説明

表示素子およびそれを用いた表示装置

光源と、光源から出射された光を伝播させる導波路とを備え、導波路中を伝播している光を導波路側面より外部へ取り出す表示素子であって、導波路側面の形状を変化させることで、光を導波路側面から導波路外部へ取り出す表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、導波路を伝播する光を導波路側面から取り出すことにより表示を行う表示素子およびそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
導波路中を伝播する光を導波路の側面から取り出す表示装置は、例えば、特開平7−287176号公報(特に、第6〜第7頁および図1〜図20)や、特開平11−202222号公報(特に、第3〜第4頁、段落(0010)および図2)に開示されている。これらの表示装置は、光取り出し部に接続されている、セラミックの圧電体膜からなるアクチュエータ部を備えている。アクチュエータ部に電圧を印加することで、アクチュエータ部の静止と変位を行い、光取り出し部を光導波路に接触または離隔して、光導波路の側面からの漏光を制御して取り出す。
上述の方式を用いて、大型表示パネルとして表示装置が実用化されている。商品化されたものが、例えば、「セラムビジョン、セラムボードのカタログ、〔平成14年7月25日検索〕、インターネット<http://www.ngk.co.jp/ELE/product/07/index.html>(第5頁左下欄)」に記載されている。
従来のディスプレイにおいては、導波路と光取り出し部とを光の波長以下の距離で接触させることにより、導波路内を全反射して伝播していた光を導波路の側面から外へ漏光させる。つまり、いわゆるエバネッセント波を取り出すものである(特に、特開平7−287176号公報の段落(0009)および特開平11−202222号公報の請求項1参照)。つまり、特開平7−287176号公報の図1および図4などに示されているように、平板状の導波路に、変位伝達部(光取り出し部)のフラットな表面が接触するか否かで導波路側面からの光の取り出しを制御する。
また、特開平11−202222号公報の図3には、全反射面で全反射している光のエバネッセント光を、全反射面に近接させた抽出面で抽出する際の、光の透過率が示されている。これによると、全反射面への入射角が50°〜80°の場合の光において、全反射面と抽出面との距離が0.1〜0.05μmで、透過率が50%程度になることが示されている。
また、例えば、「X.Zhou、E.Gulari、“Waveguide Panel Display Using Electromechanical Spatial Modulators”、SID98 DIGEST、1022頁〜1025頁、1998年」には、アクチュエータ部として、ポリイミドのフィルムに金属電極膜を形成した静電アクチュエータを用い、LEDを光源とした表示装置が開示されている。この表示装置は、光取り出し部の幅が0.23mmに対して、導波路の厚みが0.5mmである。また、導波路の表面はITO膜で、これと接する光取り出し部の表面には、ポリイミドに散乱性を与える二酸化チタン粒子を混ぜた膜を電極上に形成したものが形成されており、この膜はポリイミドより硬い複合素材となっている。
上述の従来の表示装置では、導波路中を伝播する光の導波路から取り出す効率が低い。さらに、光取り出し部を導波路へ押し付ける圧力が大きくないと、取り出された光の明るさが不十分であり、かつ不均一であった。
【発明の開示】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、導波路中を伝播する光を導波路の側面から高効率で取り出すことのできる表示素子および表示装置を提供することを目的とする。
本発明の表示素子は、光源と、前記光源から出射された光を伝播させる導波路とを備え、導波路中を伝播している光を導波路側面より外部へ取り出す表示素子であって、前記導波路側面の形状を変化させることで、前記光を前記導波路側面から前記導波路外部へ取り出すことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態1に係る表示素子の構成を示す断面図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る表示装置の構成を示す斜視図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係る表示装置の構成を示すブロック図である。
図4は、本発明の実施の形態2に係る表示素子の構成を示す断面図である。
図5は、本発明の実施の形態3に係る表示素子の構成を示す断面図である。
図6は、本発明の実施の形態3に係る表示装置の構成を示す斜視図である。
図7は、本発明の実施の形態3に係る表示装置の構成を示すブロック図である。
図8は、本発明の実施の形態4に係る表示素子の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の表示装置は、導波路側面の形状を変化させることで、導波路中を伝播している光を導波路側面から取り出すので、伝播している光を高効率で取り出すことができる。それにより、明るく、均一な表示が可能である。
また、好ましくは、前記導波路の形状を変形させる複数のアクチュエータをさらに備え、前記アクチュエータを選択的に動作させることにより、前記導波路側面の形状を変化させて、前記光を前記導波路側面から前記導波路外部へ取り出す。それにより、導波路中を伝播している光を高効率で取り出すことができる。
また、好ましくは、前記導波路は、コアおよび前記コアの一つの側面に沿って形成されたクラッドを備え、前記アクチュエータは、前記クラッドに貼付されていて、前記アクチュエータの変形により、前記導波路側面の形状を変化させる。それにより、導波路中を伝播している光を高効率で取り出すことができる。
また、好ましくは、前記導波路の、少なくともコアの一部が変形することで、前記光を導波路外部へ取り出す。それにより、確実に光を取り出すことができる。
また、好ましくは、前記アクチュエータは、前記導波路側面に貼付されていて、前記アクチュエータの変形により、前記導波路側面の形状を変化させる。それにより、容易に光を取り出すことができる。
また、好ましくは、前記アクチュエータは、圧電素子を含み、前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子を変形させて、前記導波路側面の形状を変化させる。それにより、高速に動作するアクチュエータを形成できるので、高精度の画像表示にも対応できる。
また、好ましくは、前記アクチュエータは、前記導波路側面に設置された第1電極膜と、前記電極膜に積層された圧電素子と、前記圧電素子に積層された第2電極膜とを備え、前記導波路側面に設置された前記第1電極膜と前記圧電素子に積層された前記第2電極膜との間に電圧を印加することにより、前記圧電素子を変形させて、前記導波路側面の形状を変化させる。それにより、小さな外力で、高効率な光の取り出しができる。
また、好ましくは、前記アクチュエータは凸部を備え、前記導波路の側面を前記凸部で押圧することにより、前記導波路側面の形状を変化させる。それにより、容易に高効率な光の取り出しができる。
また、前記アクチュエータは、前記導波路側面に設置された電極膜と、前記導波路に対向して、近接している外部電極膜とを備え、前記外部電極膜と前記電極膜との間に電圧を印加することにより生じる静電力により、前記導波路側面の形状を変化させる。それにより、容易に高効率な光の取り出しができる。
前記外部電極膜は、前記導波路側面側に凸部を有し、前記静電力により、前記外部電極膜の前記凸部が、前記導波路側面を押圧することで、前記導波路の形状を変化させる。それにより、高速に動作するアクチュエータを形成できるので、高精度の画像表示にも対応できる。
また、好ましくは、前記導波路の、少なくともコアの一部が変形することで、前記光を導波路外部へ取り出す。それにより、確実に光を取り出すことができる。
また、好ましくは、前記導波路の少なくとも一部が弾性体からなる。それにより、小さな外力で高効率な光の取り出しが可能である。
また、好ましくは、前記導波路の少なくとも一部が透明なゲルからなる。それにより、小さな外力で高効率な光の取り出しが可能である。
また、好ましくは、前記アクチュエータが画素ごとに形成されている。それにより、アクティブマトリクスによる表示が可能である。
また、好ましくは、前記導波路は、その側面に導波路電極膜を備え、前記導波路電極膜に対向する対向電極膜と、前記導波路電極膜と前記対向電極膜間に配置された微粒子とを備え、前記導波路電極膜と前記対向電極膜との間に電圧を印加することで、前記微粒子を前記導波路電極膜に接触させて、前記光を前記導波路側面から前記導波路外部へ取り出すことができる構成である。このような構成であるため、前記微粒子を前記導波路電極膜に接触させることにより、前記微粒子と前記導波路とを一体化させることができ、前記導波路側面の形状を変化させて、前記光を前記導波路側面から前記導波路外部へ取り出すことができる。それにより、より均一で小さい圧力をかけるだけで、高効率な光の取り出しが可能である。
また、好ましくは、前記導波路の、少なくともコアの一部が変形することで、前記光を導波路外部へ取り出す。それにより、確実に光を取り出すことができる。
また、好ましくは、前記微粒子は帯電している。それにより、微粒子を静電力で制御することができるので、容易に制御することができる。
また、好ましくは、前記微粒子は磁性を有している。それにより、微粒子を静電力で制御することができるので、容易に制御することができる。
また、好ましくは、前記導波路電極膜の表面張力と前記微粒子表面の表面張力とが互いに異なる。それにより、導波路電極膜に微粒子が接触しやすくなる。そのため、低電圧で微粒子の接触および非接触を制御できる。
また、前記導波路電極膜には、塗布材料が塗布されている。それにより、導波路電極膜に微粒子が接触しやすくなる。そのため、低電圧で微粒子の接触および非接触を制御できる。
また、好ましくは、前記導波路電極膜および前記対向電極膜が、画素ごとに設けられている。それにより、アクティブマトリクスによる表示が可能である。
また、前記微粒子は、蛍光性を有している。それにより、光源からの光の波長を変えることで、様々な波長の光を取り出すことができる。
また、前記光源は、紫外光を発光する。それにより、光源が1種類のLEDであっても、RGB表示をすることが可能である。
また、前記光源は、3色LEDまたは3色レーザである。それにより、導波路の数を減らすことができる。
また、本実施の形態の表示装置は、好ましくは、上記の表示素子と、前記光源を駆動させる前記光源駆動回路と、前記アクチュエータを駆動させるアクチュエータ駆動回路と、前記光源駆動回路および前記アクチュエータ駆動回路を制御する制御回路とを備えている。それにより、低電力化、高輝度化および均一表示が可能な表示装置が実現される。
また、好ましくは、上記の表示素子と、前記光源を駆動させる前記光源駆動回路と、前記導波路電極膜と前記対向電極膜との間に電圧を印加する微粒子駆動回路と、前記光源駆動回路および微粒子駆動回路を制御する制御回路とを備えている。それにより、低電力化、高輝度化および均一表示が可能な表示装置が実現される。
また、好ましくは、上記の表示素子と、前記各アクチュエータをそれぞれ制御するアクティブマトリクス素子とを備えている。それにより、アクティブマトリクスによる表示装置が実現される。
また、好ましくは、上記の表示素子と、前記各導波路電極膜と前記各対向電極膜間の電圧をそれぞれ制御するアクティブマトリクス素子とを備えている。それにより、アクティブマトリクスによる表示装置が実現される。
また、前記アクティブマトリクス素子は、TFTまたはTFDとすればよい。
以下、本発明の実施形態のさらに具体的な例について図を用いて説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態に係る表示素子および表示装置について図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る表示素子1の構成を示す断面図である。実施の形態1の表示素子1は、光源2と、光源2から出射された光を伝播させる導波路3と、導波路3の形状を変形させる複数のアクチュエータ4とを備えている。
導波路3は、光が伝播するコア3aとクラッド3bとを備えている。クラッド3bは、コア3aの一方の面に沿って設置されている。クラッド3bの逆側の面にはクラッドは設置されていず、空気がクラッドとなっている。光が伝播するコア3aとしては、例えば、非常に柔らかい素材であるシリコーンゲルの100μm厚のシートを用いればよい。クラッド3bとしては、例えば、屈折率の低い透明なフッ素系ポリマーを用いればよい。コア3aは10μmの厚みのクラッド3bでコートされている。
光源2は、導波路3の端部に設置されていて、光源2から出射された光が導波路3に結合するような向きに、光源2が設置されている。光源2としては、例えば、3色LEDを用いることが好ましい。3色LEDは、RGB3色のLEDチップが1つのランプに収納された構造で、各々の色を独立に制御できる。LCDやPDPを用いた従来のフラットパネルディスプレイにおいては、RGB3色の画素はストライプ状に分離されていた。しかし、実施の形態1のように、3色LEDを用いることで、一本の導波路3にRGB3色の光を入射させることができるため、一本の導波路3にRGB3色のいずれかを発光させることができる。なお、光源2からの光が、導波路3が薄い場合でも入射しやすいように、導波路3の入射個所にプリズム2aを設置し、光学的に結合させることが好ましい。
アクチュエータ4は、圧電素子4aと、圧電素子4aのそれぞれ対向する面に設置された電極膜4bおよび電極膜4cとを備えている。アクチュエータ4は、導波路3のクラッド3b側の側面に貼付されている。圧電素子4aは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)とし、その両面に、例えば銀ペーストを塗布することで、複数の電極膜4bおよび電極膜4cを形成すればよい。アクチュエータ4は導波路3の側面つまりクラッド3bに粘着剤で貼付されている。各電極膜4bは、幅70μmであり、ピッチ90μmのストライプ状に形成されている。なお、このストライプは、図1において紙面に対して垂直な方向に伸びる形状である。このうち、電極膜4bが4本のストライプで1つのアクチュエータ4が構成されている。また、電極膜4bに対向する電極膜4cは導波路3に対して一様に広がるベタ塗りであって、複数のアクチュエータ4に対して共通化されている。
図1に示している表示素子1の導波路3の側面から光を取り出す方法について説明する。導波路3に設置されたアクチュエータ4の4本のストライプである電極膜4bに、交互に正と負の電圧を印加する。それにより、正の電圧が印加した電極膜4bが設置されている個所の圧電フィルム4aが縮み、負の電圧が印加した電極膜4bが設置されている個所の圧電フィルム4aが伸びる。クラッド3bの長さは一定であり変化しないため、図1に示しているようにアクチュエータ4が、交互に上に凸および下に凸となりうねる。つまり、アクチュエータ4が波状になる。それにより、クラッド3bもアクチュエータ4と同一形状に変形し、コア3aのクラッド3b側の表面も変形する。
電圧が無印加の場合は、クラッド3bと圧電フィルム4aの長さが同じであるため、アクチュエータ4は平面形状である。
このように、電極膜4bおよび電極膜4c間に印加する電圧を選択的に制御することで、導波路3の側面の形状を変化させることができる。
導波路3には、光源2から出射された所望の色の光が伝播している。ここで、電圧を選択的に印加することで、導波路3において、コア3aのクラッド3b側の表面の所望の個所に凹凸を発生させると、導波路3中を伝播してきた光のうち例えば、一点鎖線で表した光2cは、コア3a表面の角度が変化しているため、全反射したのち導波路3の側面(導波路3のアクチュエータ4が設置されていない側)から導波路3外部に出射される。また他の破線で表した光2bは、導波路3が変形していることにより、コア3aおよびクラッド3bを透過して、銀である電極膜4cで反射することにより、散乱反射して導波路3の側面導波路3外部に出射される。
このようにして、電圧の印加を制御し、導波路3に入射する光源2からの出射光の色を制御することで、表示素子1の導波路3の側面(表示面1a)から所望位置および所望の色の光を取り出して、表示することができる。
また、アクチュエータ4への印加電圧が大きいほど導波路3の変形が大きくなる。測定によると、印加電圧をゼロから徐々に大きくするにつれて取り出し光の輝度増加が認められた。印加電圧が±30ボルト程度で輝度は飽和し、導波路3に入射させた光源2からの光の80%以上を外部へ取り出すことができた。
光源2としては出射光の指向性が高いものが、効率よく光を取り出すためには好ましい。図1の表示面1aにおいて、導波路3において、コア3aと空気との界面での全反射角は約60°である。したがって、導波路3中を伝播している光の、表示面1aの法線に対する角度(入射角)が臨界角である41.8°より小さい場合は、光は導波路3から漏れる。逆に入射角が大きくなり、光の進行方向が導波路3に平行に近づくと、コア3a中では全反射を繰り返し、その全反射個所同士の間隔が非常に大きくなり、光を取り出したい個所を飛び越してしまい、効率の低下および輝度ムラの発生を招く。
これらの理由から、光源2から出射される光の導波路3への入射角は臨界角41.8°より大きいが、なるべく臨界角41.8°に近い角度にある、指向性の高い光が好ましい。例えば、光源2がLEDの場合は、モールドするレンズの形状によって指向性を変えることができるので、3色LEDである光源2の出射光角度分布の半値幅を約10°とした。
なお、LED以外の光源2を使うことも可能である。例えば、有機ELパネルにマイクロレンズアレイを付けることで指向性を上げた光源2を用いてもよいし、半導体レーザを光源2として用いることも可能である。
また、導波路3の厚みは厚すぎると、導波路3中を伝播する光が表示面1a(導波路3および空気界面)で全反射を繰り返し、その全反射個所同士の間隔が非常に大きくなる。そのため、伝播光がアクチュエータ4の設置個所(画素)を飛び越えてしまい、取り出すことができない光線が生じる。そのため、導波路3の厚みは厚すぎないほうが好ましい。
具体的には、図1において、導波路3の厚みDは、アクチュエータ4による導波路3の変形部分の長さL(導波路3中の光の伝播方向におけるアクチュエータ4の長さ)の1/2以下とするのが取り出し効率の点から好ましい。
導波路3の厚みは、画素数と表示画面のサイズにより決まる。アクチュエータ4による導波路3の変形部分の長さLは、表示素子1において、一つの画素の横方向の長さ(導波路3中の光の伝播方向)にあたる。例えば、以下で説明する表示素子1を用いた表示装置100が、その表示サイズが60インチから100インチのHDTVであるとする。その場合、例えば、一つの画素の大きさは、縦230.6μm×横691.8μm〜縦384.3μm×横1153μm程度である。なお、縦は導波路3中の光の伝播方向に対して垂直方向の長さであり、横は導波路3中の光の伝播方向の長さである。このときの導波路3の厚みDは、345.9μm以下〜576.5μm以下が望ましい。導波路3の厚みDは、アクチュエータ4による導波路3の変形部分の長さL(導波路3中の光の伝播方向におけるアクチュエータ4の長さ)の1/2以下が望ましい。
一方、導波路3の厚みが薄すぎると、導波路3で伝播できる光の角度が限定され、伝播光がシングルモードに近づくため、伝播する光量が減少する。また、導波路3の厚みが薄すぎると光が入射しにくくなる。そのため、コア3aの厚みは、少なくとも30μm以上であることが望ましい。
図2を用いて、実施の形態1に係る表示装置100について説明する。図2は、実施の形態1に係る表示装置100の構成を示す斜視図である。上述の表示素子1を、導波路3中の光の伝播方向に対して垂直であって、各表示素子1の表示面1aが同一面上にあるように複数並べることで、表示装置100を構成することができる。図2に示しているように、実施の形態1の表示装置100において、表示素子1の導波路3は、画面の列方向(X方向)にn列並んで配置されている。なお、nは自然数である。各導波路3の端部には、それぞれ光源2が配置されていて、各導波路3には、アクチュエータ4が導波路3の伸びている方向である行方向(Y方向)に、m行分配置されている。この表示装置100の画素数は、n×m個である。
実施の形態1の表示装置100は、線順次にアクチュエータ4を動作させて導波路3の側面を変形させ、全反射により導波路3中を伝わる光の反射する方向を変えることにより光を導波路3内から取り出し、表示面1aから出射させる。
このような構成の表示装置100は、表示画面(XY面)の列方向に伸びた各々の導波路3に対応する光源2である3色LEDの各色チップへの印加電圧を、電極膜4bと電極膜4cとで取り出しを選択した行と交差する画素の色、輝度情報に基づいて制御することにより、任意の画像を表示することができる。
実施の形態1の表示装置100の構成を示すブロック図を図3に示している。図3は、表示装置100を実際に作動させるための具体的な構造である。表示装置100は、上述した以外に各光源2を駆動させる光源駆動回路50と、各電極膜4bおよび4cに電圧を印加してアクチュエータ4を動作させるアクチュエータ駆動回路51と、これらの回路を同期させて、信号を入力し画像を表示させる制御回路52とを備えている。制御回路52は、アクチュエータ駆動回路51で選択した行の画素のRGB各色の輝度情報を、光源駆動回路50のドライバーLSIに入力し、光源駆動回路50は輝度情報に応じた印加電圧を光源2に入力することで、フルカラーの画像表示が可能となる。
光源2として、3色LEDを用いたので、1本の導波路3に3色の光を入射させることができる。それにより、1つの表示素子1つまり、1行で3色の光を表示することができる。液晶やPDPなどの従来の表示装置では、画素はRGBの3原色のサブピクセル3つから構成されていた。しかし、実施の形態1の導波路3を用いた表示装置では、列方向に伸びた導波路3は必ずしも色毎に分ける必要はなく、1本の導波路3に3原色を入射することができるので、導波路3(表示素子1)の数を減らすことができ、コスト低減の効果がある。
表示装置100の各表示素子1において、アクチュエータ4に±30Vの電圧を順次印加していくことで、面状に均一な明るい表示が確認できた。従来のエバネッセント波により光を取り出す構成では、クリーンルームでも多数存在するサブミクロンサイズの埃の影響などで、導波路と光取り出し面の距離をゼロにすることはできなかった。そのため、かなりの圧力で導波路に光取り出し面を押し付けても、高い取り出し効率を得ることは容易でなかった。
しかし、実施の形態1の表示装置100の各表示素子1では柔らかい導波路を用いることにより、小さな外力で導波路の変形を生じさせて、導波路中を伝播する光の反射方向を変えることにより、光を取り出す。そのため、エバネッセント波を取り出すよりも、高い取り出し効率を得ることができた。
また、アクチュエータ4に圧電素子を用いているので、高速動作が可能である。そのため、高速の走査が可能であり、高精細の画像表示にも対応できる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る表示素子11について、図4を用いて説明する。実施の形態2の表示素子11と、実施の形態1の表示素子1とは、アクチュエータが異なる。それ以外の構成は略同一であるので、同一の機能を有する部材には同一符号を付し、説明を省略する。
図4に示しているように、実施の形態2の表示素子11は、光源2と、光源2から出射された光を伝播させる導波路3と、導波路3を変形させるアクチュエータ14とを備えている。光源2および導波路3は、実施の形態1の表示素子1と同一である。光源2は例えば3色LEDであって、光源2から出射された光は導波路3を伝播する。導波路3は、コア3aとクラッド3bを備えていて、クラッド3bの反対側は、コア3aが露出しているいので、空気がクラッドとなる。なお、実施の形態2においては、コア3aはシリコーンゲル材料からなる厚み100μmの平板とし、クラッド3bは透明フッ素系樹脂とし、膜厚5μmとした。
アクチュエータ14は、導波路3側面に設置された電極膜14aと、電極膜14aに塗布された例えば厚さ0.1μmのポリカーボネートの絶縁薄膜14bと、絶縁薄膜14bと対向して設置された厚さ0.15mmのPETフィルムからなる基板14dと、基板14d上の絶縁薄膜14b側に形成された凹凸形状を有する外部電極膜14cとを有する。凹凸形状を有する外部電極膜14cは、基板14d上に複数あり、外部電極膜14cごとに1つのアクチュエータ14が構成されている。電極膜14aは、導波路3(クラッド3b)全面に形成され、各アクチュエータ14に対して共通である。
上記導波路3とアクチュエータ14の作製方法は、例えば、コア3aにクラッド3bをコートし、さらに、クラッド3b表面にスクリーン印刷で例えば銀ペーストを塗布して電極膜14aを形成する。さらに電極膜14a上にポリカーボネートを塗布して絶縁薄膜14bを形成する。また、厚さ0.15mmのPETフィルムからなる基板14dの表面に、鋸歯状の凹凸部14eをストライプ状にプレス成形により形成する。凹凸部14eは、例えば、断面が深さが3μmで、ピッチが30μmとする。この凹凸部14e上にアルミ蒸着を施し、例えば、アルミである外部電極膜14cを形成した。最後に、この基板14dと導波路3とが対向するように配置した。
このような構成の表示素子11の動作について説明する。
電極膜14aと電極膜14bとの間に電圧を印加しない場合、図4に示した表示素子11の両端部のように、凹凸形状の外部電極膜14cの凸部と絶縁薄膜14dとが接しているだけである。そのため、導波路3の側面は平面である。しかし、電極膜14aと外部電極膜14cとの間に電圧を印加することで、これらの間に静電力が生じ、お互いに吸引し合う。それにより、図4に示した表示素子11の中央部のように、電極膜14aと外部電極膜14cとがくっつき合い、電極膜14aが外部電極膜14cと同様な凹凸形状に変形する。また、電極膜14aは、導波路3と密着しているので、クラッド3bおよびコア3aの表面が外部電極膜14cと同様な凹凸形状に変形する。つまり、導波路3の側面が変形する。なお、コア3aは特に柔らかいので大きく変形する。これにより、導波路3中を全反射しながら伝播している光を、導波路3の側面から外部に取り出すことができる。導波路3中をコア3aの表面で全反射しながら伝播している光12cを、導波路3の一方の側面を変形させることで、実施の形態1と同様に、導波路3の他方の側面から外部に漏らすことができる。
つまり、コア3a表面の所望の個所が凹凸形状に変形すると、導波路3中を伝播してきた光のうち例えば、一点鎖線で表した光12cは、コア3a表面の角度が変化しているため、全反射したのち導波路3の側面(導波路3のアクチュエータ4が設置されていない側)から導波路3外部に出射される。また、例えば、コア3aおよびクラッド3bを透過して、銀である電極膜14aで反射することにより、散乱反射して導波路3の側面導波路3外部に出射される光もある。
このようにして、電圧の印加を制御し、導波路3に入射する光源2からの出射光の色を制御することで、表示素子1の導波路3の側面(表示面1a)から所望位置および所望の色の光を取り出して、表示することができる。
実際に、3色LEDの光源2から光を導波路3に入射し、電極膜14aと外部電極膜14cとの間に選択電圧として+10ボルトを印加し、非選択個所には0ボルトを印加して、線順次走査を行うと、導波路3の側面(表示面1a)から均一で明るい表示が得られた。低電圧でも、光源2の入射光をほぼ完全に外部で取り出すことが可能となり、電力効率の高い表示素子1を実現できた。
図4の表示素子11を、図2に示したように、導波路3中の光の伝播方向に対して垂直であって、各表示素子11の表示面1aが同一面上にあるように複数並べることで、表示装置100と同様に、表示装置を構成することができる。表示素子11を画面の列方向にn列並べて配置し、アクチュエータ14が導波路3の伸びている方向(行方向)に、m行分配置されている場合の画素数は、n×m個である。
導波路3の側面(表示面1a)から取り出して、画像表示を行う方法は、実施の形態1の表示装置100と同様であるので、説明を省略する。実施の形態1の表示装置と実施の形態2の表示装置とは、アクチュエータの構造が異なるだけで、他の構造はほぼ同一である。
また、実施の形態2の表示装置を実際に作動させるためには、図3に示しているように、各光源2を駆動させる光源駆動回路50と、各電極膜14aおよび14cに電圧を印加してアクチュエータ14を動作させるアクチュエータ駆動回路51と、これらの回路を同期させて、信号を入力し画像を表示させる制御回路52とを備えればよい。
従来のXYマトリクス型平面表示素子は、行電極と列電極間に光変調媒体を挟む為に、クロストーク現象が発生したりして大型化しにくかった。しかし、実施の形態1および2の表示装置では、行側、及び列側の駆動回路に電気的な繋がりがないので、クロストーク現象は本質的に発生せず、しかも構成が簡易なため、大型化が容易である。しかも、高温プロセスが必要なITOを特に設ける必要がなく、簡易な構造であるため、フィルムのような薄いフレキシブルな表示装置を実現できる。また、光源としてLEDのような発光効率の高いものを用いたので、高い光取り出し効率を、低電力のアクチュエータで実現できるため、消費電力も低くすることが可能である。
以上のように、実施の形態1および2の表示素子および表示装置は、柔らかい導波路を用いることにより、壁に掛けるまたは貼れるような大画面、薄型で、かつ発光効率の高い低消費電力の画期的なディスプレイを実現することができる。
なお、実施の形態1および2では、導波路3のコア3aをシリコーンゲルとした例を記載したが、容易に変形する、いわゆるゴム状弾性を示す透明な素材、例えば、ウレタン系などのゴムでも同様に効果がある。コア3aとしては、ヤング率で10N/m台より小さい素材がよい。
また、実施の形態1および2では、コア3a全体を同一の素材で構成したが、導波路3のコア3a表面が変形しやすければよいので、例えば、導波路3の表側を通常のプラスチックなどの硬い素材で構成し、変形する個所にのみ柔らかい層を設ける積層構造としてもよい。また、クラッド3bを設けずコア3aのみで構成し、両側のクラッドが空気である導波路3を用いてもよい。また、ハンドリングしやすいようにコア3aの両面にクラッドが設けられた導波路3としてもよい。
なお、実施の形態1および2では、導波路3は列数分だけ並置し、多数の3色LEDである光源2を並べた単純マトリクス型の表示装置を示したが、光源の種類やアクチュエータの種類、あるいはこれらの配置などの構成はこれらに限定されるわけではない。柔らかい導波路3を変形させることにより低電力で高い取り出し効率を得ることができる構成であればよい。例えば、導波路3を1枚の平板にし、光源2を1つにし、アクチュエータ4または14を画素数分だけXYのマトリクス配置にする構成でもよい。この場合、アクチュエータ4または14を駆動するアクティブ素子を各アクチュエータに付加して、画素毎に駆動し、コアが変形する時間を制御して階調表現すればよい。アクティブ素子としては、TFT(Thin Flat Transistor、薄膜トランジスタ)やTFD(Thin Flat Diode、薄膜ダイオード)を用いればよい。
実施の形態1および2の表示素子および表示装置によれば、導波路3中を伝播する光を導波路の側面から取り出す方式の表示素子および表示装置において、光取り出し効率を向上させて、低消費電力化、高輝度化が可能になり、また表示の均一性が改善される。また、100インチを超えるような大画面でもモバイル向けの小型の画面でも、画面サイズによらずシート状の薄型の表示装置が実現できる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る表示素子について図5を用いて説明する。図5は実施の形態3に係る表示素子21の構成を示す断面図である。図5に示しているように、表示素子21は、光源22と、導波路23と、導波路23に対向する対向電極膜25と、導波路23近傍に配置された微粒子26とを備えている。
導波路23は、光が伝播するコア23aと、クラッド23bと、導波路電極膜23cとを備えている。コア23aには、例えば素材として非常に柔らかい素材であるアクリル樹脂からなる100μm厚のシートを用いている。また、コア23aの片方の表面には、クラッド23bとして屈折率の低い透明なフッ素系ポリマーを10μmの厚みでコートしている。導波路電極膜23cは、ITOであり、コア23aのクラッド23bとは反対側の面に粘着剤で直接貼付されている。クラッド23bは、コア23aの片面にしか設置されておらず、逆の面には、導波路電極膜23cが複数設置されている。導波路電極膜23cはITOであり、導波路23が伸びている方向に沿って複数形成されている。導波路電極膜23cの、導波路23中の光の伝播方向における長さWは、例えば、300μmである。クラッド23bの反対側のクラッドは空気である。また、導波路電極膜23cは、コアの一部であり、導波路23中を伝播する光は、導波路電極膜23cと空気との界面でも全反射する。なお、クラッド23bを設けない構造でもよい。
光源22は導波路23の端部に設置されていて、光源22から出射された光が導波路23に結合するような向きに、光源22は設置されている。導波路23の入射個所にプリズム22aを設置し、光学的に結合させることが好ましい。なお、光源22は、実施の形態1の光源2と同様とすればよく、例えば、3色LEDを用いることが好ましい。
光源22としては指向性が高いものが、導波路23から効率よく光を取り出すことができるために好ましい。導波路23において、コア23aと空気との界面での全反射角は、約60°である。図5の断面図には、導波路23での光の伝播の様子が概念的に示されている。
光源22から出射された破線で表した光22bの導波路23への入射角(表示面21aの法線に対する角度)が、実施の形態3における臨界角である41.8°より小さいと、光22bは導波路23から洩れてしまう。逆に、一点鎖線で表した光22cのように、臨界角41.8°より入射角が大きくなりすぎると、光22cの進路が導波路23と平行に近づく。それにより、コア23aおよび導波路電極膜23c中で全反射を繰り返し、その全反射個所同士の間隔が非常に大きくなり、光を取り出したい個所を飛び越してしまい、効率の低下および輝度ムラの発生を招く。また、特開平7−287176号公報の図3にも記載されているように、エバネッセント波の取り出し率が小さくなり効率が低下する。これらの理由から、光源22から出射される光の導波路23への入射角は臨界角41.8°より大きいが、なるべく臨界角41.8°に近い角度がよく、指向性の高い光源22が好ましい。例えば、光源22がLEDの場合は、モールドするレンズの形状によって指向性を変えることができるので好ましい。そこで、実施の形態3では、出射光角度分布の半値幅を約10°とした3色LEDを光源22を用いている。
なお、光源22としては、LED以外では、有機ELパネルにマイクロレンズアレイを付ける事で指向性を上げものを用いてもよいし、半導体レーザを用いることも可能である。光源22を3色LEDとすることで、1本の導波路23に3色の光を入射させやすくなる。液晶やPDPなどの従来のディスプレイでは、画素はRGBの3原色のサブピクセル3つから構成されていたが、このようにすることで、列方向に伸びた導波路23は必ずしも色毎に分ける必要はなく、1本の導波路23に3原色を入射すれば導波路23の数を減らすことができ、コスト低減の効果がある。
対向電極膜24は導波路23に対向するように設置されている。例えば対向電極膜24はITOであり、アクリル樹脂の基板25上に成膜されている。導波路電極膜23cと対向電極膜24との間隔は、例えば35μmとする。
導波路23近傍には、微粒子26が配置されている。微粒子26は、導波路電極膜23cと対向電極膜24との間に位置し、アクリル樹脂からなり、帯電している。微粒子26の平均粒子径は、例えば、6μmである。導波路電極膜23cと対向電極膜24との間の空間に、充填率が20%となるように微粒子26が充填されている。なお、充填率とは、単位体積当たりの微粒子の占有する体積の比である。微粒子26の占有する体積は、微粒子26の平均粒子径から求めた微粒子一個当たりの体積に、単位体積当たりの微粒子26の個数を乗じることで求めることができる。
例えば、選択する導波路電極膜23cを負とし、対向電極膜24が正となるように70Vの電圧を印加したところ、微粒子26は導波路電極膜23c表面に接触する。それにより、微粒子26と導波路23とが一体化されることになる。つまり、微粒子26が導波路23側面の一部となり、導波路23における導波路電極膜23c側の側面の形状が変化することになる。
導波路23には、光源22から出射された所望の色の光が伝播している。ここで、導波路電極膜23cおよび対向電極膜24に、電圧を選択的に印加することで、導波路23の導波路電極膜23c側の側面の形状が微粒子26により変化する。導波路23の形状が変化することで、伝播状態が変化し、導波路23中を伝播してきた光が、導波路23の導波路側面から外部に漏れ出る。微粒子26の屈折率は、コア23aもしくはクラッド23bの屈折率の近傍とすることで、微粒子26から外部に光を取り出すことができる。例えば、微粒子26の屈折率は、コア23aの屈折率とほぼ等しくなるのが望ましい。
このように、微粒子26と導波路電極膜23cとの接触部分から光が漏れるので、アクリル樹脂の基板25方向に光を取り出すことができるので、基板25を表示画面とすることができる。
一方、電界が逆、すなわち導波路電極膜23cが正で、対向電極膜24が負となるように70Vの電圧を印加すると、微粒子26は導波路電極膜23cから離れる。そのため、導波路23中を伝播している光は漏光として取り出すことができず、そのまま導波路23中を導波するので、表示はされない。
このように、個々の微粒子26が導波路電極膜23cと接触することにより光が導波路23の側面から取り出されるので、接触面積が小さく、従来の平板状の圧電素子のように面内全体での接触が不必要となる。そのため、より均一で小さい圧力を導波路23に与えることができ、さらにその圧力は静電気的に与えられていて、制御が可能である。なお、上述の説明では、帯電した微粒子26を用いたが、他にも、磁性を有する微粒子を用いて、対向電極膜24と導波路電極膜23cとの間において磁界を制御することで、微粒子26の導波路23表面への接触および非接触を制御してもよい。
また、微粒子26として、蛍光色素であるローダミンを含むアクリル樹脂からなる微粒子26を用いてもよい。この際、光源22として、波長520nmの光を出射する緑色LEDを用いて、導波路23の側面からの取り出された光は、波長580nmのオレンジ光であることが観測された。このように、蛍光色素や蛍光体を含有する微粒子26と、これらの蛍光色素や蛍光体の励起波長に対応するLED光源22とを選択して用いることにより、様々な波長の光を取り出すことができる。また、光源22として紫外光LEDを用い、PDPで用いられている蛍光体を微粒子26として用いることにより、単色のLEDを光源22としても、RGBを表示することが可能である。
図6を用いて、実施の形態3に係る表示装置300について説明する。図6は、実施の形態3に係る表示装置300の構成を示す斜視図である。上述の表示素子21を、導波路23中の光の伝播方向に対して垂直であるように複数並べることで、表示装置300を構成することができる。図6に示しているように、実施の形態3の表示装置300において、表示素子21の導波路23は、画面の列方向(X方向)にn列並んで配置されている。なお、nは自然数である。導波路23の端部には、それぞれ光源22が配置されている。導波路23の側面には、導波路電極膜23cが導波路23の伸びている行方向(Y方向)に、m行分配置されている。各表示素子21の対向電極膜24は共通とし、すべての表示素子24の導波路23を覆うように設置されている。また、導波路電極膜23cも同一行については、各導波路23対して共通としその行を覆うように設置されている。この表示装置300の画素数は、n×m個である。
実施の形態3の表示装置300は、線順次に導波路電極膜23cと対向電極膜24との間に印加する電圧を制御することで導波路電極膜23cに微粒子26を接触または非接触させて、全反射により導波路23中を伝播する光を導波路23の側面から取り出し、対向電極膜24方向へ出射させる。
このような構成の表示装置300は、表示画面(XY面)の列方向に伸びた各々の導波路23に対応する3色LEDの各色チップへの印加電圧を、導波路電極膜23cと対向電極膜24とで取り出しを選択した行と交差する画素の色、輝度情報に基づいて制御することにより、任意の画像を表示することができる。
実施の形態3の表示装置300の構成を示すブロック図を図7に示している。図7は、表示装置300を実際に作動させるための具体的な構造である。表示装置300は、上述した以外に各光源22を駆動させる光源駆動回路60と、導波路電極膜23cおよび対向電極膜24に電圧を印加して微粒子26を導波路電極膜23cに接触あるいは非接触させる微粒子駆動回路61と、これらの回路を同期させて、信号を入力し画像を表示させる制御回路62とを備えている。制御回路62は、微粒子駆動回路61で選択した行の画素のRGB各色の輝度情報を、光源駆動回路60のドライバーLSIに入力し、光源駆動回路60は輝度情報に応じた印加電圧を光源22に入力することで、フルカラーの画像表示が可能となる。
光源22として、3色LEDを用いたので、1本の導波路33に3色の光を入射させることができる。それにより、1つの表示素子21つまり、1行で3色の光を表示することができる。液晶やPDPなどの従来の表示装置では、画素はRGBの3原色のサブピクセル3つから構成されていた。しかし、実施の形態3の導波路23を用いた表示装置では、列方向に伸びた導波路3は必ずしも色毎に分ける必要はなく、1本の導波路23に3原色を入射することができるので、導波路23(表示素子21)の数を減らすことができ、コスト低減の効果がある。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る表示素子31について図8を用いて説明する。実施の形態4に係る表示素子31は実施の形態3に係る表示素子21の導波路23の導波路電極膜23c設置側表面に、表面張力が比較的大きな塗布材料37が塗布されている構成である。塗布材料37の表面張力は、具体的には、50mN/m以上が望ましい。塗布材料37は、コア23aおよび導波路電極膜23cを覆っていて、塗布材料37は、コアの一部であり、導波路23中を伝播する光は、塗布材料37と空気との界面でも全反射する。塗布材料37以外の部材は同一の機能を示すので同一の符号を付し、説明を省略する。
塗布材料37は、例えば、グリセリンであって、表面張力は、63.4mN/mであり、厚さが例えば2μm程度になるように塗布されている。また、微粒子26には表面張力の小さい材料を用いることが好ましい。微粒子26の表面張力は、具体的には、30mN/m以下が望ましい。
例えば、テフロン(登録商標)(表面張力は、18.4mN/m)からなる微粒子26を用いて実際に表示素子31を形成した。微粒子26の平均粒子径は6μmとし、導波路電極膜23cと対向電極膜24と間の空間の微粒子26の充填率を20%とした。選択する行の導波路電極膜23cが負であり、対向電極膜24が正となるように50V電圧を印加した。それにより、微粒子26が導波路電極膜23c表面に接触し、接触部分からの漏光が基板25方向に取り出される。一方、電界が逆、すなわち導波路電極膜23cが正であり、対向電極膜24が負となるように50V電圧を印加する。それにより、微粒子26が導波路電極膜23cの表面から離れるため、光源22から導波路23中を伝播している光を漏光として取り出すことができない。この際に、実施の形態4の表示素子31においては、少ない電圧で、表示または非表示の切り替えができる。これは、塗布材料37であるグリセリンの表面張力が微粒子26であるテフロン(登録商標)の表面張力に比べて充分大きいためである。それにより、微粒子26と塗布材料37との接触面での所謂弾きが大きくなる。弾きとは、微粒子26の表面に塗布材料37が広がらずに、弾かれる物理現象である。つまり、微粒子26と塗布材料37との弾きが大きいほうが、微粒子26と導波路電極膜23cとの接触における反発が大きい。そのために、微粒子26が導波路電極膜23cから離れやすい。したがって、低い電圧で、微粒子26と導波路電極膜23との接触および非接触を制御することができる。
このように、微粒子26とは表面張力の異なる塗布材料37をコア23a表面および導波路電極膜23cに設けたことにより、微粒子26の接触制御に必要な電圧を低下させることができた。なお、微粒子26の表面張力は導波路23(導波路電極膜23c)表面の表面張力と異なればよい。しかし、微粒子26の表面張力が導波路23表面の表面張力よりも小さい構成が一般的である。
図8の表示素子31を、図6に示したように、導波路23中の光の伝播方向に対して垂直であって、各表示素子31の表示面21aが同一面上にあるように複数並べることで、表示装置300と同様に、表示装置を構成することができる。表示素子31を画面の列方向にn列並べて配置し、導波路電極膜23cが導波路3の伸びている方向(行方向)に、m行分配置されている場合の画素数は、n×m個である。
導波路23の側面(表示面21a)から所望の光を取り出して、画像表示を行う方法は、実施の形態3の表示装置300と同様であるので、説明を省略する。実施の形態4の表示装置と実施の形態5の表示装置との異なる点は、導波路23表面に塗布材料37を設置している点であり、他の構造は略同一である。
また、実施の形態4の表示装置を実際に作動させるためには、図7に示しているように、各光源22を駆動させる光源駆動回路60と、導波路電極膜23cおよび対向電極膜24に電圧を印加して微粒子26を導波路電極膜23cに接触あるいは非接触させる微粒子駆動回路61と、これらの回路を同期させて、信号を入力し画像を表示させる制御回路62とを備えればよい。
実施の形態3および4の表示装置では、列方向に伸びた各々の導波路23に対応する光源22である3色LEDの各色チップへの印加電圧を、導波路電極膜23cおよび対向電極膜24で選択した行と交差する画素の色、輝度情報に基づいて制御することにより、任意の画像を表示していた。しかし、光源の種類や配置などの構成はこれらに限定されるわけではない。例えば、導波路電極膜23cおよび対向電極膜24を画素数分だけXYのマトリクス配置にする構成でもよい。この場合は、アクティブ素子を、導波路電極膜23cおよび対向電極膜24に接続し、画素毎に駆動するようにすればよい。アクティブ素子としては、例えば、TFTやTFDを用いればよい。
実施の形態3および4に係る表示素子および表示装置によれば、導波路の端面から光を導入し、光導波路コア表面光を取り出す方式の表示装置において、微粒子の接触を制御することにより、光取り出し効率を向上させて、低消費電力化、高輝度化が可能になる。また、表示の均一性が改善される。実施の形態3および4により、100インチを超えるような大画面でもモバイル向けの小型の画面でも、画面サイズによらずシート状の薄型の表示装置が実現できる。
本発明者は、従来構成として、前述の「X.Zhou、E.Gulari、“Waveguide Panel Display Using Electromechanical Spatial Modulators”、SID98 DIGEST、1022頁〜1025頁、1998年」と同様の構成で導波路から光を取り出す表示装置を作成した。しかし、導波路の厚みが従来のように画素の幅(光の伝播方向の幅)より厚い構成では、輝度が低く、厚みを薄くするほど明るさが増すことに気が付いた。
この理由は上述の、コアと空気との界面で伝播光が全反射を繰り返す導波路において、全反射個所同士の距離が、導波路の厚みに依存しているからである。例えば反射角45°で全反射する場合で全反射個所同士の距離は、導波路の厚みの2倍になる。そのため、少なくとも導波路の厚みを、光の伝播方向の画素の幅の1/2以下にしなければならない。こうしないと、全反射個所同士の距離が画素の幅より大きくなって、反射光が画素を飛び越えてしまい、導波路側面から取り出すことができない。
したがって、実施の形態1〜4の表示素子における導波路の厚みは画素の幅の1/2以下にするのが取り出し効率の点から好ましく、さらには入射光の角度分布を考慮すると、さらに薄い方が望ましい。なお、具体的には、画素の幅とは、実施の形態1および2の表示素子においては、図1および2の電極4および14の導波路3の長手方向の長さであり、実施の形態3および4においては、図5および6の導波路電極膜23c導波路23の長手方向の長さである。
例えば、導波路3および23の厚さを、画素の幅の1/4以下にすると、反射角60°以下の光をも取り出せるようになる。このような導波路に、指向性の高いLEDの光を入射すれば、入射光をほぼ完全に取り出すことができる。一方、導波路3および23の厚みが薄すぎると、導波路3および23で伝播できる光の角度が限定されるシングルモードに近づいてしまう。そのため、伝達できる光量が減少する。さらに、導波路3および23の厚みが薄すぎると、光を入射しにくくなることから、導波路3および23の厚みは少なくとも30μm以上であることが望ましい。
なお、実施の形態1〜4の表示素子の光源2、22は、例えば、3色レーザ(RGB)としてもよい。
【産業上の利用可能性】
本発明の表示素子および表示装置は、大画面でもモバイル向けの小型画面でも、画面サイズによらずシート状の薄型の表示装置に用いられる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から出射された光を伝播させる導波路とを備え、導波路中を伝播している光を導波路側面より外部へ取り出す表示素子であって、
前記導波路側面の形状を変化させることで、前記光を前記導波路側面から前記導波路外部へ取り出すことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記導波路の形状を変形させる複数のアクチュエータをさらに備え、
前記アクチュエータを選択的に動作させることにより、前記導波路側面の形状を変化させて、前記光を前記導波路側面から前記導波路外部へ取り出す、請求の範囲1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記導波路は、コアおよび前記コアの一つの側面に沿って形成されたクラッドを備え、
前記アクチュエータは、前記クラッドに貼付されていて、
前記アクチュエータの変形により、前記導波路側面の形状を変化させる、請求の範囲2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記導波路の、少なくともコアの一部が変形することで、前記光を導波路外部へ取り出す、請求の範囲3に記載の表示素子。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記導波路側面に貼付されていて、
前記アクチュエータの変形により、前記導波路側面の形状を変化させる、請求の範囲2に記載の表示素子。
【請求項6】
前記アクチュエータは、圧電素子を含み、
前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子を変形させて、前記導波路側面の形状を変化させる、請求の範囲2に記載の表示素子。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記導波路側面に設置された第1電極膜と、
前記電極膜に積層された圧電素子と、
前記圧電素子に積層された第2電極膜とを備え、
前記導波路側面に設置された前記第1電極膜と前記圧電素子に積層された前記第2電極膜との間に電圧を印加することにより、前記圧電素子を変形させて、前記導波路側面の形状を変化させる、請求の範囲4に記載の表示素子。
【請求項8】
前記アクチュエータは凸部を備え、
前記導波路の側面を前記凸部で押圧することにより、前記導波路側面の形状を変化させる、請求の範囲2に記載の表示素子。
【請求項9】
前記アクチュエータは、前記導波路側面に設置された電極膜と、
前記導波路に対向して、近接している外部電極膜とを備え、
前記外部電極膜と前記電極膜との間に電圧を印加することにより生じる静電力により、前記導波路側面の形状を変化させる、請求の範囲2に記載の表示素子。
【請求項10】
前記外部電極膜は、前記導波路側面側に凸部を有し、前記静電力により、前記外部電極膜の前記凸部が、前記導波路側面を押圧することで、前記導波路の形状を変化させる、請求の範囲9に記載の表示素子。
【請求項11】
前記導波路の、少なくともコアの一部が変形することで、前記光を導波路外部へ取り出す、請求の範囲2に記載の表示素子。
【請求項12】
前記導波路の少なくとも一部が弾性体からなる、請求の範囲2に記載の表示素子。
【請求項13】
前記導波路の少なくとも一部が透明なゲルからなる、請求の範囲2に記載の表示素子。
【請求項14】
前記アクチュエータが画素ごとに形成されている、請求の範囲2に記載の表示素子。
【請求項15】
前記導波路は、その側面に導波路電極膜を備え、
前記導波路電極膜に対向する対向電極膜と、
前記導波路電極膜と前記対向電極膜間に配置された微粒子とを備え、
前記導波路電極膜と前記対向電極膜との間に電圧を印加することで、前記微粒子を前記導波路電極膜に接触させて、前記微粒子と前記導波路とを一体化させることで、前記導波路側面の形状を変化させて、前記光を前記導波路側面から前記導波路外部へ取り出す、請求の範囲1に記載の表示素子。
【請求項16】
前記導波路の、少なくともコアの一部が変形することで、前記光を導波路外部へ取り出す、請求の範囲15に記載の表示素子。
【請求項17】
前記微粒子は帯電している、請求の範囲15に記載の表示素子。
【請求項18】
前記微粒子は磁性を有している、請求の範囲15に記載の表示素子。
【請求項19】
前記導波路電極膜の表面張力と前記微粒子表面の表面張力とが互いに異なる、請求の範囲15に記載の表示素子。
【請求項20】
前記導波路電極膜には、塗布材料が塗布されている、請求の範囲15に記載の表示素子。
【請求項21】
前記導波路電極膜および前記対向電極膜が、画素ごとに設けられている、請求の範囲15に記載の表示素子。
【請求項22】
前記微粒子は、蛍光性を有している、請求の範囲15に記載の表示素子。
【請求項23】
前記光源は、紫外光を発光する、請求の範囲22に記載の表示素子。
【請求項24】
前記光源は、3色LEDまたは3色レーザである、請求の範囲1から21のいずれかに記載の表示素子。
【請求項25】
請求の範囲2から14のいずれかに記載の表示素子と、
前記光源を駆動させる前記光源駆動回路と、
前記アクチュエータを駆動させるアクチュエータ駆動回路と、
前記光源駆動回路および前記アクチュエータ駆動回路を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項26】
請求の範囲15から23のいずれかに記載の表示素子と、
前記光源を駆動させる前記光源駆動回路と、
前記導波路電極膜と前記対向電極膜との間に電圧を印加する微粒子駆動回路と、
前記光源駆動回路および微粒子駆動回路を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項27】
請求の範囲14に記載の表示素子と、
前記各アクチュエータをそれぞれ制御するアクティブマトリクス素子とを備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項28】
請求の範囲21に記載の表示素子と、
前記各導波路電極膜と前記各対向電極膜間の電圧をそれぞれ制御するアクティブマトリクス素子とを備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項29】
前記アクティブマトリクス素子は、TFTまたはTFDである、請求の範囲27または28に記載の表示装置。

【国際公開番号】WO2004/042449
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【発行日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502151(P2005−502151)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014047
【国際出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】