説明

表示装置用の放電ランプおよびそれを用いたバックライト装置

【課題】屈曲部が開口部内に位置するようにランプを配置しても、表示装置の発光エリアにおける輝度ムラを抑制することができる表示装置用の放電ランプおよびそれを用いたバックライト装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2以上の直線部(211)、直線部(211)間に形成された屈曲部(212)を有するガラス管(21)と、ガラス管(21)の内壁面に形成された、蛍光体(221)を含む発光層(22)と、ガラス管(21)に配置された放電電極(24)とを備え、屈曲部(212)は、その断面が略楕円状であり、長軸外径をR1、短軸外径をR2としたとき、R2/R1≦0.8であるようにして放電ランプ(2)を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等に用いられるバックライト装置、あるいは小型表示機器などの表示装置の光源として使用される放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ装置のバックライト用光源などとして使用される放電ランプは、ガラス管の内面に蛍光体が塗布された発光管に電極として円筒や板状の放電電極を設け、水銀及びネオン/アルゴンなどの希ガスを封入して、前記放電電極からの放電によって発光管の内部で発生した紫外線により蛍光体を励起し可視光を得るよう構成されている(特許文献1)。
【0003】
また、上述のようなバックライト用光源などとして用いる場合は、通常複数の放電ランプを用いるが、使用するランプ本数を低減させる目的で、単一のガラス管をU字型、L字型あるいはW字型に屈曲させて、より少ない数のガラス管で単位面積当たりのガラス管の本数を実質的に増大させるようにする試みもなされている(特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
一方、上述のように単一のガラス管を屈曲させてU字等の屈曲型の放電ランプとする場合、屈曲部を発光エリア内に配置することが望まれる。それは、屈曲部の光の有効利用、狭額縁化などの目的のためである。しかしながら、上記のような構成とした場合、前記発光エリア内全体における輝度が安定せず、輝度ムラが生じてしまい、安定した発光特性を呈することができないでいた。
【特許文献1】特開平8−17397号
【特許文献2】実開平5−6520号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、屈曲部が開口部内に位置するようにランプを配置しても、表示装置の発光エリアにおける輝度ムラを抑制することができる表示装置用の放電ランプおよびそれを用いたバックライト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の一態様は、少なくとも2以上の直線部、前記直線部間に形成された屈曲部を有するガラス管と、前記ガラス管の内壁面に形成された、蛍光体を含む発光層と、前記ガラス管に配置された放電電極とを備え、前記屈曲部は、その断面が略楕円状であり、長軸外径をR’、短軸外径をRとしたとき、R/R’≦0.8であることを特徴とする表示装置用の放電ランプに関する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、屈曲部が開口部内に位置するようにランプを配置しても、表示装置の発光エリアにおける輝度ムラを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のバックライト装置の一例を示す概略構成図、図2は本発明の放電ランプの一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、表示装置の一例である本例のバックライト装置は、ケース1、放電ランプ2、光学面材3とを備えている。
【0009】
ケース1は、例えば白色プラスチックからなり、フロントケース11とバックケース12とで構成されている。フロントケース11は、ケース1の蓋を構成する部分であり、その主面には本バックライト装置において発光エリアとなる開口部111が形成されている。バックケース12は、ケース1の箱を構成する部分であり、有底開口形状をしている。その内壁面は、反射シートや銀蒸着などにより、高反射性を有している。
【0010】
放電ランプ2は、図2に示すように、熱陰極蛍光ランプであり、ソーダライムガラスなどの軟質ガラスからなるガラス管21を主要部として有している。ガラス管21は、直線部211と屈曲部212とピンチシール部213で構成されており、全体としてU字型を呈している。このような放電ランプ2が、図3に示すように、屈曲部212が開口部111内に位置するように、ケース1内に千鳥状に並列配置されている。
【0011】
直線部211は、ガラス管21において略直線状に延在する部分である。本例では2つの直線部211が平行に位置しており、その外径rは6.0mm〜30mmである。略直線状とは、直線の概念から逸脱しない程度の曲がり、表面の凹凸を含むものであって、一般的には直線部211は素管のままである。屈曲部212は、直線部211間に連続的に形成された屈曲部分である。本例では、屈曲部212は180度の屈曲である。また、屈曲部212は、図4に示すように、断面が長軸と短軸を有する略楕円形状となっており、その長軸外径をR’、短軸外径をRとしたとき、R/R’≦0.8なる関係を満足している。ちなみに、長軸外径R’は一般的には、直線部211の外径rとほぼ同じ長さである。
【0012】
ガラス管21の内部には、主にRGBの3波長蛍光体で構成された発光層22が塗布されている。本例では、この発光層22の状態を、また、本実施の形態では、直線部211と、屈曲部212とで、発光層22の状態を変化させている。その詳細を図5に示す。図5は、各部のガラス管壁付近のSEM(電子顕微鏡)による断面写真であり、撮影箇所は、(a)は図1に示す直線部211のX地点、(b)は屈曲部212のY地点である。
【0013】
図5かわかるように、直線部211では、蛍光体221がまばらに散っている状態であるが、屈曲部212では、蛍光体221が凝集し、凝集蛍光体221’がいくつも形成された状態になっている。ただし、全てが凝集蛍光体221’となっているわけでなく、凝集していない単体の蛍光体221も存在している。そして、直線部211の蛍光体221の中心粒径をT、屈曲部212の凝集蛍光体211’の中心粒径をT’としたとき、T’/T≧2.0なる関係を満足している。ここで、「凝集蛍光体」とは、2以上の蛍光体が凝集し、一つの塊のような状態となった蛍光体を意味する。
【0014】
このような凝集蛍光体221’は、例えば(Ca,Ba,Sr)O,Bなどのホウ素系の結着剤であるボレート系の結着剤222を発光層22に含有させることにより、比較的容易に形成することができる。これは、ボレート系の結着剤222は溶融温度が低いという特性を利用したものである。例えば、本例のガラス管21は、800℃程度で軟化するが、ボレート系の結着剤はそれよりも低い温度、例えば700℃以下で溶融する。すなわち、ボレート系の結着剤222を用いると、屈曲部212を形成するためにガラス管21を加熱軟化させたときに、結着剤222も溶融し、これにより蛍光体粒子同士を結着・凝集させるため、屈曲部212に凝集蛍光体221’を形成することができる。
【0015】
ちなみに、結着剤にはボレート系以外にCaなどのパイロ系などもあるが、このような結着剤を使用した場合は屈曲部の形成時に凝集蛍光体を形成することはできない。なお、ボレート系の結着剤222は、直線部211においては図5(a)のようにガラス管21の管壁周辺に、屈曲部212においてはその多くが凝集蛍光体221’の内部に存在している。
【0016】
また、ガラス管21には、その内部に水銀及びネオン/アルゴンなどの希ガスが封入されている。さらに、その両端には、ガラス管11の内外に導出されたリード線23が封着されており、そのリード線14の先端には、例えばタングステンからなる放電電極24が保持されている。
【0017】
ここで、本例の放電ランプ2の一製造方法を説明する。
まず、直管状のガラス管21の内壁面に発光層22を形成する。その後、ガラス管21の屈曲部212の形成予定部分をバーナーによって加熱軟化させ、ガラス管21内に窒素をブローさせながら180°屈曲させて屈曲部212を形成する。その際、屈曲部212の内周中心Oを外周中心O’よりも屈曲部212側にずらして、直線部211の外径rに対する屈曲部212の外径Rを0.3〜0.7倍になるように調整するのが望ましい。これは、屈曲部212の外周が長くなりすぎて、当該部分の肉厚が小さくなったことによる強度低下を抑制するためである。なお、屈曲部212の外周側の肉厚は0.3mm以上とするのが好適である。
【0018】
そして、両端をピンチシールし、ピンチシール部付近に形成された排気管(図示なし)を介して、ランプ内部の脱ガス・ガス封入を行ったあと、排気管をチップすることで放電ランプ2を製造することができる。
【0019】
ここで、長軸外径R’と短軸外径Rの関係R/R’は、内周中心Oと外周中心O’の関係や屈曲部212の加熱条件、窒素ブローの条件などを変更して、Rの値を変えることで調整することが可能である。また、蛍光体221の中心粒径Tと凝集蛍光体221’の中心粒径T’の関係T’/Tは、結着剤222の添加量や屈曲部212の加熱条件などの条件を変更して、凝集蛍光体221’の粒径を変えることで調整することが可能である。
【0020】
開口部111には、光学面材3が配置される。光学面材3は、透明材料(ガラス、樹脂等)からなる板や、拡散板などを使用することができる。また、光学面材3の上に、さらに拡散シート、プリズムシート、偏光シートなどの各種光学シートを配設してもよい。
【0021】
以下に、本例の放電ランプの一実施例を示す。なお、直線部211と屈曲部212の蛍光体の中心粒径は、粒度分布計により測定したものである。
【0022】
(屈曲部)
長軸外径R’=15.5mm、短軸外径R=9.3mm、
∴R/R’=0.6、
(蛍光体)
赤色蛍光体=Y:Eu3+(YOX)、中心粒径=5.3μm、緑色蛍光体=LaPO:Ce3+,Tb3+(LAP)、中心粒径=8.4μm、青色蛍光体=BaMgAl1017:Eu2+(BAM)、中心粒径=6.0μm、蛍光体比率=YOX:LAP:BAM=2:3:4、直線部211の蛍光体221の中心粒径T=6.64μm、屈曲部212の凝集蛍光体221’の中心粒径T’=20μm、
∴T’/T=3.01。
【0023】
この実施例のランプについて、輝度分布を測定した結果を図6に示す。なお、輝度分布は、ガラス管表面の管軸方向を分光放射輝度計により測定することにより得たものである。
【0024】
図6から明らかなように、実施例のランプでは、図1の直線部211である

と屈曲部212である

とにおいて、かなりの輝度差が生じていることがわかる。具体的には、直線部211の輝度に対する屈曲部212の相対輝度が低く、80%程度である。
【0025】
ここで、ランプそのものがむき出しの状態で照明をなす、例えば電気スタンドのような用途では屈曲部212の輝度も高いほうが望ましく、このような輝度分布は望ましくないとされていたが、バックライト装置等の用途では、むしろこのような輝度分布である方が望ましいことがわかった。つまり、実施例の輝度分布のランプであれば、開口部111内に屈曲部212が位置するようにランプを配置しても、バックライト装置の発光エリアにおいて直線部211と屈曲部212との輝度の差が少なくなり、輝度ムラが抑制されたバックライト装置を実現することができる。
【0026】
次に、屈曲部212の長軸外径R’と短軸外径Rの関係R/R’と、蛍光体221の中心粒径Tと凝集蛍光体221’の中心粒径T’の関係T’/Tを変化させたときのバックライト装置の発光エリアの輝度ムラを測定する試験を行った。結果を図7に示す。ここで、図中の判定は点灯中のバックライト装置の発光エリアを目視ことによって判断したものであり、×は、屈曲部が明らかに輝度ムラとして見える状態、△は、×よりは改善されたが、まだ輝度ムラとして見える状態、○は、屈曲部が輝度ムラに感じない状態、◎は、輝度ムラがほとんどない状態を意味する。
【0027】
結果から、R/R’は小さいほどムラが改善されることがわかる。これは、R/R’が小さくなるほど、屈曲部212の長軸外径側から出射する光が減少(反対に、短軸外径側から出射する光は増加)したためと考えられる。一方、T’/Tは大きいほどムラが改善されることがわかる。これは、凝集蛍光体221’の総表面積が凝集前のそれぞれの蛍光体221の総評面積と比較して減少したことにより、屈曲部212での可視光の生成量が減少したためと考えられる。
【0028】
また、結果から、バックライト装置の発光エリアのムラをなくすには、R/R’を好適な範囲とするのが好適であり、具体的には0.8以下であるのが望ましく、さらには、0.7の以下を満足することが好ましい。ただし、R/R’が小さすぎると、点灯中、屈曲部内部の陽光柱が収縮し、始動電圧が高くなるなどの不具合が生じるため、R/R’≧0.4であるのが望ましい。
【0029】
また、T’/Tは2.0以上、さらには、2.5の以上を満足することが好ましい。R/R’≦0.7の関係を満足することが好ましい。ただし、T’/Tを大きくしすぎると、蛍光体剥がれなどの問題が生じるため、直線部の蛍光体の中心粒径に対して、4.0倍以下であるのが望ましい。
【0030】
なお、上述の通り、両者の構成ともムラに対して効果的なほど製造上や特性上の不具合が発生しやすくなるため、R/R’とT’/Tをうまく組み合わせて、ムラが発生しにくく、かつそれらの不具合の問題がない範囲で実施するのが最適である。したがって、本例では、屈曲部212は、その断面が略楕円状であり、長軸外径をR’、短軸外径をRとしたとき、R/R’≦0.8であることにより、バックライト装置の開口部111内に屈曲部211が位置するように放電ランプ2を配置しても、発光エリアにおいて輝度ムラが目立たない程度に、直線部211に対する屈曲部212の相対輝度を低下させることが可能な表示装置用の放電ランプを提供できる。
【0031】
また、屈曲部212には蛍光体221が凝集してなる凝集蛍光体221’が形成されており、直線部211の蛍光体221の中心粒径をT、屈曲部212の凝集蛍光体221’の中心粒径をT’としたとき、T’/T≧2.0であることにより、上記同様、発光エリアにおいて輝度ムラを目立たなくすることができるとともに、上記構成との組み合わせにより、不具合が発生しにくい範囲でその効果を得ることができる。
【0032】
さらに、発光層22は、ボレート系の結着剤222を含有していることにより、屈曲部212の凝集蛍光体221’を屈曲部212の加熱軟化工程時に形成することができる。
【0033】
なお、本発明は、放電ランプ2と光学面材3との距離が10mm以下であるような、発光エリアにおいて放電ランプ2による明暗が発生しやすい薄型の表示装置において特に効果の高い発明である。
【0034】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0035】
本例では、放電ランプ2として熱陰極蛍光ランプを使用しているが、冷陰極蛍光ランプ、外面電極蛍光ランプなどのランプであってもよい。
【0036】
また、放電ランプ2は直線部211を2つ有するU字管であるが、直線部211を3つ有するコ字管やS字管、4つ有するW字管やスクエア管などであってもよい。
【0037】
また、屈曲部212の屈曲は180度に限らず、45度、90度などであってもよい。
また、本例では、U字の放電ランプ2を4本千鳥状に並列配設させたような構成を呈しているが、配設数や配設向きは、必要に応じて任意に設定することができる。例えば、放電ランプ2を単独で使用したり、5個以上使用したり、全部同じ方向に配設したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のバックライト装置の一例を示す概略図。
【図2】構成図本発明の放電ランプの一例を示す概略図。
【図3】図1に示すバックライト装置の上平面図。
【図4】図1に示す放電ランプの屈曲部の断面を拡大して示す図。
【図5】各部のガラス管壁付近のSEM(電子顕微鏡)による断面図。
【図6】放電ランプの各部位の輝度を相対的に示す図。
【図7】屈曲部の長軸外径と短軸外径の比R/R’と直線部の蛍光体の中心粒径に対する屈曲部の凝集蛍光体の中心粒径を変化させたときのバックライト装置の発光エリアにおける輝度ムラについて説明するための図。
【符号の説明】
【0039】
1 ケース
11 フロントケース
111 開口部
112 バックケース
2 放電ランプ
21 ガラス管
211 直線部
212 屈曲部
22 発光層
221 蛍光体
221’ 凝集蛍光体
222 結着剤
3 光学面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2以上の直線部、前記直線部間に形成された屈曲部を有するガラス管と、
前記ガラス管の内壁面に形成された、蛍光体を含む発光層と、
前記ガラス管に配置された放電電極とを備え、
前記屈曲部は、その断面が略楕円状であり、長軸外径をR’、短軸外径をRとしたとき、R/R’≦0.8であることを特徴とする表示装置用の放電ランプ。
【請求項2】
前記屈曲部には前記蛍光体が凝集してなる凝集蛍光体が形成されており、前記直線部の前記蛍光体の中心粒径をT、前記屈曲部の前記凝集蛍光体の中心粒径をT’としたとき、T’/T≧2.0であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置用の放電ランプ。
【請求項3】
前記発光層は、ボレート系の結着剤を含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置用の放電ランプ。
【請求項4】
開口部が形成された筐体と、
前記開口部内に前記屈曲部が含まれるように配置された請求項1ないし請求項3の何れかに記載の放電ランプと、
前記開口部に配置された光学面材と、
を具備することを特徴とするバックライト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−193676(P2009−193676A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29949(P2008−29949)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】