表示装置およびその製造方法
【課題】開口率の向上に有利であると共に、優れた表示性能を有する表示装置を提供する。
【解決手段】この表示装置は、基体11上に、第1電極層13、発光層を含む有機層14、および第2電極層16が各々順に積層されてなり、X軸方向およびY軸方向に配列された複数の有機発光素子10と、X軸方向に隣り合う有機発光素子10同士に挟まれた間隙領域VZに配置され、2組以上の段差を形成する凹部24Gを含む素子分離絶縁層24とを備える。X軸方向に隣り合い、かつ、互いに異なる色光を発する有機発光素子10における有機層14同士および第2電極層16同士は、凹部24Gによって分断されている。
【解決手段】この表示装置は、基体11上に、第1電極層13、発光層を含む有機層14、および第2電極層16が各々順に積層されてなり、X軸方向およびY軸方向に配列された複数の有機発光素子10と、X軸方向に隣り合う有機発光素子10同士に挟まれた間隙領域VZに配置され、2組以上の段差を形成する凹部24Gを含む素子分離絶縁層24とを備える。X軸方向に隣り合い、かつ、互いに異なる色光を発する有機発光素子10における有機層14同士および第2電極層16同士は、凹部24Gによって分断されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機層を含む自発光型の発光素子を備えた表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機層を含む自発光型の有機発光素子を用いた有機ELディスプレイが実用化されている。有機ELディスプレイは、自発光型であるので、液晶などに比較して視野角が広く、また、高精細度の高速ビデオ信号に対しても十分な応答性を有するものである。
【0003】
これまで有機発光素子については、共振器構造を導入し、発光色の色純度を向上させたり発光効率を高めたりするなど発光層で発生する光を制御することにより、表示性能を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。例えば、基板と反対側の面(上面)から光を取り出すトップエミッション方式においては、基板の上に、駆動トランジスタを介してアノード電極と有機層とカソード電極とが順に積層された構造を採用し、アノード電極とカソード電極との間で有機層からの光を多重反射させている。
【0004】
一般的な有機ELディスプレイでは、画像表示領域において、例えば赤色光を発する有機発光素子と、緑色光を発する有機発光素子と、青色光を発する有機発光素子とが順に繰り返し配列されている。それらの発光色は、各々を構成する有機層の構成材料によって異なっている。そのため、各有機発光素子を形成する際には、発光色ごとに有機層を個別に成膜する必要がある。なお、一般的な有機ELディスプレイでは、アノード電極および有機層は有機発光素子ごとに分割されているのに対し、カソード電極は複数の(好ましくは全ての)有機発光素子によって共有されるように一体化されている。ここで、隣り合う有機発光素子における各有機層は、絶縁層によって互いに分離されている。この絶縁層は、各有機発光素子における発光領域を画定するための開口を有するものである。
【0005】
有機層の形成は、例えば蒸着法により行う。その際、発光領域に応じた開口を有するシャドーマスクを利用して蒸着を行うので、発光領域を画定する絶縁層の開口と、シャドーマスクの開口との位置あわせ(アライメント)を正確に行う必要がある。しかしながら最近では、画像表示領域全体に対する全ての有機発光素子の発光領域の割合、すなわち開口率を向上させるため、絶縁層の幅を狭め、隣接する有機発光素子同士の間隔を縮小化する傾向にある。このため、今後、上記間隔のさらなる縮小化が進むと、各々の発光領域を所定の有機層によって十分かつ確実に埋めることが困難となることが予想される。絶縁層の開口とシャドーマスクの開口との十分なアライメント精度が確保できないことや、シャドーマスク自体の加工精度を十分に確保できないことなどが懸念されるからである。このような製造誤差により、絶縁層の開口を有機層によって十分かつ確実に埋められない場合には、画像表示領域における所定位置での所望の発光輝度が得られなくなり、入力される映像信号に対応した正確な画像表示が困難となってしまう。
【0006】
こうした問題に対し、例えばシャドーマスクの開口を絶縁層の開口よりも大きくしておき、発光領域から絶縁層へ大きくはみ出すように有機層を形成する方法が考えられる。このようにすれば、各々の発光領域を所定の有機層によって確実に埋めることができる。
【0007】
ところが、この場合、隣り合う有機発光素子の有機層の端部が互いに重なり合う状態となる。そのため、一方の有機層の端部に乗り上げた他方の有機層における正孔注入層が、それらの有機層を覆うカソード電極と接触してしまう可能性がある。そうした場合には、正孔注入層を介してアノード電極とカソード電極との間に導通経路が形成され、リーク電流が流れることとなる。そのため、各有機発光素子の駆動制御が十分に行われなくなり、有機ELディスプレイとして正常な映像表示の妨げとなる可能性がある。特に、異なる色光を発光する有機発光素子同士の間でリーク電流が流れると、表示画像における混色の原因となりかねない。
【0008】
そのため、本出願人は、各発光素子を取り囲むようにオーバーハング形状の壁面を有する分離膜を設け、隣り合う発光素子における有機層同士およびカソード電極同士を分離する方法を既に提案している(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第01/39554号パンフレット
【特許文献2】特開2010−44894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、今後、よりいっそうの開口率向上が要求されることも予想される。このため、そのような場合においてもリーク電流の発生を確実に防止し得る表示装置が望まれる。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、開口率の向上に好適であり、より良好な表示性能を発揮し得る表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示装置は、基板上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が各々順に積層されてなり、互いに交差する第1および第2の方向に配列された複数の発光素子と、第1の方向に隣り合う発光素子同士の間に配置され、2組以上の段差を含む分離部とを備える。複数の発光素子における第1電極層同士は互いに分断され、第1の方向に隣り合う発光素子における有機層同士および第2電極層同士は、分離部に含まれる段差によって互いに分断されている。ここでは、例えば第2の方向に、互いに等しい色光を発する複数の発光素子が並び、第1の方向に、互いに異なる色光を発する複数の発光素子が並ぶようにするとよい。
【0013】
本発明の表示装置の製造方法は、基板上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が各々順に積層されてなり、互いに交差する第1および第2の方向に配列された複数の発光素子と、第1の方向に隣り合う発光素子同士の間に配置され、2組以上の段差を含む分離部とを備えた表示装置の製造方法であって、下記の各工程を含むものである。
(A)基板上に、複数の第1電極層を、互いに接することなく離散的に配列する工程。
(B)複数の第1電極層同士の間隙を埋める絶縁層を形成することにより、分離部を形成する工程。
(C)絶縁層に2組以上の段差を形成する工程。
(D)発光層の種類ごとに複数の有機層を順次形成する工程。
(E)有機層を覆うように第2の電極層を形成する工程。
ここで、有機層および第2の電極層を形成する際に、第1の方向に隣り合う発光素子における有機層同士および第2電極層同士を、分離部に含まれる段差によって相互に分断する。
【0014】
本発明の表示装置およびその製造方法では、第1の方向に隣り合う発光素子における第2電極層同士および有機層同士が、分離部に含まれる2組以上の段差によって互いに分断されるので、第1の方向に隣り合う発光素子間における駆動電流のリークが回避される。ここで、第1の方向に隣り合う発光素子同士が、互いに異なる色光を発するものである場合、色ずれが防止される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表示装置およびその製造方法によれば、第1の方向に隣り合う発光素子における第2電極層同士および有機層同士が分離部に含まれる2組以上の段差によって互いに分断されるようにしたので、第1の方向に隣り合う発光素子の相互間隔の狭小化により有機層同士の重なりが生じた場合であっても、第1電極層と第2電極層との短絡、および隣り合う第1電極層同士の短絡を確実に防止することができる。このため、複数の発光素子の相互間隔の狭小化に対応しつつ、各発光素子の駆動制御を十分に行うことができる。その結果、高い開口率を確保しつつ、画像表示領域内での発光輝度分布の均一性や色分離性に優れるなど、高い表示性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す平面図である。
【図4】図1に示した表示領域の構成を表す断面図である。
【図5】図1に示した表示領域の構成を表す他の断面図である。
【図6】図4に示した素子分離絶縁層の凹部の一構成例を拡大して表す断面図である。
【図7】図4に示した素子分離絶縁層の凹部の他の構成例を拡大して表す断面図である。
【図8】図4に示した画素駆動回路形成層の構成を表す平面図である。
【図9】図4に示した有機層を拡大して表す断面図である。
【図10】図1の基板上に設けられた第2電極層およびその周辺の配線パターンの平面形状を表す概略図である。
【図11】図1に示した表示装置の製造方法における一工程を表す断面図である。
【図12】第1の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【図13】第2の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【図14】第3の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明における一実施の形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられる。この表示装置は、基板111の上に表示領域110が形成されたものである。基板111上の表示領域110の周辺には、例えば映像表示用のドライバである信号線駆動回路120、走査線駆動回路130および電源供給線駆動回路140が形成されている。
【0019】
表示領域110には、マトリクス状に二次元配置された複数の有機発光素子10(10R,10G,10B)と、それらを駆動するための画素駆動回路150とが形成されている。画素駆動回路150において、列方向(Y軸方向)には複数の信号線120A(120A1,120A2,・・・,120Am,・・・)が配置され、行方向(X軸方向)には複数の走査線130A(130A1,・・・,130An,・・・)および複数の電源供給線140A(140A1,・・・,140An,・・・)が配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの各交差点に、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つが対応して設けられている。各信号線120Aは信号線駆動回路120に接続され、各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、各電源供給線140Aは電源供給線駆動回路140に接続されている。
【0020】
信号線駆動回路120は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧を、信号線120Aを介して選択された有機発光素子10R,10G,10Bに供給するものである。
【0021】
走査線駆動回路130は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。走査線駆動回路130は、各有機発光素子10R,10G,10Bへの映像信号の書き込みに際し行単位でそれらを走査し、各走査線130Aに走査信号を順次供給するものである。
【0022】
電源供給線駆動回路140は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。電源供給線駆動回路140は、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し互いに異なる第1電位および第2電位のいずれかを適宜供給する。これにより、後述する駆動トランジスタTr1の導通状態または非導通状態の選択が行われる。
【0023】
画素駆動回路150は、基板111と有機発光素子10との間の階層(後述の画素駆動回路形成層112)に設けられている。図2に、画素駆動回路150の一構成例を表す。図2に示したように、画素駆動回路150は、駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、有機発光素子10とを有するアクティブ型の駆動回路である。有機発光素子10は、電源供給線140Aおよび共通電源供給線(GND)の間において駆動トランジスタTr1と直列に接続されている。駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0024】
書込トランジスタTr2は、例えばドレイン電極が信号線120Aと接続されており、信号線駆動回路120からの映像信号が供給されるようになっている。また、書込トランジスタTr2のゲート電極は走査線130Aと接続されており、走査線駆動回路130からの走査信号が供給されるようになっている。さらに、書込トランジスタTr2のソース電極は、駆動トランジスタTr1のゲート電極と接続されている。
【0025】
駆動トランジスタTr1は、例えばドレイン電極が電源供給線140Aと接続されており、電源供給線駆動回路140による第1電位または第2電位のいずれかに設定される。駆動トランジスタTr1のソース電極は、有機発光素子10と接続されている。
【0026】
保持容量Csは、駆動トランジスタTr1のゲート電極(書込トランジスタTr2のソース電極)と、駆動トランジスタTr1のソース電極との間に形成されるものである。
【0027】
図3に、XY平面に広がる表示領域110の一構成例を表す。ここでは、第2電極層16、保護膜18および封止基板19(いずれも後出)を取り去った状態の表示領域110を、上方から眺めた平面構成を表す。表示領域110には、複数の有機発光素子10が、全体としてマトリックス状に順に配列されている。より詳細には、素子分離絶縁層24が格子状に設けられており、それによって区画された各領域に有機発光素子10R,10G,10Bが1つずつ配置されている。有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、素子分離絶縁層24の開口24K1によって輪郭が規定された発光領域20を含んでいる。有機発光素子10Rは赤色光を発し、有機発光素子10Gは緑色光を発し、有機発光素子10Bは青色光を発する。ここでは、同色光を発する有機発光素子10をY軸方向に一列に並べ、それをX軸方向に順に繰り返し配置するようにしている。したがって、X軸方向において隣り合う有機発光素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
【0028】
素子分離絶縁層24には、各有機発光素子10を取り囲むように設けられた金属層17が埋設されている。金属層17は、X軸方向へ延在する複数の部分とY軸方向へ延在する複数の部分とが一体となって格子状となっている。また、図3において、発光領域20を取り囲む矩形の破線は、有機発光素子10に含まれる第1電極層13(後出)を表している。また、素子分離絶縁層24には、Y軸方向に隣り合う有機発光素子10に挟まれた金属層17と重なる領域において、開口24K2が複数設けられている。この開口24K2に囲まれた領域には、金属層17と有機発光素子10の第2電極層16との接続を図るための接続部21(破線で囲んだ部分)が設けられている。なお、X方向およびY方向に並ぶ有機発光素子10の数は任意に設定されるものであり、図3に示した数に限定されるものではない。また、1つの画素を4以上の有機発光素子によって構成してもよいし、白色光を発する有機発光素子をさらに設けるようにしてもよい。
【0029】
図4は、表示領域110の、図3に示したIV−IV線に沿ったXZ断面の概略構成を表している。また、図5は、表示領域110の、図3に示したV−V線に沿ったYZ断面の概略構成を表している。図4,図5に示したように、表示領域110では、基板111に画素駆動回路形成層112が設けられてなる基体11の上に、有機発光素子10を含む発光素子形成層12が形成されている。有機発光素子10の上には、全体を覆うように保護膜18と封止基板19とが順に設けられている。有機発光素子10は、基板111の側から、アノード電極としての第1電極層13、発光層14C(後出)を含む有機層14、およびカソード電極としての第2電極層16が各々順に積層されたものである。有機層14および第1電極層13は、素子分離絶縁層24によって有機発光素子10ごとに分離されている。また、各有機発光素子10における第2電極層16は、間隙領域VZに位置する分離部としての絶縁層24の存在により、X軸方向に隣り合う他の有機発光素子10における第2電極層16と分断されている(図4参照)。なお、間隙領域VZとは、X軸方向に隣り合う有機発光素子10同士に挟まれた領域である。その一方で、Y軸方向に隣り合う有機発光素子10における第2電極層16同士は、互いに連結されている(図5参照)。なお、金属層17は、開口24K2に対応した領域を除き、素子分離絶縁層24によって埋設されている。
【0030】
素子分離絶縁層24は、隣り合う有機発光素子10における第1電極層13および有機層14同士の隙間を埋めるように設けられている。素子分離絶縁層24は、例えばポリイミドなどの有機材料からなり、第1電極層13と、第2電極層16および金属層17との絶縁性を確保すると共に、有機発光素子10の発光領域20を正確に画定するものでもある。
【0031】
また、絶縁層24のうちの間隙領域VZには、凹部24G1が設けられており、これによって2組の段差が形成されている。図6に、図4に示した凹部24Gの近傍を拡大して表す。ここでいう2組の段差とは、上面24TS1と底面24BS1とによって形成される段差と、上面24TS2と底面24BS1とによって形成される段差とをいう。また、厚さ方向(Z軸方向)において、素子分離絶縁層24の最も高い位置である上面24TS1,24TS2(素子分離絶縁層24における最大の高さ位置)と、第1電極層13の面13Sの位置との差分は、有機層14および第2電極層16の合計の厚さよりも大きいことが望ましい。
【0032】
凹部24Gは、その上面24TS1,24TS2と側壁WS1,WS2とのなす角α,βのうちの少なくとも一方が90°以下(好ましくは90°未満)となっている。具体的には例えば図6のように、凹部24Gの両隣が矩形の断面形状を有する部分であり、あるいは例えば図7に示した他の構成例のように、凹部24Gの両隣が逆台形の断面形状を有する部分となっている。このような凹部24Gの存在により、例えば蒸着法により、有機層14および第2電極層16の構成材料を表示領域110の全体に亘って一括して堆積させた場合であっても、X軸方向に隣り合う有機発光素子10における有機層14同士および第2電極層16同士が必然的に確実に分離されることとなる。エッジEG1,EG2における角度α,βが90°以下であることからその近傍には被蒸着材料が堆積しづらく、結果的に発光領域20に設けられた有機層14および第2電極層16と、上面24TS1,24TS2および底面24BS1を覆う有機層14Zおよび第2電極層16Zとが、エッジEG1,EG2において途切れるからである。特に凹部24Gの両隣が図7のように逆台形の断面形状を有する場合には、有機層14同士および第2電極層16同士がより確実に分断される。
【0033】
有機発光素子10を覆う保護膜18は、窒化ケイ素(SiNx )などの絶縁材料からなる。また、その上に設けられた封止基板19は、保護膜18や接着層(図示せず)などと共に有機発光素子10を封止するものであり、発光層14Cにおいて発生した光を透過する透明なガラスなどの材料により構成されている。
【0034】
次に、図4〜図6に加えて図8および図9を参照して、基体11および有機発光素子10の詳細な構成について説明する。なお、有機発光素子10R,10G,10Bは、互いに有機層14の構成が一部異なることを除き、他は共通の構成であるので、以下では、まとめて説明する。
【0035】
図8は、一の有機発光素子10における、画素駆動回路形成層112に設けられた画素駆動回路150の平面構成を表す概略図である。
【0036】
基体11は、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板111に、画素駆動回路150を含む画素駆動回路形成層112が設けられたものである。基板111の表面には、第1階層の金属層として、駆動トランジスタTr1のゲート電極である金属層211Gと、書込トランジスタTr2のゲート電極である金属層221Gと、信号線120Aの一部とがそれぞれ設けられている。これら金属層211G,221Gおよび信号線120Aは、窒化ケイ素や酸化ケイ素などからなるゲート絶縁膜(図示せず)によって覆われている。
【0037】
駆動トランジスタTr1において、ゲート絶縁膜上の、金属層211Gに対応する領域の一部には、アモルファスシリコンなどの半導体薄膜からなるチャネル層(図示せず)が設けられている。チャネル層上には、その中心領域であるチャネル領域を占めるように絶縁性のチャネル保護膜(図示せず)が設けられており、その両側の領域には、n型アモルファスシリコンなどのn型半導体薄膜からなるドレイン電極(図示せず)およびソース電極(図示せず)が設けられている。これらドレイン電極およびソース電極は、上記のチャネル保護膜によって互いに分離されており、それらの端面がチャネル領域を挟んで互いに離間している。さらに、ドレイン電極およびソース電極をそれぞれ覆うように、第2階層の金属層として、ドレイン配線としての金属層216Dおよびソース配線としての金属層216Sが設けられている。金属層216Dおよび金属層216Sは、例えばチタン(Ti)層、アルミニウム(Al)層、およびチタン層を順に積層した構造を有するものである。書込トランジスタTr2においても、駆動トランジスタTr1と同様の構成となっている。なお、図8では、第1階層の金属層としての金属層221Gと、第2階層の金属層としての金属層226D(ドレイン配線)および金属層226S(ソース配線)とを、書込トランジスタTr2の構成要素として記載している。
【0038】
第2階層の金属層としては、上記の金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sのほか、走査線130Aおよび電源供給線140Aが設けられている。なお、ここでは、逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)の駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2について説明したが、スタガー構造(いわゆるトップゲート型)のものであってもよい。また、信号線120Aについては、走査線130Aおよび電源供給線140Aとの交差点以外の領域では第2階層の金属層として設けるようにしている。
【0039】
画素駆動回路150は、窒化ケイ素などからなる保護膜(図示せず)によって全体的に覆われており、その上には、さらに絶縁性の平坦化膜(図示せず)が設けられている。平坦化膜は、その表面が極めて高い平坦性を有するものであることが望まれる。また、これら平坦化膜および保護膜の一部領域には、微細な接続孔124が設けられている(図8参照)。平坦化膜は、例えばポリイミド等の有機材料など、パターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。接続孔124には第1電極層13が充填されており、駆動トランジスタTr1のソース配線を構成する金属層216Sとの導通がなされている。
【0040】
第1電極層13は、画素駆動回路形成層112の最上層である平坦化膜の上に形成され、反射層としての機能も兼ねている。このため、できるだけ高い反射率を有する材料によって構成することが発光効率を高める上で望ましい。具体的には、第1電極層13はアルミニウム(Al)やアルミニウムネオジウム合金(AlNd)などの高反射率材料によって構成される。なお、アルミニウムは、素子分離絶縁層24の開口24K1,24K2を形成する際の現像処理に用いる現像液に対し、耐性が低く腐食しやすい。これに対し、AlNdは、現像液に対して耐性が高く腐食しにくい。したがって、第1電極層13は、AlNdからなる単層構造、もしくは、アルミニウム層とAlNdとの2層構造「Al層(下層)\AlNd層(上層)」とするとよい。特に、Al層(下層)\AlNd層(上層)の2層構造の場合、単層のAlNd層と比べて低抵抗となるので好ましい。第1電極層13は、全体の厚みが例えば100nm以上1000nm以下である。さらに、第1電極層13を2層構造とし、そのうちの上層(有機層14と接する層)を上記の高反射率材料によって構成し、下層(画素駆動回路形成層112の平坦化膜と接する層)をモリブデン(Mo)やその化合物(合金)などの、低反射率材料によって構成するようにしてもよい。このように、駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2が設けられた画素駆動回路形成層112と接する面に光吸収率の高い層を設けることにより、外光や有機発光素子10から洩れた光などの不要光を吸収することができるからである。なお、第1電極層13は、上述したように、平坦化膜の表面を覆うと共に接続孔124を充填するように形成されている。
【0041】
有機層14は、素子分離絶縁層24によって画定された発光領域20に全面に亘って隙間無く形成されている。有機層14は、例えば図9に示したように、第1電極層13の側から正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dが順に積層された構成を有する。但し、発光層14C以外の層は、必要に応じて設ければよい。なお、図9は図4〜図6に示した有機層14の断面の一部を拡大して表したものである。
【0042】
正孔注入層14Aは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層14Bは、発光層14Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層14Cは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層14Dは、発光層14Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層14Dと第2電極層16との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0043】
また、有機層14は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっている。有機発光素子10Rの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機発光素子10Rの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機発光素子10Rの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0044】
有機発光素子10Gの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Gの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Gの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Gの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0045】
有機発光素子10Bの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Bの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Bの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、スピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0046】
第2電極層16は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。第2電極層16は、例えば全ての有機発光素子10R,10G,10Bに共通に設けられており、各有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極層13と対向配置されている。さらに第2電極層16は、有機層14のみならず、素子分離絶縁層24をも覆うように形成されている。
【0047】
隣り合う有機発光素子10における第2電極層16同士は、先述したように、X軸方向において間隙領域VZの素子分離絶縁層24により分断されると共にY軸方向において連結されている。このため、その平面形状は、図10に示したようにY方向を長手方向とする短冊形状となっている。図10は、基板111上に設けられた第2電極層16およびその周辺の配線パターンの平面形状を表す概略図である。図10に示したように、この表示装置では、複数の第2電極層16が各々表示領域110を貫くようにY方向へ延在すると共に互いにX軸方向に並んでいる。さらに、複数の第2電極層16の両端は、それぞれ共通の配線パターンに接続されており、パッドP1,P2を介して共通電源供給線GND(図2参照)と接続されている。
【0048】
金属層17は、第1電極層13と同様に画素駆動回路形成層112の表面に形成されており、主たる電極としての第2電極層16における電圧降下を補う補助配線として機能するものである。金属層17は、開口24K2において第2電極層16と接しており、第2電極層16と電気的に接続された接続部21を形成している(図3,図5参照)。
【0049】
この金属層17が存在しない場合、電源(図示せず)から個々の有機発光素子10R,10G,10Bまでの距離に応じた電圧降下により、共通電源供給線GND(図2参照)と接続された第2電極層16の電位が各有機発光素子10R,10G,10B間で一定とならず、顕著なばらつきを生じ易い。このような第2電極層16の電位のばらつきは、表示領域110における輝度むらの原因となるので好ましくない。金属層17は、表示領域110が大画面化した場合であっても電源から第2電極層16に至るまでの電圧降下を最小限度に抑え、このような輝度むらの発生を抑制するように機能する。なお、先述の特許文献2では、同色光を発光する有機発光素子におけるカソード34c同士についても互いに分離するようにしている。これに対し、本実施の形態では、同色光を発光する複数の有機発光素子10を連結するようにしているので、電圧降下が生じにくい。このため、表示領域110の大画面化により好適である。
【0050】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0051】
まず、上述した材料よりなる基板111の上に、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2を含む画素駆動回路150を形成する。具体的には、まず、基板111上に例えばスパッタリングにより金属膜を形成する。そののち、例えばフォトリソグラフィ法やドライエッチング、あるいはウェットエッチングによりその金属膜をパターニングすることで、基板111上に金属層211G,221Gと、信号線120Aの一部とを形成する。次いで、全面をゲート絶縁膜によって覆う。さらに、ゲート絶縁膜の上に、チャネル層、チャネル保護膜、ドレイン電極およびソース電極、ならびに、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sを順に、所定形状に形成する。ここで、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sの形成と併せて、信号線120Aの一部、走査線130Aおよび電源供給線140Aを第2の金属層として各々形成する。その際、金属層221Gと走査線130Aとを接続する接続部、金属層226Dと信号線120Aとを接続する接続部、金属層226Sと金属層211Gとを接続する接続部を予め形成しておく。そののち、全体を保護膜で覆うことにより、画素駆動回路150を完成させる。その際、保護膜における金属層216S上の所定位置に、ドライエッチングなどにより開口を形成しておく。
【0052】
画素駆動回路150を形成したのち、スピンコート法などにより、例えばポリイミドを主成分とする感光性樹脂を全面に亘って塗布する。次に、その感光性樹脂に対しフォトリソグラフィ処理を施すことにより、接続孔124を有する平坦化膜を形成する。具体的には、例えば所定位置に開口を有するマスクを用いた選択的な露光および現像により、保護膜217に設けられた開口と連通する接続孔124を形成する。そののち、平坦化膜を必要に応じて焼成してもよい。これにより画素駆動回路形成層112を得る。
【0053】
さらに、上述した所定の材料よりなる第1電極層13および金属層17を形成する。具体的には、例えばスパッタリングによって上述の材料からなる金属膜を全面成膜したのち、その積層膜上に所定のマスクを用いて所定形状のレジストパターン(図示せず)を形成する。さらにそのレジストパターンをマスクとして用い、金属膜の選択的なエッチングを行う。その際、第1電極層13については、平坦化膜の表面を覆うと共に接続孔124を充填するように形成する。また、金属層17については、平坦化膜の表面に、第1電極層13の周囲を取り囲み、かつ、信号線120Aと重ならないように形成する。金属層17は、第1電極層13と同種の材料を用いて、第1電極層13と共に一括して形成することが望ましい。
【0054】
こののち、隣り合う第1電極層13同士の隙間を充填し、かつ、金属層17を覆うように素子分離絶縁層24を形成する。その際、所定位置に開口24K1,24K2を設けると共に、間隙領域VZに、Y方向へ延在する凹部24Gを形成する。凹部24Gは、例えば多重露光処理を行うことにより形成する。具体的には、まず図11(A)に示したように、第1電極層13および金属層17が設けられた画素駆動回路形成層112の全体を覆うように、のちに素子分離絶縁層24となる絶縁膜24Zを形成する。次に、図11(B)に示したようにフォトマスクM1を用いて発光領域20に対応する領域R20を露光する。ここでは絶縁膜24Zのうち、厚さ方向における全てが露光されるようにする。そののち、図11(C)に示したようにフォトマスクM2を用いて、間隙領域VZのうちの一部の領域R24Gを露光する。その際、露光時間を制御するなどして、絶縁膜24Zのうち上面から所定の深さに至る部分のみが露光されるようにする。そののち、所定の現像液を用いて現像処理を行い、露光部分を除去ずることにより、図11(D)に示したように、凹部24Gを含む素子分離絶縁層24を得る。あるいはハーフトーンマスクを用いた露光処理により、凹部24Gを形成してもよい。この場合、発光領域20に対応する第1の露光部と、凹部24Gに対応する第2の露光部とが設けられたハーフトーンフォトマスクを用いる。これにより、発光領域20に対応した第1の被露光パターンと凹部24Gに対応した第2の被露光パターンとを、のちに素子分離絶縁層となる絶縁膜に対し1回の露光により転写可能となる。ここで、第1の露光部は露光光を十分に透過する一方、第2の露光部は露光光の透過率を制御するように機能する。第2の露光部での透過率を制御することにより、凹部24Gの深さを制御することができる。このようなハーフトーンマスクを用いた露光処理によれば、より生産性を向上させることができる。
【0055】
次いで、第1電極層13のうち、露出している部分を完全に覆うように上述した所定の材料および厚みの正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dを、例えば蒸着法によって順に積層することで有機層14を形成する。さらに、有機層14を挟んで第1電極層13と対向するように覆い、かつ、接続部21において金属層17を覆うように全面に亘って第2電極層16を形成することで有機発光素子10を完成させる。その際、有機層14および第2電極層16は、凹部24Gのエッジ24EG1,24G2によってX軸方向において分断される。
【0056】
こののち、全体を覆うように、上述した材料よりなる保護膜18を形成する。最後に、保護膜18の上に、接着層を形成し、この接着層を間にして封止基板19を貼り合わせる。以上により、表示装置が完成する。
【0057】
このようにして得られた表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書込トランジスタTr2のゲート電極(金属層221G)を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。その一方で、電源供給線駆動回路140が、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し第2電位よりも高い第1電位を供給する。これにより駆動トランジスタTr1の導通状態が選択され、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極層13と第2電極層16との間で多重反射し、第2電極層16、保護膜18および封止基板19を透過して取り出される。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態では、X軸方向に隣り合う有機層14同士および第2電極層16同士を、間隙領域VZにおいて素子分離絶縁層24の凹部24Gによって互いに分離するようにしている。このため、異色の有機発光素子10の相互間隔の狭小化により有機層14同士の重なりが生じた場合であっても、第1電極層13と第2電極層16との短絡、および隣り合う第1電極層13同士の短絡を確実に防止することができる。すなわち、複数の有機発光素子10の相互間隔の狭小化に対応しつつ、各有機発光素子10の駆動制御を十分に行うことができる。その結果、高い開口率を確保しつつ、表示領域110での発光輝度分布の均一性や色分離性に優れるなど、高い表示性能を発揮することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、Y軸方向に延在すると共にX軸方向に並ぶ複数の第2電極層16は、素子分離絶縁層24に凹部24Gを予め形成しておき、表示領域110の全体を覆うように所定材料を堆積させることにより、自ずと形成されるものである。したがって、高精度のパターニング処理を要することなく、相互に確実に分断された第2電極層16を、適切な位置に容易に配置することができる。
【0060】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、素子分離絶縁層24に一の凹部24Gを設け、2組の段差を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図12の第1の変形例のように、素子分離絶縁層24に2つの凹部24G1,24G2を設け、多数組の段差を形成するようにしてもよい。また、図13の第2の変形例のように、素子分離絶縁層24に1または2以上の凸部24T(24T1,24T2)を設けるようにしてもよい。さらには、図14に示した第3の変形例のように、素子分離絶縁膜24を形成せずに画素駆動回路形成層112の平坦化膜や保護膜を掘り下げることにより複数組の段差を形成し、X軸方向における素子分離を行うようにしてもよい。なお、図14は、上記実施の形態における図4に対応する断面図である。いずれも場合であっても上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0061】
また、上記実施の形態では、第1の方向(Y軸方向)に同色光を発する発光素子が複数並び、第2の方向(X軸方向)に異色光を発する発光素子が複数並ぶようにしたが、これに限定されるものではない。第1および第2の方向の双方において異色光を発する発光素子が並ぶようにしてもよい。また、第1の方向と第2の方向とは、互いに直交する場合に限定されず、90°以外の角度で互いに交差するようにしてもよい。
【0062】
また、本発明は、上記実施の形態において説明した各層の材料や積層順序、あるいは成膜方法などに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、第1電極層13をアノード、第2電極層16をカソードとする場合について説明したが、第1電極層13をカソード、第2電極層16をアノードとしてもよい。さらに、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層をさらに備えていてもよい。例えば、第1電極層13と有機層14との間に、酸化クロム(III)(Cr2 O3 ),ITO(Indium-Tin Oxide:インジウム(In)およびスズ(Sn)の酸化物混合膜)などからなる正孔注入用薄膜層を備えていてもよい。
【0063】
加えてまた、上記実施の形態では、第2電極層16が半透過性反射層により構成されている場合について説明したが、第2電極層16は、半透過性反射層と透明電極とが第1電極層13の側から順に積層された構造としてもよい。この透明電極は、半透過性反射層の電気抵抗を下げるためのものであり、発光層で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。透明電極を構成する材料としては、例えば、ITOまたはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物が好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。透明電極の厚みは、例えば30nm以上1000nm以下とすることができる。また、この場合、半透過性反射層を一方の端部とし、透明電極を挟んで半透過性電極に対向する位置に他方の端部を設け、透明電極を共振部とする共振器構造を形成するようにしてもよい。さらに、そのような共振器構造を設けた上で、有機発光素子10R,10G,10Bを保護膜18で覆うようにし、この保護膜18を、透明電極を構成する材料と同程度の屈折率を有する材料により構成すれば、保護膜18を共振部の一部とすることができ、好ましい。
【0064】
加えてまた、上記各実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記各実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10(10R,10G,10B)…有機発光素子、11…基体、111…基板、112…画素駆動回路形成層、12…発光素子形成層、13…第1電極層、131…第1導電層、132…第2導電層、14…有機層、14A…正孔注入層、14B…正孔輸送層、14C…発光層、14D…電子輸送層、16…第2電極層、17…金属層、171…第1導電層、172…第2導電層、18…保護膜、19…封止基板、20…発光領域、21…接続部、24…素子分離絶縁膜、24K1,24K2…開口、124…接続孔、110…表示領域、120…信号線駆動回路、120A…信号線、130…走査線駆動回路、130A…走査線、140…電源供給線駆動回路、140A…電源供給線、150…画素駆動回路、Cs…キャパシタ(保持容量)、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書込トランジスタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機層を含む自発光型の発光素子を備えた表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機層を含む自発光型の有機発光素子を用いた有機ELディスプレイが実用化されている。有機ELディスプレイは、自発光型であるので、液晶などに比較して視野角が広く、また、高精細度の高速ビデオ信号に対しても十分な応答性を有するものである。
【0003】
これまで有機発光素子については、共振器構造を導入し、発光色の色純度を向上させたり発光効率を高めたりするなど発光層で発生する光を制御することにより、表示性能を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。例えば、基板と反対側の面(上面)から光を取り出すトップエミッション方式においては、基板の上に、駆動トランジスタを介してアノード電極と有機層とカソード電極とが順に積層された構造を採用し、アノード電極とカソード電極との間で有機層からの光を多重反射させている。
【0004】
一般的な有機ELディスプレイでは、画像表示領域において、例えば赤色光を発する有機発光素子と、緑色光を発する有機発光素子と、青色光を発する有機発光素子とが順に繰り返し配列されている。それらの発光色は、各々を構成する有機層の構成材料によって異なっている。そのため、各有機発光素子を形成する際には、発光色ごとに有機層を個別に成膜する必要がある。なお、一般的な有機ELディスプレイでは、アノード電極および有機層は有機発光素子ごとに分割されているのに対し、カソード電極は複数の(好ましくは全ての)有機発光素子によって共有されるように一体化されている。ここで、隣り合う有機発光素子における各有機層は、絶縁層によって互いに分離されている。この絶縁層は、各有機発光素子における発光領域を画定するための開口を有するものである。
【0005】
有機層の形成は、例えば蒸着法により行う。その際、発光領域に応じた開口を有するシャドーマスクを利用して蒸着を行うので、発光領域を画定する絶縁層の開口と、シャドーマスクの開口との位置あわせ(アライメント)を正確に行う必要がある。しかしながら最近では、画像表示領域全体に対する全ての有機発光素子の発光領域の割合、すなわち開口率を向上させるため、絶縁層の幅を狭め、隣接する有機発光素子同士の間隔を縮小化する傾向にある。このため、今後、上記間隔のさらなる縮小化が進むと、各々の発光領域を所定の有機層によって十分かつ確実に埋めることが困難となることが予想される。絶縁層の開口とシャドーマスクの開口との十分なアライメント精度が確保できないことや、シャドーマスク自体の加工精度を十分に確保できないことなどが懸念されるからである。このような製造誤差により、絶縁層の開口を有機層によって十分かつ確実に埋められない場合には、画像表示領域における所定位置での所望の発光輝度が得られなくなり、入力される映像信号に対応した正確な画像表示が困難となってしまう。
【0006】
こうした問題に対し、例えばシャドーマスクの開口を絶縁層の開口よりも大きくしておき、発光領域から絶縁層へ大きくはみ出すように有機層を形成する方法が考えられる。このようにすれば、各々の発光領域を所定の有機層によって確実に埋めることができる。
【0007】
ところが、この場合、隣り合う有機発光素子の有機層の端部が互いに重なり合う状態となる。そのため、一方の有機層の端部に乗り上げた他方の有機層における正孔注入層が、それらの有機層を覆うカソード電極と接触してしまう可能性がある。そうした場合には、正孔注入層を介してアノード電極とカソード電極との間に導通経路が形成され、リーク電流が流れることとなる。そのため、各有機発光素子の駆動制御が十分に行われなくなり、有機ELディスプレイとして正常な映像表示の妨げとなる可能性がある。特に、異なる色光を発光する有機発光素子同士の間でリーク電流が流れると、表示画像における混色の原因となりかねない。
【0008】
そのため、本出願人は、各発光素子を取り囲むようにオーバーハング形状の壁面を有する分離膜を設け、隣り合う発光素子における有機層同士およびカソード電極同士を分離する方法を既に提案している(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第01/39554号パンフレット
【特許文献2】特開2010−44894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、今後、よりいっそうの開口率向上が要求されることも予想される。このため、そのような場合においてもリーク電流の発生を確実に防止し得る表示装置が望まれる。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、開口率の向上に好適であり、より良好な表示性能を発揮し得る表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示装置は、基板上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が各々順に積層されてなり、互いに交差する第1および第2の方向に配列された複数の発光素子と、第1の方向に隣り合う発光素子同士の間に配置され、2組以上の段差を含む分離部とを備える。複数の発光素子における第1電極層同士は互いに分断され、第1の方向に隣り合う発光素子における有機層同士および第2電極層同士は、分離部に含まれる段差によって互いに分断されている。ここでは、例えば第2の方向に、互いに等しい色光を発する複数の発光素子が並び、第1の方向に、互いに異なる色光を発する複数の発光素子が並ぶようにするとよい。
【0013】
本発明の表示装置の製造方法は、基板上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が各々順に積層されてなり、互いに交差する第1および第2の方向に配列された複数の発光素子と、第1の方向に隣り合う発光素子同士の間に配置され、2組以上の段差を含む分離部とを備えた表示装置の製造方法であって、下記の各工程を含むものである。
(A)基板上に、複数の第1電極層を、互いに接することなく離散的に配列する工程。
(B)複数の第1電極層同士の間隙を埋める絶縁層を形成することにより、分離部を形成する工程。
(C)絶縁層に2組以上の段差を形成する工程。
(D)発光層の種類ごとに複数の有機層を順次形成する工程。
(E)有機層を覆うように第2の電極層を形成する工程。
ここで、有機層および第2の電極層を形成する際に、第1の方向に隣り合う発光素子における有機層同士および第2電極層同士を、分離部に含まれる段差によって相互に分断する。
【0014】
本発明の表示装置およびその製造方法では、第1の方向に隣り合う発光素子における第2電極層同士および有機層同士が、分離部に含まれる2組以上の段差によって互いに分断されるので、第1の方向に隣り合う発光素子間における駆動電流のリークが回避される。ここで、第1の方向に隣り合う発光素子同士が、互いに異なる色光を発するものである場合、色ずれが防止される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表示装置およびその製造方法によれば、第1の方向に隣り合う発光素子における第2電極層同士および有機層同士が分離部に含まれる2組以上の段差によって互いに分断されるようにしたので、第1の方向に隣り合う発光素子の相互間隔の狭小化により有機層同士の重なりが生じた場合であっても、第1電極層と第2電極層との短絡、および隣り合う第1電極層同士の短絡を確実に防止することができる。このため、複数の発光素子の相互間隔の狭小化に対応しつつ、各発光素子の駆動制御を十分に行うことができる。その結果、高い開口率を確保しつつ、画像表示領域内での発光輝度分布の均一性や色分離性に優れるなど、高い表示性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す平面図である。
【図4】図1に示した表示領域の構成を表す断面図である。
【図5】図1に示した表示領域の構成を表す他の断面図である。
【図6】図4に示した素子分離絶縁層の凹部の一構成例を拡大して表す断面図である。
【図7】図4に示した素子分離絶縁層の凹部の他の構成例を拡大して表す断面図である。
【図8】図4に示した画素駆動回路形成層の構成を表す平面図である。
【図9】図4に示した有機層を拡大して表す断面図である。
【図10】図1の基板上に設けられた第2電極層およびその周辺の配線パターンの平面形状を表す概略図である。
【図11】図1に示した表示装置の製造方法における一工程を表す断面図である。
【図12】第1の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【図13】第2の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【図14】第3の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明における一実施の形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられる。この表示装置は、基板111の上に表示領域110が形成されたものである。基板111上の表示領域110の周辺には、例えば映像表示用のドライバである信号線駆動回路120、走査線駆動回路130および電源供給線駆動回路140が形成されている。
【0019】
表示領域110には、マトリクス状に二次元配置された複数の有機発光素子10(10R,10G,10B)と、それらを駆動するための画素駆動回路150とが形成されている。画素駆動回路150において、列方向(Y軸方向)には複数の信号線120A(120A1,120A2,・・・,120Am,・・・)が配置され、行方向(X軸方向)には複数の走査線130A(130A1,・・・,130An,・・・)および複数の電源供給線140A(140A1,・・・,140An,・・・)が配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの各交差点に、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つが対応して設けられている。各信号線120Aは信号線駆動回路120に接続され、各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、各電源供給線140Aは電源供給線駆動回路140に接続されている。
【0020】
信号線駆動回路120は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧を、信号線120Aを介して選択された有機発光素子10R,10G,10Bに供給するものである。
【0021】
走査線駆動回路130は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。走査線駆動回路130は、各有機発光素子10R,10G,10Bへの映像信号の書き込みに際し行単位でそれらを走査し、各走査線130Aに走査信号を順次供給するものである。
【0022】
電源供給線駆動回路140は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。電源供給線駆動回路140は、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し互いに異なる第1電位および第2電位のいずれかを適宜供給する。これにより、後述する駆動トランジスタTr1の導通状態または非導通状態の選択が行われる。
【0023】
画素駆動回路150は、基板111と有機発光素子10との間の階層(後述の画素駆動回路形成層112)に設けられている。図2に、画素駆動回路150の一構成例を表す。図2に示したように、画素駆動回路150は、駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、有機発光素子10とを有するアクティブ型の駆動回路である。有機発光素子10は、電源供給線140Aおよび共通電源供給線(GND)の間において駆動トランジスタTr1と直列に接続されている。駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0024】
書込トランジスタTr2は、例えばドレイン電極が信号線120Aと接続されており、信号線駆動回路120からの映像信号が供給されるようになっている。また、書込トランジスタTr2のゲート電極は走査線130Aと接続されており、走査線駆動回路130からの走査信号が供給されるようになっている。さらに、書込トランジスタTr2のソース電極は、駆動トランジスタTr1のゲート電極と接続されている。
【0025】
駆動トランジスタTr1は、例えばドレイン電極が電源供給線140Aと接続されており、電源供給線駆動回路140による第1電位または第2電位のいずれかに設定される。駆動トランジスタTr1のソース電極は、有機発光素子10と接続されている。
【0026】
保持容量Csは、駆動トランジスタTr1のゲート電極(書込トランジスタTr2のソース電極)と、駆動トランジスタTr1のソース電極との間に形成されるものである。
【0027】
図3に、XY平面に広がる表示領域110の一構成例を表す。ここでは、第2電極層16、保護膜18および封止基板19(いずれも後出)を取り去った状態の表示領域110を、上方から眺めた平面構成を表す。表示領域110には、複数の有機発光素子10が、全体としてマトリックス状に順に配列されている。より詳細には、素子分離絶縁層24が格子状に設けられており、それによって区画された各領域に有機発光素子10R,10G,10Bが1つずつ配置されている。有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、素子分離絶縁層24の開口24K1によって輪郭が規定された発光領域20を含んでいる。有機発光素子10Rは赤色光を発し、有機発光素子10Gは緑色光を発し、有機発光素子10Bは青色光を発する。ここでは、同色光を発する有機発光素子10をY軸方向に一列に並べ、それをX軸方向に順に繰り返し配置するようにしている。したがって、X軸方向において隣り合う有機発光素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
【0028】
素子分離絶縁層24には、各有機発光素子10を取り囲むように設けられた金属層17が埋設されている。金属層17は、X軸方向へ延在する複数の部分とY軸方向へ延在する複数の部分とが一体となって格子状となっている。また、図3において、発光領域20を取り囲む矩形の破線は、有機発光素子10に含まれる第1電極層13(後出)を表している。また、素子分離絶縁層24には、Y軸方向に隣り合う有機発光素子10に挟まれた金属層17と重なる領域において、開口24K2が複数設けられている。この開口24K2に囲まれた領域には、金属層17と有機発光素子10の第2電極層16との接続を図るための接続部21(破線で囲んだ部分)が設けられている。なお、X方向およびY方向に並ぶ有機発光素子10の数は任意に設定されるものであり、図3に示した数に限定されるものではない。また、1つの画素を4以上の有機発光素子によって構成してもよいし、白色光を発する有機発光素子をさらに設けるようにしてもよい。
【0029】
図4は、表示領域110の、図3に示したIV−IV線に沿ったXZ断面の概略構成を表している。また、図5は、表示領域110の、図3に示したV−V線に沿ったYZ断面の概略構成を表している。図4,図5に示したように、表示領域110では、基板111に画素駆動回路形成層112が設けられてなる基体11の上に、有機発光素子10を含む発光素子形成層12が形成されている。有機発光素子10の上には、全体を覆うように保護膜18と封止基板19とが順に設けられている。有機発光素子10は、基板111の側から、アノード電極としての第1電極層13、発光層14C(後出)を含む有機層14、およびカソード電極としての第2電極層16が各々順に積層されたものである。有機層14および第1電極層13は、素子分離絶縁層24によって有機発光素子10ごとに分離されている。また、各有機発光素子10における第2電極層16は、間隙領域VZに位置する分離部としての絶縁層24の存在により、X軸方向に隣り合う他の有機発光素子10における第2電極層16と分断されている(図4参照)。なお、間隙領域VZとは、X軸方向に隣り合う有機発光素子10同士に挟まれた領域である。その一方で、Y軸方向に隣り合う有機発光素子10における第2電極層16同士は、互いに連結されている(図5参照)。なお、金属層17は、開口24K2に対応した領域を除き、素子分離絶縁層24によって埋設されている。
【0030】
素子分離絶縁層24は、隣り合う有機発光素子10における第1電極層13および有機層14同士の隙間を埋めるように設けられている。素子分離絶縁層24は、例えばポリイミドなどの有機材料からなり、第1電極層13と、第2電極層16および金属層17との絶縁性を確保すると共に、有機発光素子10の発光領域20を正確に画定するものでもある。
【0031】
また、絶縁層24のうちの間隙領域VZには、凹部24G1が設けられており、これによって2組の段差が形成されている。図6に、図4に示した凹部24Gの近傍を拡大して表す。ここでいう2組の段差とは、上面24TS1と底面24BS1とによって形成される段差と、上面24TS2と底面24BS1とによって形成される段差とをいう。また、厚さ方向(Z軸方向)において、素子分離絶縁層24の最も高い位置である上面24TS1,24TS2(素子分離絶縁層24における最大の高さ位置)と、第1電極層13の面13Sの位置との差分は、有機層14および第2電極層16の合計の厚さよりも大きいことが望ましい。
【0032】
凹部24Gは、その上面24TS1,24TS2と側壁WS1,WS2とのなす角α,βのうちの少なくとも一方が90°以下(好ましくは90°未満)となっている。具体的には例えば図6のように、凹部24Gの両隣が矩形の断面形状を有する部分であり、あるいは例えば図7に示した他の構成例のように、凹部24Gの両隣が逆台形の断面形状を有する部分となっている。このような凹部24Gの存在により、例えば蒸着法により、有機層14および第2電極層16の構成材料を表示領域110の全体に亘って一括して堆積させた場合であっても、X軸方向に隣り合う有機発光素子10における有機層14同士および第2電極層16同士が必然的に確実に分離されることとなる。エッジEG1,EG2における角度α,βが90°以下であることからその近傍には被蒸着材料が堆積しづらく、結果的に発光領域20に設けられた有機層14および第2電極層16と、上面24TS1,24TS2および底面24BS1を覆う有機層14Zおよび第2電極層16Zとが、エッジEG1,EG2において途切れるからである。特に凹部24Gの両隣が図7のように逆台形の断面形状を有する場合には、有機層14同士および第2電極層16同士がより確実に分断される。
【0033】
有機発光素子10を覆う保護膜18は、窒化ケイ素(SiNx )などの絶縁材料からなる。また、その上に設けられた封止基板19は、保護膜18や接着層(図示せず)などと共に有機発光素子10を封止するものであり、発光層14Cにおいて発生した光を透過する透明なガラスなどの材料により構成されている。
【0034】
次に、図4〜図6に加えて図8および図9を参照して、基体11および有機発光素子10の詳細な構成について説明する。なお、有機発光素子10R,10G,10Bは、互いに有機層14の構成が一部異なることを除き、他は共通の構成であるので、以下では、まとめて説明する。
【0035】
図8は、一の有機発光素子10における、画素駆動回路形成層112に設けられた画素駆動回路150の平面構成を表す概略図である。
【0036】
基体11は、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板111に、画素駆動回路150を含む画素駆動回路形成層112が設けられたものである。基板111の表面には、第1階層の金属層として、駆動トランジスタTr1のゲート電極である金属層211Gと、書込トランジスタTr2のゲート電極である金属層221Gと、信号線120Aの一部とがそれぞれ設けられている。これら金属層211G,221Gおよび信号線120Aは、窒化ケイ素や酸化ケイ素などからなるゲート絶縁膜(図示せず)によって覆われている。
【0037】
駆動トランジスタTr1において、ゲート絶縁膜上の、金属層211Gに対応する領域の一部には、アモルファスシリコンなどの半導体薄膜からなるチャネル層(図示せず)が設けられている。チャネル層上には、その中心領域であるチャネル領域を占めるように絶縁性のチャネル保護膜(図示せず)が設けられており、その両側の領域には、n型アモルファスシリコンなどのn型半導体薄膜からなるドレイン電極(図示せず)およびソース電極(図示せず)が設けられている。これらドレイン電極およびソース電極は、上記のチャネル保護膜によって互いに分離されており、それらの端面がチャネル領域を挟んで互いに離間している。さらに、ドレイン電極およびソース電極をそれぞれ覆うように、第2階層の金属層として、ドレイン配線としての金属層216Dおよびソース配線としての金属層216Sが設けられている。金属層216Dおよび金属層216Sは、例えばチタン(Ti)層、アルミニウム(Al)層、およびチタン層を順に積層した構造を有するものである。書込トランジスタTr2においても、駆動トランジスタTr1と同様の構成となっている。なお、図8では、第1階層の金属層としての金属層221Gと、第2階層の金属層としての金属層226D(ドレイン配線)および金属層226S(ソース配線)とを、書込トランジスタTr2の構成要素として記載している。
【0038】
第2階層の金属層としては、上記の金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sのほか、走査線130Aおよび電源供給線140Aが設けられている。なお、ここでは、逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)の駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2について説明したが、スタガー構造(いわゆるトップゲート型)のものであってもよい。また、信号線120Aについては、走査線130Aおよび電源供給線140Aとの交差点以外の領域では第2階層の金属層として設けるようにしている。
【0039】
画素駆動回路150は、窒化ケイ素などからなる保護膜(図示せず)によって全体的に覆われており、その上には、さらに絶縁性の平坦化膜(図示せず)が設けられている。平坦化膜は、その表面が極めて高い平坦性を有するものであることが望まれる。また、これら平坦化膜および保護膜の一部領域には、微細な接続孔124が設けられている(図8参照)。平坦化膜は、例えばポリイミド等の有機材料など、パターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。接続孔124には第1電極層13が充填されており、駆動トランジスタTr1のソース配線を構成する金属層216Sとの導通がなされている。
【0040】
第1電極層13は、画素駆動回路形成層112の最上層である平坦化膜の上に形成され、反射層としての機能も兼ねている。このため、できるだけ高い反射率を有する材料によって構成することが発光効率を高める上で望ましい。具体的には、第1電極層13はアルミニウム(Al)やアルミニウムネオジウム合金(AlNd)などの高反射率材料によって構成される。なお、アルミニウムは、素子分離絶縁層24の開口24K1,24K2を形成する際の現像処理に用いる現像液に対し、耐性が低く腐食しやすい。これに対し、AlNdは、現像液に対して耐性が高く腐食しにくい。したがって、第1電極層13は、AlNdからなる単層構造、もしくは、アルミニウム層とAlNdとの2層構造「Al層(下層)\AlNd層(上層)」とするとよい。特に、Al層(下層)\AlNd層(上層)の2層構造の場合、単層のAlNd層と比べて低抵抗となるので好ましい。第1電極層13は、全体の厚みが例えば100nm以上1000nm以下である。さらに、第1電極層13を2層構造とし、そのうちの上層(有機層14と接する層)を上記の高反射率材料によって構成し、下層(画素駆動回路形成層112の平坦化膜と接する層)をモリブデン(Mo)やその化合物(合金)などの、低反射率材料によって構成するようにしてもよい。このように、駆動トランジスタTr1や書込トランジスタTr2が設けられた画素駆動回路形成層112と接する面に光吸収率の高い層を設けることにより、外光や有機発光素子10から洩れた光などの不要光を吸収することができるからである。なお、第1電極層13は、上述したように、平坦化膜の表面を覆うと共に接続孔124を充填するように形成されている。
【0041】
有機層14は、素子分離絶縁層24によって画定された発光領域20に全面に亘って隙間無く形成されている。有機層14は、例えば図9に示したように、第1電極層13の側から正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dが順に積層された構成を有する。但し、発光層14C以外の層は、必要に応じて設ければよい。なお、図9は図4〜図6に示した有機層14の断面の一部を拡大して表したものである。
【0042】
正孔注入層14Aは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層14Bは、発光層14Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層14Cは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層14Dは、発光層14Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層14Dと第2電極層16との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0043】
また、有機層14は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっている。有機発光素子10Rの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機発光素子10Rの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機発光素子10Rの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0044】
有機発光素子10Gの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Gの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Gの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Gの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0045】
有機発光素子10Bの正孔注入層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Bの正孔輸送層14Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Bの発光層14Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、スピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層14Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0046】
第2電極層16は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。第2電極層16は、例えば全ての有機発光素子10R,10G,10Bに共通に設けられており、各有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極層13と対向配置されている。さらに第2電極層16は、有機層14のみならず、素子分離絶縁層24をも覆うように形成されている。
【0047】
隣り合う有機発光素子10における第2電極層16同士は、先述したように、X軸方向において間隙領域VZの素子分離絶縁層24により分断されると共にY軸方向において連結されている。このため、その平面形状は、図10に示したようにY方向を長手方向とする短冊形状となっている。図10は、基板111上に設けられた第2電極層16およびその周辺の配線パターンの平面形状を表す概略図である。図10に示したように、この表示装置では、複数の第2電極層16が各々表示領域110を貫くようにY方向へ延在すると共に互いにX軸方向に並んでいる。さらに、複数の第2電極層16の両端は、それぞれ共通の配線パターンに接続されており、パッドP1,P2を介して共通電源供給線GND(図2参照)と接続されている。
【0048】
金属層17は、第1電極層13と同様に画素駆動回路形成層112の表面に形成されており、主たる電極としての第2電極層16における電圧降下を補う補助配線として機能するものである。金属層17は、開口24K2において第2電極層16と接しており、第2電極層16と電気的に接続された接続部21を形成している(図3,図5参照)。
【0049】
この金属層17が存在しない場合、電源(図示せず)から個々の有機発光素子10R,10G,10Bまでの距離に応じた電圧降下により、共通電源供給線GND(図2参照)と接続された第2電極層16の電位が各有機発光素子10R,10G,10B間で一定とならず、顕著なばらつきを生じ易い。このような第2電極層16の電位のばらつきは、表示領域110における輝度むらの原因となるので好ましくない。金属層17は、表示領域110が大画面化した場合であっても電源から第2電極層16に至るまでの電圧降下を最小限度に抑え、このような輝度むらの発生を抑制するように機能する。なお、先述の特許文献2では、同色光を発光する有機発光素子におけるカソード34c同士についても互いに分離するようにしている。これに対し、本実施の形態では、同色光を発光する複数の有機発光素子10を連結するようにしているので、電圧降下が生じにくい。このため、表示領域110の大画面化により好適である。
【0050】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0051】
まず、上述した材料よりなる基板111の上に、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2を含む画素駆動回路150を形成する。具体的には、まず、基板111上に例えばスパッタリングにより金属膜を形成する。そののち、例えばフォトリソグラフィ法やドライエッチング、あるいはウェットエッチングによりその金属膜をパターニングすることで、基板111上に金属層211G,221Gと、信号線120Aの一部とを形成する。次いで、全面をゲート絶縁膜によって覆う。さらに、ゲート絶縁膜の上に、チャネル層、チャネル保護膜、ドレイン電極およびソース電極、ならびに、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sを順に、所定形状に形成する。ここで、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sの形成と併せて、信号線120Aの一部、走査線130Aおよび電源供給線140Aを第2の金属層として各々形成する。その際、金属層221Gと走査線130Aとを接続する接続部、金属層226Dと信号線120Aとを接続する接続部、金属層226Sと金属層211Gとを接続する接続部を予め形成しておく。そののち、全体を保護膜で覆うことにより、画素駆動回路150を完成させる。その際、保護膜における金属層216S上の所定位置に、ドライエッチングなどにより開口を形成しておく。
【0052】
画素駆動回路150を形成したのち、スピンコート法などにより、例えばポリイミドを主成分とする感光性樹脂を全面に亘って塗布する。次に、その感光性樹脂に対しフォトリソグラフィ処理を施すことにより、接続孔124を有する平坦化膜を形成する。具体的には、例えば所定位置に開口を有するマスクを用いた選択的な露光および現像により、保護膜217に設けられた開口と連通する接続孔124を形成する。そののち、平坦化膜を必要に応じて焼成してもよい。これにより画素駆動回路形成層112を得る。
【0053】
さらに、上述した所定の材料よりなる第1電極層13および金属層17を形成する。具体的には、例えばスパッタリングによって上述の材料からなる金属膜を全面成膜したのち、その積層膜上に所定のマスクを用いて所定形状のレジストパターン(図示せず)を形成する。さらにそのレジストパターンをマスクとして用い、金属膜の選択的なエッチングを行う。その際、第1電極層13については、平坦化膜の表面を覆うと共に接続孔124を充填するように形成する。また、金属層17については、平坦化膜の表面に、第1電極層13の周囲を取り囲み、かつ、信号線120Aと重ならないように形成する。金属層17は、第1電極層13と同種の材料を用いて、第1電極層13と共に一括して形成することが望ましい。
【0054】
こののち、隣り合う第1電極層13同士の隙間を充填し、かつ、金属層17を覆うように素子分離絶縁層24を形成する。その際、所定位置に開口24K1,24K2を設けると共に、間隙領域VZに、Y方向へ延在する凹部24Gを形成する。凹部24Gは、例えば多重露光処理を行うことにより形成する。具体的には、まず図11(A)に示したように、第1電極層13および金属層17が設けられた画素駆動回路形成層112の全体を覆うように、のちに素子分離絶縁層24となる絶縁膜24Zを形成する。次に、図11(B)に示したようにフォトマスクM1を用いて発光領域20に対応する領域R20を露光する。ここでは絶縁膜24Zのうち、厚さ方向における全てが露光されるようにする。そののち、図11(C)に示したようにフォトマスクM2を用いて、間隙領域VZのうちの一部の領域R24Gを露光する。その際、露光時間を制御するなどして、絶縁膜24Zのうち上面から所定の深さに至る部分のみが露光されるようにする。そののち、所定の現像液を用いて現像処理を行い、露光部分を除去ずることにより、図11(D)に示したように、凹部24Gを含む素子分離絶縁層24を得る。あるいはハーフトーンマスクを用いた露光処理により、凹部24Gを形成してもよい。この場合、発光領域20に対応する第1の露光部と、凹部24Gに対応する第2の露光部とが設けられたハーフトーンフォトマスクを用いる。これにより、発光領域20に対応した第1の被露光パターンと凹部24Gに対応した第2の被露光パターンとを、のちに素子分離絶縁層となる絶縁膜に対し1回の露光により転写可能となる。ここで、第1の露光部は露光光を十分に透過する一方、第2の露光部は露光光の透過率を制御するように機能する。第2の露光部での透過率を制御することにより、凹部24Gの深さを制御することができる。このようなハーフトーンマスクを用いた露光処理によれば、より生産性を向上させることができる。
【0055】
次いで、第1電極層13のうち、露出している部分を完全に覆うように上述した所定の材料および厚みの正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dを、例えば蒸着法によって順に積層することで有機層14を形成する。さらに、有機層14を挟んで第1電極層13と対向するように覆い、かつ、接続部21において金属層17を覆うように全面に亘って第2電極層16を形成することで有機発光素子10を完成させる。その際、有機層14および第2電極層16は、凹部24Gのエッジ24EG1,24G2によってX軸方向において分断される。
【0056】
こののち、全体を覆うように、上述した材料よりなる保護膜18を形成する。最後に、保護膜18の上に、接着層を形成し、この接着層を間にして封止基板19を貼り合わせる。以上により、表示装置が完成する。
【0057】
このようにして得られた表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書込トランジスタTr2のゲート電極(金属層221G)を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。その一方で、電源供給線駆動回路140が、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し第2電位よりも高い第1電位を供給する。これにより駆動トランジスタTr1の導通状態が選択され、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極層13と第2電極層16との間で多重反射し、第2電極層16、保護膜18および封止基板19を透過して取り出される。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態では、X軸方向に隣り合う有機層14同士および第2電極層16同士を、間隙領域VZにおいて素子分離絶縁層24の凹部24Gによって互いに分離するようにしている。このため、異色の有機発光素子10の相互間隔の狭小化により有機層14同士の重なりが生じた場合であっても、第1電極層13と第2電極層16との短絡、および隣り合う第1電極層13同士の短絡を確実に防止することができる。すなわち、複数の有機発光素子10の相互間隔の狭小化に対応しつつ、各有機発光素子10の駆動制御を十分に行うことができる。その結果、高い開口率を確保しつつ、表示領域110での発光輝度分布の均一性や色分離性に優れるなど、高い表示性能を発揮することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、Y軸方向に延在すると共にX軸方向に並ぶ複数の第2電極層16は、素子分離絶縁層24に凹部24Gを予め形成しておき、表示領域110の全体を覆うように所定材料を堆積させることにより、自ずと形成されるものである。したがって、高精度のパターニング処理を要することなく、相互に確実に分断された第2電極層16を、適切な位置に容易に配置することができる。
【0060】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、素子分離絶縁層24に一の凹部24Gを設け、2組の段差を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図12の第1の変形例のように、素子分離絶縁層24に2つの凹部24G1,24G2を設け、多数組の段差を形成するようにしてもよい。また、図13の第2の変形例のように、素子分離絶縁層24に1または2以上の凸部24T(24T1,24T2)を設けるようにしてもよい。さらには、図14に示した第3の変形例のように、素子分離絶縁膜24を形成せずに画素駆動回路形成層112の平坦化膜や保護膜を掘り下げることにより複数組の段差を形成し、X軸方向における素子分離を行うようにしてもよい。なお、図14は、上記実施の形態における図4に対応する断面図である。いずれも場合であっても上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0061】
また、上記実施の形態では、第1の方向(Y軸方向)に同色光を発する発光素子が複数並び、第2の方向(X軸方向)に異色光を発する発光素子が複数並ぶようにしたが、これに限定されるものではない。第1および第2の方向の双方において異色光を発する発光素子が並ぶようにしてもよい。また、第1の方向と第2の方向とは、互いに直交する場合に限定されず、90°以外の角度で互いに交差するようにしてもよい。
【0062】
また、本発明は、上記実施の形態において説明した各層の材料や積層順序、あるいは成膜方法などに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、第1電極層13をアノード、第2電極層16をカソードとする場合について説明したが、第1電極層13をカソード、第2電極層16をアノードとしてもよい。さらに、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層をさらに備えていてもよい。例えば、第1電極層13と有機層14との間に、酸化クロム(III)(Cr2 O3 ),ITO(Indium-Tin Oxide:インジウム(In)およびスズ(Sn)の酸化物混合膜)などからなる正孔注入用薄膜層を備えていてもよい。
【0063】
加えてまた、上記実施の形態では、第2電極層16が半透過性反射層により構成されている場合について説明したが、第2電極層16は、半透過性反射層と透明電極とが第1電極層13の側から順に積層された構造としてもよい。この透明電極は、半透過性反射層の電気抵抗を下げるためのものであり、発光層で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。透明電極を構成する材料としては、例えば、ITOまたはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物が好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。透明電極の厚みは、例えば30nm以上1000nm以下とすることができる。また、この場合、半透過性反射層を一方の端部とし、透明電極を挟んで半透過性電極に対向する位置に他方の端部を設け、透明電極を共振部とする共振器構造を形成するようにしてもよい。さらに、そのような共振器構造を設けた上で、有機発光素子10R,10G,10Bを保護膜18で覆うようにし、この保護膜18を、透明電極を構成する材料と同程度の屈折率を有する材料により構成すれば、保護膜18を共振部の一部とすることができ、好ましい。
【0064】
加えてまた、上記各実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記各実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10(10R,10G,10B)…有機発光素子、11…基体、111…基板、112…画素駆動回路形成層、12…発光素子形成層、13…第1電極層、131…第1導電層、132…第2導電層、14…有機層、14A…正孔注入層、14B…正孔輸送層、14C…発光層、14D…電子輸送層、16…第2電極層、17…金属層、171…第1導電層、172…第2導電層、18…保護膜、19…封止基板、20…発光領域、21…接続部、24…素子分離絶縁膜、24K1,24K2…開口、124…接続孔、110…表示領域、120…信号線駆動回路、120A…信号線、130…走査線駆動回路、130A…走査線、140…電源供給線駆動回路、140A…電源供給線、150…画素駆動回路、Cs…キャパシタ(保持容量)、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書込トランジスタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が各々順に積層されてなり、互いに交差する第1および第2の方向に配列された複数の発光素子と、
前記第1の方向に隣り合う前記発光素子同士の間に配置され、2組以上の段差を含む分離部と
を備え、
前記複数の発光素子における前記第1電極層同士は互いに分断され、
前記第1の方向に隣り合う前記発光素子における前記有機層同士および第2電極層同士は、前記分離部に含まれる段差によって互いに分断されている
表示装置。
【請求項2】
前記第2電極層は、前記第2の方向に並ぶ前記複数の発光素子に沿って延在している
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の方向に、互いに異なる色光を発する前記複数の発光素子が並んでいる
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2の方向に、互いに等しい色光を発する前記複数の発光素子が並んでいる
請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の方向に隣り合う前記発光素子における前記第2電極層同士は、互いに連結されている
請求項2記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2の方向に隣り合う前記発光素子における前記第2電極層同士は、同一階層において互いに連結されている
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記段差は、前記第1電極層同士を分断する絶縁層に設けられた凹凸部分によって形成されている
請求項2記載の表示装置。
【請求項8】
前記絶縁層における凹凸部分は、互いに鋭角をなす膜面および壁面を有する請求項7記載の表示装置。
【請求項9】
前記絶縁層は、その端縁において膜面と壁面とが鋭角をなしている請求項7記載の表示装置。
【請求項10】
厚さ方向における前記絶縁層の表面の位置と前記第1電極層の表面の位置との差分の最大値は、前記有機層および第2電極層の合計の厚さよりも大きい
請求項2記載の表示装置。
【請求項11】
前記複数の発光素子として、赤色光を発光する複数の赤色発光素子と、緑色光を発光する緑色発光素子と、青色光を発光する青色発光素子とを各々複数含み、
前記第1の方向において、前記赤色発光素子と、前記緑色発光素子と、前記青色発光素子とが順に繰り返し配列されている
請求項3記載の表示装置。
【請求項12】
基板上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が各々順に積層されてなり、互いに交差する第1および第2の方向に配列された複数の発光素子と、前記第1の方向に隣り合う前記発光素子同士の間に配置され、2組以上の段差を含む分離部とを備えた表示装置の製造方法であって、
前記基板上に、複数の前記第1電極層を、互いに接することなく離散的に配列する工程と、
前記複数の第1電極層同士の間隙を埋める絶縁層を形成することにより、分離部を形成する工程と、
前記絶縁層に2組以上の段差を形成する工程と、
前記発光層の種類ごとに複数の前記有機層を順次形成する工程と、
前記有機層を覆うように前記第2の電極層を形成する工程と、
を含み、
前記有機層および第2の電極層を形成する際に、前記第1の方向に隣り合う前記発光素子における前記有機層同士および第2電極層同士を、前記分離部に含まれる段差によって相互に分断する
表示装置の製造方法。
【請求項1】
基板上に、
第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が各々順に積層されてなり、互いに交差する第1および第2の方向に配列された複数の発光素子と、
前記第1の方向に隣り合う前記発光素子同士の間に配置され、2組以上の段差を含む分離部と
を備え、
前記複数の発光素子における前記第1電極層同士は互いに分断され、
前記第1の方向に隣り合う前記発光素子における前記有機層同士および第2電極層同士は、前記分離部に含まれる段差によって互いに分断されている
表示装置。
【請求項2】
前記第2電極層は、前記第2の方向に並ぶ前記複数の発光素子に沿って延在している
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の方向に、互いに異なる色光を発する前記複数の発光素子が並んでいる
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2の方向に、互いに等しい色光を発する前記複数の発光素子が並んでいる
請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の方向に隣り合う前記発光素子における前記第2電極層同士は、互いに連結されている
請求項2記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2の方向に隣り合う前記発光素子における前記第2電極層同士は、同一階層において互いに連結されている
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記段差は、前記第1電極層同士を分断する絶縁層に設けられた凹凸部分によって形成されている
請求項2記載の表示装置。
【請求項8】
前記絶縁層における凹凸部分は、互いに鋭角をなす膜面および壁面を有する請求項7記載の表示装置。
【請求項9】
前記絶縁層は、その端縁において膜面と壁面とが鋭角をなしている請求項7記載の表示装置。
【請求項10】
厚さ方向における前記絶縁層の表面の位置と前記第1電極層の表面の位置との差分の最大値は、前記有機層および第2電極層の合計の厚さよりも大きい
請求項2記載の表示装置。
【請求項11】
前記複数の発光素子として、赤色光を発光する複数の赤色発光素子と、緑色光を発光する緑色発光素子と、青色光を発光する青色発光素子とを各々複数含み、
前記第1の方向において、前記赤色発光素子と、前記緑色発光素子と、前記青色発光素子とが順に繰り返し配列されている
請求項3記載の表示装置。
【請求項12】
基板上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が各々順に積層されてなり、互いに交差する第1および第2の方向に配列された複数の発光素子と、前記第1の方向に隣り合う前記発光素子同士の間に配置され、2組以上の段差を含む分離部とを備えた表示装置の製造方法であって、
前記基板上に、複数の前記第1電極層を、互いに接することなく離散的に配列する工程と、
前記複数の第1電極層同士の間隙を埋める絶縁層を形成することにより、分離部を形成する工程と、
前記絶縁層に2組以上の段差を形成する工程と、
前記発光層の種類ごとに複数の前記有機層を順次形成する工程と、
前記有機層を覆うように前記第2の電極層を形成する工程と、
を含み、
前記有機層および第2の電極層を形成する際に、前記第1の方向に隣り合う前記発光素子における前記有機層同士および第2電極層同士を、前記分離部に含まれる段差によって相互に分断する
表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−43583(P2012−43583A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182470(P2010−182470)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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