説明

表示装置、アレイ基板、及び表示装置の駆動方法

【課題】各画素に映像信号として電圧信号を供給すると共に表示する階調を映像信号の大きさで制御する表示装置において、画素毎に階調再現性にばらつきが生じるのを抑制する。
【解決手段】スイッチSWaを開いている選択期間において、ソースが電源端子ND1に接続された駆動トランジスタDRのドレインとゲートとを接続することによりトランジスタDRのゲート−ソース間電圧をその閾値電圧に設定する第1動作と、トランジスタDRのドレインとゲートとの接続を断った状態で、トランジスタDRのゲート電位を変位させることによりゲート−ソース間電圧を閾値電位よりも深い電圧に設定する第2動作と、トランジスタDRのドレインとゲートとを接続することによりゲート−ソース間電圧を変化させる第3動作と、トランジスタDRのドレインとゲートとの接続を断った状態で、トランジスタDRのゲート電位を映像信号に対応した大きさの電圧だけ変位させる第4動作とをこの順に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、アレイ基板、及び表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置では、各画素で表示する階調を、映像信号の大きさで制御する。特許文献1には、映像信号として電圧信号を利用するアクティブマトリクス型有機EL表示装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された表示装置の画素は、pチャネル電界効果トランジスタである駆動トランジスタと、有機EL素子と、第1及び第2キャパシタと、第1乃至第3スイッチングトランジスタとを含んでいる。駆動トランジスタと第1スイッチングトランジスタと有機EL素子とは、高電位電源線と低電位電源線との間で、この順に直列に接続されている。第1キャパシタは、高電位電源線と駆動トランジスタのゲートとの間に接続されている。第2スイッチングトランジスタは、駆動トランジスタのドレインとゲートとの間に接続されている。第2キャパシタの一方の電極は、駆動トランジスタのゲートに接続されている。第3スイッチングトランジスタは、映像信号線と第2キャパシタの他方の電極との間に接続されている。
【0004】
この表示装置では、画素間で駆動トランジスタの閾値電圧がばらついていたとしても、それに起因して、有機EL素子に流す駆動電流の大きさがばらつくことはない。しかしながら、この表示装置では、画素間で駆動トランジスタの移動度がばらついている場合、それに起因して、駆動電流の大きさがばらつく。そのため、この表示装置では、階調再現性が画素ごとにばらつく可能性がある。
【特許文献1】米国特許第6229506号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、各画素に映像信号として電圧信号を供給すると共に表示する階調を映像信号の大きさで制御する表示装置において、画素ごとに、階調再現性のばらつき発生するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によると、ソースが第1電源端子に接続された駆動トランジスタと、画素電極と第2電源端子に接続された対向電極とそれらの間に介在した活性層とを含んだ表示素子と、前記駆動トランジスタのドレインと前記画素電極との間に接続された出力制御スイッチとを各々が含んだ複数の画素を具備し、前記出力制御スイッチを開いている選択期間において、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続することにより前記駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧をその閾値電圧に設定する第1動作と、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの接続を断った状態で、前記駆動トランジスタのゲート電位を変位させることにより前記ゲート−ソース間電圧を前記閾値電位よりも深い電圧に設定する第2動作と、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続することにより前記ゲート−ソース間電圧を変化させる第3動作と、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの接続を断った状態で、前記駆動トランジスタのゲート電位を映像信号に対応した大きさの電圧だけ変位させる第4動作とをこの順に行うことを特徴とする表示装置が提供される。
【0007】
本発明の第2側面によると、複数の画素と、それらが形成する列に沿って配列した複数の映像信号線と、複数の制御信号線とを具備し、前記複数の画素のそれぞれは、ソースが第1電源端子に接続された駆動トランジスタと、画素電極と第2電源端子に接続された対向電極とそれらの間に介在した活性層とを含んだ表示素子と、前記駆動トランジスタのドレインと前記画素電極との間に接続された出力制御スイッチと、定電位端子と前記駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第1キャパシタと、一方の電極が前記駆動トランジスタのゲートに接続された第2キャパシタと、前記第2キャパシタの他方の電極と前記映像信号線との間に接続された映像信号供給制御スイッチと、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの間に接続されたダイオード接続スイッチと、前記制御信号線と前駆駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第3キャパシタとを含んだことを特徴とする表示装置が提供される。
【0008】
本発明の第3側面によると、複数の画素回路と、それらが形成する列に沿って配列した複数の映像信号線と、複数の制御信号線とを具備し、前記複数の画素回路のそれぞれは、ソースが第1電源端子に接続された駆動トランジスタと、画素電極と、前記駆動トランジスタのドレインと前記画素電極との間に接続された出力制御スイッチと、定電位端子と前記駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第1キャパシタと、一方の電極が前記駆動トランジスタのゲートに接続された第2キャパシタと、前記第2キャパシタの他方の電極と前記映像信号線との間に接続された映像信号供給制御スイッチと、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの間に接続されたダイオード接続スイッチと、前記制御信号線と前駆駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第3キャパシタとを含んだことを特徴とするアレイ基板が提供される。
【0009】
本発明の第4側面によると、ソースが第1電源端子に接続された駆動トランジスタと、画素電極と第2電源端子に接続された対向電極とそれらの間に介在した活性層とを含んだ表示素子と、前記駆動トランジスタのドレインと前記画素電極との間に接続された出力制御スイッチとを各々が含んだ複数の画素を具備した表示装置の駆動方法であって、前記出力制御スイッチを開いている選択期間において、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続することにより前記駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧をその閾値電圧に設定する第1動作と、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの接続を断った状態で、前記駆動トランジスタのゲート電位を変位させることにより前記ゲート−ソース間電圧を前記閾値電位よりも深い電圧に設定する第2動作と、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続することにより前記ゲート−ソース間電圧を変化させる第3動作と、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの接続を断った状態で、前記駆動トランジスタのゲート電位を映像信号に対応した大きさの電圧だけ変位させる第4動作とをこの順に行うことを特徴とする駆動方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、各画素に映像信号として電圧信号を供給すると共に表示する階調を映像信号の大きさで制御する表示装置において、画素ごとに、階調再現性にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一態様に係る表示装置を概略的に示す平面図である。図2は、図1の表示装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す部分断面図である。図3は、図1の表示装置が含む画素の等価回路図である。なお、図2では、表示装置を、その表示面,すなわち前面又は光出射面,が下方を向き、背面が上方を向くように描いている。
【0013】
この表示装置は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した下面発光型の有機EL表示装置である。この有機EL表示装置は、図1に示すように、表示パネルDPと、映像信号線ドライバXDRと、走査信号線ドライバYDRとを含んでいる。
【0014】
表示パネルDPは、図1及び図2に示すように、例えば、ガラス基板などの絶縁基板SUBを含んでいる。
【0015】
基板SUB上には、図2に示すように、アンダーコート層UCが形成されている。アンダーコート層UCは、例えば、基板SUB上にSiNx層とSiOx層とをこの順に積層してなる。
【0016】
アンダーコート層UC上では、半導体層SCが配列している。各半導体層SCは、例えば、p型領域とn型領域とを含んだポリシリコン層である。
【0017】
アンダーコート層UC上では、図示しない下部電極がさらに配列している。これら下部電極は、例えば、n+型ポリシリコン層である。
【0018】
半導体層SC及び下部電極は、ゲート絶縁膜GIで被覆されている。ゲート絶縁膜GIは、例えばTEOS(tetraethyl orthosilicate)などを用いて形成することができる。
【0019】
ゲート絶縁膜GI上には、図1及び図3に示す走査信号線SL1乃至SL4が形成されている。走査信号線SL1乃至SL4は、図1に示すように、各々が後述する画素PXの行方向(X方向)に延びており、画素PXの列方向(Y方向)に配列している。走査信号線SL1乃至SL4は、例えばMoWなどからなる。
【0020】
ゲート絶縁膜GI上では、図示しない上部電極がさらに配列している。これら上部電極は、例えばMoWなどからなる。上部電極は、走査信号線SL1乃至SL4と同一の工程で形成することができる。
【0021】
走査信号線SL1、SL2及びSL4のそれぞれは半導体層SCと交差しており、これら交差部は薄膜トランジスタを構成している。また、上部電極は半導体層SCと交差しており、これら交差部も薄膜トランジスタを構成している。具体的には、走査信号線SL1と半導体層SCとの交差部が形成している薄膜トランジスタは、図1乃至図3に示す出力制御スイッチSWaである。走査信号線SL2と半導体層SCとの交差部が形成している薄膜トランジスタは、図1及び図3に示すダイオード接続スイッチSWc及びリセット信号供給制御スイッチSWdである。走査信号線SL4と半導体層SCとの交差部が形成している薄膜トランジスタは、図1及び図3に示す映像信号供給制御スイッチSWbである。上部電極と半導体層SCとの交差部が形成している薄膜トランジスタは、図1及び図3に示す駆動トランジスタDRである。
【0022】
なお、この例では、駆動トランジスタDR及びスイッチSWa乃至SWdは、トップゲート型のpチャネル薄膜トランジスタである。また、図2において参照符号Gで示す部分は、走査信号線SL1に接続された、スイッチSWaのゲートである。
【0023】
上部電極は、下部電極と向き合っている。上部電極と下部電極とそれらの間に介在している絶縁膜GIとは、図1及び図3に示すキャパシタC1乃至C3を構成している。
【0024】
ゲート絶縁膜GI、走査信号線SL1乃至SL4、及び上部電極は、図2に示す層間絶縁膜IIで被覆されている。層間絶縁膜IIは、例えばプラズマCVD法などにより成膜されたSiOxなどからなる。
【0025】
層間絶縁膜II上には、図1及び図3に示す映像信号線DLとリセット信号線RLと電源線PSLとが形成されている。層間絶縁膜II上には、図2に示すソース電極SE及びドレイン電極DEがさらに形成されている。
【0026】
映像信号線DLは、図1に示すように、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。映像信号線DLは、映像信号供給制御スイッチSWbのドレインに接続されている。
【0027】
リセット信号線RLは、この例では、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。リセット信号線RLは、リセット信号供給制御スイッチSWdのドレインに接続されている。
【0028】
電源線PSLは、この例では、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。電源線PSLは、駆動トランジスタDRのソースとキャパシタC1の下部電極とに接続されている。
【0029】
ソース電極SE及びドレイン電極DEは、層間絶縁膜II及びゲート絶縁膜GIに設けられたコンタクトホールを介して薄膜トランジスタのソース及びドレインにそれぞれ接続されている。ソース電極SE及びドレイン電極DEは、画素PXが含む素子間の接続に利用している。
【0030】
映像信号線DLとリセット信号線RLと電源線PSLとソース電極SEとドレイン電極DEとは、例えば、Mo/Al/Moの三層構造を有している。これらは、同一工程で形成可能である。
【0031】
映像信号線DLとリセット信号線RLと電源線PSLとソース電極SEとドレイン電極DEとは、図2に示すパッシベーション膜PSで被覆されている。パッシベーション膜PSは、例えばSiNxなどからなる。
【0032】
パッシベーション膜PS上では、画素電極PEが配列している。各画素電極PEは、パッシベーション膜PSに設けたコンタクトホールを介して、図2のドレイン電極DEに接続されている。
【0033】
画素電極PEは、この例では光透過性の前面電極である。また、画素電極PEは、この例では陽極である。画素電極PEの材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電性酸化物を使用することができる。
【0034】
パッシベーション膜PS上には、さらに、隔壁絶縁層PIが形成されている。隔壁絶縁層PIには、画素電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられているか、或いは、画素電極PEが形成する列又は行に対応した位置にスリットが設けられている。ここでは、一例として、隔壁絶縁層PIには、画素電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられていることとする。
【0035】
隔壁絶縁層PIは、例えば、有機絶縁層である。隔壁絶縁層PIは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0036】
画素電極PE上には、活性層として、発光層を含んだ有機物層ORGが形成されている。発光層は、例えば、発光色が赤色、緑色、又は青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。この有機物層ORGは、発光層に加え、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層などもさらに含むことができる。
【0037】
隔壁絶縁層PI及び有機物層ORGは、対向電極CEで被覆されている。この例では、対向電極CEは、画素PX間で互いに接続された電極,すなわち共通電極,である。また、この例では、対向電極CEは、陰極であり且つ光反射性の背面電極である。対向電極CEは、例えば、パッシベーション膜PSと隔壁絶縁層PIとに設けられたコンタクトホールを介して、映像信号線DLと同一の層上に形成された電極配線(図示せず)に電気的に接続されている。各々の有機EL素子OLEDは、画素電極PEと、有機物層ORGと、対向電極CEとを含んでいる。
【0038】
各画素PXは、図1に示すように、駆動トランジスタDRと、スイッチSWa乃至SWdと、有機EL素子OLEDと、キャパシタC1乃至C3とを含んでいる。上記の通り、この例では、駆動トランジスタDR及びスイッチSWa乃至SWdはpチャネル薄膜トランジスタである。
【0039】
駆動トランジスタDRと出力制御スイッチSWaと有機EL素子OLEDとは、第1電源端子ND1と第2電源端子ND2との間で、この順に直列に接続されている。この例では、電源端子ND1は高電位電源端子であり、電源端子ND2は低電位電源端子である。
【0040】
具体的には、駆動トランジスタDRのソースは電源端子ND1に接続されており、有機EL素子OLEDの対向電極CEは電源端子ND2に接続されている。出力制御スイッチSWaは、駆動トランジスタDRのドレインと有機EL素子OLEDの画素電極PEとの間に接続されており、そのゲートは走査信号線SL1に接続されている。
【0041】
キャパシタC1は、定電位端子と駆動トランジスタDRのゲートとの間に接続されている。この例では、キャパシタC1は、下部電極が電源線PSLに接続されており、上部電極が駆動トランジスタDRのゲートに接続されている。
【0042】
映像信号供給制御スイッチSWbとキャパシタC2とは、映像信号線DLと駆動トランジスタDRのゲートとの間で、この順に直列に接続されている。この例では、映像信号供給制御スイッチSWbは、映像信号線DLとキャパシタC2の下部電極との間に接続されており、そのゲートは走査信号線SL4に接続されている。また、キャパシタC2の上部電極は、駆動トランジスタDRのゲートに接続されている。
【0043】
キャパシタC3は、制御信号線である走査信号線SL3と駆動トランジスタDRのゲートとの間に接続されている。この例では、キャパシタC3は、下部電極が走査信号線SL3に接続されており、上部電極が駆動トランジスタDRのゲートに接続されている。
【0044】
ダイオード接続スイッチSWcは、駆動トランジスタDRのゲートとドレインとの間に接続されている。ダイオード接続スイッチSWcのゲートは、走査信号線SL2に接続されている。
【0045】
リセット信号供給制御スイッチSWdとキャパシタC2とは、リセット信号線RLと駆動トランジスタDRのゲートとの間で、この順に直列に接続されている。この例では、リセット信号供給制御スイッチSWdは、リセット信号線RLとキャパシタC2の下部電極との間に接続されており、そのゲートは走査信号線SL2に接続されている。
【0046】
なお、この表示パネルDPから対向電極CEや有機物層ORGを除いた構造がアレイ基板に相当している。また、画素PXから対向電極CEや有機物層ORGを除いたものが画素回路に相当している。
【0047】
映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、この例では、表示パネルDPにCOG(chip on glass)実装している。映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、COG実装する代わりに、TCP(tape carrier package)実装してもよい。
【0048】
映像信号線ドライバXDRには、映像信号線DLが接続されている。この例では、映像信号線ドライバXDRには、リセット信号線RLと電源線PSLとがさらに接続されている。映像信号線ドライバXDRは、映像信号線DLに映像信号として電圧信号を出力する。加えて、映像信号線ドライバXDRは、リセット信号線RLのリセット信号として電圧信号(定電圧)を出力すると共に、電源線PSLに電源電圧を供給する。
【0049】
走査信号線ドライバYDRには、走査信号線SL1、SL2及びSL4が接続されている。この例では、走査信号線ドライバYDRには、制御信号線である走査信号線SL3がさらに接続されている。走査信号線ドライバYDRは、走査信号線SL1、SL2及びSL4にそれぞれ走査信号として電圧信号を出力する。加えて、走査信号線ドライバYDRは、走査信号線SL3に走査信号又は制御信号として電圧信号を出力する。
【0050】
図4は、図1及び図2に示す表示装置の駆動方法の一例を概略的に示すタイミングチャートである。図中、横軸は時間を示し、縦軸は電位を示している。
【0051】
図4において、「XDR出力」のうち、「VsigM」と表記した期間は、M行目の画素PXに供給すべき映像信号VsigMを、映像信号線ドライバXDRが映像信号線DLに出力している期間を示している。また、図4において、「SL1電位」乃至「SL4電位」で示す波形は走査信号線SL1乃至SL4の電位をそれぞれ示している。
【0052】
この駆動方法では、画素PXを行毎に順次選択する。また、或る行の画素PXを選択している期間と、次の行の画素PXを選択している期間とを部分的に重ね合わせる。そして、各画素PXの選択期間ではリセット動作と書込動作とを順次行い、非選択期間では表示動作を行う。
【0053】
例えば、m行目の画素を選択する期間(以下、m行目選択期間という)では、まず、m行目の画素PXが含むスイッチSWaを開く(OFF)。これと同時に又はこれに続いて、以下に説明する第1乃至第3動作を含んだリセット動作を開始する。
【0054】
すなわち、まず、駆動トランジスタDRのゲート−ソース間電圧Vgsをその閾値電圧Vthに設定する第1動作を行う。具体的には、選択した画素PXが含むスイッチSWc及びSWdを閉じる(ON)。このとき、スイッチSWa及びSWbは開いたままとしておく。スイッチSWc及びSWdを閉じると、時間の経過と共に、駆動トランジスタDRのゲート−ソース間電圧Vgsはその閾値電圧Vthに近づいていく。
【0055】
なお、この例では、表示装置を駆動している間、リセット信号線RLには、リセット信号Vrstが供給される。すなわち、映像信号線ドライバXDRは、リセット信号線RLの電位を一定に保つ。
【0056】
次いで、走査信号線SL3の電位を、電圧ΔV1だけ上昇させる。駆動トランジスタDRのゲート電位は、走査信号線SL3の電位変化に伴って一時的に上昇するが、やがて、閾値電圧Vthになる。その後、スイッチSWc及びSWdを開くことにより、第1動作を終了する。なお、走査信号線SL3の電位は、スイッチSWc及びSWdを閉じるのと同時に上昇させてもよい。
【0057】
次に、駆動トランジスタDRのゲート−ソース間電圧Vgsをその閾値電圧Vthよりも深い電圧に設定する第2動作を行う。すなわち、走査信号線SL3の電位を、電圧ΔV1だけ下降させる。このとき、スイッチSWa乃至SWcは開いたままとしておく。
【0058】
走査信号線SL3の電位を変化させると、これに伴って、駆動トランジスタDRのゲート電位も変化する。キャパシタC1乃至C3のキャパシタンスをそれぞれC1乃至C3とすると、走査信号線SL3の電位を電圧ΔV1だけ下降するのに伴い、駆動トランジスタDRのゲート電位は電圧ΔV1×C3/(C1+C2+C3)だけ下降する。その結果、駆動トランジスタDRのゲート−ソース間電圧Vgsは、その閾値電圧Vthよりも深い電圧Vth−ΔV1×C3/(C1+C2+C3)になる。
【0059】
次いで、駆動トランジスタDRのゲート−ソース間電圧Vgsをその移動度に対応した大きさΔV2だけ高める第3動作を行う。具体的には、スイッチSWa及びSWbを開いたまま、スイッチSWc及びSWdを一定時間D3だけ閉じる。
【0060】
スイッチSWc及びSWdを閉じると、駆動トランジスタDRの特性が如何様であろうと、そのゲート−ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vthに近づく。但し、スイッチSWc及びSWdを閉じている時間D3が十分に短ければ、この第3動作を完了した時点における駆動トランジスタDRのゲート−ソース間電圧Vgsの大きさは、その移動度の大きさを反映する。すなわち、ゲート−ソース間電圧Vgsは、駆動トランジスタDRの移動度が大きい場合には、駆動トランジスタDRの移動度が小さい場合と比較して、閾値電圧Vthにより近い値になる。
【0061】
その後、書込動作として、駆動トランジスタDRのゲート電位を映像信号に対応した大きさの電圧だけ変位させる第4動作を行う。具体的には、スイッチSWa、SWc及びSWdを開いたまま、スイッチSWbを閉じる。そして、映像信号線ドライバXDRから、映像信号線DLに、映像信号として電圧信号Vsig(m)を出力する。その後、スイッチSWa、SWc及びSWdを開いたまま、スイッチSWbを開く。
【0062】
第4動作を行うと、キャパシタC2の下部電極の電位は、電圧ΔV3=−[Vsig(m)−Vrst]だけ下降する。その結果、ゲート−ソース間電圧Vgsは、電圧Vth−ΔV1×C3/(C1+C2+C3)+ΔV2−ΔV3×C2/(C1+C2+C3)となる。
【0063】
以上のリセット動作及び書込動作を終了した後、選択している画素PXのスイッチSWaを閉じる。これにより、m行目選択期間を終了する。
【0064】
スイッチSWaを閉じると、有機EL素子OLEDには、駆動トランジスタDRのゲート−ソース間電圧Vgsに対応した大きさの駆動電流Idrvが流れる。非選択期間では、スイッチSWaは閉じたままとする。したがって、各画素PXの有機EL素子OLEDは、その画素PXが次に選択されるまで、駆動電流Idrvの大きさに対応した輝度で発光し続ける。すなわち、非選択期間において、各画素PXは表示動作を継続する。
【0065】
ここで、キャパシタC3及び走査信号線SL3を省略したこと以外は図1及び図2に示したのと同様の構造を有している表示装置を、第2及び第3動作を省略したこと以外は図4を参照しながら説明したのとほぼ同様の方法により駆動する場合を考える。この場合、第4動作を終了した時点における駆動トランジスタDRのゲート−ソース間電圧Vgsは、電圧Vth−ΔV3×C2/(C1+C2)となる。すなわち、この場合、画素PX間における駆動トランジスタDRの閾値電圧Vthのばらつきに起因して駆動電流Idrvの大きさが画素PX間でばらつくことはないが、画素PX間における駆動トランジスタDRの移動度のばらつきに起因して駆動電流Idrvの大きさがばらつく。そのため、この場合、階調再現性にばらつきを可能性がある。つまり、全画面同一表示を行った場合に、輝度均一性を十分得られない可能性がある。
【0066】
これに対し、図4を参照しながら説明した駆動方法では、第1乃至第4動作によって、駆動トランジスタDRのゲート−ソース間電圧Vgsを、電圧Vth−ΔV1×C3/(C1+C2+C3)+ΔV2−ΔV3×C2/(C1+C2+C3)に設定する。そのため、画素PX間で駆動トランジスタDRの閾値電圧Vthや移動度がばらついていたとしても、それに起因して、有機EL素子に流す駆動電流Idrvが大きくばらつくことはない。したがって、本態様によると、画素毎に階調再現性のばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0067】
電圧ΔV1×C3/(C1+C2+C3)は、例えば0.5V乃至1.0Vの範囲内とする。例えば、キャパシタンスC1及びC2をそれぞれ0.4pFとし、キャパシタンスC3を0.2pFとし、電圧ΔV1を5Vとすると、電圧ΔV1×C3/(C1+C2+C3)を1.0Vとすることができる。
【0068】
第1動作でスイッチSWc及びSWdを閉じている時間D1は、第1動作で走査信号線SL3の電位を上昇させてからスイッチSWc及びSWdを開くまでの時間D2と等しいか又はそれよりも長い。時間D2は、例えば180μsec以上とする。
【0069】
第3動作でスイッチSWc及びSWdを閉じている時間D3は、時間D1及びD2と比較してより短い。時間D3は、例えば40μsec以下とし、典型的には20μsec乃至35μsecとする。
【0070】
時間D3を上記のように定めると、駆動トランジスタDRの移動度のばらつきが階調再現性に与える影響をほぼ完全に排除することができる。例えば、駆動トランジスタDRの移動度は、平均値が100cm2/V・secであり、この平均値に対して±5%の範囲内でばらついているとする。時間D3を上記のように定めると、電圧ΔV2の最大値と最小値との差を10mV程度とすることができ、駆動トランジスタDRの移動度のばらつきが階調再現性に与える影響をほぼ完全に排除することができる。
【0071】
以上、図1の構成を採用した表示装置について説明したが、表示装置には他の構成を採用することも可能である。例えば、リセット信号線RLは、走査信号線SL1と略平行に敷設すると共に、走査信号線ドライバYDRに接続してもよい。或いは、スイッチSWdとリセット信号線RLとを省略し、映像信号線DLにリセット信号線RLの役割を担わせてもよい。或いは、キャパシタC3と制御信号線SL3とを省略し、映像信号線DLに制御信号線SL3の役割を担わせてもよい。或いは、キャパシタC3と制御信号線SL3とを省略すると共にスイッチSWdのゲートを別途設けた走査信号線に接続し、リセット信号線RLに制御信号線SL3の役割を担わせてもよい。或いは、スイッチSWdとリセット信号線RLとキャパシタC3と制御信号線SL3とを省略し、映像信号線DLにリセット信号線RL及び制御信号線SL3の役割を担わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一態様に係る表示装置を概略的に示す平面図。
【図2】図1の表示装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す部分断面図。
【図3】図1の表示装置が含む画素の等価回路図。
【図4】図1及び図2に示す表示装置の駆動方法の一例を概略的に示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0073】
C1…キャパシタ、C2…キャパシタ、C3…キャパシタ、CE…対向電極、DE…ドレイン電極、DL…映像信号線、DP…表示パネル、DR…駆動トランジスタ、G…ゲート、GI…ゲート絶縁膜、II…層間絶縁膜、ND1…電源端子、ND2…電源端子、OLED…有機EL素子、ORG…有機物層、PE…画素電極、PI…隔壁絶縁層、PS…パッシベーション膜、PSL…電源線、PX…画素、RL…リセット信号線、SC…半導体層、SE…ソース電極、SL1…走査信号線、SL2…走査信号線、SL3…走査信号線、SL4…走査信号線、SUB…絶縁基板、SWa…出力制御スイッチ、SWb…映像信号供給制御スイッチ、SWc…ダイオード接続スイッチ、SWd…リセット信号供給制御スイッチ、UC…アンダーコート層、XDR…映像信号線ドライバ、YDR…走査信号線ドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソースが第1電源端子に接続された駆動トランジスタと、画素電極と第2電源端子に接続された対向電極とそれらの間に介在した活性層とを含んだ表示素子と、前記駆動トランジスタのドレインと前記画素電極との間に接続された出力制御スイッチとを各々が含んだ複数の画素を具備し、
前記出力制御スイッチを開いている選択期間において、
前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続することにより前記駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧をその閾値電圧に設定する第1動作と、
前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの接続を断った状態で、前記駆動トランジスタのゲート電位を変位させることにより前記ゲート−ソース間電圧を前記閾値電位よりも深い電圧に設定する第2動作と、
前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続することにより前記ゲート−ソース間電圧を変化させる第3動作と、
前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの接続を断った状態で、前記駆動トランジスタのゲート電位を映像信号に対応した大きさの電圧だけ変位させる第4動作とをこの順に行うことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第3動作において前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続している時間は、前記ゲート−ソース間電圧が前記第2動作によって設定した電圧から前記閾値電圧へと変化するのに要する最長時間と比較してより短いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第3動作において前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続している時間は、前記第1動作において前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続している時間と比較してより短いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記複数の画素が形成する列に沿って配列した複数の映像信号線をさらに具備し、
前記複数の画素のそれぞれは、定電位端子と前記駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第1キャパシタと、一方の電極が前記駆動トランジスタのゲートに接続された第2キャパシタと、前記第2キャパシタの他方の電極と前記映像信号線との間に接続された映像信号供給制御スイッチと、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの間に接続されたダイオード接続スイッチとをさらに含んだことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
複数の制御信号線をさらに具備し、
前記複数の画素のそれぞれは、前記制御信号線と前駆駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第3キャパシタをさらに含んだことを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
複数のリセット信号線をさらに具備し、
前記複数の画素のそれぞれは、前記第2キャパシタの前記他方の電極と前記リセット信号線との間に接続されたリセット信号供給制御スイッチをさらに含んだことを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
複数の制御信号線と、複数のリセット信号線とをさらに具備し、
前記複数の画素のそれぞれは、前記制御信号線と前駆駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第3キャパシタと、前記第2キャパシタの前記他方の電極と前記リセット信号線との間に接続されたリセット信号供給制御スイッチとをさらに含んだことを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項8】
複数の画素と、それらが形成する列に沿って配列した複数の映像信号線と、複数の制御信号線とを具備し、
前記複数の画素のそれぞれは、ソースが第1電源端子に接続された駆動トランジスタと、画素電極と第2電源端子に接続された対向電極とそれらの間に介在した活性層とを含んだ表示素子と、前記駆動トランジスタのドレインと前記画素電極との間に接続された出力制御スイッチと、定電位端子と前記駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第1キャパシタと、一方の電極が前記駆動トランジスタのゲートに接続された第2キャパシタと、前記第2キャパシタの他方の電極と前記映像信号線との間に接続された映像信号供給制御スイッチと、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの間に接続されたダイオード接続スイッチと、前記制御信号線と前駆駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第3キャパシタとを含んだことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
複数のリセット信号線をさらに具備し、
前記複数の画素のそれぞれは、前記第2キャパシタの前記他方の電極と前記リセット信号線との間に接続されたリセット信号供給制御スイッチをさらに含んだことを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示素子は有機EL素子であることを特徴とする請求項1又は8に記載の表示装置。
【請求項11】
複数の画素回路と、それらが形成する列に沿って配列した複数の映像信号線と、複数の制御信号線とを具備し、
前記複数の画素回路のそれぞれは、ソースが第1電源端子に接続された駆動トランジスタと、画素電極と、前記駆動トランジスタのドレインと前記画素電極との間に接続された出力制御スイッチと、定電位端子と前記駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第1キャパシタと、一方の電極が前記駆動トランジスタのゲートに接続された第2キャパシタと、前記第2キャパシタの他方の電極と前記映像信号線との間に接続された映像信号供給制御スイッチと、前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの間に接続されたダイオード接続スイッチと、前記制御信号線と前駆駆動トランジスタのゲートとの間に接続された第3キャパシタとを含んだことを特徴とするアレイ基板。
【請求項12】
複数のリセット信号線をさらに具備し、
前記複数の画素回路のそれぞれは、前記第2キャパシタの前記他方の電極と前記リセット信号線との間に接続されたリセット信号供給制御スイッチをさらに含んだことを特徴とする請求項11に記載のアレイ基板。
【請求項13】
ソースが第1電源端子に接続された駆動トランジスタと、画素電極と第2電源端子に接続された対向電極とそれらの間に介在した活性層とを含んだ表示素子と、前記駆動トランジスタのドレインと前記画素電極との間に接続された出力制御スイッチとを各々が含んだ複数の画素を具備した表示装置の駆動方法であって、
前記出力制御スイッチを開いている選択期間において、
前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続することにより前記駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧をその閾値電圧に設定する第1動作と、
前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの接続を断った状態で、前記駆動トランジスタのゲート電位を変位させることにより前記ゲート−ソース間電圧を前記閾値電位よりも深い電圧に設定する第2動作と、
前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続することにより前記ゲート−ソース間電圧を変化させる第3動作と、
前記駆動トランジスタのドレインとゲートとの接続を断った状態で、前記駆動トランジスタのゲート電位を映像信号に対応した大きさの電圧だけ変位させる第4動作とをこの順に行うことを特徴とする駆動方法。
【請求項14】
前記第3動作において前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続している時間は、前記ゲート−ソース間電圧が前記第2動作によって設定した電圧から前記閾値電圧へと変化するのに要する最長時間と比較してより短いことを特徴とする請求項13に記載の駆動方法。
【請求項15】
前記第3動作において前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続している時間は、前記第1動作において前記駆動トランジスタのドレインとゲートとを接続している時間と比較してより短いことを特徴とする請求項13に記載の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−10993(P2007−10993A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191880(P2005−191880)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】