説明

表示装置の製造方法

【課題】表示パネルに接着剤を介して透明基板を貼り付ける際に、気泡の残留を抑制できる表示装置の製造方法の提供。表示パネルに接着剤を介して透明基板を貼り付ける際に、製造に要する時間を短くできる表示装置の製造方法の提供。
【解決手段】表示パネルに接着剤を介して透明基板を貼り付けた表示装置の製造方法であって、前記表示パネルまたは前記透明基板に所定のパターンで前記接着剤を塗布する塗布工程と、前記塗布工程よりも後に、前記表示パネルと前記透明基板とを前記接着剤を介して貼り合わせる貼り合わせ工程と、前記貼り合わせ工程よりも後に、前記接着剤を硬化させる硬化工程とを有し、前記接着剤を介して減圧雰囲気下で前記表示パネルと前記透明基板を貼り合わせる際に、前記接着剤の粘度、塗布パターン、貼り合わせ時の気泡の大きさ、硬化方法などのうちの一つ以上を工夫する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法に係り、特に、表示パネルに接着剤を介して透明基板(保護カバー)を貼り付けた表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置は、小型の携帯電話用から大型のTV用まで、様々な大きさの表示装置として採用されている。
【0003】
図10は、従来の液晶表示装置を説明する断面図である。図10では、たとえば液晶表示パネルなどの表示パネルPNLを、携帯電話などの筐体CASに組み込んだ状態を示している。液晶表示パネルの場合、表示パネルPNLは、たとえば、基板SUB1と、基板SUB2と、基板SUB1と基板SUB2とを貼り合わせるシール材SLと、基板SUB1と基板SUB2とシール材SLとで囲まれる内部に封入された液晶SLと、基板SUB1の液晶LCと反対側に配置された偏光板POL1と、基板SUB2の液晶LCと反対側に配置された偏光板POL2とを有している。
【0004】
表示パネルPNLは、筐体CASに設けられた開口部と重なるように配置される。筐体CASの開口部には、たとえばガラスやアクリル(PMMA)などの透明基板(保護カバー)COVが両面テープTAPなどで貼り付けられている。そして、図に示した液晶表示装置の場合、表示パネルPNLと透明基板COVとの間に、空気層が介在する空間SPが存在していた。
【0005】
図10に示したもの以外では、たとえば、特許文献1のように、紫外線硬化型または熱硬化型の接着剤を介して、液晶表示パネルに補強基板などの透明基板を貼り付けるものがある。その際、特許文献1では、気泡の残留を抑制するために、粘度が10,000〜100,000cP(1cP=1mPa・s)の高粘度接着剤を外周に形成し、その内側に粘度が100〜1,000cPの低粘度接着剤を塗布し、真空下(減圧下)で貼り合わせることにより、直径1mm程度の小さい気泡を巻き込んだとしても大気圧に戻すことで気泡を消滅させることができることが記載されている。そして、気泡を巻き込みにくい粘度として、100〜1,000cPが記載されている。
【0006】
他に、気泡の残留を抑制する技術に関しては、たとえば特許文献2、特許文献3がある。特許文献2では、熱硬化型の接着剤と気泡をパターン状に配置し、硬化しない第1加熱温度にするとともに減圧(真空)にすることで気泡を溶解し、その後、圧力を加えるとともに第2加熱温度で硬化することが記載されている。このとき、接着剤をドットや交差ストライプ(格子状)にすること、塗布された時の粘度が1000cP以上であり、第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cP以下であることが記載されている。
【0007】
また、特許文献3では、気泡の残留がないように真空貼り合わせを行う際に、紫外線硬化型の仮固定用接着樹脂をコーナに配置し、熱硬化型の封止用接着樹脂を線状または点状にすることが記載されている。
【0008】
また、本出願人は、本出願に先立って、表示パネルに接着剤を介して透明基板を貼り付けた表示装置の製造方法に関する出願を行っている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平10−254380号公報
【特許文献2】特開2006−36865号公報
【特許文献3】特開2005−243413号公報
【特許文献4】特願2006−346932号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図10に示す構造の場合、空間SPの部分に空気層が介在するため、空気層と透明基板COVなどとの間に屈折率の違いにより発生する表面反射により、視認性が低下する場合がある。
【0010】
また、特許文献1に記載された技術の場合は、低粘度接着剤の粘度が低いため、外周に高粘度接着剤を設ける必要がある。したがって、塗布工程が複雑になる。さらに、低粘度接着剤の高さを高精度で制御しないと高粘度接着剤との間に段差ができ、かえって大きな気泡が発生する可能性がある。
【0011】
また、特許文献2に記載された技術の場合は、熱硬化型の接着剤を硬化しない第1加熱温度にして粘度を上げたときに、表示パネルの耐熱温度を超える場合がある。
【0012】
また、特許文献3に記載された技術の場合は、熱硬化型の封止用接着樹脂を線状または点状にするときの大きさや粘度について記載されておらず、隣り合う封止用接着樹脂の間が大きく離れている場合は、大きな気泡を巻き込む可能性がある。また、熱硬化型であるため、表示パネルの耐熱温度を超える場合がある。
【0013】
また、特許文献4に記載された技術の場合、硬化前の接着剤の粘度を2000〜5000mPa・sとしているが、粘度が5000mPa・s以下の場合、スクリーン印刷を行ったときに、スクリーン版の裏面へ接着剤が回り込みやすく、20〜30ショットでスクリーン版の裏面の清掃が必要となり、製造に要する時間が長くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の表示装置の製造方法では、接着剤を介して減圧雰囲気下で表示パネルと透明基板を貼り合わせる際に、接着剤の粘度、塗布パターン、貼り合わせ時の気泡の大きさ、硬化方法などのうちの一つ以上を工夫することで、気泡の残留を抑制でき、かつ、製造に要する時間を短くできる。
【0015】
本発明の構成は、たとえば、以下のようなものとすることができる。
【0016】
(1)表示パネルに接着剤を介して透明基板を貼り付けた表示装置の製造方法であって、
前記表示パネルまたは前記透明基板に所定のパターンで前記接着剤を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程よりも後に、前記表示パネルと前記透明基板とを前記接着剤を介して貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程よりも後に、前記接着剤を硬化させる硬化工程とを有し、
前記塗布工程において、前記接着剤は、粘度が5000mPa・sより大きく、15000mPa・s以下であり、スクリーン印刷で前記接着剤の塗布を行い、
前記塗布工程における前記接着剤の塗布終了時点から、前記貼り合わせ工程における貼り合わせ開始時点までの時間が10秒以上、120秒以下であり、
前記貼り合わせ工程において、前記塗布工程で塗布された前記接着剤が広がって、気泡が残留しつつ、かつ、前記気泡の大きさが最大で0.5mm以下になった状態で、前記表示パネルと前記透明基板とを前記接着剤を介して、大気圧よりも低い減圧雰囲気下で貼り合わせ、
前記硬化工程において、前記気泡が最大で0.1mm以下になった後に、紫外線を照射して前記接着剤を硬化させる。
【0017】
(2)(1)において、前記塗布工程における前記接着剤の塗布終了時点から、前記貼り合わせ工程における貼り合わせ開始時点までの時間が30秒以上、60秒以下である構成としてもよい。
【0018】
(3)(1)または(2)において、前記接着剤の前記所定のパターンは、複数のドットパターンである構成としてもよい。
【0019】
(4)(3)において、前記複数のドットパターンは千鳥配置のドットパターンである構成としてもよい。
【0020】
(5)(1)または(2)において、前記接着剤の前記所定のパターンは、格子状パターンである構成としてもよい。
【0021】
(6)(1)から(5)の何れかにおいて、前記貼り合わせ工程において、真空度が1〜50Torrである構成としてもよい。
【0022】
(7)(1)から(6)の何れかにおいて、前記貼り合わせ工程において、貼り合わせる面側に凸になるように前記表示パネルを曲げながら前記表示パネルと前記透明基板とを前記接着剤を介して貼り合わせる構成としてもよい。
【0023】
(8)(7)において、前記表示パネルは、第1の基板と、前記第1の基板に対向して配置された第2の基板とを有し、
前記第1の基板の厚さと前記第2の基板の厚さとの合計は、0.6mm以下である構成としてもよい。
【0024】
(9)(1)から(8)の何れかにおいて、前記硬化工程において、熱と前記紫外線の両方を用いて前記接着剤を硬化させる構成としてもよい。
【0025】
(10)(9)において、前記透明基板は、一部に遮光部を有する構成としてもよい。
【0026】
(11)(9)または(10)において、前記熱は、50〜80℃である構成としてもよい。
【0027】
(12)(1)から(11)の何れかにおいて、前記透明基板は、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂のうちの何れか1つ以上を含む構成としてもよい。
【0028】
(13)(1)から(12)の何れかにおいて、前記接着剤は、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂を含む構成としてもよい。
【0029】
(14)(1)から(13)の何れかにおいて、前記貼り合わせ工程および前記硬化工程において、前記表示パネルと前記透明基板とを貼り合わせた状態で、前記表示パネルと前記透明基板のそれぞれを治具で位置決め固定する構成としてもよい。
【0030】
(15)(1)から(14)の何れかにおいて、前記接着剤の硬化後の弾性率は、25℃において、1,000〜250,000Paである構成としてもよい。
【0031】
(16)(1)から(15)の何れかにおいて、前記表示パネルは、液晶表示パネルである構成としてもよい。
【0032】
なお、上記した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、上記した構成以外の本発明の構成の例は、本願明細書全体の記載または図面から明らかにされる。
【発明の効果】
【0033】
本発明による代表的な効果は、次の通りである。
【0034】
表示パネルに接着剤を介して透明基板を貼り付ける際に、気泡の残留を抑制できる。
【0035】
表示パネルに接着剤を介して透明基板を貼り付ける際に、製造に要する時間を短くできる。
【0036】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。なお、各図および各実施例において、同一又は類似の構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0038】
〈実施例1〉
図1は、本発明の実施例1の表示装置の一例を説明する断面図である。実施例1では、表示パネルPNLに液晶表示装置を用いた場合を例にして説明する。図1でも、たとえば液晶表示パネルなどの表示パネルPNLを、携帯電話などの筐体CASに組み込んだ状態を示している。
【0039】
表示パネルPNLは、たとえばガラスなどの透光性の絶縁基板である基板SUB1と、たとえばガラスなどの透光性の絶縁基板である基板SUB2と、基板SUB1と基板SUB2とを貼り合わせるシール材SLと、基板SUB1と基板SUB2とシール材SLとで囲まれる内部に封入された液晶SLと、基板SUB1の液晶LCと反対側に配置された偏光板POL1と、基板SUB2の液晶LCと反対側に配置された偏光板POL2とを有している。また、図示しないが、基板SUB1の液晶LC側には、マトリクス状に薄膜トランジスタや画素電極などが形成されており、TFT基板と称される場合もある。図示しないが、基板SUB2の液晶LC側には、カラーフィルタや対向電極などが形成されており、対向基板と称される場合がある。また、基板SUB1と偏光板POL1との間、および基板SUB2と偏光板POL2との間のうちの少なくとも一方に、位相差板などを配置してもよい。 なお、本発明は表示パネルPNLの構成にはあまり限定されないものであるため、ここで説明した構成以外の構成であってもよい。
【0040】
そして、表示パネルPNLには、たとえばガラス、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂などのうちの何れか1つ以上を含む透明基板(保護カバー)COVが接着剤ADを介して貼り付けられている。図1では、偏光板POL2に透明基板COVを貼り付けた例を示しているが、これに限定されるものではない。そして、透明基板COVが貼り付けられた表示パネルPNLは、筐体CASに設けられた開口部と重なるように配置されている。図1では、筐体CASの開口部の内部に、透明基板COVを挿入した例を示している。
【0041】
ここで、透明基板COV、接着剤AD、偏光板POL2などの材質として屈折率がほぼ等しい材質を用いれば、表面反射を抑制できるので、視認性が低下するのを抑制できる。特に、ガラスとアクリル樹脂は屈折率がほぼ等しいため、これらの材料を採用することが望ましい。ただし、この組み合わせに限定されず、2つの材料の間の屈折率差が0.1以下である材料を用いてもよい。もちろん、表面反射が許容できる範囲内であれば、屈折率差が0.1以上の材料を用いることを妨げるものではない。
【0042】
表示パネルPNLと筐体CASとの間には、スペーサSPCを配置している。スペーサSPCに粘着性や接着性をもたせれば固定が可能になる。また、スペーサSPCに弾性を有する材料を用いてもよい。さらに、スペーサSPCをたとえばシリコンゴムなどの防水性の材料で枠状に形成すれば、筐体CASの開口部から水などが侵入するのを防止することができる。
【0043】
図2は、本発明の実施例1の表示装置の製造方法の一例を説明する斜視図である。
【0044】
まず、図2(a)に示すように、透明基板COVに接着剤ADを塗布する。この実施例では、接着剤ADの粘度は硬化前の状態で5000mPa・sより大きく、15000mPa・s以下のものを用いる。本発明では、接着剤ADを塗布する方法として、スクリーン印刷を用いる。このとき、後述するように、接着剤ADを所定のパターンで塗布することが望ましい。また、透明基板COVの周辺部を除いて接着剤ADを塗布すれば、接着剤ADが透明基板COVの外にあふれてこぼれるのを防止できるので望ましい。そして、この状態でしばらく放置すると、接着剤ADが広がって、気泡の大きさが小さくなる。
【0045】
次に、図2(b)に示すように、必要に応じて透明基板COVを裏返す。そして、大気圧よりも低い減圧雰囲気下、たとえば、真空度が1〜50Torr、望ましくは5〜10Torrで、表示パネルPNLと透明基板COVとを、接着剤ADを介して貼り合わせる。
【0046】
本発明では、透明基板COVへの接着剤ADの塗布終了時点から、貼り合わせ開始時点までの時間を、10秒以上、120秒以下(望ましくは30秒以上、60秒以下)にする。この時間の長さがあれば、印刷工程から貼り合わせ工程に至る移載の時間として充分である。また、この時間の長さがあれば、前述した粘度の接着剤ADを所定のパターンで塗布した場合に、接着剤ADが広がり、気泡の大きさが最大で0.5mm以下の状態にすることができる。しかも、この時間の長さとすることで、気泡を完全に消失させるのではなく、ある程度気泡が残留した状態とすることができる。この状態で貼り合わせを行うと、大きな気泡を巻き込むことなく貼り合わせを行うことができ、しかも、貼り合わせ後に真空気泡が拡散し、目立たなくなる。これによって、気泡の残留を抑制できる。
【0047】
また、本発明では、接着剤ADを塗布する場合に、スクリーン印刷を用いている。これによって、透明基板COV上に所定のパターンの接着剤ADを極めて短時間で塗布することができる。たとえば、ディスペンサ方式を用いる場合、たとえば2インチの表示パネルPNL当たり、塗布用ノズルの上げ下げおよび移動に約300秒程度の時間がかかり、製造に要する時間が長くなってしまう。
【0048】
また、本発明では、接着剤ADの粘度を、上述のように、硬化前の状態で5000mPa・sより大きく、15000mPa・s以下としている。粘度が5000mPa・s以下の場合、スクリーン印刷を行ったときに、スクリーン版の裏面へ接着剤ADが回り込みやすく、20〜30ショットでスクリーン版の裏面の清掃が必要となり、製造に要する時間が長くなってしまう。逆に、粘度が15000mPa・sより大きい場合、接着剤ADのぬれ広がりが悪くなるので、気泡の大きさが最大で0.5mm以下の状態になるまでの時間が長くなり、製造に要する時間が長くなってしまう。しかも、粘度が高いと、スクリーン印刷で接着剤ADを理想的な形状のパターンに塗布することが困難になり、その結果、気泡の大きさを制御することができずに気泡が残留してしまうという問題が生じる。
【0049】
また、上述した粘度の範囲であれば、接着剤ADの所定のパターンとしてたとえばドット配置パターンとした場合に、スクリーン印刷直後のドットの最小寸法をφ1.0〜1.1mmとすることができる。
【0050】
尚、接着剤ADは、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂を含むことが望ましいが、たとえばシリコン樹脂など、他の材料のものを用いることも可能である。また、エポキシアクリレートのような混合材料でもよい。
【0051】
次に、図2(c)に示すように、貼り合わせを行った状態で、UV照射(紫外線照射)を行うことにより、紫外線硬化型の接着剤ADを硬化させる。紫外線硬化型の接着剤ADを用いているため、熱工程を用いた場合に問題となる表示パネルPNLの耐熱温度を気にすることなく硬化が可能である。この場合、UV照射の前に、気泡の検査を行い、気泡が最大で0.1mm以下になった後に、UV照射を行う。接着剤ADを硬化した後の気泡の大きさを最大で0.1mm以下とすることで、気泡によって生じる輝点は目視できない程度とすることができる。
【0052】
なお、透明基板COVを貼り合わせた状態では、接着剤ADの粘度や塗布量に応じて、図2(c)に示すように、透明基板COVの端部にまで接着剤ADを広げることができる。
【0053】
ここで、前記貼り合わせ工程および硬化工程において、表示パネルPNLと透明基板COVとを貼り合わせた状態で、硬化が終わるまで、表示パネルPNLと透明基板COVのそれぞれを図示しない治具で位置決め固定することが望ましい。
【0054】
なお、硬化後の接着剤ADの弾性率は、室温(25℃)において、1,000〜250,000Paであることが望ましい。これによって、熱膨張率が異なる材料同士を貼り合わせた場合でも、接着剤ADによって応力を緩和できる。なお、硬化後の接着剤ADの弾性率は、熱機械分析(TMA:Thermo Mechanical Analysis)で測定が可能である。
【0055】
次に、接着剤ADを塗布するパターンの例を説明する。図3は、接着剤を塗布するパターンの一例を説明する平面図である。図3(b)は、図3(a)のパターンで塗布した接着剤が広がった後の様子を説明する平面図である。図3(a)では、ピッチP1で、幅(直径)W1のドットがいわゆる千鳥配置されたパターンで接着剤ADを塗布した例を示した。すなわち、偶数段目の各ドットが奇数段目の各ドットに対して半ピッチずれた配置となっている。この場合、それぞれのドットがつながっていないので、接着剤ADのない部分、すなわち、気泡の大きさは、非常に大きく、大きさd1になっている。これらのドットが広がると、幅(直径)W2>W1となり、図3(b)のように互いにつながるので、それぞれの気泡が大きさd2に分断され、小さくなる。
【0056】
ここで重要なのは、接着剤ADを一様に平坦に塗布するのではなく、接着剤ADが広がったときに、あえて小さな気泡が残るようなパターンにしている点である。さらに、それぞれの気泡が分断されるので、それぞれの気泡の大きさd2が小さいことである。接着剤ADが一様に平坦化されている場合や、塗布されていない領域(気泡)が大きい場合は、大きな気泡を巻き込む可能性があるが、あえて分断された小さな気泡を残したまま貼り合わせることで、貼り合わせ時に大きな気泡を巻き込む可能性を低減できる。したがって、貼り合わせた後でも、真空気泡の大きさを、真空気泡が拡散して目立たなくできる程度(この実施例では、気泡の大きさは、表示パネルPNLと透明基板COVを貼り合わせる段階で、気泡が残留しつつ、かつ、その最大値が0.5mm以下となるようにしている)の気泡に抑えることができる。貼り合わせ後に残った真空気泡は、接着剤ADの硬化を終えるまでに拡散して目立たなくなる。尚、接着剤ADを硬化した後の気泡の大きさを最大で0.1mm以下とすることで、気泡によって生じる輝点は目視できない程度とすることができることは、前述した通りであるため、貼り合わせ後に気泡が拡散して最大で0.1mm以下になるまで待ってから接着剤ADを硬化すればよい。
【0057】
図3(a)に示すように、ドットを千鳥配置させることにより、後述の図4(a)、(b)と比較して明らかとなるように、透明基板COVの周辺(端部近傍)において、ドットを疎に配置でき、接着剤ADを透明基板COVの端部からはみ出し難くできる効果を奏する。
【0058】
尚、縦方向のピッチP2は、図3(a)ではP2>W1としたものを図示しているが、もっとP2を小さくし、P2=W1またはP2<W1としてもよい。P2<W1とした方が、ドット同士が近くなるので好ましい。
【0059】
また、ピッチP1は、P1>2W1としてもよいが、P1=2W1またはP1<2W1の方が、ドット同士が近くなるので好ましい。
【0060】
図4は、接着剤を塗布するパターンの他の例を説明する平面図である。図4(a)は、接着剤を塗布するパターンの一例を説明する平面図である。図4(b)は、図4(a)のパターンで塗布した接着剤が広がった後の様子を説明する平面図である。図4(a)では、接着剤ADをドット状にマトリックス配置させた例を示している。図4(a)において、接着剤ADのそれぞれのドットは、ピッチP1、幅(直径)W1とした。この場合、それぞれのドットがつながっていないので、接着剤ADのない部分、すなわち、気泡の大きさは、非常に大きく、大きさd1になっている。しばらくすると、図4(b)に示すように、接着剤ADが広がって、幅(直径)W2>W1となる。これによって、気泡が分断され、気泡の大きさd2は、塗布直後の気泡の大きさd1よりも小さくなる。
【0061】
なお、図3および図4に示したように、接着剤ADをドット状にし、これを千鳥状あるいはマトリックス状に配置することにより、接着剤ADの印刷工程から貼り合わせ工程までにおいて、接着剤ADの均一なレベリング性を確保できる。すなわち、ドット状の接着剤ADは、その平面形状がくずれることなく(すなわちドット形状を保ったまま)、広がり、隣接する他のドット状の接着剤ADと接触して気泡を分断することになる。このため、気泡の大きさを均一にかつ、所定の値に制御できる効果を奏する。
【0062】
さらに、図5は、接着剤を塗布するパターンの他の例を説明する平面図である。図5(a)は、接着剤を塗布するパターンの一例を説明する平面図である。図5(b)は、図5(a)のパターンで塗布した接着剤が広がった後の様子を説明する平面図である。図5(a)では、接着剤ADを格子状のパターンに塗布した例を示している。図5(a)においてピッチP1、幅W1の接着剤ADによって囲まれる気泡の大きさはd1となっている。しばらくすると、図に示すように、接着剤が広がって、幅W2>W1となる。気泡の大きさd2は、塗布直後の気泡の大きさd1よりも小さくなる。
【0063】
なお、本発明は、図3〜図5で説明したパターンに限られず、他のパターンに接着剤ADを塗布してもよい。また、実施例1では、透明基板COV側に接着剤ADを塗布する例を説明してきたが、これに限らず、表示パネルPNL側に接着剤ADを塗布してもよい。
【0064】
〈実施例2〉
図6は、本発明の実施例2の表示装置の製造方法の一例を説明する側面図である。表示パネルPNLと透明基板COVとを貼り合わせる際に、図6に示したように、表示パネルPNLを、貼り合わせる面側に凸になるように曲げながら貼り合わせることにより、大きな気泡を巻き込む可能性を低減できる。この場合、基板SUB1の厚さt1と基板SUB2の厚さt2との合計が、0.8mm以下、より好ましくは0.6mm以下であることが望ましい。下限については特に制限がないが、合計が0.1mm以上であることが望ましい。
【0065】
なお、図6では、表示パネルPNLの方を曲げている例を示しているが、これに限られず、透明基板COVの方を、あるいは表示パネルPNLと透明基板COVとの両方を、貼り合わせる面側に凸になるように曲げながら貼り合わせるようにしてもよい。
【0066】
〈実施例3〉
図7は、本発明の実施例3の表示装置の一例を説明する断面図である。実施例1の図1と異なる点は、接着剤ADが偏光板POL2の端部まで延在している点である。たとえば、接着剤ADの粘度や、塗布パターンや、塗布量を調整することで、貼り合わせたときに透明基板COVの端部よりも外側まで接着剤を広げることができる。あるいは、表示パネルPNL側に接着剤ADを塗布することでも実現可能である。
【0067】
〈実施例4〉
図8は、本発明の実施例4の表示装置の一例を説明する断面図である。実施例3の図と異なる点は、透明基板COVを、透明基板COV1と透明基板COV2とで構成している点である。透明基板COV1と透明基板COV2との間は、図示しない接着剤で接着されている。透明基板COV2は、透明基板COV1よりも外形が大きくなっている。透明基板COV2は、筐体CASの開口部よりも外形が大きくなっている。そして、透明基板COV2と筐体CASとの間にスペーサSPCが配置されている。透明基板COV1は、たとえばガラスで構成でき、透明基板COV2はたとえばアクリル樹脂(PMMA)で構成することができる。図に示した透明基板COVの構成は、あくまで一例であり、これに限られず他の構成を用いてもよい。
【0068】
〈実施例5〉
図9は、本発明の実施例5の表示装置の一例を説明する断面図である。実施例4の図と異なる点は、透明基板COVの一部に、遮光部SHDを有する点である。たとえば、表示パネルPNLの表示領域の周囲を囲むように枠状に遮光部SHDを形成する。この場合、遮光部SHDと重なる領域では、紫外線の照射では充分に接着剤ADを硬化することができないので、熱と紫外線の両方を用いて接着剤ADを硬化することが望ましい。但し、この場合は、表示パネルPNLの耐熱温度を考慮して、50〜80℃、より好ましくは、55〜70℃の温度が望ましい。この程度の温度であれば、UV照射を行うランプとして出力の大きいもの(たとえば150mW以上)を用いることで実現可能である。なお、接着剤ADを100%硬化させる必要はないので、熱アシストが行える程度の温度でよい。
【0069】
〈実施例6〉
実施例5で説明した熱アシストによる紫外線硬化は、透明基板COVに遮光膜SHDが形成されていないものに適用することも可能である。
【0070】
〈実施例7〉
実施例1〜6において、スペーサSPCに代えて、あるいは、スペーサSPCとともに、筐体CASと透明基板COVとの間の間隔を、図示しないシリコンゴムなどの防水性の材料で構成された第2のスペーサで全てふさいでもよい。これによって、防水が可能となる。また、スペーサSPCと第2のスペーサとを一体で構成してもよい。
【0071】
〈実施例8〉
表示パネルPNLとしては、液晶表示パネルに限定されず、たとえば有機EL表示パネルなどの他の形式の表示パネルに適用することも可能である。
【0072】
以上、実施例を用いて本発明を説明してきたが、これまでの各実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、それぞれの実施例で説明した構成は、互いに矛盾しない限り、組み合わせて用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例1の表示装置の一例を説明する断面図である。
【図2】本発明の実施例1の表示装置の製造方法の一例を説明する斜視図である。
【図3】接着剤を塗布するパターンの一例を説明する平面図である。
【図4】接着剤を塗布するパターンの他の例を説明する平面図である。
【図5】接着剤を塗布するパターンの他の例を説明する平面図である。
【図6】本発明の実施例2の表示装置の製造方法の一例を説明する側面図である。
【図7】本発明の実施例3の表示装置の一例を説明する断面図である。
【図8】本発明の実施例4の表示装置の一例を説明する断面図である。
【図9】本発明の実施例5の表示装置の一例を説明する断面図である。
【図10】従来の液晶表示装置を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0074】
PNL……表示パネル、SUB1、SUB2……基板、SL……シール材、LC……液晶、POL1、POL2……偏光板、COV、COV1、COV2……透明基板(保護カバー)、AD……接着剤、CAS……筐体、SPC……スペーサ、UV……UV照射、P1、P2……ピッチ、W1、W2……幅、d1、d2……大きさ、t1、t2……厚さ、SHD……遮光部、TAP……両面テープ、SP……空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルに接着剤を介して透明基板を貼り付けた表示装置の製造方法であって、
前記表示パネルまたは前記透明基板に所定のパターンで前記接着剤を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程よりも後に、前記表示パネルと前記透明基板とを前記接着剤を介して貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程よりも後に、前記接着剤を硬化させる硬化工程とを有し、
前記塗布工程において、前記接着剤は、粘度が5000mPa・sより大きく、15000mPa・s以下であり、スクリーン印刷で前記接着剤の塗布を行い、
前記塗布工程における前記接着剤の塗布終了時点から、前記貼り合わせ工程における貼り合わせ開始時点までの時間が10秒以上、120秒以下であり、
前記貼り合わせ工程において、前記塗布工程で塗布された前記接着剤が広がって、気泡が残留しつつ、かつ、前記気泡の大きさが最大で0.5mm以下になった状態で、前記表示パネルと前記透明基板とを前記接着剤を介して、大気圧よりも低い減圧雰囲気下で貼り合わせ、
前記硬化工程において、前記気泡が最大で0.1mm以下になった後に、紫外線を照射して前記接着剤を硬化させることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記塗布工程における前記接着剤の塗布終了時点から、前記貼り合わせ工程における貼り合わせ開始時点までの時間が30秒以上、60秒以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤の前記所定のパターンは、複数のドットパターンであることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記複数のドットパターンは千鳥配置のドットパターンであることを特徴とする請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤の前記所定のパターンは、格子状パターンであることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記貼り合わせ工程において、真空度が1〜50Torrであることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記貼り合わせ工程において、貼り合わせる面側に凸になるように前記表示パネルを曲げながら前記表示パネルと前記透明基板とを前記接着剤を介して貼り合わせることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記表示パネルは、第1の基板と、前記第1の基板に対向して配置された第2の基板とを有し、
前記第1の基板の厚さと前記第2の基板の厚さとの合計は、0.6mm以下であることを特徴とする請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記硬化工程において、熱と前記紫外線の両方を用いて前記接着剤を硬化させることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記透明基板は、一部に遮光部を有することを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記熱は、50〜80℃であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記透明基板は、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂のうちの何れか1つ以上を含むことを特徴とする請求項1から11の何れかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記接着剤は、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1から12の何れかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記貼り合わせ工程および前記硬化工程において、前記表示パネルと前記透明基板とを貼り合わせた状態で、前記表示パネルと前記透明基板のそれぞれを治具で位置決め固定することを特徴とする請求項1から13の何れかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記接着剤の硬化後の弾性率は、25℃において、1,000〜250,000Paであることを特徴とする請求項1から14の何れかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記表示パネルは、液晶表示パネルであることを特徴とする請求項1から15の何れかに記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−198755(P2009−198755A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39722(P2008−39722)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】