説明

表示装置及び電子機器

【課題】高コントラストな表示特性を得ようとすると保持容量素子のサイズが大きく高精細化できない。
【解決手段】書込みトランジスターと駆動トランジスターとを備え、画素電極に対して表示画像に応じた電位をデータ線から安定して供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、及び当該表示装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動ディスプレー(Electrophoresis Display、以下「EPD」と表記)などのメモリー性(記憶性)を持った表示素子を用いた表示装置は、応答速度は遅いものの、電源を切ったあとも同じ表示状態を保持し続けるため、紙の印刷物にかわる画像の表示手段として、電子ブック・電子ポスター・電子チラシなどの分野で普及が始まっている。これらの表示装置において、表示コントラストなどの表示性能を高めるためには、画素ごとに配置形成され、薄膜トランジスターなどのアクティブ素子を用いた画素回路で表示素子を駆動することが有効である。本明細書では、このような画素回路が形成された基板をアクティブマトリックス基板と称する。
【0003】
ところで、アクティブマトリックス基板に形成される画素回路の具体的な構成としては、例えば前述した特許文献1における図5に記載されているように、1トランジスター1コンデンサーの画素回路を用いるのが一般的である。しかしながら、このような画素回路が形成されたアクティブマトリックス基板によって、応答速度の遅い表示素子を駆動する場合、高精細化の妨げとなった。すなわち、表示シーケンスで画素電極に所望の電圧(電位)を印加しても、アクティブ素子がオフ(OFF)して高インピーダンス状態となった後、表示素子内の電荷の移動によって画素電極の電圧(電位)が低下するため、本来の表示状態まで至らない書込み不足となってコントラストの低下をまねく。この電圧(電位)低下(書込み不足)を防止するためには、コンデンサーの容量(保持容量)を大きくする必要がある。この結果、コンデンサーの面積を大きくしなければならず、高精細化の妨げとなっているのである。
【0004】
この課題の解決策として、例えば、特許文献2に開示されているように画素回路にCMOSのSRAM構成を用いたメモリー回路を設け、表示シーケンス中、画素電極に対して所望の電位が安定して供給されるように構成すれば、このような不具合は生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3719172号公報
【特許文献2】特開2003−84314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなメモリー回路を設けると、トランジスターの数が多くなるため、やはり高精細化が難しくなるという課題がある。また、CMOSプロセスを必要とするので、NMOSまたはPMOSプロセスで製造する場合と比較してコストが高くなるという課題がある。従って、メモリー性を有する表示素子を用いた表示装置(例えば、EPD)において、高精細であってコントラストなどの表示性能の低下が抑制された高品質の表示装置を、できるだけコストが高くならない技術で提供することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]複数の走査線と、前記複数の走査線と交差する複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線の各交差部に対応して設けられた画素毎に配置形成された画素回路と、を備えた表示装置であって、前記画素回路は、画素電極と、第1トランジスターと、第2トランジスターとを有し、前記第1トランジスターは、ゲート電極が前記走査線に、ソース電極またはドレイン電極のうち一方が前記データ線に、他方が前記第2トランジスターのゲート電極に、それぞれ電気的に接続され、前記第2トランジスターのソース電極またはドレイン電極のうち、一方が前記データ線に、他方が前記画素電極にそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、走査線とデータ線の電圧を制御することによって、第1トランジスターによって第2トランジスターのオンオフを制御するとともに、データ線の電圧を制御することによって、画素に表示する画像に応じた電圧を、第2トランジスターを介して画素電極に安定して印加することができる。これにより、表示素子内の電荷の移動が発生しても、第2トランジスターによってデータ線から電荷を安定して供給できるので、保持容量がなくてもコントラストの低下が抑えられ表示性能の低下が抑制される。また、画素回路を構成するトランジスターの数は2つで済むので、コスト上昇を抑制するとともに高精細化が可能である。また、電荷を供給する電位配線をデータ線と共用することができるので、さらに高精細化が実現できる。
【0010】
[適用例2]上記表示装置であって、前記第1トランジスターがオンして、前記第2トランジスターがオンまたはオフするいずれかの電圧が、すべての前記画素回路における前記第2トランジスターのゲート電極にデータ線を介して印加されたのち、前記第2トランジスターがオンしている前記画素回路の前記画素電極に所定の電圧が前記データ線を介して所定の期間印加されるように駆動されることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、第1トランジスターによって第2トランジスターをオンまたはオフのいずれかに制御する。その後、第2トランジスターがオンしている画素回路の画素電極に対してデータ線から所望の電位を印加することで表示状態を変更する。この結果、画素電極に対して同時に安定した電圧を印加することができるので、書込み不足などの不具合が生じることがない。
【0012】
[適用例3]上記表示装置であって、前記第2トランジスターがオンまたはオフするいずれかの電圧が、すべての前記画素回路における前記第2トランジスターのゲート電極にデータ線を介して印加されるのに先立って、それぞれの前記画素回路において、前記第1トランジスターがオンして、前記第2トランジスターのゲート電極に前記第2トランジスターがオフする電圧が同時に印加されるように駆動されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、画素回路にデータ線の電圧を印加する第2トランジスターをオフ状態にするので、画素に表示する画像に応じて本来印加したい画素回路とは異なる画素回路の画素電極に、データ線の電圧が印加されないようにすることができる。
【0014】
[適用例4]上記表示装置であって、記憶性表示素子を備え、前記画素電極は、前記記憶性表示素子に対して電圧を印加するための電極であることを特徴とする。
【0015】
記憶性表示素子は、容量を有して電荷が移動することから表示動作において安定した電圧の供給を必要とする。したがって上記表示装置は画素電極に安定して電圧を供給するので、記憶性表示素子に対して印加される電圧の低下が生じないように電荷を供給することができる。
【0016】
[適用例5]上記表示装置であって、前記記憶性表示素子は、電気泳動素子であることを特徴とする。
【0017】
電気泳動素子は薄くまた消費電力が少ないことから、薄型で低消費電力の表示素子となる。従って、記憶性表示素子として電気泳動素子を備えた上記表示装置は、高精細・高品質でかつコスト上昇が抑制された表示装置を実現することができる。
【0018】
[適用例6]上記表示装置であって、前記所定の期間は前記記憶性表示装置が表示状態を変更するのに必要な応答時間より長いことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、表示状態を変更する間、画素に表示する画像に応じた電圧が変動することなく、画素電極に対して安定して印加することができる。
【0020】
[適用例7]上記表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【0021】
この構成によれば、画素に表示する画像に応じた電圧が書込み不足になることなく、安定した高品質の画像を表示する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る表示装置を示す図で、(a)は斜視構成図、(b)は断面図。
【図2】実施形態に係る電子機器を説明するブロック図。
【図3】従来のアクティブマトリックス基板の構成図。
【図4】従来のアクティブマトリックス基板の画素回路図。
【図5】実施形態のアクティブマトリックス基板の構成図。
【図6】実施形態のアクティブマトリックス基板の画素回路図。
【図7】実施形態での消去シーケンスを説明するためのタイミングチャート。
【図8】実施形態での表示シーケンスを説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以降の説明において使用する図面は、説明の都合上構成要素の寸法を誇張して図示している場合もあり、必ずしも実際の大きさを示すものでないことは勿論である。
【0024】
(表示装置)
図1は実施形態に係る表示装置910を示す図で、(a)は斜視構成図であり、(b)は部分断面図である。図示するように、表示装置910は、画素電極を有し、この画素電極にトランジスターを介して電圧(電位)を印加するように構成された画素回路が配置形成されたアクティブマトリックス基板101と、記憶性表示素子である電気泳動素子921と、保護シート922とを備えている。電気泳動素子921は、アクティブマトリックス基板101と保護シート922との間に挟持された構造を有している。
【0025】
ここで電気泳動素子921は50μm程度の粒径を有し、光透過可能な高分子樹脂によって形成されたカプセルを、隙間無く一層に充填したものである。カプセルの内部には、有機溶剤と水と界面活性剤からなる分散剤と、分散質として負に帯電した白色顔料粒子WRと、正に帯電した黒色顔料粒子BRとが封入されている。
【0026】
また保護シート922は厚さ300μm程度のPET(Poly Ethylene Terephthalate)樹脂よりなり、電気泳動素子921との接触面にはITO(Indium Tin Oxide)薄膜よりなる共通電極COMが形成されている。保護シート922は電気泳動素子921より1辺が長くなっており、電気泳動素子921が存在しない突き出し部位に導電ペースト931が塗布され、共通電極COMとアクティブマトリックス基板101上の共通電極パット(後述の図3、共通電極パット330参照)と電気的に接続(短絡)されている。
【0027】
また、アクティブマトリックス基板101は電気泳動素子921及び保護シート922よりも面積が広くなっており、この広くなった張り出し部に可撓性基板としての第1のFPC951と可撓性基板としての第2のFPC961が実装されている。第1のFPC951上にはゲートドライバー952が、第2のFPC961上にはソースドライバー962が、それぞれCOF(Chip On Film)実装されている。
【0028】
なお、本実施形態では第1のFPC951、ゲートドライバー952、第2のFPC961、ソースドライバー962を各1個で構成したが、それぞれ複数個であっても構わないし、ゲートドライバー952とソースドライバー962を一つのICに統合したワンチップドライバーを用いてもよい。また、ゲートドライバー952やソースドライバー962をアクティブマトリックス基板101上に形成する駆動回路内蔵型アクティブマトリックス基板を用いても良い。
【0029】
さらに、本実施形態の表示装置910は、ゲートドライバー952やソースドライバー962に供給する電圧と、これらの電圧が画素回路に供給されるタイミングとを制御する制御回路が備えられている。制御回路は、第1のFPC951および第2のFPC961と電気的に接続された別基板(不図示)に形成されている。なお、制御回路は、アクティブマトリックス基板101上に形成されることとしてもよい。
【0030】
(電子機器)
図2は実施形態に係る電子機器1000の具体的な構成を示すブロック図である。電子機器1000は、電圧生成回路784、画像処理回路780、中央演算回路781、外部I/F(インターフェイス)回路782、および入出力機器783を備えている。なお、表示装置910は図1で説明した表示装置である。
【0031】
画像処理回路780は画像信号を、電圧生成回路784は生成した電圧信号を、第1のFPC951を介してゲートドライバー952に、および第2のFPC961を介してソースドライバー962にそれぞれ供給する。中央演算回路781は、外部I/F回路782を介して入出力機器783からの入力データ(表示データ)を取得する。ここで入出力機器783とは、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル、LED、スピーカー、アンテナなどである。
【0032】
中央演算回路781が外部I/F回路782を介して入力された表示データをもとに各種演算処理を行い、結果をコマンドとして画像処理回路780へ転送する。そして画像処理回路780が中央演算回路781からのコマンドに基づき画像情報を更新し、ゲートドライバー952およびソースドライバー962に対して画像情報に応じた新しい画像信号を供給する。この結果、表示装置910の表示領域Aにおける電気泳動素子921(図1参照)に印加される電圧が制御され、表示装置910は表示画像が変化するように制御される。
【0033】
電子機器1000の具体例としては、図示しないが、例えば、携帯ドキュメントリーダー、電子ブック、電子ポスター、電子チラシ、モニター、TV、ノートパソコン、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、携帯フォトビューワー、携帯ビデオプレイヤー、携帯DVDプレイヤー、携帯オーディオプレイヤーなどがあげられる。
【0034】
ここで、表示装置910の表示原理について説明する。前述の通り、電気泳動素子921中には分散質として負に帯電した白色顔料粒子WRと、正に帯電した黒色顔料粒子BRとが封入されている。従って、共通電極COMの電位が画素電極の電位より高ければ白色顔料粒子WRが保護シート922側に、黒色顔料粒子BRがアクティブマトリックス基板101側に移動し、保護シート922側からみると白表示になる。共通電極COMの電位が画素電極の電位より低ければ逆に各顔料粒子が動き、保護シート922側からみると黒表示になる。各顔料粒子の移動速度は共通電極COMの電位と画素電極の電位との差に比例する。また、共通電極COMの電位と画素電極の電位が等しければ各顔料粒子の移動はないように調整されているので、直前の表示状態を保持する。
【0035】
従って、例えば共通電極COMを0Vに保ち、各画素電極にプラスの電位を与えれば黒表示、マイナス電位を与えれば白表示を行うことができる。また、その際に共通電極COMと各画素電極の電位差が低下せず保持されていれば顔料粒子の移動は遅くならず、かつ最終的な表示コントラストも高くなる。なお、本実施形態では白黒表示の電気泳動素子921を用いたが、画素ごとに異なる色の顔料を封入したカプセルを用いてカラー表示を行う電気泳動素子921を用いることとしても差し支えない。
【0036】
なお、本実施形態では現在の表示している画像を白で塗りつぶして画像の表示領域A全面を白表示状態にする消去シーケンスと、表示したい画像が黒に相当する画素を白表示から黒表示に書き換える表示シーケンスを連続して行うことで画像表示を行う。このように消去シーケンスと表示シーケンスを別々にすることで、耐圧の低いトランジスターでも十分な電位を印加し、応答速度とコントラストを高めることができることについては特許文献1などに記載されている通りである。
【0037】
さて、本実施形態の表示装置910では、画像表示に際して、高精細でコントラストなどの表示性能の低下を抑制する電気泳動素子921の駆動が行われるが、この駆動技術を説明する前に、従来の駆動技術について説明する。これは、本実施形態の表示装置910が奏する効果についての理解を容易にするためである。
【0038】
(従来の駆動技術)
図3は従来のアクティブマトリックス基板101aの構成図である。アクティブマトリックス基板101a上には480本の走査線201(201−1〜201−480)と1920本のデータ線202(202−1〜202−1920)が交差して形成されており、480本の容量線203(203−1〜203−480)は走査線201に沿う方向で、かつ走査線201と交互に配置されている。容量線203−1〜203−480は配線335を介して実装端子320と接続され、共通電極パット330は共通電位配線336を介して実装端子321と接続される。なお、図3において二点鎖線で示した領域は、表示装置として構成した時に図1で示した電気泳動素子921が平面的に重なる領域であり、図2において示した表示領域Aに相当する。
【0039】
走査線201−1〜201−480はそれぞれ、実装端子301−1〜301−480に接続され、第1のFPC951を介してゲートドライバー952に接続されて、所定のタイミングで電圧信号が供給される。同様にデータ線202−1〜202−1920はそれぞれ、実装端子302−1〜302−1920に接続され、第2のFPC961を介してソースドライバー962に接続されて、画像信号に応じた電圧信号が供給される。実装端子320および実装端子321も同様に第2のFPC961を介してソースドライバー962と接続されて、所定の電圧信号が供給される。
【0040】
図4は、従来の画素回路を示す回路図で、一例として、m番目のデータ線202−m(m=1〜1920の整数)とn番目の走査線201−n(n=1〜480の整数)の交差部付近に配置形成された画素回路を示している。走査線201−nとデータ線202−mの交点にはnチャネル電界効果型トランジスターよりなる書込みトランジスター401−n−mが形成されており、そのゲート電極は走査線201−nに接続される。また、ソース電極はデータ線202−mと、ドレイン電極は保持容量素子403−n−mの一端と画素電極405−n−mとに接続される。保持容量素子403−n−mの他端は容量線203−nに接続される。また、画素電極405−n−mと保護シート922上の共通電極COMは電気泳動素子921を介して対向し、容量を形成する。
【0041】
このように構成された従来の画素回路において、前述したように書込み不足が生ずる。これを表示シーケンスにおける黒表示の書込み動作を例に挙げ説明する。表示シーケンスでは、各走査線201−1〜201−480はゲートドライバー952により順次選択される。すなわち、本実施形態では、走査線201−nは30μ秒間+20Vになった(選択された)後、0Vに戻る電圧信号が供給される。このとき、共通電極COMの電位は0Vを保ち、容量線203−nの電位は0Vである。
【0042】
走査線201−nが選択された際、データ線202−mは、黒表示に対応する場合はデータ線202−mには15Vが供給され、画素電極405−n−mに15Vが書き込まれる。このとき、書き込まれた画素電極405−n−mの電位15Vは容量線203−nとの間に挿入された保持容量素子403−n−mによって保持される。
【0043】
すると、共通電極COMの電位<画素電極405−n−mの電位となるので粒子の移動が発生し、黒表示状態へと変化する。その後、書込みトランジスター401−n−mはオフして高インピーダンス状態になるためデータ線202−mから電荷が供給されない状態となるが、保持容量素子403−n−mに保持された電荷が画素電極405−n−mに供給される。
【0044】
しかしながら、保持容量素子403−n−mに保持された電荷は有限であることから、粒子の移動に伴って画素電極405−n−mの電位低下が発生し、コントラストの低下やさらに顔料粒子の移動速度つまり応答速度が低下する。従って、このような電位低下を抑制するためには、保持容量素子403−n−mに保持された電荷が多くなるように容量を大きくすればよいことは明らかであるが、保持容量素子403−n−mの形成領域(平面積)が大きくなるため、高精細化ができなくなってしまう。
【0045】
そこで、本実施形態では顔料粒子の移動による電位低下防止のため、電荷の供給を保持容量素子403−n−mからではなく、データ線202−mから行えるようにする。こうすることによって、保持容量素子403−n−mが不要となり、従来の1トランジスター・1コンデンサー構成の場合と比べ、画素回路の占有面積が著しく小さくなる。従って高精細で高コントラストの表示が可能な表示装置が提供できる。また電圧低下が抑制されるので、応答速度の低下が抑制された高い応答速度を可能とする表示装置が提供できるのである。
【0046】
(本実施形態の駆動技術)
次に図5〜図8を用いて本実施形態の駆動技術を説明する。図5は本実施形態のアクティブマトリックス基板101の構成図である。図6は本実施形態の画素回路図であり、図7は本実施形態の消去シーケンスのタイミングチャートであり、図8は本実施形態の表示シーケンスのタイミングチャートである。
【0047】
図5に示したように本実施形態のアクティブマトリックス基板101は、従来(図3参照)と比較し、容量線203−1〜203−480、配線335、実装端子320が存在せず、それ以外の構成は従来の構成と同じである。従って、同じ構成要素については同じ記号を付与し、これらの説明は省略する。
【0048】
さらに、本実施形態の画素回路は、図6に示すように、従来の画素回路における書込みトランジスター401−n−mと、書込みトランジスター401−n−mと同じチャネル構成(ここではnチャネル電界効果型)を有する駆動トランジスター404−n−mを加えた2つのトランジスターから構成されている。書込みトランジスター401−n−mは適用例に記載の第1トランジスターに相当し、駆動トランジスター404−n−mは適用例に記載の第2トランジスターに相当する。
【0049】
そして、書込みトランジスター401−n−mのソース電極がデータ線202−mに接続され、ドレイン電極が駆動トランジスター404−n−mのゲート電極に接続されている。また、駆動トランジスター404−n−mのソース電極がデータ線202−mに接続され、ドレイン電極が画素電極405−n−mに接続されている。なお、書込みトランジスター401−n−mのドレイン電極および駆動トランジスター404−n−mのゲート電極を、中間電極402−n−mと呼ぶことにする。
【0050】
従って、本実施形態の画素回路は、従来例に比べて、容量線203−nおよび保持容量素子403−n−mが存在しない回路構成となっている。この結果、容量線203−nおよび保持容量素子403−n−mの形成領域が不要となり、画素回路の占有面積が小さくなるので、コスト上昇を抑制するとともに高精細化が可能となる。
【0051】
次に、このような構成を有する本実施形態の画素回路によって行われる消去シーケンスと表示シーケンスについて、説明する。特に、後述する表示シーケンスによって、高コントラスト、また高応答速度を可能とする表示が得られるのである。
【0052】
まず消去シーケンスについて図7を用いて説明する。図示するように、本実施形態の消去シーケンスでは、全ての走査線201−1〜201−480に、ゲートドライバー952より同時に+20Vが20μ秒間印加され、その他の期間は0Vを保つ電圧信号が供給される。また、データ線202−1〜202−1920に、走査線201−1〜201−480が+20Vになる2μ秒前に+15Vになって24μ秒間保持した後、0Vに反転する電圧信号が供給される。共通電極COMには、データ線202−1〜202−1920が15Vになるのと同時に15Vとなって、データ線202−1〜202−1920が0Vに反転してから200m秒後に0Vに反転する電圧信号が供給される。
【0053】
このように電圧信号が供給されて画素回路が駆動すると、全ての中間電極402−n−mには15Vが書込まれて全ての駆動トランジスター404−n−mはONし、画素電極405−n−mの電位はデータ線202−1〜202−1920の電位、すなわち最終的に0Vが書き込まれて200m秒間保持される。つまり共通電極COMの電位より全画素電極の電位が15V小さくなるので、表示領域A全体で白色顔料粒子WRが保護シート922側に、黒色顔料粒子BRがアクティブマトリックス基板101側に移動を始める。
【0054】
前述するように、電気泳動素子921は、顔料粒子の移動が遅いために応答性が遅い表示素子である。そこで、本実施形態では顔料粒子が十分移動する所定の時間この状態を保持することで顔料粒子が十分移動するように駆動する。このため、全画素電極の電位が共通電極COMの電位より15V小さい状態を200m秒間保持するように駆動するのである。この結果、表示領域A全体が白表示となって画像の消去が完了し、消去シーケンスが終了する。消去シーケンスが終了したタイミングでは画素電極405−n−mの電位は0Vのままである。なお、本実施形態では、画素電極の電圧保持時間を200mSecとしたが、もとより電圧保持時間は、顔料粒子が実際に十分移動する時間に応じて設定することが好ましい。
【0055】
次に表示シーケンスについて図8を用いて説明する。図示するように、本実施形態の表示シーケンスでは、まず各走査線201−1〜201−480に、電位が+20Vの電圧を30μ秒間一斉に印加する電圧信号を供給して全走査線を選択する。この間、全データ線202−1〜202−1920は0Vに保持される電圧信号が供給される。
【0056】
すると、全中間電極402−n−mには0Vが書き込まれ、駆動トランジスター404−n−mはOFFし、画素電極405−n−mは消去シーケンスの最後の状態、すなわち0Vのままデータ線202−mと切り離される。こうすることによって、後述する表示シーケンスの工程において、駆動トランジスター404−n−mがONした画素電極にのみデータ線202−mに供給された電圧を印加することができる。
【0057】
次に各走査線201−1〜201−480に対して、34.6μ秒ずらして各30μ秒ずつ順次+20Vを印加して選択する電圧信号を供給する。各選択期間でデータ線202−mに印加される電位と表示する画像の関係は次のようになる。すなわち、画像が白表示に対応する場合はデータ線202−mに0Vを、画像が黒表示に対応する場合はデータ線202−mに+15Vを、それぞれ供給する。すると、白表示に対応する画素の中間電極402−n−mは0Vとなって駆動トランジスター404−n−mはOFFし、黒表示に対応する画素の中間電極402−n−mは+15Vとなって駆動トランジスター404−n−mはONする。
【0058】
こうして全中間電極402−n−mが白表示または黒表示のいずれかの表示状態に対応する電位になった後、すなわち走査線201−480が30μ秒選択され0Vの電位に反転した後、全データ線202−1〜202−1920に対して、同時に+10Vの電位が200m秒間保持される電圧信号を供給する。なお、共通電極COMには、表示シーケンスの間電位が0Vを保つ電圧信号が供給される。
【0059】
こうして、全データ線202−1〜202−1920に同時に+10Vの電圧を供給することによって、駆動トランジスター404−n−mがONしている画素の画素電極405−n−mには、+10Vが書き込まれる。この結果、黒色顔料粒子BRは保護シート922側に、白色顔料粒子WRはアクティブマトリックス基板101側に移動して黒表示へと書き換わる。この間、データ線202−mより電荷が安定して供給されるため、画素電極405−n−mの電位低下は防止される。このため、画素電極405−n−mには200m秒間安定して10Vが印加され続けるため、従来例のようにコントラストや応答速度が低下しない。
【0060】
一方、駆動トランジスター404−n−mがOFFしている画素の場合、データ線202−mに供給された電圧が印加されないので、画素電極405−n−mの電位は消去シーケンスの最後の状態、すなわち0Vを保ち続ける。従って、共通電極COMと同じ電位であるから顔料粒子の移動は生じない。このように、画素に表示する画像に応じて本来印加したい画素回路とは異なる画素回路の画素電極に、データ線の電圧が印加されないようにすることができるのである。
【0061】
以上のように、本構成では容量線および保持容量素子が不要であって、従来の表示装置より同じチャンネル構成のトランジスターが1つ増加するのみであることから、コスト上昇が抑制されるとともに、さらに高精細化された表示装置が実現できる。さらに、コントラストあるいは応答速度についても、従来の表示装置よりも改善される。
【0062】
また、本実施形態では説明を簡便にするため、消去シーケンスと表示シーケンスを1回ずつとしたが、それぞれ複数回行うことでより応答速度・高コントラストを得られるようにしてもよい。また、消去の際に残像を消すために消去直前の表示画像の反転画像を書き込んでもよい。
【0063】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【0064】
例えば、上記実施形態の表示装置910は、記憶性表示素子として電気泳動素子を用いることとしたが、これに限らず、記憶性表示素子として例えば強誘電性液晶など記憶性を有する液晶素子であってもよい。さらには、応答速度が遅く、印加された電圧の保持性能が低い表示素子であれば、記憶性表示素子でなくても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
101,101a…アクティブマトリックス基板、201…走査線、202…データ線、203…容量線、301,302,320,321…実装端子、330…共通電極パット、335…配線、336…共通電位配線、401…書込みトランジスター、402…中間電極、403…保持容量素子、404…駆動トランジスター、405…画素電極、780…映像処理回路、781…中央演算回路、782…外部I/F回路、783…入出力機器、784…電圧生成回路、910…表示装置、921…電気泳動素子、922…保護シート、931…導電ペースト、951…FPC、952…ゲートドライバー、961…FPC、962…ソースドライバー、1000…電子機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と、
前記複数の走査線と交差する複数のデータ線と、
前記走査線と前記データ線の各交差部に対応して設けられた画素毎に配置された画素回路と、
を備えた表示装置であって、
前記画素回路は、画素電極と、第1トランジスターと、第2トランジスターとを有し、
前記第1トランジスターは、ゲート電極が前記走査線に、ソース電極またはドレイン電極のうち一方が前記データ線に、他方が前記第2トランジスターのゲート電極に、それぞれ電気的に接続され、
前記第2トランジスターのソース電極またはドレイン電極のうち、一方が前記データ線に、他方が前記画素電極にそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記第1トランジスターがオンして、前記第2トランジスターがオンまたはオフするいずれかの電圧が、すべての前記画素回路における前記第2トランジスターのゲート電極にデータ線を介して印加されたのち、前記第2トランジスターがオンしている前記画素回路の前記画素電極に所定の電圧が前記データ線を介して所定の期間印加されるように駆動されることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置であって、
前記第2トランジスターがオンまたはオフするいずれかの電圧が、すべての前記画素回路における前記第2トランジスターのゲート電極にデータ線を介して印加されるのに先立って、それぞれの前記画素回路において、前記第1トランジスターがオンして、前記第2トランジスターのゲート電極に前記第2トランジスターがオフする電圧が同時に印加されるように駆動されることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の表示装置であって、
記憶性表示素子を備え、
前記画素電極は、前記記憶性表示素子に対して電圧を印加するための電極であることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記記憶性表示素子は、電気泳動素子であることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の表示装置であって、
前記所定の期間は前記記憶性表示装置が表示状態を変更するのに必要な応答時間より長いことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−39136(P2011−39136A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184186(P2009−184186)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】