説明

表示装置画面の全点試験方法及び全点試験装置

【課題】プラントなどの制御監視システムで使用する表示装置画面の全点試験を、試験者の目視作業を要することなく自動化し、試験効率を高める手段を備えた表示装置画面の全点試験方式を提供する。
【解決手段】表示装置ドキュメントなどから抽出した設備シンボル情報を抽出し、全点試験の試験仕様書と表示装置への入力する模擬データを自動生成する。上記模擬データを表示装置に自動入力し、表示装置の画面を保存し、初期画面との差分画面を取得することによって、表示装置画面上の設備変化情報を生成する。上記で生成した試験仕様書の各試験項目と、設備変化情報を照合することによって、試験結果を判定する試験端末を作成することにより、表示装置画面の全点試験の自動化を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントや交通運行などのシステムの設備状態を監視・制御するために設置される表示装置に係り、特に、作成した表示画面の動作の妥当性を確認するための全点試験方法及び全点試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントなどのシステムの設備状態を監視・制御するために設置される表示装置(以下、単に「表示装置」と表記。)は、現場設備(以下、単に「設備」と表記。)とネットワークを介して接続され、設備の位置及び状態を表示する画面(以下、単に「画面」と表記。)と、表示装置の操作員が対象設備への制御情報を送信するための手動操作手段とを備えている。
【0003】
表示装置の画面作成者は、与えられた仕様書にしたがって表示プログラムと表示画面データとを作成したのち、画面上に配置した設備シンボル(設備を模擬して縮小図示したシンボル図形)それぞれについて表示動作の妥当性を確認するために全点試験を実施する。全点試験とは、画面上に配置した各設備シンボルに結び付けられた状態表示情報及び制御応答情報を表示装置へ入力することにより、各設備シンボルの表示が正しく変化することを検査するための試験である。
【0004】
ここで、状態表示情報とは、設備状態を表示装置等に伝達するための情報であり、従来の全点試験においては、実際の設備から表示装置に送信されるデータを模擬して発生させる現場設備シミュレータを操作することによって、検査用の状態表示情報を発生させていた。また、制御応答情報とは、操作員が対象設備へ制御指令を送信したときに当該設備から表示装置へ返送される応答情報であり、全点試験では、表示装置が制御応答情報を正しく受信できることも検査する必要がある。従来の全点試験においては、実際に表示装置を操作することによって発生させた制御指令を現場設備シミュレータに送信し、現場設備シミュレータから返送される制御応答情報を表示装置に入力することによって、対象とする設備シンボルの表示が正しく変化することを検査していた。
【0005】
状態表示情報及び制御応答情報は、それぞれが画面上に配置するいずれか1つの設備シンボルに紐付けられており、それぞれの状態表示情報及び制御応答情報を順次送信して、該当設備シンボルの色や形が正しく変化することを確認することによって全点試験を実施する。そのためには、作成する画面毎に、画面上に配置する設備シンボルそれぞれに対する試験項目を記載した試験仕様書を作成しなくてはならない。各試験項目では、各々の設備シンボルに紐付けられた状態表示情報及び制御応答情報を順次表示装置へ入力し、該当設備シンボルの色や形がどのように変化すればよいかを確認するための手順が記載される。
【0006】
試験仕様書の作成後は、状態表示情報の受信によって表示が変化する全設備シンボルについて、現場設備シミュレータから設備1点毎に状態表示情報を順次手動で発生させて、画面上の表示変化を目視により確認した結果を試験仕様書に記入していく。また、制御応答情報が返送される全設備について、表示装置を操作することによって当該設備へ送信する制御指令を順次手動で発生させ、現場設備シミュレータから返送された制御応答情報を受信したときの画面上の表示変化を目視確認した結果を試験仕様書に記入していく。そののち、表示変化が誤っている箇所については、画面作成者が画面データを修正し、再度、修正部分の全点試験を実施する。
【0007】
このように、従来の表示装置画面の全点試験においては、現場設備シミュレータ及び表示装置と、これら両装置を繋ぐネットワーク等の通信経路を準備する必要がある。さらに、試験者は現場設備シミュレータと表示装置との間で、状態表示情報及び制御応答情報の入力と、それによる設備シンボルの表示変化の目視確認とを交互に実施しなくてはならない。設備1点毎の試験項目に対しすべて目視確認が必要であること、試験仕様書への確認結果の記入は試験者の手作業で行われていることなどから、膨大な労力を要するのみならずヒューマンエラーによる検査ミスが生じるという問題があった。
【0008】
そこで、例えば、特許文献1では、列車の監視・制御をする運行管理システムにおいて、運行表示画面の全点試験の効率を高める手段を備えた全点試験装置が提案されている。この全点試験装置は、作成した運行表示画面の全点試験を手動または自動で実行したときに現場設備シミュレータへ送信された制御情報と、現場設備シミュレータからの制御応答情報及び該当設備の表示色変化情報とをデータベースに格納しておき、それらの情報から試験仕様書フォーマットを使用して試験仕様書を作成する試験仕様書作成手段と、設備の追加/削除時に、変更されなかった運行表示画面箇所について全点試験を自動で実行する健全性確認試験手段とを備えている。
【0009】
また、特許文献2には、画面の動作確認を目視に頼らざるを得なかった場合についても、予め記憶させておいた正解画像と試験結果である実画像とが不一致となったものから真の誤り画像を抽出することにより、効率的なソフトウェアの自動試験を可能にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−1268号公報
【特許文献2】特開2007−265263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前記の特許文献1の方法では、試験情報をデータベースに登録するためには必ず現場設備シミュレータを用いて全点試験を一通り実施しなければならない。その際には、試験者による現場設備シミュレータの準備と操作、試験結果画面の目視確認が必要となる。つまり、特許文献1の方法は、2回目以降の繰返しの全点試験の効率化を図るものであって、手動操作と目視確認を要する初回の全点試験の労力や検査ミスに関する問題を解決することはできない。
【0012】
また、前記の特許文献2に開示されている技術を、表示装置画面の全点試験に適用するためには、それぞれの試験項目毎に予め正解画像を準備しておく必要があり、例えば列車運行管理システムの運行表示画面のように設備シンボルの表示が多様に変化するときに、どのように正解画像を準備するかという問題がある。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、その目的は、表示装置画面の全点試験を容易に実行できる全点試験方法及び全点試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は、表示装置に表示され、現場設備の状態を示す複数の設備シンボルが配置された画面において、配置された前記設備シンボルそれぞれの表示変化が妥当か否かを確認するための全点試験装置による表示装置画面の全点試験方法であって、前記全点試験装置が、前記表示装置の外部仕様として、前記設備シンボルの表示パターン及び配置位置と、前記現場設備から前記表示装置に入力される各入力信号のデータ形式と、前記入力信号のそれぞれが入力されたときの前記設備シンボルの期待される表示変化内容を示す情報と、を入力して記憶部に記憶するステップと、前記全点試験装置が、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記入力信号のそれぞれを擬似する擬似入力信号を前記表示装置に入力して、当該擬似入力信号を入力したのちの前記表示装置の画面表示内容を前記記憶部に保存するステップと、前記全点試験装置が、前記保存した画面表示内容と前記記憶部に別途保存しておいた初期の画面表示内容との差異は、前記記憶部に記憶された該当する前記表示変化内容と一致するか否か、を判定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、表示装置に表示され、現場設備の状態を示す複数の設備シンボルが配置された画面において、配置された前記設備シンボルそれぞれの表示変化が妥当か否かを確認するための全点試験装置であって、前記表示装置の外部仕様として、前記設備シンボルの表示パターン及び配置位置と、前記現場設備から前記表示装置に入力される各入力信号のデータ形式と、前記入力信号のそれぞれが入力されたときの前記設備シンボルの期待される表示変化内容を示す情報と、を入力して記憶部に記憶する外部仕様入力部と、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記入力信号のそれぞれを擬似する擬似入力信号を前記表示装置に入力する模擬入力情報生成部と、当該擬似入力信号を入力したのちの前記表示装置の画面表示内容を前記記憶部に保存する画面保存部と、前記保存した画面表示内容と前記記憶部に別途保存しておいた初期の画面表示内容との差異は、前記記憶部に記憶された該当する前記表示変化内容と一致するか否か、を判定するシンボル変化判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表示装置画面の全点試験を容易に実行できる全点試験方法及び全点試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るシステムの全体構成と全点試験装置の機能構成例とを示すブロック図である。
【図2】全点試験装置の外部仕様入力部の動作についての説明図である。
【図3】全点試験装置の試験仕様書生成部の動作についての説明図である。
【図4】全点試験装置の擬似入力情報生成部の動作についての説明図である。
【図5】全点試験装置の全点試験実行部における画面保存動作の説明図である。
【図6】全点試験装置の全点試験実行部における試験結果判定動作の説明図である。
【図7】全点試験装置の差分抽出部の動作についての説明図である。
【図8】設備シンボルの表示変化内容及び差分画面データの例である。
【図9】全点試験装置のシンボル変化判定部の動作についての説明図である。
【図10】全点試験装置の試験結果出力部の動作についての説明図である。
【図11】本発明に係る全点試験方法の全体的な流れを示すフローチャートである。
【図12】シンボル変化内容の適否を判定する処理の詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、列車を監視・制御する運行管理システム用の表示装置を例にとり、本発明を実施するための形態を適宜図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るシステムの全体構成と全点試験装置の機能構成例とを示すブロック図である。本システムは、従来は必要であった現場設備シミュレータを使用しないで表示装置画面の全点試験を行うものであり、図1に示すように、通信ケーブルやLAN(Local Area Network)などを介して相互に接続される全点試験装置1と表示装置3とによって構成される。
【0020】
全点試験装置1は、キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンタなどの不図示の入出力装置と通信機能とを備えたコンピュータによって構成され、制御部10と記憶部20とを有してなる。全点試験装置1が備える不図示のCPU(Central Processing Unit)が所定のプログラムを実行することによってその機能が具現化される制御部10は、外部仕様入力部11、試験仕様書生成部12、全点試験実行部13、及び試験結果出力部14を備える。また、半導体メモリやハードディスク装置などで構成される記憶部20には、設備情報DB(Database)21、試験仕様書DB22、模擬入力情報DB23、保存画面DB24、及び試験結果DB25の各データベースを備える。
【0021】
外部仕様入力部11は、表示装置3に表示される画面に関する設計情報が記載されたドキュメント群からなる表示装置外部仕様6を入力して、それらの設計情報を設備情報DB21に格納する(詳細は図2を用いて後記する)。試験仕様書生成部12は、設備情報DB21から全点試験に必要な情報を読み出して試験仕様書を生成し、試験仕様書DB22に格納する(詳細は図3を用いて後記する)。全点試験実行部13は、模擬入力情報生成部131、画面保存部132、差分抽出部133、シンボル変化判定部134を備え、試験仕様書DB22から読み出した試験仕様書にしたがって全点試験を実行し、試験結果を試験結果DB25に格納する(詳細は図4〜9を用いて後記する)。試験結果出力部14は、試験結果を試験結果DB25から読み出して、試験結果が記載されたドキュメントである全点試験結果7をプリンタやディスプレイなどに出力する(詳細は図10を用いて後記する)。
【0022】
設備情報DB21には、表示装置画面上に表示される設備シンボルの図形パターンや座標などの情報と、設備から送信される入力データによってそれら設備シンボルの表示がどのように変化すべきかが規定された情報と、が格納される。試験仕様書DB22には、実行すべき全点試験の試験内容が記載された試験仕様書が格納される。模擬入力情報DB23には、全点試験を実行するときに表示装置3に入力する模擬入力情報が格納される。保存画面DB24には、全点試験を開始する前に表示装置3から取得した初期画面のデータと、表示装置3から取得した個別の試験項目毎の試験結果画面のデータとが格納される。また、試験結果DB25には、実行した個別の試験項目毎に試験結果が適切であったか否かを判定した判定結果が格納される。
【0023】
一方、表示装置3は、不図示の操作パネルと表示制御部31と記憶部32と大型ディスプレイ装置などの表示部33とを備えたコンピュータによって構成される。記憶部32には、設備情報DB21のもととなる各種設計情報が記載された表示装置外部仕様6に基づいて、実際に設備から入力データを受信したときに表示部33に所定の画面を表示するように製作された表示プログラム321及び表示画面データ322が記憶される。また、表示装置3は、表示装置画面の全点試験を実行するときには全点試験モードで動作するようになっており、この全点試験モードでは、プログラム制御によって動作する表示制御部31が、全点試験装置1から送信される擬似入力情報を表示プログラム321に引き渡し、表示画面データ322を参照して表示プログラム321によって表示部33に表示された画面の画像データを取得して、全点試験装置1に送信する。
【0024】
なお、図1のシステム構成では全点試験装置1と表示装置3とは、それぞれ別の装置となっているが、全点試験装置1を構成する制御部10の各種プログラムと記憶部20の各種データベースとを表示装置3に追加して実装することにより、両者を単一の装置に統合して実現してもよい。
【0025】
図2は、全点試験装置の外部仕様入力部の動作についての説明図である。ここでは、全点試験装置1の外部仕様入力部11が、顧客提示資料である各種ドキュメント群からなる表示装置外部仕様6を入力して、設備情報DB21に格納する各種設計情報を抽出する動作について説明する。
【0026】
図2に示すように、外部仕様入力部11が入力する表示装置外部仕様6は、表示装置ドキュメント61、入力情報仕様書62、設備間関連表63、及び設備画面仕様書64を含んで構成される。またこれらのドキュメント群から抽出されて設備情報DB21に格納される設計情報は、設備シンボル図形情報211、設備シンボル変化情報212、状態表示情報213、制御応答情報214、設備間関連情報215、設備シンボル配置情報216などである。
【0027】
表示装置ドキュメント61には、表示装置画面に表示される各設備種別(設備種別とは、同じ仕様を有し設備シンボルが同じように表示変化をする設備をまとめたものである。)の設備シンボルがどのような図形パターンで表示されるか、また、設備からデータを受信したときに、図形パターンがどのように表示変化するか、が定義される。表示装置ドキュメント61は、顧客承認データであり、ここでは、設備情報DB21に格納される設備シンボル図形情報211と、設備シンボル変化情報212とを生成するために、記憶媒体などから全点試験装置1に入力されるものとする。
【0028】
入力情報仕様書62には、表示装置画面に表示されるそれぞれの設備シンボルに対して、当該設備シンボルが表示変化する契機となる入力データが定義される。入力データには、設備の状態を示す状態表示情報と、設備に対する制御指令の応答として返送される制御応答情報と、の2種類があり、それぞれどのようなビット列で表されるかが記述される。入力情報仕様書62は、顧客提示データであり、ここでは、設備情報DB21に格納される状態表示情報213と、制御応答情報214とを生成するために、記憶媒体などから全点試験装置1に入力されるものとする。
【0029】
設備間関連表63には、表示装置画面に表示されるそれぞれの設備シンボルに対する設備と連動することにより、当該設備シンボルが表示変化するときに連動して設備シンボルが表示変化する他の設備が定義される。設備間関連表63は、顧客提示データであり、ここでは、設備情報DB21に格納される設備間関連情報215を生成するために、記憶媒体などから全点試験装置1に入力されるものとする。
【0030】
設備画面仕様書64には、表示装置画面(設備画面)に表示されるそれぞれの設備シンボルが設備画面内の、どの位置に配置され、どのような形状で表示されるかが定義される。設備画面仕様書64は、顧客承認データであり、ここでは、設備情報DB21に格納される設備シンボル配置情報216を生成するために、記憶媒体などから全点試験装置1に入力されるものとする。なお、設備画面仕様書64に基づいて、表示装置3の表示画面データ322内にも同様な内部データが生成されるため、設備画面仕様書64を入力する代わりに、当該内部データを参照するものとしてもよい。
【0031】
設備シンボル図形情報211とは、表示装置ドキュメント61から抽出される設計情報であり、吹出しにて例示するように、表示装置画面に設備をシンボル化して表示するときの図形パターンを設備の種別毎に定めたものである。このデータ例では、信号機Aと軌道回路Bとの2種類の設備の図形パターンが定められている。なお、例えば同じ信号機であっても、仕様が異なるものはそれぞれが区別できるように、それぞれに異なる設備種別と図形パターンとが割り当てられる。
【0032】
設備シンボル変化情報212とは、表示装置ドキュメント61から抽出される設計情報であり、吹出しにて例示するように、設備の種別毎に所定の入力データを受信したときの設備シンボルの図形パターンの表示変化の内容を規定するものである。入力データには、状態表示情報と制御応答情報との2種類があり、それぞれの入力データに対する表示変化の内容が規定される。このデータ例では、信号機Aと軌道回路Bとの2種類の設備に対応する状態変化情報を受信したときの設備シンボルの表示色の変化内容がそれぞれ規定されている。ここで、例えば「線:白」は、設備シンボルの図形パターンを形成している線の色(以下、「線色」という。)が「白」である状態を表し、例えば「面:黒」は、図形パターンに含まれる閉領域(線で囲まれた領域)の色(以下、「面色」という。)が「黒」である状態を表す。したがって、信号機Aについては、変化前に(既定の状態で)線色が「白」で面色が「黒」であったものが、変化後(特定の入力データを受信したとき)に線色はそのまま「白」で変わらず面色が「青」に変化することが規定されている。
【0033】
状態表示情報213とは、入力情報仕様書62から抽出される設計情報であり、吹出しにて例示するように、それぞれの設備の状態を表す設備シンボルの図形パターンを表示する契機となる入力データを規定するものである。このデータ例では、設備名称が「A1」である信号機Aと設備名称が「B1」である軌道回路Bとの2つの設備に対する状態表示情報の入力データのビット位置が規定されており、前者に対応する入力データは「1(1)」(1バイト目の第1ビットが「1」で他のビットはすべて「0」)であり、後者に対応する入力データは「5(6)」(5バイト目の第6ビットが「1」で他のビットはすべて「0」)であることが規定されている。なお、この例では入力データが1ビットによって規定されているが、任意の2ビット以上の組合せによって入力データを規定したり、同一の設備に対して複数種類の入力データを規定したりしてもよい。ただし、同一の設備に対して複数種類の入力データを規定する場合には、設備シンボル変化情報212を各入力データの種類に対応付けて規定しておく必要がある。
【0034】
制御応答情報214とは、入力情報仕様書62から抽出される設計情報であり、それぞれの設備に対して制御指令が送信されたときに当該設備から表示装置3に返送される制御応答に対応する入力データを規定するものである。データ例は図示を省略するが、状態表示情報213と同様に各設備から返送される制御応答情報の入力データのビット位置が規定される。
【0035】
設備間関連情報215とは、設備間関連表63から抽出される設計情報であり、吹出しにて例示するように、ある設備の設備シンボルと連動して設備シンボルが表示変化する他の関連設備を規定するものである。このデータ例では、設備名称が「A1」と「A2」とである2つの信号機Aに連動する軌道回路Bと軌道回路Cとの2種類の設備が関連設備として規定されており、前者に連動する関連設備名称は「B1」、「C3」、「B5」であり、後者に連動する関連設備名称は「B2」、「C4」、「B6」であることが規定されている。
【0036】
設備シンボル配置情報216とは、設備画面仕様書64から抽出される設計情報であり、吹出しにて例示するように、それぞれの設備の状態を表す設備シンボルの設備画面内における表示位置と変形パラメータとを規定するものである。画面内における表示位置は、例えば、設備シンボルを内包する矩形の左上頂点の水平方向位置を表すX座標と垂直方向位置を表すY座標とによって規定される。また、変形パラメータとは、設備シンボルの変形表示方法を規定するものであり、例えば、「横2倍」は標準の設備シンボルを水平方向(横方向)に2倍に拡大して表示することを表す。その他、表示色を変更したり、ブリンク表示させたりすることなども、変形パラメータによって指定することが可能である。このデータ例では、設備名称が「A1」である信号機Aと設備名称が「B1」である軌道回路Bとの2つの設備に対応する設備シンボルについて、前者は標準サイズで座標(200,40)に表示し、前者は横方向に2倍に拡大したサイズで座標(170,60)に表示すべきことが規定されている。
【0037】
図3は、全点試験装置の試験仕様書生成部の動作についての説明図である。ここでは、全点試験装置1の試験仕様書生成部12が、設備情報DB21から必要な情報を読み出して試験仕様書221を生成し、試験仕様書DB22に格納する動作について説明する。
【0038】
試験仕様書生成部12は、まず、設備情報DB21から設備シンボル変化情報212、状態表示情報213、制御応答情報214、設備間関連情報215を読み込む。次に、状態表示情報213及び制御応答情報214に格納されているすべてのレコードのなかから、全点試験の対象とする設備画面(例えば、ある駅の構内線路図)に表示される設備名称に該当するレコードを順番に抽出する。抽出順序は、状態表示情報213、制御応答情報214の順で各レコードの登録順序にしたがうものとし、この抽出順序を示す一連番号を試験番号として、抽出したレコードの内容と対応付けたレコードを生成して、試験仕様書221に追加登録する。これにより、試験番号と、当該試験番号に対応する入力データ種別(状態表示情報か制御応答情報かの区別)と、入力データの割付ビットとからなるレコードが、試験仕様書221に追加登録される。図3の吹出しに示したデータ例では、まず状態表示情報213の1行目のレコードが抽出され、試験番号欄が「1」、入力データ種別欄が「状態表示情報」、割付ビット欄が「1(1)」である1行目のレコードが試験仕様書221に追加登録される。
【0039】
次に、試験仕様書生成部12は、抽出したレコードから設備種別及び設備名称を取得し、当該設備種別及び設備名称と一致する設備間関連情報215のレコードを検索して、当該レコードから関連設備名称を取得する。前記のデータ例では、設備種別「信号機A」及び設備名称「A1」が取得され、設備間関連情報215の1行目のレコードが検索されて、関連設備名称「B1,C3,B5」が取得される。
【0040】
続いて、試験仕様書生成部12は、抽出したレコードから取得した設備種別と、設備間関連情報215から取得した関連設備名称を設備シンボル配置情報216(図2)を検索することで取得される設備種別とのそれぞれに該当するレコードを、設備シンボル変化情報212から検索して、当該レコードからそれぞれの設備名称に該当する設備シンボルの変化前と変化後との情報を取得する。そして、取得した各設備シンボルの変化前と変化後との情報から、試験仕様書221の画面変化内容欄に登録する情報を生成して、試験仕様書221の当該レコードに登録する。前記のデータ例では、設備名称が「A1」である信号機A、設備名称が「B1」である軌道回路B、設備名称が「C3」である軌道回路Cに該当するレコードが設備シンボル変化情報212から検索され、設備名称「A1」に対応する設備シンボルの面色が「黒」から「青」に変化し、設備名称「B1」に対応する設備シンボルの線色が「白」から「緑」に変化することなどを示す、「A1:面(黒→青)、B1:線(白→緑)、・・・」が試験仕様書221の画面変化内容欄に登録されることになる。
【0041】
同様に、全点試験の対象とする設備画面に表示される設備に対するそれぞれの入力データに対して試験番号が順次割り振られ、割付ビット欄に示される入力データを入力したときの画面変化内容が画面変化内容欄に記載されたレコードが試験仕様書221に登録されていく。以上の処理によって試験仕様書221に登録される各レコードは、それぞれが1つの試験項目に該当し、入力データ種別欄及び割付ビット欄のデータによって規定される入力データを表示装置3に入力し、表示装置画面の変化内容が画面変化内容欄の記載内容に一致するか否かを確認する、という試験仕様を定義するものである。
【0042】
図4は、全点試験装置の模擬入力情報生成部の動作についての説明図である。ここでは、全点試験装置1の模擬入力情報生成部131が、試験仕様書DB22から必要な情報を読み出して模擬入力情報231を生成し、模擬入力情報DB23に格納する動作について説明する。
【0043】
模擬入力情報生成部131は、試験仕様書DB22から試験仕様書221を読み込んで、試験番号欄と入力データ種別欄と割付ビット欄の3列のデータを複写することによって模擬入力情報231を生成し、模擬入力情報DB23に格納する。
【0044】
図5は、全点試験装置の全点試験実行部における画面保存動作の説明図である。ここでは、全点試験装置1の全点試験実行部13及び画面保存部132が、模擬入力情報DB23から模擬入力情報231を読み込んで全点試験を実行し、実行結果の画面の画像データを保存画面データ241として保存画面DB24に格納する動作について説明する。
【0045】
全点試験実行部13は、図示しない全点試験の対象画面を選択する操作を受け付けたのち、まず表示装置3から全点試験の対象となる設備画面の初期状態の画面データ(初期画面)を取得する。取得した画面データは、画面保存部132が保存画面データ241に登録する。このとき、図5の吹出しにて例示するように、例えば、初期画面の保存画面データ本体をあるデータブロックに格納し、当該データブロックへのリンク情報を、保存画面データ241の試験番号が「0」のレコードに登録しておく。
【0046】
次に、全点試験実行部13は、模擬入力情報DB23から当該設備画面に該当する模擬入力情報231を読み込み、先頭のレコード(試験番号欄が「1」のレコード)から順に、該当する模擬入力データを生成して表示装置3へ1つずつ送信する。表示装置3は、予め全点試験モードで動作するように設定されているものとし、表示制御部31が受信した模擬入力データを表示プログラム321に引き渡し、表示プログラム321によって更新されたのちの画面データ(試験結果画面)を全点試験実行部13へ返送する。全点試験実行部13は、表示装置3から送信されてきた試験結果画面のデータを該当する試験番号とともに画面保存部132に引き渡す。画面保存部132は、引き渡された試験結果画面のデータを指定された試験番号と対応付けて保存画面データ241に追加登録する。これら一連の処理を終えたのち、全点試験実行部13は、次の模擬入力データを表示装置3へ送信し、同様の処理を繰り返す。これにより、最終的に保存画面データ241には、当該設備画面に関する全入力データに対する試験結果画面のデータが登録され保存されることになる。
【0047】
図6は、全点試験装置の全点試験実行部における試験結果判定動作の説明図である。ここでは、全点試験装置1の全点試験実行部13、差分抽出部133、及びシンボル変化判定部134が、保存画面DB24から保存画面データ241を読み込んで、それぞれの試験結果画面と初期画面との差分を抽出したのち、試験仕様書DB22から読み込んだ試験仕様書221の画面変化内容と一致するか否かを判定し、判定結果を試験結果251として試験結果DB25に格納する動作について説明する。
【0048】
全点試験実行部13は、全点試験の対象画面に関する全入力データに対する試験結果画面のデータが保存画面DB24に格納されると、保存画面DB24から保存画面データ241を読み込んで、それぞれの試験番号毎の試験結果画面のデータを取得し、初期画面と比較することによって、表示変化の内容が試験仕様書221に記載された画面変化内容と一致するか否かの判定を行う。その結果、表示変化の内容が試験仕様書221に記載された画面変化内容と一致すれば、当該試験番号と判定結果「OK」とからなるレコードを試験結果251に追加登録し、表示変化の内容が試験仕様書221に記載された画面変化内容と一致しなければ、当該試験番号と判定結果「NG」と判定結果に関する詳細データとからなるレコードを試験結果251に追加登録して、試験結果DB25に格納する。この判定にあたり、差分抽出部133は、それぞれの試験結果画面と初期画面との間で表示が異なる部分を2値で表したビットマップデータである差分画面データを生成する。この差分画面データの消し込みを行うことにより、試験結果画面に所期の表示変化以外の表示変化があったか否かを検出することができる。
【0049】
図7は、全点試験装置の差分抽出部の動作についての説明図である。ここでは、全点試験装置1の差分抽出部133が、ある試験結果画面と初期画面とから2値の差分画面データを生成する動作について説明する。
【0050】
図7に例示したように、差分抽出部133は、初期画面と試験結果画面とで表示色が一致している画素については「0」、表示色が異なる画素については「1」の2値データからなるビットマップデータを生成することで2値の差分画面データを生成する。図7のデータ例では、左上の初期画面と右上の試験結果画面とは、上側の信号機シンボルの面色と、上側の一部の軌道回路シンボルの線色(便宜的に太線にて標記。)とが異なっており、その他の部分は同一の表示となっているので、両者の表示色が異なる信号機シンボルの一部(黒丸部分)と、軌道回路シンボル図形の一部(太線部分)との画素を「1」とし、他は「0」とする2値の差分画面データが生成されることになる。
【0051】
図8は、設備シンボルの表示変化内容及び差分画面データの例である。変化前欄が初期画面における設備シンボルの表示画像であり、変化後欄が試験結果画面における対応する表示画像であると仮定すると、差分画面データとしては、差分欄に示したような2値のビットマップデータが生成される。なお、図8において斜線を施した部分は、白または黒以外の表示色を便宜的に標記したものである。
【0052】
図9は、全点試験装置のシンボル変化判定部の動作についての説明図である。ここでは、全点試験装置1のシンボル変化判定部134が、ある試験結果画面の初期画面からの変化は該当する試験項目に対する所期の画面変化内容に一致するか否かを判定する動作について説明する。
【0053】
シンボル変化判定部134は、試験番号によって識別されるそれぞれの試験項目について、保存画面DB24に保存された試験結果画面が、試験仕様書221に記載されている所期の画面変化内容に一致するか否かを、差分画面データを用いて判定する。
【0054】
図9に例示するように、試験仕様書221に登録されている試験番号が「1」のレコードの試験項目についての試験結果画面から、左下のような判定前の差分画面データが差分抽出部133によって生成されたものと仮定する。
【0055】
このとき、シンボル変化判定部134は、まず、試験仕様書221から、試験番号が「1」のレコードの画面変化内容欄から所期の画面変化内容のデータを読み込むことにより、設備名称が「A1」である設備シンボルの面色が「黒」から「青」に変化し、設備名称が「B1」である設備シンボルの線色が「白」から「緑」に変化すべきことなどを把握する。
【0056】
次に、シンボル変化判定部134は、設備シンボル配置情報216からそれらの設備名称を有するレコードを検索して、当該レコードの設備種別欄、X座標欄、Y座標欄、及び変形パラメータ欄のデータを読み込むことにより、設備名称が「A1」である設備シンボルの設備種別は「信号機A」であり、その表示位置の座標は(200,40)であり、標準サイズで表示され、設備名称が「B1」である設備シンボルの設備種別は「軌道回路B」であり、その表示位置の座標は(170,60)であり、横方向に2倍に拡大したサイズで表示されるべきことなどを把握する。
【0057】
続いて、シンボル変化判定部134は、設備シンボル図形情報211からそれらの設備種別を有するレコードを検索して、当該レコードの図形パターン欄及び標準サイズ欄のデータを読み込むことにより、信号機Aや軌道回路Bなどの設備シンボルの図形パターン及び標準サイズを取得する。
【0058】
それら各設備名称について把握及び取得した情報に基づいて、次に、シンボル変化判定部134は、初期画面と試験結果画面とで表示が変化するべきそれぞれの設備シンボルについて、変化前の画像データと変化後の画像データとの両者を生成し、例えば、信号機A1に対応して、変化前の面色が「黒」である信号機Aの図形パターンと、変化後の面色が「青」である信号機Aの図形パターンと、の2つの画像データを生成する。
【0059】
続いて、シンボル変化判定部134は、それら生成した2つの画像データと、保存画面データ241に保存された実際の初期画面と試験結果画面とにおける当該設備シンボルの表示位置の座標の画像データとをそれぞれ比較することにより、両者の表示が正しく行われているか否かを判定し、表示が正しい場合は、該当する設備シンボルが表示される矩形領域に対応する差分画面データを削除する。これにより、信号機A1に対応する設備シンボルの表示変化が正しければ、図9に例示するように、判定前の差分画面から対応する矩形領域a1の差分画像データが削除され、判定後の差分画面のようになる。
【0060】
以上のような処理を初期画面と試験結果画面とで表示が変化すべきそれぞれの設備シンボルについて行うことにより、シンボル変化判定部134は、判定前の差分画面から順次対応する矩形領域a1,b1,c3,b5の差分画面データを消し込んでいく。そして、最終的に図9に例示した判定後の差分画面のように、すべての差分画面データが削除されれば、他に表示が変化している部分はないことが分かるので、当該試験結果画面のシンボル変化は正常(OK)と判定し、一部でも差分画面データが残っていれば、他に表示が変化している部分があることが分かるので、当該試験結果画面のシンボル変化は異常(NG)と判定する。
【0061】
図10は、全点試験装置の試験結果出力部の動作についての説明図である。ここでは、全点試験装置1の試験結果出力部14が、試験仕様書DB22から読み込んだ試験仕様書221と、試験結果DB25から読み込んだ試験結果251とから、全点試験結果7を出力する動作について説明する。
【0062】
試験結果出力部14は、試験結果251が試験結果DB25に格納されると、試験結果251の作成日時を試験日時とし、選択された試験対象画面の名称を記載したヘッダ情報と、それに続く各試験番号の試験内容と試験の判定結果とのリストからなる全点試験結果7をプリンタやディスプレイなどに出力する。
【0063】
図10の吹出しにて例示した全点試験結果7の出力データのうち、模擬入力情報と画面変化内容のデータは、試験仕様書221(図3)の該当レコードから取得した入力データ種別欄、割付ビット欄、及び画面変化内容欄の各データを編集することによって生成する。また、判定結果と詳細のデータは、試験結果251(図6)の該当レコードから判定結果欄及び詳細欄のデータを取得して生成する。
【0064】
図11は、本発明に係る全点試験方法の全体的な流れを示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って本全点試験方法における処理の流れを説明する。
【0065】
まず、ステップS1にて、全点試験装置1(外部仕様入力部11)は、表示装置の外部仕様を入力し、全点試験に必要な各種の設計情報を抽出して設備情報DB21に格納する(図2参照)。次に、ステップS2にて、全点試験装置1(試験仕様書生成部12)は、設備情報DB21を読み込んで試験仕様書221を作成し、試験仕様書DB22に格納する(図3参照)。次に、ステップS3にて、全点試験装置1(模擬入力情報生成部131)は、試験仕様書DB22を読み込んで全点試験の実行に必要な模擬入力情報231を生成し、模擬入力情報DB23に格納する(図4参照)。次に、ステップS4にて、全点試験装置1(全点試験実行部13)は、全点試験の対象画面の初期画面を保存画面DB24に保存する。次に、ステップS5にて、全点試験装置1(全点試験実行部13)は、試験仕様書221にしたがって全点試験を実行し、各試験番号に対する試験結果画面を保存画面DB24に保存する(図5参照)。
【0066】
続いて、全点試験装置1(全点試験実行部13)は、ステップS6以下で各試験番号に対する試験結果が正常(OK)か異常(NG)かを判定し、最後にステップS12にて全点試験結果7を出力して処理を終了する(図10参照)。
【0067】
試験結果を判定するにあたっては、全点試験装置1(全点試験実行部13)は、まずステップS6にて試験番号を1に設定し、ステップS7からステップS9で当該試験番号についての試験結果の判定を行い、すべての判定が終了していなければ(ステップS10で「No」)、ステップS11で次の試験番号に更新してステップS7に処理を戻して同様な判定処理を繰り返す。また、すべての判定が終了すれば(ステップS10で「Yes」)、ステップS12に処理を進める。
【0068】
個々の試験番号についての試験結果を判定するにあたっては、全点試験装置1(差分抽出部133)は、まずステップS7にて、保存画面DB24に保存しておいた全点試験の対象画面の初期画面と試験結果画面との差分(2値の差分画面データ)を抽出する(図7参照)。次に、ステップS8にて、設備シンボルの変化内容が試験仕様書221に記載されている画面変化内容と一致しているか否かを判定し、ステップS9にて、判定結果を試験結果DB25に登録する(図6参照)。
【0069】
図12は、図11のステップS8において、シンボル変化内容の適否を判定する処理の詳細フローチャートである。この処理は、シンボル変化判定部134によって実行される(図9参照)。
【0070】
まず、ステップS81にて、試験仕様書221の当該試験番号に対応するレコードから各設備シンボルについての所期の画面変化内容を取得する。次に、ステップS82にて、表示が変化するすべての設備シンボルについて判定が終了したか否かを判定し、すべての判定が終了していなければ(ステップS82で「No」)ステップS83に処理を進め、すべての判定が終了したら(ステップS82で「Yes」)ステップS87に処理を進める。
【0071】
ステップS83では、表示変化の妥当性が未判定の設備の設備シンボル座標、つまり、当該設備シンボルの表示位置の座標を取得し、続くステップS84にて、初期画面と試験結果画面との双方で当該座標に表示されている画像データを相互に比較することによって、当該設備シンボルの表示変化の妥当性を判定し、判定結果が妥当であれば(ステップS85で「Yes」)、ステップS86にて、先に抽出した差分画面から該当部分の差分データを削除したのち、ステップS82に処理を戻して同様の処理を繰り返す。一方、判定結果が妥当でなければ(ステップS85で「No」)、ステップS88にて、判定結果をNGに設定して処理を終了する。
【0072】
また、ステップS87では、差分画面に差分データがないか否かを判定し、差分データがなければ(ステップS87で「Yes」)、ステップS89にて判定結果をOKに設定して処理を終了する。一方、差分データがある場合は(ステップS87で「No」)、ステップS88にて判定結果をNGに設定して処理を終了する。
【0073】
以上説明したように、本発明に係る全点試験方法によれば、表示装置の外部仕様を記憶媒体(例えば、CD−ROM、DVD、可搬型メモリなど)を用いて全点試験装置1に入力し、全点試験の対象画面を選択して試験開始を指示することで、表示装置画面の全点試験が自動的に実行され、個々の設備からの入力データに対する画面の変化の妥当性が自動的に判定されて、全点試験の結果が出力される。したがって、現場設備シミュレータを用いることも正解画像を準備することもなしに表示装置画面の全点試験を容易に実行することができる。
【0074】
以上にて、本発明を実施するための形態の説明を終えるが、本発明の実施の態様は前記の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。また、運行管理システム用の表示装置を例とする形態について説明したが、本発明の適用対象は運行管理システムに限定されるものではなく、画面に配置される各種シンボル図形の表示が外部からのデータ受信や操作によって変化する表示装置を備えた各種システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 全点試験装置
10 制御部
11 外部仕様入力部
12 試験仕様書生成部
13 全点試験実行部
131 模擬入力情報生成部
132 画面保存部
133 差分抽出部
134 シンボル変化判定部
14 試験結果出力部
20 記憶部
21 設備情報DB
211 設備シンボル図形情報
212 設備シンボル変化情報
213 状態表示情報
214 制御応答情報
215 設備間関連情報
216 設備シンボル配置情報
22 試験仕様書DB
221 試験仕様書
23 模擬入力情報DB
231 模擬入力情報
24 保存画面DB
241 保存画面データ
25 試験結果DB
251 試験結果
3 表示装置
31 表示制御部
32 記憶部
321 表示プログラム
322 表示画面データ
33 画面表示部
6 表示装置外部仕様
61 表示装置ドキュメント
62 入力情報仕様書
63 設備間関連表
64 設備画面仕様書
7 全点試験結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に表示され、現場設備の状態を示す複数の設備シンボルが配置された画面において、配置された前記設備シンボルそれぞれの表示変化が妥当か否かを確認するための全点試験装置による表示装置画面の全点試験方法であって、
前記全点試験装置が、前記表示装置の外部仕様として、前記設備シンボルの表示パターン及び配置位置と、前記現場設備から前記表示装置に入力される各入力信号のデータ形式と、前記入力信号のそれぞれが入力されたときの前記設備シンボルの期待される表示変化内容を示す情報と、を入力して記憶部に記憶するステップと、
前記全点試験装置が、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記入力信号のそれぞれを擬似する擬似入力信号を前記表示装置に入力して、当該擬似入力信号を入力したのちの前記表示装置の画面表示内容を前記記憶部に保存するステップと、
前記全点試験装置が、前記保存した画面表示内容と前記記憶部に別途保存しておいた初期の画面表示内容との差異は、前記記憶部に記憶された該当する前記表示変化内容と一致するか否か、を判定するステップと、を含む
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置画面の全点試験方法において、
前記入力信号は、前記現場設備の状態を表示するための状態表示情報と、前記表示装置から制御指令が送信されたときに現場設備から返送される制御応答情報とを含み、
前記表示装置の外部仕様として入力し前記記憶部に記憶する情報は、前記現場設備が連動して動作することによって前記設備シンボルの表示が連動して変化する前記現場設備間の関連情報を含む
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示装置画面の全点試験方法において、
前記全点試験装置が、前記差異は前記記憶部に記憶された該当する前記表示変化内容と一致するか否か、を判定するとき、
該当する前記設備シンボルの表示変化内容と前記記憶された該当する前記表示変化内容との一致を判定するとともに、
前記保存した画面表示内容と前記初期の画面表示内容との画像が異なる部分を2値で表す差分画面から、前記表示変化内容に該当する前記設備シンボルの変化前と変化後との画像が異なる部分を2値で表す差分データを削除したのちの差分データの有無によって、前記表示変化内容との一致を判定する
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の表示装置画面の全点試験方法において、
前記全点試験装置は、前記現場設備から前記表示装置に入力される各入力信号毎の、前記期待される表示変化内容と、当該表示変化内容との一致の判定結果とを含む
全点試験結果を出力する
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表示装置画面の全点試験方法において、
前記表示変化内容は、前記設備シンボルの表示色の変化、表示サイズの変化、図形パターンの変化を含む
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験方法。
【請求項6】
表示装置に表示され、現場設備の状態を示す複数の設備シンボルが配置された画面において、配置された前記設備シンボルそれぞれの表示変化が妥当か否かを確認するための全点試験装置であって、
前記表示装置の外部仕様として、前記設備シンボルの表示パターン及び配置位置と、前記現場設備から前記表示装置に入力される各入力信号のデータ形式と、前記入力信号のそれぞれが入力されたときの前記設備シンボルの期待される表示変化内容を示す情報と、を入力して記憶部に記憶する外部仕様入力部と、
前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記入力信号のそれぞれを擬似する擬似入力信号を前記表示装置に入力する模擬入力情報生成部と、
当該擬似入力信号を入力したのちの前記表示装置の画面表示内容を前記記憶部に保存する画面保存部と、
前記保存した画面表示内容と前記記憶部に別途保存しておいた初期の画面表示内容との差異が、前記記憶部に記憶された該当する前記表示変化内容と一致するか否か、を判定するシンボル変化判定部と、を備える
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置画面の全点試験装置において、
前記入力信号は、前記現場設備の状態を表示するための状態表示情報と、前記表示装置から制御指令が送信されたときに現場設備から返送される制御応答情報とを含み、
前記表示装置の外部仕様として入力し前記記憶部に記憶する情報は、前記現場設備が連動して動作することによって前記設備シンボルの表示が連動して変化する前記現場設備間の関連情報を含む
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の表示装置画面の全点試験装置において、
前記シンボル変化判定部が、前記差異が前記記憶部に記憶された該当する前記表示変化内容と一致するか否か、を判定するとき、
該当する前記設備シンボルの表示変化内容と前記記憶された該当する前記表示変化内容との一致を判定するとともに、
前記保存した画面表示内容と前記初期の画面表示内容との画像が異なる部分を2値で表す差分画面から、前記表示変化内容に該当する前記設備シンボルの変化前と変化後との画像が異なる部分を2値で表す差分データを削除したのちの差分データの有無によって、前記表示変化内容との一致を判定する
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の表示装置画面の全点試験装置において、
前記現場設備から前記表示装置に入力される各入力信号毎の、前記期待される表示変化内容と、当該表示変化内容との一致の判定結果とを含む全点試験結果を出力する、試験結果出力部を備えた
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の表示装置画面の全点試験装置において、
前記表示変化内容は、前記設備シンボルの表示色の変化、表示サイズの変化、図形パターンの変化を含む
ことを特徴とする表示装置画面の全点試験装置。
【請求項11】
請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の表示装置画面の全点試験装置を備えた
ことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−226683(P2012−226683A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95847(P2011−95847)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】