説明

表示素子及び表示素子の製造方法

【課題】優れた製造安定性を有し、時間経過による表示品質の劣化が少ない表示素子と、その製造方法を提供する。
【解決手段】一対の対向電極間に電解質層を有する表示素子において、該電解質層が白色散乱性の粒子を含有し、該白色散乱性の粒子が樹脂を主成分とした粒子であることを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の表示素子及び表示素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない、いわゆるメモリー性を有する反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低いため白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は駆動電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、エレクトロクロミック表示素子(以下、EC方式と略す)や金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、ED方式と略す)などの電気化学方式が知られている。これらの方式は簡易な素子構成で形成でき、3V以下の低電圧で駆動できるという利点がある。EC方式は、エレクトロクロミック材料の選択によりカラー表示が可能であり、ED方式は、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている。
【0007】
EC方式やED方式を反射型表示素子として使う場合には、白色を呈するために白色顔料を使用することが知られている。白色顔料は、電解質層内に分散されたり、白色散乱層(反射層)として設けられたりして使用される。(例えば、特許文献1から4参照。)。このような白色顔料としては、酸化チタン等の金属酸化物粒子が好適に用いられているが、そのような顔料の使用には、以下のような問題があった。すなわち、これら金属酸化物粒子をはじめとする白色顔料を電解質に分散して使用する場合には、本発明のような電気化学表示を行う電解質液を構成する他の成分に対して比重が高いため、(1)電解質液調合後の時間経過により白色顔料のみが沈降してしまい、表示素子形成のために再分散が必要になる、(2)表示素子形成を注入法で行う場合に特に顔料粒子のみ残され、必要量が素子内に入らない、(3)表示素子形成後、時間経過により表示素子内で白色顔料が沈降し、白地のムラが生じる、という問題があるのである。
【0008】
顔料粒子を白色散乱層として形成する場合には、これらの問題はなくなるが、白色散乱層形成時に高温処理が必要となるため、表示素子に用いられる他の構成材料の選択性が狭まったり、白色散乱層の密着性が不十分なために、繰り返し駆動で白色散乱層が剥離したりすることも確認された。
【特許文献1】特開2004−020928号公報
【特許文献2】特開2002−258327号公報
【特許文献3】特開2005−338515号公報
【特許文献4】特開2006−309216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた製造安定性を有し、時間経過による表示品質の劣化が少ない表示素子と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.一対の対向電極間に電解質層を有する表示素子において、該電解質層が白色散乱性の粒子を含有し、該白色散乱性の粒子が樹脂を主成分とした粒子であることを特徴とする表示素子。
【0012】
2.前記白色散乱性の粒子が、樹脂ビーズの表面に白色散乱性層を形成した構造を有していることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0013】
3.前記樹脂ビーズの表面に白色散乱層を形成した構造を有する粒子が、樹脂ビーズ上に白色散乱性微粒子を析出して形成されていることを特徴とする前記2に記載の表示素子。
【0014】
4.前記電解質層が、ゲル状電解質層であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0015】
5.一対の対向電極間に電解質層を有する表示素子において、該対向電極の一つの表面が、樹脂ビーズと、金属または非金属のイオンと配位子により構成される錯体の溶液から析出促進剤を利用して析出された該金属または非金属の酸化物により形成された白色散乱層を有することを特徴とする表示素子。
【0016】
6.一対の対向電極間に電解質層を有する表示素子を製造する方法において、該対向電極のうちの一方の表面に樹脂ビーズを配置した後に、金属または非金属のイオンと配位子により構成される錯体と析出促進剤とを少なくとも含む溶液に、該配置された樹脂ビーズを浸し、該樹脂ビーズ上に金属または非金属の酸化物を析出すると共に樹脂ビーズを電極上に固定化する工程を含むことを特徴とする表示素子の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、優れた製造安定性を有し、時間経過による表示品質の劣化が少ない表示素子と、その製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、一対の対向電極間に電解質層を有する表示素子において、該電解質層が白色散乱性の粒子を含有し、該白色散乱性の粒子が樹脂を主成分とした粒子であることを特徴とする表示素子により、優れた製造安定性を有し、時間経過による表示品質の劣化が少ない表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0020】
すなわち、前述の様に、EC方式やED方式の反射型表示素子においては、白色を呈するために白色顔料を使用することが知られている。白色顔料は、電解質層内に分散されたり、白色散乱層(反射層)として設けられたりして使用される。(例えば、特許文献1から4参照。)。このような白色顔料として、酸化チタン等の金属酸化物粒子を用いた場合、以下のような課題を抱えていた。
【0021】
これら金属酸化物粒子をはじめとする白色顔料を電解質に分散して使用する場合、白色顔料は、本発明のような電気化学な表示を行う表示素子に適用する電解質液を構成する他の成分に対して比重が相対的に高いことに起因して、
(1)電解質液を調製した後、その状態で長期間にわたり保持した際、時間の経過と共に、白色顔料粒子のみが沈降してしまい、電解質液が不均一となり、表示素子組み立て時に改めて電解質液の分散が必要になる、
(2)表示素子の形成を注入法で行う場合、セル内に注入する電解質液のうち、特に白色顔料粒子の一部が完全に注入されずに系外に残留することにより、表示素子のセル内に所望の組成からなる電解質液を注入することができない、
(3)表示素子を形成した後、時間の経過と共に表示素子のセル内に充填した電解質液中の白色顔料粒子が沈降し、白地のムラが生じる、
という問題が生じることが判明した。
【0022】
上記のような電解質液中での白色顔料粒子の沈降、分離を防止する方法の一つとして、予め白色顔料粒子を対向電極等の基材上に白色散乱層として固定して形成する方法がある。この様な白色散乱層を形成する際には、白色顔料粒子を高温処理することにより、基材上に結着させる方法や、白色顔料粒子をバインダーと混合して基材上に塗布する方法がある。高温処理を行う場合は、基材の構成材料の選択の巾が制限を受ける。また、塗布方法では、基材と白色散乱層との密着性が不十分なために、繰り返し駆動で白色散乱層が剥離したりする課題を抱えているのが現状であった。
【0023】
本願発明者は、電解質液中に白色散乱能の高い白色顔料粒子を安定して存在させる方法について鋭意検討を進めた結果、高い白色散乱能を維持しながら粒子沈降という上記(1)〜(3)項に関わる課題を解決する方法として、比較的比重の小さな樹脂粒子をコア粒子とした白色散乱性の粒子を用いることにより、表示素子製造時にも安定して電解質液を調製することができ、セル中に注入した後でも電解質液媒体との比重差が小さく、粒子沈降等の問題を解決することができたものである。
【0024】
以下、本発明の表示素子の各構成要素の詳細について説明する。
【0025】
〔白色散乱性の粒子〕
本発明の表示素子においては、電解質層が樹脂を主成分とする白色散乱性の粒子を含有することを特徴とする。本発明でいう樹脂を主成分とするとは、全成分のうち、主要な成分が樹脂であることであり、その好ましい比率は、適用する樹脂の比重により異なるが、おおよそ70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは、90質量%以上である。
【0026】
本発明においては、好ましくは、白色散乱性の粒子が、樹脂ビーズの表面に白色散乱性層を形成した構造を有していることであり、より好ましくは、樹脂ビーズの表面に白色散乱層を形成した構造を有する粒子が、樹脂ビーズ上に白色散乱性微粒子を析出して形成して製造された白色散乱性の粒子を用いることである。
【0027】
(樹脂ビーズ)
本発明でいう樹脂ビーズとは、樹脂を主成分としたビーズであり、樹脂成分としては合成樹脂が安定した性能を呈し、好ましい。
【0028】
樹脂ビーズとしては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチロール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アセタール樹脂、繊維素樹脂等が挙げられる。
【0029】
以下、樹脂ビーズとして用いられるポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
1)アクリル樹脂:ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート
2)共重合アクリル樹脂:1)で挙げた樹脂のモノマーと塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸との共重合樹脂
3)塩化ビニル樹脂:ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、アクリロニトリルとの共重合樹脂
4)ポリ酢酸ビニル及びその部分鹸化樹脂
5)スチロール樹脂:ポリスチレン、スチレンとアクリロニトリルの共重合樹脂
6)塩化ビニリデン樹脂:ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンとアクリロニトリル共重合樹脂
7)アセタール樹脂:ポリビニルホルマール、ポリブチルブチラール
8)繊維素樹脂:酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース
9)メラミン樹脂:メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂。
【0031】
樹脂ビーズの分散物は、ポリマーを有機溶媒に溶解し、激しく撹拌しながら水溶液と混合し分散する方法、あるいは乳化重合、沈殿重合、又はパール重合によってモノマーを重合しつつ粒子状に析出する方法、あるいは樹脂ビーズの微粒子粉末を、攪拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いて水やゼラチン水溶液やポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂溶液に分散することで得られる。
【0032】
本発明の表示素子に係る樹脂ビーズの材料としては、電解質液を構成する媒体の比重に応じて、最適の比重、すなわち比重差の小さな樹脂材料を選択することが好ましい。
【0033】
また、本発明に係る樹脂ビーズにおいては、比重を制御する方法の一つとして、中空構造を有する樹脂ビーズを用いることも、好ましい態様の1つである。本発明に係る中空構造を有する樹脂ビーズとは、樹脂の殻部と内部に空気その他の気体を含有するもので、既に発泡状態となっている中空状の粒子を指す。
【0034】
本発明における中空粒子の形状は、特に限定されず、真球状、扁平状、不定形等の各種形状を取っていても構わないが、球状であることが好ましい。
【0035】
中空構造を有する樹脂ビーズの調製方法等については、例えば、特開2006−62366号公報の段落番号(0025)から同(0028)に記載されている方法を参考にすることができる。
【0036】
また、樹脂ビーズ内部に屈折率の異なる他の樹脂を練りこみ、光屈折率の差を利用して散乱を起こさせるようにした粒子を使用することもできる。
【0037】
本発明においては、樹脂ビーズの表面に白色散乱層を形成した構造を有する粒子であることが好ましく、更には樹脂ビーズ上に白色散乱性微粒子を析出して製造された白色散乱性の樹脂ビーズであることが特に好ましい。その場合、粒子の形成方法としては、コアシェル法により形成することもできるし、あるいは、樹脂ビーズのコア粒子を形成した後に表面をコーティングすることで形成することもできる。表面をコーティングする材料としては、二酸化チタン等が好ましい。
【0038】
コアシェル法による好ましい樹脂ビーズの調製方法としては、例えば、特開2008−195879号公報に記載の方法等を参考にすることができる。
【0039】
また、ビーズ表面を二酸化チタン等の白色散乱性微粒子で被覆する方法としては、例えば、特開2002−317128号公報に記載の方法を応用できる。特開2002−317128号公報に記載の方法は、ガラスビーズの表面を被覆する方法であるが、ビーズ表面の前処理や二酸化チタンの析出条件等、樹脂ビーズの素材性能に合わせたものに修正して適用することができる。
【0040】
また、本発明の表示素子においては、対向電極の一方の表面に、樹脂ビーズと、金属または非金属のイオンと配位子により構成される錯体の溶液から析出促進剤を利用して析出された該金属または非金属の酸化物により形成された白色散乱層を有することを特徴とする。
【0041】
また、表示素子の製造方法として、対向電極のうちの一方の表面に樹脂ビーズを配置した後に、金属または非金属のイオンと配位子により構成される錯体と析出促進剤とを少なくとも含む溶液に、該配置された樹脂ビーズを浸し、該樹脂ビーズ上に金属または非金属の酸化物を析出すると共に樹脂ビーズを電極上に固定化する工程により表示素子を製造することを特徴とする。
【0042】
すなわち、金属または非金属のイオンと配位子による錯体と、析出促進剤とを含む溶液に樹脂ビーズを混合し、錯体の配位子と析出促進剤を反応させて金属または非金属の酸化物を樹脂ビーズ上に析出させる方法により、樹脂ビーズを付与する方法である。
【0043】
上記方法に適用しうる好ましい配位子としては、F、Cl、ClO、SO2−、OSO4−などが挙げられるが、多種のイオンと錯体を形成でき、溶液の安定性がよい配位子として、Fが特に好ましい。金属イオンまたは非金属イオンとしては、析出させる酸化物によって選択することができるが、本発明の目的においては、白色散乱性を有することが好ましいため、チタン、スズ、シリカ、亜鉛などが好ましい。析出促進剤としては、前記選択された配位子に対し、選択された金属または非金属イオンに比べて安定した錯体を形成するものであればよく、例えば、アルミニウム、HBOなどが好適に用いられる。析出物の析出量およびサイズは、錯体の濃度や反応温度、時間により調整できる。本発明においては、樹脂ビーズ上に形成される酸化物粒子の好ましいサイズは、析出する酸化物の種類によって異なるが、数nmから数十nm程度であり、例えば、酸化チタンを析出させる場合には数nmから30nm程度であることが好ましい。また析出量は、樹脂ビーズ表面を一様に埋める量であることが、光散乱効率の点で好ましい。
【0044】
《基板》
本発明の表示素子に適用可能な対向基板としては、下記の各基板を挙げることができる。
【0045】
本発明で用いることのできる基板のなかで、表示側基板は透明基板であることが好ましく、このような透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板などが好ましく用いられる。本発明に用いられる透明な基板とは、可視光に対する透過率が少なくとも50%以上の基板をいう。
【0046】
また、対向基板としては、例えば、金属基板、セラミック基板等の無機基板など不透明な基板を用いることもできる。
【0047】
本発明における「基板」としては、上記素材による基板上に、電極となる導電性層や、絶縁層などの各種機能層を有するものを含む。
【0048】
また、本発明においては、基板として、薄膜トランジスタ(TFT)基板を用いることも可能である。薄膜トランジスタ基板を使用することで、より細かい画像表示が可能となる。
【0049】
TFT基板としては、液晶ディスプレイ等に用いられている無機半導体系のものでもよく、有機半導体を用いてもよく、また、プラスチックフィルム上に形成されたTFTであることも好ましい構成である。プラスチックフィルム上に形成されたTFTとしては、アモルファスシリコン系のものが知られているが、その他、米国Alien Technology社で開発しているFSA(Fluidic Self Assembly)技術、即ち、単結晶シリコンで作製した微小CMOS(Nanoblocks)をエンボス加工したプラスチックフィルム上に配列させることで、フレキシブルなプラスチックフィルム上にTFTを形成するものとしても良い。さらに、Science283,822(1999)やAppl.Phys.Lett.,771488(1998)、Nature,403,521(2000)等の文献に記載されているような有機半導体を用いたTFTであってもよい。
【0050】
《電極》
本発明の表示素子における対向基板としては、表面に電極を有する基板を用いることができる。
【0051】
電極としては、電気を通じるものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金、炭素、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0052】
電極の表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0053】
(表示側透明電極)
対向電極のうち、表示側には位置する電極としては、透明電極であることが好ましい。
【0054】
透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0055】
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、およびそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
【0056】
表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0057】
(透明多孔質電極)
透明電極の一つの態様として、上記透明電極上にナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。このナノ多孔質電極は、表示素子を形成した際に実質的に透明で、エレクトロクロミック色素等の電気活性物質を担持することができる。
【0058】
本発明でいうナノ多孔質化構造とは、層中にナノメートルサイズの孔が無数に存在し、ナノ多孔質化構造内を電解質中に含まれるイオン種が移動可能な状態のことを言う。
【0059】
このようなナノ多孔質電極の形成方法としては、ナノ多孔質電極を構成する微粒子を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法などが挙げられる。また、ゾルゲル法や、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、形成することができる。
【0060】
ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。
【0061】
ナノ多孔質電極が透明性を有するためには、平均粒子径が5nm〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。微粒子の形状は不定形、針状、球形など任意の形状のものを用いることができる。
【0062】
ナノ多孔質電極の膜厚は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜5μmの範囲である。
【0063】
(グリッド電極:補助電極)
本発明に係る対向電極のうち少なくとも一方の電極に、補助電極を付帯させることができる。
【0064】
補助電極は、主となる電極部より電気抵抗が低い材料を用いることが好ましい。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金等を好ましく用いることができる。
【0065】
補助電極は、主となる電極部と基板との間と、主となる電極部の基板と反対側の表面とのいずれに設置することもできる。いずれにしても、補助電極が主となる電極部と電気的に接続していればよい。
【0066】
補助電極の配置パターンには、特に制限はない。直線状、メッシュ状、円形など、求められる性能に応じて適宜形成することが可能である。主となる電極部が複数の部分に分割されている場合には、分割された電極部同士を接続する形で設けてもよい。ただし、主となる電極部が表示側の基板に設けられた透明電極の場合、補助電極は、表示素子の視認性を阻害しない形状と頻度で設けることが求められる。
【0067】
補助電極を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィー法でパターニングする方法、印刷法やインクジェット法、電解メッキや無電解メッキ、銀塩感光材料を用いて露光、現像処理してパターン形成する方法でも良い。
【0068】
補助電極パターンのライン幅やライン間隔は、任意の値で構わないが、導電性を高くするためにはライン幅を太くする必要がある。一方、透明電極に補助電極を付帯させる場合には、視認性の観点から、表示素子観察側から見た補助電極の面積被覆率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0069】
このように透過率と導電性の点から、補助電極のライン幅は1μm以上、100μm以下が好ましく、ライン間隔は50μmから1000μmが好ましい。
【0070】
(電極の形成方法)
透明電極、金属補助電極を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着する方法や、全面形成した後に、フォトリソグラフィー法でパターニングする方法等が挙げられる。
【0071】
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
【0072】
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
【0073】
電極材料を塗布方式で形成する場合には、例えば、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
【0074】
インクジェット方式の中でも、静電インクジェット方式は高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明の透明電極や金属補助電極の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、更に好ましくは100mPa・s以上である。
【0075】
《電解質液の構成材料》
本発明に係る電解質液は、電位差に応じてイオン伝導性を示し、電気化学反応による着色と消色を可能とするものである。その目的を達成するために、本発明に係る樹脂ビーズと共に、有機溶媒、電解質、イオン性液体、電気活性物質、錯化剤、高分子バインダー等を必要に応じて選択して構成することができる。
【0076】
〔電解質〕
本発明でいう電解質とは、電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解質(「広義の電解質」)という。
【0077】
電解質とは、一般に、水などの溶媒に溶けて、その溶液がイオン伝導性を示す物質をいう。
【0078】
このような物質としては、カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。さらに、I/I、Br/Br、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
【0079】
上記のように、溶媒に溶けてイオン伝導性を示す物質に加え、イオン性液体を電解質として用いることもできる。本発明でいうイオン液体とは、常温溶融塩とも言われ、融点が100℃以下の塩である。この塩は同数のカチオンとアニオンから構成されており、分子構造によって融点が室温以下の物質も数多く存在し、これらは溶媒をまったく加えなくても室温で液体状態である。イオン性液体は、強い静電的な相互作用をもっているため蒸気圧がほとんどないことが大きな特徴であり、高温でも蒸発がなく揮発しない。
【0080】
本発明に用いるイオン性液体としては、一般的に研究・報告されている物質ならばどのようなものでも構わない。特に、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造がある。
【0081】
本発明で好適に用いることができるイオン性液体は、式Qで表され、20〜100℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃、特に20℃で液体として存在する塩のことを指し、粘度(25℃)は、常温で融体である限り特に制限されないが、好ましくは1〜200mPa・sである。さらに、式中Q+で表されるカチオン成分はオニウムカチオンが好ましく、さらに好ましくはアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びホスホニウムカチオンである。
【0082】
〔金属塩化合物〕
本発明に係る金属塩化合物とは、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、特に好ましいのは銀、ビスマスである。
【0083】
(銀塩化合物)
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0084】
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
【0085】
本発明に係る電解質液に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質液の安定性が向上する。
【0086】
〔銀塩溶剤〕
本発明においては、金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進するために、銀塩溶剤を用いることができる。銀塩溶剤とは、電解質液中で銀を可溶化できる化合物であればいかなる化合物であってもよい。例えば、銀と配位結合を生じさせ、銀と弱い共有結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀溶剤として有用に作用しかつ、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0087】
〔エレクトロクロミック化合物〕
本発明に係る電解質液には、エレクトロクロミック特性を有するエレクトロクロミック化合物を使用することができる。
【0088】
本発明に係るエレクトロクロミック化合物(EC化合物)としては、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により発色又は消色する作用を示す限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。EC化合物としては、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化クロム、酸化マンガン、プルシアンブルー、窒化インジウム、窒化錫、窒化塩化ジルコニウム等の無機化合物に加え、有機金属錯体、導電性高分子化合物及び有機色素が知られている。
【0089】
エレクトロクロミック特性を示す有機金属錯体としては、例えば、金属−ビピリジル錯体、金属フェナントロリン錯体、金属−フタロシアニン錯体、希土類ジフタロシアニン錯体、フェロセン系色素などが挙げられる。
【0090】
エレクトロクロミック特性を示す導電性高分子化合物としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリフェニレンジアミン、ポリベンジジン、ポリアミノフェノール、ポリビニルカルバゾール、ポリカルバゾール及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0091】
また、例えば、特開2007−112957号に記載されているような、ビスターピリジン誘導体と金属イオンから成る高分子材料もエレクトロクロミック特性を示す。
【0092】
エレクトロクロミック特性を示す有機色素としては、ビオロゲン等ピリジニウム系化合物、フェノチアジン等アジン系色素、スチリル系色素、アントラキノン系色素、ピラゾリン系色素、フルオラン系色素、ドナー/アクセプター型化合物類(例えば、テトラシアノキノジメタン、テトラチアフルバレン)等が挙げられる。その他、酸化還元指示薬、pH指示薬として知られている化合物を用いることもできる。
【0093】
〔プロモーター〕
本発明の表示素子においては、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物の電気化学反応を促進するために、酸化還元されうる補助化合物(以下、プロモーターと記す)を添加することが好ましい。プロモーターは酸化還元反応の結果として、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものでもよいし、変化するもの、即ち前記電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物であってもよく、電極上に固定化されていてもよく、電解質液中に添加されていてもよい。これらプロモーターは例えば、対極反応物質としての利用あるいは、酸化還元メディエーターとしての利用が考えられる。
【0094】
例えば、表示電極側で電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を酸化(あるいは還元)発色させる場合、対向電極側でプロモーターの還元(あるいは酸化)反応を利用することによって、低い駆動電圧で高い発色濃度を得ることが可能となる。このようにプロモーターを対極反応物質として利用する場合、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物とは逆の酸化還元活性を有するプロモーターを、対向電極上に固定化して用いることが好ましい。プロモーターを対極物質として用いる場合、プロモーターは酸化還元反応の結果として可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものが好ましい。ただし、本発明の好ましい態様において記載したように、表示素子中に白色散乱物を用いて、プロモーターによる発色を遮蔽するような態様の場合、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化するプロモーター、即ち電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を用いてもよい。このような構成の態様は、プロモーターの選択が容易となり好ましい。また別の態様として、表示電極側の電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物と同色の発色を示すプロモーターを用いることは、好ましい態様の一つである。
【0095】
一方、酸化還元メディエーターは有機電解合成の分野等で一般に用いられている材料である。有機化合物はそれぞれ固有の酸化電位に加えて、電解法や電解条件にも依存する酸化過電圧を有しており、陽極電位がこれらを合せた酸化電位より高いときに、実際上酸化反応が起こる。陽極電位に実験上の限界があることから、直接法で全ての基質を酸化することは不可能である。高い酸化電位を有する基質を酸化する場合、基質から陽極への電子移動は起こらない。この反応系に低電位で陽極に対して電子移動(酸化)が起こるようなメディエーターを共存させると、まずはメディエーターが酸化され、酸化されたメディエーターによって基質が酸化されて生成物が得られる。この反応系の利点は、基質の酸化電位よりも低い陽極電位で基質を酸化することが可能であることと、酸化されたメディエーターは、基質を酸化してもとのメディエーターに戻るため、理論的には触媒量として作用することである。また低電位での酸化が可能となるため、基質や生成物の分解等も抑えられる。
【0096】
本発明において、例えば前記基質として酸化発色する電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を用いる場合、触媒量の酸化メディエーターを共存させることにより、低い駆動電圧で表示素子を駆動することが可能となり、表示素子の耐久性が高まる。また表示の切り替え速度の向上、高い発色効率が得られる等の利点がある。同様に、還元メディエーターと、還元発色する電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物の組み合わせでも、上記効果が得られる。
【0097】
本発明の表示素子においては、有機電解合成の分野で示されているように、単一のメディエーターを用いてもよいし、複数のメディエーターを組み合わせて用いてもよい。本発明においてプロモーターをメディエーターとして用いる場合、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を表示電極上に固定化し、その近傍にプロモーターを局在化させて用いることが好ましい。
【0098】
本発明においては、プロモーターを対極反応物質として用いてもよく、またメディエーターとして用いてもよい。また両者の目的で、複数のプロモーターを同時に組み合わせて用いてもよい。
【0099】
プロモーターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。特に対極反応物質として利用する場合には、公知の電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を利用することが可能である。また、酸化還元メディエーターとして利用する場合は、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物の特性に合わせ、有機合成化学協会誌第43巻第6号(「電気エネルギーを利用する有機合成」特集号)(1985)等に記載されている公知のメディエーターを適宜選択して用いることができる。
【0100】
〔溶媒〕
本発明に係る電解質液には、必要に応じて溶媒を含有することができる。溶媒としては、一般に電気化学セルや電池に用いられ、本発明で用いられるエレクトロクロミック化合物を初め、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩化合物、プロモーター等各種添加剤を溶解できる溶媒であればいずれも使用することができる。
【0101】
具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、テトラメチル尿素、スルホラン、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジオキソラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、エチルジメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリス(トリフフロロメチル)ホスフェート、トリス(ペンタフロロエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びエチレングリコール、ジエチレングリコール等のポリエチレングリコール等が使用可能である。特に非プロトン性極性溶媒が好ましく、揮発性の低い沸点が120〜300℃の範囲にある溶媒が特に好ましい。溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
【0102】
上記有機溶媒の中でも、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン等のカルボン酸エステル系化合物を用いることが好ましい。
【0103】
〔電解質液添加の増粘剤〕
本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子に用いられる電解質液は、表示素子の諸性能を達成するために、所望の粘度に調整される。
【0104】
電解質液の粘度を調整するためには、高分子化合物やゲル化剤と言われる化合物を添加する方法が広く知られている。目的で用いられる化合物の例としては、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、ブチラール樹脂、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド、セルロース、ポリプロピレンオキサイド、ナフィオン等が挙げられる。前記ゲル化剤としては、特に限定されず、オキシエチレンメタクリレート、オキシエチレンアクリレート、ウレタンアクリレート、寒天、等が挙げられる。なお、ゲル化液系電解質は、ポリマーの前駆体モノマーやゲル化剤の前駆体を液系電解質と混合したのち、前記の通り特定の方法によりセル内に注入した後、ゲル化することにより対向する基板の間に挟持させることができる。
【0105】
また、特開2008−071749号公報に開示されているように、層状粘土鉱物及び/又は有機化層状粘土鉱物を混合することで、ゲル化させることも可能である。
【0106】
さらに、本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子の電解質は、固体電解質とすることもできる。固体電解質としては、室温で固体であり、かつイオン導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキサイド、オキシエチレンメタクリレートのポリマー、ナフィオン、ポリスチレンスルホン酸、LiN、Na−β−Al、Sn(HPO・HO等を挙げることができ、特に、オキシアルキレンメタクリレート系化合物、オキシアルキレンアクリレート系化合物又はウレタンアクリレート系化合物を前駆体の主成分とし、当該前駆体を重合することによって得られる高分子化合物等を用いた高分子固体電解質が好ましい。
【0107】
《その他添加剤》
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0108】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0109】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0110】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
上記の添加剤は、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を設け、それら補助層中に含有させることも可能である。
【0111】
《その他の構成要素》
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いる。
【0112】
(シール剤)
シール剤は、外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0113】
(柱状構造物)
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0114】
柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解する等してペースト状にして用いることが望ましい。
【0115】
(スペーサー)
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0116】
《電解質液成分の付与法》
本発明においては、電解質液を付与する方法としては、塗布法、印刷法、ディスペンサ法で、基板上に設けることができる。塗布法としては、押し出し塗布法、ディツプコーティング法、スプレー法、スピンコーティング法などが知られている。印刷法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、インクジェット法、注入法などを用いることができる。
【0117】
(スクリーン印刷)
印刷法の中でも特にスクリーン印刷は、各成分の付与だけでなく、シール剤や前記各種構造物を形成する際にも用いることが可能である。
【0118】
スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを介し、印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。
【0119】
《電気化学的な表示素子の駆動方法》
本発明の電気化学的な表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0120】
《商品適用》
本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、ワンタイムパスワード、電子ブック、携帯電話のカバー等各種機器の筐体装飾、キーボード表示、電子棚札、電子POP、電子広告等が挙げられる。特に大画面の表示が求められる電子ブック、電子広告、電子POP等の製造に有効である。
【実施例】
【0121】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0122】
実施例1
《樹脂ビーズの調製》
〔樹脂ビーズAの調製:トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー〕
攪拌装置、温度計、気体導入管、還流冷却管を備えたセパラブルフラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレートを696g(6モル)、メラミンを126g(1モル)、95質量%のパラホルムアルデヒドを189g(ホルムアルデヒドとして6モル)、パラトルエンスルホン酸を3.0g、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.2g加え、空気を吹き込みながら昇温した。80〜100℃において、メラミンおよびパラホルムアルデヒドが2−ヒドロキシエチルアクリレートに溶解した後、液温を105〜115℃に保ちながら、水分の留出量が108g(6モル)になるまで反応し、トリアジン環含有アクリレートプレポリマーを得た。
【0123】
次いで、攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水を120質量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウムを0.8質量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウムを0.4質量部添加し、攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中に、メチルメタクリレートを2質量部添加し、10分後に0.98質量部の脱イオン水に溶解した0.1質量部の過硫酸ナトリウムを添加し、種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9質量部の脱イオン水に溶解した0.1質量部の過硫酸ナトリウムを添加し、更に、10分後、メチルメタクリレートの43.7質量部、スチレンの29.1質量部、エチレングリコールジメタクリレートの24.2質量部、脱イオン水の60質量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウムの1.2質量部、重炭酸ナトリウムの0.5質量部からなる乳化モノマー液を、攪拌しながら温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後、85℃で2時間維持して重合を終了させ、水系ラテックス液を得た。これを精製、乾燥させ、平均一次粒子径が約100nmの樹脂粒子aを得た。
【0124】
次いで、上記調製したトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーの100質量部に対し、樹脂粒子aを10質量部となるように溶融、混合し、公知の方法により、樹脂ビーズAを形成した。樹脂ビーズAの平均一次粒径は、約500nmであった。なお、樹脂ビーズAにおける樹脂成分比率は96質量%である。
【0125】
〔樹脂ビーズBの調製〕
特開2007−177009号公報の実施例1に記載の方法により、平均一次粒径が約120nmの樹脂ビーズBを得た。なお、樹脂ビーズBにおける樹脂成分比率は93質量%である。
【0126】
〔樹脂ビーズCの調製〕
平均一次粒径が約80nmのポリアクリル系樹脂ビーズ表面に、以下の方法で酸化チタン微粒子を付与して、樹脂ビーズCを得た。なお、樹脂ビーズCにおける樹脂成分比率は84質量%である。
【0127】
フッ化チタン酸アンモニウム水溶液(0.1mol/L)とホウ酸水溶液(0.2mol/L)を等量混合した溶液の中に、ポリアクリル系樹脂ビーズを混合し、ポリアクリル系樹脂ビーズ同士が結着しないように弱く攪拌させながら、室温で1時間反応させ、ポリアクリル系樹脂ビーズ表面に酸化チタンの微粒子を一様に形成させた。顕微鏡観察により酸化チタン微粒子の平均粒径としては、5〜10nm程度のものが、粒子表面積の80%を占めていることを確認した。
【0128】
《電解質液の調製》
〔電解質液1の調製〕
ジメチルスルホキシド25質量部に、ヨウ化ナトリウムを0.9質量部、ヨウ化銀を0.7質量部加えて完全に溶解させた後、白色散乱粒子として酸化チタン(平均一次粒径0.25μm)15質量部、ポリビニルピロリドン(平均分子量15000)を1.5質量部加え、120℃で加熱しながら1時間攪拌し、電解質液1を得た。
【0129】
〔電解質液2の調製〕
平均重量分子量が約35万のポリフッ化ビニリデン1質量部を、水とイソプロピルアルコールの1:1の混合溶媒10質量部、臭化リチウム1.7質量部、塩化ビスマス1.7質量部と混合し、120℃に加熱して均一溶液を調製した。次いで、この混合溶液に白色散乱粒子として平均一次粒径が0.5μmの二酸化チタン2質量部を添加し、ホモジナイザーで均一に分散して、電解質液2を得た。
【0130】
〔電解質液3の調製〕
ジメチルスルホキシドとγ−ブチロラクトン(γBL)を体積比で3:2の比率で混合した溶媒に、析出溶解材料として、0.5mol/Lのヨウ化銀(AgI)および支持電解質塩として0.75mol/Lのヨウ化ナトリウム(NaI)を溶解させ、更に、クマリンを5g/L、メルカプトベンゾイミダゾールを5g/L、トリエタノールアミンを10g/Lとなるように加えて溶液を調製した。
【0131】
次いで、調製した上記溶液と、この溶液をゲル状にするためのアクリル基末端を有するポリエーテル・オリゴマと、白色散乱粒子として二酸化チタン(平均一次粒径:0.5μm)とをそれぞれ質量比で、1:0.2:1.2の割合で混合し、ホモジナイザーで均一に分散させて顔料分散液を調製した。
【0132】
次いで、ポリエーテル・オリゴマを架橋化反応させるための有機過酸化物(日本油脂社製「パーヘキシルND」)をポリエーテル・オリゴマに対して2質量%加え、ホモジナイザーで攪拌することにより、後の工程でゲル化することが可能な電解質液を調製した。
【0133】
〔電解質液4〜12の調製〕
上記電解質液1〜3の調製において、白色散乱粒子として、二酸化チタン粒子に代えて、前記樹脂ビーズA〜Cをそれぞれ用いた以外は同様にして、電解質液4〜12を調製した。なお、樹脂ビーズA〜Cは、二酸化チタン粒子と同量にした。
【0134】
《表示素子の作製》
〔表示素子1、4、7、10の作製〕
(セルの形成)
市販の厚さ0.7mmのITO膜付きガラス基板20cm×30cmの周辺部領域のITO膜を、公知の方法によりエッチングし、配線部を残してITO膜を除去し、対向基板1を得た。対向基板1の周辺部領域に、平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤を付与し、厚みと高さがそれぞれ20μmの周辺部材を形成した。
【0135】
次いで、市販の厚さ0.7mmのITO膜付きガラス基板(対向基板2)を、ITO膜面側が周辺部材に接着するように貼り付け、セルを形成した。このセルの一隅を斜めに切り欠いて、電解質液注入口を形成した。
【0136】
(電解質液の注入)
次いで、電解質液1、4、7、10を、それぞれ上記形成したセルの電解質液注入口から、公知の真空注入法によりセル内部に注入した。電解質液の注入後、注入口を封止し、UV照射して注入口を硬化して、表示素子1、4、7、10を作製した。
【0137】
〔表示素子2、5、8、11の作製〕
上記表示素子1の作製において、電解質液1に代えて、それぞれ電解質液2、5、8、11を用いた以外は同様にして、表示素子2、5、8、11を作製した。
【0138】
なお、各表示素子の作製においては、電解質液2、5、8、11を、それぞれ110℃、0.1Mpaで1時間減圧乾燥し、ゲル化した高分子固体電解質とした後、二つの電極間(対向基板1、2)に付与した後、各対向基板を貼り合わせて、端面を接着剤によって封止して、各表示素子を作製した。
【0139】
〔表示素子3、6、9、12の作製〕
上記表示素子1の作製において、電解質液1に代えて、それぞれ電解質液3、6、9、12を用いた以外は同様にして、表示素子3、6、9、12を作製した。
【0140】
なお、各表示素子の作製においては、電解質液3、6、9、12を、100℃の恒温槽で10分間加熱し、過酸化物によりポリエーテル・オリゴマを架橋反応させることによりゲル状の電解質液とした後、セル中に充填した。
【0141】
《電解質液及び表示素子の評価》
〔電解質液の停滞安定性の評価〕
上記調製した電解質液1〜12を、ガラス瓶に充填し、室温で(a)2時間、(b)1日、(c)1週間の3つの条件で保管した後、白色散乱粒子の沈降の有無を目視観察、下記の基準に従って停滞安定性の評価を行った。
【0142】
◎:沈降物の発生は、全く認められない
○:若干の沈降物の発生は認められるが、弱い再分散程度で容易に初期分散状態に戻る
△:やや沈降物の発生は認められるが、ある程度の時間をかけて再分散を施すことにより初期分散状態に戻る
×:ガラス瓶底部に明らかな白色沈降物の発生が認められ、ある程度の時間をかけて再分散を行っても初期分散状態に回復しない
〔表示素子の品質評価〕
(初期品質の評価)
各表示素子を作製した後、表示素子を平面に置いて、白色のムラの程度を目視で観測し、下記の基準に従って初期品質の評価を行った。
【0143】
◎:表示素子の観察画面に白色のムラが全く認められない
○:表示素子の観察画面に白色のムラがほぼ認められない
△:表示素子の観察画面に弱い白色のムラが見られるが、実用上は許容される品質である
×:表示素子の観察画面に強い白色のムラの発生が認められ、実用上問題となる品質である
〔表示素子の経時安定性の評価〕
作製した各表示素子を、約80度の角度で立てかけ、(a)1週間、(b)1ヶ月の2つの条件で放置した後、下記の方法で駆動させ、白地と黒表示のムラの状態を目視で評価し、下記の基準に従って経時安定性を評価した。
【0144】
(駆動方法)
定電圧電源の両端子に、上記作製した各表示素子の両電極を接続し、表示側の電極に−1.5Vの電圧を1.5秒間印加して黒表示し、黒表示画像を目視観察した。
【0145】
(評価基準)
◎:黒表示ムラの発生が全くなく、画像均質性に優れている
○:黒表示ムラの発生がほぼなく、画像均質性が良好である
△:若干の黒表示ムラは観察されるが、実用上許容される画質である
×:強い黒表示ムラが観察され、実用上問題となる画質である
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる電解質液は、停滞安定性(分散安定性)に優れ、かつ本発明に係る電解質液を用いて製造した本発明の表示素子は、比較例に対し、セル内での粒子沈降耐性及び長期間にわたり保管した後の経時安定性に優れていることが分かる。
【0148】
実施例2
《白色散乱層の形成》
〔白色散乱層1の形成〕
水/エタノール=90/10混合溶液100質量部に、ポリビニルアルコール樹脂(クラレ社製 クラレポバールPVA235)を2質量部混合し、加熱溶解させた後、平均一次粒径が0.27μmの二酸化チタンを20質量部添加し、超音波分散機で分散した。この分散液を、実施例1に記載の対向基板1のITO上に、乾燥膜厚が20μmとなるように塗布し、80℃30分間で溶媒を概ね乾燥させた後、120℃で2時間焼成し、白色散乱層1を有する対向基板1Aを作製した。
【0149】
〔白色散乱層2の形成〕
容器内に、実施例1に記載の対向基板1をITO膜が上になるように水平に配置し、実施例1に記載の樹脂ビーズCを、対向基板1上に厚み20μm程度となる量配置した。これに、フッ化チタン酸アンモニウム水溶液(0.1mol/L)とホウ酸水溶液(0.2mol/L)を等量混合した溶液を徐々に添加し、室温で1時間程度反応させた後、対向基板1を引き上げた。引き上げた対向基板1を純水で洗浄した後、乾燥させて、白色散乱層2を有する対向基板1Bを作製した。
【0150】
対向基板1Bの表面に形成された白色散乱層2を構成する樹脂ビーズCの膜厚を測定したところ、約19μmで、ほぼ計算どおりであった。また、樹脂ビーズ表面は酸化チタン微粒子で被覆されており、粒子全体が白く観察された。
【0151】
《電解質液の調製》
ジメチルスルホキシド15質量部に、ヨウ化ナトリウムを0.9質量部、ヨウ化銀を0.7質量部加えて完全に溶解させ、電解質液13を得た。
【0152】
《表示素子の作製》
〔表示素子13の作製〕
上記作製した対向基板1Aの白色散乱層1の周囲に、平均粒径が30μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤を付与し、厚みと高さがそれぞれ30μmの周辺部材を形成した。
【0153】
次いで、市販の厚さ0.7mmのITO膜付きガラス基板(対向基板2)を、ITO膜面側が周辺部材に接着するように貼り付け、セルを形成した。このセルの一隅を斜めに切り欠いて、電解質液を注入する口を形成した。
【0154】
次いで、上記調製した電解質液13を、セルの電解質液注入口から、公知の真空注入法によりセル内部に注入した後、注入口を封止し、UV照射して硬化して、表示素子13を得た。
【0155】
〔表示素子14の作製〕
上記表示素子13の作製において、白色散乱層1を有する対向基板1Aに代えて、白色散乱層2を有する対向基板1Bを用いた以外は同様にして、表示素子14を作製した。
【0156】
《表示素子の評価》
〔駆動安定性及び表示ムラ耐性の評価〕
定電圧電源の両端子に、上記作製した表示素子13、14の各両電極を接続し、表示側の電極に−1.5Vの電圧を1.5秒間印加した後、各表示素子の表示部の波長550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分色測色計CM−3700dで測定し、初期の反射率Rを得た。次いで、各表示素子の表示電極に対し、+1.5Vで0.5秒の電圧印加と−1.5Vで0.5秒の電圧印加を、それぞれ0.5秒のインターバルをおいて繰り返し、3000回駆動させた後、黒表示部の反射率を測定し、これをR3000とし、ΔR=R−R3000を求め、これを駆動安定性の指標とした。さらに、白地部と黒表示部のムラについて目視観察し、下記の基準に従って表示ムラ耐性を評価した。
【0157】
○:白地部と黒表示部で、ムラの発生がまったく認められないがない
△:白地部または黒表示部で極弱いムラが観察されるが、実用上許容される品質である
×:白地部及び黒表示部で強いムラの発生が認められ、実用上問題となる品質である
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0158】
【表2】

【0159】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の表示素子は、比較例に対し、駆動安定性及び表示ムラ耐性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の対向電極間に電解質層を有する表示素子において、該電解質層が白色散乱性の粒子を含有し、該白色散乱性の粒子が樹脂を主成分とした粒子であることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記白色散乱性の粒子が、樹脂ビーズの表面に白色散乱性層を形成した構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記樹脂ビーズの表面に白色散乱層を形成した構造を有する粒子が、樹脂ビーズ上に白色散乱性微粒子を析出して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記電解質層が、ゲル状電解質層であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項5】
一対の対向電極間に電解質層を有する表示素子において、該対向電極の一つの表面が、樹脂ビーズと、金属または非金属のイオンと配位子により構成される錯体の溶液から析出促進剤を利用して析出された該金属または非金属の酸化物により形成された白色散乱層を有することを特徴とする表示素子。
【請求項6】
一対の対向電極間に電解質層を有する表示素子を製造する方法において、該対向電極のうちの一方の表面に樹脂ビーズを配置した後に、金属または非金属のイオンと配位子により構成される錯体と析出促進剤とを少なくとも含む溶液に、該配置された樹脂ビーズを浸し、該樹脂ビーズ上に金属または非金属の酸化物を析出すると共に樹脂ビーズを電極上に固定化する工程を含むことを特徴とする表示素子の製造方法。

【公開番号】特開2010−101982(P2010−101982A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271626(P2008−271626)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】