説明

表示装置を備えたミキサ車

【課題】 コンクリートの誤納を確実に防止することができるミキサ車を提供する。
【解決手段】ミキサ車(AM)に表示装置(8)を設ける。この表示装置(8)には、少なくともコンクリートを打設する打設現場に関する納入先情報(21、22)が表示されるようにし、車外から視認できるようにする。この納入先情報には、施工会社社名(21)と、打設現場の工事名(22)とが含まれる。また表示装置(8)には、ドラム(1)に積載されているコンクリートの性能に関する性能情報(24)や、コンクリートを製造したバッチャープラントの工場名(25)も表示されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを運搬するミキサ車に関するものであり、自走式の自動車と、該自動車のシャーシ上に搭載されているドラムとからなり、バッチャープラントにおいて製造されたコンクリートを積載して、コンクリート打設現場まで輸送するミキサ車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
施工現場で打設されるコンクリートは、いわゆるバッチャープラントにおいて製造され、ミキサ車によって搬送される。バッチャープラントは、従来周知のように、コンクリート混練用の専用のミキサを備えており、その上方に砂利計量機、砂計量機、セメント計量機等からなる計量機と、混練水供給装置が設けられている。従って砂利貯蔵ビン、砂貯蔵ビン、セメント貯蔵ビン等から、これらの計量機に砂利、砂、セメントを供給して計量し、所定の混和剤が注入された混練水と共にミキサに投入する。ミキサを駆動して混練するとコンクリートを製造することができる。ところでこのようなミキサ、計量機、および混練水供給装置は所定のコントローラから制御されるようになっており、管理用コンピュータからの指令、例えば製造するコンクリートの種類、量等の指定データを含む指令に基づいて、所定の種類、量のコンクリートを自動的に製造できるようになっている。
【0003】
ミキサ車は、従来周知のようにアジテータトラックとも呼ばれ、自走式の自動車と、そのシャーシ上に搭載されているドラムとから構成されている。ドラムは、内部に螺旋形のブレードが設けられており、油圧モータにより正逆両方向に回転駆動されるようになっている。バッチャープラントにおいて製造されたコンクリートを、ドラムの一方の端部近傍に設けられているホッパからドラム内に投入し、施工現場まで輸送する。このときドラムを正回転する。そうするとコンクリートはドラム内のブレードによって混練されて品質の劣化が防止される。施工現場においてはドラムを逆回転する。そうするとブレードによってコンクリートがドラムの端部まで送られ、そして外部に排出され、ドラム近傍に設けられている排出用のシュートを介してコンクリートを荷下ろしすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平06−7050号公報
【0005】
本発明の直接的な先行文献ではないが、特許文献1にはドラムに積載しているコンクリートのスランプ値を確認することができるスランプ値測定装置を備えたミキサ車が記載されている。特許文献1に記載のスランプ値測定装置においては、ドラムを回転駆動するときの油圧を検出してドラムの回転負荷を測定することがができるようになっている。回転負荷は、コンクリートの粘性、すなわちスランプ値と、コンクリートの量とに相関しているので、ドラムに積載されているコンクリートの量を入力するとコンクリートの実際のスランプ値を演算できる。このスランプ値は、ミキサ車に搭載されている所定の表示装置に表示されるようになっており、ミキサ車の運転手あるいは操作者は積載されているコンクリートのスランプ値を容易に確認することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のミキサ車によっても、生コンクリートを打設現場まで所定の品質を保った状態で輸送することができる。また特許文献1に記載のミキサ車もスランプ値を測定して表示できるので、コンクリートの品質を管理することができ便利である。従ってコンクリートの輸送自体、あるいはコンクリートの品質の管理に関しては格別に問題はない。しかしながら施工現場における誤納の問題に対しては考慮されていない。この誤納の問題について説明する。
【0007】
コンクリートを打設する施工現場においては、対象となる建造物の種類や規模、施工条件等によって要求されるコンクリートの性能が変わる。具体的には、硬化時の圧縮強度、スランプ値等の性能、場合によっては骨材の粒径等の条件が変わる。これらの必要なコンクリート性能と、量とが指定されて、工事を施工する施工会社からバッチャープラントにコンクリートが発注される。そうするとバッチャープラントにおいて指定された条件に従ってコンクリートを製造し、必要な台数のミキサ車に分散してコンクリートを積載し、施工現場まで輸送する。ところで、建設現場によっては複数箇所の施工現場がある場合がある。例えばショッピングモールの建設現場、テーマパークの建設現場等をあげることができる。このような建設現場では、異なる建造物が並行して建設されており、複数箇所の施工現場において、それぞれ異なる種類のコンクリートが打設されている。各打設現場においては、要求されるコンクリートの性能が異なるので、それぞれの打設現場に応じてコンクリートの種類が指定されて、コンクリートが発注されることになる。このような建設現場においては発注されるバッチャープラントの数も複数になることが多いので、複数のバッチャープラントから、色々な種類のコンクリートを積載した多数のミキサ車が建設現場に到着することになる。ミキサ車の運転手は、コンクリートを正しい打設現場に荷下ろしできるように、バッチャープラント名、納入する建設会社名、打設現場の工事名、コンクリートの種類、量等が記載された伝票を所持している。また建設現場には、ミキサ車を誘導する誘導員が配置されており、ミキサ車を所定の打設現場まで誘導している。従ってコンクリートは予定された打設現場に間違いなく荷下ろしされるはずである。しかしながら実際には、ミキサ車の台数が多くて忙しい時に誤納ミスが発生し易い。誘導員がミキサ車の外見だけを見て判断し、誤って誘導してしまうことがあるからである。また伝票は、記載内容が多くて読みにくいし、取り出して受入担当者に提示する必要があり煩雑であるので、受入担当者が十分に対応できず確認が不十分になる場合もあるからである。コンクリートが誤納されてしまっても、要求されている性能よりも高い性能のコンクリートが打設される場合には問題は比較的小さい。しかしながら要求されている性能よりも低い性能のコンクリートが打設されてしまうと重大な問題が生じる。必要な強度が得られないので、工事のやり直しをせざるを得ないからである。このようにコンクリートの誤納は重大な問題につながることが多いが、従来のミキサ車、あるいは特許文献1に記載のミキサ車にはこのような誤納防止に関して格別に考慮されていない。
【0008】
したがって本発明は、ミキサ車の運転手だけでなく、建設現場の誘導員やコンクリート受入担当者が、積載されているコンクリートの荷下ろし先、コンクリートの性能等について容易に確認することができ、それによって誤納を確実に防止することができるミキサ車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、表示装置を備えたミキサ車として構成する。この表示装置には、少なくともコンクリートを打設する打設現場に関する納入先情報が表示されるようにし、車外から視認できるようにする。この納入先情報には、施工会社の会社名と、打設現場の工事名とが含まれる。また表示装置には、ミキサ車のドラムに積載されているコンクリートの性能に関する性能情報や、コンクリートを製造したバッチャープラントの工場名も表示されるようにする。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、表示装置が設けられ、該表示装置には、コンクリートを打設する打設現場に関する納入先情報が表示されて、車外から視認できるようになっていることを特徴とするミキサ車として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミキサ車において、前記納入先情報は、施工会社の会社名と、打設現場の工事名とを含むように構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のミキサ車において、前記表示装置には、前記ミキサ車のドラムに積載されているコンクリートの性能に関する性能情報も表示されるように構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載のミキサ車において、前記表示装置には、コンクリートを製造したバッチャープラントの工場名も表示されるように構成される。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの項に記載のミキサ車において、前記ミキサ車は、座席数が運転席の1座席のみからなり、前記表示装置はキャビン内の前記運転席の隣に設けられるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によると、ミキサ車には、表示装置が設けられ、該表示装置には、コンクリートを打設する打設現場に関する納入先情報が表示されて、車外から視認できるようになっているので、建設現場において、ミキサ車を誘導する誘導員やコンクリートを受け入れる受入担当者が、積載されているコンクリートの荷下ろし先を容易に確認することができる。そしてこの確認においては、格別に伝票を取り出して提示する必要がないし、表示装置を一瞥するだけで簡単に確認できるので、忙しい時においても誘導員や受入担当者の負担にはならない。従って誘導員は誤ることなくミキサ車を誘導でき、受入担当者も誤ることなくコンクリートを受け入れることができる。これによってコンクリートの誤納を確実に防止することができる。他の発明によると、納入先情報は、施工会社の会社名と、打設現場の工事名とを含むので、施工会社すなわち建設会社が複数の打設現場を担当していても、打設現場を混同することがない。また他の発明によると、表示装置には、ミキサ車のドラムに積載されているコンクリートの性能に関する性能情報も表示されるので、さらに確実に誤納を防止でき安全性が高い。また他の発明によると、ミキサ車は、座席数が運転席の1座席のみからなり、表示装置はキャビン内の運転席の隣に設けられているので、表示装置は運転の妨げにならないし、車外に露出していないので劣化し難い。さらには運転手自身も、積載しているコンクリートの情報を確認することができるので安全である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るミキサ車を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表示装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る表示装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係るミキサ車AMも、図1に示されているように、外観形状は従来のミキサ車と同様に構成されている。すなわち、エンジンにより自走する自動車A、この自動車Aに搭載されているドラム1とからなっている。ドラム1は、回転駆動装置2によって正方向と逆方向とに回転駆動できるようになっており、ドラム1の後端部にはホッパ3とシュートとが設けられているが、図1にはシュートは示されていない。従って本実施の形態に係るミキサ車AMも、バッチャープラントにおいて製造されたコンクリートをホッパ3から投入してドラム1内に積載することができ、ドラム1を正方向に回転させて所定の打設現場に輸送後、ドラム1を逆方向に回転するとシュートを介してコンクリートを荷下ろしできるようになっている。
【0014】
本実施の形態に係るミキサ車AMは、一人乗り用として構成されている。すなわち自動車Aのキャビン5内には、座席は運転席6の1座席しか設けられていない。そして、二人乗り用のミキサ車において助手席が設けられている位置に、本実施の形態に係る表示装置8が設けられている。図1には表示装置8を構成しているディスプレイ9が示されている。本実施の形態においては、ディスプレイ9はキャビン5内に設けられている2本の支柱10、10に固定されており、運転席6よりも若干後方寄りに位置している。従って運転手の視界はディスプレイ9によって遮られることがなく運転に支障を来さない。またディスプレイ9は、上部寄りに位置している。従って、ミキサ車AMの前方からミキサ車AMを見ると、フロントガラス12越しにディスプレイ9全体が見られるようになっている。本実施の形態においては、ディスプレイ9はLED式表示器から構成されており、ディスプレイ9に表示されている文字がくっきりと読み取れるようになっている。
【0015】
本実施の形態に係る表示装置8は、図2に示されているように、ディスプレイ9と、このディスプレイ9を制御する制御部13と、入力部14とから構成されている。後で説明するように、ディスプレイ9には打設現場に関する納入先情報、コンクリートの性能に関する性能情報等が表示されるようになっており、入力部14はこれらの表示に必要な情報を制御部13に入力する手段となっている。入力部14は、色々な構成を採ることができ、例えば、任意の文字入力が可能な汎用的なキーボード16から構成することもできるし、テンキーと数個のボタンのみからなる専用の操作盤17から、あるいは外部から入力を受け付けるLAN入力部19から構成することもできる。入力部14がキーボード16から構成されている場合、納入先情報、性能情報等は直接キーボード16から入力するようにする。入力部14が専用の操作盤17から構成されている場合、簡単なコードによって入力する方法を採ることができる。この場合、入力される可能性のある全ての打設現場に関する納入先情報と、色々な種類のコンクリートに関する性能情報は、所定のコードと共に予め制御部13内のメモリに保存しておく。このようにすると操作盤17からコードを入力するだけで、納入先情報、性能情報を入力したことになる。また入力部14がLAN入力部19から構成されている場合、外部のコンピュータからデータを入力する方法を採ることができる。バッチャープラント内には、製造するコンクリートの情報を管理する管理用コンピュータ18が設置されている。管理用コンピュータ18には、納入先情報、性能情報等の色々な情報が管理されており、この管理用コンピュータ18が接続されているLANに、LAN入力部19を接続すると、各種情報を自動的に取り込むことができる。情報が入力されたら、LANからLAN入力部19を切断する。
【0016】
本実施の形態においては、表示装置8のディスプレイ9に、図3に示されているような内容が表示される。具体的には次のデータが表示される。
○ 施工会社社名21、あるいは略称
工事を施工する施工会社の社名あるいは略称。
○ 工事名22
コンクリートを打設する打設現場に関する工事の名称。
○ ミキサ車連番23
複数台のミキサ車によってコンクリートを輸送する場合におけるミキサ車の連番。必要に応じてミキサ車の総台数も表示することができ、例えば総台数が45台で、当該ミキサ車が21番目であれば「No.21/45」と表示するようにすればよい。
○ コンクリートの性能情報24
コンクリートの強度すなわち圧縮応力と、スランプ値が表示される。必要に応じて骨材の粒径も表示される。図3の例「30−18−20」は、強度が30N/mm2、スランプ値が18cm、骨材の粒径が20mmであることを示している。
○ バッチャープラント名25
コンクリートを製造したバッチャープラントの工場名。
【0017】
本実施の形態に係るミキサ車AMにおいては、バッチャープラントにおいて製造したコンクリートをドラム1に積載するとき、積載の前後の適当なタイミングで表示装置8の入力部14から製造されたコンクリートに関する各種情報、すなわち納入先情報、性能情報等を入力する。そして、これらのデータを図3に示されているようにディスプレイ9に表示させて、ミキサ車AMを走行させる。建設現場の誘導員や、コンクリートの受入担当者は、ディスプレイ9に表示されているデータを確認して、ミキサ車AMを正しく誘導し、そしてコンクリートを受け入れる。従ってコンクリートの誤納を確実に防ぐことができる。
【0018】
本実施の形態に係るミキサ車AMは、上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば表示装置8は、一人乗り用のミキサ車AMに設けられているように説明したが、二人乗り用のミキサ車AMにも、当然に設けることができる。また表示装置8は、キャビン5内に設けられているように説明したが、キャビン5外に設置されていてもよい。具体的にはキャビン5の上に設けることもできるし、ミキサ車AMの側部に設けるようにしてもよい。またディスプレイ9は1個だけから構成されているように説明したが、複数個から構成してもよい。そうするとキャビン5内に1台、ミキサ車AMの側方に1台のように複数箇所に設けることができ、どの方向からも納入先情報、性能情報等を確認することができる。また表示の有無ついても変形が可能であり、表示装置8に所定のスイッチを設けて、スイッチをONしたときだけディスプレイ9にデータを表示出来るようにしてもよい。そうすると建設現場においてのみディスプレイ9にデータを表示させることができる。またディスプレイ9に表示する内容についても変形が可能であり、納入先情報だけを表示するようにしてもよいし、上で説明した以外の他の情報も表示してもよい。ディスプレイ9の表示スペースが小さく全ての情報を同時に表示できないときには、所定の周期で表示内容が切り換えられるようにしてもよいし、ディスプレイ9の右側から左側に向かって文字が流れるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
AT ミキサ車 A 自動車
1 ドラム 3 ホッパ
5 キャビン 6 運転席
8 表示装置 9 ディスプレイ
13 制御部 14 入力部
21 施工会社社名 22 工事名
24 コンクリートの性能情報 25 バッチャープラント名

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置が設けられ、該表示装置には、コンクリートを打設する打設現場に関する納入先情報が表示されて、車外から視認できるようになっていることを特徴とするミキサ車。
【請求項2】
請求項1に記載のミキサ車において、前記納入先情報は、施工会社の会社名と、打設現場の工事名とを含むことを特徴とするミキサ車。
【請求項3】
請求項1または2に記載のミキサ車において、前記表示装置には、前記ミキサ車のドラムに積載されているコンクリートの性能に関する性能情報も表示されるようになっていることを特徴とするミキサ車。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載のミキサ車において、前記表示装置には、コンクリートを製造したバッチャープラントの工場名も表示されるようになっていることを特徴とするミキサ車。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のミキサ車において、前記ミキサ車は、座席数が運転席の1座席のみからなり、前記表示装置はキャビン内の前記運転席の隣に設けられていることを特徴とするミキサ車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196978(P2012−196978A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−48704(P2011−48704)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【特許番号】特許第4986194号(P4986194)
【特許公報発行日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【出願人】(509042389)三和石産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】