表示装置およびその駆動方法
【課題】 発光素子ごとの輝度のバラツキにより表示装置に輝度むらが生じる。
【解決手段】 入力された階調信号により与えられる輝度が一定の階調レベルに対応した輝度よりも低いとき、2つの発光期間に、それぞれ階調信号により与えられる輝度よりも高い輝度の第1の輝度信号と、階調信号により与えられる輝度よりも低い輝度の第2の輝度信号を与えて前記発光素子を発光させ、
入力された階調信号により与えられる輝度が一定の階調レベルに対応した輝度よりも高いとき、2つの発光期間に、階調信号により与えられる輝度に対応する第3の輝度信号を与えて前記発光素子を発光させる。
【解決手段】 入力された階調信号により与えられる輝度が一定の階調レベルに対応した輝度よりも低いとき、2つの発光期間に、それぞれ階調信号により与えられる輝度よりも高い輝度の第1の輝度信号と、階調信号により与えられる輝度よりも低い輝度の第2の輝度信号を与えて前記発光素子を発光させ、
入力された階調信号により与えられる輝度が一定の階調レベルに対応した輝度よりも高いとき、2つの発光期間に、階調信号により与えられる輝度に対応する第3の輝度信号を与えて前記発光素子を発光させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子をマトリクス状に配置した表示装置とその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、有機EL素子などの発光素子からなる複数の画素を基板上にマトリクス状に配置して構成される。各画素は薄膜トランジスタ(TFT)他の回路で構成される駆動回路を備えている。
【0003】
駆動回路を構成するTFTはアモルファスシリコンまたはポリシリコンで作られるが、これらのTFTは、製造方法に起因する特性の不均一を持っている。特に、ポリシリコンTFTは、レーザアニールによってアモルファスシリコンを多結晶化して作られるため、レーザ照射強度の不均一によって特性がばらつき、これが表示画面上にスジ状の輝度ムラとして残ってしまう。
【0004】
特許文献1は、レーザアニールに起因する輝度ムラを、画素ごとにトランジスタ特性を検出してデータ電圧を補正することにより解消する発明を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−139681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザアニール工程において、基板の1か所に繰り返してレーザを照射して照射強度のばらつきの影響を平均化することにより、均一なTFT特性を得ることができる。しかし、レーザ照射回数を増やすと基板1枚あたりのレーザ照射工程の時間が長くなり、コスト高を招く。また、画素ごとのTFT特性を検出し、データ電圧を補正するためには、検出と補正のための回路、特に補正データを記憶するメモリが必要となり、これもコストアップ要因となる。製造工程に時間がかからず、また駆動回路を複雑にすることなく、輝度ムラをなくす方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の発光素子が配列した表示部と、前記発光素子を発光させる駆動部と、入力される画像信号を処理して前記駆動部に伝達する信号処理部とを有する表示装置であって、
前記信号処理部は、前記画像信号に含まれる階調信号を一定の階調レベルと比較する比較部と、前記階調信号を輝度信号に変換する変換部とを備え、
前記比較部が、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度が前記一定の階調レベルに対応した輝度よりも低いことを示す結果を出力したとき、
前記変換部が、前記階調信号により与えられる輝度よりも高い輝度を与える第1の輝度信号と、前記階調信号により与えられる輝度よりも低い輝度を与える第2の輝度信号とを生成し、前記駆動部が、2つの発光期間にそれぞれ前記第1と第2の輝度信号に従って前記発光素子を発光させ、
前記比較部が、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度が前記一定の階調レベルに対応した輝度よりも高いことを示す結果を出力したとき、
前記変換部が、前記階調信号を前記階調信号により与えられる輝度に対応する第3の輝度信号に変換し、前記駆動部が、前記2つの発光期間にともに前記第3の輝度信号前記発光素子を発光させる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1つの階調データに対して、2種類の輝度レベルで発光させることで、トランジスタの電流ばらつきが大きい領域を使用せずに、トランジスタの電流ばらつきが小さい、又は電流ばらつきが目立たない領域を使用して階調表示を行うことができ、表示装置の輝度ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】特性の異なる2つのトランジスタを示す図である。
【図2】スジムラにおける輝度の不均一さを示す図である。
【図3】スジムラの見えやすさと輝度の関係を示す図である。
【図4】第1の実施例の表示装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施例における入力階調信号と輝度信号の関係を示す図である。
【図6】第1の実施例における有機EL素子の駆動回路を示す図である。
【図7】第1の実施例の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】比較例における入力階調信号と輝度信号の関係を示す図である。
【図9】第1の実施例におけるメモリの書き込みと読み出しのタイミングを示す図である。
【図10】第2の実施例における入力階調信号と輝度信号の関係を示す図である。
【図11】第3の実施例における発光シーケンスを示す図である。
【図12】第3の実施例における別の発光シーケンスを示す図である。
【図13】第4の実施例におけるサブフレームごとの動作を示す概略図である。
【図14】第4の実施例における有機EL素子の駆動回路を示す図である。
【図15】第4の実施例におけるサブフレームごとの動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、閾値電圧および移動度が異なる2種類のMOSトランジスタのVgs−Ids曲線を示す。横軸はゲート−ソース間電圧(Vgs)、縦軸はドレイン電流(Ids)である。矢印は表示素子を階調駆動するときの駆動電流範囲を示している。電流比を10万対1とし、矢印で示す100pA〜10μAの範囲で発光の明暗が調整される。
【0011】
ドレイン電流Idsの絶対的な範囲は、それによって駆動される発光素子の輝度、コントラスト、発光効率などにより決定され、トランジスタのサイズで調整可能である。
同一のゲート−ソース間電圧Vgsが印加された時のドレイン電流Idsの違いに注目すると、電流が大きい領域(100nA以上)では2つの曲線の電流比は小さく、中間的な電流領域(1nA〜100nA)では電流比は大きくなっている。
【0012】
更に電流が小さい領域(1nA以下)では、電流比は大きいが、電流の絶対値が非常に小さいので、電流差としては小さな値になる。この電流領域では、発光素子はほぼ暗状態となり、輝度差はほとんど視認できない。
【0013】
このトランジスタで駆動した発光素子をマトリクス配列させ、表示装置として用いると、図1に示すトランジスタ特性の違いが、輝度の不均一となって現れる。図2は、一定の輝度信号で発光させたときの輝度の不均一さを示す。
【0014】
図2の表示装置は、低温ポリシリコン(LTPS)プロセスで作成されたTFTを用いており、レーザアニール工程で生じたトランジスタ特性のばらつきが、レーザ照射領域方向(表示面の縦方向)に平行なスジ状の輝度むら(以下スジムラという)として視認される。スジムラは、表示装置の全画面を均一な輝度で発光させたときに、線状に周囲より明るく見える部分である。周囲の輝度が比較的高いときは見えづらく、周囲の輝度が低いと目立つようになる。
【0015】
図2は、周囲に対するスジムラ部分のコントラストを表す量を以下の式で定義し、画面の明るさに対する依存性を示したものである。
スジムラ率(%)={(スジムラの内部にある画素の輝度)−(スジムラの周辺にある画素の平均輝度)}÷(スジムラの周辺にある画素の平均輝度)×100
スジムラの周辺にある画素の平均輝度としては、スジムラを挟む左右方向各5画素の輝度の平均をとったものとする。
【0016】
特性の異なるトランジスタのドレイン電流Idsの比の大小が、上で説明したように電流領域によって違っているために、スジムラ率は輝度に対して図2に示すように変化する。図2には、人間の目によるスジムラの視認限界が破線で示してある。
【0017】
輝度が数10cd/m2以上の高い領域ではスジムラ率が低く、視認限界以下である。図1に示した通り、トランジスタの電流量が大きい領域では、トランジスタ特性の異なる2つの発光素子間の電流比が小さく、したがって輝度比も小さいので、スジムラ率は小さい。これが、図2に示す、輝度が高い領域での低いスジムラ率となって現れている。
【0018】
10cd/m2付近から1cd/m2にかけての中間輝度領域ではスジムラ率が高く、4cd/m2以下では視認限界を超えて目に見えるようになる。以下では、スジムラが見える範囲の上限の輝度を第1閾値輝度Ith1と呼ぶ。図2では第1閾値輝度Ith1は約4cd/m2である。
【0019】
この電流領域では、トランジスタのドレイン電流が小さなっていくにつれて、特性の異なる2つのトランジスタ間の電流比は大きくなる。図2で、輝度が数10cd/m2以下の領域で輝度が下がるにつれてスジムラ率が増加するのはこの理由による。
【0020】
スジムラ率は、輝度1cd/m2付近で最大になった後再び低くなる。輝度が1cd/m2以下の領域では、電流の値自体が小さいためにスジムラの中と外との輝度の違いが小さくなる。その結果スジムラ率も低下する。輝度が0.4cd/m2以下になるとスジムラ率が再び視認限界以下になり、スジムラは見えなくなる。スジムラが視認される範囲の下限の輝度を第2閾値輝度Ith2という。図2では第2閾値輝度Ith2は約0.4cd/m2である。
【0021】
図2の破線に示すように、比較的高輝度ではスジムラが視認される限界は一定である。輝度が低くなると、視認できるスジムラの下限は高くなる傾向にあるが、実際のスジムラ率が視認限界を上回るので、中輝度領域ではスジムラが目立つ。ごく低輝度ではスジムラ自体が暗すぎて見えなくなる。
【0022】
以上のことを、図3に示す階調信号と輝度の関係を示すグラフで説明する。
【0023】
図3の横軸は画像信号の電圧を表し、256階調とすると256段階の値をとる。縦軸は、階調に対応した輝度を表す。有機EL素子のような発光素子の輝度は流れる電流にほぼ比例するので、縦軸は発光素子に流れる電流とみることもできる。画像信号と輝度は必ずしも比例せず、表示装置のガンマ特性に応じて図3のような非線形の関係になる。
【0024】
横軸の(C)で示す高階調信号が入力された場合は、輝度が第1閾値Ith1を超え、スジムラによる輝度のばらつきはあっても視認されない。
【0025】
(B)の中間的階調信号が入力されて、輝度が第1閾値と第2閾値の間の領域になると、輝度の不均一が人の目に視認されやすくスジムラが目立つ。
【0026】
さらに輝度が低い低階調領域(A)においては、輝度に不均一があっても暗いためにムラとして視認されにくい。
【0027】
(B)の範囲の上限と下限は、スジムラが視認されるか否かを多くの人で試験し、その結果から平均的な値として決めることができる。
【0028】
本発明は、低階調領域で輝度ムラが目立ち、高階調領域でそれが見えにくくなるという性質を利用して、高階調信号が入ったときは、そのままの輝度で決められた時間(通常は1フレーム期間)発光させ、低階調領域の信号が入力されたときに、それより高い輝度で短時間発光させることにより見かけの輝度むらを小さくする。
【0029】
低階調信号が入力されたときは、それより輝度の高い信号と低い信号の2つの輝度信号を発生させて、それらの輝度信号により発光素子を2つの期間で発光させ、時間平均をとった輝度を元の階調信号の輝度に一致させる。一方の期間に入力信号より高い輝度で発光させるため、両方の期間に入力信号に応じた輝度で発光させたときに比べて、ムラが視認される階調範囲が狭まる。
【0030】
高階調信号が入力されたときは、もとの階調信号をそのまま輝度信号にして2回の発光期間で同じ輝度で発光させる。高階調信号が入力されたときに高輝度と低輝度の2回に分けて発光させると、一方の発光期間が低輝度発光となり、ムラが見えることになるが、同輝度で発光させることによりムラが発生することがない。
【0031】
以下、実施例によって具体的に説明する。以下では、発光素子として有機EL素子を用いた表示装置を例に挙げて説明するが、本発明の発光装置はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
図4は本発明の第1の実施例である表示装置の構成を示すブロック図である。
【0033】
本発明の表示装置10は、表示を行う表示部12と、画像信号Vinが入力され処理される信号処理部11と、処理された信号に従って表示部を駆動する駆動部15とを有する。表示部12は、発光素子である有機EL素子とそれを駆動するMOSTFT他からなる駆動回路がそれぞれ複数個、マトリクス状に配列して構成されている。
【0034】
画像信号Vinは、表示部12の各発光素子に対応した輝度情報を含む色別のディジタルまたはアナログの階調信号である。画像信号Vinは、基準となるクロック信号に同期した時系列の信号であって、1クロックの画像信号が1つの有機EL素子に対応する。表示装置には、表示部12の全発光素子に対応した1フレームの画像信号Vinが、60分の1秒に1回の割合で周期的に送られてくる。
【0035】
画像信号Vinは、表示部の各有機EL素子の輝度を示す階調信号(以下、画像信号と区別せず同じ符号Vinで表記する)を含む。この階調信号Vinが信号処理部11で輝度信号Sに変換される。これが駆動部15を経由して表示部12に伝達され、対応する輝度で表示素子を発光させる。輝度信号Sは、表示素子の輝度を決める信号であって、実際に表示素子が発光するときの輝度に対応する信号である。以下、輝度信号Sとそれに対応した輝度とを区別せず、同じ符号Sで表す。
【0036】
信号処理部11に入力された画像信号は、比較部13に入り、入力された階調信号Vinが示す輝度レベルと比較部13にあらかじめ備えられている第1の閾値輝度Ith1とがクロックごとに比較される。比較結果は、
(1)入力階調信号Vinに対応する輝度が第1閾値輝度Ith1より低い、
(2)入力階調信号Vinの輝度が第1閾値輝度Ith1より高い、
のいずれかの信号として比較部13より出力される。入力階調信号Vinに対応する輝度が第1閾値輝度Ith1と等しい場合は、あらかじめ(1)または(2)と見做して出力すると決めておけばよい。
【0037】
比較部13の出力は変換部14に入る。変換部14は、比較部13の出力を参照しながら入力された画像信号Vinを輝度信号Sに変換する。
【0038】
図5は、信号処理部11の入力と出力の関係を示す図である。入力された階調信号Vinを横軸にとり、変換部14で変換され駆動部15に出力される輝度信号Sを縦軸にとってある。入力される階調信号とそれに1対1で対応する輝度信号Sは、図の破線S0で示されている。また、DxはS0が第1閾値輝度と一致する点の階調を表す。
【0039】
入力された階調信号がDx以下、すなわち階調信号の示す輝度が第1の閾値輝度Ith1より低いとき、比較部13は(1)の結果を出力する。それを受けて変換部14は、まず入力階調信号Vinに対応する輝度S0の2倍の輝度を示す第1の輝度信号S1を生成し、駆動部15に出力する。入力階調信号Vinの輝度S0はあらかじめ決まっているので変換部14にこれを記憶しておき、階調信号Vinが入力された時にそれに対応するS0を読み出し、係数2をかけてS1を算出する。駆動部15は、この第1の輝度信号S1に従って表示部12の対応する有機EL素子に駆動信号を送り、所定の発光期間の前半で発光させる。
【0040】
次いで、変換部14は、最も低い輝度レベル、つまり黒レベルに対応する第2の輝度信号S2を生成して駆動部15に送る。駆動部15は、第2の輝度信号が黒レベルの輝度信号であるから、後半の発光期間で対応する有機EL素子の発光を停止する。
【0041】
輝度信号S1とS2は、平均値がもとの階調信号に対応する輝度S0に等しくなるように設定される。前半と後半を合わせた全発光期間で時間平均をとった輝度は、もとの入力信号の輝度に一致する。
【0042】
入力された画像信号Vinの示す輝度S0が第1閾値Ith1より高いとき、変換部14は、入力画像信号Vinの輝度S0に等しい第3の輝度信号S3を生成し、所定期間の前半、後半にともにこの第3の輝度信号S3を駆動部15に出力する。駆動部15は、所定の発光期間のあいだ、前半と後半で同じ第3の輝度信号S3に対応した輝度で、対応する有機EL素子を発光させる。
【0043】
変換部14は、階調信号Vinから輝度信号S1とS2またはS3を発生し、まず、1フレームの前半の期間で用いられる輝度信号S1またはS3を駆動部15に送る。もう一方の輝度信号S2はいったんメモリ16に格納し、後半の期間に読みだして駆動部15に送る。第3の輝度信号S3が生成された場合は、それもメモリ16に格納する。
【0044】
以上の例では入力された階調信号が比較されるDxは、それに対応する輝度が第1閾値輝度と一致するように選ばれた。入力された階調信号に対応する輝度がスジムラが視認される輝度範囲すなわち図5のIth1とIth2の間に入るときに、2つの時間に分けてそれぞれ高輝度と低輝度の表示を行うことによりスジムラを見えにくくすることが本発明の骨子である。スジムラの視認範囲より広い輝度範囲をとって、階調信号がその範囲に入るときに2つの輝度信号に分ける処理を行っても、スジムラを見えなくする効果は同様に得られる。したがってDxは、第1閾値Ith1より高い輝度(ただし最大輝度よりは低い輝度)に対応する階調レベルすなわち図5のDxと255の間の階調レベルから選ぶこともできる。
【0045】
輝度信号S2の代わりに比較部13の出力をメモリ16に格納してもよい。メモリ16は、比較部の出力する(1)か(2)かの比較結果を0と1で表した1ビット情報として入力画像信号の順番に記憶する。記憶した情報が読みだされるときは、書き込まれたときと同じ順番で読みだされるので、メモリ16はFIFO(ファーストイン・ファーストアウト)メモリである。
【0046】
図6は表示部12の有機EL素子を駆動する駆動回路である。駆動回路2は1つの有機EL素子ELごとに1つ設けられ、電源Vccから、駆動トランジスタTr2と発光期間制御スイッチTr3を通して有機EL素子ELに電流を供給する。駆動回路2は、列方向に延びるデータ線7に伝達されるデータ信号Vdataを受け取り、保持容量C1に蓄え、これを駆動トランジスタTr2が電流に変換する。駆動回路2は、行方向に延びる2本の制御線5(P1)、6(P2)によって行単位に制御される。制御線5(P1)は、駆動トランジスタTr2のゲートとドレイン間を短絡するスイッチTr1のオン・オフを制御する。制御線6(P2)は発光期間制御スイッチTr3のオン・オフを制御する。制御線5(P1)によって短絡スイッチTr1がオン、制御線6(P2)によって発光期間制御スイッチTr3がオフになると、データ線7のデータ電圧Vdataが保持容量C1の両端電圧として保持される。これで駆動回路2にデータ信号が書き込まれたことになる。すべての行にデータ信号が書き込まれたのち、全行の発光期間制御スイッチTr3がオンになると同時にデータ線7の電圧がデータ信号電位より低い一定の電位になり、その結果駆動トランジスタTr2のゲート−ソース間電圧が駆動トランジスタTr2の閾値電圧を超えて、駆動トランジスタTr2のドレインから有機EL素子ELに向けて電流が流れる。
【0047】
図7は、駆動部15の動作を示すタイミングチャートである。上から第1行、第2行、・・・、第m行の各制御線P1の信号、n列目のデータ線の信号Vdata(n)、第1閾値以下の階調信号が書き込まれた有機EL素子L1の輝度I1、第1閾値より高い輝度の階調信号が書き込まれた有機EL素子L2の輝度I2を示している。横軸は時間で、引き続く第1と第2の期間F1,F2とその中の書き込み期間W1、W2、発光期間E1,E2を示している。
【0048】
画像信号Vinは1フレーム期間を周期として入力される。駆動部15は、第1の期間F1中に、第1の書き込み期間W1で、制御線P1で有機EL素子を行単位で選択し、データ線に輝度信号に対応したデータ信号Vdataを送って、当該行の有機EL素子の駆動回路に輝度信号を書き込む。すべての行にデータ信号を書き込み終わったのち、発光期間E1で有機EL素子を発光させる。第2の期間中も同じ動作が繰り返される。
【0049】
第1閾値輝度Ith1に対応する階調Dx以下の階調信号が入力された有機EL素子L1には、1回目の書き込み期間W1に第1の輝度信号S1に対応するデータ信号Vdataが書き込まれ、発光期間E1で対応した輝度で発光する。その後2回目の書き込み期間W2に第2の輝度信号S2に対応するデータ信号Vdataが書き込まれるが、第2の輝度信号S2は最低輝度レベル、つまり黒レベルの輝度信号であるから、第2の発光期間E2中は発光しない。
【0050】
第1閾値輝度Ith1に対応する階調Dxより高い階調信号Vinが入力された有機EL素子L2は、1回目、2回目の書き込み期間W1,W2にともに第3の輝度信号S3が駆動回路に書き込まれ、第1と第2の発光期間E1,E2でともに第3の輝度信号S3に対応した輝度で発光する。
【0051】
本実施例によれば、入力された画像信号の輝度が第1閾値輝度Ith1より低いとき、有機EL素子は2倍の輝度で半分の期間発光し、残りの期間は発光しない。2倍輝度で発光する発光期間E1中の輝度が、輝度ムラが視認されるIth2とIth1の間に入るときは輝度ムラが視認される。しかし、その範囲は図5の第1の輝度信号S1が第1の閾値輝度Ith1と第2の閾値輝度Ith2の間にある範囲(図5にR1で示す階調信号範囲)であるから、入力信号をそのままの輝度S0で表示した場合の範囲(図5にR2で示す階調信号範囲)よりも狭くなる。そのため、輝度むらの発生する頻度もそれにつれて少なくなることが期待できる。
【0052】
また、入力された画像信号の輝度が第1閾値より高いときは、入力信号の示す輝度S3=S0で発光させるので、この場合も輝度が第1閾値以下になることがない。
【0053】
比較のために、すべての入力階調信号に対して異なる2つの輝度信号を出力する場合について以下で説明する。図8は、入力された画像信号の輝度が第1閾値より高いときにも、低いときと同様に、入力輝度S0より高い第1輝度信号S1と低い第2輝度信号S2を発生させて異なる輝度で表示を行うとしたときの階調信号と輝度信号の関係を示す図である。
【0054】
Dx以上の階調信号が入ったとき、第2輝度信号S2が最低輝度レベルではなくなり、S2の輝度が第1閾値と第2閾値の間となる階調信号範囲(図8のR3に示す範囲)では、第2発光期間E2においてもスジムラが視認される。第1または第2のいずれかの発光期間でスジムラが見える階調信号範囲は、R1とR3の合計範囲となる。このように、すべての階調範囲で2つの輝度信号で発光させると、スジムラが視認される確率が高くなる。
【0055】
図6のように、低輝度のときのみ2つの発光期間で別々の輝度で発光させ、高輝度では1つの輝度で発光させ、高輝度のときはもとの1つの輝度信号で表示することにより、輝度ムラの生じる範囲はR1だけになる。
【0056】
図4に示されたメモリ16の動作タイミングを図9に示す。
【0057】
メモリ16は2つのメモリ領域MEMA,MEMBを持っている。MEMAには1フレームの前半の書き込みと発光に用いられる輝度信号S1とS3が格納され、MEMBには1フレームの後半の書き込みと発光に用いられる輝度信号S2とS3が格納される。
【0058】
画像信号Vinはフレーム単位で表示装置に送られてくる。第1フレームのT1からT3の斜線を施した期間に送られてきた画像信号Vinは、変換部14で画素ごとに輝度信号Sに変換され、MEMAとMEMBに順次書き込まれる。これらのデータは、次の第2フレームの第1期間F1の斜線を付けたT4とT5の間にMEMAから読みだされて駆動部15に送られる。その後、第2期間F2の斜線を付けたT5とT6の間にMEMBからデータが読み出される。
【0059】
MEMBには、輝度信号S2の代わりに、比較部13で入力階調信号の輝度が第1閾値より低いとされた画素のアドレスに“1”を、それ以外の画素のアドレスに“0”を、データとして記憶してもよい。その場合は、MEMAは階調信号のビット幅で全画素分のデータを格納する容量が必要であるが、MEMBは“0”と“1”の2値データを格納するので、1ビット×全画素の容量で済む。
【実施例2】
【0060】
図10は本発明の第2の実施例に係る表示装置の階調信号と輝度信号の関係を示す図である。図5と同じ部分については同じ符号をつけて説明を省略する。表示装置の全体構成は図4と同じである。
【0061】
本実施例では、第2の輝度信号S2が最低輝度(黒)レベルでなく、入力階調信号に応じてゼロでない輝度信号になっていることが第1の実施例と異なる。さらに、1フレームの前半の第1の書き込み期間W1において第2の輝度信号S2が書き込まれて第1発光期間E1でS2の輝度で発光し、後半の第2の書き込み期間W2において第1の輝度信号S1が書き込まれて第2発光期間E2でS1の輝度で発光する。
【0062】
第1の期間における輝度信号S2は、第2閾値Ith2以下の輝度で有機EL素子を発光させる。したがって実施例1と同様にスジムラは視認されない。第1の期間F1における輝度信号S2と第2の期間F2における輝度信号S1とは、平均値がもとの入力階調信号に対応する輝度S0に等しく設定されることは実施例1と同じである。第2の輝度信号S2はS0に1より小さい正の係数を乗じて算出され、第1の輝度信号S1はS0に2より小さい、しかし1よりは大きい係数をかけることにより算出される。
【実施例3】
【0063】
実施例1と2においては、1フレーム期間の前半の第1の期間または後半の第2の期間に入力階調信号より高輝度の輝度信号で有機EL素子を発光させ、他方の期間に入力階調信号より低輝度の輝度信号で有機EL素子を発光させた。この場合は、発光期間ごとに、高輝度の表示と低輝度の表示が交替するので、画面のちらつき(フリッカ)が生じる恐れがある。
【0064】
本第3の実施例では、各発光期間で、高輝度信号によって発光する有機EL素子と低輝度信号によって発光する有機EL素子を混在させる。混在のさせ方は、上下左右に隣接して配置されている有機EL素子を市松状に分ける方法や、行方向または列方向に互い違いにする方法などがある。近接する有機EL素子で輝度が平均化される結果、フリッカがなくなる。
【0065】
図11(a)(b)は本実施例に係る表示装置の発光シーケンスを示す図である。(a)がフレーム前半の第1の期間の発光の様子、(b)がフレーム後半の第2の期間の発光の様子を示す。
【0066】
発光色が赤(R)の有機EL素子33、緑(G)の有機EL素子34、青(B)の有機EL素子35が行方向に周期的に配列し、3色の有機EL素子は1つの画素を構成している。画素単位で、第1の輝度信号S1(高輝度信号)と第2の輝度信号S2(低輝度信号)で交互に発光し、隣接画素で高輝度と低輝度の発光の位相が逆になっている。
【0067】
図12(a)(b)は、画素単位でなく個々の有機EL素子33,34,35が市松状に位相を逆転させて発光している場合の発光シーケンスを示す。
【実施例4】
【0068】
図13は本発明の第4の実施例を示した図である。本実施例では第一期間の通常の2倍の輝度の発光と第二期間の発光停止を行順次に行うものである。
【0069】
1フレームを2等分し、サブフレームAとサブフレームBに分割する。サブフレームAでは各行のプログラミングを行い、次の行のプログラミングに移行すると共に順次発光動作に移行する。全ての行のプログラミングが終了すれば、直ちにサブフレームBに移行する。サブフレームBではサブフレームAでデータ信号をプログラミングした画素について、発光停止するようにプログラミングを行う。
【0070】
図14は本実施例の駆動回路、図15はその動作を示すタイミングチャートである。
【0071】
図14の回路は、容量C1とTr2との間にとTr4を設けたことと、VCCとTr2との間に容量C2を設けている点で図6と相違しているがその他は同じである。
【0072】
図15(a)のサブフレームAのn行目の画素のプログラミング動作について説明する。T1〜T2の期間にデータ線はプログラミングするデータ信号Vdataに設定される。T2〜T3の期間に画素回路内の駆動トランジスタTr2の閾値がキャンセルされると同時に、画像データV(i)が画素に書き込まれる。T2〜T3の期間のプリチャージ動作時に、画像データに関らず有機EL素子に電流が流れ一瞬発光するが、階調表示には影響を与えない発光である。
【0073】
T3〜T4の期間に、該当行以降の行の画素に同様に、閾値がキャンセルされると同時に画像データが書き込まれていく。T4〜T5の期間に、信号線にVSLの電圧が印加され、該当行の画素はトランジスタTr2の電流駆動能力に応じた電流が有機EL素子に供給され、発光動作を開始する。T5以降は、容量C2に蓄えられたTr2の閾値リセット電圧からV(i)―VSLの差電圧下降した電圧を保持し続ける。
【0074】
次いで、図15(b)のように、サブフレームBで各行に順次発光停止画素に相当する第2の輝度信号S2(黒レベル)を書き込む。T6〜T7の期間、P3(n)信号がHになりTr3がONすると同時に容量C1を通して、データ線Vdataの電位がC2に書き込まれる。この時、データ線電位はVhとなっているが、この電位は
Vh−VSL>V(i)max−VSL
を満たす電位に設定する。V(i)は出力ビデオデータV_outの最大値である。
【0075】
サブフレームA期間にV(i)が書き込まれて発光した画素は、Vh−VSLの電位分Tr2のゲート電位が上昇しTr2のゲート―ソース電位が0以下になるため消灯動作になる。データ線VdataがVSLの電圧であれば、サブフレームA期間にV(i)が書き込まれて発光した画素はそのままの状態で電圧が保持され、発光動作を継続する。
【符号の説明】
【0076】
10 表示装置
11 信号処理部
12 表示部
13 比較部
14 変換部
15 駆動部
16 メモリ
P1、P2 制御信号
Vdata データ信号
S0−S3 輝度信号
I1,I2 発光輝度
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子をマトリクス状に配置した表示装置とその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、有機EL素子などの発光素子からなる複数の画素を基板上にマトリクス状に配置して構成される。各画素は薄膜トランジスタ(TFT)他の回路で構成される駆動回路を備えている。
【0003】
駆動回路を構成するTFTはアモルファスシリコンまたはポリシリコンで作られるが、これらのTFTは、製造方法に起因する特性の不均一を持っている。特に、ポリシリコンTFTは、レーザアニールによってアモルファスシリコンを多結晶化して作られるため、レーザ照射強度の不均一によって特性がばらつき、これが表示画面上にスジ状の輝度ムラとして残ってしまう。
【0004】
特許文献1は、レーザアニールに起因する輝度ムラを、画素ごとにトランジスタ特性を検出してデータ電圧を補正することにより解消する発明を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−139681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザアニール工程において、基板の1か所に繰り返してレーザを照射して照射強度のばらつきの影響を平均化することにより、均一なTFT特性を得ることができる。しかし、レーザ照射回数を増やすと基板1枚あたりのレーザ照射工程の時間が長くなり、コスト高を招く。また、画素ごとのTFT特性を検出し、データ電圧を補正するためには、検出と補正のための回路、特に補正データを記憶するメモリが必要となり、これもコストアップ要因となる。製造工程に時間がかからず、また駆動回路を複雑にすることなく、輝度ムラをなくす方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の発光素子が配列した表示部と、前記発光素子を発光させる駆動部と、入力される画像信号を処理して前記駆動部に伝達する信号処理部とを有する表示装置であって、
前記信号処理部は、前記画像信号に含まれる階調信号を一定の階調レベルと比較する比較部と、前記階調信号を輝度信号に変換する変換部とを備え、
前記比較部が、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度が前記一定の階調レベルに対応した輝度よりも低いことを示す結果を出力したとき、
前記変換部が、前記階調信号により与えられる輝度よりも高い輝度を与える第1の輝度信号と、前記階調信号により与えられる輝度よりも低い輝度を与える第2の輝度信号とを生成し、前記駆動部が、2つの発光期間にそれぞれ前記第1と第2の輝度信号に従って前記発光素子を発光させ、
前記比較部が、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度が前記一定の階調レベルに対応した輝度よりも高いことを示す結果を出力したとき、
前記変換部が、前記階調信号を前記階調信号により与えられる輝度に対応する第3の輝度信号に変換し、前記駆動部が、前記2つの発光期間にともに前記第3の輝度信号前記発光素子を発光させる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1つの階調データに対して、2種類の輝度レベルで発光させることで、トランジスタの電流ばらつきが大きい領域を使用せずに、トランジスタの電流ばらつきが小さい、又は電流ばらつきが目立たない領域を使用して階調表示を行うことができ、表示装置の輝度ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】特性の異なる2つのトランジスタを示す図である。
【図2】スジムラにおける輝度の不均一さを示す図である。
【図3】スジムラの見えやすさと輝度の関係を示す図である。
【図4】第1の実施例の表示装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施例における入力階調信号と輝度信号の関係を示す図である。
【図6】第1の実施例における有機EL素子の駆動回路を示す図である。
【図7】第1の実施例の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】比較例における入力階調信号と輝度信号の関係を示す図である。
【図9】第1の実施例におけるメモリの書き込みと読み出しのタイミングを示す図である。
【図10】第2の実施例における入力階調信号と輝度信号の関係を示す図である。
【図11】第3の実施例における発光シーケンスを示す図である。
【図12】第3の実施例における別の発光シーケンスを示す図である。
【図13】第4の実施例におけるサブフレームごとの動作を示す概略図である。
【図14】第4の実施例における有機EL素子の駆動回路を示す図である。
【図15】第4の実施例におけるサブフレームごとの動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、閾値電圧および移動度が異なる2種類のMOSトランジスタのVgs−Ids曲線を示す。横軸はゲート−ソース間電圧(Vgs)、縦軸はドレイン電流(Ids)である。矢印は表示素子を階調駆動するときの駆動電流範囲を示している。電流比を10万対1とし、矢印で示す100pA〜10μAの範囲で発光の明暗が調整される。
【0011】
ドレイン電流Idsの絶対的な範囲は、それによって駆動される発光素子の輝度、コントラスト、発光効率などにより決定され、トランジスタのサイズで調整可能である。
同一のゲート−ソース間電圧Vgsが印加された時のドレイン電流Idsの違いに注目すると、電流が大きい領域(100nA以上)では2つの曲線の電流比は小さく、中間的な電流領域(1nA〜100nA)では電流比は大きくなっている。
【0012】
更に電流が小さい領域(1nA以下)では、電流比は大きいが、電流の絶対値が非常に小さいので、電流差としては小さな値になる。この電流領域では、発光素子はほぼ暗状態となり、輝度差はほとんど視認できない。
【0013】
このトランジスタで駆動した発光素子をマトリクス配列させ、表示装置として用いると、図1に示すトランジスタ特性の違いが、輝度の不均一となって現れる。図2は、一定の輝度信号で発光させたときの輝度の不均一さを示す。
【0014】
図2の表示装置は、低温ポリシリコン(LTPS)プロセスで作成されたTFTを用いており、レーザアニール工程で生じたトランジスタ特性のばらつきが、レーザ照射領域方向(表示面の縦方向)に平行なスジ状の輝度むら(以下スジムラという)として視認される。スジムラは、表示装置の全画面を均一な輝度で発光させたときに、線状に周囲より明るく見える部分である。周囲の輝度が比較的高いときは見えづらく、周囲の輝度が低いと目立つようになる。
【0015】
図2は、周囲に対するスジムラ部分のコントラストを表す量を以下の式で定義し、画面の明るさに対する依存性を示したものである。
スジムラ率(%)={(スジムラの内部にある画素の輝度)−(スジムラの周辺にある画素の平均輝度)}÷(スジムラの周辺にある画素の平均輝度)×100
スジムラの周辺にある画素の平均輝度としては、スジムラを挟む左右方向各5画素の輝度の平均をとったものとする。
【0016】
特性の異なるトランジスタのドレイン電流Idsの比の大小が、上で説明したように電流領域によって違っているために、スジムラ率は輝度に対して図2に示すように変化する。図2には、人間の目によるスジムラの視認限界が破線で示してある。
【0017】
輝度が数10cd/m2以上の高い領域ではスジムラ率が低く、視認限界以下である。図1に示した通り、トランジスタの電流量が大きい領域では、トランジスタ特性の異なる2つの発光素子間の電流比が小さく、したがって輝度比も小さいので、スジムラ率は小さい。これが、図2に示す、輝度が高い領域での低いスジムラ率となって現れている。
【0018】
10cd/m2付近から1cd/m2にかけての中間輝度領域ではスジムラ率が高く、4cd/m2以下では視認限界を超えて目に見えるようになる。以下では、スジムラが見える範囲の上限の輝度を第1閾値輝度Ith1と呼ぶ。図2では第1閾値輝度Ith1は約4cd/m2である。
【0019】
この電流領域では、トランジスタのドレイン電流が小さなっていくにつれて、特性の異なる2つのトランジスタ間の電流比は大きくなる。図2で、輝度が数10cd/m2以下の領域で輝度が下がるにつれてスジムラ率が増加するのはこの理由による。
【0020】
スジムラ率は、輝度1cd/m2付近で最大になった後再び低くなる。輝度が1cd/m2以下の領域では、電流の値自体が小さいためにスジムラの中と外との輝度の違いが小さくなる。その結果スジムラ率も低下する。輝度が0.4cd/m2以下になるとスジムラ率が再び視認限界以下になり、スジムラは見えなくなる。スジムラが視認される範囲の下限の輝度を第2閾値輝度Ith2という。図2では第2閾値輝度Ith2は約0.4cd/m2である。
【0021】
図2の破線に示すように、比較的高輝度ではスジムラが視認される限界は一定である。輝度が低くなると、視認できるスジムラの下限は高くなる傾向にあるが、実際のスジムラ率が視認限界を上回るので、中輝度領域ではスジムラが目立つ。ごく低輝度ではスジムラ自体が暗すぎて見えなくなる。
【0022】
以上のことを、図3に示す階調信号と輝度の関係を示すグラフで説明する。
【0023】
図3の横軸は画像信号の電圧を表し、256階調とすると256段階の値をとる。縦軸は、階調に対応した輝度を表す。有機EL素子のような発光素子の輝度は流れる電流にほぼ比例するので、縦軸は発光素子に流れる電流とみることもできる。画像信号と輝度は必ずしも比例せず、表示装置のガンマ特性に応じて図3のような非線形の関係になる。
【0024】
横軸の(C)で示す高階調信号が入力された場合は、輝度が第1閾値Ith1を超え、スジムラによる輝度のばらつきはあっても視認されない。
【0025】
(B)の中間的階調信号が入力されて、輝度が第1閾値と第2閾値の間の領域になると、輝度の不均一が人の目に視認されやすくスジムラが目立つ。
【0026】
さらに輝度が低い低階調領域(A)においては、輝度に不均一があっても暗いためにムラとして視認されにくい。
【0027】
(B)の範囲の上限と下限は、スジムラが視認されるか否かを多くの人で試験し、その結果から平均的な値として決めることができる。
【0028】
本発明は、低階調領域で輝度ムラが目立ち、高階調領域でそれが見えにくくなるという性質を利用して、高階調信号が入ったときは、そのままの輝度で決められた時間(通常は1フレーム期間)発光させ、低階調領域の信号が入力されたときに、それより高い輝度で短時間発光させることにより見かけの輝度むらを小さくする。
【0029】
低階調信号が入力されたときは、それより輝度の高い信号と低い信号の2つの輝度信号を発生させて、それらの輝度信号により発光素子を2つの期間で発光させ、時間平均をとった輝度を元の階調信号の輝度に一致させる。一方の期間に入力信号より高い輝度で発光させるため、両方の期間に入力信号に応じた輝度で発光させたときに比べて、ムラが視認される階調範囲が狭まる。
【0030】
高階調信号が入力されたときは、もとの階調信号をそのまま輝度信号にして2回の発光期間で同じ輝度で発光させる。高階調信号が入力されたときに高輝度と低輝度の2回に分けて発光させると、一方の発光期間が低輝度発光となり、ムラが見えることになるが、同輝度で発光させることによりムラが発生することがない。
【0031】
以下、実施例によって具体的に説明する。以下では、発光素子として有機EL素子を用いた表示装置を例に挙げて説明するが、本発明の発光装置はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
図4は本発明の第1の実施例である表示装置の構成を示すブロック図である。
【0033】
本発明の表示装置10は、表示を行う表示部12と、画像信号Vinが入力され処理される信号処理部11と、処理された信号に従って表示部を駆動する駆動部15とを有する。表示部12は、発光素子である有機EL素子とそれを駆動するMOSTFT他からなる駆動回路がそれぞれ複数個、マトリクス状に配列して構成されている。
【0034】
画像信号Vinは、表示部12の各発光素子に対応した輝度情報を含む色別のディジタルまたはアナログの階調信号である。画像信号Vinは、基準となるクロック信号に同期した時系列の信号であって、1クロックの画像信号が1つの有機EL素子に対応する。表示装置には、表示部12の全発光素子に対応した1フレームの画像信号Vinが、60分の1秒に1回の割合で周期的に送られてくる。
【0035】
画像信号Vinは、表示部の各有機EL素子の輝度を示す階調信号(以下、画像信号と区別せず同じ符号Vinで表記する)を含む。この階調信号Vinが信号処理部11で輝度信号Sに変換される。これが駆動部15を経由して表示部12に伝達され、対応する輝度で表示素子を発光させる。輝度信号Sは、表示素子の輝度を決める信号であって、実際に表示素子が発光するときの輝度に対応する信号である。以下、輝度信号Sとそれに対応した輝度とを区別せず、同じ符号Sで表す。
【0036】
信号処理部11に入力された画像信号は、比較部13に入り、入力された階調信号Vinが示す輝度レベルと比較部13にあらかじめ備えられている第1の閾値輝度Ith1とがクロックごとに比較される。比較結果は、
(1)入力階調信号Vinに対応する輝度が第1閾値輝度Ith1より低い、
(2)入力階調信号Vinの輝度が第1閾値輝度Ith1より高い、
のいずれかの信号として比較部13より出力される。入力階調信号Vinに対応する輝度が第1閾値輝度Ith1と等しい場合は、あらかじめ(1)または(2)と見做して出力すると決めておけばよい。
【0037】
比較部13の出力は変換部14に入る。変換部14は、比較部13の出力を参照しながら入力された画像信号Vinを輝度信号Sに変換する。
【0038】
図5は、信号処理部11の入力と出力の関係を示す図である。入力された階調信号Vinを横軸にとり、変換部14で変換され駆動部15に出力される輝度信号Sを縦軸にとってある。入力される階調信号とそれに1対1で対応する輝度信号Sは、図の破線S0で示されている。また、DxはS0が第1閾値輝度と一致する点の階調を表す。
【0039】
入力された階調信号がDx以下、すなわち階調信号の示す輝度が第1の閾値輝度Ith1より低いとき、比較部13は(1)の結果を出力する。それを受けて変換部14は、まず入力階調信号Vinに対応する輝度S0の2倍の輝度を示す第1の輝度信号S1を生成し、駆動部15に出力する。入力階調信号Vinの輝度S0はあらかじめ決まっているので変換部14にこれを記憶しておき、階調信号Vinが入力された時にそれに対応するS0を読み出し、係数2をかけてS1を算出する。駆動部15は、この第1の輝度信号S1に従って表示部12の対応する有機EL素子に駆動信号を送り、所定の発光期間の前半で発光させる。
【0040】
次いで、変換部14は、最も低い輝度レベル、つまり黒レベルに対応する第2の輝度信号S2を生成して駆動部15に送る。駆動部15は、第2の輝度信号が黒レベルの輝度信号であるから、後半の発光期間で対応する有機EL素子の発光を停止する。
【0041】
輝度信号S1とS2は、平均値がもとの階調信号に対応する輝度S0に等しくなるように設定される。前半と後半を合わせた全発光期間で時間平均をとった輝度は、もとの入力信号の輝度に一致する。
【0042】
入力された画像信号Vinの示す輝度S0が第1閾値Ith1より高いとき、変換部14は、入力画像信号Vinの輝度S0に等しい第3の輝度信号S3を生成し、所定期間の前半、後半にともにこの第3の輝度信号S3を駆動部15に出力する。駆動部15は、所定の発光期間のあいだ、前半と後半で同じ第3の輝度信号S3に対応した輝度で、対応する有機EL素子を発光させる。
【0043】
変換部14は、階調信号Vinから輝度信号S1とS2またはS3を発生し、まず、1フレームの前半の期間で用いられる輝度信号S1またはS3を駆動部15に送る。もう一方の輝度信号S2はいったんメモリ16に格納し、後半の期間に読みだして駆動部15に送る。第3の輝度信号S3が生成された場合は、それもメモリ16に格納する。
【0044】
以上の例では入力された階調信号が比較されるDxは、それに対応する輝度が第1閾値輝度と一致するように選ばれた。入力された階調信号に対応する輝度がスジムラが視認される輝度範囲すなわち図5のIth1とIth2の間に入るときに、2つの時間に分けてそれぞれ高輝度と低輝度の表示を行うことによりスジムラを見えにくくすることが本発明の骨子である。スジムラの視認範囲より広い輝度範囲をとって、階調信号がその範囲に入るときに2つの輝度信号に分ける処理を行っても、スジムラを見えなくする効果は同様に得られる。したがってDxは、第1閾値Ith1より高い輝度(ただし最大輝度よりは低い輝度)に対応する階調レベルすなわち図5のDxと255の間の階調レベルから選ぶこともできる。
【0045】
輝度信号S2の代わりに比較部13の出力をメモリ16に格納してもよい。メモリ16は、比較部の出力する(1)か(2)かの比較結果を0と1で表した1ビット情報として入力画像信号の順番に記憶する。記憶した情報が読みだされるときは、書き込まれたときと同じ順番で読みだされるので、メモリ16はFIFO(ファーストイン・ファーストアウト)メモリである。
【0046】
図6は表示部12の有機EL素子を駆動する駆動回路である。駆動回路2は1つの有機EL素子ELごとに1つ設けられ、電源Vccから、駆動トランジスタTr2と発光期間制御スイッチTr3を通して有機EL素子ELに電流を供給する。駆動回路2は、列方向に延びるデータ線7に伝達されるデータ信号Vdataを受け取り、保持容量C1に蓄え、これを駆動トランジスタTr2が電流に変換する。駆動回路2は、行方向に延びる2本の制御線5(P1)、6(P2)によって行単位に制御される。制御線5(P1)は、駆動トランジスタTr2のゲートとドレイン間を短絡するスイッチTr1のオン・オフを制御する。制御線6(P2)は発光期間制御スイッチTr3のオン・オフを制御する。制御線5(P1)によって短絡スイッチTr1がオン、制御線6(P2)によって発光期間制御スイッチTr3がオフになると、データ線7のデータ電圧Vdataが保持容量C1の両端電圧として保持される。これで駆動回路2にデータ信号が書き込まれたことになる。すべての行にデータ信号が書き込まれたのち、全行の発光期間制御スイッチTr3がオンになると同時にデータ線7の電圧がデータ信号電位より低い一定の電位になり、その結果駆動トランジスタTr2のゲート−ソース間電圧が駆動トランジスタTr2の閾値電圧を超えて、駆動トランジスタTr2のドレインから有機EL素子ELに向けて電流が流れる。
【0047】
図7は、駆動部15の動作を示すタイミングチャートである。上から第1行、第2行、・・・、第m行の各制御線P1の信号、n列目のデータ線の信号Vdata(n)、第1閾値以下の階調信号が書き込まれた有機EL素子L1の輝度I1、第1閾値より高い輝度の階調信号が書き込まれた有機EL素子L2の輝度I2を示している。横軸は時間で、引き続く第1と第2の期間F1,F2とその中の書き込み期間W1、W2、発光期間E1,E2を示している。
【0048】
画像信号Vinは1フレーム期間を周期として入力される。駆動部15は、第1の期間F1中に、第1の書き込み期間W1で、制御線P1で有機EL素子を行単位で選択し、データ線に輝度信号に対応したデータ信号Vdataを送って、当該行の有機EL素子の駆動回路に輝度信号を書き込む。すべての行にデータ信号を書き込み終わったのち、発光期間E1で有機EL素子を発光させる。第2の期間中も同じ動作が繰り返される。
【0049】
第1閾値輝度Ith1に対応する階調Dx以下の階調信号が入力された有機EL素子L1には、1回目の書き込み期間W1に第1の輝度信号S1に対応するデータ信号Vdataが書き込まれ、発光期間E1で対応した輝度で発光する。その後2回目の書き込み期間W2に第2の輝度信号S2に対応するデータ信号Vdataが書き込まれるが、第2の輝度信号S2は最低輝度レベル、つまり黒レベルの輝度信号であるから、第2の発光期間E2中は発光しない。
【0050】
第1閾値輝度Ith1に対応する階調Dxより高い階調信号Vinが入力された有機EL素子L2は、1回目、2回目の書き込み期間W1,W2にともに第3の輝度信号S3が駆動回路に書き込まれ、第1と第2の発光期間E1,E2でともに第3の輝度信号S3に対応した輝度で発光する。
【0051】
本実施例によれば、入力された画像信号の輝度が第1閾値輝度Ith1より低いとき、有機EL素子は2倍の輝度で半分の期間発光し、残りの期間は発光しない。2倍輝度で発光する発光期間E1中の輝度が、輝度ムラが視認されるIth2とIth1の間に入るときは輝度ムラが視認される。しかし、その範囲は図5の第1の輝度信号S1が第1の閾値輝度Ith1と第2の閾値輝度Ith2の間にある範囲(図5にR1で示す階調信号範囲)であるから、入力信号をそのままの輝度S0で表示した場合の範囲(図5にR2で示す階調信号範囲)よりも狭くなる。そのため、輝度むらの発生する頻度もそれにつれて少なくなることが期待できる。
【0052】
また、入力された画像信号の輝度が第1閾値より高いときは、入力信号の示す輝度S3=S0で発光させるので、この場合も輝度が第1閾値以下になることがない。
【0053】
比較のために、すべての入力階調信号に対して異なる2つの輝度信号を出力する場合について以下で説明する。図8は、入力された画像信号の輝度が第1閾値より高いときにも、低いときと同様に、入力輝度S0より高い第1輝度信号S1と低い第2輝度信号S2を発生させて異なる輝度で表示を行うとしたときの階調信号と輝度信号の関係を示す図である。
【0054】
Dx以上の階調信号が入ったとき、第2輝度信号S2が最低輝度レベルではなくなり、S2の輝度が第1閾値と第2閾値の間となる階調信号範囲(図8のR3に示す範囲)では、第2発光期間E2においてもスジムラが視認される。第1または第2のいずれかの発光期間でスジムラが見える階調信号範囲は、R1とR3の合計範囲となる。このように、すべての階調範囲で2つの輝度信号で発光させると、スジムラが視認される確率が高くなる。
【0055】
図6のように、低輝度のときのみ2つの発光期間で別々の輝度で発光させ、高輝度では1つの輝度で発光させ、高輝度のときはもとの1つの輝度信号で表示することにより、輝度ムラの生じる範囲はR1だけになる。
【0056】
図4に示されたメモリ16の動作タイミングを図9に示す。
【0057】
メモリ16は2つのメモリ領域MEMA,MEMBを持っている。MEMAには1フレームの前半の書き込みと発光に用いられる輝度信号S1とS3が格納され、MEMBには1フレームの後半の書き込みと発光に用いられる輝度信号S2とS3が格納される。
【0058】
画像信号Vinはフレーム単位で表示装置に送られてくる。第1フレームのT1からT3の斜線を施した期間に送られてきた画像信号Vinは、変換部14で画素ごとに輝度信号Sに変換され、MEMAとMEMBに順次書き込まれる。これらのデータは、次の第2フレームの第1期間F1の斜線を付けたT4とT5の間にMEMAから読みだされて駆動部15に送られる。その後、第2期間F2の斜線を付けたT5とT6の間にMEMBからデータが読み出される。
【0059】
MEMBには、輝度信号S2の代わりに、比較部13で入力階調信号の輝度が第1閾値より低いとされた画素のアドレスに“1”を、それ以外の画素のアドレスに“0”を、データとして記憶してもよい。その場合は、MEMAは階調信号のビット幅で全画素分のデータを格納する容量が必要であるが、MEMBは“0”と“1”の2値データを格納するので、1ビット×全画素の容量で済む。
【実施例2】
【0060】
図10は本発明の第2の実施例に係る表示装置の階調信号と輝度信号の関係を示す図である。図5と同じ部分については同じ符号をつけて説明を省略する。表示装置の全体構成は図4と同じである。
【0061】
本実施例では、第2の輝度信号S2が最低輝度(黒)レベルでなく、入力階調信号に応じてゼロでない輝度信号になっていることが第1の実施例と異なる。さらに、1フレームの前半の第1の書き込み期間W1において第2の輝度信号S2が書き込まれて第1発光期間E1でS2の輝度で発光し、後半の第2の書き込み期間W2において第1の輝度信号S1が書き込まれて第2発光期間E2でS1の輝度で発光する。
【0062】
第1の期間における輝度信号S2は、第2閾値Ith2以下の輝度で有機EL素子を発光させる。したがって実施例1と同様にスジムラは視認されない。第1の期間F1における輝度信号S2と第2の期間F2における輝度信号S1とは、平均値がもとの入力階調信号に対応する輝度S0に等しく設定されることは実施例1と同じである。第2の輝度信号S2はS0に1より小さい正の係数を乗じて算出され、第1の輝度信号S1はS0に2より小さい、しかし1よりは大きい係数をかけることにより算出される。
【実施例3】
【0063】
実施例1と2においては、1フレーム期間の前半の第1の期間または後半の第2の期間に入力階調信号より高輝度の輝度信号で有機EL素子を発光させ、他方の期間に入力階調信号より低輝度の輝度信号で有機EL素子を発光させた。この場合は、発光期間ごとに、高輝度の表示と低輝度の表示が交替するので、画面のちらつき(フリッカ)が生じる恐れがある。
【0064】
本第3の実施例では、各発光期間で、高輝度信号によって発光する有機EL素子と低輝度信号によって発光する有機EL素子を混在させる。混在のさせ方は、上下左右に隣接して配置されている有機EL素子を市松状に分ける方法や、行方向または列方向に互い違いにする方法などがある。近接する有機EL素子で輝度が平均化される結果、フリッカがなくなる。
【0065】
図11(a)(b)は本実施例に係る表示装置の発光シーケンスを示す図である。(a)がフレーム前半の第1の期間の発光の様子、(b)がフレーム後半の第2の期間の発光の様子を示す。
【0066】
発光色が赤(R)の有機EL素子33、緑(G)の有機EL素子34、青(B)の有機EL素子35が行方向に周期的に配列し、3色の有機EL素子は1つの画素を構成している。画素単位で、第1の輝度信号S1(高輝度信号)と第2の輝度信号S2(低輝度信号)で交互に発光し、隣接画素で高輝度と低輝度の発光の位相が逆になっている。
【0067】
図12(a)(b)は、画素単位でなく個々の有機EL素子33,34,35が市松状に位相を逆転させて発光している場合の発光シーケンスを示す。
【実施例4】
【0068】
図13は本発明の第4の実施例を示した図である。本実施例では第一期間の通常の2倍の輝度の発光と第二期間の発光停止を行順次に行うものである。
【0069】
1フレームを2等分し、サブフレームAとサブフレームBに分割する。サブフレームAでは各行のプログラミングを行い、次の行のプログラミングに移行すると共に順次発光動作に移行する。全ての行のプログラミングが終了すれば、直ちにサブフレームBに移行する。サブフレームBではサブフレームAでデータ信号をプログラミングした画素について、発光停止するようにプログラミングを行う。
【0070】
図14は本実施例の駆動回路、図15はその動作を示すタイミングチャートである。
【0071】
図14の回路は、容量C1とTr2との間にとTr4を設けたことと、VCCとTr2との間に容量C2を設けている点で図6と相違しているがその他は同じである。
【0072】
図15(a)のサブフレームAのn行目の画素のプログラミング動作について説明する。T1〜T2の期間にデータ線はプログラミングするデータ信号Vdataに設定される。T2〜T3の期間に画素回路内の駆動トランジスタTr2の閾値がキャンセルされると同時に、画像データV(i)が画素に書き込まれる。T2〜T3の期間のプリチャージ動作時に、画像データに関らず有機EL素子に電流が流れ一瞬発光するが、階調表示には影響を与えない発光である。
【0073】
T3〜T4の期間に、該当行以降の行の画素に同様に、閾値がキャンセルされると同時に画像データが書き込まれていく。T4〜T5の期間に、信号線にVSLの電圧が印加され、該当行の画素はトランジスタTr2の電流駆動能力に応じた電流が有機EL素子に供給され、発光動作を開始する。T5以降は、容量C2に蓄えられたTr2の閾値リセット電圧からV(i)―VSLの差電圧下降した電圧を保持し続ける。
【0074】
次いで、図15(b)のように、サブフレームBで各行に順次発光停止画素に相当する第2の輝度信号S2(黒レベル)を書き込む。T6〜T7の期間、P3(n)信号がHになりTr3がONすると同時に容量C1を通して、データ線Vdataの電位がC2に書き込まれる。この時、データ線電位はVhとなっているが、この電位は
Vh−VSL>V(i)max−VSL
を満たす電位に設定する。V(i)は出力ビデオデータV_outの最大値である。
【0075】
サブフレームA期間にV(i)が書き込まれて発光した画素は、Vh−VSLの電位分Tr2のゲート電位が上昇しTr2のゲート―ソース電位が0以下になるため消灯動作になる。データ線VdataがVSLの電圧であれば、サブフレームA期間にV(i)が書き込まれて発光した画素はそのままの状態で電圧が保持され、発光動作を継続する。
【符号の説明】
【0076】
10 表示装置
11 信号処理部
12 表示部
13 比較部
14 変換部
15 駆動部
16 メモリ
P1、P2 制御信号
Vdata データ信号
S0−S3 輝度信号
I1,I2 発光輝度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が配列した表示部と、前記発光素子を駆動して発光させる駆動部と、入力される画像信号を処理して前記駆動部に伝達する信号処理部とを有する表示装置であって、
前記信号処理部は、前記画像信号に含まれる階調信号を一定の階調レベルと比較する比較部と、前記階調信号を輝度信号に変換する変換部とを備え、
前記比較部が、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度が前記一定の階調レベルに対応した輝度よりも低いことを示す結果を出力したとき、
前記変換部が、前記階調信号により与えられる輝度よりも高い輝度を与える第1の輝度信号と、前記階調信号により与えられる輝度よりも低い輝度を与える第2の輝度信号とを生成し、前記駆動部が、2つの発光期間にそれぞれ前記第1と第2の輝度信号に従って前記発光素子を発光させ、
前記比較部が、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度が前記一定の階調レベルに対応した輝度よりも高いことを示す結果を出力したとき、
前記変換部が、前記階調信号を前記階調信号により与えられる輝度に対応する第3の輝度信号に変換し、前記駆動部が、前記2つの発光期間にともに前記第3の輝度信号に従って前記発光素子を発光させる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記一定の階調レベルに対応した輝度が、輝度の不均一が視認される輝度範囲の上限の輝度、または前記上限と最大輝度との間の輝度であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2の輝度信号が、前記発光素子の最も低い輝度に対応する輝度信号であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記比較部の、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度と前記一定の階調レベルに対応した輝度との比較結果を2値データとして記憶するメモリを有することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の輝度信号が、前記発光素子の最も低い輝度と、輝度の不均一が視認される輝度範囲の下限との間の輝度信号であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項6】
隣接する2つの前記発光素子の前記2つの発光期間における前記第1と第2の輝度信号が逆であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
異なる色の前記発光素子からなる複数の画素が配列しており、隣接する前記画素の前記2つの発光期間における前記第1と第2の輝度信号が逆であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項1】
複数の発光素子が配列した表示部と、前記発光素子を駆動して発光させる駆動部と、入力される画像信号を処理して前記駆動部に伝達する信号処理部とを有する表示装置であって、
前記信号処理部は、前記画像信号に含まれる階調信号を一定の階調レベルと比較する比較部と、前記階調信号を輝度信号に変換する変換部とを備え、
前記比較部が、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度が前記一定の階調レベルに対応した輝度よりも低いことを示す結果を出力したとき、
前記変換部が、前記階調信号により与えられる輝度よりも高い輝度を与える第1の輝度信号と、前記階調信号により与えられる輝度よりも低い輝度を与える第2の輝度信号とを生成し、前記駆動部が、2つの発光期間にそれぞれ前記第1と第2の輝度信号に従って前記発光素子を発光させ、
前記比較部が、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度が前記一定の階調レベルに対応した輝度よりも高いことを示す結果を出力したとき、
前記変換部が、前記階調信号を前記階調信号により与えられる輝度に対応する第3の輝度信号に変換し、前記駆動部が、前記2つの発光期間にともに前記第3の輝度信号に従って前記発光素子を発光させる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記一定の階調レベルに対応した輝度が、輝度の不均一が視認される輝度範囲の上限の輝度、または前記上限と最大輝度との間の輝度であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2の輝度信号が、前記発光素子の最も低い輝度に対応する輝度信号であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記比較部の、前記階調信号により与えられる前記発光素子の輝度と前記一定の階調レベルに対応した輝度との比較結果を2値データとして記憶するメモリを有することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の輝度信号が、前記発光素子の最も低い輝度と、輝度の不均一が視認される輝度範囲の下限との間の輝度信号であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項6】
隣接する2つの前記発光素子の前記2つの発光期間における前記第1と第2の輝度信号が逆であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
異なる色の前記発光素子からなる複数の画素が配列しており、隣接する前記画素の前記2つの発光期間における前記第1と第2の輝度信号が逆であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−128030(P2012−128030A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277320(P2010−277320)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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