説明

表示装置および表示装置の製造方法

【課題】複数の発光色に対応する各有機EL素子を夫々独立した材料および膜厚で構成する場合でも、リーク電流を抑制できる表示装置および表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】有機層13は、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13cおよび電子輸送層13dから構成される。正孔輸送層13bの端面を、この端面に沿って発光層13cを形成することによって覆い、正孔輸送層13bの端面が、第2電極15に接触しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置および表示装置の製造方法に関する。さらに詳しくは、有機EL素子を用いた自発光型の表示装置および表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機EL(Electro Luminescence))素子を用いた有機ELディスプレイが注目されている。有機ELディスプレイは、有機材料に電流を流すことで材料自らが発光する自発光型ディスプレイで、バックライトが不要であることに加え、優れた色再現性や高コントラスト、動画に適した応答性、広視野角などの優れた特徴を有している。
【0003】
フルカラーのディスプレイでは、一般的に例えばRサブ画素、Gサブ画素、Bサブ画素で1つの画素を構成する。有機ELディスプレイでフルカラー化を実現する方式としては、R(赤)、G(緑)およびB(青)の各色を発光する有機EL素子を独立に形成するRGB塗り分け方式が一般的である。
【0004】
RGB塗り分け方式の有機ELディスプレイでは、図22に示すように、基板111上に第1電極112、有機層113および第2電極115が積層されて有機EL素子121を構成する。有機EL素子121Rは赤色を発光しRサブ画素を構成する。有機EL素子121Gは、緑色を発光しGサブ画素を構成する。有機EL素子121Bは、青色を発光しBサブ画素を構成する。図22に示す有機ELディスプレイでは、有機EL素子121R、121G、および121Bの各成膜範囲は重複せず、夫々独立されている。
【0005】
また、RGB塗り分け方式の有機ELディスプレイでは、図23に示す有機ELディスプレイにおいて、矢印aに示すように、有機EL素子121R、121G、121Bの各有機層113の成膜範囲の一部が、互いに重複されているものもある。
【0006】
図22および図23に示す、RGB塗り分け方式の有機ELディスプレイでは、有機層113の端面が剥き出しの状態となり、有機層113の端面と、第2電極115とが接触する構造となる。
【0007】
図24に示すように、有機層113の端面と、第2電極115とが接触すると、有機層113を構成する層のうち、抵抗の低い層を介して、第1電極111と第2電極115との間にリーク電流が生じるおそれがある。すなわち、図24の例では、正孔注入層113a、正孔輸送層113b、発光層113cおよび電子輸送層113dのうち、抵抗の低い正孔輸送層113bを介して第1電極111と第2電極115との間に図中の矢印で流れを示すリーク電流が流れるおそれがある。
【0008】
このリーク電流は、有機層113の端面という制御困難な部分の状態によって大小が変化するため、有機ELディスプレイのパネル面内の発光むらを引き起こしてしまう。
【0009】
そこで、このリーク電流を防止する技術が検討されている。例えば、特許文献1には、電子輸送層をRGBで共通の層で構成し、有機ELディスプレイのパネル全面に一様に成膜することよって、リーク電流を防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3206646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、例えばフルカラーのディスプレイで、RGBの各発光に対応する有機EL素子の電子輸送層を、同じ材料、同じ膜厚で構成する必要がある。一方、通常、有機ELディスプレイでは、RGBの各発光に対応する有機EL素子の特性を最大限に発揮させるために、有機層をRGBの各発光ごとに異なる材料および膜厚で構成する。
【0012】
特許文献1に記載の技術では、リーク電流を抑制できるが、電子輸送層をRGBの各発光で共通の構成にする必要があるため、RGBの各発光に対応する有機EL素子を構成する材料の選択が制限され、優れた特性の有機EL素子を構成することが困難になる。
【0013】
したがって、この発明の目的は、複数の発光色に対応する各有機EL素子を夫々独立した材料および膜厚で構成する場合でも、リーク電流を抑制できる表示装置および表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、第1電極と、第2電極と、第1電極および第2電極の間に設けられ、有機材料で構成される有機層とを有し、有機層は、発光層を含む複数の層から構成され、複数の層のうちの少なくとも1層からなる第1の層の端面が、第1の層の上方に位置する層のうちの少なくとも1層からなる第2の層によって、覆われた表示装置である。
【0015】
第2の発明は、第1電極と、第2電極と、第1電極および第2電極の間に設けられ、発光層を含む、有機材料で構成される複数の層で構成される有機層とを有する表示装置の製造方法であって、有機層の形成工程は、複数の層のうちの少なくとも1層からなる第1の層を形成する第1の工程と、第1の層より上方に位置する層のうちの少なくとも1層からなる第2の層を、第1の層の端面に沿って形成する第2の工程とを有する表示装置の製造方法である。
【0016】
第1の発明では、リーク電流の原因となる第1の層の端面を、第2の層で覆うようにする。これにより、リーク電流の原因となる第1の層の端面と、第2電極との接触を避けることができるため、リーク電流を抑制することができる。
【0017】
第2の発明では、リーク電流の原因となる第1の層の端面に沿って、第2の層を形成する。これにより、リーク電流の原因となる第1の層の端面と、第2電極との接触を避けることができるため、リーク電流を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、複数の発光色に対応する各有機EL素子を夫々独立した材料および膜厚で構成する場合でも、リーク電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第1の実施の形態による表示装置の構成を示す断面図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による表示装置の有機層の構成を示す要部断面図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態による表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図4】この発明の第2の実施の形態による表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態における有機層の製造工程を説明するための断面図である。
【図6】この発明の第2の実施の形態における有機層の製造工程を説明するための断面図である。
【図7】この発明の第3の実施の形態による表示装置の構成を示す断面図である。
【図8】この発明の第3の実施の形態による表示装置の有機層の構成を示す要部断面図である。
【図9】この発明の第4の実施の形態における有機層の製造工程を説明するための断面図である。
【図10】この発明の第4の実施の形態における有機層の製造工程を説明するための断面図である。
【図11】この発明の第6の実施の形態による表示装置の製造方法の成膜領域を説明するための平面図である。
【図12】この発明の第6の実施の形態による表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図13】この発明の第7の実施の形態における有機層の製造工程を説明するための断面図である。
【図14】この発明の第7の実施の形態における有機層の製造工程を説明するための断面図である。
【図15】表示装置の製造工程を説明するための断面図である。
【図16】表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図17】表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図18】表示装置の適用例2の外観を表す斜視図である。
【図19】表示装置の適用例3の外観を表す斜視図である。
【図20】表示装置の適用例4の外観を表す斜視図である。
【図21】表示装置の適用例5の外観を表す略線図である。
【図22】従来の表示装置の構成を示す断面図である。
【図23】従来の表示装置の構成を示す断面図である。
【図24】従来の表示装置の有機層の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行い、実施の形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
1.第1の実施の形態(表示装置の第1の例)
2.第2の実施の形態(表示装置の製造方法の第1の例)
3.第3の実施の形態(表示装置の第2の例)
4.第4の実施の形態(表示装置の製造方法の第2の例)
5.第5の実施の形態(表示装置の第3の例)
6.第6の実施の形態(表示装置の製造方法の第3の例)
7.第7の実施の形態(表示装置の製造方法の第4の例)
8.表示装置の適用例
9.他の実施の形態(変形例)
【0021】
1.第1の実施の形態
(表示装置の構成)
この発明の第1の実施の形態による表示装置について説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態による表示装置の構成例を示す断面図である。この表示装置は、発光した光を基板11の上面側から取り出す構成の上面発光型(いわゆるトップエミッション型)の表示装置である。この表示装置は、基板11上に設けられた第1電極12と、第2電極15との間に、有機層13が挟まれた構造の有機EL素子21を有する。
【0022】
[基板]
基板11は、可視領域に吸収の無い透明基板で構成されており、例えば、シリコン基板、ガラス基板やプラスチック基板などを用いることができる。
【0023】
[第1電極]
第1電極12(陽極)は、発光層13cに正孔を注入する電極であり、基板11上の所定の位置で電圧−電流が印加できるように、マトリックス状にパターニングされている。第1電極12の材料としては、銀合金、アルミニウム−ネオジウム合金などを用いることができる。
【0024】
[絶縁層]
絶縁層18は、第1電極12と第2電極15との絶縁性を確保するために設けられる。
絶縁層18の材料としては、例えばポリイミドなどの感光性樹脂を用いる。絶縁層18は、第1電極12上に感光性樹脂を塗布してフォトリソグラフィによりパターニングすることによって、第1電極12が露出する部分を有するように形成される。この第1電極12の露出部分に、発光層13cを含む有機層13、および第2電極15が積層される。この第1電極12の露出部分の上方は、R、G、Bの各発光に対応する各有機層13が形成されて発光する発光領域とされる。
【0025】
[有機層]
有機層13は、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13cおよび電子輸送層13dから構成される。正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13cおよび電子輸送層13dは、基板11側からこの順で積層されている。
【0026】
正孔注入層13aは、第1電極12から正孔をスムーズに受け入れるために設けられた層である。正孔輸送層13bは、正孔を発光層13cにスムーズに移動させるために設けられた層である。電子輸送層13dは、第2電極15から電子を受け取って発光層13cまで輸送する層である。
【0027】
発光層13cは、正孔と電子とが再結合することにより発光する層である。有機EL素子21RではRを発光する。有機EL素子21GではGを発光する。有機EL素子21BではBを発光する。有機EL素子21では、第1電極12と第2電極15との間に、必要な電圧−電流を加えると、第1電極12から正孔が第2電極15から電子が発光層13cに注入され、発光層13cで正孔と電子とが再結合することにより発光する。
【0028】
有機層21を構成する正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13cおよび電子輸送層13dには、それぞれの機能に適した材料を用いることができる。有機層21を構成する各層の材料および厚さは、R、G、Bの各発光に対応して適宜選択される。発光効率、駆動電圧、発光寿命などの特性を最大限に発揮するために、有機層21を構成する各層は、R、G、Bの各発光に応じて、好適な材料および厚さで構成される。
【0029】
正孔注入層13aを構成する材料としては、ヘキサアザトリフェニレン誘導体、芳香族アミン誘導体などを用いることができる。正孔注入層13aの厚さは、例えば3nm以上100nm以下の範囲内で選択される。
【0030】
正孔輸送層13bを構成する材料としては、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ジフェニル−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン(TPD)、4,4',4''−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4',4''−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)、4,4',4''−トリス[2−ナフチル(フェニル)アミノ]トリスフェニルアミン(2−TNATA)、4,4',4''−トリス[ビフェニル−4−イル−(3−メチルフェニル)アミノ]トリフェニルアミン(p−PMTDATA)、4,4',4''−トリス[9,9−ジメチル−2−フルオレニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(TFATA)、4,4',4''−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)フェニルアミノ]ベンゼン(p−DPA−TDAB)、1,3,5−トリス{4−[メチルフェニル(フェニル)アミノ]フェニル}ベンゼン(MTDAPB)、N,N''−ジ(ビフェニル−4−イル)−N,N'−ジフェニル−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン(p−BPD)、N,N,N',N'−テトラキス(9,9−ジメチル−2−フルオレニル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン(FFD)などを用いることができる。正孔輸送層13bの厚さは、例えば5nm以上300nm以下の範囲内で選択される。
【0031】
発光層13cを構成する材料としては、例えば、低分子蛍光色素、高分子、金属錯体などを用いることができる。発光層13cを構成する材料は、発光色に応じて適宜選択して用いる。発光層13cの厚さは、例えば5nm以上100nm以下の範囲内で選択される。
【0032】
発光層13cは、例えば、ホスト材料に、ドーパントとなる材料を微量添加して構成してもよい。ホスト材料としては、例えば、フェニレン核、ナフタレン核、アントラセン核、ピレン核、ナフタセン核、クリセン核、ペリレン核を有する芳香族炭化水素化合物などを用いることができる。この芳香族炭化水素化合物としては、具体的には、例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)、ルブレンなどが挙げられる。
【0033】
ドーパントとなる材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アミン化合物、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素などの有機化合物を用いることができる。
【0034】
電子輸送層13dを構成する材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体などを用いることができる。具体的には、例えば、Alq3(8−ヒドロキシノリンアルミニウム)などを用いることができる。電子輸送層13dの厚さは、例えば5nm以上300nm以下の範囲内で選択される。
【0035】
[第2電極]
第2電極(陰極)15は、発光層13cに電子を注入する電極である。第2電極15の材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、MgAg合金などを用いることができる。なお、第2電極15は、上記の材料で構成される層およびLiFなどのアルカリ金属のハロゲン化物で構成される層の2層で構成してもよい。
【0036】
表示装置の1画素は、Rサブ画素、Gサブ画素およびBサブ画素の3つのサブ画素で構成され、有機EL素子21は1つのサブ画素を構成する。有機EL素子21RはRサブ画素を構成し、有機EL素子21GはGサブ画素を構成し、有機EL素子21BはBサブ画素を構成する。なお、本明細書において、有機EL素子21R、有機EL素子21Gおよび有機EL素子21Bを区別しない場合は、有機EL素子21と表記する。
【0037】
有機EL素子21R、有機EL素子21Gおよび有機EL素子21Bは、マトリックス状に配置されている。また、有機EL素子21R、有機EL素子21Gおよび有機EL素子21Bは並置されている。
【0038】
各有機EL素子21は、基板11上に形成されたTFT(薄膜トランジスタ;Thin Film Transister)(図示省略)に接続され、独立して発光が制御される。このTFTは、例えば、プラズマCVDによる製膜とフォトリソグラフィによるパターン形成とを繰り返すことにより形成される。
【0039】
有機EL素子21では、図2に示すように、正孔輸送層13bの端面を、この端面に沿って形成された発光層13cによって覆う構造とする。これにより、正孔輸送層13bの端面が、第2電極15に接触しないようにしている。
【0040】
すなわち、発光層13cは正孔輸送層13bより高い抵抗を有し、この発光層13cによって、正孔輸送層13bの端面を覆う構造とする。これにより、正孔輸送層13bの端面は、発光層13cから露出しないようにされる。この構造では、正孔輸送層13bの端面と第2電極15との間には、発光層13cが介在するので、正孔輸送層13bの端面と第2電極15とが接触することはない。
【0041】
この構造とすることで、正孔輸送層13bと第2電極15との間の電流の流れを、発光層13cによって遮断することができる。すなわち、図中の矢印に示すような第1電極12からの電流の流れを、発光層13cによって遮断することができる。これにより、正孔輸送層13bの端面を介して第2電極15にリークする電流を抑制することができる。
【0042】
このように、第1の実施の形態では、正孔輸送層13bの端面を介して第2電極15にリークする電流を抑制対象とする。すなわち、有機層13を構成する各層のうち正孔輸送層13bの抵抗が低いため、正孔輸送層13bの端面と第2電極15とが接触すると、正孔輸送層13bの端面からリーク電流が生じてしまう。そこで、第1の実施の形態では、リーク電流の原因となる正孔輸送層13bの端面と、第2電極15との間に、正孔輸送層13bより抵抗の高い発光層13cを介在させて、これにより、正孔輸送層13bの端面を介して第2電極15にリークする電流を抑制する。
【0043】
[保護膜]
保護膜17は、透明誘電体からなるパッシベーション膜である。保護膜17の材料としては、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)などを用いることができる。パッシベーション膜の膜厚は、例えば500nm〜10000nmである。
【0044】
[封止基板]
封止基板19は、保護膜17上に形成された接着層(図示省略)に対して接着され、有機EL素子21を封止する。封止基板19は、例えばガラスなどの透明な材料で構成される。
【0045】
<効果>
この発明の第1の実施の形態では、リーク電流の原因となる正孔輸送層13bの端面を、正孔輸送層13bの端面に沿って形成された発光層13cで覆うようにする。これにより、正孔輸送層13bと第2電極15との接触を避けることができるため、リーク電流を抑制することができる。
【0046】
2.第2の実施の形態
(表示装置の製造方法)
上述の表示装置の製造方法について、図3〜図6を参照しながら説明する。以下の説明では、まず、図3〜図4を参照しながら表示装置の製造方法の全体の流れについて、簡単に説明し、次に、図5〜図6を参照しながら、この発明の要部である有機層13の形成工程について詳細に説明する。
【0047】
[第1電極および絶縁層の形成]
まず、図3Aに示すように、TFT(図示省略)が形成された基板11上に、第1電極12を形成した後、絶縁層18を形成する。第1電極12は、真空蒸着により基板全面に、第1電極12を形成した後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、マトリックス状にパターニングする。
【0048】
絶縁層18は、パターン形成された第1電極12の周縁を覆うようにパターン形成する。これにより、第1電極12が露出する部分を形成する。この第1電極12が露出する部分において、有機層13等を形成することにより、発光領域を形成する。絶縁層18は、例えば感光性樹脂をスピンコーティングで塗布した後、フォトリソグラフィにより、パターン形成する。
【0049】
[有機層の形成]
次に、図3B〜図3Cおよび図4Dに示すように、真空蒸着法により、第1電極12上にRの発光領域に対応する有機層13、Gの発光領域に対応する有機層13、およびBの発光領域に対応する有機層13をこの順で形成する。
【0050】
なお、以下では、Rの発光領域に対応する有機層13を有機層13(R)と適宜称する。Gの発光領域に対応する有機層13を有機層13(G)と適宜称する。Bの発光領域に対応する有機層13を有機層13(B)と適宜称する。また、有機層13(R)、有機層13(G)および有機層(B)の形成の順は、この順に限定されるものではない。例えば、有機層(B)、有機層13(G)、有機層13(R)の順で形成してもよい。有機層13の形成については、後に図5〜図6を参照して詳細に説明する。
【0051】
[第2電極の形成]
次に、図4Eに示すように、真空蒸着法により、第2電極15を形成する。第2電極15は有機層13の全面および絶縁層18の一部に第2電極15となる材料を真空蒸着する。
【0052】
[保護膜の形成等]
その後、図4Fに示すように、第2電極15上に保護膜17を真空蒸着し、さらに、保護膜17上に紫外線硬化型樹脂をスピンコーティングすることにより接着層(図示省略)を形成し、封止基板19を保護膜17に対して接着層を介して接着する。以上により、表示装置を得ることができる。
【0053】
[有機層の形成]
図5〜図6を参照しながら、上述の有機層13の形成についてより詳細に説明する。以下に説明する工程により、Rの発光領域に対応する有機層13(R)、Gの発光領域に対応する有機層13(G)、およびBの発光領域に対応する有機層13(B)を上述のように順次形成する。
【0054】
[正孔注入層の形成]
まず、図5Aに示す基板11に形成された第1電極12および絶縁層18上に、図5Bに示すように、正孔注入層13aを形成する。正孔注入層13aは、真空蒸着法で形成する。正孔注入層13aは、蒸着源(図示省略)と第1電極12と間にマスク31を配置した状態で、正孔注入層13aとなる有機材料を真空蒸着する。
【0055】
この有機材料は、マスク31の開口を通過して、第1電極12の露出部分および第1電極12の周縁部に設けられた絶縁層18の一部に堆積する。これにより、マスク31の開口に対応した成膜領域に、正孔注入層13aがパターン形成される。
【0056】
なお、マスク31の開口の夫々は、例えば矩形状に設定される。マスク31の開口サイズは、後述の工程で用いる、矩形状の開口を有するマスク32より、開口サイズが大きく設定される。例えば、マスク31の開口の各4辺は、マスク32の開口の各4辺より、夫々大きく設定される。例えば、各4辺同士の差は、0.5μm以上となるように設定される。
【0057】
[正孔輸送層の形成]
次に、図5Cに示すように、正孔注入層13a上に、正孔輸送層13bを形成する。正孔輸送層13bは、真空蒸着法で形成する。正孔輸送層13bは、蒸着源(図示省略)と正孔注入層13aとの間にマスク32を配置した状態で、発光層13cの材料となる有機材料を真空蒸着する。この有機材料は、マスク32の開口を通過して、正孔注入層13a上に堆積する。これにより、マスク32の開口に対応した成膜領域に、正孔輸送層13bがパターン形成される。
【0058】
[発光層の形成]
次に、図6Dに示すように、正孔輸送層13b上に、発光層13cを形成する。発光層13cは、真空蒸着法で形成する。発光層13cは、蒸着源(図示省略)と正孔輸送層13bとの間にマスク31を配置した状態で、発光層13cとなる有機材料を真空蒸着する。この有機材料は、マスク31の開口を通過して、正孔輸送層13b上に堆積する。また、この有機材料は、正孔輸送層13bの端面に沿って、正孔注入層13a上に堆積する。これにより、マスク31の開口に対応した成膜領域に、発光層13cがパターン形成される。
【0059】
図6Dに示す工程で用いるマスク31は、上述のマスク32より、開口サイズが大きいものである。したがって、マスク31の開口に対応する発光層13cの成膜領域は、マスク32に対応する正孔輸送層13bの成膜領域より大きくなる。これにより、発光層13cの成膜領域と正孔輸送層13bの成膜領域とが重複しない領域では、正孔輸送層13bの端面に沿って正孔注入層13a上に発光層13cとなる有機材料が堆積していき正孔輸送層13bの端面が、発光層13cで覆われる構造を形成する。
【0060】
[電子輸送層の形成]
次に、図6Eに示すように、発光層13c上に、電子輸送層13dを形成する。電子輸送層13dは、真空蒸着法で形成する。電子輸送層13dは、蒸着源(図示省略)と発光層との間にマスク31を配置した状態で、電子輸送層13dとなる有機材料を真空蒸着する。この有機材料は、マスク31の開口を通過して、発光層13c上に堆積する。これにより、マスク31の開口に対応した成膜領域に、電子輸送層13dがパターン形成される。
【0061】
以上説明した有機層13の形成工程では、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13c、電子輸送層13dの順で成膜を行う。成膜の際に、上記層のうち抵抗の低いリーク電流の原因となる層(ここでは正孔輸送層13b)の上方に形成される発光層13cの成膜領域を、リーク電流の原因となる層の成膜領域より広くするようにしている。なお、発光層13cの抵抗は、リーク電流の原因となる層より高く設定される。
【0062】
<効果>
この発明の第2の実施の形態では、有機層13の形成において、リーク電流の原因となる抵抗の低い正孔輸送層13bの上方の発光層13cの成膜領域を、リーク電流の原因となる層の成膜領域より広くするようにしている。これにより、正孔輸送層13bの端面に沿って発光層13cを形成し、リーク電流の原因となる層の端面と、第2電極15との接触により生じるリーク電流を抑制することができる。
【0063】
3.第3の実施の形態
(表示装置の構成)
この発明の第3の実施の形態による表示装置について説明する。図7は、この発明の第3の実施の形態による表示装置の構成を示す断面図である。この第3の実施の形態による表示装置は、有機層13の構成を除き、第1の実施の形態による表示装置の構成と同様である。したがって、以下では、有機層13の構成を中心に説明し、その他の説明を省略する。
【0064】
図7に示すように、有機層13は、第1の実施の形態と同様、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13cおよび電子輸送層13dから構成される。正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13cおよび電子輸送層13dは、基板11側からこの順で積層されている。
【0065】
有機EL素子21では、図8に示すように、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面を、これらの端面に沿って形成された発光層13cによって覆う構造とする。これにより、正孔注入層13aの端面および正孔輸送層13bの端面が、第2電極15に接触しないようにしている。
【0066】
すなわち、発光層13cは、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bより高い抵抗を有し、この発光層13cによって、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面を覆う構造とする。これにより、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面が発光層13cから露出しないようにされる。この構造では、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面と第2電極15との間には、発光層13cが介在するので、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面と第2電極15とが接触することはない。
【0067】
この構造とすることで、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bと第2電極15との間の電流の流れを、発光層13cによって遮断することができる。すなわち、図中の矢印に示すような第1電極12からの電流の流れを、発光層13cによって、遮断することができる。これにより、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面を介して第2電極15にリークする電流を抑制することができる。
【0068】
このように、第3の実施の形態では、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面を介して第2電極15にリークする電流を抑制対象としている。すなわち、有機層13を構成する各層のうち正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの抵抗が低いため、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面の少なくとも何れかと第2電極15と接触すると、これらの端面からリーク電流が生じてしまう。そこで、第3の実施の形態では、リーク電流の原因となる正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面と第2電極15との間に、こららの層より抵抗の高い発光層13cを介在させる。これにより、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面を介して第2電極15にリークする電流を抑制する。
【0069】
<効果>
この発明の第3の実施の形態では、リーク電流の原因となる正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの端面を、これらの端面に沿って形成された発光層13cで覆うようにする。これにより、正孔注入層13aの端面および正孔輸送層13bの端面と第2電極15との接触を避けることができるので、リーク電流を抑制することができる。
【0070】
4.第4の実施の形態
(表示装置の製造方法)
上述の表示装置の製造方法について説明する。なお、この表示装置の製造方法は、有機層13の形成以外は第2の実施の形態と同様であるので、以下の説明では、有機層13の形成について詳細に説明し、その他の説明は省略する。
【0071】
[有機層の形成]
図9を参照しながら、有機層13の形成について説明する。以下に説明する工程により、Rの発光領域に対応する有機層13(R)、Gの発光領域に対応する有機層13(G)、およびBの発光領域に対応する有機層13(B)を上述のように順次形成する。
【0072】
[正孔注入層の形成]
まず、図9Aに示す基板11に形成された第1電極12および絶縁層18上に、図9Bに示すように、正孔注入層13aを形成する。正孔注入層13aは、真空蒸着法で形成する。正孔注入層13aは、蒸着源(図示省略)と第1電極との間にマスク32を配置した状態で、正孔注入層13aとなる有機材料を真空蒸着する。
【0073】
この有機材料は、マスク32の開口部を通過して、第1電極12の露出部分および第1電極12の周縁部に設けられた絶縁層18の一部に堆積する。これにより、マスク32の開口に対応した成膜領域に、正孔注入層13aがパターン形成される。
【0074】
なお、マスク32は、後述の工程で用いるマスク31より、開口サイズが小さく設定される。例えば、マスク32および後述の工程で用いるマスク31の開口は例えば矩形状である。例えば、マスク32の開口の各4辺の長さは、マスク31の開口の各4辺の長さより夫々小さく設定される。例えば、各4辺同士の差が夫々0.5μm以上となるように設定される。
【0075】
[正孔輸送層の形成]
次に、図9Cに示すように、正孔注入層13a上に、正孔輸送層13bを形成する。正孔輸送層13bは、真空蒸着法で形成する。正孔輸送層13bは、蒸着源(図示省略)と正孔注入層13aとの間にマスク32を配置した状態で、正孔輸送層13bとなる有機材料を、真空蒸着する。この有機材料は、マスク32の開口を通過して、正孔注入層13a上に堆積する。これにより、マスク32の開口に対応した成膜領域に、正孔輸送層13bがパターン形成される。
【0076】
[発光層の形成]
次に、図10Dに示すように、正孔輸送層13b上に、発光層13cを形成する。発光層13cは、真空蒸着法で形成する。発光層13cは、蒸着源(図示省略)と正孔輸送層13bとの間にマスク31を配置した状態で、発光層13cの材料となる有機材料を、真空蒸着する。この有機材料は、マスク31の開口を通過して、正孔輸送層13bの上面に堆積する。また、この有機材料は、正孔注入層13aの端面および正孔輸送層13bの端面に沿って、絶縁層18の一部に発光層13cとなる材料が堆積する。これにより、マスク31の開口に対応した成膜領域に、発光層13cがパターン形成される。
【0077】
図10Dに示す工程で用いるマスク31は、上述のマスク32より、開口サイズが大きいものである。したがって、マスク31の開口に対応する発光層13cの成膜領域は、マスク32に対応する、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの成膜領域より大きくなる。これにより、発光層13cの成膜領域と、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bの成膜領域とが重複しない領域では、以下のように発光層13cとなる有機材料が堆積していく。すなわち、正孔注入層13aの端面および正孔輸送層13bの端面に沿って絶縁層18の一部に発光層13cとなる有機材料が堆積していき、正孔注入層13aの端面および正孔輸送層13bの端面が、発光層13cで覆われる構造を形成する。
【0078】
[電子輸送層の形成]
次に、図10Eに示すように、発光層13c上に、電子輸送層13dを形成する。電子輸送層13dは、真空蒸着法で形成する。電子輸送層13dは、蒸着源(図示省略)と発光層13cとの間にマスク31を配置した状態で、電子輸送層13dとなる有機材料を、真空蒸着する。この有機材料は、マスク31の開口部を通過して、発光層13c上に堆積する。これにより、マスク31の開口部に対応した成膜領域に、電子輸送層13dがパターン形成される。
【0079】
以上説明した有機層13の形成工程では、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13c、電子輸送層13dの順で成膜を行う。成膜の際に、リーク電流の原因となる層(ここでは正孔注入層13aおよび正孔輸送層13b)の上方の発光層13cの成膜領域を、リーク電流の原因となる層の成膜領域より広くするようにしている。なお、発光層13cは、正孔注入層13aおよび正孔輸送層13bより高い抵抗を有する。
【0080】
<効果>
この発明の第4の実施の形態では、有機層の形成において、リーク電流の原因となる抵抗の低い正孔輸送層13aおよび正孔注入層13bの上方の発光層13cの成膜領域を、正孔輸送層13aおよび正孔注入層13bの成膜領域より広くするようにしている。これにより、正孔注入層13aの端面および正孔輸送層13bの端面を、この端面に沿って形成された発光層13cで覆う構造を形成する。よって、リーク電流の原因となる層の端面と、第2電極15との接触により生じるリーク電流を抑制することができる。
【0081】
5.第5の実施の形態
(表示装置の構成)
この発明の第5の実施の形態による表示装置の構成について説明する。この発明の第5の実施の形態による表示装置の構成は、図1に示す表示装置において、正孔輸送層13bの材料および厚さが、有機EL素子21R、21G、21Bで共通とされている。その他については、第1の実施の形態と同様である。
【0082】
<効果>
この発明の第5の実施の形態では、この発明の第1の実施の形態と同様の効果を有する。
【0083】
6.第6の実施の形態
(表示装置の製造方法)
上述の表示装置の製造方法について説明する。この表示装置の製造方法では、材料および厚さが共通する、有機層13(R)、有機層13(G)および有機層13(B)の正孔輸送層13bを一括で形成する。正孔輸送層13bは、共通するその構成材料を同じ膜厚で一括成膜することによって形成する。その後、各有機層13ごとに正孔輸送層13b以外の層を順次その構成材料を成膜することによって形成する。
【0084】
このときの成膜領域について、図11を参照して説明する。図11に示すように、線Q1囲まれる矩形状の成膜領域(以下、狭い成膜領域Q1と称する)、および線Q2で囲まれる矩形状の成膜領域(以下、広い成膜領域Q2と称する)のいずれかの成膜領域が、有機層13の各層となる材料の成膜領域に設定される。
【0085】
狭い成膜領域Q1は、リーク原因となる抵抗の低い正孔輸送層13bを構成する材料の成膜領域に設定される。広い成膜領域Q2は、その他の有機層13を構成する材料の成膜領域に設定される。以下、図11〜図13を参照しながら、この発明の第6の実施の形態による表示装置の製造方法について説明する。
【0086】
[第1電極および絶縁層18の形成]
まず、図12Aに示すように、TFT(図示省略)が形成された基板11上に、第1電極12を形成した後、絶縁層18を形成する。第1電極12は、真空蒸着により基板全面に、第1電極12となる材料を形成した後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、マトリックス状にパターニングする。
【0087】
絶縁層18は、パターニングされた第1電極12の周縁を覆うようにパターン形成する。これにより、第1電極12が露出する部分を形成する。絶縁層18は、感光性樹脂を、例えばスピンコーティングで塗布した後、フォトリソグラフィにより、パターン形成する。
【0088】
[正孔注入層の形成]
その後、R、G、Bの各発光領域に対応する各有機層13の正孔注入層13aを、真空蒸着法により、順次パターン形成する。このときの成膜領域は、図11に示す広い成膜領域Q2である。なお、図示は省略しているが、広い成膜領域Q2に対応した開口サイズのマスクを用いる。
【0089】
[正孔輸送層の形成]
次に、図12Bに示すように、真空蒸着法により、R、G、Bの各発光領域に対応する正孔輸送層13bを、同じ膜厚で同時に一括で形成する。成膜領域は、図11に示す狭い成膜領域Q1とされる。このとき、狭い成膜領域Q1に対応した開口サイズのマスク53を用いる。
【0090】
[発光層および電子輸送層の形成]
次に、図12Cに示すように、Rの発光領域に対応する発光層13c、電子輸送層13dを順次パターン形成する。このときの成膜領域は、広い成膜領域Q2とされる。このとき用いるマスク55の開口サイズは、広い成膜領域Q2に対応している。
【0091】
次に、図13Dに示すように、Gの発光領域に対応する発光層13c、電子輸送層13dを順次パターン形成する。このときの成膜領域は、図11に示す広い成膜領域Q2とされる。このとき用いるマスク55の開口は、広い成膜領域Q2に対応している。
【0092】
次に、図13Eに示すように、Bの発光領域に対応する発光層13c、電子輸送層13dを順次パターン形成する。このときの成膜領域は、図11に示す広い成膜領域Q2とされる。このとき用いるマスク55の開口サイズは、広い成膜領域Q2に対応している。
【0093】
[第2電極等の形成]
次に、図13Fに示すように、第2電極15および保護膜17を形成する。第2電極15は、真空蒸着法により形成する。第2電極15は電子輸送層13dの全面および絶縁層18の一部に真空蒸着する。その後、第2電極15上に、保護膜17を真空蒸着し、さらに、保護膜17上に紫外線硬化型樹脂をスピンコーティングし接着層(図示省略)を形成した後、封止基板19を保護膜17に対して接着層を介して接着する。以上により、表示装置を得ることができる。
【0094】
<効果>
この発明の第6の実施の形態による表示装置の製造方法は、第2の実施の形態と同様の効果を有する。
【0095】
7.第7の実施の形態
(表示装置の製造方法)
この発明の第7の実施の形態による表示装置の製造方法について説明する。この発明の要部である有機層13の形成が、第2の実施の形態と異なり、その他は、第2の実施の形態と同様である。したがって、以下では、有機層13の形成について説明し、その他の説明は省略する。
【0096】
[有機層の形成]
図14および図15を参照しながら、有機層13の形成について説明する。以下に説明する工程により、Rの発光領域に対応する有機層13(R)、Gの発光領域に対応する有機層13(G)およびBの発光領域に対応する有機層13(B)を形成する。
【0097】
[正孔注入層13aの形成]
まず、図14Aに示す基板11に形成された第1電極12および絶縁層18上に、正孔注入層13aを形成する。正孔注入層13aは、転写法で形成する。すなわち、まず、図14Bに示すように、転写基板30を、第1電極12と正孔注入層13aとなる有機材料で構成する転写層33aとが互いに対向するように配置した状態とする。
【0098】
転写基板30は、基板31上に、SiNx、SiO2などから構成される酸化保護層35、Cr、Moなどから構成される光熱変換層34、および熱転写する有機材料から構成される転写層33がこの順で積層された構造を有する。転写層33は、光熱変換層34上において、正孔注入層13aを形成する領域に対応した所定領域P1(図中点線で囲まれた領域)にパターン形成されている。転写層33は後述する工程によって、熱転写される。
【0099】
次に、基板31側から、レーザ光Lを照射する。光熱変換層34にレーザ光Lの照射エネルギーを吸収させ、その熱を利用して、正孔注入層13aとなる材料で構成された転写層33を、第1電極12上に熱転写する。レーザ光は、例えば波長800nm程度のレーザ光を用いる。これにより、第1電極12の露出部分および絶縁層18上において、所定領域P1に対応した領域に、正孔注入層13aがパターン形成される。
【0100】
なお、正孔注入層13aとなる材料で構成された転写層33が形成される所定領域P1は、例えば矩形状の領域である。この所定領域P1は、後述の工程において、正孔輸送層13bとなる材料で構成された転写層33が形成される所定領域P2より、広い領域が設定される。例えば、矩形状の所定領域P1の各4辺は、矩形状の所定領域P2の各4辺より、それぞれ大きく設定される。例えば、各4辺同士の差は、それぞれ例えば0.5μm以上となるように設定されることが好ましい。
【0101】
[正孔輸送層13bの形成]
次に、正孔注入層13a上に、正孔輸送層13bを形成する。正孔輸送層13bは、転写法で形成する。すなわち、図14Cに示すように、まず、転写基板30を、正孔注入層13aと、正孔輸送層13bとなる有機材料で構成する転写層33とが互いに対向するように配置した状態とする。なお、転写層33は、光熱変換層34上において、正孔輸送層13bを形成する領域に対応した所定領域P2(図中点線で囲まれた領域)でパターン形成されている。
【0102】
次に、基板31側から、レーザ光Lを照射する。光熱変換層34にレーザ光Lの照射エネルギーを吸収させ、その熱を利用して、正孔輸送層13bとなる材料で構成された転写層33を、正孔注入層13上に熱転写する。これにより、所定領域P2に対応した領域に、正孔輸送層13bがパターン形成される。
【0103】
[発光層の形成]
次に、正孔輸送層13b上に、発光層13cを形成する。発光層13cは、転写法で形成する。すなわち、図15Dに示すように、まず、転写基板30を、正孔輸送層13bと発光層13cとなる有機材料で構成する転写層33とが互いに対向するように配置した状態とする。なお、転写層33は、光熱変換層34上において、発光層13cを形成する領域に対応した所定領域P1にパターン形成されている。
【0104】
次に、基板31側から、レーザ光Lを照射する。光熱変換層にレーザ光Lの照射エネルギーを吸収させ、その熱を利用して、発光層13cとなる材料で構成された転写層33を、正孔輸送層13b上に熱転写する。これにより、所定領域P1に対応した領域に、発光層13cがパターン形成される。
【0105】
図15Dに示す工程においては、所定領域P1は、上述の所定領域P2より、広い範囲とされる。したがって、発光層13cの形成領域は、正孔輸送層13bの形成領域より広い範囲となる。これにより、所定領域P1において、所定領域P2と重複しない領域では、正孔輸送層13bの端面に沿って発光層13cとなる有機材料が、絶縁層18の一部に形成され、正孔輸送層13bの端面が、発光層13cによって覆われる構造を形成する。
【0106】
[電子輸送層の形成]
次に、発光層13c上に、電子輸送層13dを形成する。電子輸送層13dは、転写法で形成する。すなわち、図15Eに示すように、まず、転写基板30を、発光層13cと、電子輸送層13dとなる有機材料で構成する転写層33とが互いに対向するように配置した状態とする。なお、転写層33は、光熱変換層34上において、電子輸送層13dを形成する領域に対応した所定領域P1にパターン形成する。
【0107】
次に、基板31側から、レーザ光Lを照射する。光熱変換層34にレーザ光Lの照射エネルギーを吸収させ、その熱を利用して、電子輸送層13dとなる有機材料で構成された転写層33を、発光層13c上に熱転写する。これにより、図15Fに示すように、所定領域P1に対応した位置に、電子輸送層13dがパターン形成される。以上により有機層13を形成できる。
【0108】
<効果>
この発明の第7の実施の形態では、第2の実施の形態と同様の効果を有する。
【0109】
8.表示装置の適用例
上述した第1、3および5の各実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。第1、3および5の各実施の形態による表示装置は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0110】
(モジュール)
第1、3および5の各実施の形態による表示装置は、例えば、図16に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールの表示領域80には、複数の有機EL素子21R、21Gおよび21Bがマトリック状に配置されている。また、表示領域80には、複数の走査線と複数の信号線とが縦横に配線され、走査線と複数の信号線との各交差部には、有機EL素子21、スイッチング用のTFT、駆動用のTFTなどで構成された画素駆動回路が設けられている。表示領域80の周辺領域には、輝度情報に応じた映像信号を信号線に供給する信号線駆動回路90と走査線を走査駆動する走査線駆動回路100とが設けられている。
【0111】
このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、封止基板19および接着層から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路90および走査線駆動回路100の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0112】
(適用例1)
図17は、第1、3および5の各実施の形態による表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、第1、3および5の各実施の形態による表示装置により構成されている。
【0113】
(適用例2)
図18は、第1、3および5の各実施の形態による表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、第1、3および5の各実施の形態による表示装置により構成されている。
【0114】
(適用例3)
図19は、第1、3および5の各実施の形態による表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510、文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、第1、3および5の各実施の形態による表示装置により構成されている。
【0115】
(適用例4)
図20は、第1、3および5の各実施の形態による表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610、この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620、撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、第1、3および5の各実施の形態による表示装置により構成されている。
【0116】
(適用例5)
図21は、第1、3および5の各実施の形態による表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740、サブディスプレイ750、ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、第1、3および5の実施の形態による表示装置により構成されている。
【実施例】
【0117】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例では、本発明の具体的な実施例、およびこれらの実施例に対する比較例の有機ELパネルの製造手順と、これらの評価結果を説明する。
【0118】
<実施例1>
実施例1においては、上述の実施の形態で有機ELパネルを作製した。以下にその製造手順を説明する。
【0119】
[陽極および絶縁層の形成]
まず、厚さ0.7mmのTFT基板11上に、アルミニウム−ネオジム(10%)の陽極(第1電極12)を120nmの膜厚で形成した。
【0120】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、陽極を以下の条件でパターニングした。
画素数:水平320×垂直240(個)
画素ピッチ:水平0.3mm×垂直0.3mm
【0121】
次に、ポリイミドを用いてフォトリソグラフィにより、陽極上に絶縁層18をパターン形成することで、1色あたり225μm×75μmの発光領域を形成した。
【0122】
次に、Bの発光領域に対応する有機層13(B)、Gの発光領域に対応する有機層13(G)およびRの発光領域に対応する有機層13(R)をこの順で、以下のようにして形成した。
【0123】
[有機層13(B)の形成]
Bの発光領域に対応する有機層13(B)を以下のようにして形成した。なお、有機層13(B)の形成において、有機層13(B)を構成する各層の形成に用いるマスクは以下のようにした。
【0124】
正孔注入層13aの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
正孔輸送層13bの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
発光層13cの形成 開口サイズ250μm×100μmのマスクを使用
電子輸送層13dの形成 開口サイズ250μm×100μmのマスクを使用
【0125】
[正孔注入層13aの形成]
まず、真空蒸着法により、開口サイズ245μm×95μmのマスクを用いて、陽極上に、正孔注入層13aとして、式(1)で表される化合物の膜を、15nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4/sec)で形成した。
【0126】
【化1】

【0127】
[正孔輸送層の形成]
次に、真空蒸着法により、開口サイズ245μm×95μmのマスクを用いて、正孔注入層13a上に、正孔輸送層13bとして、α−NPD(N,N'−ビス(1−ナフチル)−N,N'−ジフェニル[1,1'-ビフェニル]−4,4'―ジアミン)の膜を130nmの膜厚(蒸着速度1.0〜1.2/sec)で形成した。
【0128】
[発光層(B)の形成]
次に、真空蒸着法により、開口サイズ250μm×100μmのマスクを用いて、発光層13cを形成した。発光層13cの形成では、ホスト材料として、ADN(9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)を用い、ドーパントとしてBD−052x(出光興産株式会社:商品名)を用いた。これらの材料を、真空蒸着法により、ドーパント濃度が膜厚比で5%になるように、32nmの合計膜厚で成膜した。
【0129】
[電子輸送層の形成]
次に、真空蒸着法により、開口サイズ250μm×100μmのマスクを用いて、Alq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)の膜を18nmの膜厚で形成した。
【0130】
[有機層13(G)の形成]
Gの発光領域に対応する有機層13(G)を以下のようにして形成した。なお、有機層13(G)の形成において、有機層13(G)を構成する各層の形成に用いるマスクは以下のようにした。
【0131】
正孔注入層13aの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
正孔輸送層13bの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
発光層13cの形成 開口サイズ250μm×100μmのマスクを使用
電子輸送層13dの形成 開口サイズ250μm×100μmのマスクを使用
【0132】
[正孔注入層13aの形成]
まず、真空蒸着法により、開口サイズ245μm×95μmのマスクを用いて、陽極上に、正孔注入層13aとして、(式1)で表される化合物の膜を、15nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4/sec)で形成した。
【0133】
[正孔輸送層の形成]
次に、真空蒸着法により、開口サイズ245μm×95μmのマスクを用いて、正孔注入層13a上に、正孔輸送層13bとして、α−NPD(N,N'−ビス(1−ナフチル)−N,N'−ジフェニル[1,1'-ビフェニル]−4,4'―ジアミン)を170nmの膜厚(蒸着速度1.0〜1.2/sec)で形成した。
【0134】
[発光層(G)の形成]
次に、真空蒸着法により、開口サイズ250×100μmのマスクを用いて、発光層13cを形成した。発光層13cの形成では、ホスト材料として、ADN(9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)を用い、ドーパントとして式(2)で表される化合物を用いた。これらの材料を、真空蒸着法により、ドーパント濃度が膜厚比で6%になるように、28nmの合計膜厚で成膜した。
【0135】
【化2】

【0136】
[電子輸送層の形成]
次に、真空蒸着法により、開口サイズ250μm×100μmのマスクを用いて、Alq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)の膜を40nmの膜厚で形成した。
【0137】
[有機層13(R)の形成]
Rの発光領域に対応する有機層13(R)を以下のようにして形成した。なお、有機層13(R)の形成において、有機層13(R)を構成する各層の形成に用いるマスクは以下のようにした。
【0138】
正孔注入層13aの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
正孔輸送層13bの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
発光層13cの形成 開口サイズ250μm×100μmのマスクを使用
電子輸送層13dの形成 開口サイズ250μm×100μmのマスクを使用
【0139】
[正孔注入層13aの形成]
まず、真空蒸着法により、開口サイズ245μm×95μmのマスクを用いて、陽極上に、正孔注入層13aとして、式(1)で表される化合物の膜を、15nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4/sec)で形成した。
【0140】
[正孔輸送層の形成]
次に、真空蒸着法により、開口サイズ245μm×95μmのマスクを用いて、正孔注入層13a上に、正孔輸送層13bとして、α−NPD(N,N'−ビス(1−ナフチル)−N,N'−ジフェニル[1,1'-ビフェニル]−4,4'―ジアミン)を190nmの膜厚(蒸着速度1.0〜1.2/sec)で形成した。
【0141】
[発光層(R)の形成]
次に、真空蒸着法により、開口サイズ250×100μmのマスクを用いて、発光層13cを形成した。発光層13cの形成では、ホスト材料として、ルブレンを用い、ドーパントとして式(3)で表されるジベンゾ[f,f’]ジインデン[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ぺリレン誘導体を用いた。これらの材料を、真空蒸着法により、ドーパント濃度が膜厚比で1%になるように、43nmの合計膜厚で成膜した。
【0142】
【化3】

【0143】
[電子輸送層の形成]
次に、真空蒸着法により、開口サイズ250×100μmのマスクを用いて、Alq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)の膜を50nmの膜厚で形成した。
【0144】
[陰極の形成]
以上のようにして、形成した有機層13および絶縁層18上に、2層構造の陰極(第2電極15)を形成した。まず、陰極の第1層として、真空蒸着法により、LiFの膜を約0.3nmの膜厚(0.01nm/sec以下)で形成した。次に、陰極の第2層として、真空蒸着法により、MgAgの膜を10nmの膜厚(0.01nm/sec以下)で形成した。
【0145】
[保護膜の形成]
次に、真空蒸着法により、保護層17としてSiO2の膜を、有機層13および陰極全体をカバーするように50nmの膜厚で形成した。
【0146】
以上により、RGB3色を独立して発光する有機ELパネル(画素数:水平320×垂直240、画素ピッチ:水平0.3×垂直0.3mm)を作製した。
【0147】
[評価]
以上のようにして作製した有機ELパネルの有機EL素子21に対して、0V〜7Vまでの電流―電圧特性を測定した。その結果、有機EL素子21Bでは、閾値電圧は3.0Vであった。また、有機EL素子21Gでは、閾値電圧は3.2Vであった。有機EL素子Rでは、閾値電圧は3.5Vであった。
【0148】
リーク電流を評価するため、閾値電圧より0.2V低い電圧での1ピクセルあたりの電流密度を測定した。その結果、有機EL素子21Bでは、測定によって得られた電流密度が2.8×10-10[mA/cm2]であった。有機EL素子21Gでは、測定によって得られた電流密度が2.0×10-10[mA/cm2]であった。有機EL素子21Rでは、測定によって得られた電流密度が1.3×10-10[mA/cm2]であった。
【0149】
また、この方法で作製した有機ELパネルでは、3nit以下の低輝度領域においてもリーク電流を起因とする発光ムラは確認されなかった。
【0150】
<比較例1>
真空蒸着法により、開口サイズ245μm×95μmのマスクのみで有機層13を形成した。すなわち、有機層13(B)、有機層13(G)、有機層13(R)の形成において、各層の形成に用いるマスクを以下のようにした。
【0151】
正孔注入層13aの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
正孔輸送層13bの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
発光層13cの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
電子輸送層13dの形成 開口サイズ245μm×95μmのマスクを使用
【0152】
以上の点以外は、実施例1と同様にして、RGBの3色を独立して発光する有機ELパネル(画素数:水平320×垂直240(個)、画素ピッチ:水平0.3mm×垂直0.3mmを作製した。
【0153】
[評価]
以上のようにして作製した有機ELパネルの有機EL素子21に対して、0V〜7Vまでの電流―電圧特性を測定した。その結果、閾値電圧は変化がなかった。すなわち、有機EL素子21Bでは、閾値電圧は3.0Vであった。また、有機EL素子21Gでは、閾値電圧は3.2Vであった。有機EL素子Rでは、閾値電圧は3.5Vであった。
【0154】
リーク電流を評価するため、閾値電圧より0.2V低い電圧での1ピクセルあたりの電流密度を測定した。その結果、有機EL素子21Bでは、測定によって得られた電流密度が1.2×10-8[mA/cm2]であった。有機EL素子21Gでは、測定によって得られた電流密度が7.2×10-9[mA/cm2]であった。有機EL素子21Rでは、測定によって得られた電流密度が8.3×10-9[mA/cm2]であった。
【0155】
すなわち、この比較例1の結果と上述の実施例1の結果とを比べると、実施例1では、比較例1に比べてリーク電流が一桁以上低減されたことがわかった。
【0156】
また、比較例1の有機ELパネルでは、3nit以下の低輝度領域においてリーク電流を起因とする発光ムラが確認された。
【0157】
9.他の実施の形態
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構造、形状、材料等はあくまでも例にすぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、構造、形状、材料等を用いてもよい。
【0158】
例えば、第1〜第7の実施の形態では、有機層13の構成は、正孔注入層13a/正孔輸送層13b/発光層13c/電子輸送層13dとしたがこれに限定されるものではない。必要に応じて、適宜、有機層を構成する層数を増加したり、減少してもよい。この場合、抵抗の低いリーク原因となる層の端面に沿って、リーク原因となる層より抵抗の高い他の層を形成することによって、リーク原因となる層の端面を覆うようにする。これにより、リーク原因となる層の端面と第2電極とが接触しない構造とすることで、リーク電流を抑制することができる。
【0159】
例えば、第1〜第7の実施の形態では、上面発光型の表示装置について説明したが、下面発光型(ボトムエミッション型)の表示装置にも適用することができる。また、各有機EL素子にTFTが接続され、このTFTによって、各有機EL素子の発光を独立して制御するアクティブマトリックス方式に限定されるものではない。例えばパッシブマトリックス方式にも適用可能である。
【0160】
第2、第4、第6の実施の形態では、有機層13を構成する各層を真空蒸着法で形成する例について説明し、第7の実施の形態では、有機層13を構成する各層を転写法で形成する例について説明したが、これに限定されるものではない。
【0161】
例えば、有機層13を印刷法で形成してもよい。このとき、有機層13を構成する層の印刷パターンの範囲を、各構成層ごとに適宜設定する。すなわち、抵抗の低いリーク電流の原因となる層を、狭い範囲の印刷パターンとする。そして、リーク電流の原因となる層より抵抗の高い層を、広い範囲の印刷パターンとする。これにより、リーク電流の原因となる層の端面をリーク電流の原因とならない層で覆う構造を形成し、リーク電流を抑制することができる。
【0162】
また、第2、第4、第6の実施の形態では、有機層13を構成する各層を全て真空蒸着法で形成する例について説明し、第7の実施の形態では、有機層13を構成する各層を全て転写法で形成する例について説明したが、これに限定されるものではない。
【0163】
例えば、有機層13の各層を、真空蒸着法および転写法の両方を用いて形成してもよい。すなわち、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層を真空蒸着法で形成し、発光層のみを転写法で形成してもよい。勿論、真空蒸着法および印刷法の両方を用いて形成してもよく、転写法および印刷法の両方、または、真空蒸着法、印刷法および転写法を用いて、形成してもよい。
【0164】
また、第1〜第7の実施の形態では、有機層13をマトリックス状に配置した例につい説明したがこれに限定されるものではない。例えば、異なる発光色(例えばR、G、B)に対応する各有機層をストライプ状に配置するように構成した表示装置にも適用可能である。このように構成した有機層の形成では、ストライプ状のマスクを用いるが、このストライプ状のマスクを用いた場合でも、有機層を構成する各層に応じて、マスクの開口サイズを変えることによって、リークの原因となる抵抗の低い層の端面を覆う構造を形成することができる。
【0165】
また、第7の実施の形態では、転写層をパターン形成してから熱転写したが、転写層を基板の全面に形成して、レーザの照射範囲を選択的に変えるようにしてもよい。
【0166】
また、必要に応じて、第1、第3の実施の形態の有機EL素子を組み合わせて表示装置を構成することも可能である。例えば、有機EL素子21Rを第1の実施の形態の構成とし、有機EL素子21Gおよび有機EL素子21Bを第3の実施の形態の構成として、表示装置を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0167】
11・・・基板
13・・・有機層
13a・・・正孔注入層
13b・・・正孔輸送層
13c・・・発光層
13b・・・転写層
13d・・・電子輸送層
15・・・電極
17・・・保護膜
18・・・絶縁層
19・・・封止基板
30・・・転写基板
33・・・転写層
34・・・光熱変換層
35・・・酸化保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
上記第1電極および上記第2電極の間に設けられ、有機材料で構成される有機層と
を有し、
上記有機層は、発光層を含む複数の層から構成され、
上記複数の層のうちの少なくとも1層からなる第1の層の端面が、該第1の層の上方に位置する層のうちの少なくとも1層からなる第2の層によって、覆われた表示装置。
【請求項2】
上記第2の層は、上記第1の層より抵抗の高い層である
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
上記有機層は、上記発光層の他に正孔注入層および正孔輸送層を有し、
上記第1の層は、上記正孔注入層および上記正孔輸送層のうちの少なくとも何れかの層を含み、
上記第2の層は、上記発光層を含む請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
上記有機層を構成する各層の材料構成が、発光色ごとに異なる
請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
上記有機層を構成する各層の厚さ構成が、発光色ごとに異なる
請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
第1電極と、第2電極と、上記第1電極および上記第2電極の間に設けられ、発光層を含む、有機材料で構成される複数の層で構成される有機層とを有する表示装置の製造方法であって、
上記有機層の形成工程は、上記複数の層のうちの少なくとも1層からなる第1の層を形成する第1の工程と、
上記第1の層より上方に位置する層のうちの少なくとも1層からなる第2の層を、上記第1の層の端面に沿って形成する第2の工程と
を有する
表示装置の製造方法。
【請求項7】
上記第2の層は、上記第1の層より抵抗の高い層である
請求項6記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
上記第1の工程において、上記第1の層の形成は、上記第1の層となる有機材料を第1の成膜範囲で成膜することによって行い、
上記第2の工程において、上記2の層の形成は、上記第2の層となる有機材料を上記第1の成膜範囲より広い第2の成膜範囲で成膜することによって行う
請求項6記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
上記有機層は、上記発光層の他に正孔注入層および正孔輸送層を有し、
上記第1の層は、上記正孔注入層および上記正孔輸送層のうちの少なくとも何れかの層を含み、
上記第2の層は、上記発光層を含む
請求項6記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
上記有機層の形成工程は、蒸着法、転写法および印刷法の少なくとも何れかによって行う
請求項6記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−29322(P2011−29322A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172154(P2009−172154)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】