説明

表示素子

【課題】表示速度が向上し、反射率の安定性の高い表示素子を提供すること。
【解決手段】表示電極と対向電極を有し、その電極間に電解液を有し、該電解液が酸化還元反応により溶解及び析出する金属塩化合物を含有する表示素子であって、該対向電極に酸化物微粒子により形成された多孔質構造体を含有し、該酸化物微粒子表面に酸化還元反応性を有する酸化還元材料が固定化されていることを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的な表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来、紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報をより簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
このような電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間に亘ってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持のために電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
即ち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。また、エレクトロクロミック表示素子は3V以下の低電圧で駆動が可能であるが、黒色の色品質が十分でなく、メモリー性を確保するため表示セルに蒸着膜等の複雑な膜構成が必要などの懸念点がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション(以下、EDと略す)方式が知られている。ED方式は3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
本発明者は、ED方式を詳細に検討した結果、表示速度及び繰り返し駆動させたときの反射率の安定性に課題があることが判明した。ED方式の場合、表示側電極を白表示をするために電圧印加し析出金属を溶解すると対向電極側に金属が析出する。また、表示側電極を黒表示する場合、対向側電極上に析出した金属は速やかに消失しなければならない。
【0008】
表示速度向上のために、電解液に酸化還元物質としてフェロセン類化合物等を添加する方法が挙げられる(例えば、特許文献2参照)が、これにより対極の金属析出は低減でき、表示速度は向上するが、対向電極の金属析出が完全に抑えられず反射率の安定性に課題があった。
【0009】
表示電極側の白表示時に対向電極の金属の析出をなくす、または低減し、黒表示時に対向電極の析出金属が完全消失することが表示速度及び繰り返し駆動させたときの反射率の安定性を両立させる主因子であるが、その両立ができず反射率の安定性には課題があった。
【0010】
また、特許文献1にED方式において、対極に酸化物微粒子の多孔質を使用する方法が開示されているが、酸化物微粒子表面に酸化還元反応性を有する酸化還元材料が固定化されておらず、多孔質内での金属の消失を促進させる本発明内容とは異なるものである。
【特許文献1】特開2006−337457号公報
【特許文献2】特開2008−111941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、表示速度が向上し、反射率の安定性の高い表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0013】
1.表示電極と対向電極を有し、その電極間に電解液を有し、該電解液が酸化還元反応により溶解及び析出する金属塩化合物を含有する表示素子であって、該対向電極に酸化物微粒子により形成された多孔質構造体を含有し、該酸化物微粒子表面に酸化還元反応性を有する酸化還元材料が固定化されていることを特徴とする表示素子。
【0014】
2.前記多孔質構造体の厚みが1μm未満であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0015】
3.前記多孔質構造体の空隙率が40%以上70%未満であることを特徴とする前記1または2に記載の表示素子。
【0016】
4.前記多孔質構造体の空孔径が20nm以上200nm未満であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0017】
5.前記多孔質構造体を含有する電極上の酸化還元材料の担持量の厚み方向の変化率が10%未満であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、表示速度が向上し、反射率の安定性の高い表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳述する。
【0020】
本発明の表示素子は、表示電極と対向電極を有し、その電極間に電解液を有し、該電解液が酸化還元反応により溶解及び析出する金属塩化合物を含有する表示素子であって、該対向電極に酸化物微粒子により形成された多孔質構造体を含有し、該酸化物微粒子表面に酸化還元反応性を有する酸化還元材料が固定化されていることを特徴とする。
【0021】
(表示素子の基本構成)
本発明の表示素子においては、表示部には対応する1つの対向電極が設けられている。表示部に近い対向電極の1つである電極を表示側電極、他方を対向電極とする。表示側電極はITO電極等の透明電極、対向電極には金属酸化物粒子で形成された多孔質電極構造体が設けられており、多孔質構造体の表面には酸化還元性を有する酸化還元材料が固定化されている。表示側電極と対向電極との間に電解液が封入されており、電解液中に酸化還元反応により溶解、析出する金属塩化合物が含有されている。
【0022】
(金属塩化合物)
本発明に係る金属塩化合物とは、対向電極上の少なくとも1方の電極上で該対向電極の駆動操作で、溶解、析出を行うことができる金属種を含む塩であれば如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、好ましいのは銀、ビスマスである。銀塩化合物が特に好ましい。
【0023】
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は特に問わない。
【0024】
本発明に係る電解液に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり、所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解液液の安定性が向上する。
【0025】
(対向電極の多孔質構造体)
本発明における対向電極において形成する多孔質構造体の形成方法としては、電極を構成する材料を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで電極を構成する材料と溶媒を含んだ層を形成した後に、120度から300度の温度で加熱することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法が挙げられる。
【0026】
また、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等に添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物または無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物または無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。
【0027】
更にAdv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、多孔質構造体を形成することができる。
【0028】
多孔質構造体を形成する酸化物微粒子は、ITO、酸化チタンなどの金属酸化物が好ましい。酸化物微粒子の一次粒子径は10〜100nmが好ましく、より好ましくは10nm以上80nm未満である。
【0029】
多孔質構造体の厚みは断面TEM写真により観察できる。酸化還元材料の固定化のしやすさ、析出した金属の消失のしやすさの観点から、0.1μm以上1μm未満が好ましい。より好ましくは、0.1μm以上0.6μm未満である。
【0030】
多孔質構造体の空隙率は、基板に多孔質構造体を固着する前後で質量を測り、その増分を多孔質構造体の厚みより算出した体積で割り算出する。多孔質構造体の空隙率は40%以上70%未満が好ましい、より好ましくは50%以上70%未満である。
【0031】
多孔質構造体の空孔径は多孔質構造体を基板に形成後、スパーチュラ等で剥ぎ取り、比表面積測定装置を用いて細孔分布測定により測定できる。ここでは最大頻度の細孔径を空孔径とする。多孔質の空孔径は20nm以上200nm未満が好ましい。より好ましくは60nm以上100nm未満である。
【0032】
多孔質構造体上の酸化還元材料の厚み方向の担持量は、エネルギー分散型X線分光分析法(EDX)、動的二次イオン質量分析法(D−SIMS)、あるいはグロー放電発光分光分析法(GD−OES)で求めることができる。金属の消失のしやすさの観点から、酸化還元材料の担持量の変化率は10%未満が好ましい。より好ましくは5%未満である。
【0033】
(酸化還元材料)
多孔質構造体に固定化する酸化還元反応性を有する酸化還元材料としては、酸化物微粒子により形成された多孔質構造体と化学結合をするための反応性基を有しているメタロセン化合物が挙げられる。かかる反応性基としては、−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)、−NCOまたは−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)が挙げられる。
【0034】
本発明において好ましく用いられるメタロセン化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【0035】
【化1】

【0036】
一般式(1)において、Mはメタロセン構造を形成可能な金属原子を表し、具体的には鉄、ルテニウム、ジルコニウム、チタン等が挙げられる。
【0037】
〜R10は各々独立に水素原子もしくは置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基を表す。但し、R〜R10で示される基の少なくとも1つは、部分構造として上記反応性基を有する。
【0038】
以下に、本発明で用いることができるメタロセン化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
また、本発明において好ましく用いられるメタロセン化合物として、下記一般式(2)で表される構造を有するポリマー化合物が挙げられる。
【0042】
【化4】

【0043】
一般式(2)において、Mはメタロセン構造を形成可能な金属原子を表し、具体的には鉄、ルテニウム、ジルコニウム、チタン等が挙げられる。
【0044】
式中、R11〜R19は、各々独立に水素原子もしくは置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基を表す。
【0045】
Xは繰り返し単位を構成するものであって、置換または無置換の脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素である。Xの繰り返しは同一でもよく、異なっていてもよい。Xは酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素、ハロゲンのいずれの原子を含んでいてもよい。
【0046】
Yはフェロセン部分を持たない共重合体ユニットを表し、ポリマー構造内に含んでいても含んでいなくてもよい。共重合体としては、アクリル基、ビニル基、スチリル基などの重合性基を持つシラン化合物、カルボン酸化合物、リン酸化合物などが挙げられる。
【0047】
X、Y、R11〜R19の内少なくとも1つは部分構造として、上記反応性基を有する。
【0048】
n、mは重合度であり、全体分子量が1000以上となるように設定される整数である。この重合度に特に制限はないが、重合度が高すぎると溶媒への溶解性が低下するため、電極作製上問題となる。そのため適度な溶解性を持つ程度の分子量に設定することが好ましい。
【0049】
以下に、本発明で用いることのできるメタロセンポリマーの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
多孔質構造体に固定化する酸化還元材料としては、下記一般式(3)で表される化合物も挙げられる。
【0055】
【化9】

【0056】
式中、R、R、R、Rは各々独立に水素原子、もしくは置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Zは環状構造を形成するのに必要な原子群を表す。また、R〜R及びZを構成する各々の原子は互いに連結して、環状構造を形成してもよく、Zは更に置換基を有していてもよい。
【0057】
一般式(3)で表される化合物は電極表面と化学吸着する基を有しており、かかる基としては−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)または−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す。)である。
【0058】
以下、一般式(3)で表される化合物を例示する。
【0059】
【化10】

【0060】
(酸化還元材料の固定化)
本発明の表示素子においては、本発明に係る酸化還元材料が酸化物微粒子により形成された多孔質構造体表面と化学吸着する基を有して固定化されていることが好ましい。本発明に係る化学吸着とは、多孔質構造体の表面の水酸基との化学結合による比較的強い吸着状態である。
【0061】
本発明に係る化学吸着する吸着性基としては、上記のように−COOH、−P−O(OH)、−OP=O(OH)、−NCO及び−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)が好ましい。
【0062】
酸化還元材料の多孔質構造体表面への固定化はいずれの段階で行ってもよい。多孔質構造体を形成する酸化物微粒子と酸化還元材料を予め溶媒下で混合し、混合、吸着操作を行った分散液を対向電極基材に塗布してもよいし、対向電極に多孔質構造体を形成後、酸化還元材料を添加し、吸着固定化することもできる。
【0063】
(電解液)
本発明で言う「電解液」とは、一般に水などの溶媒に溶けて溶液がイオン伝導性を示す物質(以下、「狭義の電解液」と言う。)を言うが、本発明の説明においては、狭義の電解液に電解液、非電解液を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解液(「広義の電解液」)と言う。
【0064】
本発明の表示素子においては、電解液が、下記一般式(10)または一般式(11)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0065】
一般式(10) R11−S−R12
前記一般式(10)において、R11、R12は各々置換または無置換の炭化水素基を表し、これらには芳香族の直鎖基または分岐基が含まれる。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでもよい。但し、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。
【0066】
炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0067】
一般に、銀の溶解析出を生じさせるためには、電解液中で銀を可溶化することが必要である。例えば、銀と配位結合を生じさせたり、銀と弱い共有結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学構造種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基も銀溶剤として、有用に作用し、共存化合物への影響が少なく、溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0068】
以下、本発明に係る一般式(10)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0069】
10−1:CHSCHCHOH
10−2:HOCHCHSCHCHOH
10−3:HOCHCHSCHCHSCHCHOH
10−4:HOCHCHSCHCHSCHCHSCHCHOH
10−5:HOCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHOH
10−6:HOCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHOH
10−7:HCSCHCHCOOH
10−8:HOOCCHSCHCOOH
10−9:HOOCCHCHSCHCHCOOH
10−10:HOOCCHSCHCHSCHCOOH
10−11:HOOCCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCOOH
10−12:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
10−13:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
10−14:HCSCHCHCHNH
10−15:HNCHCHSCHCHNH
10−16:HNCHCHSCHCHSCHCHNH
10−17:HCSCHCHCH(NH)COOH
10−18:HNCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHNH
10−19:HNCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHNH
10−20:HNCHCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCHNH
10−21:HOOC(NH)CHCHCHSCHCHSCHCHCH(NH)COOH
10−22:HOOC(NH)CHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCH(NH)COOH
10−23:HOOC(NH)CHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCH(NH)COOH
10−24:HN(=O)CCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHC(=O)NH
10−25:HN(O=)CCHSCHCHSCHC(O=)NH
10−26:HNHN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NHNH
10−27:HC(O=)NHCHCHSCHCHSCHCHNHC(O=)CH
10−28:HNOSCHCHSCHCHSCHCHSONH
10−29:NaOSCHCHCHSCHCHSCHCHCHSONa
10−30:HCSONHCHCHSCHCHSCHCHNHOSCH
10−31:HN(NH)CSCHCHSC(NH)NH・2HBr
10−32:HN(NH)CSCHCHOCHCHOCHCHSC(NH)NH・2HCl
10−33:HN(NH)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(NH)NH・2HBr
10−34:〔(CHNCHCHSCHCHSCHCHN(CH・2Cl
【0070】
【化11】

【0071】
【化12】

【0072】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物10−2が好ましい。
【0073】
【化13】

【0074】
次いで、本発明に係る一般式(11)で表される化合物について説明する。
【0075】
前記一般式(11)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zはイミダゾール環類を除く含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRは同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0076】
一般式(11)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH、N(CH、N(C、N(CH1225、N(CH1633、N(CHCH等が挙げられる。
【0077】
一般式(11)のZで表される含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0078】
一般式(11)のRで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル等の各基が挙げられ、アルキルカルボンアミド基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等の各基が挙げられ、アリールカルボンアミド基としては、例えば、ベンゾイルアミノ等が挙げられ、アルキルスルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールスルホンアミド基としては、例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ等が挙げられ、アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等の各基が挙げられ、アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等が挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等の各基が挙げられ、アリールカルバモイル基としては、例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルファモイル基としては、例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等の各基が挙げられ、アリールスルファモイル基としては、例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられ、アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等の各基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等の各基が挙げられ、アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル等が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等の各基が挙げられ、アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等の各基が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基は更に置換基を有するものを含む。
【0079】
次に、一般式(11)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0080】
【化14】

【0081】
【化15】

【0082】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物11−12、11−18が好ましい。
【0083】
本発明の表示素子においては、電解液が下記一般式(12)または(13)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0084】
【化16】

【0085】
前記一般式(12)において、Lは酸素原子またはCHを表し、R〜Rは各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0086】
また、前記一般式(13)において、R、Rは各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0087】
前記一般式(12)において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0088】
以下、一般式(12)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0089】
【化17】

【0090】
前記一般式(13)において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0091】
以下、一般式(13)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0092】
【化18】

【0093】
上記例示した一般式(12)及び一般式(13)で表される化合物の中でも、特に例示化合物12−1、13−2、13−3が好ましい。
【0094】
本発明に係る一般式(12)、(13)で表される化合物は電解液溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲で更に別の溶媒を併せて用いることができる。
【0095】
具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、且つ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0096】
更に本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th
ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electrolytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0097】
本発明において、電解液溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解液溶媒質量の10質量%以上、90質量%以下が好ましい。特に好ましい電解液溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解液が析出しやすくなる。
【0098】
(白色散乱物)
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0099】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解液溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0100】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0101】
本発明では、上記白色粒子の中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した酸化チタンを用いることができる。
【0102】
これらの白色粒子の内、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0103】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が電解液中に分散された形態が好ましい。分散機としては、メディアミル、ボールミル等の媒体型分散機、高速撹拌型分散機、超音波分散機を用いることができる。この中で、密閉空間内で処理ができる点からバッチ式の高速撹拌型分散機が好ましい。
【0104】
(電解液添加の増粘剤)
本発明の表示素子においては、電解液に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0105】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類、ポリビニルアセタール類である。
【0106】
(その他の添加剤)
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0107】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくはリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0108】
これら3つのRDに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0109】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜6 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダ 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVI
(基板)
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。
【0110】
これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更にステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号公報(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。
【0111】
これらの支持体には、米国特許第4,141,735号明細書のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行ってもよい。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。
【0112】
更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0113】
(表示側電極)
本発明の表示素子においては、表示側電極が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0114】
電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては10Ω/□以下が好ましく、1Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0115】
(表示素子のその他の構成要素)
本発明の表示素子には、必要に応じてシール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0116】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり、封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0117】
柱状構造物は基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0118】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合は、その高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合は、スペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0119】
(表示素子駆動方法)
本発明の表示素子の駆動操作は単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明で言う単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号公報の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0120】
(商品適用)
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0122】
実施例1
《表示素子の作製》
〔表示側電極の作製〕
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ピッチ145μm、電極幅130μmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成し、透明電極(電極1)を得た。
【0123】
〔対向電極の作製〕
(ガラス基板上へのITO膜の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知の方法を用いて、電極厚み0.1μm、ピッチ145μm、電極間隔130μmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を得た。
【0124】
(多孔質電極1の作製)
ITO付きガラス基板上に、ITOインク(X−490CN27、住友金属鉱山製、平均粒子径:20nm)に酸化亜鉛粒子(20nm:和光純薬製)をITO粒子に対し15質量%になるように混合、撹拌し、混合液をスピンコート法により塗布した。180℃で焼成を行い、乾燥後、希硝酸(比重1.38の硝酸を10倍に希釈したもの)中に浸漬した後、洗浄、乾燥し、厚み0.4μmの多孔質電極1を得た。
【0125】
(多孔質電極2の作製)
ITO付きガラス基板上に、ITOインク(X−490CN27、住友金属鉱山製、平均粒子径:20nm)をスピンコート法により塗布し、その後180℃で焼成を行った。焼成後また塗布、焼成を計3回繰り返し、厚み1.2μmの多孔質電極2を得た。
【0126】
(多孔質電極3の作製)
ITO付きガラス基板上に、ITOインク(X−490CN27、住友金属鉱山製、平均粒子径:20nm)をスピンコート法により塗布し、その後180℃で焼成を行った。焼成後また塗布、焼成を計2回繰り返し、厚み0.9μmの多孔質電極3を得た。
【0127】
(多孔質電極4の作製)
ITO付きガラス基板上に、ITOインク(X−490CN27、住友金属鉱山製、平均粒子径:20nm)をスピンコート法により塗布し、その後180℃で焼成を行い、厚み0.4μmの多孔質電極4を得た。
【0128】
(多孔質電極5の作製)
ITO付きガラス基板上に、ITOインク(X−490CN27、住友金属鉱山製、平均粒子径:20nm)に酸化亜鉛粒子(34nm、シーアイ化成ナノテック)をITO粒子に対し15質量%になるように混合、撹拌し、混合液をスピンコート法により塗布した。180℃で焼成を行い、乾燥後、希硝酸(比重1.38の硝酸を10倍に希釈したもの)中に浸漬した後、洗浄、乾燥し、厚み0.4μmの多孔質電極5を得た。
【0129】
(酸化還元材料含有液の調製)
例示化合物(1)−8を3mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解させて、酸化還元材料含有液を調製した。
【0130】
〔対向電極1〕
(基板ガラス上へのITO膜の作製)で作製した基板を、調製した酸化還元材料含有液に80℃、12時間浸漬し、酸化還元材料を固定化した対向電極1を作製した。
【0131】
〔対向電極2〕
多孔質電極1を対向電極2とした。
【0132】
〔対向電極3〕
多孔質電極2を酸化還元材料含有液に80℃、12時間浸漬し、酸化還元材料を固定化した対向電極3を作製した。
【0133】
〔対向電極4〕
多孔質電極2の代わりに多孔質電極3を用いた他は、対向電極3と同様にして対向電極4を作製した。
【0134】
〔対向電極5〕
多孔質電極2の代わりに多孔質電極4を用いた他は、対向電極3と同様にして対向電極5を作製した。
【0135】
〔対向電極6〕
多孔質電極2の代わりに多孔質電極5を用いた他は、対向電極3と同様にして対向電極6を作製した。
【0136】
〔対向電極7〕
ITOインク(X−490CN27、住友金属鉱山製、平均粒子径:20nm)にジョンクリルエマルジョンPDX7696(80nm、BASF製)をITO粒子に対し15質量%になるように混合、撹拌し、混合液1L(総固形分量、20質量%)を調製した。混合液中に酸化還元材料含有液100mlを添加し、80℃で混合撹拌を24時間行った後、混合液をスピンコート法により基板ガラス上へのITO膜に塗布した。180℃で焼成を行い、乾燥後、1Mの水酸化ナトリウム液に浸漬し、エマルジョンを洗い流した後、洗浄、乾燥し、厚み0.4μmの対向電極7を作製した。
【0137】
〔対向電極8〕
対向電極7の作製において、ITOインク、エマルジョン、酸化還元材料含有液を混合後、超音波分散処理を行った他は、同様にして対向電極8を作製した。
【0138】
〔電解液1、2の作製〕
ジメチルスルホキシド(DMSO)とγ−ブチロラクトンを6:4の割合で混合した溶媒に、金属塩化合物として1.00mol/Lのトシル酸銀、及び支持電解質塩として1.33mol/Lの例示化合物11−12を溶解させた。この電解液100gに対して、高分子材料である分子量20万のポリビニルブチラールと酸化チタン(TiO)とを、質量比で0.2:1.2の割合で100g添加し、これを高速撹拌型分散機(プライミクス、アジホモミキサ)を用いて均一に分散させて電解液1を作製した。
【0139】
また、作製した電解液1に対し例示化合物(1)−8を0.3mmol添加し、酸化還元材料を含有した電解液2を作製した。
【0140】
〔表示素子1の作製〕
周辺部を平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした対向電極1の上に、平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを散布した後に、対向電極1と表示側電極を貼り合わせ、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0141】
〔表示素子2〜8の作製〕
表示素子1の作製において、対向電極1を対向電極2に変更し、また電解液1を電解液2に変更した以外は同様にして、表示素子2を作製した。また、表示素子1の作製において、対向電極1を対向電極3〜8に変更した以外は同様にして、表示素子3〜8を作製した。
【0142】
《評価》
〔多孔質構造体の評価〕
(多孔質構造体の厚み)
多孔質構造体の厚みは断面を切り出し、TEM写真撮影を行い、100μmの範囲で等間隔に10点、厚みを計量し、その平均値を対向電極多孔質構造体の厚みとした。
【0143】
(多孔質構造体の空隙率)
基板ガラス上に作製したITOの膜、及び対向電極1〜8の質量を測定し、それぞれの差分を形成した多孔質構造体の質量とした。多孔質構造体の厚みから多孔質構造体の体積を算出し、多孔質構造体の質量を体積で除し、多孔質構造体の密度を算出した。多孔質構造体の密度を、ITO粒子の密度で除した値を対向電極多孔質構造体の空隙率とした。
【0144】
(多孔質構造体の空孔径)
作製した各多孔質電極の多孔質構造体部分を一部剥ぎ取り、細孔分布測定(日本ベル製 細孔分布測定器 BellSorp mini)を行い、細孔分布径のピークの値を細孔分布径とした。
【0145】
(多孔質構造体上の酸化還元材料の担持量の厚み方向の変化率)
各表示素子試料について、エネルギー分散型X線分光分析法(EDX)での収束イオンビーム加工装置(FIB)(エスエスアイナノテクノロジー製イオン顕微鏡SMI2050)を用いてTEM用試料を作成し、日本電子製JEM2010F形透過型電子顕微鏡及びThermoNoran製SYSTEM SIXエネルギー分散型X線分光分析装置を用いて多孔質構造体におけるFeの量を測定した。
【0146】
ここで、動的二次イオン質量分析法とは、試料表面にO、Cs、Ar、Xeなどのイオンを照射し、表面から放出される二次イオンを検出する方法である。この方法は、連続的にイオンを照射し続けて試料を削りながら測定する方法であるため、深さ方向の分布状態が分析できる。多孔質構造体の主要元素とFeの相対感度からFeの含有量を深さ方向で求めることができる。実施例では、米Physical Electric社製 ADEPT−1010を使用した。
【0147】
測定条件
一次イオン:O
加速電圧:5kV
一次イオン電流:300nA
一次イオン照射面積:300μm角。
【0148】
Feの含有量の変化率は以下のように求めた。深さ方向にFeの含有量を5点測定し、その平均値Feaveを算出した。平均値から最も絶対値として離れている測定値をFeapartとし、次式より計算した。
【0149】
Fe含有量の変化率=|Feapart−Feave|/Feave×100。
【0150】
〔表示素子の評価〕
(書換速度の評価)
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、電流値の上限を1平方cm辺り10mAに制御して、表示側の電極に−1.5Vの定電圧を0.5秒間印加してグレー表示させたときの波長550nm反射率をコニカミノルタセンシング製の分光測色計CM−3700dで測定し、得られた値をRBKとした。ここでは、RBKの値が小さいほど黒表示の書換速度が速いことになる。
【0151】
(繰り返し駆動させたときの反射率の安定性の評価)
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、−1.5Vの電圧を1.5秒間印加して、グレー表示させたときの波長550nmと+1.5Vの電圧を1.5秒間印加して、着色表示させたときの可視光領域の極大吸収波長での反射率をコニカミノルタセンシング製の分光測色計CM−3700dで測定した。
【0152】
同様な駆動条件で合計10回駆動させ、得られたグレーの反射率と着色状態の反射率の平均値を別々に算出し、それぞれRave5、Rave6とした。更に1万回繰り返し駆動させた後に、同様な方法でRave7、Rave8を求めた。RBK3=|Rave5−Rave7|、RCOLOR3=|Rave6−Rave8|とし、RBK3とRCOLOR3を繰り返し駆動させたときの反射率の安定性の指標とした。ここでは、RBK3とRCOLOR3の値が小さいほど、繰り返し駆動させたときの反射率の安定性に優れることになる。
【0153】
【表1】

【0154】
上表より、本発明の表示素子は、書換速度及び繰り返し駆動させたときの反射率の安定性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示電極と対向電極を有し、その電極間に電解液を有し、該電解液が酸化還元反応により溶解及び析出する金属塩化合物を含有する表示素子であって、該対向電極に酸化物微粒子により形成された多孔質構造体を含有し、該酸化物微粒子表面に酸化還元反応性を有する酸化還元材料が固定化されていることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記多孔質構造体の厚みが1μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記多孔質構造体の空隙率が40%以上70%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記多孔質構造体の空孔径が20nm以上200nm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項5】
前記多孔質構造体を含有する電極上の酸化還元材料の担持量の厚み方向の変化率が10%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。

【公開番号】特開2010−97091(P2010−97091A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269235(P2008−269235)
【出願日】平成20年10月18日(2008.10.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】