説明

表示装置及びその製造方法

【課題】シールからの水分浸入を減少させることを目的とする。
【解決手段】一対のマザー基板10,12の間に、複数の空間14をシール16によって区画する。一対のマザー基板10,12を切断することで複数のセル26を切り出す。シール16は、隣同士の空間14の間の領域を埋めるように配置される。シール16には、隣同士の空間14の間の領域に、シール16よりも硬くて透湿性が低い材料からなる低透湿層20が積層される。一対のマザー基板10,12の少なくとも一方には、隣同士の空間14の間の領域に、シール16の長さに沿って延びて間隔をあけて配置された一対の凸条部22が、シール16及び低透湿層20に重なる位置に形成される。一対のマザー基板10,12を切断する工程では、一対のマザー基板10,12とともに、一対の凸条部22の間で、シール16及び低透湿層20を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルの製造方法として、大型のマザーガラス基板を個々の表示パネルに切り出す方法が知られている。液晶表示パネルは、一対の基板の間にシールによって液晶を封止する構造を有しているので、シールを避けてマザーガラス基板を切断することで、切断力の分散によるマザーガラス基板の破損を防止していた。
【0003】
近年、表示パネルの表示領域の外側の領域(額縁)を狭くすることが要求されており、シールと共にマザーガラス基板を切断することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−75623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、切断ラインに沿ってシール上に硬い材料を配置して、切断力の分散を防止する方法が開示されている。しかし、切断されたシールからの水分浸入を減少させることが考慮されていない。
【0006】
本発明は、シールからの水分浸入を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る表示装置は、間隔をあけて配置された一対の基板と、前記一対の基板の間で空間を区画するシールと、前記空間に配置されて画像を表示するための素子と、前記シールと積層して配置され、前記シールよりも透湿性が低い材料からなる低透湿層と、を有し、前記一対の基板の少なくとも一方には、前記シールの長さに沿って延びる凸条部が、前記シール及び前記低透湿層に重なる位置に形成されていることを特徴とする。本発明によれば、凸条部があることでシールを薄くすることができる。これにより、シールの透湿性によるシールからの水分浸入を減少させることができる。また、低透湿層があることによっても、同様に、シールを薄くすることができ、シールの透湿性によるシールからの水分浸入を減少させることができる。
【0008】
(2)(1)に記載された表示装置において、前記一対の基板の間には、前記シール及び前記低透湿層の端面が露出することを特徴としてもよい。
【0009】
(3)(1)又は(2)に記載された表示装置において、一方の前記基板は、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板であり、他方の前記基板は、薄膜トランジスタが形成されたTFT基板であり、前記凸条部は、前記カラーフィルタ基板に前記カラーフィルタの一部と同じ材料で同じ厚みで形成された層を含むことを特徴としてもよい。
【0010】
(4)(3)に記載された表示装置において、前記低透湿層は、前記凸条部を覆うように前記カラーフィルタ基板に設けられ、前記シールは、前記低透湿層と前記TFT基板の間に配置されていることを特徴としてもよい。
【0011】
(5)本発明に係る表示装置の製造方法は、一対のマザー基板の間に、画像を表示するための素子を配置するための複数の空間をシールによって区画する工程と、前記一対のマザー基板を切断することで複数のセルを切り出す工程と、を含み、前記シールは、隣同士の前記空間の間の領域を埋めるように配置され、前記シールには、隣同士の前記空間の間の前記領域に、前記シールよりも硬くて透湿性が低い材料からなる低透湿層が積層され、前記一対のマザー基板の少なくとも一方には、隣同士の前記空間の間の前記領域に、前記シールの長さに沿って延びて間隔をあけて配置された一対の凸条部が、前記シール及び前記低透湿層に重なる位置に形成され、前記一対のマザー基板を切断する工程では、前記一対のマザー基板とともに、前記一対の凸条部の間で、前記シール及び前記低透湿層を切断することを特徴とする。本発明によれば、凸条部を形成することでシールを薄くすることができる。これにより、シールの透湿性によるシールからの水分浸入を減少させることができる。また、低透湿層があることによっても、同様に、シールを薄くすることができ、シールの透湿性によるシールからの水分浸入を減少させることができる。さらに、シールのみならず低透湿層も切断することで、低透湿層の切断面が露出する。そのため、シールの露出面を小さくすることができ、この点からもシールからの水分浸入を減少させることができる。
【0012】
(6)(5)に記載された表示装置の製造方法において、一方の前記マザー基板は、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板であり、他方の前記マザー基板は、薄膜トランジスタが形成されたTFT基板であり、前記一対の凸条部は、前記カラーフィルタ基板に前記カラーフィルタの一部と同じ材料で同じ厚みで形成された層を含むことを特徴としてもよい。
【0013】
(7)(6)に記載された表示装置の製造方法において、前記低透湿層は、前記凸条部を覆うように前記カラーフィルタ基板に設けられ、前記シールは、前記低透湿層と前記TFT基板の間に配置されていることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図2】一対のマザー基板の平面図であり、シールを破線で示してある。
【図3】一対のマザー基板の平面図であり、低透湿層を破線で示してある。
【図4】一対のマザー基板の平面図であり、凸条部を破線で示してある。
【図5】一方のマザー基板のみを切断する位置の構造を示す図である。
【図6】カラーフィルタ基板の断面図である。
【図7】TFT基板に形成された回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための図である。本実施形態で製造される表示装置は液晶表示装置であるが、それ以外の有機エレクトロルミネッセンス装置などの表示装置にも本発明は適用可能である。
【0017】
本実施形態では、一対のマザー基板10,12を用意する。図1には一対のマザー基板10,12の断面が示されている。マザー基板10は、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板である。詳しくは、マザー基板10は、複数の表示装置の構成要素となる複数のカラーフィルタ基板が一体化されたもので、後の工程で複数の個片に切断される。マザー基板10は、ガラスなどの光透過性材料からなる。マザー基板10には、図示しない着色層(カラーフィルタ)及びブラックマトリクスが形成されている。
【0018】
マザー基板12は、図示しない薄膜トランジスタ、電極及び配線が形成されたTFT基板である。マザー基板12は、複数の表示装置の構成要素となる複数のTFT基板が一体化されたもので、後の工程で複数に切断される。
【0019】
一対のマザー基板10,12の間に、画像を表示するための素子を配置するための複数の空間14をシール16によって区画する。複数の空間14のそれぞれが個々の表示装置の構成要素となる。画像を表示するための素子は、例えば、光の透過及び遮断を制御する素子(図1の例では液晶材料18)である。あるいは、画像を表示するための素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。
【0020】
図2は、一対のマザー基板10,12の平面図であり、シール16を破線で示してある。シール16は、隣同士の空間14の間の領域を埋めるように配置されている。それぞれの空間14に対向して、画像が表示される表示領域15がある。シール16は、樹脂などの透湿性を有する材料からなる。本実施形態は、対向する一対のマザー基板10,12の間に、シール16で、液晶材料18を封止した例である。変形例として、シール16で区画された空間14は、空の状態であってもよく、その場合、シール16には図示しない封入口を形成しておき、その後の工程で液晶材料18を注入する。封入口は封止材で封止する。
【0021】
シール16には、隣同士の空間14の間の領域に、シール16よりも硬くて透湿性が低い材料からなる低透湿層20が積層されている。図3は、一対のマザー基板10,12の平面図であり、低透湿層20を破線で示してある。低透湿層20は、シール16で区画された空間14で一対のマザー基板10,12の間隔を保持するスペーサ(図示せず)と同じ材料で同じプロセスで形成してもよい。シール16は、低透湿層20とマザー基板12の間に配置される。図1に示すように、シール16は、低透湿層20よりも幅(隣同士の空間14の間の方向の幅)が広い。したがって、低透湿層20は、液晶材料18が封入された空間14に露出しない。なお、低透湿層20は、シール16よりも硬い材料からなる。
【0022】
一対のマザー基板10,12の少なくとも一方(図1の例ではマザー基板10)には一対の凸条部22が形成されている。図4は、一対のマザー基板10,12の平面図であり、凸条部22を破線で示してある。一対の凸条部22は、隣同士の空間14の間の領域に、シール16の長さに沿って延びて間隔をあけて配置されている。一対の凸条部22は、シール16及び低透湿層20に重なる位置にある。図1に示すように、凸条部22の全体が、低透湿層20と重なるようになっている。ただし、低透湿層20の一部(切断される部分)は、凸条部22と重ならない。
【0023】
一対の凸条部22は、マザー基板10(カラーフィルタ基板)に、図示しないカラーフィルタの一部と同じ材料で同じ厚みで形成された層を含む。したがって、凸条部22は着色されている。凸条部22は、光透過性層24に覆われていてもよいが、その場合、光透過性層24の表面が凸条部22に形状に沿って凸部を有する。低透湿層20は、凸条部22を覆うようにマザー基板10(カラーフィルタ基板)に設けられている。
【0024】
本実施形態では、一対のマザー基板10,12を、切断ラインL,L´で切断することで、複数のセル26を切り出す。詳しくは、一対のマザー基板10,12とともに、一対の凸条部22の間で、シール16及び低透湿層20を切断する。切断プロセスでは、凸条部22は切断しない。こうして、個々の表示装置を切り出す。
【0025】
なお、個々の表示装置において、外部との電気的接続のために、TFT基板がカラーフィルタ基板から突出するようにマザー基板10のみを切断する位置の構造は、図5に示すようになっている。すなわち、切断ラインL´を挟む両側のうち、側(図5で左側)のみに、シール16、低透湿層20及び凸条部22が積層されて液晶材料18を封止しており、側(図5で右側)では、一対のマザー基板10,12の間に何も設けられていない。この構造を有する部分では、切断ラインL´でマザー基板10を切断するが、マザー基板12は切断しない。こうすることで、カラーフィルタ基板からTFT基板が突出する構造が得られる。
【0026】
本実施形態によれば、凸条部22を形成することでシール16を薄くすることができる。シール16を薄くすることで、シール16の透湿性によるシール16からの水分浸入を減少させることができる。また、低透湿層20があることによっても、同様に、シール16を薄くすることができ、シール16の透湿性によるシール16からの水分浸入を減少させることができる。さらに、シール16のみならず低透湿層20も切断することで、低透湿層20の切断面が露出する。そのため、シール16の露出面を小さくすることができ、この点からもシール16からの水分浸入を減少させることができる。
【0027】
上記製造方法によって得られた表示装置は、間隔をあけて配置された一対の基板28,30を有する。図6に示すように、基板28は、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板である。基板28には、複数色の着色層32を含むカラーフィルタ34と、ブラックマトリクス36が形成されている。
【0028】
基板30は、薄膜トランジスタが形成されたTFT基板である。図7は、基板30に形成された回路を示す図である。回路は、共通電極CT及び画素電極PXを有し、画素電極PXへの信号を薄膜トランジスタTFTによって制御するようになっている。画素電極PXへは、信号線DLから信号が入力される。
【0029】
図1に示すように、一対の基板28,30の間で、シール16が空間14を区画する。シール16で区画された空間14には、画像を表示するための素子(例えば液晶材料18)が配置される。シール16と積層して、シール16よりも透湿性が低い材料からなる低透湿層20が配置されている。シール16は、低透湿層20と基板30の間に配置されている。一対の基板28,30の間には、一体化していたシール16及び低透湿層20が切断されてそれぞれの端面が露出する。
【0030】
一対の基板28,30の少なくとも一方には、シール16の長さに沿って延びる凸条部22が、シール16及び低透湿層20に重なる位置に形成されている。凸条部22は、カラーフィルタ基板にカラーフィルタの一部と同じ材料で同じ厚みで形成された層を含む。低透湿層20は、凸条部22を覆うようにカラーフィルタ基板に設けられている。その他の構成は、上述した製造方法の説明から自明な内容を含む。
【0031】
本実施形態によれば、凸条部22があることでシール16を薄くすることができる。これにより、シール16の透湿性によるシール16からの水分浸入を減少させることができる。また、低透湿層20があることによっても、同様に、シール16を薄くすることができ、シール16の透湿性によるシール16からの水分浸入を減少させることができる。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 マザー基板、12 マザー基板、14 空間、15 表示領域、16 シール、18 液晶材料、20 低透湿層、22 凸条部、24 光透過性層、26 セル、28 基板、30 基板、32 着色層、34 カラーフィルタ、36 ブラックマトリクス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて配置された一対の基板と、
前記一対の基板の間で空間を区画するシールと、
前記空間に配置されて画像を表示するための素子と、
前記シールと積層して配置され、前記シールよりも透湿性が低い材料からなる低透湿層と、
を有し、
前記一対の基板の少なくとも一方には、前記シールの長さに沿って延びる凸条部が、前記シール及び前記低透湿層に重なる位置に形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置において、
前記一対の基板の間には、前記シール及び前記低透湿層の端面が露出することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された表示装置において、
一方の前記基板は、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板であり、
他方の前記基板は、薄膜トランジスタが形成されたTFT基板であり、
前記凸条部は、前記カラーフィルタ基板に前記カラーフィルタの一部と同じ材料で同じ厚みで形成された層を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載された表示装置において、
前記低透湿層は、前記凸条部を覆うように前記カラーフィルタ基板に設けられ、
前記シールは、前記低透湿層と前記TFT基板の間に配置されていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
一対のマザー基板の間に、画像を表示するための素子を配置するための複数の空間をシールによって区画する工程と、
前記一対のマザー基板を切断することで複数のセルを切り出す工程と、
を含み、
前記シールは、隣同士の前記空間の間の領域を埋めるように配置され、
前記シールには、隣同士の前記空間の間の前記領域に、前記シールよりも硬くて透湿性が低い材料からなる低透湿層が積層され、
前記一対のマザー基板の少なくとも一方には、隣同士の前記空間の間の前記領域に、前記シールの長さに沿って延びて間隔をあけて配置された一対の凸条部が、前記シール及び前記低透湿層に重なる位置に形成され、
前記一対のマザー基板を切断する工程では、前記一対のマザー基板とともに、前記一対の凸条部の間で、前記シール及び前記低透湿層を切断することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載された表示装置の製造方法において、
一方の前記マザー基板は、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板であり、
他方の前記マザー基板は、薄膜トランジスタが形成されたTFT基板であり、
前記一対の凸条部は、前記カラーフィルタ基板に前記カラーフィルタの一部と同じ材料で同じ厚みで形成された層を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された表示装置の製造方法において、
前記低透湿層は、前記凸条部を覆うように前記カラーフィルタ基板に設けられ、
前記シールは、前記低透湿層と前記TFT基板の間に配置されていることを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92612(P2013−92612A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233832(P2011−233832)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】