説明

表示装置、及び入力システム

【課題】手書き入力に伴う位置情報パターンの磨耗が防止された信頼性の高い表示装置、及び入力システムを提供する。
【解決手段】入力装置を用いて入力された手書きの筆跡を表示可能な表示装置3であって、筆跡を表示する表示部35と、表示部35の表示面35a側に設けられ、入力装置における先端部の位置情報を規定する位置情報パターン34aと、を備えた表示装置3に関する。位置情報パターン34aは、表示面35a上に設けられた透明層34Aの内部に形成され、入力装置から照明される照明光を再帰反射可能なプリズムPから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、及び入力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパーと呼ばれる薄型軽量の装置形態を有する表示装置の実用化が進められている。外光を拡散的に反射する反射型表示方式により、バックライトを有する透過型液晶表示装置やELディスプレイなどの自発光型表示装置に比べ消費電力が少ないので電池の小型軽量化を図ることができ、表示装置の小型軽量化が可能である。
【0003】
電子ペーパー方式の表示装置の代表として、電気泳動方式の表示装置がある。加えて、電子ペーパーにおいては、入力装置を用いて手書き文字入力ができたり、表示装置を直感的に操作できるたりすることが望ましい。電子ペーパーに適した薄型軽量の入力装置としては、電子ペーパーの表示面上に、光学的に読み取り可能な位置情報パターン層を設け、ポインタに設置した撮像部によって位置情報パターンを撮像することにより、電子ペーパーの表示面における指示位置を特定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この入力方式は、表示装置に位置情報パターン層を付加するだけで入力機能を付加できるので、薄型軽量の電子ペーパーに適した入力装置である。この表示装置においては、位置情報パターン層および位置情報パターン画像に表示画像が混ざって撮像されることを防止するために位置情報パターン層と表示装置との間に赤外光反射層を設けるようにしている。
【0005】
また、上記位置情報パターンとして、非可視光を再帰反射する材料を含むインキを印刷してなる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この技術ではパターンが再帰反射することで位置情報パターンの反射光が拡散しないため、強い反射光を得ることができと同時に視野角特性に優れたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−21168号公報
【特許文献2】特開2008−268585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術においては、パターンに含有する再帰反射材としてのガラスビーズ内で所定の屈折角を得るべく、パターンを空気と接する表層に形成する必要がある。そのため、入力装置として用いるポインタがパターンに直接接触してしまう。この場合、ポインタによる摩擦に対する強度を確保するのが難しく、ポインタの摩擦によりパターンが剥がれることで表示装置としての信頼性が低下するという問題が生じていた。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、手書き入力に伴う位置情報パターンの磨耗が防止された信頼性の高い表示装置、及び入力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の表示装置は、入力装置を用いて入力された手書きの筆跡を表示可能な表示装置であって、前記筆跡を表示する表示部と、前記表示部の表示面側に設けられ、前記入力装置における先端部の位置情報を規定する位置情報パターンと、を備え、前記位置情報パターンは、前記表示面上に設けられた透明層の内部に形成され、前記入力装置から照明される照明光を再帰反射可能なプリズムから構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の表示装置によれば、位置情報パターンが透明層の内部に形成されたプリズムから構成されるので、入力装置と位置情報パターンとが直接接触することが防止される。よって、位置情報パターンが入力装置との接触によって磨耗することで入力装置との間で位置情報が良好に規定できなくなるといった不具合の発生を防止できる。したがって、手書き入力に伴う位置情報パターンの磨耗が防止された信頼性の高い表示装置を提供できる。
【0011】
また、上記表示装置においては、前記プリズムは、前記透明層を構成する透明樹脂基板を加工することで形成され、前記プリズムと前記表示面との間に空気層が介在するのが好ましい。
この構成によれば、透明層が透明樹脂基板から構成されるので、例えば外圧が加わると表示部とともに撓んだ状態となり、プリズムと表示部との間に介在する空気層が確保される。よって、プリズムと空気層との界面で生じる再帰反射特性を安定して確保することができる。
【0012】
また、上記表示装置においては、前記透明層の表面には、平面視した状態で前記プリズムを除いた領域に反射防止加工が施されているのが好ましい。
一般に反射防止加工は凹凸加工等のアンチグレア処理からなるため、入力装置からの照明光を拡散してしまう。そこで、本発明を採用すればプリズムの直上におけるヘイズ値を小さくすることで照明光の拡散を防止することができ、表示面全体での光反射を抑えつつ、再帰反射を良好に生じさせることができる。
【0013】
また、上記表示装置においては、前記位置情報パターンは複数のドットを有し、各ドットが複数の前記プリズムから構成されているのが好ましい。
この構成によれば、位置情報パターンが複数のプリズムから構成されるので、再帰反射によって入力装置側に反射する光量を増加させることができる。
【0014】
また、上記表示装置においては、前記透明層は、前記表示面に接着層を介して設けられているのが好ましい。
この構成によれば、透明層と表示面との間に設けられた接着層を緩衝層として機能させることができる。
【0015】
本発明の入力システムは、上記の表示装置と、手書きによる筆跡に関する情報を入力する入力装置と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の入力システムによれば、手書き入力に伴う位置情報パターンの磨耗が防止された信頼性の高い入力装置を備えるので、本入力システム自体も信頼性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子ペーパーシステムの概略構成を示す図である。
【図2】電子ペーパーシステムの電気的な構成を具体的に示すブロック図である。
【図3】位置情報パターン層の概略構成を示す図である。
【図4】(a)、(b)は位置情報パターン層の要部を示す拡大図である。
【図5】電気泳動装置の概略構成を示す図である。
【図6】変形例に係るコーナーキューブプリズムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の入力装置、入力システム、及び電子機器に係る一実施例について説明する。図1は本発明の入力装置を含む入力システムに係る構成を示す図である。図1は、入力システムの一例としての電子ペーパーシステムの概略構成を示すものである。
【0019】
電子ペーパーシステム1は、図1に示すように筐体部2と、該筐体部2に設けられた開口部2aに配置される表示装置3と、表示装置3に所定情報を入力する入力装置4と、を備えている。電子ペーパーシステム1は、後述のように入力装置4を用いてユーザーが表示装置3に対して手書きによる筆跡を入力すると、該筆跡に対応した画像が表示装置3に表示されるものである。
【0020】
図2は電子ペーパーシステム1の電気的な構成を具体的に示すブロック図である。図2に示すように表示装置3は、表示体モジュール30と、表示体駆動制御部31と、表示装置制御部32と、表示装置無線通信部33と、を備えている。表示体モジュール30は、位置情報パターン層34と、電気泳動表示装置から構成される表示部35と、を含んでいる。
【0021】
表示体モジュール30は図2に示すように、表示部35の上面に位置情報パターン層34が積層して形成される。位置情報パターン層34は、基材としての透明樹脂からなる基板34Aと、該基板34Aに形成された位置情報パターン34a(図3参照)が略全面に形成されたものである。基板34Aは表示部35の表示光(可視光)を透過する性質を有するものである。
【0022】
位置情報パターン34aは、ドットコード等による位置情報パターン(位置情報を符号化したパターン)となっており、位置情報パターン34aを検出することで、位置情報パターン34aが設けられた表示部35の表面上における位置を一意に規定できるようになっている。このような手法としては、例えば、特開2006−277492号公報や特開2006−127081号公報を例示することができる。
【0023】
入力装置4は、位置検出部41と、入力装置無線通信部42とを備え、ユーザーによる表示装置3に対して手書き入力等の入力操作を検出するためのものである。入力装置4は、タッチペンやスタイラスと同様、ユーザーが手で把持することで使用される態様とされている。すなわち、入力装置4は表示装置3と物理的に分離した形態とされている。
【0024】
このように位置情報パターン層34を光学的に読み取る位置検出方式は、入力装置4と表示装置3とを分離することで、表示装置3の構成要素部品を減らし、軽量、薄型化することができるため、電子ペーパーシステム1に適した表示装置3の形態を実現することができる。
【0025】
入力装置4の位置検出部41は、照明部50と、撮像部51と、画像処理部52と、位置情報検出部53と、を備えている。照明部50は、入力装置4の略先端に配置されるLEDもしくは電球から構成され、近赤外線を含む光を照射するようになっている。照明部50は、ユーザーに把持された入力装置4の先端部が表示体モジュール30の表示部35の表面を指示した場合に、位置情報パターン層34の位置情報パターン34a(図3参照)に光を照射するようになっている。
【0026】
入力装置4が表示体モジュール30の表示部35に触れている位置の検出には、照明部50から照射されて表示部35上に形成された位置情報パターン34aで反射された光を光学的に読み取る位置検出方式を採用している。具体的に入力装置4は、ユーザーに把持された状態で先端部が表示体モジュール30の表示部35の表面を指示した状態で、撮像部51が位置情報パターン34aによる反射光を撮像するようになっている。入力装置4は撮像部51で撮像した画像情報を処理することで該入力装置4の先端部における表示部35の上面での位置を検出可能となっている。
【0027】
撮像部51は、入力装置4の略先端に配置される撮像素子(CCD)により構成される。撮像部51は、位置情報パターン層34の所定の領域を撮像して電気信号に変換し、変換した電気信号を画像処理部52へと送信する。なお、撮像部51に光が入射する入射口付近には、撮像素子の撮像面に表示面の像を形成するための撮像光学系(不図示)が設けられ、赤外光の波長帯域の光のみを透過するフィルタ部材が設けられている。これにより、撮像部51は位置情報パターン34による画像を高いS/N比で撮像することができるようになっている。
【0028】
図3は位置情報パターン層34の概略構成を示す図であり、図3(a)は断面構成を示す図であり、図3(b)は平面構成を示す図である。図3(a)に示すように位置情報パターン層34は接着層70を介して表示部35の上面に設けられている。接着層70としては表示部35と略同等の屈折率のものを用いるのが好ましい。
【0029】
上記位置情報パターン34aは基板34Aの内部に形成されたコーナーキューブプリズムPから構成されるものである。コーナーキューブプリズムは表示部35の上面、すなわち表示面35aとの間に空気を蓄えた空間である空気層Kを有している。コーナーキューブプリズムPは、図3(b)に示すように、光を反射する3つの平面を互いに直角に組み合わせた三角錐の外面等から構成されるものである。プリズム面に入射した所定の光は平面で3回の反射を繰り返した結果、光が最初に入射した方向から180度折り返した方向に反射されるようになっている(再帰反射性)。すなわち、コーナーキューブプリズムPは光を再帰反射させる特性を有したものとなっている。
【0030】
コーナーキューブプリズムPの大きさは、例えば一辺が30μm程度とされている。コーナーキューブプリズムPは例えばプレス加工やナノインプリント技術を用いることで基板34Aに直接成形されている。
【0031】
コーナーキューブプリズムPは基板34Aの内部に形成されているため、入力装置4が位置情報パターン層34の表面に接触した場合であっても、直接接触することが防止されている。すなわち、入力装置4との接触によって位置情報パターン34aが磨耗するといった不具合の発生を防止している。
【0032】
クレーム2
ところで、位置情報パターン層34は入力装置4との接触により押圧されて変形する可能性がある。位置情報パターン層34を構成する基板34Aは可撓性を有するため、例えば入力装置4による外圧によって表示部35とともに撓んだ場合であっても、コーナーキューブプリズムPと表示部35との間に介在する空気層Kが確保されるようになっている。よって、コーナーキューブプリズムPと空気層との界面で生じる再帰反射特性を安定して確保できるようになっている。
【0033】
また、位置情報パターン層34及び表示部35間に設けられた接着層70は緩衝層として機能させることができる。これにより外圧による位置情報パターン層34及び表示部35へのダメージを低減させることができる。
【0034】
なお、位置情報パターン層34が押圧されることで接着層70がコーナーキューブプリズムP下の空間に入り込んでコーナーキューブプリズムP下に空気層が確保できない状態が生じるおそれがある。この場合、コーナーキューブプリズムP界面の屈折率が変化し、再帰反射特性が変化してしまう。
【0035】
そこで、本実施形態ではコーナーキューブプリズムP下の空気層Kを確保する空間の高さd1を十分確保するようにしている。すなわち、位置情報パターン層34が変形した場合であっても空間内に空気層Kが確保できるようにコーナーキューブプリズムPを形成可能な厚さの基板34Aを用いるようにした。例えば、基板34Aの厚みを0.5mmにすれば入力装置4の押圧による表示部35の破損を防止できるとともに上述のように空気層Kを確保することができる。
【0036】
図4は表示装置3の表示面の構成を示す図であり、図4(a)は断面構成を示し、図4(b)は平面構成を示すものである。表示装置3は、一般的な表示体モジュールと同様、表面での光反射を防ぐため、アンチグレア処理(凹凸処理)を施している。本実施形態では、図4(a)に示すように位置情報パターン層34を構成する基板34Aの表面側(表示部35と反対側)にアンチグレア処理による凹凸部34Bを形成している。
【0037】
ここで、アンチグレア処理が施された面は、入力装置4の照明部50が照明する赤外光も拡散するため、コーナーキューブプリズムPを介して入力装置4の撮像部51に到達する光も拡散光となり、光量が減少してしまい位置情報パターン34aの検出精度が低下するといった問題が発生する。
【0038】
そこで、本実施形態に係る基板34Aは、コーナーキューブプリズムPと平面的に重ならない領域にのみ上記凹凸部34Bを形成している。すなわち、コーナーキューブプリズムPの形成領域A1におけるヘイズ値を小さくするとともに、コーナーキューブプリズムPの非形成領域A2のヘイズ値を大きくすることで表示装置3の表示画面全体での光反射を抑えつつ、位置情報パターン層34での再帰反射を良好に生じさせることができる。
【0039】
本実施形態においては、上述のように位置情報パターン34aとしてコーナーキューブプリズムPを採用しているので、入力装置4(照明部50)から照射された照明光が再帰反射によって該入力装置4の先端部に設けられた撮像部51は輝度の高い画像が撮像することができる。
【0040】
画像処理部52は、撮像部51から送られる電気信号が示す画像をデジタル処理することで位置情報パターン層34における位置情報パターン34aの成分を抽出して、位置情報検出部53に送るためのものである。位置情報検出部53は、位置情報パターン34aの配置の特徴から上述の手法を用いることで位置情報を取得できるようになっている。
【0041】
また、位置検出部41は位置情報検出部53が取得した位置情報を入力装置無線通信部42に送信するようになっている。入力装置無線通信部42は受信した位置情報を表示装置3側へと無線方式により送信可能となっている。
【0042】
このような構成に基づき、入力装置4は、表示体モジュール30の表示面(表示部35)に接触した位置に関する情報(例えば座標)を位置情報パターン層34に基づいて検出し、検出した位置座標情報を入力装置無線通信部42から表示装置無線通信部33を介して表示装置制御部32に出力することができる。一方、表示装置3は、表示装置制御部32が位置検出部41で検出された位置座標情報に基づき表示体駆動制御部31を介し表示部35の表示状態を制御することができる。
【0043】
したがって、本実施形態に係る電子ペーパーシステム1においては、入力装置4が表示体モジュール30に接触しながら移動した際の軌跡を表示部35に表示し、手書き入力の様子等を表示部35に随時表示できるようになっている。
【0044】
図5は表示部35を構成する電気泳動装置の概略構成を示す図である。なお、図5においては位置情報パターン層34を表示部35に貼着する接着層70の図示を省略している。図5に示すように、表示部35は、画素電極23、及び透明電極24からなる1対の電極間に設けられたマイクロカプセル65と、このマイクロカプセル65を前記電極23,24間に固定するバインダ層61と、を備えている。マイクロカプセル65は、液相分散媒26と電気泳動粒子25とを含む電気泳動分散液60を収容している。
【0045】
本実施形態においては、電気泳動装置が電気泳動分散液60をマイクロカプセル65化することにより、その取り扱いが容易になり、製造工程を簡略化することが出来るほか、電気泳動粒子25の偏在による表示の不均一性を防止するようになっている。
【0046】
液相分散媒26としては、比較的高い絶縁性を有する有機溶媒を用いることができる。この有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、シリコン系オイル、フッ素系オイル、オリーブ油等の種々の鉱物油および植物油類、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。
【0047】
前記電気泳動粒子25としては、有機または無機の顔料粒子、または、これらを含む複合体を用いることができる。本実施形態では、電気泳動粒子25として白色及び黒色の表示を可能とする二種類の粒子を用いた。
【0048】
上記画素電極23は第1基板11上に形成され、透明電極24は第2基板12上に形成されている。すなわち、第1基板11と第2基板12とは、互いに対向していて、マイクロカプセル65、バインダ層61、画素電極23、及び透明電極24を挟持している。
【0049】
第1基板11としては、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する第1基板11を用いることにより、可撓性を備えた表示部35となる。これにより、可撓性を有する電子ペーパーシステム1を構築する上で有用な電気泳動装置を得ることができる。また、第1基板11は、絶縁材料で構成されたものあり、このような絶縁材料としては、例えばポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
第1基板11の一方の内面(図5中、上側の面)には、複数の画素電極23が設けられている。各画素電極23は、マイクロカプセル65中の電気泳動分散液60に電圧を印加する一方の電極として機能するものである。画素電極23の構成材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、銅、モリブデン、チタン、タンタル等の金属、または、これらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
一方、第1基板11に対向して設けられる第2基板12の下面(図5中、下側の面)には、上記透明電極24が配置されている。第2基板12は、前記第1基板11と同様にして、可撓性を有するのが好ましく、その構成材料としては、例えば、各種セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
第2基板12、及び透明電極24は、いずれも光透過性を有するもの、好ましくは実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)なものとされる。これにより、後述のように電気泳動分散液60中における電気泳動粒子25の状態を、すなわち、表示部35が表示する情報を、目視により容易に認識することが可能となる。
【0053】
透明電極24の構成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープした酸化スズ(FTO)、酸化インジウム(IO)、酸化スズ(SnO)のような導電性金属酸化物の他、ポリアセチレンのような導電性樹脂、導電性金属微粒子を含有する導電性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前述した画素電極23も、このような材料を用いて構成することができる。
【0054】
前記バインダ層61を構成するバインダ材料としては、例えばポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリプロピレン、ABS樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール−塩化ビニル共重合体、プロピレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリレート、グラフト化ポリフィニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の高分子、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化エチレンプロピレン、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化塩化エチレン、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム等の珪素樹脂、その他として、メタクリル酸−スチレン共重合体、ポリブチレン、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
このような構成に基づき、表示部35はマイクロカプセル65中の電気泳動分散液60に、前記電極23,24により電圧を印加することで、電気泳動粒子25の分布状態を変化させることにより表示手段として機能するようになっている。具体的に本実施形態では、黒色及び白色の電気泳動粒子25を第1基板11及び第2基板12側にそれぞれ移動させることでマイクロカプセル65内における電気泳動粒子25の分布状態を変化させることで画素毎に黒色又は白色表示ができるようになっている。
【0056】
ところで、照明部50が照射した赤外光は表示部35によっても反射されるため、撮像部51が撮像する画像には位置情報パターン層34に加え、表示部35による赤外光の反射光が含まれるおそれがある。
【0057】
具体的に、本実施形態に係る表示部35を構成する電気泳動表示装置は上述のように電気泳動粒子25として白粒子及び黒粒子を含み、白黒表示が可能に構成されている。一般に白粒子はチタニア等の光反射波長範囲の広い材料で構成されているため、可視光のみならず、位置情報パターン34aの検出波長域である赤外光も反射してしまう。また、表示部35の反射光は位置情報パターン層34を透過して撮像部51に入射する。このように撮像部51の撮像素子が検出する撮像光量は表示部35の表示状態によって変動し、位置情報パターン34aの成分を抽出する際にノイズとなるおそれがある。
【0058】
これに対し、本実施形態に係る表示装置3においては、上述のように位置情報パターン層34の位置情報パターン34aをコーナーキューブプリズムから構成しているので、反射光の輝度が再帰反射によって高いものとなる。よって、撮像部51に入射する光に電気泳動粒子25(白粒子)による赤外光の反射光が含まれる場合であっても、位置情報パターン層34による反射光の方が高い輝度を有するため、撮像画像の輝度について判定することで位置情報パターン34aの成分を良好に抽出することが可能となっている。
【0059】
続いて、本実施形態の電子ペーパーシステム1の動作について説明する。なお、本説明では、本発明の特徴である入力装置4を用いて表示部35に手書き入力を行う動作を中心に説明する。
【0060】
ユーザーが把持した入力装置4を表示部35上で移動すると、入力装置4の先端部に設けられた照明部50から赤外線を含む光が表示部35に対して照射される。このとき、照明部50から照射された赤外波長域の光は表示部35上に積層された位置情報パターン層34の位置情報パターン34aによる反射光が入力装置4の撮像部51により撮像される。
【0061】
このとき、反射光にはノイズとしての電気泳動粒子25による反射成分が含まれるが、上述のように本実施形態では位置情報パターン34aによる反射光が再帰反射により高輝度であることから光量差を大きくすることで撮像部51が撮像した画像からノイズを除去し、位置情報パターン34aの成分を良好に撮像できる。
【0062】
また、本実施形態ではアンチグレア処理が施されているものの、コーナーキューブプリズムPの形成領域A1におけるヘイズ値を小さくするとともに、コーナーキューブプリズムPの非形成領域A2のヘイズ値を大きくすることで表示装置3の表示画面全体での光反射を抑えつつ、位置情報パターン層34での再帰反射を良好に生じさせることができる。
【0063】
撮像部51は撮像した画像を画像処理部52へと送信する。画像処理部52は、撮像部51から送られる電気信号が示す画像をデジタル処理することで位置情報パターン34aが示す描画パターンを抽出し、抽出した結果を位置情報検出部53へと送信する。位置情報検出部53は、描画パターンの配置の特徴から符号列を抽出し、この符号列を復号して位置情報を取得する。すなわち、入力装置4は、表示部35において該入力装置4の先端部が接触した位置に関する情報(例えば座標)を検出することができる。そして、入力装置4は検出した位置座標情報を入力装置無線通信部42から表示装置無線通信部33を介して、表示装置制御部32へと出力することができる。
【0064】
位置検出部41は、位置情報検出部53が取得した位置情報を入力装置無線通信部42に送信する。入力装置無線通信部42は受信した位置情報を表示装置3の表示装置無線通信部33へと無線方式によって送信する。このように本実施形態では、無線方式により表示装置3側に入力装置4による位置座標情報を出力できるので、入力装置4と表示装置3とを配線で接続する必要が無い。よって、表示装置3に手書き入力を行う際に配線が絡まるといった不具合の発生が防止され、高い操作性を得ることができる。
【0065】
表示装置3は表示装置無線通信部33を介して、入力装置4から取得した位置情報を表示装置制御部32に出力する。表示装置制御部32は位置検出部41で検出された位置座標情報に基づき表示体駆動制御部31を介して表示部35の表示状態を制御する。
【0066】
具体的に、表示体駆動制御部31は、表示部35のうち、取得した位置座標情報に対応する画素電極23及び透明電極24間に印加する電圧を制御し、マイクロカプセル65内の電気泳動粒子25を移動させることで、ユーザーが入力装置4を用いて入力した手書きによる筆跡を表示部35上に表示することができる。
【0067】
以上述べたように、本実施形態に係る電子ペーパーシステム1によれば、入力装置4が位置情報パターン層34の表面に接触した場合であっても、基板34Aの内部に形成されたコーナーキューブプリズムPと入力装置4とが直接接触することが防止される。よって、位置情報パターン34aが磨耗することで位置情報が取得できないといった不具合の発生を防止した信頼性の高いものとなる。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、位置情報パターン34aがそれぞれ1つのコーナーキューブプリズムPから構成される場合について説明したが、図6に示すように複数(本例では2つ)のコーナーキューブプリズムPから位置情報パターン34aを構成するようにしても構わない。この構成によれば、位置情報パターン34aにより入力装置4側に反射される検出光の光量を増加させることができ、位置情報パターン34aに基づく位置情報を精度良く検出することができる。
【0069】
また、上記実施形態では、表示装置3の表示部35として電気泳動表示装置を備える場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、表示部35としては有機エレクトロルミネッセンス装置又は液晶表示装置を用いても構わない。
【符号の説明】
【0070】
1…電子ペーパーシステム、3…表示装置、4…入力装置、K…空気層、P…コーナーキューブプリズム、34a…位置情報パターン、34…位置情報パターン層、34B…凹凸部(反射防止加工)、35…表示部、35a…表示面、50…照明部、51…撮像部、70…接着層、A1…形成領域、A2…非形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力装置を用いて入力された手書きの筆跡を表示可能な表示装置であって、
前記筆跡を表示する表示部と、
前記表示部の表示面側に設けられ、前記入力装置における先端部の位置情報を規定する位置情報パターンと、を備え、
前記位置情報パターンは、前記表示面上に設けられた透明層の内部に形成され、前記入力装置から照明される照明光を再帰反射可能なプリズムから構成されることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記プリズムは、前記透明層を構成する透明樹脂基板を加工することで形成され、前記プリズムと前記表示面との間に空気層が介在することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記透明層の表面には、平面視した状態で前記プリズムを除いた領域に反射防止加工が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記複数の位置情報パターンを有し、該位置情報パターンの各々が複数の前記プリズムから構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記透明層は、前記表示面に接着層を介して設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の表示装置と、
手書きによる筆跡に関する情報を入力する入力装置と、を備えることを特徴とする入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−256291(P2012−256291A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130160(P2011−130160)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】