説明

表示装置

【課題】有機エレクトロルミネッセンス素子からなる画素を複数有する表示装置において、輝度を犠牲にすることなく、視野角依存性を低減しうる表示装置を提供する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子からなる画素を複数有する表示装置であって、少なくとも1つの前記画素が、視野角依存性の異なる複数の部分に区分されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子)を複数配列した表示装置に係り、詳しくは、視野角依存性を改善した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに変わる表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)を用いたディスプレイが注目されている。このディスプレイには、自発光性でバックライトを要せず、大面積化が容易であること、各種材料によって所望の発色が得られること、また低電圧で駆動可能であること、さらに高速応答性に優れることなどの種々の利点がある。そして、材料開発を含めてデバイス化のための応用研究が精力的に行われている。
【0003】
また最近では、携帯電話のサブディスプレイ、車載ディスプレイやデジタルカメラのディスプレイなどの次世代ディスプレイとして市場に広まりつつある。
【0004】
有機EL素子は、発光層に到達した電子と正孔が再結合する際に生じる発光を利用した、キャリア注入型の面発光デバイスであり、図8は有機EL素子の一般的構成を示す模式図である。図8に示す有機EL素子は、透明基板14上に陽極となる透明電極13が形成され、該透明電極13上に発光層を含む有機化合物層12、該有機化合物層12上に陰極の金属電極11が積層された構成である。有機化合物層12は発光層以外に電子輸送層、正孔輸送層などが目的に応じて適宜積層され、一般的に有機化合物層12の層厚は100nm程度の薄膜である。図8において有機化合物層12内の発光層で生じた光は、透明電極13を通して基板14側から取り出される。
【0005】
また図9は、有機EL素子の他の一般的構成を示す模式図である。図9に示す有機EL素子は、基板24上に反射電極23、該反射電極23上に発光層を含む有機化合物層22、該有機化合物層22上に透明電極21が形成された構成を有し、発光層で生じた光は透明電極21を通して基板24とは逆側に取り出される。
【0006】
上記の通り、有機EL素子は自発光デバイスであり、かつ100nm程度の薄膜からなり、反射性の電極を備えていることから、デバイス内で発光した光が強めあったり弱めあったりする所謂干渉現象を起こす。そのため、輝度や発光スペクトルが視野角によって変動することが知られている。
【0007】
このような視野角依存性は、表示装置としての応用を考えた場合、表示品位を低下させる問題となる。かかる問題に対処する技術が特許文献1に開示されており、この特許文献1によれば、干渉条件として視野角が0°で弱めあいの条件に設定することにより、輝度の視野角依存性を低減させるというものである。
【0008】
【特許文献1】特許第2843924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示された技術は、視野角依存性の改善には一定の効果を示すものの、表示装置の輝度そのものが犠牲になるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、有機エレクトロルミネッセンス素子からなる画素を複数有する表示装置において、輝度を犠牲にすることなく、視野角依存性を低減しうる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成すべく、本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子からなる画素を複数有する表示装置において、少なくとも1つの前記画素が、視野角依存性の異なる複数の部分に区分されていることを特徴とする表示装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子でからなる画素を複数有する表示装置において、少なくとも1種類の発光色について、視野角依存性の異なる複数の前記画素を有することを特徴とする表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の表示装置によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子からなる画素を複数有する表示装置において、表示装置の輝度を犠牲とすることなく、視野角依存性を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限るものではない。
【0015】
有機EL素子を用いて、文字や絵を表示するためには、素子をマトリクス状に配置して表示装置の形態とすることが必要となる。有機EL素子をマトリクス状に配置する方式としては、いわゆるXY単純マトリクス型で時分割のデューティ駆動をさせる方式と、薄膜トランジスター(TFT)などのアクティブ素子を画素ごとに配置したアクティブ駆動方式とが一般的である。単純マトリクス方式は十分な輝度を得るために素子に大きな電流を流す必要があるため耐久性の面で不利となる。現在、実用にもっとも近いのはアクティブ駆動型と考えられている。本発明は、アクティブ駆動型に限定されるものではないが、ここではアクティブ駆動回路を備えた基板上に画素電極、有機化合物層、対向電極を形成し、基板とは逆側に光を取り出す形態として本発明の具体的構成を説明する。
【0016】
本発明の表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子からなる画素を複数有する表示装置であって、少なくとも1つの前記画素が、視野角依存性の異なる複数の部分に区分されている形態を含む。この表示装置には複数の画素ユニットがマトリクス状に配列されており、各画素ユニットは発光色の異なる複数の画素、例えば、赤色発光画素、緑色発光画素及び青色発光画素で構成される。そして、そのうちの少なくとも1色を発光する画素が視野角依存性の異なる複数の部分に区分されている。
【0017】
本形態の表示装置は、正面での輝度が高く、視野角が大きくなるにつれて輝度が低下する部分(部分α)と、正面での輝度はやや低いが視野角が大きくなるにつれて輝度が増加する部分(部分β)とに区分されていることが好ましい。その結果、正面での輝度を確保した上で、輝度の視野角依存性を低減することが可能になる。具体的に、正面での輝度は、正面での輝度が高い部分(部分α)のみを有する構成に対して80%以上の輝度であることが好ましい。また、区分される複数の部分は素子分離膜等の部材によって離間して配置されていてもよいし、離間せずに隣接して配置されていてもよい。
【0018】
本形態において、全ての画素が視野角依存性の異なる複数の部分に区分された画素であってもよいが、全ての画素が区分されていなくてもよい。つまり、区分されていない画素と区分された画素とを両方有する構成であってもよい。この場合には、両者の割合を調節することによって視野角依存性の調整を行うことができる。
【0019】
また、上記両方有する場合には、区分されていない画素と区分された画素とが規則的に配列されていてもよいが、区分された画素が不規則的に点在して配置されていてもよい。
【0020】
さらに、本形態において部分αの発光面積と部分βの発光面積との比を調節することによっても視野角依存性の調整を行うことができる。
【0021】
なお、本発明において画素とは、独立して発光の制御が可能である最小の単位を指すことにする。そして画素ユニットとは、発光色の異なる複数の画素で構成され、各画素の混色によって所望の色の発光を可能とする最小の単位を指すことにする。
【0022】
また、本発明の表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子からなる画素を複数有する表示装置であって、少なくとも1種類の発光色について、視野角依存性の異なる複数の前記画素を有する形態を含む。この表示装置には、複数の画素ユニットがマトリクス状に配列されており、各画素ユニットは発光色の異なる複数の画素、例えば、赤色発光画素、緑色発光画素及び青色発光画素で構成される。そして、そのうちの少なくとも1種類の発光色について視野角依存性の異なる複数の画素を有する。
【0023】
つまり、本形態の表示装置は視野角依存性の異なる画素をそれぞれ独立して駆動制御することが可能である。
【0024】
本形態の表示装置を構成する画素のうち少なくとも1種類の発光色について、正面での輝度が高く視野角が大きくなるにつれて輝度が低下する画素(画素δ)と、正面での輝度はやや低いが視野角が大きくなるにつれて輝度が増加する画素(画素γ)とを有することが好ましい。その結果、正面での輝度を確保した上で、輝度の視野角依存性を低減することが可能になる。具体的に、正面での輝度は、正面での輝度が高い画素(画素δ)のみを有する構成に対して80%以上の輝度であることが好ましい。また、上記画素δ及び画素γは素子分離膜等の部材によって離間して配置されていてもよいし、離間されずに隣接して配置されていてもよい。
【0025】
本形態において、配置される画素δの数と画素γの数との比を調節することによって、視野角依存性の調整を行うことができる。また、画素δと画素γの駆動電流をそれぞれ調節することによっても視野角依存性の調整を行うことができる。
【0026】
また、画素δと画素γとはそれぞれ規則的に配列されていてもよいが、画素δの中に画素γが不規則的に点在して配置されていてもよく、またその逆であってもよい。
【0027】
さらに、本形態において画素δの発光面積と画素γの発光面積との比を調節することによっても視野角依存性の調整を行うことができる。
【0028】
各部分あるいは各画素が二種以上の視野角依存性を備えるには、大きく分けて次の二種類の形態がある。
【0029】
まず、有機EL素子が、基板上に形成された第一の電極と、該第一の電極上に形成された有機化合物層と、該有機化合物層上に形成された第二の電極と、から構成されている場合に、第一の電極あるいは第二の電極の少なくともいずれか一方の厚みを変える形態が挙げられる。この形態にすることによって輝度の視野角依存性の異なる二種以上の素子形態を構成しうる。以下に、光取り出し側の電極の膜厚を変えることにより二種以上の視野角依存性を備える形態について説明する。
【0030】
アクティブ素子を備えた基板上に反射性の画素電極を形成し、パターニングする。このパターニングには、フォトレジスト法が好ましく用いられる。画素電極は、注入する電荷によって、仕事関数や反射率を考慮して選択できる。画素電極から正孔を注入する場合には、Crなどが好ましく用いられる。有機化合物層の形成は、真空蒸着法やインクジェット法や印刷法などを用いることができるが、膜厚の制御性の面で真空蒸着法が好ましく用いられる。対向電極としては透明導電膜であるITOやIZOをスパッタ法により形成する方法が好ましく用いられる。ITOから電子を注入する場合、電子注入層を用いてもよい。
【0031】
一実施形態として、Cr(反射性アノード)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/ITO(透明カソード)の構成において、有機化合物層を一定の膜厚に設定した上で、光取り出し側の電極であるITOの膜厚を調整する形態がある。この形態にすることにより、視野角依存性の異なる画素を作製することができる。例えば、視野角0°すなわち正面の輝度が高く、視野角が大きくなるにつれて輝度が低下する画素δ、一方、視野角0°の輝度はやや低いが、視野角が大きくなるにつれて輝度が増加する画素γを作製できる。この二種の画素を表示装置面内に適切に配置することによって、正面視野角0°の輝度を確保した上で、輝度の視野角依存性を低減した形態が可能となる。また、両画素の混在割合を調整することにより、表示装置の視野角依存性を調整、最適化することができる。
【0032】
本形態では、陽極(アノード)を全ての素子について同一の膜厚に形成する場合、少なくとも一色の画素において、画素電極としての陰極(カソード)の厚みは複数となる。
【0033】
また、上記画素δ及び画素γは視野角依存性が異なる部分α及び部分βとに区分された1画素であっても同様に膜厚を設定することにより視野角依存性を変えることができる。
【0034】
次に、有機EL素子が、基板上に形成された第一の電極と、該第一の電極上に形成された有機化合物層と、該有機化合物層上に形成された第二の電極と、から構成されている場合に、前記有機化合物層の中の少なくとも一層以上の厚みを変える形態が挙げられる。この形態にすることによって輝度の視野角依存性の異なる二種以上の素子形態を構成しうる。以下に説明する。
【0035】
一実施形態として、Cr(反射性アノード)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/ITO(透明カソード)の構成において、光取り出し側の電極であるITOの膜厚は固定したままで、構成する有機EL層の膜厚を適正に設定する形態が挙げられる。この形態にすることにより、視野角依存性を変えることができる。例えば、反射電極(陽極)と発光層との間の正孔輸送層の膜厚を変化させることにより、素子内の干渉効果を大きく変えることができる。すなわち、視野角0°すなわち正面の輝度が高く、視野角が大きくなるにつれて輝度が低下する部分α、視野角0°の輝度は低いが、視野角が大きくなるにつれて輝度が増加する部分βを作製することができる。この2つの部分に区分された画素を表示装置面内に適切に配置することによって、正面の輝度を確保した上で、視野角依存性を低減した形態が可能となる。また、2つの部分に区分された画素と区分されていない画素との混在割合を調整することにより表示装置の視野角依存性を調整、最適化することができる。
【0036】
また、有機EL素子が、反射電極と光透過電極とで有機材料層を挟持してなる有機EL素子の場合、有機化合物層と反射電極との界面から有機化合物層と光透過電極との界面までの光学距離が、発光色ピークλに対して3/4λと5/4λの厚みを有することが好ましい。このことは、電極間の干渉効果を利用し、輝度を確保しながら視野角依存性を低減するのに有効である。ここで、光学距離は、実際の媒質の距離と媒質の屈折率との積で表されるものである。
【0037】
また、上記部分α及び部分βはそれぞれ独立して駆動可能である画素δ及び画素γの2つの画素であっても同様に膜厚を設定することにより視野角依存性を変えることができる。
【0038】
以上の実施形態は、本発明の一形態である。本発明の表示装置においては、輝度の視野角依存性が異なる2種以上の素子を画素として基板上に配置する際、その配置の方法によって生じるモアレやムラを回避するように画素の位置関係を適切に調整する形態がより好ましい。
【0039】
なお、以上の実施形態では、光取り出し側の電極として透明電極であるITOを用いた構成について説明したが、光取り出し側の電極は半透明電極であってもよい。半透明電極とは、例えばAg、Pt、Al等の金属膜であり、1nm〜20nm程度の厚みを有するものである。このような半透明電極を用いた構成では、正面方向に光の指向性が強くなるものの、干渉効果を利用してより大きな輝度を得ることが可能である。
【0040】
また、以上の実施形態では、基板とは反対側から光を取り出すいわゆるトップエミッションタイプの素子について説明したが、本発明は基板側から光を取り出すいわゆるボトムエミッションタイプの素子にも適用できる。さらに、基板側に配置される電極が陰極(カソード)であり、基板と反対側の電極が陽極(アノード)であってもよい。
【0041】
本発明の表示装置は、広視野角であることが望まれる大画面のディスプレイ、例えば20インチを超えるディスプレイに好ましく適用させることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限るものではない。
【0043】
まず、以下の各実施例において共通部分となる本発明のアクティブマトリクス方式の表示装置における駆動方式、およびアクティブ素子を備えた基板について説明する。
【0044】
図1は、本発明の表示装置を模式的に示す平面図である。図示するように、パネル周辺には、走査信号ドライバー31や電流供給源32からなる駆動回路と、情報信号ドライバー33である表示信号入力手段(これらを「画像情報供給手段」と呼ぶ。)が配置され、それぞれゲート線とよばれるX方向走査線34、情報線と呼ばれるY方向配線35、及び電流供給線36に接続される。走査信号ドライバー31は、ゲート走査線34を順次選択し、これに同期して情報信号ドライバー33から画像信号が印加される。ゲート走査線34と情報線35との交点には表示用画素が配置される。
【0045】
次に、図2に示す等価回路を用いて、画素回路の駆動、動作について説明する。ゲート選択線41に選択信号が印加されると、TFT1:42がONとなり、情報信号線からコンデンサ(Cadd)43に表示信号が供給され、TFT2:44のゲート電位を決定する。各画素に配置された有機発光素子部(以下「EL素子部」と略す。)45には、TFT2:44のゲート電位に応じて、電流供給線46より電流が供給される。TFT2:44のゲート電位は1フレーム期間中Cadd43に保持されるため、EL素子部45にはこの期間中電流供給線46からの電流が流れ続ける。これにより1フレーム期間中、発光を維持することが可能となる。
【0046】
図3は、本実施例で用いられるTFTの断面構造を示す模式図である。ガラス基板上にポリシリコンp−Si層50が設けられ、チャネル領域51、ドレイン領域52、ソース領域53にはそれぞれ必要な不純物が選択され、ドープされる。この上にゲート絶縁膜54を介してゲート電極55が設けられると共に、上記ドレイン領域52、ソース領域53に接続するドレイン電極56、ソース電極57が形成されている。このとき、ドレイン電極56と画素電極58は、介在する絶縁膜59に開けたコンタクトホール60により接続される。
【0047】
上記画素電極58上に、多層あるいは単層の有機発光層61を形成し、共通電極62を順次積層し、アクティブ型有機発光表示素子を得ることができる。本発明の実施例としては、画素電極58をアノードとしてCrをパターニングし、共通電極62をカソードとしてITOを使用し、ITO側からの光取り出しとする。
【0048】
<実施例1>
上記と同等の構成のアクティブ素子とアノードを備えた基板を作製した。Crアノードの画素は、サイズが60μm×90μm、画素間部40μmで形成され、100×100ドットの表示装置とした。この電極上に以下の視野角依存性の異なる画素A、画素Bとを有する表示装置を作製した。まず、有機EL層の成膜は、真空蒸着法を用いて、8.0×10-5Paの真空度のもとで行った。各材料の化学構造は下記化1に示しており、各層の蒸着条件は下記表1の通りである。
【0049】
【表1】

【0050】
FL03:蒸着レート0.3nm/secで成膜した。
Alq3+coumarin6:Alq3の蒸着レートレート0.3nm/secに対して、coumarin6のドープ濃度が1vol%となるようにレートを調整し、共蒸着した。
Bphen:蒸着レート0.3nm/secで成膜した。
Bphen+Cs2CO3:Bphenの蒸着レート0.3nm/secに対して、Cs2CO3のドープ濃度が0.65vol%となるようにレートを調整し、共蒸着した。ここで、Cs2CO3(炭酸セシウム)はITOからの電子注入を促進する目的で用いている。
【0051】
【化1】

【0052】
有機層を蒸着した後、真空保持したまま、スパッタ用のチャンバーへ基板を移動し、陰極であるITOは、スパッタ法により、0.35nm/secの成膜レートで上記の膜厚まで成膜した。その際、シャドウマスクを用いて画素ごとに膜厚を調整した。なお、画素Aと画素Bの配置は図4のように50:50に設定し、ムラやモアレを生じないように配慮した。
【0053】
作製した表示装置に、1フレーム16.7msecにプログラミングされた駆動回路を接続し、緑色の発光を確認した。この表示装置の輝度の角度依存性を測定したデータが図.5である。
【0054】
比較のため、画素Aのみで構成された表示装置の角度依存性を示した。本実施例の表示装置は画素Aのみで構成された表示装置に対して、正面(視野角0°)の輝度が14%ほど低下したものの、十分な明るさを保持した上で、視野角に対して輝度の依存性が低減されていた。
【0055】
<実施例2>
実施例2では、上記の構成と同様なアクティブ素子とアノードを備えた基板上にRGBの画素ユニットを作製してフルカラー発光表示装置の実施例を示す。画素は、分割された形態を採用し、RGB各色ごとに視野角依存性の異なる2つの部分で各画素ユニットを構成した。Crアノードの画素は、30μm×60μmサイズの2つの部分から構成され、これらを区分する間隔は20μmである。そして画素間部は40μm、RGBの画素群の配置はデルタ型を採用し、72×90ドットの表示装置とした。この電極上に以下の視野角依存性の異なる部分RAとRBとを有する赤色発光画素、視野角依存性の異なる部分GAとGBとを有する緑色発光画素、視野角依存性の異なる部分BA、BBとを有する青色発光画素を作製した。まず、有機EL層の成膜は、真空蒸着法を用いて、8.0×10-5Paの真空度のもとで行った。各材料の化学構造は下記化1に示しており、各層の蒸着条件は下記表2から表4の通りである。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
FL03:蒸着レート0.3nm/secで成膜した。また、膜厚はシャドウマスクを用いて部分ごとに膜厚を調整した。
Alq3+coumarin6:Alq3の蒸着レートレート0.3nm/secに対して、coumarin6のドープ濃度が1vol%となるようにレートを調整し、共蒸着した。
CBP+Ir(piq)3:CBPの蒸着レートレート0.1nm/secに対して、Ir(piq)3のドープ濃度が12vol%となるようにレートを調整し、共蒸着した。BAlq:蒸着レート0.3nm/secで成膜した。
Bphen:蒸着レート0.3nm/secで成膜した。
Bphen+Cs2CO3:Bphenの蒸着レート0.3nm/secに対して、Cs2CO3のドープ濃度が0.65vol%となるようにレートを調整し、共蒸着した。ここで、Cs2CO3(炭酸セシウム)はITOからの電子注入を促進する目的で用いている。
【0060】
有機層を蒸着した後、真空保持したまま、スパッタ用のチャンバーへ基板を移動し、陰極であるITOは、スパッタ法により、0.35nm/secの成膜レートで上記の膜厚まで成膜した。なお、画素配置は図6のように設定し、ムラやモアレを生じないように配慮した。作製した表示装置に、1フレーム16.7msecにプログラミングされた駆動回路を接続し、各色の電流を調整した上で白色の発光を確認した。この表示装置の輝度の角度依存性を測定したデータが図7である。比較のため、RA、GA、BAのみで構成された表示装置の角度依存性を示した。本実施例の表示装置は比較例に対して、正面(視野角0°)の輝度が18%ほど低下したものの、十分な明るさを保持した上で、視野角に対して輝度の依存性が低減されていた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の表示装置を模式的に示す平面図である。
【図2】図1の表示装置の等価回路を示す説明図である。
【図3】本実施例で用いられるTFTの断面構造を示す模式図である。
【図4】実施例1の画素配置を示す説明図である。
【図5】実施例1の輝度の視野角依存性を示す説明図である。
【図6】実施例2の画素配置を示す説明図である。
【図7】実施例2の輝度の視野角依存性を示す説明図である。
【図8】有機EL素子の一般的構成の一例を示す模式図である。
【図9】有機EL素子の一般的構成の他例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
31 走査信号ドライバー
32 電流供給源
33 情報信号ドライバー
34 ゲート線(X方向走査線)
35 情報線(Y方向配線)
36 電流供給線
41 ゲート選択線
42 TFT1
43 コンデンサ(Cadd)
44 TFT2
45 EL素子部
46 電流供給線
50 p−Si層
51 チャネル領域
52 ドレイン領域
53 ソース領域
54 ゲート絶縁膜
55 ゲート電極
56 ドレイン電極
57 ソース電極
58 画素電極
59 絶縁膜
60 コンタクトホール
61 有機発光層
62 共通電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エレクトロルミネッセンス素子からなる画素を複数有する表示装置において、
少なくとも1つの前記画素が、視野角依存性の異なる複数の部分に区分されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
発光色の異なる前記画素を有し、少なくとも1色を発光する前記画素が、前記視野角依存性の異なる複数の前記部分に区分されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
赤色を発光する前記画素、緑色を発光する前記画素、青色を発光する前記画素から1つの画素ユニットが構成され、前記画素ユニットを複数有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、一対の電極と前記一対の電極間に配置される少なくとも1層の有機化合物層を有し、
前記視野角依存性の異なる複数の前記部分において、前記一対の電極のうち少なくともいずれか一方の電極の厚みが異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、一対の電極と前記一対の電極間に配置される少なくとも1層の有機化合物層を有し、
前記視野角依存性の異なる複数の前記部分において、前記有機化合物層のうちの少なくとも1層の厚みが異なることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
有機エレクトロルミネッセンス素子でからなる画素を複数有する表示装置において、
少なくとも1種類の発光色について、視野角依存性の異なる複数の前記画素を有することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
赤色を発光する前記画素、緑色を発光する前記画素、青色を発光する前記画素から1つの画素ユニットが構成され、前記画素ユニットを複数有することを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、一対の電極と前記一対の電極間に配置される少なくとも1層の有機化合物層を有し、
前記視野角依存性の異なる前記画素において、前記一対の電極のうち少なくともいずれか一方の電極の厚みが異なることを特徴とする請求項6または7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、一対の電極と前記一対の電極間に配置される少なくとも1層の有機化合物層を有し、
前記視野角依存性の異なる前記画素において、前記有機化合物層のうちの少なくとも1層の厚みが異なることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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