説明

表示素子

【課題】低電圧での駆動が可能で、書き換え速度が速く、繰り返し使用しても電極の腐食が少なく、長寿命の表示素子を提供する。
【解決手段】一対の対向する電極間に、金属塩化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物を含有した電解質層を有し、電圧を印加することにより黒色と白色を表示することを特徴とする表示素子。
【化1】


一般式(1)中、Zは複素環を表す。Rは置換基を表し、nは1〜6の整数を表す。nが2以上の場合、それぞれのRは同じであっても、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。但し、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を表すか、もしくは、シアノ基を有する置換基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な電解質層組成物を用いた電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられている。しかしながら、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は人間に優しい手段とは言い難い。一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が指摘されている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない、いわゆる「メモリー性」を有する反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低いため白表示に難が有る。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、かつ有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は高い電圧を必要とすることと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の問題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、「ED方式」と略す。)が知られている。ED方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0007】
また、ED方式、特に金属塩化合物として銀塩化合物を用いたED方式では、メルカプトアゾール系の化合物を用いることが知られている(例えば特許文献4)。特許文献4では、メルカプトアゾール系化合物やチオエーテル系化合物を含有することでメモリー性が向上することが示されているものの未だ十分とは言えず、更にED方式の表示素子では、電極が電解液と直接接触するため、電極の腐食が起こり易い状況にあると考えられるが、電極腐食防止については全く言及されていない。
【0008】
この様にED方式の耐久性を向上する上で、電極の腐食を防止することは重要な課題と考えられるが、書き換え速度や繰り返し駆動安定性などの他の諸性能を低下させずに電極腐食を防止する有効な技術は未だ見出されておらず、改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献2】特許第3428603号公報
【特許文献3】特開2003−241227号公報
【特許文献4】特開2005−266652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みなされたものであり、その解決課題は、低電圧での駆動が可能で書き換え速度が速く、且つ電極の腐食が少ない表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.一対の対向する電極間に、金属塩化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物を含有した電解質層を有し、電圧を印加することにより画像を表示することを特徴とする表示素子。
【0012】
【化1】

【0013】
一般式(1)中、Zは複素環を表す。Rは置換基を表し、nは1〜6の整数を表す。nが2以上の場合、それぞれのRは同じであっても、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。但し、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を表すか、又は、シアノ基を有する置換基を表す。
2.前記一般式(1)において、Rがハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
3.前記一般式(1)中、Zは含窒素複素環を表すことを特徴とする前記1又は2に記載の表示素子。
4.前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記3に記載の表示素子。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(2)中、ZはC=Nと共に含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。R、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の場合、それぞれのRは同じであっても、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。但し、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を表すか、もしくは、R、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を有する置換基を表す。
5.前記一般式(2)において、R、Rがハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基であることを特徴とする前記4に記載の表示素子。
6.前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする前記4に記載の表示素子。
【0016】
【化3】

【0017】
一般式(3)中、R、Rは水素原子、置換基を表し、Rは置換基を表す。但し、Rがシアノ基を表すか、もしくは、R〜Rのうち少なくとも1つはシアノ基を有する置換基を表す。
7.前記一般式(3)において、Rが水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基または複素環基、Rが水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基、Rがハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環基であることを特徴とする前記6に記載の表示素子。
8.前記一対の対向する電極のうち、表示側に位置する電極が透明導電性酸化物からなり、前記金属塩化合物が銀塩化合物であることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
9.前記電解質層が、前記金属塩化合物以外に、更に酸化還元されうる補助化合物を含有することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明の手段により、繰り返し駆動した際のコントラスト保持率に優れ、低電圧での駆動が可能で書き換え速度が速く、電極の腐食が少ない表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明の表示素子は、一対の対向する電極間に、金属塩化合物、及び前記一般式(1)で表される化合物を含有した電解質層を有し、電圧を印加することにより画像を表示することを特徴とする。この特徴は、請求項1から9に係る本発明に共通する技術的特徴である。
【0021】
本発明の実施態様としては、前記一対の対向する電極のうち、表示側に位置する電極が透明導電性酸化物からなり、前記金属塩化合物が銀塩化合物である態様であることが好ましい。また、前記電解質層が、前記金属塩化合物以外に、更に酸化還元されうる補助化合物を含有することが好ましい。
【0022】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態・態様について詳細な説明をする。
【0023】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、ED方式の表示素子において金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進するために用いられる「銀塩溶剤」と同一範疇の化合物である。銀塩溶剤としてメルカプトアゾール等、複素環チオール化合物は良く用いられており、これら公知の銀塩溶剤と比較して、本発明の一般式(1)で示される化合物の構造的特徴は、複素環構造にシアノ基を導入したことにある。本発明者らの検討の結果、銀塩溶剤を上記一般式(1)のような特定構造とすることで、該化合物自身の腐食力が小さいためか又は該化合物が吸着して他の化学種の攻撃から電極を保護するためかは定かでないが、電極の腐食が大きく抑制され、繰り返し駆動時の安定性に優れ、更には、低電圧駆動時の書き換え速度の向上が明らかになった。
【0024】
前記一般式(1)において、Zは複素環を表し、複素環は6員環であっても5員環であってもよいが、好ましくは5員環である。また、Zで表される複素環としては、含窒素複素環であることが好ましく、更には含窒素芳香族複素環であることが好ましい。Zで表される含窒素複素環としては、例えば、ピラゾール環、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられるが、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環が好ましく、最も好ましくは、トリアゾール環である。
【0025】
一般式(1)においてRは置換基を表すが、Rで表される置換基としては、特に制限は無いが、例えば下記の様な置換基が挙げられる。
【0026】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられるが、好ましくは、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アルキルアミノ基、シアノ基であり、更に好ましくは、アルキル基、アルキルチオ基、シアノ基である。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0027】
一般式(1)のnは1〜6の整数を表し、好ましくは、nが1〜4、更に好ましくは、nが1〜3の場合である。nが2以上の場合、それぞれのRは同じであっても、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。但し、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を表すか、もしくは、シアノ基を有する置換基を表す。シアノ基を有する置換基とは、置換基の部分構造としてシアノ基を有していれば良く、特に制限はないが、例えば、o−シアノフェニル基、m−シアノフェニル基、p−シアノフェニル基、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、シアノメチルチオ基、2−シアノエチルチオ基、3−シアノプロピルチオ基などが挙げられるが、好ましくは、o−シアノフェニル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピルチオ基である。
【0028】
シアノ基を有する事により、金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進することが可能となり、すなわち、低電圧駆動時の書き換え速度の向上が達成される。
[一般式(2)で表される化合物]
前記一般式(2)において、ZはC=Nと共に含窒素複素環を構成するのに必要な原子群を表し、含窒素複素環は6員環であっても5員環であってもよいが、より好ましくは5員環である。また、Z及びC=Nで表される含窒素複素環としては、例えば、ピラゾール環、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられるが、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環が好ましく、最も好ましくは、トリアゾール環である。
【0029】
一般式(2)においてR、Rは置換基を表し、R、Rで表される置換基としては、特に制限は無いが、例えば下記の様な置換基が挙げられる。
【0030】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられるが、Rとして好ましくは、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アルキルアミノ基、シアノ基であり、更に好ましくは、アルキル基、アルキルチオ基、シアノ基である。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。Rとして好ましくは、アルキル基、アリール基、アシル基であり、更に好ましくは、アルキル基である。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0031】
一般式(2)においてmは0〜5の整数を表し、好ましくは、mが0〜3、更に好ましくは、mが0〜2の場合である。mが2以上の場合、それぞれのRは同じであっても、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0032】
但し、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を表すか、もしくは、R、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を有する置換基を表す。
【0033】
シアノ基を有する置換基とは、置換基の部分構造としてシアノ基を有していれば良く、特に制限はないが、例えば、o−シアノフェニル基、m−シアノフェニル基、p−シアノフェニル基、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、シアノメチルチオ基、2−シアノエチルチオ基、3−シアノプロピルチオ基などが挙げられるが、好ましくは、o−シアノフェニル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピルチオ基である。
[一般式(3)で表される化合物]
前記一般式(3)においてR、Rは水素原子、置換基を表し、Rは置換基を表す。R〜Rで表される置換基としては、特に制限は無いが、例えば下記の様な置換基が挙げられる。
【0034】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられるが、Rとして好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基である。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。Rとして好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アルキルアミノ基、シアノ基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、シアノ基である。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。Rとして好ましくは、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルカルボンアミド基であり、更に好ましくは、アルキル基である。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0035】
但し、Rがシアノ基を表すか、もしくは、R〜Rのうち少なくとも1つはシアノ基を有する置換基を表す。
【0036】
シアノ基を有する置換基とは、置換基の部分構造としてシアノ基を有していれば良く、特に制限はないが、例えば、o−シアノフェニル基、m−シアノフェニル基、p−シアノフェニル基、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、シアノメチルチオ基、2−シアノエチルチオ基、3−シアノプロピルチオ基などが挙げられるが、好ましくは、o−シアノフェニル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピルチオ基である。
【0037】
一般に、金属の溶解析出を生じさせるためには、電解質中で金属を可溶化することが必要であり、例えば、金属と配位結合を生じさせ、金属と弱い共有結合を生じさせるような、金属と相互作用を示す化学構造種を含む化合物が有用であると考えられる。金属種として特に銀に注目すると、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が銀と相互作用を示す化学構造種であると知られているが、本発明においては、複素環、更には、含窒素複素環を含有する化合物が、銀溶剤として有用に作用し、更には、複素環に加えて更にチオエーテル基を有する化合物が、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴がある。更には、チオール基の除去によりITO電極の電極腐食の抑制が可能となる。
【0038】
次に、一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
本発明の電解質層に含まれる上記一般式(1)で表される化合物の濃度は、電解質層中の可溶成分に対して0.2モル/kg〜10.0モル/kgが好ましい。濃度が0.2モル/kg以上であれば、駆動するのに十分な濃度の銀を溶解させることが可能となり、所望の駆動速度を得ることができる。また、10モル/kg以下であれば上記一般式(1)で表される化合物自体の析出、更には、その他の電解質層に含まれる化合物の析出を防止し、低温保存時での電解質層の安定性が向上する。
【0044】
<表示素子の基本構成>
本発明の表示素子においては、少なくとも1対の対向する電極のうち表示部に近い電極(表示側電極)である電極1にはITO電極等の透明電極が設けられ、他方の表示側から遠い電極2には導電性電極が設けられていることが好ましい。電極1と電極2との間に、本発明に係る金属塩化合物と一般式(1)で表される化合物等を含有した電解質層を有し、少なくとも1対の対向する電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、画像を可逆的に表示することができる。
【0045】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、透明基板であることが好ましく、このような透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板などが好ましく用いられる。本発明に用いられる透明な基板とは、可視光に対する透過率が少なくとも50%以上の基板をいう。
【0046】
また、表示側の基板に対向する基板としては、例えば、金属基板、セラミック基板等の無機基板など不透明な基板を用いることもできる。
【0047】
〔電極〕
(表示側透明電極)
少なくとも1対の対向する電極のうち、表示側には位置する電極(表示側電極)としては、透明電極であることが好ましい。
【0048】
透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0049】
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、およびそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
【0050】
それらの中でも表示側に位置する電極(表示側電極)としては、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の、透明導電性酸化物からなる電極であることが好ましい。
【0051】
表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚さは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0052】
(透明多孔質電極)
透明電極の一つの態様として、上記透明電極上にナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。このナノ多孔質電極は、表示素子を形成した際に実質的に透明で、エレクトロクロミック色素等の電気活性物質を担持することができる。
【0053】
本発明でいうナノ多孔質化構造とは、層中にナノメートルサイズの孔が無数に存在し、ナノ多孔質化構造内を電解質中に含まれるイオン種が移動可能な状態のことを言う。
【0054】
このようなナノ多孔質電極の形成方法としては、ナノ多孔質電極を構成する微粒子を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法などが挙げられる。また、ゾルゲル法や、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、形成することができる。
【0055】
ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。
【0056】
ナノ多孔質電極が透明性を有するためには、平均粒子径が5nm〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。微粒子の形状は不定形、針状、球形など任意の形状のものを用いることができる。
【0057】
ナノ多孔質電極の膜厚は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜5μmの範囲である。
【0058】
(対向電極)
少なくとも1対の対向する電極のうち、表示側と電解液を挟んで反対側に位置する電極(以下、対向電極と称す)としては、電気を通じるものであれば、特に制限されず用いることができるが、透明電極であることが好ましい。
【0059】
対向電極の構成材料としては、上記透明電極と同じ材料に加え、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金、カーボン等、透明性を有しない材料でも用いることができる。
【0060】
(多孔質カーボン電極)
本発明においては、対向電極として多孔質カーボン電極を用いることもできる。吸着担持可能な多孔質炭素電極としては、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体や、ホウ素、窒素、りん等を炭素にドープして焼成した炭素化合物、等が挙げられる。炭素粒子の形状としては、メソフェーズ小球体、繊維状黒鉛が挙げられる。メソフェーズ小球体はコールタールピッチなどを350〜500℃で焼成することで得られ、これら小球体をさらに分級して高温焼成で黒鉛化すると良好な多孔質炭素電極が得られる。また、ピッチ系、PAN系、および気相成長繊維から、繊維状黒鉛を得ることができる。
【0061】
(グリッド電極:補助電極)
本発明に係る少なくとも1対の対向する電極のうち少なくとも一方の電極に、補助電極を付帯させることができる。
【0062】
補助電極は、主となる電極部より電気抵抗が低い材料を用いることが好ましい。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金等を好ましく用いることができる。
【0063】
補助電極は、主となる電極部と基板との間と、主となる電極部の基板と反対側の表面とのいずれに設置することもできる。いずれにしても、補助電極が主となる電極部と電気的に接続していればよい。
【0064】
補助電極の配置パターンには、特に制限はない。直線状、メッシュ状、円形など、求められる性能に応じて適宜形成することが可能である。主となる電極部が複数の部分に分割されている場合には、分割された電極部同士を接続する形で設けてもよい。ただし、主となる電極部が表示側の基板に設けられた透明電極の場合、補助電極は、表示素子の視認性を阻害しない形状と頻度で設けることが求められる。
【0065】
補助電極を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィ法でパターニングする方法、印刷法やインクジェット法、電解メッキや無電解メッキ、銀塩感光材料を用いて露光、現像処理してパターン形成する方法でも良い。
【0066】
補助電極パターンのライン幅やライン間隔は、任意の値で構わないが、導電性を高くするためにはライン幅を太くする必要がある。一方、透明電極に補助電極を付帯させる場合には、視認性の観点から、表示素子観察側から見た補助電極の面積被覆率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0067】
このように透過率と導電性の点から、補助電極のライン幅は1μm以上、100μm以下が好ましく、ライン間隔は50μmから1000μmが好ましい。
【0068】
(電極の形成方法)
透明電極、金属補助電極を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着する方法や、全面形成した後に、フォトリソグラフィ法でパターニングする方法等が挙げられる。
【0069】
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
【0070】
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
【0071】
電極材料を塗布方式で形成する場合には、例えば、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
【0072】
インクジェット方式の中でも、下記の静電インクジェット方式は高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明に係る透明電極や金属補助電極の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、更に好ましくは100mPa・s以上である。
【0073】
〈静電インクジェット方式〉
本発明の表示素子においては、複合電極の透明電極及び金属補助電極の少なくとも1方が、帯電した液体を吐出する内部直径が30μm以下のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内に溶液を供給する供給手段と、前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備えた液体吐出装置を用いて形成されることが好ましい態様の1つである。さらにノズル内の溶液がノズル先端部から凸状に盛り上がった状態を形成する凸状メニスカス形成手段を設けた吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
【0074】
また、凸状メニスカス形成手段を駆動する駆動電圧の印加及び吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を行わせつつ液滴の吐出に際して、凸状メニスカス形成手段の駆動電圧の印加を行わせる第一の吐出制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい。
【0075】
また、凸状メニスカス形成手段の駆動及び吐出電圧印加手段による電圧印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記凸状メニスカス形成手段による溶液の盛り上げ動作と前記吐出電圧の印加とを同期させて行う第二の吐出制御部を有することを特徴とする液体吐出装置を用いること、前記動作制御手段は、前記溶液の盛り上げ動作及び吐出電圧の印加の後に前記ノズル先端部の液面を内側に引き込ませる動作制御を行う液面安定化制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい形態である。
【0076】
この様な静電インクジェットを用いて電極パターンを作製することにより、オンデマンド性に優れ、廃棄材料が少なく、寸法精度に優れた電極を得ることができ有利である。
【0077】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電子絶縁層を設けることができる。
【0078】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物の様な比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0079】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0080】
〔電解質層〕
本発明に係る電解質層は対向する電極の間に設けられ、電解質を含有し、イオンが移動可能な層である。電解質層は金属塩化合物、及び前記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするが、その他に支持電解質、一般式(1)以外の金属塩溶剤、有機溶媒、酸化還元されうる補助化合物、白色散乱物等の成分を含んでもよい。前記成分は白色散乱物のように有機溶媒に溶解しないかまたはほとんど溶解しない成分と、金属塩化合物、金属塩溶剤および支持電解質のように有機溶媒に溶解する液体可溶成分を含むことが可能である。
【0081】
以下に電解質層が含有しうる一般式(1)以外の前記成分について詳細に説明する。
【0082】
〔有機溶媒〕
本発明に係る電解質層は有機溶媒を含有していても良く、用いることが出来る有機溶媒としては、沸点が120〜300℃の範囲にあることが好ましく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリクレジルホスフェート、2エチルヘキシルホスフェート、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート等を挙げることができる。
【0083】
〔金属塩化合物〕
本発明の表示素子に適用しうる金属塩化合物とは、少なくとも1対の対向する電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、特に好ましいのは銀及びビスマスである。
【0084】
〔銀塩化合物〕
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0085】
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体等の公知の銀塩化合物を用いることが好ましい。これらの中でも、ハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物との銀塩を用いるのがより好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が特に好ましい。
【0086】
本発明に係る電解質層の液体可溶成分(有機溶媒を含む)に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質層の安定性が向上する。
【0087】
〔ハロゲンイオン、金属イオン濃度比〕
本発明の表示素子においては、電解質層に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン分子のハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、電解質層に含まれる金属イオンのモル濃度を[Metal](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0088】
式(1)
0≦[X]/[Metal]≦0.01
前記ハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Metal]が0.01よりも大きい場合は、金属の酸化還元反応時に、X→Xが生じ、Xは析出した金属と容易にクロス酸化して析出した金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0089】
本発明に係る電解質層組成物には、更に下記のような成分を併用してもよい。
【0090】
〔支持電解質〕
本発明に係る電解質層組成物において用いることができる支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。
【0091】
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用できる。
【0092】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
【0093】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、好ましくは、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF、(CNSO(C)CHが挙げられる。
【0094】
更には、下記の塩類等が挙げられる。
【0095】
【化8】

【0096】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、好ましくは、(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。
【0097】
本発明に係る支持電解質としては、4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級スピロアンモニウム塩が好ましい。
【0098】
支持電解質の使用量は任意であるが、一般的には、支持電解質は溶媒中に上限としては20モル/L以下、好ましくは10モル/L以下、さらに好ましくは5モル/L以下存在していることが望ましく、下限としては通常0.01モル/L以上、好ましくは0.04モル/L以上存在していることが望ましい。
【0099】
〔金属塩溶剤〕
本発明において、「金属塩溶剤」として一般式(1)で表される化合物が挙げられ、一般式(1)で表される化合物は「銀塩溶剤」として用いられることが好ましい。本発明の目的を達成する上で、一般式(1)で示される化合物のみを<金属塩(特に銀塩)溶剤>として用いることが好ましいが、析出する金属の色調を調節したり、金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進する目的等で公知の銀塩溶剤を併用しても良く、併用可能な公知の銀塩溶剤としては、下記一般式(G1)または一般式(G2)で表される化合物が挙げられる。
【0100】
(一般式(G1)または一般式(G2)で表される化合物)
一般式(G1):Rg11−S−Rg12
〔式中Rg11、Rg12は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでも良く、Rg11とRg12が互いに連結し、環状構造を取っても良い。〕
【0101】
【化9】

【0102】
〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は置換基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
前記一般式(G1)において、Rg11、Rg12は各々置換または無置換の炭化水素基を表し、これらには直鎖の炭化水素基または分岐の炭化水素基が含まれる。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子を含んでも良く、Rg11とRg12が互いに連結し、環状構造を取っても良い。
【0103】
炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0104】
以下、本発明において適用可能な一般式(G1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0105】
G1−1:CHSCHCHOH
G1−2:HOCHCHSCHCHOH
G1−3:HOCHCHSCHCHSCHCHOH
G1−4:HOCHCHSCHCHSCHCHSCHCHOH
G1−5:HOCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHOH
G1−6:HOCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHOH
G1−7:HCSCHCHCOOH
G1−8:HOOCCHSCHCOOH
G1−9:HOOCCHCHSCHCHCOOH
G1−10:HOOCCHSCHCHSCHCOOH
G1−11:HOOCCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCOOH
G1−12:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
G1−13:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
G1−14:HCSCHCHCHNH
G1−15:HNCHCHSCHCHNH
G1−16:HNCHCHSCHCHSCHCHNH
G1−17:HCSCHCHCH(NH)COOH
G1−18:HNCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHNH
G1−19:HNCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHNH
G1−20:HNCHCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCHNH
G1−21:HOOC(NH)CHCHCHSCHCHSCHCHCH(NH)COOH
G1−22:HOOC(NH)CHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCH(NH)COOH
G1−23:HOOC(NH)CHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCH(NH)COOH
G1−24:HN(O=)CCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHC(=O)NH
G1−25:HN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NH
G1−26:HNHN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NHNH
G1−27:HC(O=)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(=O)CH
G1−28:HNOSCHCHSCHCHSCHCHSONH
G1−29:NaOSCHCHCHSCHCHSCHCHCHSONa
G1−30:HCSONHCHCHSCHCHSCHCHNHOSCH
G1−31:HN(NH)CSCHCHSC(NH)NH・2HBr
G1−32:HN(NH)CSCHCHOCHCHOCHCHSC(NH)NH・2HCl
G1−33:HN(NH)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(NH)NH・2HBr
G1−34:〔(CHNCHCHSCHCHSCHCHN(CH2+・2Cl
【0106】
【化10】

【0107】
【化11】

【0108】
次いで、本発明に係る一般式(G2)で表される化合物について説明する。
【0109】
前記一般式(G2)において、Mは水素原子、金属原子を表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は置換基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0110】
一般式(G2)において、Mで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag、等が挙げられる。
【0111】
一般式(G2)のZを構成成分とする含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0112】
一般式(G2)において、Rg21で表される置換基としては、特に制限は無いが、例えば、下記のような置換基が挙げられる。
【0113】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられる。これらの置換基は更に置換基を有するものを含む。
【0114】
次に、一般式(G2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0115】
【化12】

【0116】
【化13】

【0117】
析出する金属の色調を調節したり、金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進する目的等で上記一般式(G2)で表される化合物を併用することは出来るが、本発明の目的効果をいかんなく発揮する上では、極力その使用量を少なくすることが好ましい。
【0118】
[酸化還元されうる補助化合物(プロモーター)]
本発明の表示素子においては、金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進する目的で、酸化還元されうる補助化合物(以下、プロモーターと記す。)を添加しても良い。プロモーターは酸化還元反応の結果として、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものでも良いし、変化するもの、即ち前記エレクトロクロミック化合物で有っても良く、電極上に固定化されていても良く、電解質層に添加されていても良い。
【0119】
本発明に用いることが出来る好ましいプロモーターとしては、例えば以下のような化合物が挙げられる。
1)TEMPO等に代表されるN−オキシル誘導体、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体等、N−O結合を有する化合物。
2)ガルビノキシル等、0−位に嵩高い置換基を導入したアリロキシ遊離基を有する化合物。
3)フェロセン等のメタロセン誘導体。
4)ベンジル(ジフェニルエタンジオン)誘導体。
5)テトラゾリウム塩/ホルマザン誘導体。
6)フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系化合物。
7)ビオロゲン等ピリジニウム化合物。
【0120】
その他、ベンゾキノン誘導体、ベルダジル等ヒドラジル遊離基化合物、チアジル遊離基化合物、ヒドラゾン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアリルアミン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、チアントレン誘導体等もプロモーターとして用いることが出来る。
【0121】
本発明の表示素子に於いては、上記1)及び3)の範疇のプロモーターが好ましく、特にフェロセン誘導体が好ましい。
【0122】
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0123】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質層の有機溶媒(以下、電解質溶媒とも言う)に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0124】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、重量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0125】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0126】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0127】
本発明においては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン系化合物を好ましく用いることができる。
【0128】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0129】
本発明に係る水系高分子の平均分子量は、重量平均で10,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
【0130】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0131】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
【0132】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0133】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0134】
多孔質白色散乱層の膜厚は、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0135】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0136】
〔固体電解質、ゲル電解質〕
本発明に係る電解質は、溶媒やイオン性液体から成る溶液状の電解質以外にも、実質的に溶媒を含まない固体電解質や高分子化合物を含有した高粘度な電解質やゲル状の電解質(以下、ゲル電解質)を用いることができる。
【0137】
本発明に適用可能な固体電解質、ゲル電解質としては、例えば、特開2002−341387号公報に記載の固体電解質、特開2002−341387号公報に記載のポリマー固体電解質、特開2004−20928号公報に記載の高分子固体電解質、特開2004−191945号公報に記載の高分子固体電解質、特開2005−338204号公報に記載の固体高分子電解質、特開2006−323022号公報に記載の高分子固体電解質、特開2007−141658号公報に記載の固体電解質、特開2007−163865号公報に記載の固体電解質、ゲル電解質等を挙げることができる。
【0138】
〔電解質層添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質層に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0139】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0140】
本発明の表示素子において、増粘剤として好ましいのは、平均重合度100〜500のポリエチレングリコールであり、電解質層の有機溶媒に対して質量比で5〜20%の範囲で添加するのが好ましい。
【0141】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0142】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0143】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0144】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚さに相当する。
【0145】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0146】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0147】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0148】
《表示素子の作製》
〔表示電極の作製〕
〔電極1の作製〕
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、膜厚300nmITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜をスパッタリング法に従って形成し、透明電極(表示電極1)を得た。
【0149】
〔対向電極の作製〕
(電極2の作製)
上記電極1と同様に作成した電極上に、下記二酸化チタン分散物を乾燥後の平均膜厚が20μmになるようにスクリーン印刷し、その後50℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、85℃の雰囲気中で1時間乾燥させて多孔質白色散乱層を形成した電極2を作製した。
【0150】
〈二酸化チタン分散物の調製〉
水/エタノール混合溶液に、クラレポバールPVA235(クラレ社製、ポリビニルアルコール樹脂)を固形分濃度で2質量%になるように添加し、加熱溶解させた後、石原産業社製の二酸化チタンCR−90を20質量%となるように超音波分散機で分散させて、二酸化チタン分散物を得た。
【0151】
〔電解質層組成物の調製〕
(電解質層組成物1の調製)
γ−ブチロラクトン1.5gに、支持電解質として下記パラトルエンスルホン酸スピロ−(1,1′)−ビピロリジニウムを0.025g、金属塩化合物としてトリフルオロメタンスルホン酸銀0.1g、例示化合物(1)−22を0.26g溶解して電解質層組成物1とした。
【0152】
(電解質層組成物2の調製)
酸化還元補助化合物としてフェロセンを0.004g加える以外は、電解質層組成物1と同様にして、電解質層組成物2を調製した。
【0153】
(電解質層組成物3〜14の調製)
電解質層組成物2における例示化合物(1)−22を、それぞれ下記表1に示す種類と量に変更する以外は、電解質層組成物2と同様にして、電解質層組成物3〜14を調製した。
【0154】
【表1】

【0155】
以下、実施例に用いた化合物の構造を記す。
【0156】
パラトルエンスルホン酸スピロ−(1,1′)−ビピロリジニウム
【0157】
【化14】

【0158】
〔表示素子の作製〕
(表示素子1の作製)
電極2の周辺部を、平均粒径40μmのガラス製球形ビーズを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした後に、電極2と電極1とを、それぞれストライプ状の電極が直交するように貼り合わせ、更に加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解質層組成物1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0159】
(表示素子2〜14の作製)
上記表示素子1の作製において、電解質組成物1を、電解質組成物2〜14に変更した以外は同様にして、表示素子2〜14を作製した。
〔表示素子の評価〕
〔繰返し駆動させたときの反射率安定性の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、表示側の電極に+1.5Vの電圧を1秒間印加した後に、−1.5Vの電圧を0.5秒間印加する操作を1サイクルとし、+1.5V印加後の波長550nmでの反射率と−1.5V印加後の波長550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング製の分光測色計CM−3700dで測定し、下記式よりコントラストを求めCRとした。
コントラスト:CR=(+1.5V印加後の反射率)/(−1.5V印加後の反射率)
同様の駆動条件で合計100回駆動させ後に同様な方法でCR100を求め、CRとCR100を下記式に従って比較し、コントラスト保持率を5段階評価した。
【0160】
コントラスト保持率(%)=CR100/CR×100
◎ :コントラスト保持率が80%以上
○ :コントラスト保持率が65%以上、80%未満
△ :コントラスト保持率が65%未満
× :コントラストの変化が目視で観測できない。
[電極腐食の評価]
上記繰返し駆動させたときの反射率の安定性の評価に用いた表示素子を分解して、表示電極を取り出し、分光光度計を用いてITOの380nmでの透過率(T100)を測定し、駆動前のITOの透過率(T)を用いて下記式に従って電極腐食率を算出した。結果を表3に示す。繰返し駆動によりITO電極が腐食し、透過率が変動すると推測されており、透過率から算出される電極腐食率が小さいほど、電極の腐食が少なく安定性に優れることを示す。
【0161】
電極腐食率(%)=(1−T/T100)×100
〔書き換え速度の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、電流値の上限を1平方cm辺り10mAに制御して、表示側の電極に−1.5Vの定電圧を1秒間印加してグレー表示させたときの波長550nmにおける反射率(%)をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定し、得られた値をRBK1とした。ここでは、RBK1の値が小さいほど書き換え速度が速いことになる。
【0162】
以上により得られた各表示素子の構成及び評価結果を表2に示す。
【0163】
【表2】

【0164】
表2に記載の結果から明らかな様に、本発明の表示素子1〜12は、本発明に係る化合物を含有した電解質組成物を用いることで、繰り返し駆動した際のコントラスト保持率に優れ、また、電極腐食耐性に優れた表示素子を提供することができた。更には、±1.5Vという低電圧での駆動が可能であるにも係わらず、書き換え速度が速いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の対向する電極間に、金属塩化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物を含有した電解質層を有し、電圧を印加することにより画像を表示することを特徴とする表示素子。
【化1】

一般式(1)中、Zは複素環を表す。Rは置換基を表し、nは1〜6の整数を表す。nが2以上の場合、それぞれのRは同じであっても、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。但し、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を表すか、又は、シアノ基を有する置換基を表す。
【請求項2】
前記一般式(1)において、Rがハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記一般式(1)中、Zは含窒素複素環を表すことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項3に記載の表示素子。
【化2】

一般式(2)中、ZはC=Nと共に含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。R、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の場合、それぞれのRは同じであっても、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。但し、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を表すか、もしくは、R、Rのうち少なくとも1つはシアノ基を有する置換基を表す。
【請求項5】
前記一般式(2)において、R、Rがハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基であることを特徴とする請求項4に記載の表示素子。
【請求項6】
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項4に記載の表示素子。
【化3】

一般式(3)中、R、Rは水素原子、置換基を表し、Rは置換基を表す。但し、Rがシアノ基を表すか、もしくは、R〜Rのうち少なくとも1つはシアノ基を有する置換基を表す。
【請求項7】
前記一般式(3)において、Rが水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基または複素環基、Rが水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基、Rがハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環基であることを特徴とする請求項6に記載の表示素子。
【請求項8】
前記一対の対向する電極のうち、表示側に位置する電極が透明導電性酸化物からなり、前記金属塩化合物が銀塩化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項9】
前記電解質層が、前記金属塩化合物以外に、更に酸化還元されうる補助化合物を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示素子。

【公開番号】特開2010−217692(P2010−217692A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66194(P2009−66194)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】