
前記蓋体が、前記平面領域からの突出長さが15mm以下の略球面又は楕球面の一部の凸部を備える、
請求項1又は請求項2に記載の表示灯。
【請求項4】
前記第2発光部が配置された基板の前記蓋体に対向する面が、光反射面をさらに備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表示灯。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の表示灯を備える
消火設備。
【請求項6】
収容庫における前面の平面領域が備える表示灯による表示方法であって、
前記収容庫の側方を含む前記平面領域に略平行な方向に向かうとともに互いに異なる方向に向いた複数の第1発光部を、正面視において遮光するように、前記平面領域から1mm以上15mm以下の長さが突出させた蓋体を介して発光させ、かつ
前記蓋体を介して、前記平面領域に略垂直な方向に向いて1つ又は複数の第2発光部を発光させる、
表示方法。
【請求項7】
前記蓋体が、前記平面領域からの突出長さが15mm以下の略球面又は楕球面の一部の凸部を備える、
請求項6に記載の表示方法。
【請求項8】
前記第2発光部が配置された基板の前記蓋体に対向する面により、前記第2発光部からの光を反射させる、
請求項6又は請求項7に記載の表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−98486(P2012−98486A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245807(P2010−245807)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(391008320)株式会社初田製作所 (78)
【Fターム(参考)】