説明

表示装置及び表示装置の製造方法

【課題】観察方向にかかわらずカラーシフトの少ない表示品位の良好な表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】散乱能を有し、凹凸面60Sを備えた第1電極60と、
第1電極の凹凸面上に配置された有機活性層62と、
前記有機活性層上に配置された第2電極64と、を備え、
前記有機活性層62は、
発光層62Bと、
発光層と凹凸面との間に配置され、凹凸面を平坦化するような膜厚に形成された導電性有機層62Aと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置及び表示装置の製造方法に係り、特に、自発光性素子を含んで構成される表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が注目されている。この有機EL表示装置は、自発光性素子であることから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0003】
これらの特徴から、有機EL表示装置は、液晶表示装置に代わる、次世代平面表示装置の有力候補として注目を集めている。このような有機EL表示装置は、一対の電極の間に発光機能を有する有機化合物を含む有機活性層を保持した有機EL素子を備えている。このような有機EL素子のうち、一方の電極としてアルミニウムなどの光反射性を有する反射電極を適用し、他方の電極としてITO(Indium Tin Oxide)などの光透過性を有する透明電極を適用した構成の有機EL素子が提案されている。このような構成においては、有機活性層に含まれる発光層から出力された光は、透明電極側から直接出力されるものもあるが、反射電極側に出力された光は、反射電極で反射された後に透明電極側に出力される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−373776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実質的に平坦な反射電極上に発光層を含む有機活性層を積層した構造においては、発光層内の発光点から直接出力された光と反射電極によって反射された後に出力された光とが干渉し、表示装置を観察する方向によって色味が変化するいわゆるカラーシフトを生じてしまい、表示品位の低下を招くおそれがある。
【0005】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、観察方向にかかわらずカラーシフトの少ない表示品位の良好な表示装置及びこの表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の態様による表示装置は、
散乱能を有し、凹凸面を備えた第1電極と、
前記第1電極の凹凸面上に配置された有機活性層と、
前記有機活性層上に配置された第2電極と、を備え、
前記有機活性層は、
発光層と、
発光層と凹凸面との間に配置され、凹凸面を平坦化するような膜厚に形成された導電性有機層と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、
散乱能を有し、凹凸面を備えた第1電極と、
前記第1電極の凹凸面上に配置された有機活性層と、
前記有機活性層上に配置された第2電極と、を備え、
前記有機活性層は、
凹凸面を平坦化するような膜厚に形成された発光層と、
発光層と凹凸面との間に配置され、凹凸面に沿う膜厚に形成された導電性有機層と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この発明の態様による表示装置の製造方法は、
散乱能を有し、凹凸面を備えた第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の凹凸面上に有機活性層を形成する工程と、
前記有機活性層上に第2電極を形成する工程と、を備え、
前記有機活性層を形成する工程は、
前記第1電極の凹凸面上において、選択塗布法により凹凸面を平坦化するような膜厚の導電性有機層を成膜する工程と、
選択塗布法または蒸着法により前記導電性有機層上に発光層を成膜する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、
散乱能を有し、凹凸面を備えた第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の凹凸面上に有機活性層を形成する工程と、
前記有機活性層上に第2電極を形成する工程と、を備え、
前記有機活性層を形成する工程は、
蒸着法により前記第1電極の凹凸面上に導電性有機層を成膜する工程と、
選択塗布法により前記導電性有機層上に凹凸面を平坦化するような膜厚の発光層を成膜する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、観察方向にかかわらずカラーシフトの少ない表示品位の良好な表示装置及びこの表示装置の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0012】
有機EL表示装置1は、図1に示すように、画像を表示する表示エリア102を有するアレイ基板100を備えている。表示エリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PX(R、G、B)によって構成されている。アレイ基板100の少なくとも表示エリア102は、封止体200によって封止されている。
【0013】
また、アレイ基板100は、画素PXの行方向(すなわち図1のY方向)に沿って配置された複数の走査線Ym(m=1、2、…)と、走査線Ymと略直交する列方向(すなわち図1のX方向)に沿って配置された複数の信号線Xn(n=1、2、…)と、有機EL素子40に電源を供給するための電源供給線Pと、を備えている。
【0014】
さらに、アレイ基板100は、表示エリア102の外周に沿った周辺エリア104に、走査線Ymのそれぞれに走査信号を供給する走査線駆動回路107として機能する少なくとも一部と、信号線Xnのそれぞれに映像信号を供給する信号線駆動回路108として機能する少なくとも一部と、を備えている。すべての走査線Ymは、走査線駆動回路107に接続されている。また、すべての信号線Xnは、信号線駆動回路108に接続されている。
【0015】
各画素PX(R、G、B)は、画素回路及びこの画素回路によって駆動制御される表示素子を備えている。図1に示した画素回路は、一例であって、他の構成の画素回路を適用しても良いことは言うまでもない。図1に示した例では、画素回路は、オン画素とオフ画素とを電気的に分離しかつオン画素への映像信号を保持する機能を有する画素スイッチ10と、画素スイッチ10を介して供給される映像信号に基づき表示素子へ所望の駆動電流を供給する駆動トランジスタ20と、駆動トランジスタ20のゲート−ソース間電位を所定期間保持する蓄積容量素子30とを有している。これらの画素スイッチ10及び駆動トランジスタ20は、例えば薄膜トランジスタにより構成され、ここでは、ポリシリコンからなる半導体層を備えた薄膜トランジスタを適用している。
【0016】
駆動トランジスタ20のゲートは、画素スイッチ10のドレイン及び蓄積容量素子30の一端に接続されている。駆動トランジスタ20のソースは、電源供給線P及び蓄積容量素子30の他端に接続されている。
【0017】
表示素子は、自発光素子である有機EL素子40(R、G、B)によって構成されている。すなわち、赤色画素PXRは、主に赤色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、主に緑色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、主に青色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Bを備えている。
【0018】
各種有機EL素子40(R、G、B)は、基本的に同一構成である。
【0019】
(第1実施形態)
図2に示すように、第1実施形態に係る有機EL素子40は、配線基板120上に配置されている。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性の支持基板上に、アンダーコート層やゲート絶縁膜などの各種絶縁層を備える他に、上述した画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、各種配線(走査線、信号線、電源供給線等)などを備えて構成されたものとする。
【0020】
この有機EL素子40は、画素毎PXに独立島状に配置された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され複数の画素PXに共通の第2電極64と、これらの第1電極60と第2電極64との間に保持された有機活性層62と、によって構成されている。
【0021】
第1電極60は、配線基板120上に配置され、陽極として機能する。この第1電極60は、駆動トランジスタ20のドレインに接続されている。この第1電極60は、散乱能を有するように構成されている。
【0022】
すなわち、図2に示した例では、第1電極60は、光反射性を有する反射電極60Rに光透過性を有する透明電極60Tを積層した積層体によって構成されている。反射電極60Rは、例えばアルミニウムによって形成されている。この反射電極60Rの表面は、複数の凹部と凸部とからなる散乱面を構成している。透明電極60Tは、例えばITOによって形成されている。この透明電極60Tは、反射電極60Rの散乱面に沿う膜厚(すなわち略一定の膜厚)に形成されており、透明電極60Tの表面つまり第1電極60の表面は、散乱面の凹凸形状に追随するような凹凸面60Sを構成している。
【0023】
このような第1電極60としては、散乱能を有し、しかも、その表面が凹凸面であるような構成であれば良く、図2に示した構造に限定されない。この実施の形態では、反射電極60Rの膜厚は0.1μmに設定され、また、透明電極60Tの膜厚は0.05μmに設定されている。
【0024】
なお、第1電極60の凹凸面60Sについては、隣接する凸部CV間のピッチ(もしくは隣接する凹部CC間のピッチ)Pは、十分な散乱性能を得るためには、例えば5μm乃至20μm、より好ましくは5μm乃至10μmの範囲内で分布していることが望ましい。
【0025】
また、凹凸面60Sにおいて、凹部CCの底部から凸部CVの頂部までの基板の法線方向に沿った長さ(あるいは、単に凹部CCの深さ、あるいは、単に凸部CVの高さ)Lは、十分な散乱性能を得るためには凹凸面内の最大値として0.3μm以上であることが望ましい。この長さLは、大きいほど高い拡散性能が得られるが、大きすぎると第2電極64とのショートや、発光層での発光効率の低下など、表示に悪影響を及ぼすおそれがあり、3.0μm以下であることが望ましい。この実施の形態では、長さLは、0.5μmに設定されている。
【0026】
有機活性層62は、第1電極60の凹凸面60S上に配置され、少なくとも発光層を含んでいる。この有機活性層62は、発光層以外の層として、例えば、ホール輸送層、ホール注入層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、バッファ層などを含んでも良いし、またこれらを機能的に複合した層を含んでもよい。発光層は、赤、緑、または青に発光する発光機能を有する有機化合物によって形成される。このような有機活性層62のうち、高分子系材料によって形成された有機層は、インクジェット法等の選択塗布法により液状材料を塗布した後に乾燥することによって成膜可能であり、また、低分子系材料によって形成された有機層は、蒸着法により成膜可能である。
【0027】
この実施の形態において、有機活性層62は、発光層62Bと、この発光層62Bと凹凸面60Sとの間に配置されホール輸送機能を有した導電性有機層62Aと、を有している。導電性有機層62Aは、例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)などの導電性高分子によって形成されている。このような導電性高分子は、比較的高い屈折率(n≒2)を有しているため、たとえ厚膜化したとしても、発光層62Bから出力される光への影響は極めて小さい。
【0028】
この導電性有機層62Aは、凹凸面60S上に配置され、凹凸面60Sを平坦化するような膜厚T62Aに形成されている。ここでの膜厚T62Aとは、凹凸面60Sの凹部CCにおける底部からの基板の法線方向に沿った長さである。この導電性有機層62Aは、凹部CCの深さLを埋めるのに十分な膜厚T62Aを有しており、深さLが0.5μmに設定されているのに対して、例えば0.5μm乃至2.0μmの範囲の膜厚T62Aを有するように形成されている。第1実施形態では、膜厚T62Aは、0.7μmに設定されている。
【0029】
なお、凹凸面60Sを平坦化するような膜厚T62Aとは、導電性有機層62Aの表面が実質的に平坦である場合に限らず、凹凸面60Sの凸部CVに対応した膜厚Tvが凹部CCに対応した膜厚Tcより小さく(Tv<Tc)、且つ、これらの膜厚差が凹部CCの深さLと同等もしくはそれ以下(Tc−Tv≦L)となるような分布を持った膜厚であれば良い。つまり、導電性有機層62Aの表面に、凹凸面60Sの起伏よりも小さい僅かな起伏が残っていても良い。
【0030】
発光層62Bは、導電性有機層62A上に配置されている。この発光層62Bは、略一定の膜厚T62Bを有しており、例えば0.1μm乃至0.5μmの範囲の膜厚T62Bを有するように形成されている。第1実施形態では、膜厚T62Bは、0.2μmに設定されている。
【0031】
このような導電性有機層62A及び発光層62Bを含む有機活性層62は、凹凸面60Sから発光層62Bまでの膜厚について、凹凸面60Sの凸部CVに対応して第1膜厚T1を有するとともに、凹部CCに対応して第1膜厚T1よりも厚い第2膜厚T2を有するに構成されている。
【0032】
第2電極64は、実質的に平坦な有機活性層62上に配置され、陰極として機能する。この第2電極64は、表示エリア102の周囲に配置されコモン電位ここでは接地電位を供給する図示しない第2電極電源線に接続されている。
【0033】
また、アレイ基板100は、表示エリア102において、各画素RX(R、G、B)を分離する隔壁70を備えている。隔壁70は、第1電極60の全周縁を覆うように格子状に配置されている。
【0034】
上述したような第1実施形態においては、第1電極60が散乱能を有し且つ凹凸面を備えているため、発光層62B内の発光点から第1電極60に向かう光は、散乱面によって反射・散乱された後に第2電極64側から出力される。また、発光層62Bと第1電極60との間に不均一な膜厚分布を有する導電性有機層62Aが配置されているため、発光点から第1電極60の散乱面を経由して第2電極64側に導かれる光の光路長が経路によって異なるとともに、干渉効果を緩和するのに十分に長くなる。このため、発光点から第2電極64側に直接出力された光との干渉効果が緩和され、観察方向に依存したカラーシフトを抑制することが可能となる。したがって、表示品位を改善することが可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
図3に示すように、第2実施形態に係る有機EL素子40は、第1実施形態と同様に配線基板120上に配置されている。なお、第1実施形態と同一構成については同一参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
すなわち、有機EL素子40は、第1電極60と第2電極64との間に有機活性層62を保持した構成である。
【0037】
第1電極60は、配線基板120上に配置され、散乱能を有し、しかも、複数の凹部CC及び凸部CVからなる凹凸面60Sを備えている。この凹凸面60Sについては、第1実施形態と同様に構成されており、長さLは0.5μmに設定されている。
【0038】
有機活性層62は、第1電極60の凹凸面60S上に配置され、少なくとも発光層を含んでいる。この有機活性層62は、第1実施形態と同様に、発光層62Bと、この発光層62Bと凹凸面60Sとの間に配置されホール輸送機能を有した導電性有機層62Aと、を有している。
【0039】
導電性有機層62Aは、凹凸面60S上に配置され、凹凸面60Sに沿う膜厚(すなわち略一定の膜厚)T62Aに形成されている。この導電性有機層62Aは、例えば0.02μm乃至0.2μmの範囲の膜厚T62Aを有するように形成されている。この第2実施形態では、膜厚T62Aは、0.1μmに設定されている。
【0040】
発光層62Bは、導電性有機層62A上に配置され、凹凸面60Sを平坦化するような膜厚T62Bに形成されている。ここでの膜厚T62Bとは、凹凸面60Sの凹部CCにおける底部からの基板の法線方向に沿った長さである。この発光層62Bは、凹部CCの深さLを埋めるのに十分な膜厚T62Bを有しており、深さLが0.5μmに設定されているのに対して、例えば0.5μm乃至2.0μmの範囲の膜厚T62Bを有するように形成されている。第2実施形態では、膜厚T62Bは、0.7μmに設定されている。
【0041】
なお、凹凸面60Sを平坦化するような膜厚T62Bとは、発光層62Bの表面が実質的に平坦である場合に限らず、凹凸面60Sの凸部CVに対応した膜厚Tvが凹部CCに対応した膜厚Tcより小さく(Tv<Tc)、且つ、これらの膜厚差が凹部CCの深さLと同等もしくはそれ以下(Tc−Tv≦L)となるような分布を持った膜厚であれば良い。つまり、発光層62Bの表面に、凹凸面60Sの起伏よりも小さい僅かな起伏が残っていても良い。
【0042】
このような導電性有機層62A及び発光層62Bを含む有機活性層62は、凹凸面60Sから発光層62Bまでの膜厚について、凹凸面60Sの凸部CVに対応して第1膜厚T1を有するとともに、凹部CCに対応して第1膜厚T1よりも厚い第2膜厚T2を有するに構成されている。
【0043】
上述したような第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、発光層62B内の発光点から第1電極60を経由して第2電極64側に導かれる光と、発光点から第2電極64側に直接出力された光との干渉効果が緩和され、観察方向に依存したカラーシフトを抑制することが可能となる。したがって、表示品位を改善することが可能となる。
【0044】
また、これらの第1実施形態及び第2実施形態においては、反射層と第1電極との間に絶縁膜、例えば反射層の凹凸を平坦化する目的で配置される平坦化層などの絶縁層が不要となる。このため、表示装置としての薄型化及び低コスト化が可能となる。
【0045】
次に、有機EL表示装置の製造方法について説明する。
【0046】
まず、図4Aに示すように、配線基板120上の画素毎に島状の第1電極60を形成する。すなわち、金属膜及び絶縁膜の成膜、パターニングなどの処理を繰り返し、その表面に複数の凹部及び凸部を有する配線基板120を用意する。そして、配線基板120の表面に略均一な膜厚の反射電極60Rを形成した後、反射電極60R上に略均一な膜厚の透明電極60Tを形成する。この反射電極60R及び透明電極60Tについては、一般的はフォトリソグラフィプロセスで形成しても良いし、マスクスパッタ法で形成しても良い。これにより、散乱能を有し、凹凸面60Sを備えた第1電極60が形成される。
【0047】
続いて、第1電極60の凹凸面60S上に有機活性層62を形成する。すなわち、図4Bに示す例では、第1電極60の凹凸面60S上において、選択塗布法により凹凸面60Sを平坦化するような膜厚の導電性有機層62Aを成膜する。つまり、ホール輸送機能を有する高分子系有機材料からなる液状材料を第1電極60に向けて噴射して十分な量を塗布した後、乾燥処理を行って液状材料に含まれる溶媒を除去する。これにより、不均一な膜厚分布を有し且つ表面が略平坦な導電性有機層62Aが形成される。
【0048】
その後、図4Cに示すように、選択塗布法または蒸着法により導電性有機層62A上に発光層62Bを成膜する。これにより、略均一な膜厚分布を有する発光層62Bが形成される。
【0049】
そして、この有機活性層62の実質的に平坦な表面に第2電極64を形成する。これにより、図2に示した構造の有機EL素子40が形成される。
【0050】
一方で、図4Dに示す例では、蒸着法により第1電極60の凹凸面60S上に導電性有機層62Aを成膜する。これにより、略均一な膜厚分布を有する導電性有機層62Aが形成される。つまり、導電性有機層62Aの表面は、凹凸面60と同等の起伏を有している。
【0051】
その後、図4Eに示すように、選択塗布法により導電性有機層62A上に、凹凸面60Sを平坦化するような膜厚の発光層62Bを成膜する。つまり、発光機能を有する高分子系有機材料からなる液状材料を導電性有機層62Aに向けて噴射して十分な量を塗布した後、乾燥処理を行って液状材料に含まれる溶媒を除去する。これにより、不均一な膜厚分布を有し且つ表面が略平坦な発光層62Aが形成される。
【0052】
そして、この有機活性層62の実質的に平坦な表面に第2電極64を形成する。これにより、図3に示した構造の有機EL素子40が形成される。
【0053】
このようにして製造した有機EL表示装置によれば、観察方向にかかわらず略一定の色で均一に発光することが確認された。
【0054】
なお、発明者等は、観察方向によるカラーシフトについて検証した。すなわち、白表示状態での視角の増大に伴う色度の変化を測定した。この測定においては、CIE 1976 UCS色度図を用いて色度を表した。画面の法線方向から観察した場合の色度と、法線に対して80°の視角方向から観察した場合の色度との色度差を|Δv’|及び|Δu’|としたとき、図2に示した第1実施形態に係る有機EL素子については、|Δv’|が0.015であり、また、|Δu’|が0.013であった。また、図3に示した第2実施形態に係る有機EL素子については、|Δv’|が0.017であり、また、|Δu’|が0.015であった。
【0055】
カラーシフトが視認されにくいとされる指標は、|Δv’|が0.02以下であり、また、|Δu’|が0.02以下であるので、本実施の形態によれば、十分にカラーシフトが抑制され、良好な表示品位が得られることを確認できた。
【0056】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置を切断したときの第1実施形態に係る有機EL素子の構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示した有機EL表示装置を切断したときの第2実施形態に係る有機EL素子の構造を概略的に示す断面図である。
【図4A】図4Aは、有機EL素子を形成するための製造工程を説明するための図であり、第1電極を形成する工程を説明するための図である。
【図4B】図4Bは、有機EL素子を形成するための製造工程を説明するための図であり、第1実施形態に係る有機EL素子の導電性有機層を成膜する工程を説明するための図である。
【図4C】図4Cは、有機EL素子を形成するための製造工程を説明するための図であり、第1実施形態に係る有機EL素子の発光層を成膜する工程を説明するための図である。
【図4D】図4Dは、有機EL素子を形成するための製造工程を説明するための図であり、第2実施形態に係る有機EL素子の導電性有機層を成膜する工程を説明するための図である。
【図4E】図4Eは、有機EL素子を形成するための製造工程を説明するための図であり、第2実施形態に係る有機EL素子の発光層を成膜する工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
PX…画素 Ym…走査線 Xn…信号線 P…電源供給線
1…有機EL表示装置 10…画素スイッチ 20…駆動トランジスタ 30…蓄積容量素子 40…有機EL素子 60…第1電極 60S…凹凸面 62…有機活性層 62A…導電性有機層 62B…発光層 64…第2電極
70…隔壁 100…アレイ基板 120…配線基板 200…封止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱能を有し、凹凸面を備えた第1電極と、
前記第1電極の凹凸面上に配置された有機活性層と、
前記有機活性層上に配置された第2電極と、を備え、
前記有機活性層は、
発光層と、
発光層と凹凸面との間に配置され、凹凸面を平坦化するような膜厚に形成された導電性有機層と、を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
散乱能を有し、凹凸面を備えた第1電極と、
前記第1電極の凹凸面上に配置された有機活性層と、
前記有機活性層上に配置された第2電極と、を備え、
前記有機活性層は、
凹凸面を平坦化するような膜厚に形成された発光層と、
発光層と凹凸面との間に配置され、凹凸面に沿う膜厚に形成された導電性有機層と、を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
散乱能を有し、凹凸面を備えた第1電極と、
前記第1電極の凹凸面上に配置された有機活性層と、
前記有機活性層上に配置された第2電極と、を備え、
前記有機活性層は、発光層を含み、凹凸面から発光層までの膜厚について、凹凸面の凸部に対応して第1膜厚を有するとともに、凹凸面の凹部に対応して第1膜厚よりも厚い第2膜厚を有することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記凹凸面の底部から頂部までの長さは、0.3μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記凹凸面の隣接する凸部間のピッチは、20μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記導電性有機層の膜厚は、前記凹凸面の底部から頂部までの長さより大きいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記発光層の膜厚は、前記導電性有機層の膜厚より小さいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光層の膜厚は、前記凹凸面の底部から頂部までの長さより大きいことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項9】
前記発光層の膜厚は、前記導電性有機層の膜厚より大きいことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項10】
散乱能を有し、凹凸面を備えた第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の凹凸面上に有機活性層を形成する工程と、
前記有機活性層上に第2電極を形成する工程と、を備え、
前記有機活性層を形成する工程は、
前記第1電極の凹凸面上において、選択塗布法により凹凸面を平坦化するような膜厚の導電性有機層を成膜する工程と、
選択塗布法または蒸着法により前記導電性有機層上に発光層を成膜する工程と、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項11】
散乱能を有し、凹凸面を備えた第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の凹凸面上に有機活性層を形成する工程と、
前記有機活性層上に第2電極を形成する工程と、を備え、
前記有機活性層を形成する工程は、
蒸着法により前記第1電極の凹凸面上に導電性有機層を成膜する工程と、
選択塗布法により前記導電性有機層上に凹凸面を平坦化するような膜厚の発光層を成膜する工程と、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【公開番号】特開2008−235605(P2008−235605A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73619(P2007−73619)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率有機デバイスの開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】