説明

表示装置及び表示方法

【課題】表示された画素の情報に基づいて、画素抜けが発生した領域における画素を補完する表示装置及び表示方法を提供する。
【解決手段】互いに隣接する2つのスイープライン及び表示領域によって形成される補完領域において、スイープライン上に位置しない画素である未描画画素を検出する検出手段11と、補完領域から、少なくとも1つの未描画画素を含む複数の領域に分割した部分補完領域を、極座標形式から直交座標系式に変換して仮想的に算出する算出手段12と、未描画画素を、部分補完領域毎にスイープの中心から半径方向外側へ描画することで未描画画素へ描画の補完を実施する描画手段13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号に変換されたレーダ装置の受信信号を画像として描画する際に発生する画素抜け領域における補完を制御する表示装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、無線信号を送信した後、周囲の反射物体(物標)からの反射波(エコー)を受信し、無線信号の送受信方位及び無線信号の送信からエコーの受信までに要した時間に基づき、物標の位置等を検出する。レーダ装置によって得られた情報を出力する方法として、物標の二次元的な位置や大きさの表示に適するPPI(Plan Position Indicator)方式のレーダ表示器がある。PPI方式では、例えばレーダ装置の位置がレーダ表示器の表示画面上での中心且つ表示開始位置となり、半径方向外側に向かった直線上にレーダ装置のスイープの画像は表示される。直線の表示方位は無線信号の送受信方位に基づき決定され、直線上に表示された物標の位置は無線信号の送信からエコーの受信までに要した時間に基づき決定される。表示器の表示画面上において、スイープは任意の角度単位で表示され、1周することでレーダ装置の回転に追従して受信したエコーを表示することができる。水平面内におけるスイープの方位の変化は、例えば212分の360度とすることができる。しかし、各スイープの表示直線とは接触しない画素が存在し、表示器の表示領域の中心から端部近傍に連れて、いかなるスイープの直線にも属さない画素が増加する。スイープの直線に属さない画素は色が出力されず、その結果画素抜けが発生するという問題がある。画素抜けは、レーダ装置が送信する信号の角度分解能及び距離分解能に依存する。しかし、信号の分解能を上げずに画素抜け問題を解決するために、任意のスイープの表示直線近傍における画素の情報とスイープの表示直線上における画素の情報とを比較して、比較結果に応じて画素抜けを補完する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、画素抜けを判断するために、1画素毎にスイープ上の画素と近傍の画素を比較する画素抜け検出部が必要となり、検出過程も複雑である。検出回路が複雑になれば、回路規模も増大し、処理時間の増加、部品点数の増加、コストアップ及び消費電力の増加等につながるという問題がある。さらに、画素への描画処理も1画素毎に実施するため、補完の処理時間も膨大になり、表示装置への負担も増加するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−352211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を鑑み、本発明は、デジタル信号に変換されたレーダ装置の受信信号を画像として描画する際に発生する画素抜け領域に対し、未描画画素を含む一定の領域毎に補完を制御する表示装置及び表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一様態は、レーダ装置によって供給されるエコー情報に基づき、表示領域の中心から任意の角度に等分割した直線で示されるスイープラインを時計回りに順次スイープすることで、スイープライン上に位置する画素へ、画素に対応するエコー情報を出力し、表示領域に画像を表示する表示装置に関する。すなわち、本発明の様態に係る表示装置は、(イ)互いに隣接する2つのスイープライン及び表示領域によって形成される補完領域において、スイープライン上に位置しない画素である未描画画素を検出する検出手段と、(ロ)補完領域から、少なくとも1つの未描画画素を含む複数の領域に分割した部分補完領域を、極座標形式から直交座標系式に変換して仮想的に算出する算出手段と、(ハ)未描画画素を、部分補完領域毎にスイープの中心から半径方向外側へ描画することで未描画画素へ描画の補完を実施する描画手段とを備えることを要旨とする。
【0007】
本発明の別の様態は、レーダ装置によって供給されるエコー情報に基づき、表示領域の中心から任意の角度に等分割した直線で示されるスイープラインを時計回りに順次スイープすることで、スイープライン上に位置する画素へ、画素に対応するエコー情報を出力し、表示領域に画像を表示する表示装置を制御する表示方法に関する。すなわち、本発明の様態に係る表示方法は、(イ)検出手段が、互いに隣接する2つのスイープライン及び表示領域によって形成される補完領域において、スイープライン上に位置しない画素である未描画画素を検出するステップと、(ロ)算出手段が、補完領域から、少なくとも1つの未描画画素を含む複数の領域に分割した部分補完領域を、極座標形式から直交座標系式に変換して仮想的に算出するステップと、(ハ)描画手段が、未描画画素を、部分補完領域毎にスイープの中心から半径方向外側へ描画することで未描画画素へ描画の補完を実施するステップとを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、デジタル信号に変換されたレーダ装置の受信信号を画像として描画する際に発生する画素抜け領域に対し、未描画画素を含む一定の領域毎に補完を制御する表示装置及び表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る表示装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る未描画画素の概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る部分補完領域の概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る部分補完領域の概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る部分補完領域の概略図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る未描画画素に対して補完を実施するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、装置やシステムの構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な構成は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの構成の異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
また、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(実施の形態)
<表示装置の構成>
本発明の実施の形態に係る表示装置100は、レーダ装置によって供給されるエコー情報に基づき、表示領域の中心から任意の角度に等分割した直線で示されるスイープラインを時計回りに順次スイープすることで、スイープライン上に位置する画素へ、画素に対応するエコー情報を出力し、表示領域に画像を表示する。本発明の実施の形態に係る表示装置100は、図1に示すように、互いに隣接する2つのスイープライン及び表示領域によって形成される補完領域において、スイープライン上に位置しない画素である未描画画素を検出する検出手段11と、補完領域から、少なくとも1つの未描画画素を含む複数の領域に分割した部分補完領域を、極座標形式から直交座標系式に変換して仮想的に算出する算出手段12と、未描画画素を、部分補完領域毎にスイープの中心から半径方向外側へ描画することで未描画画素へ描画の補完を実施する描画手段13とを備える。
【0013】
検出手段11は、図2(b)に示すように、エコー情報がプロットされない画素抜け状態の画素1〜22を検出する。ここで、レーダ情報は直線の集合体として伝送され、極座標(R,θ)で与えられる。極座標で与えられるレーダ情報を画像表示する際は、レーダ情報(R,θ)を次式のような直交座標(x,y)に座標変換し、描画データをプロットする。
【0014】
x=R・sinθ
y=R・cosθ
ただし、
x,y:直交座標
R:原点(0,0)からの距離
θ:Y軸からの角度
通常、レーダ装置のアンテナが1回転することで、レーダ画像における全ての画素の描画データは更新されるのが理想である。しかし、スイープラインは中心からの距離Rに比例して方位方向に広がるため、中心からの距離Rが大きくなると、互いに隣接する第nのスイープライン及び第n+1のスイープラインとの間隔が1画素以上大きくなり、スイープライン上の画素のみプロットされる仕組みの表示装置100にはプロットされない画素が発生する。図2(a)に示すように、表示装置100の表示領域において、表示装置100の中心をスイープラインのプロット開始点として、スイープラインが時計回りに1周スイープした際に、図1の破線の矩形領域の拡大図である図2(b)に示すように、画素1〜22のようなエコー情報がプロットされない画素が発生する。すなわち、画素抜けが発生するのである。
【0015】
算出手段12は、図2に示すように、第nのスイープライン、第n+1のスイープライン及び表示領域で構成される補完領域を、複数の領域すなわち部分補完領域へ仮想的に分割する。部分補完領域は、画素抜けが発生した画素すなわち「未描画画素」を少なくとも1画素以上含む。すなわち、複数の部分補完領域は、画素1〜22のいずれかの画素を少なくとも1画素以上含む。例えば、算出手段12は、図3(b)に示すように、未描画画素1を含む矩形領域、すなわち図4に示す部分補完領域1を構成する画素A1,A2,B1,B2を算出する。つづいて、未描画画素2〜5を含む矩形領域、すなわち図4に示す部分補完領域2を構成する画素B1,B2,C1,C2を算出する。つづいて、画素5〜11を含む矩形領域、すなわち図4に示す部分補完領域3を構成する画素C1,C2,D1,D2を算出する。このようにして、算出部12は、補完領域における未描画画素1〜22が全て含まれるように部分補完領域を仮想的に算出する。
【0016】
図4に示す部分補完領域は、図3(b)に示す画素A1、A2,B1,B2,C1,C2より、矩形の領域としたが、例えば画素A1,A2,B1によって構成される三角形の領域でも構わない。
【0017】
描画手段13は、算出部12が仮想的に算出した部分補完領域が有する未描画画素を、部分領域毎にプロットする。すなわち、描画手段13は、図4に示す部分補完領域1,2,3等が含む未描画画素を順次プロットする。描画手段13が未描画画素へプロットする際は、スイープの時の時系列で古いスイープラインにおける画素情報に基づく。すなわち、描画手段13が、図4に示す未描画画素1をプロットする際、部分補完領域1における第nのスイープライン上の画素の情報を用いる。図5(a)に示すように、描画手段13が、部分補完領域1に含まれる未描画画素1をプロットする際、第nのスイープライン上に位置する画素P[n]1〜P[n]4の画素情報に基づく。また、図5(b)に示すように、描画手段13が、部分補完領域2に含まれる未描画画素1をプロットする際、第nのスイープライン上に位置する画素P[n]4〜P[n]8の画素情報に基づく。なお、画素A1,B1,C1及び画素P[n]1,P[n]4,P[n]8は、それぞれ同一の画素である。
【0018】
このようにして、描画手段13が全ての部分補完領域の未描画画素、すなわち図2及び3に示す画素1〜22をプロットすれば、補完領域に対する補完作業は完了する。描画手段13は、GPU(Graphics Processing Unit)が適用可能である。
【0019】
<未描画画素に対する補完描画方法>
つぎに、本発明の実施の形態に係る表示装置100が、未描画画素に対して画素情報を補完する方法について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0020】
(イ)図6に示すステップS101において、検出手段11は、スイープ時において画素抜けが発生した未描画画素を検出する。
【0021】
(ロ)ステップS102において、算出手段12は、互いに隣接するスイープライン間の表示領域を、未描画画素を少なくとも1つ以上含む複数の画素領域に仮想的に分割し、各分割された領域を表示領域上で決定するために、分割領域を構成する領域情報を画素の位置情報として算出する。
【0022】
(ハ)ステップS103において、描画手段13は、算出手段12が仮想的に分割した複数の領域内に位置する未描画画素を、互いに隣接するスイープラインにおける時系列的に古いスイープライン上の画素情報に基づき、領域毎に順次描画する。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る表示装置100は、補完する際に未描画画素の1画素毎に対して描画による補完処理をするのではなく、少なくとも1画素以上の未描画画素を含む所定の領域に対して描画による補完処理を実施するため、CPUによる描画命令の回数が著しく低下し、描画速度が格段に向上する。また、CPUによる命令が激減することで、ハードウェアへの負担が減り、機械的な寿命も著しく伸びる。
【0024】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は本発明の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0025】
100…表示装置
11…検出手段
12…算出手段
13…描画手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置によって供給されるエコー情報に基づき、表示領域の中心から任意の角度に等分割した直線で示されるスイープラインを時計回りに順次スイープすることで、前記スイープライン上に位置する画素へ、前記画素に対応する前記エコー情報を出力し、前記表示領域に画像を表示する表示装置であって、
前記互いに隣接する2つのスイープライン及び前記表示領域によって形成される補完領域において、前記スイープライン上に位置しない前記画素である未描画画素を検出する検出手段と、
前記補完領域から、少なくとも1つの前記未描画画素を含む複数の領域に分割した部分補完領域を、極座標形式から直交座標系式に変換して仮想的に算出する算出手段と、
前記未描画画素を、前記部分補完領域毎に前記スイープの中心から半径方向外側へ描画することで前記未描画画素へ描画の補完を実施する描画手段
とを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記部分補完領域は、前記互いに隣接する2つのスイープ上の任意の3点によって定まる領域であり、
前記描画手段は、前記互いに隣接する2つのスイープのうち反スイープ方向側の前記スイープ上に位置する画素が有する前記エコー情報に基づき、前記未描画画素を描画することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記部分補完領域は、前記互いに隣接する2つのスイープ上の任意の4点によって定まる領域であり、
前記描画手段は、前記互いに隣接する2つのスイープのうち反スイープ方向側の前記スイープ上に位置する画素が有する前記エコー情報に基づき、前記未描画画素を描画することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
レーダ装置によって供給されるエコー情報に基づき、表示領域の中心から任意の角度に等分割した直線で示されるスイープラインを時計回りに順次スイープすることで、前記スイープライン上に位置する画素へ、前記画素に対応する前記エコー情報を出力し、前記表示領域に画像を表示する表示装置を制御する表示方法であって、
検出手段が、前記互いに隣接する2つのスイープライン及び前記表示領域によって形成される補完領域において、前記スイープライン上に位置しない前記画素である未描画画素を検出するステップと、
算出手段が、前記補完領域から、少なくとも1つの前記未描画画素を含む複数の領域に分割した部分補完領域を、極座標形式から直交座標系式に変換して仮想的に算出するステップと、
描画手段が、前記未描画画素を、前記部分補完領域毎に前記スイープの中心から半径方向外側へ描画することで前記未描画画素へ描画の補完を実施するステップ
とを含むことを特徴とする表示方法。
【請求項5】
前記部分補完領域は、前記互いに隣接する2つのスイープ上の任意の3点によって定まる領域であり、
前記補完するステップは、前記描画手段が前記互いに隣接する2つのスイープのうち反スイープ方向側の前記スイープ上に位置する画素が有する前記エコー情報に基づき、前記未描画画素を描画することを特徴とする請求項4に記載の表示方法。
【請求項6】
前記部分補完領域は、前記互いに隣接する2つのスイープ上の任意の4点によって定まる領域であり、
前記補完するステップは、前記描画手段が前記互いに隣接する2つのスイープのうち反スイープ方向側の前記スイープ上に位置する画素が有する前記エコー情報に基づき、前記未描画画素を描画することを特徴とする請求項4に記載の表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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