表示装置
【課題】 表示品位およびアンテナ性能を損なうことなく、タッチパネルを備えた表示装置にアンテナを内蔵する構造を提供する。
【解決手段】 プログラマブル表示器1は、金属からなる筐体2を有しており、筐体2におけるプログラマブル表示器1の前面側に設けられた保持部2bでタッチパネル4をその額縁部4bで保持する。また、タッチパネル4における額縁部4bの前面側に、アンテナ電極を有するアンテナ部5を配置する。パッチアンテナを構成する場合、プログラマブル表示器1にタッチパネル4を保持する保持部2bが地板導体として機能し、アンテナ部5と保持部2bとの間に配されるタッチパネル4のガラス基板が誘電体として機能する。
【解決手段】 プログラマブル表示器1は、金属からなる筐体2を有しており、筐体2におけるプログラマブル表示器1の前面側に設けられた保持部2bでタッチパネル4をその額縁部4bで保持する。また、タッチパネル4における額縁部4bの前面側に、アンテナ電極を有するアンテナ部5を配置する。パッチアンテナを構成する場合、プログラマブル表示器1にタッチパネル4を保持する保持部2bが地板導体として機能し、アンテナ部5と保持部2bとの間に配されるタッチパネル4のガラス基板が誘電体として機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを有する表示装置に係り、より詳しくは無線通信のためのアンテナを備えた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを備えた表示装置は、表示部上にタッチパネルが設けられ、表示部に表示されたボタンなどをタッチパネル上からタッチされると、タッチパネルからタッチ位置を表す信号が出力され、ボタンのタッチ操作(入力操作)が検出されるように構成されている。例えば、FA(Factory Automation)などの分野で使用される操作型の表示装置として、コンピュータを内蔵したプログラマブル表示器などの表示装置が挙げられる。
【0003】
このような操作型表示装置は、操作入力装置としてタッチパネルを備えており、オペレータが作業しやすいように、装置表面から突出した部位がない状態で壁面や制御盤に取り付けられることが多い。また、操作型表示装置は、水、油、粉塵などが本体内部に侵入しないように、制御盤などに取り付けられた状態で露出する前面、すなわち操作面(表示面)およびその周辺部(額縁部)が保護シートなどで覆われている。また、操作型表示装置の内部で発生したノイズが外部機器に影響したり、外部で発生したノイズがプログラマブル表示器の内部回路に影響しないように、また、ディスプレイパネルやタッチパネルを固定支持するように、操作型表示装置の筐体やフレームは、例えば、電波を遮断可能であり、かつネジ止め可能(ネジ固定可能な強度を有する)である金属などの素材で形成されていることが多い。
【0004】
上記のようなタッチパネルを備えた表示装置として、無線通信機能を備えた表示装置が特許文献1に開示されている。この表示装置では、アンテナ配線をタッチパネルの基板上に形成した構成を含んでいる。
【0005】
また、表示装置にアンテナを備えることについては、例えば、特許文献2および3に開示された構造が挙げられる。特許文献2はアンテナ付きのタッチパネルを開示している。このタッチパネルでは、操作側の電極基板の外側にマイクロストリップパッチを形成し、その電極基板の内側に設けられた透明電極を上記のマイクロストリップパッチの地板導体と兼用している。特許文献3は液晶表示装置の表示面に平面アンテナを一体に形成する構造を開示している。この液晶表示装置では、ブラックマトリクスの導体配線をアンテナ素子として、バックライトの背面の金属反射板を高周波グランドとして利用している。
【特許文献1】特開2002−215330号公報(2002年8月2日公開)
【特許文献2】特開2003−280815号公報(2003年10月2日公開)
【特許文献3】特開2000−138512号公報(2000年5月16日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の表示装置では、一般には、前述のように、ディスプレイパネルやタッチパネルを固定支持するための筐体やフレームなどの金属構造体が必要となる。このため、金属構造体がタッチパネルの裏面側(操作面の反対側)に近接または密接することになり、アンテナ配線の送受信感度などに影響を及ぼす。このため、アンテナ性能が著しく低下してしまうという不都合がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のタッチパネルでは、マイクロストリップパッチが表示面上の操作面に設けられるため、当然に透明導電材料によって透明電極として形成されることが必要である。このため、タッチパネルには、透明電極の層が重ねられることになり、マイクロストリップパッチの部分で光透過率が数%〜10数%低下する虞がある。また、このような光透過率の相違から、表示面におけるマイクロストリップパッチの部分とそれ以外の部分との色相に相違が生じて、それぞれの表示色が異なってしまう。しかも、マイクロストリップパッチの光透過率とタッチパネルの光透過率とを完全に一致させることは困難であるので、両透過率が異なることによる光の干渉のために、マイクロストリップパッチの部分に縞模様が現れることがある。このように、操作面(表示面)にマイクロストリップパッチを形成することは、表示品位を損なうという不都合がある。
【0008】
また、特許文献3に記載の液晶表示装置にタッチパネルを組み合わせると、液晶表示装置の前面側にタッチパネルが配置される。このため、タッチパネルの透明電極が液晶表示装置内の平面アンテナに対して遮蔽部材として機能するので、アンテナが機能しなくなるという不都合がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、表示品位およびアンテナ性能を損なうことなく、タッチパネルを備えた表示装置にアンテナを内蔵する構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表示装置は、表示面上にタッチパネルが設けられている表示装置において、上記課題を解決するために、前記タッチパネルの周縁部を保持する金属からなる保持構造体と、前記周縁部において前記保持体構造側に位置する第1透明基板より前方に位置して形成されるアンテナ電極とを備えていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成では、アンテナ電極の後背には、第1透明基板を間において保持構造体が位置する。それゆえ、保持構造体によって、アンテナ部を保持構造体の後背部に設けられた回路基板から電磁的に遮蔽することができる。それゆえ、アンテナ部は、このような回路基板から放射される電磁波などの影響を受けなくなり、アンテナ性能を安定させることができる。しかも、アンテナ部が周縁部に配置されることから、前述の従来技術のような表示面にアンテナが形成される構成で生じていた表示品位やアンテナ性能を損ねるという不都合を回避することができる。
【0012】
また、パッチアンテナを構成する場合、アンテナ部に対して、金属からなる保持構造体が地板導体として機能するとともに、タッチパネルの第1透明基板が誘電体として機能する。それゆえ、表示装置の構造の一部を利用してパッチアンテナを構成することができ、表示装置の構造そのものを変更する必要がない。これにより、アンテナを備えない表示装置との部品(筐体やフレームなど)の共通化を容易に図ることができる。
【0013】
前記表示装置において、前記アンテナ電極は、前記第1透明基板上に形成されていることが好ましい。また、前記表示装置において、前記アンテナ電極は、前記タッチパネルにおいて前記第1透明電極と対向して設けられる操作側の第2透明電極上に形成されていることが好ましい。さらに、前記表示装置において、前記アンテナ電極は、前記タッチパネルにおいて前記第1および第2透明電極の間に配されるフィルム上に形成されていることが好ましい。これらの構成では、アンテナ電極を、第1透明基板、第2透明基板またはフィルムを基板として、第1透明電極などに形成される透明導電膜と同様にして薄く形成することができるので、タッチパネルの厚さをほとんど増加させることなくアンテナを形成することができる。
【0014】
前記表示装置において、前記第1透明基板はガラスからなることが好ましい。パッチアンテナを構成する場合、第1透明基板は誘電体として機能するが、誘電体の比誘電率が大きいほどアンテナ電極の面積を小さくすることができる。これにより、アンテナの小型化が可能になり、より小型の表示装置にも容易に本発明のアンテナを搭載することができる。
【0015】
前記表示装置において、複数のアンテナ電極は偏波ダイバーシティ機能を有するように配されていることが好ましい。これにより、より受信性能が優れたアンテナを表示装置に搭載することができる。
【0016】
前記表示装置において、前記アンテナ電極は、前記第2透明基板の切欠き部に嵌め込み可能な形状、かつ前記第2透明基板とほぼ同じ厚さを有するように形成された基板上に形成されていることが好ましい。これにより、アンテナ電極を部品として扱うことができ、周波数や目的に応じて形成された複数種のアンテナ部品を用意しておけば、複数種のアンテナ電極が個別に形成された多品種のタッチパネルを用意する必要がなく、表示装置の製造コスト高騰を抑制することができる。
【0017】
前記表示装置において、前記アンテナ電極に接続される給電線は、一定の間隔をおいて対向するように配された1対の平板状の外部導体と、該外部導体間に形成される絶縁物と、該絶縁物内に形成される内部導体とを有する平板型の給電ケーブルであることが好ましい。このような平板型の給電ケーブルを用いることにより、表示装置における各所の隙間に給電ケーブルを這わせることができる。それゆえ、一般の同軸ケーブルを給電線として用いるのと異なり、配線用の孔を表示装置の筐体などに設ける必要はない。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る表示装置は、以上のように、アンテナ部がタッチパネルの周縁部に配されるとともに、アンテナ部の背後に第1透明基板を間において金属の保持構造体が存在する構造を有している。これにより、アンテナを性能や表示品位を損なうことなく表示装置に設けることができる。したがって、表示装置は、無線端末装置との間で無線LANなどの無線通信や、タッチパネルの操作を支障なく行なうことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態について図1ないし図17に基づいて説明すると以下の通りである。
【0020】
図3に示すように、本実施形態に係るプログラマブル表示器1(表示装置)は、劣悪な環境でも動作することが要求される場合に好適に使用されるコンピュータである。このプログラマブル表示器1は、表示面から入力操作を行うことができ、例えば、FA( Factory Automation )分野での設備機器の管理や工作機械の操作盤などに用いられている。
【0021】
プログラマブル表示器1は、その外観構造が、後背部分の筐体2と、前面部分の支持部2aおよびタッチパネル4とによって構成されている。タッチパネル4は、タッチ操作が有効な領域である操作部4aと、その周囲に形成される額縁部4b(周縁部)とを有する。タッチパネル4の背面側にはディスプレイパネル3が設けられている。額縁部4bには、アンテナ部5が設けられている。ディスプレイパネル3は、液晶パネル、EL(Electro Luminescence)パネル、プラズマディスプレイパネルなどの平板型表示パネルである。
【0022】
また、プログラマブル表示器1の前面は、支持部2aとタッチパネル4とがオーバーレイ6が貼り付けられて覆われている。オーバーレイ6は、タッチパネル4自体を保護するだけでなく、水、油、粉塵などがタッチパネル4と支持部2aとの間から内部に侵入することを防止するための(防塵・防滴用)保護シートの役割を果たす。オーバーレイ6は、樹脂フィルム(例えばポリエステルフィルム)によって形成されており、操作部4aとほぼ等しい形状の透明な透過部6aと、その周囲に形成される非透明な額縁部6bとからなる。額縁部6bは、支持部2aの前面と額縁部4bの前面とを覆う大きさに形成されている。
【0023】
プログラマブル表示器1は、使用される状態では、図4に示すように制御盤201に取り付けられたり、図示しない壁面に取り付けられたりする。図5に示すように、プログラマブル表示器1は、支持部2aで制御盤201の前面壁201aに固定されることにより、制御盤201の内部に筐体2の後背部分が配され、前面に操作面が現れる。
【0024】
図1および図2は、図3のA−A線矢視断面構造を示している。プログラマブル表示器1は、図1または図2に示すような構造を有する。なお、図3のA−A線矢視断面構造にはオーバーレイ6が存在しないが、図1および図2では、便宜上、オーバーレイ6を記載している。
【0025】
図1に示すように、筐体2は、全体を金属で形成されており、前面側の端部に支持部2aと保持部2bとを有している。支持部2aは、筐体2の側壁の外面と内面の両側に形成され、その側壁に対してほぼ垂直に張り出している。一方、保持構造体としての保持部2bは、同側壁の内面に形成され、その側壁に対してほぼ垂直に張り出している。また、保持部2bは、その前面側でタッチパネル4を保持するように、支持部2aより筐体2の背面壁寄りに位置している。タッチパネル4は、その額縁部4bが粘着材で保持部2bの前面部に取り付けられることによって保持部2bに保持されている。また、ディスプレイパネル3は、その周縁部が粘着材で保持部2bの後背部に取り付けられることによって保持部2bに保持されている。
【0026】
一方、図2に示すように、筐体2は、全体を樹脂で形成されており、前面側の端部に支持部2aを有している。支持部2aは、筐体2の側壁の外面と内面の両側に形成され、その側壁に対してほぼ垂直に張り出している。筐体2の内壁面には、金属からなるフレーム7が固着されている。金属フレーム7は、支持部2aの内面に接する部分から前述の保持部2bと同方向に張り出して延設される保持構造体としての保持部7aを有している。タッチパネル4は、その額縁部4bが粘着材で保持部7aの前面部に取り付けられることによって保持部7aに保持されている。また、ディスプレイパネル3は、その周縁部が粘着材で保持部7aの後背部に取り付けられることによって保持部7aに保持されている。
【0027】
ここで、プログラマブル表示器1の装置構成について説明する。
【0028】
図6に示すように、プログラマブル表示器1は、前述のディスプレイパネル3およびタッチパネル4、CPU11、メモリ部12、VRAM13、グラフィックコントローラ14、タッチパネルコントローラ15、インターフェース部(図中、I/F)16,17、送受信回路18ならびにアンテナ19を備えている。このプログラマブル表示器1は、PLC8に接続されたデバイス(図示せず)の状態を取得してディスプレイパネル3に表示するとともに、デバイスへの制御指示を与えるためのディスプレイパネル3上での入力をタッチパネル3から受け入れる。
【0029】
メモリ部12は、DRAM12a、FEPROM(Flash Erasable and Programmable ROM)12b、SRAM12c等のメモリを含んでいる。DRAM12aは、主に、表示制御などの演算処理時の作業用に用いられる他、PLC8との間でやり取りされるデータの一時的な記憶に用いられる。SRAM12cは、PLC8から得られたデータをロギングしたり、PLC8に与える設定値データ(レシピデータ)を記憶したりするために用いられる。FEPROM12bは、書き替え可能な読み出し専用のフラッシュメモリであり、一般のパーソナルコンピュータにおけるハードディスクドライブの役割を果たす。フラッシュメモリは、可動部を持たず、かつ衝撃に強いので、劣悪な周囲環境でも安定して動作する。
【0030】
また、上記のFEPROM12bは、表示制御システムプログラムと、通信プロトコルと、ユーザ画面データとをそれぞれ格納するエリアを有している。
【0031】
表示制御システムプログラムは、画像表示制御を行うための基本機能を実現するためのプログラムである。通信プロトコルは、PLC8との通信処理で用いられるプロトコルであり、PLC8の機種(メーカ)に応じて固有に定められている。この通信プロトコルには、PLC8へのデータの読み出しを指示するコマンドコードが含まれている。このコマンドコードは、PLC8の制御機能に対応付けられている前述のアドレスと組み合わされることによって、所望の制御機能についてのデータをPLC8に送信することができる。
【0032】
ユーザ画面のデータであるユーザ画面データは、ディスプレイパネル3に表示すべきベース画面やパーツのデータおよび各パーツに付与された後述する処理指示語などを含んでいる。ユーザ画面データは、作画エディタによって作成されて、FEPROM12bにダウンロードされている。
【0033】
CPU11は、前述の表示制御システムプログラムを実行することによって、プログラマブル表示器1の各部の動作を制御する。また、CPU11は、後述するインターフェース部16,17による通信や送受信回路18による通信を制御する機能を有している。
【0034】
VRAM13は、ディスプレイパネル3に表示される画面のイメージを一時的に保持するメモリであり、FEPROM12bからのユーザ画面データのイメージを水平方向に表示される順にドットデータとして格納している。
【0035】
グラフィックコントローラ14は、VRAM13に展開された画面のイメージを、ディスプレイパネル3に描画するドライバソフトウェアである。タッチパネル4は、ディスプレイパネル3の表示面上で入力を行うために設けられており、前述のアナログ抵抗膜式タッチパネルなどが好適である。タッチパネルコントローラ15は、タッチパネル4の出力電圧を入力位置情報に変換してCPU11に出力する。
【0036】
インターフェース部16は、LAN(Local Area Network)9に接続されており、このLAN9を介した他の機器との間の通信を行うための通信制御部である。一方、インターフェース部17は、プログラマブル表示器1がPLC8との間の通信を行うための通信制御部であり、シリアルケーブル(例えばRS−232C)などを介してPLC8に接続されている。このインターフェース部17により、PLC3との間でデータ送受信が行われる。
【0037】
送受信回路18は、例えば、無線LANやBluetooth(商標)など無線通信方式に対応した携帯端末などの無線通信可能な機器と通信するために設けられている。この送受信回路18は、例えば、受信回路として、高周波受信信号を中間周波数信号に変換する回路や中間周波数信号をプログラマブル表示器1で処理できる形式のデータに復調する復調回路などを含み、送信回路として、送信されるデータを変調する変調回路や変調後の信号を高周波送信信号に変換する回路などを含んでいる。
【0038】
アンテナ19は、受けた電波を高周波受信信号として取り出して送受信回路18に入力する一方、送受信回路18から出力された高周波送信信号を電波として送出する。このアンテナ19は、前述のアンテナ部5単独によって構成されるか、もしくはパッチアンテナの場合、アンテナ部5と筐体2の保持部2bまたはフレーム7の保持部7aと、後述する支持基板41によって構成される。
【0039】
続いて、タッチパネル4について詳細に説明する。図8は、図7に示すタッチパネル4におけるB−B線矢視断面構造を示している。
【0040】
図8に示すように、アナログ抵抗膜方式のタッチパネル4は、支持基板41、操作側基板42、透明導電膜43,44、ドットスペーサ45、シール部材46などによって構成されている。支持基板41は、ガラスや硬質フィルムなどからなり、操作側基板42はタッチ操作により変形するように軟質フィルム(例えばポリエステルフィルム)によって形成されている。支持基板41と操作側基板42とは、等間隔をおいて対向するように、操作部4aの周縁部分(額縁部4bを含む)で粘着剤46によって貼り合わされている。
【0041】
透明導電膜43は支持基板41における操作側基板42との対向面に形成され、透明導電膜44は操作側基板42における支持基板41との対向面に形成されている。透明導電膜43,44は、ITO(インジウム錫酸化物)などの透明かつ導電性を有する材料からなる薄膜である。ドットスペーサ45は、樹脂などの絶縁材料にて形成されており、透明導電膜43,44同士のタッチ部分のみの局部的な接触を可能とするように、透明導電膜43上にマトリクス状にほぼ等しい間隔をおいて配されている。
【0042】
また、支持基板41には、上下端(タッチパネル4がプログラマブル表示器1に取り付けられた状態での上下両端)に、透明導電膜44の上下縁部に沿って長く形成された第1電極(図示せず)が形成されている。第1電極から引き出された配線は、図7に示すように、テール部4cに接続されている。テール部4cは、フレキシブル配線ケーブルによって形成されており、端部にコネクタ部4dを有している。一方、操作側基板42には、両端(タッチパネル4がプログラマブル表示器1に取り付けられた状態での左右両端)に、透明導電膜44の側縁部に沿って長く形成された第2電極(図示せず)が形成されている。第2電極は、支持基板41上に形成された第3電極(図示せず)と接触しており、第3電極からから引き出された配線によってテール部4cに接続されている。
【0043】
また、図8に示すように、タッチパネル4における額縁部4bには、操作側基板42と同一層にアンテナ部5が配置されている。このアンテナ部5は、支持基板41上に粘着剤46によって貼り付けられている。
【0044】
図9に示すように、アンテナ部5は、アンテナ基板5a上にアンテナ電極5bが形成された構造を有する。アンテナ基板5aは、ポリエステルフィルムなどの薄い樹脂から構成されている。アンテナ電極5bは、銅などの電極材料がアンテナ基板5aに所定のパターンで直接印刷されることにより形成されており、放射部や給電部などを含んでいる。
【0045】
なお、アンテナ部5は、上記のように、タッチパネル4と別体に形成されるが、これに限らず、タッチパネル4と一体に形成されていてもよい。例えば、アンテナ電極5aが操作側基板42の操作側端面に直接印刷される構造であってもよい。これにより、アンテナ部5を別途作製する必要がなく、タッチパネル4の製造工程を簡素化することができる。また、額縁部4bにおける操作側基板42の操作側端面の任意の箇所にアンテナ電極5aを印刷形成することができる。
【0046】
また、タッチパネル4の厚さを極力増加させることなくタッチパネル4にアンテナを形成するには、以下の構造が好適である。
【0047】
第1の構造は、タッチパネル4の表面に位置する操作側基板42のいずれかの面に導電膜でアンテナ電極5bが形成される構造である。操作側基板42は、厚さ188μmのポリエステルフィムルが一般的によく用いられている。導電膜は、この操作側基板42上に透明のインジウム錫酸化物(ITO)膜および銀ペーストを印刷して形成される。アンテナ電極5bは、透明導電膜44と同じ面に形成されることにより、透明導電膜44と同一の工程で作製することができる。
【0048】
第2の構造は、タッチパネル4の支持基板41の表面(透明導電膜43の形成面)に導電膜でアンテナ電極5bが形成される構造である。導電膜は、上記の導電膜と同様にして形成される。アンテナ電極5bは、透明導電膜43と同じ面に形成されることにより、透明導電膜43と同一の工程で作製することができる。
【0049】
第3の構造は、支持基板41と操作側基板42との間に配されているフィルム状電極または同材質の別のフィルム上にアンテナ電極5bが形成される構造である。このようなフィルムとしては、絶縁目的のフィルムや電極を外部に取り出すためのフィルム状が挙げられる。このようなフィルムは、例えば、10μm〜50μm程度の厚さのポリエステルフィルムに銀ペーストで配線パターンが印刷されたり、ポリイミドフィルムに35μm程度の厚さの銅箔で配線パターンが形成されたりしている。したがって、アンテナ電極5bは、このようなフィルムに配線パターンと同様にして形成される。
【0050】
ところで、アンテナ部5は、額縁部4bにおいて1箇所設けられるだけでもよいが、図10または図11に示すように、複数箇所(図では2箇所)に設けられてもよい。例えば、図10(a)および(b)に示す構成では、アンテナ部5が円偏波アンテナである場合、2つのアンテナ部5は、操作部4aを間においてほぼ対向する位置に配置される。これにより、受信状況に応じて、いずれか受信感度のよいアンテナ部5を使用でき、ダイバーシティ効果を得ることができる。
【0051】
また、アンテナ部5が単一偏波アンテナである場合、図11に示すように、アンテナ部5は、その偏波方向(矢印方向)が直交する位置に配置されている。送信波がプログラマブル表示器1に到達するまで反射すると、送信波の偏波面が変化するので、上記のように偏波方向が直交していることにより、送信波の偏波面と一致する偏波面を有するアンテナ部5で受信することができる。これにより、受信状況に応じて、いずれか受信感度のよいアンテナ部5を使用でき、ダイバーシティ効果を得ることができる。
【0052】
アンテナ部5は、アンテナ部5に形成するアンテナの種類によってアンテナ機能を発揮することも可能であるが、パッチアンテナなどの地板導体を必要とするアンテナについては、筐体2の保持部2bまたはフレーム7の保持部7aが地板導体の役割を果たす。このようなアンテナ構造の給電線の配線は、例えば、図12(a)および(b)に示すようになされる。図12(a)および(b)は、図1の構造における配線構造を示している。
【0053】
この構造においては、給電線としての同軸ケーブル101の外被101a内の網線(外部導体)101bが端部から引き出されて保持部2bに接続されている。また、外部導体101bの内周側の絶縁物101cから芯線(内部導体)101dが引き出されている。この芯線101dは、支持部2aを筐体2の内部から外部に貫通するように形成された貫通孔2cを通して先端がアンテナ部5における給電点5cに接続されている。同軸ケーブル101の図示しない他端は、前述の送受信回路18に接続されている。給電点5cは、アンテナ部5のインピーダンスと同軸ケーブル101のインピーダンスが等しくなる位置に設けられる。
【0054】
また、スナップ式のコネクタを用いれば、給電線とアンテナ部5との接続が容易になる。例えば、図13に示すように、同軸ケーブル101の接続端に雄コネクタ102が取り付けられる一方、貫通孔2cの内部側開口部に雌コネクタ103が取り付けられ、雌コネクタ103から引き出された接続導体103がアンテナ部5の給電点5cに接続されている。このような構造では、給電線の取り付け作業を雄コネクタ102と雌コネクタ103との接合により容易に行うことができる。
【0055】
給電線として用いるケーブルは、上記のような一般的な同軸ケーブル101でも良いが、これに限らず、図14に示すような平板型の給電ケーブル111を用いても良い。この給電ケーブル111は、一定の間隔をおいて平行に配された平板状の表面導体部(外部導体)111a,111bの間に絶縁物(誘電体)111cが挟持され、その絶縁物111cの中心に芯線(内部導体)111dが配される構造をなしている。表面導体部111a,111bは銅箔などによって形成されており、芯線111dは銅などによって偏平形状に形成されている。絶縁物111cは、ポリイミドなどによって形成されている。
【0056】
また、図示はしていないが、外部導体部111a,111bの表面が絶縁フィルムで被覆されている。
【0057】
上記のように構成される給電ケーブル111のインピーダンスは、給電ケーブル111の厚さ、芯線111dの幅および絶縁物111cの誘電率で定まる。また、芯線111dからの電気力線が外部に漏れない程度に芯線111dとケーブル側端部との間の長さを確保すれば、両側端部に外部導体を設ける必要がない。このように両側端部を絶縁物111cが開放される構造を採ることにより、給電ケーブル111をフレキシブルに形成することができる。
【0058】
このような給電ケーブル111を用いて配線する場合、給電ケーブル111が100μm程度の厚さに形成されるため、配線が容易になる。例えば、図1に示す構造では、アンテナ部5の支持部2a側の端部から引き出された給電ケーブル111は、額縁部4bの端部および裏面と支持部2aおよび保持部2bとの間(粘着剤層)に配され、さらにディスプレイパネル3と保持部2bとの間(粘着剤層)に配されて筐体2の内部に導かれる。給電ケーブル111は、ディスプレイパネル3およびタッチパネル4が粘着剤によって筐体2に接合されるわずかな隙間に這わせることができる。したがって、図12や図13に示すように筐体2に貫通孔2cを設ける必要がなく、筐体2を形成するための金型もそれだけ安価に作製することができる。
【0059】
また、アンテナ部5がテール部4c付近に配置されている場合は、テール部4cと同じ位置から給電ケーブル111を引き出すようにしても良い。このような構成では、配線の引回しが簡素になり、タッチパネル4の取り付け作業を容易にすることができる。テール部4cと給電ケーブル111とを近接して配置できる場合、テール部4cと給電ケーブル111とを一体に形成しても良い。このような一体型のケーブルにおいては、アンテナ部の電気力線がテール部に漏れないようにアンテナ部とテール部とが若干離れて配置される。
【0060】
図7に示すように、アンテナ部5がテール部4cと離間して配置されている場合は、給電線を短くするために、アンテナ部5から直接の給電ケーブル111が引き出される。
【0061】
ところで、アンテナ部5を前述のように、タッチパネル4と別体に形成することにより、予め部品として用意しておいた各種のアンテナ部5を使用目的や周波数に応じて選択使用することができる。このような各種のアンテナ部5を用いる場合、図15に示すように、操作側基板42に形成されたアンテナ部5と同形状の切欠き部42aに所望のアンテナ部5を嵌め込んで接着固定する。
【0062】
ここで、図16(a)ないし(h)に示すように、本実施形態に採用可能な各種のアンテナ部5としてのアンテナ部51〜58について説明する。
【0063】
図16(a)に示すアンテナ部51は、逆F型のアンテナであり、細長く形成された放射部51aと面積の大きい地板部51bとをアンテナ電極5bとして有している。地板部51bは、タッチパネル4を間において保持部2bまたは保持部7aと容量結合する。このため、保持部2bまたは保持部7aが地板導体としての役割を果たすことにより、地板部51bの面積を小さくすることができる。地板部51bがない構成では、タッチパネル4の額縁部4bに内部へ貫通する孔を形成して、放射部51aと、保持部2bまたは保持部7aとを電気的に接続する必要がある。それゆえ、地板部51bを設ける方が好ましい。
【0064】
図16(b)および(c)に示すアンテナ部52,53は、それぞれパッチアンテナを構成している。図16(b)に示すアンテナ部52は、方形に形成されたパッチ部52aとストリップ給電線52bとをアンテナ電極5bとして有している。図16(c)に示すアンテナ部53は、パッチ部53aとストリップ給電線53bとをアンテナ電極5bとして有している。パッチ部53aは、方形の対向する角部が切り欠かれた形状をなしている。このようなパッチ部53aでは、表面で高周波を受けると、切欠き形状によって、一定周期毎に電流の向きが変わり、電流が端の部分を流れる不均衡を防止することができる。
【0065】
図16(d)に示すアンテナ部54は、メアンダラインアンテナであり、クランク状に蛇行するように形成された放射部54aと方形に形成された地板部55bとをアンテナ電極5bとして有している。放射部54aと地板部54bとは切り離されており、地板部54bはタッチパネル4を間において保持部2bまたは保持部7aと容量結合している。このアンテナ部54bでは、放射部54aの地板部54b側の端部に給電し、地板部54bに給電線の外部導体を接続するので、保持部2bまたは保持部7aを地板導体として利用する必要はないが、図16(a)のアンテナ部51と同様、地板部54bがタッチパネル4を間において地板導体として機能する保持部2bまたは保持部7aと容量結合するので、地板部54bの面積を小さくすることができる。
【0066】
図16(e)に示すアンテナ部55は、ダイポール型のパッチアンテナであり、細くかつ短く形成された放射部55aと、これに沿って形成された面積の大きい放射部55bとをアンテナ電極5bとして有している。放射部55a,55bは、近接して配置されていることから、容量結合している。
【0067】
図16(f)に示すアンテナ部56は、ループアンテナであり、ループ状の放射部56aをアンテナ電極5bとして有している。一方、図16(g)に示すアンテナ部57は、コイルアンテナであり、コイル状の放射部57aをアンテナ電極5bとして有している。これらのアンテナ部56,57は地板導体を必要としないので、アンテナ部56,57を用いたプログラマブル表示器1においては、保持部2bまたは保持部7aが地板導体として機能することはない。しかしながら、アンテナ部56,57は、プログラマブル表示器1に内蔵される回路基板から放射される電磁波などの影響を直接受けるとアンテナ性能が低下する。したがって、その背後に存在する保持部2bまたは保持部7aによって、上記のような回路基板による影響を遮断することによって、アンテナ部56,57のアンテナ性能を安定させることができる。
【0068】
図16(h)に示すアンテナ部58は、長方形に形成された3つの放射部58a〜58cをアンテナ電極5bとして有している。各放射部58a〜58cは、長手方向にずれるように近接して配されて容量結合しているため、等価的には繋がっている。また、各放射部58a〜58cの長さ(λ/4)を異ならせることによりそれぞれの共振周波数を異ならせれば、共振ポイントの異なる3つのアンテナを有するのと同じ効果が得られ、送受信可能な周波数範囲を拡大することができる。
【0069】
例えば、無線LAN用のアンテナを設計する場合、図17に示すように、無線LANで用いられる周波数帯域(2.4GHz〜2.5GHz)での電圧定在波比(VSWR;Voltage Standing Wave Ratio)が表される。VSWRが小さいほどアンテナが効率良く機能するので、実用可能な1≦VSWR≦3の範囲での周波数範囲wが上記の周波数帯域をカバーできることが好ましい。このため、図16(h)のアンテナ部58によれば、図17に示すような共振周波数の異なる3つの特性曲線が得られるので、周波数範囲wを無線LANの周波数帯域に近づけることができる。
【0070】
以上に述べたように、本実施形態のプログラマブル表示器1は、アンテナ部5がタッチパネル4の額縁部4bに配置されるとともに、アンテナ部5の背後に額縁部4b(支持基板41などを含む)を間において金属構造体としての保持部2bまたは保持部7aが存在する構造を有している。このような構造では、保持部2bまたは保持部7aによって、アンテナ部5を筐体2内に設けられた回路基板から電磁的に遮蔽することができる。それゆえ、前述の図16(f)および(g)に示すようなアンテナ部56,57では、アンテナ性能を安定させることができる。しかも、アンテナ部5が額縁部4bに配置されることから、パッチアンテナをタッチパネルの操作部に形成する構造(特許文献2)のように表示品位を損ねたり、ディスプレイパネルに形成された平板アンテナのように(特許文献3)前方にタッチパネルが配された場合にタッチパネルの電極で電磁遮蔽されてアンテナ性能を損ねたりする不都合を回避することができる。
【0071】
このように、アンテナが性能を損なわれることなくプログラマブル表示器1の前面側に設けられる。これにより、プログラマブル表示器1を図4に示すように制御盤201に取り付けた状態でも、無線端末装置との間で無線LANなどの無線通信を支障なく行なうことができる。
【0072】
また、パッチアンテナを構成する場合、アンテナ部5に対して、保持部2bまたは保持部7aが地板導体として機能するとともに、タッチパネル4の支持基板41が誘電体として機能する。それゆえ、プログラマブル表示器1の構造の一部を利用してパッチアンテナを構成することができ、プログラマブル表示器1の構造そのものを変更する必要がない。これにより、アンテナを備えないプログラマブル表示器との部品(筐体2やフレーム7など)の共通化を容易に図ることができる。
【0073】
また、図10および図11に示すように、複数のアンテナ部5をダイバーシティ効果が得られるように配置することにより、アンテナ部5をダイバーシティアンテナとして機能させることができる。さらに、本実施形態では、図15に示すように、異なる機能を有するアンテナ部5を部品の形態で提供できるようにしている。これにより、アンテナ部5とタッチパネル4の仕様がそれぞれ複数存在しても、特定の仕様のタッチパネル4に搭載すべきアンテナ部5を選択して取り付けることで、タッチパネル4の製造に必要な版の数を増加をさせることはない。それゆえ、初期投資の増加を回避することができる。
【0074】
ところで、パッチアンテナを構成する場合、支持基板41は誘電体として機能するが、誘電体の比誘電率が大きいほどアンテナ電極の面積を小さくすることができる。パッチアンテナのように誘電体板表面に放射器を形成するアンテナは、回路モジュールなどに組み込むために、一般に、厚さ0.8mm〜1.6mm程度の厚さを有する電子回路用プリント基板(例えば、ガラス・エポキシなどの複合材基板やテフロン(登録商標)樹脂基板)を用いて実現される例が多い。これに対し、本実施形態のプログラマブル表示器1では、誘電体として1mm〜5mm程度の厚さを有するガラスからなる支持基板41を用いている。
【0075】
一般的なガラスの比誘電率は、5.4〜9.9の範囲にある。電子回路用プリント基板には、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて硬化させたFR−4と呼ばれる基板がある。マイクロ波帯では、テフロン樹脂の基板も良く使用される。このFR−4やテフロン樹脂基板、そして本実施形態のようにガラスを基板基板として用いた場合の、各基板上での波長短縮率を表1に示す。
【0076】
表1から、テフロン樹脂基板の波長短縮率を1とした場合、FR−4の波長短縮率は、0.997であり、比誘電率7.3のガラスの波長短縮率は0.802であり、比誘電率9.0のガラスの波長短縮率は0.722である。この波長短縮率は、テフロン樹脂基板上にあるアンテナ電極の寸法を1とした場合のそれぞれの基板上でのアンテナ電極の寸法の比を表している。つまり、テフロン樹脂基板に比較して、比誘電率7.3のガラス基板ではアンテナ電極寸法が80%であり、比誘電率9.0のガラス基板ではアンテナ電極寸法が72%であることを意味している。したがって、ガラスを基板として用いると、アンテナ電極寸法で最大28%、アンテナ電極面積で最大58%の縮小化が可能である。
【0077】
これにより、アンテナの小型化が可能になり、より小型のプログラマブル表示器1にも容易に本実施形態のアンテナを搭載することができる。
【0078】
【表1】
【0079】
電子回路用プリント回路基板上に形成されるアンテナで地板を必要とするパッチアンテナの場合、アンテナの放射器が形成された面の誘電体を間においた反対側の面は、一面導体(グランドプレーン)の地板を形成する必要がある。パッチアンテナが形成されたプリント基板においては、片面がアンテナ電極を形成するパターン面となり、反対側の面が一様な導体面となる。本実施形態では、保持部2bまたは保持部7aのような金属構造体を地板すなわち一様な導体面として利用できることから、誘電体としてのガラス基板と組み合わせることにより、小さくて高性能なアンテナをプログラマブル表示器1に組み込むことができる。
【0080】
また、パッチアンテナの放射器には地板を基準に給電する。したがって、本実施形態の構造では、保持部2bまたは保持部7aに地板電位を取る必要がある。地板電位を取るには、アンテナの放射器の形成面の反対側の面に金属構造体とのリアクタンスが数Ωより小さくなるように電極を設け、これを地板電位の電極としてアンテナの放射器への給電に利用する。
【0081】
なお、本実施形態では、アナログ抵抗膜方式のタッチパネル4を用いた例について説明したが、他の方式のタッチパネルを用いてもよい。例えば、ストライプ状の透明導電膜が形成された2枚の透明基板を透明導電膜が交差するように対向させ、マトリクス状に交差部が形成されるようなデジタル方式のタッチパネルが本発明に適用可能である。また、保持部2bまたは保持部7aによるアンテナ性能の向上が期待できれば、図16(a)ないし(h)に示したタイプ以外のアンテナ部5も本発明に適用可能である。さらに、本実施形態では、表示装置としてプログラマブル表示器1について説明したが、タッチパネルを有し、同様なタッチパネル保持構造を有しておれば、プログラマブル表示器1以外の表示装置でも本発明の適用が可能である。
【0082】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の表示装置は、タッチパネルの額縁部にアンテナ構造が形成されることにより、表示性能やアンテナ性能を損なうことなくアンテナを搭載することができるので、無線LANなどの通信方式で無線端末装置と無線通信を行なう環境に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態を示すプログラマブル表示器の要部の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態を示すプログラマブル表示器の要部の他の構造を示す断面図である。
【図3】図1または図2の構造を有するプログラマブル表示器の外観構成を示す分解斜視図である。
【図4】上記プログラマブル表示器が取り付けられた制御盤の外観を示す斜視図である。
【図5】上記制御盤におけるプログラマブル表示器の取り付け部位での構造を示す断面図である。
【図6】上記プログラマブル表示器の装置構成を示すブロック図である。
【図7】上記プログラマブル表示器に設けられるタッチパネルの外観構成を示す斜視図である。
【図8】上記タッチパネルの要部の構造を示す断面図である。
【図9】上記タッチパネルに設けられるアンテナ部の外観構成を示す斜視図である。
【図10】(a)および(b)は円偏波アンテナのアンテナ部がダイバーシティアンテナとして機能するように配置されたタッチパネルの構成を示す平面図である。
【図11】直線偏波アンテナのアンテナ部がダイバーシティアンテナとして機能するように配置されたタッチパネルの構成を示す平面図である。
【図12】(a)は上記アンテナ部および上記プログラマブル表示器の一部に給電線を接続する構造を示す断面図であり、(b)はその平面図である。
【図13】上記アンテナ部および上記プログラマブル表示器の一部に給電線を接続する他の構造を示す断面図である。
【図14】上記給電線の他の構造を示す断面図である。
【図15】異なるアンテナ部を部品としてタッチパネルに取り付ける状態を示す斜視図である。
【図16】(a)ないし(h)は上記アンテナ部の構成を示す平面図である。
【図17】アンテナのVSWRを示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 プログラマブル表示器(表示装置)
2 筐体
2b 保持部(保持構造体)
4 タッチパネル
4b 額縁部(周縁部)
5 アンテナ部
5a 基板
5b アンテナ電極
7 フレーム
7a 保持部(保持構造体)
41 支持基板(第1透明基板)
42 操作側基板(第2透明基板)
42a 切欠き部
111 給電ケーブル
111a 表面導体部(外部導体)
111b 表面導体部(外部導体)
111c 絶縁物
111d 芯線(内部導体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを有する表示装置に係り、より詳しくは無線通信のためのアンテナを備えた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを備えた表示装置は、表示部上にタッチパネルが設けられ、表示部に表示されたボタンなどをタッチパネル上からタッチされると、タッチパネルからタッチ位置を表す信号が出力され、ボタンのタッチ操作(入力操作)が検出されるように構成されている。例えば、FA(Factory Automation)などの分野で使用される操作型の表示装置として、コンピュータを内蔵したプログラマブル表示器などの表示装置が挙げられる。
【0003】
このような操作型表示装置は、操作入力装置としてタッチパネルを備えており、オペレータが作業しやすいように、装置表面から突出した部位がない状態で壁面や制御盤に取り付けられることが多い。また、操作型表示装置は、水、油、粉塵などが本体内部に侵入しないように、制御盤などに取り付けられた状態で露出する前面、すなわち操作面(表示面)およびその周辺部(額縁部)が保護シートなどで覆われている。また、操作型表示装置の内部で発生したノイズが外部機器に影響したり、外部で発生したノイズがプログラマブル表示器の内部回路に影響しないように、また、ディスプレイパネルやタッチパネルを固定支持するように、操作型表示装置の筐体やフレームは、例えば、電波を遮断可能であり、かつネジ止め可能(ネジ固定可能な強度を有する)である金属などの素材で形成されていることが多い。
【0004】
上記のようなタッチパネルを備えた表示装置として、無線通信機能を備えた表示装置が特許文献1に開示されている。この表示装置では、アンテナ配線をタッチパネルの基板上に形成した構成を含んでいる。
【0005】
また、表示装置にアンテナを備えることについては、例えば、特許文献2および3に開示された構造が挙げられる。特許文献2はアンテナ付きのタッチパネルを開示している。このタッチパネルでは、操作側の電極基板の外側にマイクロストリップパッチを形成し、その電極基板の内側に設けられた透明電極を上記のマイクロストリップパッチの地板導体と兼用している。特許文献3は液晶表示装置の表示面に平面アンテナを一体に形成する構造を開示している。この液晶表示装置では、ブラックマトリクスの導体配線をアンテナ素子として、バックライトの背面の金属反射板を高周波グランドとして利用している。
【特許文献1】特開2002−215330号公報(2002年8月2日公開)
【特許文献2】特開2003−280815号公報(2003年10月2日公開)
【特許文献3】特開2000−138512号公報(2000年5月16日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の表示装置では、一般には、前述のように、ディスプレイパネルやタッチパネルを固定支持するための筐体やフレームなどの金属構造体が必要となる。このため、金属構造体がタッチパネルの裏面側(操作面の反対側)に近接または密接することになり、アンテナ配線の送受信感度などに影響を及ぼす。このため、アンテナ性能が著しく低下してしまうという不都合がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のタッチパネルでは、マイクロストリップパッチが表示面上の操作面に設けられるため、当然に透明導電材料によって透明電極として形成されることが必要である。このため、タッチパネルには、透明電極の層が重ねられることになり、マイクロストリップパッチの部分で光透過率が数%〜10数%低下する虞がある。また、このような光透過率の相違から、表示面におけるマイクロストリップパッチの部分とそれ以外の部分との色相に相違が生じて、それぞれの表示色が異なってしまう。しかも、マイクロストリップパッチの光透過率とタッチパネルの光透過率とを完全に一致させることは困難であるので、両透過率が異なることによる光の干渉のために、マイクロストリップパッチの部分に縞模様が現れることがある。このように、操作面(表示面)にマイクロストリップパッチを形成することは、表示品位を損なうという不都合がある。
【0008】
また、特許文献3に記載の液晶表示装置にタッチパネルを組み合わせると、液晶表示装置の前面側にタッチパネルが配置される。このため、タッチパネルの透明電極が液晶表示装置内の平面アンテナに対して遮蔽部材として機能するので、アンテナが機能しなくなるという不都合がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、表示品位およびアンテナ性能を損なうことなく、タッチパネルを備えた表示装置にアンテナを内蔵する構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表示装置は、表示面上にタッチパネルが設けられている表示装置において、上記課題を解決するために、前記タッチパネルの周縁部を保持する金属からなる保持構造体と、前記周縁部において前記保持体構造側に位置する第1透明基板より前方に位置して形成されるアンテナ電極とを備えていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成では、アンテナ電極の後背には、第1透明基板を間において保持構造体が位置する。それゆえ、保持構造体によって、アンテナ部を保持構造体の後背部に設けられた回路基板から電磁的に遮蔽することができる。それゆえ、アンテナ部は、このような回路基板から放射される電磁波などの影響を受けなくなり、アンテナ性能を安定させることができる。しかも、アンテナ部が周縁部に配置されることから、前述の従来技術のような表示面にアンテナが形成される構成で生じていた表示品位やアンテナ性能を損ねるという不都合を回避することができる。
【0012】
また、パッチアンテナを構成する場合、アンテナ部に対して、金属からなる保持構造体が地板導体として機能するとともに、タッチパネルの第1透明基板が誘電体として機能する。それゆえ、表示装置の構造の一部を利用してパッチアンテナを構成することができ、表示装置の構造そのものを変更する必要がない。これにより、アンテナを備えない表示装置との部品(筐体やフレームなど)の共通化を容易に図ることができる。
【0013】
前記表示装置において、前記アンテナ電極は、前記第1透明基板上に形成されていることが好ましい。また、前記表示装置において、前記アンテナ電極は、前記タッチパネルにおいて前記第1透明電極と対向して設けられる操作側の第2透明電極上に形成されていることが好ましい。さらに、前記表示装置において、前記アンテナ電極は、前記タッチパネルにおいて前記第1および第2透明電極の間に配されるフィルム上に形成されていることが好ましい。これらの構成では、アンテナ電極を、第1透明基板、第2透明基板またはフィルムを基板として、第1透明電極などに形成される透明導電膜と同様にして薄く形成することができるので、タッチパネルの厚さをほとんど増加させることなくアンテナを形成することができる。
【0014】
前記表示装置において、前記第1透明基板はガラスからなることが好ましい。パッチアンテナを構成する場合、第1透明基板は誘電体として機能するが、誘電体の比誘電率が大きいほどアンテナ電極の面積を小さくすることができる。これにより、アンテナの小型化が可能になり、より小型の表示装置にも容易に本発明のアンテナを搭載することができる。
【0015】
前記表示装置において、複数のアンテナ電極は偏波ダイバーシティ機能を有するように配されていることが好ましい。これにより、より受信性能が優れたアンテナを表示装置に搭載することができる。
【0016】
前記表示装置において、前記アンテナ電極は、前記第2透明基板の切欠き部に嵌め込み可能な形状、かつ前記第2透明基板とほぼ同じ厚さを有するように形成された基板上に形成されていることが好ましい。これにより、アンテナ電極を部品として扱うことができ、周波数や目的に応じて形成された複数種のアンテナ部品を用意しておけば、複数種のアンテナ電極が個別に形成された多品種のタッチパネルを用意する必要がなく、表示装置の製造コスト高騰を抑制することができる。
【0017】
前記表示装置において、前記アンテナ電極に接続される給電線は、一定の間隔をおいて対向するように配された1対の平板状の外部導体と、該外部導体間に形成される絶縁物と、該絶縁物内に形成される内部導体とを有する平板型の給電ケーブルであることが好ましい。このような平板型の給電ケーブルを用いることにより、表示装置における各所の隙間に給電ケーブルを這わせることができる。それゆえ、一般の同軸ケーブルを給電線として用いるのと異なり、配線用の孔を表示装置の筐体などに設ける必要はない。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る表示装置は、以上のように、アンテナ部がタッチパネルの周縁部に配されるとともに、アンテナ部の背後に第1透明基板を間において金属の保持構造体が存在する構造を有している。これにより、アンテナを性能や表示品位を損なうことなく表示装置に設けることができる。したがって、表示装置は、無線端末装置との間で無線LANなどの無線通信や、タッチパネルの操作を支障なく行なうことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態について図1ないし図17に基づいて説明すると以下の通りである。
【0020】
図3に示すように、本実施形態に係るプログラマブル表示器1(表示装置)は、劣悪な環境でも動作することが要求される場合に好適に使用されるコンピュータである。このプログラマブル表示器1は、表示面から入力操作を行うことができ、例えば、FA( Factory Automation )分野での設備機器の管理や工作機械の操作盤などに用いられている。
【0021】
プログラマブル表示器1は、その外観構造が、後背部分の筐体2と、前面部分の支持部2aおよびタッチパネル4とによって構成されている。タッチパネル4は、タッチ操作が有効な領域である操作部4aと、その周囲に形成される額縁部4b(周縁部)とを有する。タッチパネル4の背面側にはディスプレイパネル3が設けられている。額縁部4bには、アンテナ部5が設けられている。ディスプレイパネル3は、液晶パネル、EL(Electro Luminescence)パネル、プラズマディスプレイパネルなどの平板型表示パネルである。
【0022】
また、プログラマブル表示器1の前面は、支持部2aとタッチパネル4とがオーバーレイ6が貼り付けられて覆われている。オーバーレイ6は、タッチパネル4自体を保護するだけでなく、水、油、粉塵などがタッチパネル4と支持部2aとの間から内部に侵入することを防止するための(防塵・防滴用)保護シートの役割を果たす。オーバーレイ6は、樹脂フィルム(例えばポリエステルフィルム)によって形成されており、操作部4aとほぼ等しい形状の透明な透過部6aと、その周囲に形成される非透明な額縁部6bとからなる。額縁部6bは、支持部2aの前面と額縁部4bの前面とを覆う大きさに形成されている。
【0023】
プログラマブル表示器1は、使用される状態では、図4に示すように制御盤201に取り付けられたり、図示しない壁面に取り付けられたりする。図5に示すように、プログラマブル表示器1は、支持部2aで制御盤201の前面壁201aに固定されることにより、制御盤201の内部に筐体2の後背部分が配され、前面に操作面が現れる。
【0024】
図1および図2は、図3のA−A線矢視断面構造を示している。プログラマブル表示器1は、図1または図2に示すような構造を有する。なお、図3のA−A線矢視断面構造にはオーバーレイ6が存在しないが、図1および図2では、便宜上、オーバーレイ6を記載している。
【0025】
図1に示すように、筐体2は、全体を金属で形成されており、前面側の端部に支持部2aと保持部2bとを有している。支持部2aは、筐体2の側壁の外面と内面の両側に形成され、その側壁に対してほぼ垂直に張り出している。一方、保持構造体としての保持部2bは、同側壁の内面に形成され、その側壁に対してほぼ垂直に張り出している。また、保持部2bは、その前面側でタッチパネル4を保持するように、支持部2aより筐体2の背面壁寄りに位置している。タッチパネル4は、その額縁部4bが粘着材で保持部2bの前面部に取り付けられることによって保持部2bに保持されている。また、ディスプレイパネル3は、その周縁部が粘着材で保持部2bの後背部に取り付けられることによって保持部2bに保持されている。
【0026】
一方、図2に示すように、筐体2は、全体を樹脂で形成されており、前面側の端部に支持部2aを有している。支持部2aは、筐体2の側壁の外面と内面の両側に形成され、その側壁に対してほぼ垂直に張り出している。筐体2の内壁面には、金属からなるフレーム7が固着されている。金属フレーム7は、支持部2aの内面に接する部分から前述の保持部2bと同方向に張り出して延設される保持構造体としての保持部7aを有している。タッチパネル4は、その額縁部4bが粘着材で保持部7aの前面部に取り付けられることによって保持部7aに保持されている。また、ディスプレイパネル3は、その周縁部が粘着材で保持部7aの後背部に取り付けられることによって保持部7aに保持されている。
【0027】
ここで、プログラマブル表示器1の装置構成について説明する。
【0028】
図6に示すように、プログラマブル表示器1は、前述のディスプレイパネル3およびタッチパネル4、CPU11、メモリ部12、VRAM13、グラフィックコントローラ14、タッチパネルコントローラ15、インターフェース部(図中、I/F)16,17、送受信回路18ならびにアンテナ19を備えている。このプログラマブル表示器1は、PLC8に接続されたデバイス(図示せず)の状態を取得してディスプレイパネル3に表示するとともに、デバイスへの制御指示を与えるためのディスプレイパネル3上での入力をタッチパネル3から受け入れる。
【0029】
メモリ部12は、DRAM12a、FEPROM(Flash Erasable and Programmable ROM)12b、SRAM12c等のメモリを含んでいる。DRAM12aは、主に、表示制御などの演算処理時の作業用に用いられる他、PLC8との間でやり取りされるデータの一時的な記憶に用いられる。SRAM12cは、PLC8から得られたデータをロギングしたり、PLC8に与える設定値データ(レシピデータ)を記憶したりするために用いられる。FEPROM12bは、書き替え可能な読み出し専用のフラッシュメモリであり、一般のパーソナルコンピュータにおけるハードディスクドライブの役割を果たす。フラッシュメモリは、可動部を持たず、かつ衝撃に強いので、劣悪な周囲環境でも安定して動作する。
【0030】
また、上記のFEPROM12bは、表示制御システムプログラムと、通信プロトコルと、ユーザ画面データとをそれぞれ格納するエリアを有している。
【0031】
表示制御システムプログラムは、画像表示制御を行うための基本機能を実現するためのプログラムである。通信プロトコルは、PLC8との通信処理で用いられるプロトコルであり、PLC8の機種(メーカ)に応じて固有に定められている。この通信プロトコルには、PLC8へのデータの読み出しを指示するコマンドコードが含まれている。このコマンドコードは、PLC8の制御機能に対応付けられている前述のアドレスと組み合わされることによって、所望の制御機能についてのデータをPLC8に送信することができる。
【0032】
ユーザ画面のデータであるユーザ画面データは、ディスプレイパネル3に表示すべきベース画面やパーツのデータおよび各パーツに付与された後述する処理指示語などを含んでいる。ユーザ画面データは、作画エディタによって作成されて、FEPROM12bにダウンロードされている。
【0033】
CPU11は、前述の表示制御システムプログラムを実行することによって、プログラマブル表示器1の各部の動作を制御する。また、CPU11は、後述するインターフェース部16,17による通信や送受信回路18による通信を制御する機能を有している。
【0034】
VRAM13は、ディスプレイパネル3に表示される画面のイメージを一時的に保持するメモリであり、FEPROM12bからのユーザ画面データのイメージを水平方向に表示される順にドットデータとして格納している。
【0035】
グラフィックコントローラ14は、VRAM13に展開された画面のイメージを、ディスプレイパネル3に描画するドライバソフトウェアである。タッチパネル4は、ディスプレイパネル3の表示面上で入力を行うために設けられており、前述のアナログ抵抗膜式タッチパネルなどが好適である。タッチパネルコントローラ15は、タッチパネル4の出力電圧を入力位置情報に変換してCPU11に出力する。
【0036】
インターフェース部16は、LAN(Local Area Network)9に接続されており、このLAN9を介した他の機器との間の通信を行うための通信制御部である。一方、インターフェース部17は、プログラマブル表示器1がPLC8との間の通信を行うための通信制御部であり、シリアルケーブル(例えばRS−232C)などを介してPLC8に接続されている。このインターフェース部17により、PLC3との間でデータ送受信が行われる。
【0037】
送受信回路18は、例えば、無線LANやBluetooth(商標)など無線通信方式に対応した携帯端末などの無線通信可能な機器と通信するために設けられている。この送受信回路18は、例えば、受信回路として、高周波受信信号を中間周波数信号に変換する回路や中間周波数信号をプログラマブル表示器1で処理できる形式のデータに復調する復調回路などを含み、送信回路として、送信されるデータを変調する変調回路や変調後の信号を高周波送信信号に変換する回路などを含んでいる。
【0038】
アンテナ19は、受けた電波を高周波受信信号として取り出して送受信回路18に入力する一方、送受信回路18から出力された高周波送信信号を電波として送出する。このアンテナ19は、前述のアンテナ部5単独によって構成されるか、もしくはパッチアンテナの場合、アンテナ部5と筐体2の保持部2bまたはフレーム7の保持部7aと、後述する支持基板41によって構成される。
【0039】
続いて、タッチパネル4について詳細に説明する。図8は、図7に示すタッチパネル4におけるB−B線矢視断面構造を示している。
【0040】
図8に示すように、アナログ抵抗膜方式のタッチパネル4は、支持基板41、操作側基板42、透明導電膜43,44、ドットスペーサ45、シール部材46などによって構成されている。支持基板41は、ガラスや硬質フィルムなどからなり、操作側基板42はタッチ操作により変形するように軟質フィルム(例えばポリエステルフィルム)によって形成されている。支持基板41と操作側基板42とは、等間隔をおいて対向するように、操作部4aの周縁部分(額縁部4bを含む)で粘着剤46によって貼り合わされている。
【0041】
透明導電膜43は支持基板41における操作側基板42との対向面に形成され、透明導電膜44は操作側基板42における支持基板41との対向面に形成されている。透明導電膜43,44は、ITO(インジウム錫酸化物)などの透明かつ導電性を有する材料からなる薄膜である。ドットスペーサ45は、樹脂などの絶縁材料にて形成されており、透明導電膜43,44同士のタッチ部分のみの局部的な接触を可能とするように、透明導電膜43上にマトリクス状にほぼ等しい間隔をおいて配されている。
【0042】
また、支持基板41には、上下端(タッチパネル4がプログラマブル表示器1に取り付けられた状態での上下両端)に、透明導電膜44の上下縁部に沿って長く形成された第1電極(図示せず)が形成されている。第1電極から引き出された配線は、図7に示すように、テール部4cに接続されている。テール部4cは、フレキシブル配線ケーブルによって形成されており、端部にコネクタ部4dを有している。一方、操作側基板42には、両端(タッチパネル4がプログラマブル表示器1に取り付けられた状態での左右両端)に、透明導電膜44の側縁部に沿って長く形成された第2電極(図示せず)が形成されている。第2電極は、支持基板41上に形成された第3電極(図示せず)と接触しており、第3電極からから引き出された配線によってテール部4cに接続されている。
【0043】
また、図8に示すように、タッチパネル4における額縁部4bには、操作側基板42と同一層にアンテナ部5が配置されている。このアンテナ部5は、支持基板41上に粘着剤46によって貼り付けられている。
【0044】
図9に示すように、アンテナ部5は、アンテナ基板5a上にアンテナ電極5bが形成された構造を有する。アンテナ基板5aは、ポリエステルフィルムなどの薄い樹脂から構成されている。アンテナ電極5bは、銅などの電極材料がアンテナ基板5aに所定のパターンで直接印刷されることにより形成されており、放射部や給電部などを含んでいる。
【0045】
なお、アンテナ部5は、上記のように、タッチパネル4と別体に形成されるが、これに限らず、タッチパネル4と一体に形成されていてもよい。例えば、アンテナ電極5aが操作側基板42の操作側端面に直接印刷される構造であってもよい。これにより、アンテナ部5を別途作製する必要がなく、タッチパネル4の製造工程を簡素化することができる。また、額縁部4bにおける操作側基板42の操作側端面の任意の箇所にアンテナ電極5aを印刷形成することができる。
【0046】
また、タッチパネル4の厚さを極力増加させることなくタッチパネル4にアンテナを形成するには、以下の構造が好適である。
【0047】
第1の構造は、タッチパネル4の表面に位置する操作側基板42のいずれかの面に導電膜でアンテナ電極5bが形成される構造である。操作側基板42は、厚さ188μmのポリエステルフィムルが一般的によく用いられている。導電膜は、この操作側基板42上に透明のインジウム錫酸化物(ITO)膜および銀ペーストを印刷して形成される。アンテナ電極5bは、透明導電膜44と同じ面に形成されることにより、透明導電膜44と同一の工程で作製することができる。
【0048】
第2の構造は、タッチパネル4の支持基板41の表面(透明導電膜43の形成面)に導電膜でアンテナ電極5bが形成される構造である。導電膜は、上記の導電膜と同様にして形成される。アンテナ電極5bは、透明導電膜43と同じ面に形成されることにより、透明導電膜43と同一の工程で作製することができる。
【0049】
第3の構造は、支持基板41と操作側基板42との間に配されているフィルム状電極または同材質の別のフィルム上にアンテナ電極5bが形成される構造である。このようなフィルムとしては、絶縁目的のフィルムや電極を外部に取り出すためのフィルム状が挙げられる。このようなフィルムは、例えば、10μm〜50μm程度の厚さのポリエステルフィルムに銀ペーストで配線パターンが印刷されたり、ポリイミドフィルムに35μm程度の厚さの銅箔で配線パターンが形成されたりしている。したがって、アンテナ電極5bは、このようなフィルムに配線パターンと同様にして形成される。
【0050】
ところで、アンテナ部5は、額縁部4bにおいて1箇所設けられるだけでもよいが、図10または図11に示すように、複数箇所(図では2箇所)に設けられてもよい。例えば、図10(a)および(b)に示す構成では、アンテナ部5が円偏波アンテナである場合、2つのアンテナ部5は、操作部4aを間においてほぼ対向する位置に配置される。これにより、受信状況に応じて、いずれか受信感度のよいアンテナ部5を使用でき、ダイバーシティ効果を得ることができる。
【0051】
また、アンテナ部5が単一偏波アンテナである場合、図11に示すように、アンテナ部5は、その偏波方向(矢印方向)が直交する位置に配置されている。送信波がプログラマブル表示器1に到達するまで反射すると、送信波の偏波面が変化するので、上記のように偏波方向が直交していることにより、送信波の偏波面と一致する偏波面を有するアンテナ部5で受信することができる。これにより、受信状況に応じて、いずれか受信感度のよいアンテナ部5を使用でき、ダイバーシティ効果を得ることができる。
【0052】
アンテナ部5は、アンテナ部5に形成するアンテナの種類によってアンテナ機能を発揮することも可能であるが、パッチアンテナなどの地板導体を必要とするアンテナについては、筐体2の保持部2bまたはフレーム7の保持部7aが地板導体の役割を果たす。このようなアンテナ構造の給電線の配線は、例えば、図12(a)および(b)に示すようになされる。図12(a)および(b)は、図1の構造における配線構造を示している。
【0053】
この構造においては、給電線としての同軸ケーブル101の外被101a内の網線(外部導体)101bが端部から引き出されて保持部2bに接続されている。また、外部導体101bの内周側の絶縁物101cから芯線(内部導体)101dが引き出されている。この芯線101dは、支持部2aを筐体2の内部から外部に貫通するように形成された貫通孔2cを通して先端がアンテナ部5における給電点5cに接続されている。同軸ケーブル101の図示しない他端は、前述の送受信回路18に接続されている。給電点5cは、アンテナ部5のインピーダンスと同軸ケーブル101のインピーダンスが等しくなる位置に設けられる。
【0054】
また、スナップ式のコネクタを用いれば、給電線とアンテナ部5との接続が容易になる。例えば、図13に示すように、同軸ケーブル101の接続端に雄コネクタ102が取り付けられる一方、貫通孔2cの内部側開口部に雌コネクタ103が取り付けられ、雌コネクタ103から引き出された接続導体103がアンテナ部5の給電点5cに接続されている。このような構造では、給電線の取り付け作業を雄コネクタ102と雌コネクタ103との接合により容易に行うことができる。
【0055】
給電線として用いるケーブルは、上記のような一般的な同軸ケーブル101でも良いが、これに限らず、図14に示すような平板型の給電ケーブル111を用いても良い。この給電ケーブル111は、一定の間隔をおいて平行に配された平板状の表面導体部(外部導体)111a,111bの間に絶縁物(誘電体)111cが挟持され、その絶縁物111cの中心に芯線(内部導体)111dが配される構造をなしている。表面導体部111a,111bは銅箔などによって形成されており、芯線111dは銅などによって偏平形状に形成されている。絶縁物111cは、ポリイミドなどによって形成されている。
【0056】
また、図示はしていないが、外部導体部111a,111bの表面が絶縁フィルムで被覆されている。
【0057】
上記のように構成される給電ケーブル111のインピーダンスは、給電ケーブル111の厚さ、芯線111dの幅および絶縁物111cの誘電率で定まる。また、芯線111dからの電気力線が外部に漏れない程度に芯線111dとケーブル側端部との間の長さを確保すれば、両側端部に外部導体を設ける必要がない。このように両側端部を絶縁物111cが開放される構造を採ることにより、給電ケーブル111をフレキシブルに形成することができる。
【0058】
このような給電ケーブル111を用いて配線する場合、給電ケーブル111が100μm程度の厚さに形成されるため、配線が容易になる。例えば、図1に示す構造では、アンテナ部5の支持部2a側の端部から引き出された給電ケーブル111は、額縁部4bの端部および裏面と支持部2aおよび保持部2bとの間(粘着剤層)に配され、さらにディスプレイパネル3と保持部2bとの間(粘着剤層)に配されて筐体2の内部に導かれる。給電ケーブル111は、ディスプレイパネル3およびタッチパネル4が粘着剤によって筐体2に接合されるわずかな隙間に這わせることができる。したがって、図12や図13に示すように筐体2に貫通孔2cを設ける必要がなく、筐体2を形成するための金型もそれだけ安価に作製することができる。
【0059】
また、アンテナ部5がテール部4c付近に配置されている場合は、テール部4cと同じ位置から給電ケーブル111を引き出すようにしても良い。このような構成では、配線の引回しが簡素になり、タッチパネル4の取り付け作業を容易にすることができる。テール部4cと給電ケーブル111とを近接して配置できる場合、テール部4cと給電ケーブル111とを一体に形成しても良い。このような一体型のケーブルにおいては、アンテナ部の電気力線がテール部に漏れないようにアンテナ部とテール部とが若干離れて配置される。
【0060】
図7に示すように、アンテナ部5がテール部4cと離間して配置されている場合は、給電線を短くするために、アンテナ部5から直接の給電ケーブル111が引き出される。
【0061】
ところで、アンテナ部5を前述のように、タッチパネル4と別体に形成することにより、予め部品として用意しておいた各種のアンテナ部5を使用目的や周波数に応じて選択使用することができる。このような各種のアンテナ部5を用いる場合、図15に示すように、操作側基板42に形成されたアンテナ部5と同形状の切欠き部42aに所望のアンテナ部5を嵌め込んで接着固定する。
【0062】
ここで、図16(a)ないし(h)に示すように、本実施形態に採用可能な各種のアンテナ部5としてのアンテナ部51〜58について説明する。
【0063】
図16(a)に示すアンテナ部51は、逆F型のアンテナであり、細長く形成された放射部51aと面積の大きい地板部51bとをアンテナ電極5bとして有している。地板部51bは、タッチパネル4を間において保持部2bまたは保持部7aと容量結合する。このため、保持部2bまたは保持部7aが地板導体としての役割を果たすことにより、地板部51bの面積を小さくすることができる。地板部51bがない構成では、タッチパネル4の額縁部4bに内部へ貫通する孔を形成して、放射部51aと、保持部2bまたは保持部7aとを電気的に接続する必要がある。それゆえ、地板部51bを設ける方が好ましい。
【0064】
図16(b)および(c)に示すアンテナ部52,53は、それぞれパッチアンテナを構成している。図16(b)に示すアンテナ部52は、方形に形成されたパッチ部52aとストリップ給電線52bとをアンテナ電極5bとして有している。図16(c)に示すアンテナ部53は、パッチ部53aとストリップ給電線53bとをアンテナ電極5bとして有している。パッチ部53aは、方形の対向する角部が切り欠かれた形状をなしている。このようなパッチ部53aでは、表面で高周波を受けると、切欠き形状によって、一定周期毎に電流の向きが変わり、電流が端の部分を流れる不均衡を防止することができる。
【0065】
図16(d)に示すアンテナ部54は、メアンダラインアンテナであり、クランク状に蛇行するように形成された放射部54aと方形に形成された地板部55bとをアンテナ電極5bとして有している。放射部54aと地板部54bとは切り離されており、地板部54bはタッチパネル4を間において保持部2bまたは保持部7aと容量結合している。このアンテナ部54bでは、放射部54aの地板部54b側の端部に給電し、地板部54bに給電線の外部導体を接続するので、保持部2bまたは保持部7aを地板導体として利用する必要はないが、図16(a)のアンテナ部51と同様、地板部54bがタッチパネル4を間において地板導体として機能する保持部2bまたは保持部7aと容量結合するので、地板部54bの面積を小さくすることができる。
【0066】
図16(e)に示すアンテナ部55は、ダイポール型のパッチアンテナであり、細くかつ短く形成された放射部55aと、これに沿って形成された面積の大きい放射部55bとをアンテナ電極5bとして有している。放射部55a,55bは、近接して配置されていることから、容量結合している。
【0067】
図16(f)に示すアンテナ部56は、ループアンテナであり、ループ状の放射部56aをアンテナ電極5bとして有している。一方、図16(g)に示すアンテナ部57は、コイルアンテナであり、コイル状の放射部57aをアンテナ電極5bとして有している。これらのアンテナ部56,57は地板導体を必要としないので、アンテナ部56,57を用いたプログラマブル表示器1においては、保持部2bまたは保持部7aが地板導体として機能することはない。しかしながら、アンテナ部56,57は、プログラマブル表示器1に内蔵される回路基板から放射される電磁波などの影響を直接受けるとアンテナ性能が低下する。したがって、その背後に存在する保持部2bまたは保持部7aによって、上記のような回路基板による影響を遮断することによって、アンテナ部56,57のアンテナ性能を安定させることができる。
【0068】
図16(h)に示すアンテナ部58は、長方形に形成された3つの放射部58a〜58cをアンテナ電極5bとして有している。各放射部58a〜58cは、長手方向にずれるように近接して配されて容量結合しているため、等価的には繋がっている。また、各放射部58a〜58cの長さ(λ/4)を異ならせることによりそれぞれの共振周波数を異ならせれば、共振ポイントの異なる3つのアンテナを有するのと同じ効果が得られ、送受信可能な周波数範囲を拡大することができる。
【0069】
例えば、無線LAN用のアンテナを設計する場合、図17に示すように、無線LANで用いられる周波数帯域(2.4GHz〜2.5GHz)での電圧定在波比(VSWR;Voltage Standing Wave Ratio)が表される。VSWRが小さいほどアンテナが効率良く機能するので、実用可能な1≦VSWR≦3の範囲での周波数範囲wが上記の周波数帯域をカバーできることが好ましい。このため、図16(h)のアンテナ部58によれば、図17に示すような共振周波数の異なる3つの特性曲線が得られるので、周波数範囲wを無線LANの周波数帯域に近づけることができる。
【0070】
以上に述べたように、本実施形態のプログラマブル表示器1は、アンテナ部5がタッチパネル4の額縁部4bに配置されるとともに、アンテナ部5の背後に額縁部4b(支持基板41などを含む)を間において金属構造体としての保持部2bまたは保持部7aが存在する構造を有している。このような構造では、保持部2bまたは保持部7aによって、アンテナ部5を筐体2内に設けられた回路基板から電磁的に遮蔽することができる。それゆえ、前述の図16(f)および(g)に示すようなアンテナ部56,57では、アンテナ性能を安定させることができる。しかも、アンテナ部5が額縁部4bに配置されることから、パッチアンテナをタッチパネルの操作部に形成する構造(特許文献2)のように表示品位を損ねたり、ディスプレイパネルに形成された平板アンテナのように(特許文献3)前方にタッチパネルが配された場合にタッチパネルの電極で電磁遮蔽されてアンテナ性能を損ねたりする不都合を回避することができる。
【0071】
このように、アンテナが性能を損なわれることなくプログラマブル表示器1の前面側に設けられる。これにより、プログラマブル表示器1を図4に示すように制御盤201に取り付けた状態でも、無線端末装置との間で無線LANなどの無線通信を支障なく行なうことができる。
【0072】
また、パッチアンテナを構成する場合、アンテナ部5に対して、保持部2bまたは保持部7aが地板導体として機能するとともに、タッチパネル4の支持基板41が誘電体として機能する。それゆえ、プログラマブル表示器1の構造の一部を利用してパッチアンテナを構成することができ、プログラマブル表示器1の構造そのものを変更する必要がない。これにより、アンテナを備えないプログラマブル表示器との部品(筐体2やフレーム7など)の共通化を容易に図ることができる。
【0073】
また、図10および図11に示すように、複数のアンテナ部5をダイバーシティ効果が得られるように配置することにより、アンテナ部5をダイバーシティアンテナとして機能させることができる。さらに、本実施形態では、図15に示すように、異なる機能を有するアンテナ部5を部品の形態で提供できるようにしている。これにより、アンテナ部5とタッチパネル4の仕様がそれぞれ複数存在しても、特定の仕様のタッチパネル4に搭載すべきアンテナ部5を選択して取り付けることで、タッチパネル4の製造に必要な版の数を増加をさせることはない。それゆえ、初期投資の増加を回避することができる。
【0074】
ところで、パッチアンテナを構成する場合、支持基板41は誘電体として機能するが、誘電体の比誘電率が大きいほどアンテナ電極の面積を小さくすることができる。パッチアンテナのように誘電体板表面に放射器を形成するアンテナは、回路モジュールなどに組み込むために、一般に、厚さ0.8mm〜1.6mm程度の厚さを有する電子回路用プリント基板(例えば、ガラス・エポキシなどの複合材基板やテフロン(登録商標)樹脂基板)を用いて実現される例が多い。これに対し、本実施形態のプログラマブル表示器1では、誘電体として1mm〜5mm程度の厚さを有するガラスからなる支持基板41を用いている。
【0075】
一般的なガラスの比誘電率は、5.4〜9.9の範囲にある。電子回路用プリント基板には、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて硬化させたFR−4と呼ばれる基板がある。マイクロ波帯では、テフロン樹脂の基板も良く使用される。このFR−4やテフロン樹脂基板、そして本実施形態のようにガラスを基板基板として用いた場合の、各基板上での波長短縮率を表1に示す。
【0076】
表1から、テフロン樹脂基板の波長短縮率を1とした場合、FR−4の波長短縮率は、0.997であり、比誘電率7.3のガラスの波長短縮率は0.802であり、比誘電率9.0のガラスの波長短縮率は0.722である。この波長短縮率は、テフロン樹脂基板上にあるアンテナ電極の寸法を1とした場合のそれぞれの基板上でのアンテナ電極の寸法の比を表している。つまり、テフロン樹脂基板に比較して、比誘電率7.3のガラス基板ではアンテナ電極寸法が80%であり、比誘電率9.0のガラス基板ではアンテナ電極寸法が72%であることを意味している。したがって、ガラスを基板として用いると、アンテナ電極寸法で最大28%、アンテナ電極面積で最大58%の縮小化が可能である。
【0077】
これにより、アンテナの小型化が可能になり、より小型のプログラマブル表示器1にも容易に本実施形態のアンテナを搭載することができる。
【0078】
【表1】
【0079】
電子回路用プリント回路基板上に形成されるアンテナで地板を必要とするパッチアンテナの場合、アンテナの放射器が形成された面の誘電体を間においた反対側の面は、一面導体(グランドプレーン)の地板を形成する必要がある。パッチアンテナが形成されたプリント基板においては、片面がアンテナ電極を形成するパターン面となり、反対側の面が一様な導体面となる。本実施形態では、保持部2bまたは保持部7aのような金属構造体を地板すなわち一様な導体面として利用できることから、誘電体としてのガラス基板と組み合わせることにより、小さくて高性能なアンテナをプログラマブル表示器1に組み込むことができる。
【0080】
また、パッチアンテナの放射器には地板を基準に給電する。したがって、本実施形態の構造では、保持部2bまたは保持部7aに地板電位を取る必要がある。地板電位を取るには、アンテナの放射器の形成面の反対側の面に金属構造体とのリアクタンスが数Ωより小さくなるように電極を設け、これを地板電位の電極としてアンテナの放射器への給電に利用する。
【0081】
なお、本実施形態では、アナログ抵抗膜方式のタッチパネル4を用いた例について説明したが、他の方式のタッチパネルを用いてもよい。例えば、ストライプ状の透明導電膜が形成された2枚の透明基板を透明導電膜が交差するように対向させ、マトリクス状に交差部が形成されるようなデジタル方式のタッチパネルが本発明に適用可能である。また、保持部2bまたは保持部7aによるアンテナ性能の向上が期待できれば、図16(a)ないし(h)に示したタイプ以外のアンテナ部5も本発明に適用可能である。さらに、本実施形態では、表示装置としてプログラマブル表示器1について説明したが、タッチパネルを有し、同様なタッチパネル保持構造を有しておれば、プログラマブル表示器1以外の表示装置でも本発明の適用が可能である。
【0082】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の表示装置は、タッチパネルの額縁部にアンテナ構造が形成されることにより、表示性能やアンテナ性能を損なうことなくアンテナを搭載することができるので、無線LANなどの通信方式で無線端末装置と無線通信を行なう環境に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態を示すプログラマブル表示器の要部の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態を示すプログラマブル表示器の要部の他の構造を示す断面図である。
【図3】図1または図2の構造を有するプログラマブル表示器の外観構成を示す分解斜視図である。
【図4】上記プログラマブル表示器が取り付けられた制御盤の外観を示す斜視図である。
【図5】上記制御盤におけるプログラマブル表示器の取り付け部位での構造を示す断面図である。
【図6】上記プログラマブル表示器の装置構成を示すブロック図である。
【図7】上記プログラマブル表示器に設けられるタッチパネルの外観構成を示す斜視図である。
【図8】上記タッチパネルの要部の構造を示す断面図である。
【図9】上記タッチパネルに設けられるアンテナ部の外観構成を示す斜視図である。
【図10】(a)および(b)は円偏波アンテナのアンテナ部がダイバーシティアンテナとして機能するように配置されたタッチパネルの構成を示す平面図である。
【図11】直線偏波アンテナのアンテナ部がダイバーシティアンテナとして機能するように配置されたタッチパネルの構成を示す平面図である。
【図12】(a)は上記アンテナ部および上記プログラマブル表示器の一部に給電線を接続する構造を示す断面図であり、(b)はその平面図である。
【図13】上記アンテナ部および上記プログラマブル表示器の一部に給電線を接続する他の構造を示す断面図である。
【図14】上記給電線の他の構造を示す断面図である。
【図15】異なるアンテナ部を部品としてタッチパネルに取り付ける状態を示す斜視図である。
【図16】(a)ないし(h)は上記アンテナ部の構成を示す平面図である。
【図17】アンテナのVSWRを示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 プログラマブル表示器(表示装置)
2 筐体
2b 保持部(保持構造体)
4 タッチパネル
4b 額縁部(周縁部)
5 アンテナ部
5a 基板
5b アンテナ電極
7 フレーム
7a 保持部(保持構造体)
41 支持基板(第1透明基板)
42 操作側基板(第2透明基板)
42a 切欠き部
111 給電ケーブル
111a 表面導体部(外部導体)
111b 表面導体部(外部導体)
111c 絶縁物
111d 芯線(内部導体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面上にタッチパネルが設けられている表示装置において、
前記タッチパネルの周縁部を保持する金属からなる保持構造体と、
前記周縁部において前記保持構造体側に位置する第1透明基板より前方に位置して形成されるアンテナ電極とを備えていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記アンテナ電極は、前記第1透明基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記アンテナ電極は、前記タッチパネルにおいて前記第1透明電極と対向して設けられる操作側の第2透明電極上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記アンテナ電極は、前記タッチパネルにおいて前記第1および第2透明電極の間に配されるフィルム上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1透明基板はガラスからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
複数のアンテナ電極が偏波ダイバーシティ機能を有するように配されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記アンテナ電極は、前記第2透明基板の切欠き部に嵌め込み可能な形状、かつ前記第2透明基板とほぼ同じ厚さを有するように形成された基板上に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記アンテナ電極に接続される給電線は、一定の間隔をおいて対向するように配された1対の平板状の外部導体と、該外部導体間に形成される絶縁物と、該絶縁物内に形成される内部導体とを有する平板型の給電ケーブルであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項1】
表示面上にタッチパネルが設けられている表示装置において、
前記タッチパネルの周縁部を保持する金属からなる保持構造体と、
前記周縁部において前記保持構造体側に位置する第1透明基板より前方に位置して形成されるアンテナ電極とを備えていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記アンテナ電極は、前記第1透明基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記アンテナ電極は、前記タッチパネルにおいて前記第1透明電極と対向して設けられる操作側の第2透明電極上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記アンテナ電極は、前記タッチパネルにおいて前記第1および第2透明電極の間に配されるフィルム上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1透明基板はガラスからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
複数のアンテナ電極が偏波ダイバーシティ機能を有するように配されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記アンテナ電極は、前記第2透明基板の切欠き部に嵌め込み可能な形状、かつ前記第2透明基板とほぼ同じ厚さを有するように形成された基板上に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記アンテナ電極に接続される給電線は、一定の間隔をおいて対向するように配された1対の平板状の外部導体と、該外部導体間に形成される絶縁物と、該絶縁物内に形成される内部導体とを有する平板型の給電ケーブルであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−48166(P2006−48166A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224568(P2004−224568)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000134109)株式会社デジタル (224)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000134109)株式会社デジタル (224)
【Fターム(参考)】
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