説明

表示装置の製造方法及び表示装置

【課題】 フォトリソグラフィーの使用を減らして有機EL表示装置等の表示装置を製造することを可能とする表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の表示装置の製造方法は、基板上(10)に少なくとも第1の電極膜(11)、発光膜(13)及び第2の電極膜(14)を形成してなる表示装置の製造方法において、少なくともいずれかの膜をレーザエッチングによってパターニングすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL(electro luminescence)表示装置等の表示装置の製造方法及び表示装置に関し、特に、エッチングプロセスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は、基板の上に陽極、発光膜及び陰極からなる多数の画素を二次元に配列した微細構造を有している。このため、有機EL表示装置の製造工程では、多数の電極・配線などの薄膜のパターニングのために加工精度の高いフォトリソグラフィーが複数回使用されている。
【特許文献1】特開2001−284609
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、フォトリソグラフィーは、パターニングの対象を成膜した後、フォトレジスト塗布、レジストのプリベーク、パターン露光、現像前ベーク、現像、ポストベーク、エッチング、アッシング、レジスト剥離、洗浄等の多数の工程を経て行われるので、工程数が多く、製造装置コストがかかる。また、大量の薬品、純水、ガスなどを使用するので材料や廃水処理等のランニングコストもかかる。
【0004】
よって、本発明はフォトリソグラフィーの使用を減らして有機EL表示装置等の表示装置を製造することを可能とする表示装置の製造方法及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の表示装置の製造方法は、基板上に少なくとも第1の電極膜、発光膜及び第2の電極膜を形成してなる表示装置の製造方法において、少なくともいずれかの膜をレーザエッチングによってパターニングすることを特徴とする。
【0006】
かかる構成とすることによって、フォトリソグラフィーを使用せずに電極・配線・発光膜等の各々所定の機能を担う膜のパターニングを行うことが可能となる。
【0007】
好ましくは、上記第1及び第2の電極膜の少なくともいずれかに上記パターニングを施して画素電極を形成することを特徴とする。それにより、二次元画面の表示器が得られる。また、一方の電極膜を透明電極、他方の電極膜を非透明(好ましくは、反射)電極とすることによって、ボトムエミッション型あるいはトップエミッション型の表示器を形成することができる。
【0008】
好ましくは、上記発光膜は有機EL膜である。それにより、有機EL表示装置を得ることが出来る。
【0009】
また、本発明の表示装置の製造方法は、基板上に第1の電極膜を形成する工程と、上記基板に形成された第1の電極膜をレーザエッチングによってパターニングして複数の画素電極を形成する工程と、上記画素電極相互間を絶縁し、各画素電極のエッジ部を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、各画素電極の上に発光膜を形成する工程と、各発光膜の上に第2の電極を形成する工程と、を含む。
【0010】
かかる構成とすることによって、第1の電極膜をレーザエッチングによって形成することが可能となる。また、該電極膜のエッジ部を絶縁膜で覆うことによって隔壁構造を形成し、インクジェット法による発光膜の成膜を容易にすることができる。
【0011】
好ましくは、上記絶縁膜形成工程は、上記レーザエッチングによって上記画素電極のエッジ部に生じるロールアップ(盛り上がり)を覆うように上記絶縁膜を形成する。それにより、発光層の膜厚の不均一、第1及び第2の電極膜相互間の短絡を防止することが可能となる。
【0012】
好ましくは、上記絶縁膜は画素領域を画定する隔壁膜である。それにより、インクジェット法による発光膜材料の液滴位置の位置決め構造(碁盤の目状の隔壁膜)を活用することが出来る。
【0013】
好ましくは、上記絶縁膜は、フォトレジスト又は酸化シリコンである。フォトレジストを用いるとパターニングが容易である。また、酸化シリコンを用いるとより高い絶縁性が得られる。
【0014】
好ましくは、上記発光膜は有機EL膜である。それにより、有機EL表示装置が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表示装置における薄膜のパターニングにおいて、レジスト塗布、パターン露光、現像、エッチング等の多数の工程からなるフォトリソグラフィーの使用を回避し、あるいは使用回数を減らすことが可能となる。
【0016】
また、陰極のパターニングにレーザエッチングを使用することによって、従来陰極のパターニングで使用していた後述のカソードセパレータという逆テーパーの形状をしたレジスト膜を使用しなくても良いため、カソードセパレーターが原因となる発光層への悪影響をなくすことができ、表示装置の性能及び信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る表示装置の製造方法について説明する。
【0018】
図1は、有機EL表示装置の製造工程を概略的に示している。また、図2は、途中の製造工程を説明する平面図である。
【0019】
まず、図1(a)に示すように、透光性基板であるガラス基板10またはガラス基板上に形成された回路配線、駆動回路などの上に形成された層間絶縁膜上の全面に透明な電極膜であるITO(Indium Tin Oxide)膜11をスパッタ法などによって0.2μm程度の膜厚に形成する。
【0020】
次に、図1(b)に示すように、ITO膜11をパターニングして表示器の画素の陽極を形成する。このパターニングはレーザエッチング(レーザアブレーション)によって行われる。具体的には、レーザビームを発生するレーザ光源、基板10を載置して移動するX−Yステージ、描画すべきパターンに対応してレーザ光源及びX−Yステージを制御する制御装置によってエッチングが行われる。例えば、レーザ光源は、波長355nmまたは532nm、100kHzのパルスレーザを、ビームスポット径10μm、平均出力1.0Wで出力する。つまり、パルスエネルギーは10μJということになる。X−Yステージを500mm/sec、で移動させ、ビームスポットを5μmオーバーラップさせて線幅10μmのエッチングを行うことにより、有機ELの陽極電極群を形成することが出来る。エッチングで除された部分は十分に大きい絶縁抵抗を示す。
【0021】
なお、レーザによってエッチングされた陽極11のエッジ部には熱によってITOが溶けて盛り上がったロールアップ部分11aが生じる。例えば、上記条件のレーザエッチングの例ではロールアップ部分11aの高さは0.1μm程度、幅(図1(b)の左右方向)は1μm程度である。
【0022】
次に、図1(c)に示すように、絶縁材料によって陽極群の画素領域を画定するための隔壁膜12を基板10上にスピンコーティング法などによって2μm程度の膜厚に形成する。隔壁膜12として、フォトレジスト(感光性アクリル樹脂)や酸化シリコンを使用することが出来る。
【0023】
図1(d)に示すように、隔壁膜12をパターニングして、画素領域を分離する隔壁12を形成する。例えば、フォトレジストを隔壁パターンによって露光現像して隔壁部分12を残す。このとき、隔壁パターンは上述した陽極11のロールアップ11aを隔壁部12内に含み、隔壁外部に露出しないようなパターンとなるように考慮される。絶縁膜である隔壁膜12にロールアップ部分11aが覆われることによって、有機ELの発光膜の均一性、陽極と陰極間の短絡防止が図られる。例えば、断面が台形状の隔壁12の上辺は20μm程度に形成される。隔壁パターンを形成した後、酸素プラズマを用いてITO表面を親液処理し、フッ素プラズマを用いて隔壁表面を撥液処理を行ってもよい。
【0024】
図2は、図1(d)に示される基板を上方から見た様子を示している。同図において、図1(d)と対応する部分には同一符号を付している。図2中に梨地で領域が示される隔壁部12の開口部に斜線群で領域が示される陽極11が露出している。陽極11は、例えば、50×150μm程度に形成される。陽極11の外周のロールアップ部分11aは隔壁膜12のエッジ(開口縁)12aよりも隔壁12側に存在し、外部への露出が防止されている。
【0025】
なお、ITO膜11と隔壁膜12との間に、親液性かつ絶縁性の膜を形成しても良い。この膜の材料としては、例えば酸化シリコン膜が挙げられる。画素の開口縁12aに沿って親液性の膜を一部露出させることによって、インクジェット法によって画素の開口部内に吐出された高分子発光材料の液滴は画素電極11の上面全体に均一に広がり、陽極と陰極の短絡防止が可能となる。
【0026】
次に、図1(e)に示されるように、隔壁膜12を画素領域の壁として利用してインクジェット法によって発光膜材料が陽極11上に吐出され、発光膜13が各画素領域に形成される。なお、発光膜は、1層構造(特に、高分子系材料)、2層〜5層構造(特に、低分子系材料)など適宜に構造が選定される。
【0027】
更に、発光膜13上に陰極膜(背面電極膜)14を形成する。陰極膜14は、例えば、発光膜へのダメージが少ない蒸着法などによってアルミニウムを0.2μm程度の膜厚に堆積して形成する。この際、カルシウムやフッ化リチウム等を用いた電子注入層をアルミニウムと発光膜13と間に介在させても良い。
【0028】
次に、図1(f)に示すように、アルミニウム膜14をパターニングして表示器の画素の陰極を形成する。このパターニングはレーザエッチングによって行われる。具体的には、ITO膜のパターニングと同様の装置を用い、レーザの平均出力以外はほぼ同条件でエッチングを行う。レーザの平均出力はITO膜のエッチング時の約1/3程度が好ましい。なぜなら、それ以上の出力でレーザエッチングを行った場合、下地膜である隔壁へダメージを与えることになり、その際の熱の発生や出ガスなどにより発光膜へ悪影響を与える可能性があるからである。具体的には、ビームスポット径が10μmの場合、パルスエネルギーは2〜5μJ程度にするとよい。
【0029】
また、陰極のパターニングは発光層の劣化を防ぐために水分や酸素をほとんど排除した不活性雰囲気下において行うべきである。
【0030】
陰極のパターニングにレーザエッチングを用いた場合、図3に示すようなカソードセパレータ30を形成する必要がない。図3において、図1と対応する部分には同一符号を付している。そのため、カソードセパレータ30が与える発光層13への様々な悪影響を回避することができる。例えば、カソードセパレータ30があることによって発光層13の膜厚ムラが発生することがある。
【0031】
なお、上述した有機EL表示装置の製造工程の説明においては、電極配線、回路配線、駆動回路などは特に表示していないが、従来の画像の表示回路と同様に形成される。
【0032】
図4は、本発明の実施例を比較例を用いて更に説明する説明図である。図4(a)は、フォトリソグラフィーを用いて表示装置を製造した場合、図4(b)は、フォトリソグラフィーをレーザエッチングに替えて製造プロセスを行った場合、図4(c)は、画素電極11のロールアップ11aを考慮して隔壁層及び画素電極の形状を定めるようにした例をそれぞれ示している。
【0033】
図4(a)に示すように、フォトリソグラフィーを使用することによって、電極膜(ITO)11を正確にエッチングすることが出来る。しかし、同図(b)に示すように、フォトリソグラフィーを前提とする電極パターン(マスク)で、レーザエッチングによるパターニングを行った場合には、ロールアップ部分11aが隔壁膜12から露出する可能性がある。そこで、同図(c)に示されるように、予めロールアップ部分11aの発生を考慮した画素電極膜のパターンを用いてレーザエッチングを行う。それにより、隔壁層12内にロールアップ部分11aが収められ、ロールアップ部分11aの絶縁が確保される。
【0034】
このようにして、レーザエッチングを用いて電極膜のパターニングを行うと共に、レーザエッチングによる膜の盛り上がり(ロールアップ)を絶縁膜によってカバーすることによってフォトリソグラフィを使用しない、あるいは使用回数を減らして有機EL表示装置を製造することが可能となる。
【0035】
なお、上記実施例では、2つの電極膜をレーザエッチングでパターニングして単位画素の陽極及び陰極を形成しているが、例えば、陰極を各画素の共通電極として形成する場合もある。また、電極膜をパターニングして単位画素の陰極を形成し、各画素の陽極を共通電極として形成する場合もある。
【0036】
また、本発明の製造方法は、透明電極(ITO)と金属電極とをそれぞれ陽極及び陰極に使用することによってボトムエミッション型の有機EL表示装置としている。これを透明電極(ITO)と金属電極とをそれぞれ陰極及び陽極に使用することによってトップエミッション型の有機EL表示装置とすることができる。この際、電極を複数種類の材料の成膜によって形成することが出来、膜間のエネルギ準位をより適切に設定することが可能となる利点がある。
【0037】
また、本発明の製造方法は、パッシブ型及びアクティブ型の有機EL表示装置のいずれにも適用できる。
【0038】
また、電極のレーザエッチング後にCMP(化学的機械的研磨)法等によって電極面を平坦化し、レーザエッチングによって生じたロールアップ部分を除去することとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】有機EL表示装置の製造工程を説明する工程図である。
【図2】有機EL表示装置の画素部分を説明する説明図である。
【図3】カソードセパレータを用いた従来構成を説明する説明図である。
【図4】従来構成との相違を説明する比較例である。
【符号の説明】
【0040】
10 基板、11 透明電極膜(ITO)、11a ロールアップ部分、12 隔壁、12a 隔壁の開口縁、13 発光膜、14 陰極(アルミニウム)、30 カソードセパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも第1の電極膜、発光膜及び第2の電極膜を形成してなる表示装置の製造方法であって、
少なくともいずれかの膜をレーザエッチングによってパターニングすることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極膜の少なくともいずれかに前記パターニングを施して画素電極を形成することを特徴とする、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記発光膜は有機EL膜である、請求項1又は2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
基板上に第1の電極膜を形成する工程と、
前記基板に形成された第1の電極膜をレーザエッチングによってパターニングして複数の画素電極を形成する工程と、
前記画素電極相互間を絶縁し、各画素電極のエッジ部を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
各画素電極の上に発光膜を形成する工程と、
各発光膜の上に第2の電極を形成する工程と、
を含む表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁膜形成工程は、前記レーザエッチングによって前記画素電極のエッジ部に生じたロールアップを覆うように前記絶縁膜を形成する、請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁膜は、画素領域を画定する隔壁膜である、請求項4又は5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁膜は、フォトレジスト又は酸化シリコンである、請求項4乃至6のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記発光膜は有機EL膜である、請求項4乃至7のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
基板上に少なくとも陽極膜、有機EL膜及び陰極膜を有し、陰極膜がレーザエッチングによってパターニングされていることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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