説明

表示装置及び乗り物用表示機器

【課題】 表示装置の表示パネルが湾曲形状でなく平面形状でも、表示装置の表面での映り込み現象を抑制し、表示面内で均一な表示が可能な、観察者が見易い表示装置、及び乗り物用表示機器を提供する。
【解決手段】 液晶表示装置30は、平面形状の液晶パネル32と、観察者側が所定の楕円12に沿って水平方向に凹状に湾曲した最表面11を有する透明構造体31が、液晶パネル32の表示面側に配置され、楕円12の2つの焦点C1、C2に観察者21、22が位置するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置に関するものである。特に、自動車、電車、船舶、または航空機等の乗り物に搭載され、速度等の運転に関する情報、地図や案内等の情報、または映画等の娯楽映像の表示を行なう表示装置を備えた乗り物用表示機器に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のブラウン管に代わって、液晶、エレクトロルミネセンス、プラズマ、フィールドエミッション等の原理を利用した薄型で平面形状の表示パネルを有する新しい表示装置が多く使用されるようになった。これらの新しい表示装置の代表である液晶表示装置は、薄型及び軽量の特徴を有することから、例えば、乗り物用表示機器として、運転者向けに自動車の速度計やナビゲーションシステムの表示装置として多く用いられている。また、自動車、航空機等の乗り物の中で、搭乗者向けにDVD(Digital Versatile Disc)等の映像媒体に記録された娯楽映像を表示する用途にも用いられている。
【0003】
一般に、液晶表示装置は、一対の平面形状のガラス基板間に、流動性のある液晶が封入され、両ガラス基板の各外側に偏光板が貼付された液晶パネル(表示パネルに該当)と、この背面にバックライトとが配置されて構成されている。液晶パネルは、少なくとも、一方のガラス基板の内側(液晶側)には画素電極が形成され、液晶に印加される電圧により液晶分子の方向が変わり、液晶パネルの透過率が制御される。カラー表示の可能な液晶表示装置の場合は、一方のガラス基板の内側に赤、緑、青等のカラーフィルタが設けられている。液晶表示装置の詳細については、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0004】
自動車、電車、船舶、または航空機等の乗り物に搭載される乗り物用表示機器においては、乗り物内に入る太陽光等の外光や、車内の照明が表示面で反射して、観察者の視界に入り、画像が見難くなる映り込み現象が発生する。この映り込み現象を抑制するために、表示面の表面を粗面化(アンチグレア)処理する、或いは、表示面の表面に誘電体薄膜等を形成した反射防止層が設けられる。
【0005】
しかしながら、液晶表示装置に限らず、これらの新しい平面形状の表示パネルを有する表示装置が、乗り物用表示機器の表示部分として乗り物に搭載される場合、季節、時刻、場所等の環境条件によっては、上記の表示面の表面の粗面化や、反射防止層の形成だけでは外光等の映り込み現象を充分に抑制することは出来なかった。
【0006】
そこで、柔軟なプラスチック基板と自己支持性のある液晶とを用いて作製され、円に沿って凹状に湾曲した表示面を有する液晶表示装置が提案されている(特許文献1)。この液晶表示装置は、観察者を中心とする円に沿った表示面を備えている。これにより、表示面で反射する外光等は全て観察者の視界から外れることとなるため、外光等の映り込み現象を抑制することが出来る。即ち、1名の観察者が、液晶表示装置の正面に位置する場合には、特許文献1に記載の液晶表示装置は、映り込み現象の高い抑制効果を奏する。
【0007】
また、柔軟性を有する薄いガラス基板またはプラスチック基板を用いて作製され、楕円に沿って凹状に湾曲した表示面を有する液晶表示装置が提案されている(特許文献2、3)。特許文献2の液晶表示装置では、表示面の形状である楕円の2つの焦点位置にそれぞれ観察者が配置されている。
【0008】
楕円の特徴として、楕円の一方の焦点以外を通過する外光は、楕円の表示面で他方の焦点以外の方向に反射するので、2つの焦点位置に観察者がいれば、2名の観察者のそれぞれが、焦点を通過する外光の遮光機能を果たして、映り込み現象を抑制することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−3650号公報
【特許文献2】特開2008−309813号公報
【特許文献3】特開2004−126197号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「カラーTFT液晶ディスプレイ」、SEMIスタンダードFPDテクノロジー部会編、共立出版株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来技術においては、例えば、液晶表示装置の場合、液晶パネルは、一対の透明基板を貼り合わせた後に、円または楕円に沿って湾曲させるために、湾曲に伴って、液晶層厚(セルギャップ)が変化し、液晶パネルの表示面内で液晶層厚が不均一になるため、均一な表示が困難であるという問題点があった(特許文献3参照)。また、液晶パネルを湾曲の形状にするための製造工程が増加する上、湾曲の形状にも製造上の制約があった。
【0012】
また、薄いガラス基板を用いて表示パネルを作製した場合には、表示装置に衝撃が加わった際に、薄いガラス基板が破損しやすいという問題点があった。特に、様々な振動を受ける乗り物用表示機器では大きな問題点であった。
【0013】
この発明は、上記の様な問題点を解決するためになされたものであり、表示装置の表面での映り込み現象を抑制し、表示面内で均一な表示が可能な、観察者が見易い表示装置、及び乗り物用表示機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の表示装置は、表示面が平面形状の表示パネルと、観察者側が所定の楕円または円に沿って水平方向に凹状に湾曲した最表面を有する透明構造体が、表示パネルの表示面側(観察者側)に配置され、楕円または円の焦点位置に観察者が配置されているものである。
【0015】
また、本発明の表示装置は、表示面が平面形状の表示パネルと、観察者側が所定の楕円体または球体に沿って水平方向及び垂直方向ともに凹状に湾曲した最表面を有する透明構造体が、表示パネルの表示面側に配置され、楕円体または球の焦点位置に観察者が配置されているものである。
【0016】
また、本発明の乗り物用表示機器は、観察者側が上述のような所定の形状に沿って凹状に湾曲した最表面を有する透明構造体を有する表示装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表示装置は、観察者側が所定の形状に沿って凹状に湾曲した最表面を備えているので、映り込み現象を効果的に抑制することが出来る。また、表示パネル自体は平面形状であるので、表示パネルを湾曲形状に加工する必要がなく、表示面内で均一な画像を表示することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液晶表示装置と、観察者との位置関係を模式的に示す上面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る液晶表示装置と、観察者との位置関係を模式的に示す上面図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る液晶表示装置の構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態4に係る液晶表示装置と、観察者との位置関係を模式的に示す上面図である。
【図5】本発明の実施の形態5に係る乗り物用表示機器の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の表示装置及び乗り物用表示機器についての実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施の形態を説明するための各図において、同一符号は、同一または相当部分を示しているので、原則として重複する説明は省略する。
【0020】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1における液晶表示装置と、観察者との位置関係を模式的に示す上面図である。
【0021】
はじめに、図1を用いて、観察者側が所定の楕円に沿って湾曲した最表面を有する液晶表示装置30の構成について説明する。本実施の形態1に係る液晶表示装置30は、透明構造体31、液晶パネル32、及びバックライト33等で構成される。液晶パネル32は、平面形状のガラス等からなる透明基板34、35と、両透明基板34、35に挟持された液晶38と、各透明基板34、35の外側の面にそれぞれ貼り付けられた偏光板36、37とで構成される。液晶パネル32は自発光しないので、バックライト33が、液晶パネル32の背面に配置される。透明構造体31は、観察者側の偏光板36の表面に、透明な接着材料39にて貼り付けられている。透明構造体31の観察者側の最表面11は、所定の楕円12に沿って横(水平)方向に湾曲した形状であるが、透明構造体31を側面から見た縦(上下)方向の断面形状は湾曲していない。また、液晶パネル32の表示面は平面形状である。
【0022】
透明基板34、35としては、厚さ0.5〜1.0mm程度のガラス基板が用いられ、2枚の透明基板34、35の内側(液晶38側)には、カラーフィルタ、信号配線、画素電極、配向膜等(何れも図示せず)が配置されている。本発明では、特に湾曲しやすい薄いガラス基板34、35を使用する必要はない。
【0023】
観察者側の偏光板36と透明構造体31は、屈折率の違いから生じる界面での反射を抑制するために、屈折率が略同じ1.4〜1.7の範囲のものが用いられる。さらに、界面に空気層が入らないように接着材料39で密着して貼り合わさられる。この、この接着材料39の屈折率も、偏光板36と透明構造体31の屈折率と略同じ1.4〜1.7の範囲のものが用いられる。透明構造体31はアクリル、ポリカーボネート等の透光性樹脂、またはガラス等を所定の形状に加工したものが用いられる。また接着材料39は、透明な紫外線硬化性のアクリル系接着剤や、アクリル系両面粘着シート等が用いられる。
【0024】
次に、本実施の形態1における液晶表示装置30の映り込み現象を抑制する作用、効果を説明する。液晶表示装置30は、所定の楕円12に沿って凹状に湾曲した最表面11を有する透明構造体31が、平面形状の液晶パネル32の表面に貼り付けられている。観察者側の最表面11が形成する楕円12の2つの焦点C1、C2の位置に、2つの座席の頭部部分(ヘッドレスト部)が設けられ、2名の観察者21、22の頭部が位置することができる。2名の観察者21、22は、この2つの焦点C1、C2の位置から、液晶表示装置30を観察する場合には、2名の観察者21、22の左右、またはこの間から入射する外光の最表面11での反射光は、2名の観察者21、22の視界には入らない。これは、楕円12の特性として、一方の焦点C1を通過して、楕円12の最表面11で反射する外光L2は、他方の焦点C2方向に反射するためである。
【0025】
図1では、外光L1が観察者21の左から入射する場合を示すが、外光L1は最表面11の位置R1において反射し、観察者22の右側方向へ反射する。一方、焦点C1の位置に観察者21または座席のヘッドレスト部があれば、焦点C1の位置の観察者21または座席のヘッドレスト部が焦点C1を通過する外光L2の遮光機能を果たして、映り込み現象を抑制することが出来る。同様な原理で、図示はしていないが、観察者22の右側から入射する場合の反射光は、観察者21の左側方向へ反射する。また、2名の観察者21、22の間から入射する場合の反射光は、2名の観察者21、22の間の方向へ反射する。従って、2名の観察者21、22の方向には反射光は反射しないので、外光等の映り込み現象を抑制することが出来る。
【0026】
すなわち、外光等の液晶表示装置30の最表面11での反射光が、焦点C2の位置の観察者22の視界に入る場合は、焦点C1を通って最表面11で反射する外光L2のみである。しかしながら、焦点C1の位置にはもう1名の観察者21がいるので、観察者21によって外光L2は遮光され、最表面11に入射しない。外光L2とは異なる方向から焦点C1を通って最表面11に入射する場合も、同様に、当該外光は観察者21によって遮光される。
【0027】
また、観察者21が焦点C1の位置にいない場合であっても、自動車等の乗り物の座席のヘッドレスト部の位置が、2つの焦点C1、C2の位置にある構成とすれば、焦点C1を通る外光L2は、座席のヘッドレスト部によって遮られるので、焦点C1を通る外光L2の液晶表示装置30の最表面11への入射を抑制することが出来る。
【0028】
一般的な大きさの自動車(普通乗用車、軽乗用車等)、航空機、或いは電車等の乗り物では、隣接する座席のヘッドレスト部の間の距離は50cmから100cmの範囲内である。従って、液晶表示装置30の最表面11が形成する楕円12の2つの焦点C1、C2の焦点距離D1は、図1の液晶表示装置30を搭載する乗り物の座席間距離に合わせて、50cmから100cmの所定の焦点距離D1に設定する。更に、液晶表示装置30の最表面11が形成する楕円12の短軸半径D2を、液晶表示装置30を搭載する乗り物の隣接する座席のヘッドレスト部を結ぶ線と、液晶表示装置30の最表面11位置との間の距離に設定する。即ち、自動車であれば、前部座席とダッシュボードやインパネの中央付近或いはセンターコンソール部までの距離、及び、後部座席と前部座席間のコンソールボックス部や前部座席間の天井部までの距離である。
【0029】
航空機、電車であれば、観察者の座席と前部座席背面部との距離は、50cmから100cmの範囲内であり、液晶表示装置30の最表面11が形成する楕円12の短軸半径D2を、この範囲内の所定の距離に設定する。この様な値に各々設定された焦点距離D1、及び短軸半径D2を有する楕円12に沿った凹状に、液晶表示装置30の最表面11を設定することによって、乗り物用表示機器として液晶表示装置30を搭載する場合に、高い映り込み抑制効果が得られる。
【0030】
実施の一例として、最表面11の形状を規定する楕円12の焦点間距離D1を80cm、楕円短軸半径D2を60cmとして作製した液晶表示装置30を、左右の後部座席のヘッドレスト部の間の距離を、この楕円12の焦点距離D1に等しい80cmである普通乗用車の前部座席間の天井部に設置して、そこから60cm後方の左右の後部座席から観察したところ、外光等の映り込み現象が発生せず、見易い画像表示を実現することが出来た。また、液晶パネル32自体は平面形状であるので、表示面内で均一な画像を表示することが出来た。
【0031】
また、液晶パネル32は、平面形状であるので、通常品が使用でき、凹状に湾曲した最表面11を有する透明構造体31を液晶パネル32の表示面側に貼るだけでよく、液晶表示装置30の製造も容易である。
【0032】
実施の形態2.
実施の形態1では、上面から見て、所定の楕円に沿って横(水平)方向に凹状に湾曲した表面を有する透明構造体31が、平面形状の液晶パネル32の表示面に貼り付けられているが、本実施の形態2では、所定の円に沿って水平方向に凹状に湾曲した表面を有する透明構造体31が、平面形状の液晶パネル32の表示面に貼り付けられた液晶表示装置30である。
【0033】
図2は、本実施の形態2の液晶表示装置と、観察者との位置関係を模式的に示す上面図である。液晶パネル32の観察者側偏光板の表面に、所定の円に沿って水平方向に凹状に湾曲した最表面11を有する透明構造体31が貼り付けられている。本実施の形態2の場合、最表面11の形状を規定する円13の中心C3の位置にいる1名の観察者23に対して、外光L3の最表面11の位置R1での反射光の映り込み抑制効果が得られる。なお、本実施の形態2において、透明構造体31を側面から見た縦(上下)方向の断面形状は湾曲していない。
【0034】
実施の一例として、最表面11の形状を規定する円13の半径を60cmとして作製した液晶表示装置30を、普通乗用車のインパネ部に設置して、そこから60cm後方の運転席から観察したところ、外光等の映り込み現象が発生せず、見易い画像表示を実現することが出来た。また、液晶パネル32自体は平面形状であるので、表示面内で均一な画像を表示することが出来た。
【0035】
なお、円13は、実施の形態1における楕円12の2つの焦点距離D1が0で、楕円12の2つの焦点C1、C2が一致して、円13の中心C3となった楕円12の特殊な場合と見なすことができる。
【0036】
実施の形態3.
実施の形態1では、所定の楕円12に沿って水平方向に凹状に湾曲した表面を有する透明構造体31が、平面形状の液晶パネル32の表示面に貼り付けられているが、本実施の形態3では、所定の回転楕円面14に沿って、水平方向だけでなく、側面から見て、縦(上下)方向も凹状に湾曲した表面を有する透明構造体31が、平面形状の液晶パネル32の表示面に貼り付けられている。ここで、回転楕円面14とは、長軸D1を回転軸として楕円12を回転させてなる回転楕円体の表面を示す。
【0037】
図3は、本実施の形態3の液晶表示装置30と、観察者23との位置関係を模式的に示す縦断面図である。液晶パネル32の観察者側の偏光板の表面に、所定の回転楕円面14に沿って凹状に湾曲した最表面11を有する透明構造体31が貼り付けられている。なお、透明構造体31の最表面11の形状を規定する回転楕円面14の2つの焦点C1、C2を通る位置での上面図は図1と同じである。
【0038】
実施の形態1の場合は、図1において、側面から見た縦(上下)断面では、一方の焦点C1に位置する観察者21の頭上を通って液晶表示装置30の最表面11の位置R1で反射する外光は、もう一方の焦点C2に位置する観察者22の目に入る場合があった。しかしながら、本実施の形態3の場合は、図3に示すように、観察者21(図3では観察者22の奥側)の頭上を通って反射位置R1で反射する外光L4は、もう一方の観察者22(図3では手前側)の下方に抜ける。このように本実施の形態3では、各焦点C1、C2の上下方向から入射した外光についても、液晶表示装置30の最表面11での反射光は観察者21、22の目に入らず、映り込みは発生しない。
【0039】
実施の一例として、最表面11の形状を規定する回転楕円体の焦点間距離を80cm、楕円短軸半径を60cmとして作製した液晶表示装置30を、運転席と助手席のヘッドレスト部の間の距離が80cmである普通乗用車のダッシュボード部に設置して、そこから60cm後方の運転席と助手席から観察したところ、外光等の映り込み現象が発生せず、見易い画像表示を実現することが出来た。また、液晶パネル32自体は平面形状であるので、表示面内で均一な画像を表示することが出来た。
【0040】
本実施の形態3の場合、頭上から入る外光に対しても映り込み抑制効果が得られるので、サンルーフ付き自動車や、天井に照明を有する飛行機や電車の液晶表示装置の映り込み抑制に特に有効である。
【0041】
また、回転楕円体でなく所定の球面に沿って水平方向及び垂直方向に凹状に湾曲した最表面11を有する透明構造体31が、平面形状の液晶パネル32の表示面に貼り付けられている液晶表示装置30でも、最表面11の形状を規定する球の中心に位置する1名の観察者に対して、観察者の左右のみならず、上下より入る外光の映り込みを抑制することができる。
【0042】
従来の液晶パネル32自体を所定の方向に湾曲させて映り込み抑制機能を持たせる場合には、本実施の形態3のように表面を3次元曲面に形成することは非常に困難であった。本発明では映り込み抑制機能を有する透明構造体31を、液晶パネル32とは別体にすることで、液晶表示装置30の最表面11の形状を回転楕円面14または球面のような3次元形状にすることが容易にできる。
【0043】
実施の形態4.
上記の実施の形態1または実施の形態3は、液晶表示装置30が2名の観察者21、22の略中央の前方に配置される場合に関するものであったが、映り込み抑制の観点からは、必ずしも観察者21、22の略中央に配置する必要はない。図4は液晶表示装置30を左側の観察者21の前方に配置する場合の、液晶表示装置30の最表面11と観察者21、22との位置関係を模式的に示す上面図である。
【0044】
図4に示すように、液晶表示装置30の最表面11が、楕円13、または回転楕円面14に沿った形状であれば、観察者21の前方に配置してもよい。図1に示したように、液晶表示装置30の最表面11の形状が焦点C1、C2の中央にある短軸D2に対して左右対称でなくとも、同様に映り込み現象を抑制することができる。もちろん、液晶表示装置30を右側の観察者22の前方に配置する場合も同様である。
【0045】
なお、上記の実施の形態1〜4においては、透明構造体31の最表面11には、映り込み現象をさらに抑制するために反射防止層を設けている。この理由は、外光等が観察者に当たり反射する場合があるためである。例えば、観察者が装着した眼鏡等で外光等が反射する場合、その反射光が最表面11で再度反射して観察者自身、または他の焦点に位置するもう一方の観察者の視界に入ることがあるためである。そこで、透明構造体31の最表面11に反射防止層を設ける、または粗面化(アンチグレア)処理を行なうことにより、こうした弱い映り込み現象まで抑制することが出来る。
【0046】
実施の形態5.
図5は、本実施の形態5に係る乗り物用表示機器の構成を示す概略図である。本実施の形態5の乗り物用表示機器は、娯楽映像の表示を行なう自動車用表示機器40であり、実施の形態1に記載した所定の楕円に沿って凹状に湾曲した最表面11を有する液晶表示装置30を備えている。上記楕円を規定する2つの焦点は、自動車用表示機器40が搭載される左右の座席のヘッドレスト部に位置する。また、DVD等の映像媒体の再生制御部41と、液晶表示装置30と映像媒体再生制御部41とを接続する接続アーム42とから構成されている。さらに、接続アーム42は、液晶表示装置30の最表面11の傾斜角度43を調整できる様に、可動式に構成されている。映像媒体再生制御部41には、観察者が自動車用表示機器40を制御する制御ボタン44、及び映像媒体を挿入する出入口45等が配置されている。
【0047】
実施の一例として、本実施の形態5の自動車用表示機器40を、自動車内の前部座席間の天井部に、図5の概略図とは天地を逆にして取り付け、液晶表示装置30の傾斜角度43を調整して、自動車内の左右の後部座席から液晶表示装置30の最表面11に映し出される映像を観察したところ、季節、時刻及び場所等の環境条件によらず、映り込み現象の無い見易い画像を得ることが出来た。即ち、自動車周囲の環境によらず、外光等の表示面への映り込み現象を効果的に抑制することができた。
【0048】
本実施の形態5の自動車用表示機器40は、DVD等の娯楽映像媒体の再生装置のみに限られない。地図や案内等の情報を表示するナビゲーションシステム、音楽情報等を表示するカーオーディオ、テレビ等に適用できる。
【0049】
また、自動車に限らず、電車、船舶、または航空機等の車内において左右の座席から観察する乗り物用表示機器に本発明を適用することにより、映り込み現象の無い、見易い乗り物用表示機器を提供することができる。
【0050】
また、実施の形態1〜5では、表示装置として液晶表示装置の場合を示したが、エレクトロルミネセンス、プラズマ、フィールドエミッション等の原理を利用した表示パネルを有する表示装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0051】
11 最表面、12 楕円、13 円、14 回転楕円面、21〜23 観察者、
30 液晶表示装置、31 透明構造体、32 液晶パネル、33 バックライト、
34、35 透明基板、36、37 偏光板、
40 乗り物用表示機器、41 映像媒体再生制御部、42 接続アーム、
43 傾斜角度、44 制御ボタン、45 映像媒体出入口、
C1、C2 楕円または回転楕円体の焦点、C3 円の中心、
D1 楕円または回転楕円体の焦点間距離、D2 楕円または回転楕円体の短軸距離、
L1〜L4 外光、R1 反射位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面が平面形状の表示パネルと、
観察者側が所定の楕円に沿って水平方向に凹状に湾曲した最表面を有する透明構造体が、前記表示パネルの表示面側に配置され、
前記楕円の焦点位置に前記観察者が位置することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
表示面が平面形状の表示パネルと、
観察者側が所定回転楕円体の回転楕円面に沿って水平方向及び垂直方向ともに凹状に湾曲した最表面を有する透明構造体が、前記表示パネルの表示面側に配置され、
前記回転楕円体の焦点位置に前記観察者が位置することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記透明構造体の前記最表面が、前記楕円、または前記回転楕円面を規定する前記回転楕円体が有する2つの焦点間の距離が、50cmから100cmの範囲内にあり、且つ、短軸半径が50cmから100cmの範囲内にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
表示面が平面形状の表示パネルと、
観察者側が所定の円に沿って水平方向に凹状に湾曲した最表面を有する透明構造体が、前記表示パネルの表示面側に配置され、
前記円の中心位置に前記観察者が位置することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
表示面が平面形状の表示パネルと、
観察者側が所定の球の球面に沿って水平方向及び垂直方向ともに凹状に湾曲した最表面を有する透明構造体が、前記表示パネルの表示面側に配置され、
前記球の中心位置に前記観察者が位置することを特徴とする表示装置。
【請求項6】
前記透明構造体の前記最表面が、所定の円を規定する円、または球面を規定する球の半径が50cmから100cmの範囲内にあることを特徴とする請求項4または請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示パネルの表面と前記透明構造体の裏面の屈折率が略同じであり、かつ、接着材料が前記屈折率と略同じもので貼り合わされていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記透明構造体の前記最表面の形状を規定する前記所定の楕円または回転楕円体の2つの焦点が、それぞれ、乗り物内における隣接する2つの座席の頭部部分に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の表示装置を備えた乗り物用表示機器。
【請求項9】
前記透明構造体の前記最表面の形状を規定する前記所定の円または球の中心が、前記乗り物内における所定の座席の頭部部分に位置することを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れかに記載の表示装置を備えた乗り物用表示機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−249866(P2010−249866A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96035(P2009−96035)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】