説明

表示装置、表示方法、及び表示プログラム

【課題】表示装置における操作性を向上させることができる、表示装置、表示方法、及び表示プログラムを提供すること。
【解決手段】表示装置1は、情報を表示するディスプレイ10と、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指との距離と、当該利用者の複数の手指間の距離とを検出する検出部12aと、利用者の複数の手指間の距離変化に応じて、ディスプレイ10に表示されている情報を拡大又は縮小させる表示制御部12bであって、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指との距離に基づき、複数の手指間の距離変化に応じた情報の拡大又は縮小の変化率を変更する、表示制御部12bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、表示方法、及び表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーナビゲーションやカーオーディオ等の各種車載機器に使用される表示装置において、これら車載機器に対する操作入力を受け付けるためのタッチパネルが用いられている。このタッチパネルは、各種の表示画面を表示するディスプレイの前面に設けられており、このタッチパネルに設定された操作領域の中で、ディスプレイの表示画面の一部として表示された操作ボタンに対応する操作領域が押圧されることで、操作入力を受け付ける。
【0003】
このようなタッチパネルを用いた表示装置として、例えば、利用者が親指と人差し指とを画面に接触させた場合に、その画面への複数の接触を検知し、2つの接触点が離れた場合(例えば親指と人差し指とが相互に離れた場合)は、画面に表示されている画像を拡大して表示させ、2つの接触点が近づいた場合(例えば親指と人差し指とが相互に近づいた場合)は、画像を縮小して表示させる、いわゆるピンチイン/アウト操作を行うことが可能な表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−216991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画面への2つの接触点(例えば親指と人差し指が画面に接触している点)の間の距離を利用者が一度に変化させられる量には限度があり、上述の如き従来の装置では、検知された2つの接触点が相互に離れ、又は相互に近づいた場合における、画像の拡大又は縮小の変化率が一定であることから、1回のピンチイン/アウト操作によって画像を拡大又は縮小できる程度に限度があった。このため、1回のピンチイン/アウト操作により所望の程度まで画像の拡大又は縮小ができない場合には、繰り返しピンチイン/アウト操作を行わなければならなかった。このように従来の装置においては、操作性にさらなる向上の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、表示装置における操作性を向上させることができる、表示装置、表示方法、及び表示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の表示装置は、情報を表示する表示手段と、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離と、当該利用者の複数の手指間の距離とを検出する検出手段と、前記利用者の複数の手指間の距離変化に応じて、前記表示手段に表示されている情報を拡大又は縮小させる表示制御手段であって、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離に基づき、前記複数の手指間の距離変化に応じた前記情報の拡大又は縮小の変化率を変更する、表示制御手段と、を備える。
【0008】
また、請求項2に記載の表示装置は、請求項1に記載の表示装置において、前記表示制御手段は、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離が大きくなるほど、前記複数の手指間の距離変化に応じた前記情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定する。
【0009】
また、請求項3に記載の表示装置は、請求項2に記載の表示装置において、前記検出手段は、前記利用者の手指の位置と、当該利用者の視点の位置とを検出し、前記表示制御手段は、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離が大きくなり、且つ、当該利用者の手指の位置と当該利用者の視点の位置との距離が小さくなるほど、前記複数の手指間の距離変化に応じた前記情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定する。
【0010】
また、請求項4に記載の表示装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置において、前記表示制御手段は、前記情報の拡大又は縮小の変化率を示すための複数のマーカを前記表示手段に表示させ、当該表示手段の表示面と利用者の手指との距離に基づき、当該複数のマーカ間の距離を変化させる。
【0011】
また、請求項5に記載の表示方法は、情報を表示手段に表示させる表示ステップと、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離と、当該利用者の複数の手指間の距離とを検出する検出ステップと、前記利用者の複数の手指間の距離変化に応じて、前記表示手段に表示されている情報を拡大又は縮小させる表示制御ステップであって、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離に基づき、前記複数の手指間の距離変化に応じた前記情報の拡大又は縮小の変化率を変更する、表示制御ステップと、を含む。
【0012】
また、請求項6に記載の表示プログラムは、請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の表示装置、請求項5に記載の表示方法、及び請求項6に記載の表示プログラムによれば、表示制御手段は、表示手段の表示面と利用者の手指との距離に基づき、複数の手指間の距離変化に応じた情報の拡大又は縮小の変化率を変更するので、複数の手指間の距離の変化量が同じであっても、表示面と利用者の手指との距離に基づき、情報を拡大又は縮小させる程度を変化させることができる。すなわち、表示面と利用者の手指との距離に基づき、1回のピンチイン/アウト操作によって情報を拡大又は縮小できる程度を、利用者の所望の程度に変化させることができ、表示装置における操作性を向上させることができる。
【0014】
また、請求項2に記載の表示装置によれば、表示制御手段は、表示手段の表示面と利用者の手指との距離が大きくなるほど、複数の手指間の距離変化に応じた情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定するので、1回のピンチイン/アウト操作によって情報を拡大又は縮小できる程度を、利用者にとって直感的な操作で所望の程度に変化させることができ、表示装置における操作性を一層向上させることができる。
【0015】
また、請求項3に記載の表示装置によれば、表示制御手段は、表示手段の表示面と利用者の手指との距離が大きくなり、且つ、利用者の手指の位置と利用者の視点の位置との距離が小さくなるほど、複数の手指間の距離変化に応じた情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定するので、表示手段の表示面と利用者の手指との距離と、利用者の手指の位置と利用者の視点の位置との距離とに応じて変化する変化率を、利用者の遠近感に合致するように当該利用者に把握させることができる。これにより、1回のピンチイン/アウト操作によって情報を拡大又は縮小できる程度を、利用者にとって一層直感的な操作で所望の程度に変化させることができ、表示装置における操作性を一層向上させることができる。
【0016】
また、請求項4に記載の表示装置によれば、表示制御手段は、情報の拡大又は縮小の変化率を示すための複数のマーカを表示手段に表示させ、表示手段の表示面と利用者の手指との距離に基づき、複数のマーカ間の距離を変化させるので、表示手段の表示面と利用者の手指との距離に基づき変化する情報の変化率を、直感的に利用者に把握させることができ、表示装置における操作性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1に係る表示装置を例示するブロック図である。
【図2】変化率テーブルに格納されている情報を例示した表である。
【図3】表示制御処理のフローチャートである。
【図4】表示制御処理の実行時におけるディスプレイを例示した斜視図であり、図4(a)は利用者の親指と人差し指とが表示面に接触した状態を示す図、図4(b)は親指と人差し指とが表示面から離れた状態を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る変化率テーブルに格納されている情報を例示した表である。
【図6】実施の形態2に係る表示制御処理のフローチャートである。
【図7】実施の形態2に係る表示制御処理の実行時におけるディスプレイを例示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る表示装置、表示方法、及び表示プログラムの各実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、これらの各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、本発明に係る表示装置、表示方法、及び表示プログラムは、任意の目的に使用することができるが、以下の各実施の形態では、カーナビゲーションシステムに適用した例を示す。
【0019】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1に係る表示装置について説明する。この実施の形態1は、表示手段の表示面と利用者の手指との距離が大きくなるほど、複数の手指間の距離変化に応じた情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定する形態である。
【0020】
(構成)
最初に、実施の形態1に係る表示装置の構成について説明する。図1は実施の形態1に係る表示装置を例示するブロック図である。この図1に示すように、表示装置1は、ディスプレイ10、近接センサ11、制御部12、及びデータ記録部13を備えている。
【0021】
(構成−ディスプレイ)
ディスプレイ10は、制御部12の制御に基づき、各種の情報を表示する表示手段である。以下の説明では、ディスプレイ10に表示されている情報を、必要に応じて「表示情報」と称する。なお、このディスプレイ10の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0022】
(構成−近接センサ)
近接センサ11は、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指との距離と、当該利用者の複数の手指間の距離とを検出する検出手段である。ここで、「ディスプレイ10の表示面」とは、例えばディスプレイ10の表面を意味する。この近接センサ11としては、例えば、赤外線式センサ、静電容量式センサ、カメラ等を用いることできる。例えば、ディスプレイ10の前面において当該ディスプレイ10の表示面と重なり合うように、透明又は半透明状の投影型静電容量方式のタッチパネルが設けられている場合、このタッチパネルを近接センサ11として用いることができる。この場合、タッチパネルは、当該タッチパネルを構成する各センサ電極の静電容量を検出し、制御部12に出力する。以下では、投影型静電容量方式のタッチパネルを近接センサ11として用いる場合を例として説明する。また、「利用者」とは、表示装置1を利用する全ての者を含むが、表示装置1がカーナビゲーションシステムに適用されている場合においては、車両の運転者及び同乗者である。以下では、運転者及び同乗者のうち、その時点において表示装置1を操作している者を「利用者」と称する。
【0023】
(構成−制御部)
制御部12は、表示装置1の各部を制御するための制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る表示プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して表示装置1にインストールされることで、制御部12の各部を実質的に構成する。
【0024】
この制御部12は、機能概念的に、検出部12a、及び表示制御部12bを備えている。検出部12aは、近接センサ11からの出力に基づき、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指との距離と、当該利用者の複数の手指間の距離とを検出する検出手段である。表示制御部12bは、ディスプレイ10に表示されている情報を拡大又は縮小させる表示制御手段である。これらの制御部12の各部によって実行される処理の詳細については後述する。
【0025】
(構成−データ記録部)
データ記録部13は、表示装置1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)の如き磁気的記録媒体を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、フラッシュメモリの如き半導体型記憶媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0026】
このデータ記録部13は、変化率テーブル13aを備えている。変化率テーブル13aは、複数の手指間の距離変化に応じた表示情報の拡大又は縮小の変化率を特定するための変化率情報を格納する変化率情報格納手段である。図2は、変化率テーブル13aに格納されている情報を例示した表である。図2に示すように、変化率テーブル13aには、項目「距離(cm)」及び「変化率」に対応する情報が、相互に関連付けて格納されている。この内、項目「距離(cm)」に対応して格納される情報は、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指との距離L2の範囲を特定する情報である(図2では「L2=0」や「0<L2≦1」等)。項目「変化率」に対応して格納される情報は、複数の手指間の距離変化に応じた表示情報の拡大又は縮小の変化率を特定するための変化率情報である(図2では「1」や「1.1」等)。ここで、「複数の手指間の距離変化に応じた表示情報の拡大又は縮小の変化率」とは、表示制御部12bが、利用者の複数の手指間の距離変化に応じて表示情報を拡大又は縮小させる場合における、手指間の距離の変化量に対する表示情報の変化量の倍率を意味する。すなわち、「複数の手指間の距離変化に応じた表示情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定する」とは、手指間の距離の変化量に対する表示情報の変化量の倍率を大きくすることを意味する。なお、以下の説明では、「複数の手指間の距離変化に応じた表示情報の拡大又は縮小の変化率」を、必要に応じて「表示情報の変化率」と略記する。図2に示したように、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指との距離L2が大きくなるほど、対応する表示情報の変化率が大きくなっている。
【0027】
(処理)
次に、このように構成された表示装置1によって実行される表示制御処理について説明する。図3は表示制御処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この表示制御処理は、例えば表示装置1への電源投入後に、繰り返し実行される。
【0028】
図3に示すように、表示制御処理が開始されると、検出部12aは、近接センサ11からの出力に基づき、表示面上の2点で利用者の手指の接触が検出されたか否かを判定する(SA1)。
【0029】
その結果、表示面上の2点で利用者の手指の接触が検出されなかった場合(SA1、No)、検出部12aは表示面上の2点で利用者の手指の接触が検出されるまでSA1の処理を繰り返す。
【0030】
一方、SA1の判定の結果、表示面上の2点で利用者の手指の接触が検出された場合(SA1、Yes)、表示制御部12bは、変化率を示すための複数のマーカをディスプレイ10に表示させる(SA2)。図4は、表示制御処理の実行時におけるディスプレイ10を例示した斜視図であり、図4(a)は利用者の親指と人差し指とが表示面に接触した状態を示す図、図4(b)は親指と人差し指とが表示面から離れた状態を示す図である。例えば図4(a)に示すように、表示制御部12bは、2つのマーカ10a(図4(a)では黒丸)をディスプレイ10の上辺近傍に表示させる。この際、表示制御部12bは、表示面上の2点で接触が検出された利用者の手指2間の距離L1(すなわち、検出部12aにより手指2の接触が検出された表示面上の2点間の距離)を、2つのマーカ10a間の距離Lmとする。
【0031】
図3に戻り、SA2の処理の後、検出部12aは、近接センサ11からの出力に基づき、表示面と略直交する方向(以下、「Z軸方向」)に利用者の手指2が移動したか否かを判定する(SA3)。例えば、利用者の手指2がZ軸方向に移動することで、近接センサ11としてのタッチパネルを構成する各センサ電極と利用者の手指2との間の距離が変化し、これに伴って各センサ電極の静電容量が変化した場合に、当該静電容量の変化に応じたタッチパネルの出力に基づき、検出部12aはZ軸方向に利用者の手指2が移動したと判定する。
【0032】
その結果、Z軸方向に利用者の手指2が移動した場合(SA3、Yes)、近接センサ11からの出力に基づき、検出部12aは、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2を検出する(SA4)。例えば、検出部12aは、近接センサ11としてのタッチパネルから出力された当該タッチパネルを構成する各センサ電極の静電容量に基づき、各センサ電極から利用者の手指2までの各距離を算出し、当該算出した各距離のうち最も短い距離を、表示面と利用者の手指2との距離L2として検出する。
【0033】
続いて、検出部12aは、SA4で当該検出部12aが検出したディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が、所定距離(例えば20cm)以下か否かを判定する(SA5)。なお、利用者の手指2が近接センサ11による手指2の検出範囲外に位置していたために、SA4においてディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2を検出できなかった場合には、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が、所定距離以下ではない(所定距離より長い)(SA5、No)と判定するようにしてもよい。
【0034】
その結果、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が、所定距離以下である場合(SA5、Yes)、表示制御部12bは、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2に基づき、表示情報の変化率を特定する(SA6)。具体的には、表示制御部12bは、SA5で検出部12aにより検出された表示面と手指2との距離L2に対応する変化率情報を変化率テーブル13aから取得し、当該取得した変化率情報に基づき、表示情報の変化率を特定する。例えば、SA5で検出部12aにより検出された表示面と手指2との距離L2が2.5cmであった場合、図2の例では、表示情報の変化率は「1.3」と特定される。表示制御部12bは、特定した表示情報の変化率を、例えばRAM(図示省略)に記憶させる。
【0035】
図3に戻り、SA6の処理の後、表示制御部12bは、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2に基づき、SA2で当該表示制御部12bがディスプレイ10に表示させた複数のマーカ10a間の距離Lmを変化させる(SA7)。例えば、表示制御部12bは、SA2で複数のマーカ10aをディスプレイ10に表示させた際の当該2つのマーカ10a間の距離Lmに、SA6で特定した変化率を乗じた値に、当該2つのマーカ10a間の距離Lmを変化させる。この場合、図2に例示したように、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が大きくなるほど、対応する表示情報の変化率が大きくなることから、図4(b)に例示したように、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が大きくなるほど、ディスプレイ10に表示された2つのマーカ10a間の距離Lmが大きくなる。これにより、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2に応じて変化する変化率を、直感的に利用者に把握させることができる。
【0036】
図3に戻り、SA7の処理の後、制御部12はSA3に戻る。以降、SA3においてZ軸方向に利用者の手指2が移動していないと判定されるか(SA3、No)、SA5においてディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が、所定距離以下ではない(所定距離より長い)(SA5、No)と判定されるまで、SA3からSA7の処理を繰り返す。
【0037】
また、SA3において、Z軸方向に利用者の手指2が移動していない場合(SA3、No)、検出部12aは、近接センサ11からの出力に基づき、利用者の複数の手指2間の距離L1を検出する(SA8)。例えば検出部12aは、近接センサ11としてのタッチパネルから出力された当該タッチパネルを構成する各センサ電極の静電容量に基づき、各センサ電極から利用者の手指2までの各距離を算出し、利用者の手指2までの距離が最も短いセンサ電極の位置と、利用者の手指2までの距離が2番目に短いセンサ電極の位置との間の距離を、利用者の複数の手指2間の距離L1として検出する。
【0038】
続いて検出部12aは、SA8で当該検出部12aが検出した利用者の複数の手指2間の距離L1が変化したか否かを判定する(SA9)。
【0039】
その結果、利用者の複数の手指2間の距離L1が変化した場合(SA9、Yes)、表示制御部12bは、利用者の複数の手指2間の距離変化に応じて、ディスプレイ10に表示されている情報を拡大又は縮小させる(SA10)。具体的には、表示制御部12bは、利用者の複数の手指2間の距離L1の変化量に、当該表示制御部12bがSA6で特定しRAMに記憶させた表示情報の変化率を乗じた値を、表示情報の変化量として、当該表示情報を拡大又は縮小させる。
【0040】
例えば、利用者の複数の手指2が表示面に接触した状態で、当該複数の手指2間の距離L1が20%拡大された場合について考える。この場合、SA5で検出される表示面と利用者の手指2との距離L2は0であることから、図2に例示した変化率テーブル13aによれば、SA6において変化率は1と特定される。従って、複数の手指2間の距離L1の変化量「+20%」に変化率1を乗じた値は「+20%」となり、表示制御部12bは表示情報の大きさを20%拡大させる。
【0041】
また、表示面と利用者の手指2との距離L2が2.5cmの状態で、複数の手指2間の距離L1が20%拡大された場合について考える。この場合、SA5で検出される表示面と利用者の手指2との距離L2は2.5cmであることから、図2に例示した変化率テーブル13aによれば、SA6において変化率は1.3と特定される。従って、複数の手指2間の距離L1の変化量「+20%」に変化率1.3を乗じた値は「+26%」となり、表示制御部12bは表示情報の大きさを26%拡大させる。このように、表示面と利用者の手指2との距離L2が大きくなるほど、表示情報の変化率を大きくしているので、複数の手指2間の距離L1の変化量が同じであっても、これに応じた表示情報の変化量が大きくなり、1回のピンチイン/アウト操作によって表示情報を拡大又は縮小できる程度が大きくなる。
【0042】
図3に戻り、SA10の処理の後、制御部12はSA8に戻る。以降、SA9において利用者の複数の手指2間の距離L1が変化していない(SA9、No)と判定されるまで、SA8からSA10の処理を繰り返す。
【0043】
一方、SA9において、利用者の複数の手指2間の距離L1が変化していない場合(SA9、No)、制御部12はSA3に戻る。
【0044】
また、SA5において、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が、所定距離以下ではない(所定距離より長い)場合(SA5、No)、利用者がピンチイン/アウト操作を終了させることを意図しており、表示情報を拡大又は縮小させる必要はないものとし、制御部12は表示制御処理を終了する。
【0045】
(効果)
このように実施の形態1によれば、表示制御部12bは、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2に基づき、複数の手指2間の距離変化に応じた情報の拡大又は縮小の変化率を変更するので、複数の手指2間の距離L1の変化量が同じであっても、表示面と利用者の手指2との距離L2に基づき、表示情報を拡大又は縮小させる程度を変化させることができる。すなわち、表示面と利用者の手指2との距離L2に基づき、1回のピンチイン/アウト操作によって表示情報を拡大又は縮小できる程度を、利用者の所望の程度に変化させることができ、表示装置1における操作性を向上させることができる。
【0046】
特に、表示制御部12bは、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が大きくなるほど、複数の手指2間の距離変化に応じた情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定するので、1回のピンチイン/アウト操作によって表示情報を拡大又は縮小できる程度を、利用者にとって直感的な操作で所望の程度に変化させることができ、表示装置1における操作性を一層向上させることができる。
【0047】
また、表示制御部12bは、情報の拡大又は縮小の変化率を示すための複数のマーカ10aをディスプレイ10に表示させ、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2に基づき、複数のマーカ10a間の距離Lmを変化させるので、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2に基づき変化する表示情報の変化率を、直感的に利用者に把握させることができ、表示装置1における操作性を一層向上させることができる。
【0048】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2に係る表示装置について説明する。この実施の形態2は、表示手段の表示面と利用者の手指との距離が大きくなり、且つ、利用者の手指の位置と利用者の視点の位置との距離が小さくなるほど、複数の手指間の距離変化に応じた情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定する形態である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0049】
(構成−カメラ)
最初に、実施の形態2に係る表示装置1の構成について説明する。本実施の形態2において、表示装置1は、カメラを備えている(図示省略)。カメラは、ディスプレイ10の前方の画像データを取得し、制御部12に出力する。
【0050】
(構成−変化率テーブル)
図5は、実施の形態2に係る変化率テーブル13aに格納されている情報を例示した表である。図5に示すように、変化率テーブル13aには、項目「距離比」及び「変化率」に対応する情報が、相互に関連付けて格納されている。この内、項目「距離比」に対応して格納される情報は、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2を、利用者の手指2の位置と当該利用者の視点の位置との距離で除した値(以下、必要に応じて「距離比」)Rの範囲を特定する情報である(図2では「R=0」や「0<R≦0.05」等)。項目「変化率」に対応して格納される情報は、複数の手指2間の距離変化に応じた表示情報の拡大又は縮小の変化率を特定するための変化率情報である。図5に示したように、距離比Rが大きくなるほど、対応する表示情報の変化率が大きくなっている。すなわち、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が大きくなり、且つ、利用者の手指2の位置と利用者の視点の位置との距離が小さくなるほど、対応する表示情報の変化率が大きくなっている。
【0051】
(処理)
次に、実施の形態2に係る表示装置1によって実行される表示制御処理について説明する。図6は、実施の形態2に係る表示制御処理のフローチャートである。なお、SB1からSB5は図2のSA1からSA5と、SB10からSB13は図2のSA8からSA10と、それぞれ同様であるので、説明を省略する。
【0052】
SB5の処理の後、検出部12aは、近接センサ11及びカメラからの出力に基づき、利用者の手指2の位置と、利用者の視点の位置とを検出する(SB6)。例えば、検出部12aは、近接センサ11としてのタッチパネルから出力された当該タッチパネルを構成する各センサ電極の静電容量に基づき、各センサ電極から利用者の手指2までの各距離を算出し、手指2までの距離が最も短いセンサ電極の位置と、当該センサ電極から手指2までの距離とに基づき、表示面に最も近い手指2の位置を検出する。また、検出部12aは、カメラから入力された画像データを公知の画像認識技術を用いて解析することで、利用者の視点の位置を検出する。
【0053】
続いて検出部12aは、当該検出部12aがSB6で検出した利用者の手指2の位置と、利用者の視点の位置とに基づき、利用者の手指2の位置と利用者の視点の位置との距離L3を検出する(SB7)。
【0054】
次に、表示制御部12bは、SB5で検出部12aが検出したディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2と、SB7で検出部12aが検出した利用者の手指2の位置と利用者の視点の位置との距離とに基づき、表示情報の変化率を特定する(SB8)。具体的には、表示制御部12bは、SB5で検出部12aが検出したディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2を、SB7で検出部12aが検出した利用者の手指2の位置と利用者の視点の位置との距離で除することで、距離比Rを算出し、当該算出した距離比Rに対応する変化率情報を変化率テーブル13aから取得し、当該取得した変化率情報に基づき、表示情報の変化率を特定する。例えば、SB5で検出部12aにより検出された表示面と手指2との距離L2が2.5cmであり、SB7で検出部12aにより検出された利用者の手指2の位置と利用者の視点の位置との距離が30cmであった場合、図5の例では、表示情報の変化率は「1.2」と特定される。表示制御部12bは、特定した表示情報の変化率を、例えばRAM(図示省略)に記憶させる。
【0055】
図6に戻り、SB8の処理の後、表示制御部12bは、SB5で検出部12aが検出したディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2と、SB7で検出部12aが検出した利用者の手指2の位置と利用者の視点の位置との距離とに基づき、SB2で当該表示制御部12bがディスプレイ10に表示させた複数のマーカ10a間の距離Lmを変化させる(SB9)。例えば、表示制御部12bは、SB2で複数のマーカ10aをディスプレイ10に表示させた際の当該2つのマーカ10a間の距離Lmに、SB8で特定した変化率を乗じた値に、当該2つのマーカ10a間の距離Lmを変化させる。この場合、図5に例示したように、距離比Rが大きくなるほど(すなわち、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が大きくなり、且つ、利用者の手指2の位置と利用者の視点の位置との距離が小さくなるほど)、対応する表示情報の変化率が大きくなる。図7は、実施の形態2に係る表示制御処理の実行時におけるディスプレイ10を例示した斜視図である。この図7に示すように、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が大きくなり、且つ、利用者の手指2の位置と利用者の視点3の位置との距離L3が小さくなるほど、ディスプレイ10に表示された2つのマーカ10a間の距離Lmが大きくなる。このように、利用者の手指2がディスプレイ10の表示面から利用者の視点3の位置に近づき、利用者の視界における手指2の視野角が大きくなるほど、表示情報の変化率が大きくなるので、距離比Rに応じて変化する変化率を、利用者の遠近感に合致するように当該利用者に把握させることができる。
【0056】
(効果)
このように実施の形態2によれば、表示制御部12bは、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2が大きくなり、且つ、利用者の手指2の位置と利用者の視点3の位置との距離L3が小さくなるほど、複数の手指2間の距離変化に応じた情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定するので、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2と、利用者の手指2の位置と利用者の視点3の位置との距離L3とに応じて変化する変化率を、利用者の遠近感に合致するように当該利用者に把握させることができる。これにより、1回のピンチイン/アウト操作によって表示情報を拡大又は縮小できる程度を、利用者にとって一層直感的な操作で所望の程度に変化させることができ、表示装置1における操作性を一層向上させることができる。
【0057】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0058】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0059】
(検出部について)
上述の各実施の形態では、検出部12aは、近接センサ11としての投影型静電容量方式のタッチパネルから出力された当該タッチパネルを構成する各センサ電極の静電容量に基づき、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2と、当該利用者の複数の手指2間の距離L1とを検出すると説明したが、これとは異なる原理や方法を用いて、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2と、当該利用者の複数の手指2間の距離L1とを検出するようにしてもよい。例えば、ディスプレイ10の周辺に配置したカメラを近接センサ11として用いることとし、当該カメラによってディスプレイ10の前方の画像データを取得し、公知の画像認識技術を用いることでその画像データにおける各手指2の位置を認識する。これにより、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2と、当該利用者の複数の手指2間の距離L1とを検出するようにしてもよい。また、投影型静電容量方式のタッチパネルとカメラとを組み合わせて、近接センサ11として用いてもよい。
【0060】
(表示制御処理について)
上述の各実施の形態では、表示制御部12bが、変化率を示すための複数のマーカ10aをディスプレイ10に表示させると説明したが、これとは異なる態様で、変化率を示すための情報をディスプレイ10に表示させてもよい。例えば、表示面上の2点で利用者の手指2の接触が検出された場合、表示面上の2点で接触が検出された利用者の手指2間の距離L1に対応する長さLbのバーをディスプレイ10に表示させ、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2に基づき特定される変化率を当該Lbに乗じた値に、バーの長さを変化させるようにしてもよい。あるいは、表示面上の2点で利用者の手指2の接触が検出された場合、表示面上の2点で接触が検出された利用者の手指2間の距離L1を対角線の長さLoとする長方形をディスプレイ10に表示させ、ディスプレイ10の表示面と利用者の手指2との距離L2に基づき特定される変化率を当該Loに乗じた値に、当該長方形の対角線の長さを変化させるようにしてもよい。
【0061】
また、上述の各実施の形態では、表示面上の2点で利用者の手指2の接触が検出された場合を例として説明したが、表示面上の3点以上の点で利用者の手指2の接触が検出された場合についても、図3や図6で示した表示制御処理を同様に実行することができる。この場合、検出部12aは、例えば近接センサ11としてのタッチパネルから出力された当該タッチパネルを構成する各センサ電極の静電容量に基づき、各センサ電極から利用者の手指2までの各距離を算出し、当該算出した各距離のうち最も短い距離を、表示面と利用者の手指2との距離L2として検出する(図3のSA5、図6のSB5)。また、検出部12aは、例えば近接センサ11としてのタッチパネルから出力された当該タッチパネルを構成する各センサ電極の静電容量に基づき、利用者の複数の手指2の位置を特定し、当該特定した各手指2の位置間の距離の平均値を、利用者の複数の手指2間の距離L1として検出する(図3のSA8、図6のSB10)。
【符号の説明】
【0062】
1 表示装置
2 利用者の手指
3 利用者の視点
10 ディスプレイ
10a マーカ
11 近接センサ
12 制御部
12a 検出部
12b 表示制御部
13 データ記録部
13a 変化率テーブル
L1 利用者の手指間の距離
L2 表示面と利用者の手指との距離
L3 利用者の手指の位置と当該利用者の視点の位置との距離
Lm 2つのマーカ間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示する表示手段と、
前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離と、当該利用者の複数の手指間の距離とを検出する検出手段と、
前記利用者の複数の手指間の距離変化に応じて、前記表示手段に表示されている情報を拡大又は縮小させる表示制御手段であって、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離に基づき、前記複数の手指間の距離変化に応じた前記情報の拡大又は縮小の変化率を変更する、表示制御手段と、
を備える表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離が大きくなるほど、前記複数の手指間の距離変化に応じた前記情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記利用者の手指の位置と、当該利用者の視点の位置とを検出し、
前記表示制御手段は、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離が大きくなり、且つ、当該利用者の手指の位置と当該利用者の視点の位置との距離が小さくなるほど、前記複数の手指間の距離変化に応じた前記情報の拡大又は縮小の変化率を大きく設定する、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記情報の拡大又は縮小の変化率を示すための複数のマーカを前記表示手段に表示させ、当該表示手段の表示面と利用者の手指との距離に基づき、当該複数のマーカ間の距離を変化させる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
情報を表示手段に表示させる表示ステップと、
前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離と、当該利用者の複数の手指間の距離とを検出する検出ステップと、
前記利用者の複数の手指間の距離変化に応じて、前記表示手段に表示されている情報を拡大又は縮小させる表示制御ステップであって、前記表示手段の表示面と利用者の手指との距離に基づき、前記複数の手指間の距離変化に応じた前記情報の拡大又は縮小の変化率を変更する、表示制御ステップと、
を含む表示方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させる表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−173980(P2012−173980A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35216(P2011−35216)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】