説明

表示装置

【課題】有機EL素子においての発光光が近接する画素に伝搬されることによる混色が防止され、これにより高精度表示が可能な表示装置を提供する。
【解決手段】下部電極21と上部電極23との間に有機層22を狭持してなる有機電界発光素子ELを基板10上に複数配列してなる表示装置1において、基板10上の各画素10r,10g,10bにパターン形成された下部電極21と、下部電極21間に設けられた絶縁膜17と、下部電極21および絶縁膜17に接してこれらを覆う状態で設けられると共に絶縁膜17の屈折率n2と略同一の屈折率n1を有する有機層22と、下部電極21との間に有機層22を狭持すると共に、有機層22において生じた発光光が取り出される上部電極23とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に関し、特には有機電界発光素子を基板上に複数配列してなる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:EL)を利用した有機電界発光素子(有機EL素子)は、高速応答性に優れ、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。有機EL素子は、2枚の電極間に発光層を含む有機層を狭持してなり、一方の電極側から発光光を取り出す構成となっている。このような有機EL素子を用いた表示装置(いわゆる有機ELディスプレイ)は、基板上に複数の有機EL素子を配列してなる。また、アクティブマトリックス駆動の有機ELディスプレイにおいては、基板上の各画素に駆動素子が設けられ、これを覆う平坦化絶縁膜上に有機EL素子が配列形成される。この平坦化絶縁膜上には各有機EL素子を露出させる形状のウィンドウ絶縁膜が設けられる場合もある。また有機EL素子が形成された基板上は保護絶縁膜で覆われ、封止基板が貼り合わせられている。
【0003】
以上のような有機ELディスプレイにおいてカラー表示を行うための構成としては、例えば、各画素の発光層に各色発光材料をパターン形成する構成がある。またこの他にも白色発光素子と共にカラーフィルタや色変換層を組み合わせた構成、さらには白色発光する共通の発光層を用い多重干渉によって所定波長の光のみを取り出す構成等、様々な構成がある。
【0004】
以上のような有機ELディスプレイは、モニタなどの大型ディスプレイに限らず、ビューアなどに代表される小型ディスプレイへの用途が検討されている。この場合、表示性能の観点において現行の液晶ディスプレイと差別化するために、可能な限り高性能化する必要がある。特に、従来の有機ELディスプレイでは、明所における視認性や色純度が未だ十分とは言えないため、多分に改善の余地がある。
【0005】
そこで、例えば基板と反対側から色変換層で変換させた光を取り出す構成の有機ELディスプレイにおいて、光取り出し側の電極と色変換層との間に配置される保護膜の屈折率を、色変換層に向かって減少させ、これらの各層の屈折率を調整することにより、これらの各層の界面における反射を防止し、外部に取り出す発光量の減少を防止する構成が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0006】
また例えば、発光層での発光が基板の外に透過する際に通過する層を、光透過率の高い材料で構成し、またこれらの層の屈折率を設定することで、屈折率の異なる層間での反射を抑えて発光効率を上昇させ、さらには発光が基板の外に透過する際に通過しない部分も光透過率の高い材料で構成することで光の吸収を抑えて、発光効率を向上させる構成が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0007】
さらに、基板側から光を取り出す構成であれば、有機EL素子の下地となる平坦化絶縁膜と、この平坦化絶縁膜上において有機EL素子の隔壁を構成するウィンドウ絶縁膜とを同一の材料を用いることで、これらの界面での光反射を防止した構成も提案されている(例えば、下記特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−13362号公報
【特許文献2】特開2005−108825号公報
【特許文献3】特開2005−93396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した有機ELディスプレイにおいては、ある画素で発光した光が、前記の光反射や光拡散によって近接する画素に伝播し、そこで再び反射して基板上面に取り出されて混色する問題がある。このような問題は、各層や膜の各面で生じる光反射や光拡散が要因となるため、上述したように各絶縁層間での光反射を防止することである程度抑えることは可能である。
【0010】
しかしながら、上述した構成の表示装置においては、有機EL素子を構成する有機層が、当該有機EL素子を分離するウィンドウ絶縁膜や有機EL素子の下地絶縁膜上に接して配置される部分がある。この部分は、有機EL素子の周辺部であり、有機EL素子の発光面に対してテーパ角度を持って配置されている場合が多い。したがって、この部分においての光反射や光拡散は、特に近接する画素に伝播し易く、そこで再び反射して基板上面に取り出されて混色を引き起こする要因となり、有機ELディスプレイの表示精度を低下させる。
【0011】
そこで本発明は、有機EL素子においての発光光が近接する画素に伝搬されることによる混色が防止され、これにより高精度表示が可能な表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するための本発明の表示装置は、下部電極と上部電極との間に有機層を狭持してなる有機電界発光素子を基板上に複数配列してなる構成のものであり、基板上の各画素にパターン形成された下部電極、およびこれらの下部電極間に設けられた絶縁膜を備えている。また、下部電極および絶縁膜に接してこれらを覆う状態で設けられると共に、当該絶縁膜の屈折率n2と略同一の屈折率n1を有する有機層を備えている。そして、下部電極との間に有機層を狭持すると共に、当該有機層において生じた発光光が取り出される上部電極を備えている。
【0013】
このような構成の表示装置によれば、絶縁膜とこれを覆う有機層との屈折率を略同一としたことにより、この界面での光反射が防止される。特に、絶縁膜と有機層とが接する界面は、有機EL素子の周辺部を囲むように存在し、有機EL素子の発光面に対してテーパ角度を持って配置されている場合が多い。したがって、この界面においての反射光を防止することにより、近接する画素への反射光の伝播が効果的に防止される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明の表示装置によれば、絶縁膜とこれを覆う有機層と界面での光反射を防止することで近接する画素への反射光の伝播を効果的に防止できるため、画素間における混色が防止されて視認性や色純度を向上させた高精度表示が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
<第1実施形態>
【0017】
図1は、第1実施形態の表示装置の構成を示す概略断面図である。この図に示す表示装置1は、基板10上の各画素10r,10g,10bに有機電界発光素子ELを配置してなる有機ELディスプレイである。有機電界発光素子ELは、赤色光hrを取り出す赤色画素10r、緑色光hgを取り出す緑色画素10g、青色光hbを取り出す青色画素10bにそれぞれ配置され、基板10と反対側からこれらの各色光hr,hg,hbを取り出す構成(いわゆるトップエミッション型構造)となっている。先ず、この表示装置1の全体構成を下層側から順に説明する。
【0018】
先ず、基板10上には、薄膜トランジスタ(TFT)12、絶縁層13、駆動配線14、および平坦化絶縁層15が設けられている。平坦化絶縁膜15上には、反射パターン16と、反射パターン16が挟み込まれた積層構造の絶縁膜17とが設けられ、この上部に有機電界発光素子ELが設けられている。
【0019】
有機電界発光素子ELは、透明電極からなる下部電極21、有機層22、および半透過材料からなる上部電極23で構成されている。そして、有機層22で生じた白色光は、反射パターン16と上部電極23との間で多重干渉し、上部電極23側から各色の光hr,hg,hbとして取り出される。
【0020】
また有機電界発光素子ELの上部には、保護膜25および接着層26を介して封止基板27が貼り合わせられ、基板10と封止基板27との間に有機電界発光素子ELを狭持してなる表示装置1が構成されている。
【0021】
このような構成において、本第1実施形態の表示装置1においては、絶縁膜17とその上部に設けられた下部電極21とに接して有機層22が設けられている。そして特に、絶縁膜17の屈折率n2が、有機層22の屈折率n1と略同一に調整されているところが特徴的である。
【0022】
次に上述した各部材の詳細構成を説明する。
【0023】
基板10は、シリコン(Si)やプラスチックなどの非光透過性の絶縁性材料により構成されている。
【0024】
TFT12は、有機電界発光素子ELを駆動させるための素子であり、例えば、基板10の各画素10r,10g,10bに対応してマトリクス状に配列されている。尚、TFT12の構造自体が限定されることはなく、ボトムゲート型構造であってもよいし、あるいはトップゲート型構造であってもよい。
【0025】
絶縁層13は、TFT12を周囲から電気的に分離するものであり、例えば、酸化シリコン(SiO2)やPSG(phospho-silicate glass)などの絶縁性材料により構成されている。この絶縁層13は、例えば、TFT12およびその周辺の基板10上を覆うように配設されている。
【0026】
駆動配線14は、信号線として機能することにより有機電界発光素子ELを駆動させるものであり、例えば、アルミニウム(Al)やアルミニウム銅合金(AlCu)などの導電性材料により構成されている。この駆動配線14は、例えば、各TFT12に2つずつゲート信号線およびドレイン信号線として設けられており、絶縁層13に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じてTFT12と電気的に接続されている。
【0027】
平坦化絶縁層15は、TFT12および駆動配線14と有機電界発光素子ELとの間を電気的に分離すると共に、その有機電界発光素子ELが配置される下地を平坦化するものであり、例えば、酸化シリコン(SiO2)などの絶縁性材料により構成されている。尚、図1には図示していなが、平坦化絶縁層15中には、例えば、TFT12を駆動させるためのキャパシタや、駆動配線14と有機電界発光素子ELとの間を電気的に接続させるための多階層の配線などが埋設されている。
【0028】
反射パターン16は、光反射性を有する材料により構成されており、例えば、いずれもアルミニウム(Al)、アルミニウムを含む合金、銀(Ag)または銀を含む合金により構成されている。この「アルミニウムを含む合金」とは、いわゆるアルミニウムを主成分とする合金であり、例えば、アルミニウムネオジム合金(AlNd;例えばAl:Nd=90重量%:10重量%)などが挙げられる。また、「銀を含む合金」とは、いわゆる銀を主成分とする合金であり、例えば、銀パラジウム銅合金(AgPdCu;例えばAg:Pd:Cu=99重量:0.75重量%:0.25重量%)などが挙げられる。
【0029】
このような材料からなる反射パターン16は、各画素10r,10g,10b毎にパターン形成され、それぞれが積層構造の絶縁膜17の層間に互い違いに挿入されることで、それぞれに設定された高さ位置に配置されている。ここでは例えば、平坦化絶縁膜15上には、緑色画素10gに対応する位置に反射パターン16が配置されている。そしてこれを覆う絶縁膜17の第1層17-1上には、青色画素10bに対応する位置に反射パターン16が配置されている。さらにこれを覆う絶縁膜17の第2層17-2上には、赤色画素10rに対応する位置に反射パターン16が配置されている。
【0030】
尚、反射パターン16と有機電界発光素子ELの上部電極23との光学的距離Lは、各画素10r,10g,10bにおいて、次のように調整されている。すなわち、赤色画素10rにおいては、赤色光hr(例えば、波長=約620nm)が共振して取り出されるように調整されている。また、緑色画素10gにおいては、緑色光hg(例えば、波長=530nm)が共振して取り出されるように調整されている。さらに青色画素10bにおいては、青色光hb(例えば、波長=460nm)が共振して取り出されるように調整されている。
【0031】
ここで、本第1実施形態の表示装置においては、有機電界発光素子ELの有機層22で発生させた光を、反射パターン16と有機電界発光素子ELの上部電極23との間において反射させることにより共振させる共振器構造を有しており、いずれも一種の狭帯域フィルタとして機能するものである。反射パターン16と上部電極23との間の光学的距離Lは、上記した共振器構造の共振特性に寄与する因子であり、例えば、下記の関係式(1)の関係を満たしている。
【0032】
【数1】

ただし、式(1)中の「λ」は各画素10r,10g,10bから取り出す各色光hr,hg,hbのスペクトルのピーク波長、「Φ」は有機電界発光素子ELの有機層22で発生した光が反射パターン16と上部電極23との界面において反射する際に生じる位相シフト、「m」は0または整数を表している。
【0033】
絶縁膜17は、第1層17-1、第2層17-2、および第3層17-3の3層構造であり、各画素10r,10g,10b毎にパターン形成された反射パターン16の高さ位置を調整し、これによって上記光学的距離Lを調整するためのものである。また、最上部の反射パターン16を第3層17-3で覆っている。これらの3層は、それぞれが設定された膜厚を備え基板10上の面内で均一であることとする。この絶縁膜17は、この上部の有機電界発光素子ELで発生させた光を透過させて反射パターン16で反射させるため光透過性が良好な材料で構成される。また絶縁膜17は、内部での光反射および下地となる平坦化絶縁膜15との界面での光反射を防止するために、平坦化絶縁膜15と同一の単一材料で構成されることが好ましい。
【0034】
そして特に本第1実施形態では、上述したように絶縁膜17の屈折率n2が、この絶縁膜17に接して設けられた有機層22の屈折率n1と略同一に調整されているところが特徴的である。
【0035】
図1中のa部拡大図を図2に示す。ここでは、絶縁膜17の屈折率n2とは、より正確には最表面を構成する層(ここでは第3層17-3)の屈折率n2であることとする。また、有機層22の屈折率n1とは、有機層22の最下層を構成する層(例えば以降に説明するホール注入層22-1)の屈折率であることとする。そして、これらの屈折率n1,n2が略同一とは、屈折率差[(n1−n2)/n2]×100%=−5%〜8%の範囲であることとする。これにより、後にグラフを用いて説明するように、絶縁膜17と有機層22との界面での反射率が低く抑えられるのである。
【0036】
以上のような絶縁膜17は、例えば、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiNx)または酸化窒化シリコン(SiOxNy)などの無機絶縁性材料により構成されている。そして、材質の選択と共に、選択された材質からなる絶縁膜17の成膜条件によってその屈折率n2が高精度に調整されていることとする。
【0037】
また、この絶縁膜17は、略均一な膜厚を備えており、かつ各反射パターン16を覆っている。このため、絶縁膜17の表面には、各画素10r,10g,10bの周縁部において反射パターン16の段差を覆う分部に対応してテーパ形状に形成された側壁部分が発生する。ここで例えば、この側壁部分のテーパ角度θは、この上部に設けられている有機層22や上部電極23の段切れを防止するために、60°以下に形成されていることとする。また、有機電界発光素子ELは、この側壁部分の上部に配置されるため、画素面積を保つことを目的としてテーパ角度θは、30°以上に形成されていることとする。
【0038】
次に有機電界発光素子ELの構成を説明する。
【0039】
下部電極21は、各画素10r,10g,10b毎にパターン形成されている。各下部電極21は、絶縁膜17に設けられたコンタクトホール(図示せず)を介して反射パターン16に接続され、さらに平坦化絶縁層15に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて駆動配線14と電気的に接続されている。
【0040】
これらの下部電極21は、アノード(陽極)として設けられると共に、酸化インジウム錫(ITO;indium tin oxide)のような透明導電性材料により構成されている。またこれらの下部電極21は、同一層で構成されていても良いが異なる層で構成されていても良い。この場合、絶縁膜17と共に、各画素10r,10g,10b毎にパターン形成された反射パターン16の高さ位置(すなわち光学的距離L)を調整するためにそれぞれ異なる膜厚で構成されていても良い。またこの場合、各画素10r,10g,10bの下部電極21は、それぞれが異なる透明導電性材料で構成されても良い。
【0041】
有機層22は、少なくとも発光層を備えており、全画素10r,10g,10bに共通の連続した層として均一な膜厚で設けられている。この有機層22は、陽極となる下部電極21側から順に、例えばホール注入層22-1、ホール輸送層22-2、赤色発光層22-3、緑色発光層22-4、青色発光層22-5、および電子輸送層22-6が積層された積層構造を有しており、白色の発光光を発生させる構成となっている。
【0042】
このうちホール注入層22-1は、ホール輸送層22-2にホール(正孔)を注入するものであり、例えば、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)により構成されている。
【0043】
またホール輸送層22-2は、ホール注入層22-1から注入されたホールを発光層22-3,22-4,22-5へ輸送するものであり、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。
【0044】
さらに発光層のうちの赤色発光層22-3は、有機EL現象を利用して赤色の光を発生させるものであり、例えば、4−ジシアノメチレン−6−(P−ジメチルアミノシチル)−2−メチル−4H−ピラン(DCM)が約2体積%混合された8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)により構成されている。緑色発光層22-4は、有機EL現象を利用して緑色の光を発生させるものであり、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)により構成されている。青色発光層22-5は、有機EL現象を利用して青色の光を発生させるものであり、例えば、バソクプロイン(BCP)により構成されている。
【0045】
そして電子輸送層22-6は、電子を発光層22-3,22-4,22-5へ輸送するものであり、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)により構成されている。
【0046】
また上記有機層22上の上部電極23は、全画素10r,10g,10bに共通の連続した層として設けられている。この上部電極23は、カソード(陰極)として設けられると共に、有機層22で発生した光を共振させるために反射させたのちに外部へ導くハーフミラーとして機能する。このような上部電極23は、光半透過性を有する導電性材料により構成されており、例えば、銀(Ag)または銀を含む合金により構成された単層構造を有している。この「銀を含む合金」とは、いわゆる銀を含有する合金であり、例えば、銀マグネシウム合金(AgMg;例えばAg:Mg=10重量%:90重量%)などが挙げられる。
【0047】
特に、発光の取り出し側となる上部電極23の反射率は、例えば、約50%以上、より具体的には約50%以上95%以下の範囲内である。この場合において、反射率は、例えば、約60%以上であるのが好ましく、さらに約70%以上あるいは約80%以上であるのが好ましい。反射率が約50%よりも小さくなると、上部電極23において十分な反射特性が得られず、一方、反射率が約95%よりも大きくなると、上部電極23において十分な光透過特性が得られないからである。
【0048】
尚、上部電極23は、単層構造である必要はなく、互いに異なる材料により構成された積層構造を有していてもよい。より具体的には、カソードとなる上部電極23は、例えば、マグネシウム(Mg)および銀(Ag)を含む合金により構成された層(下層)と、銀または銀を含む合金により構成された層(上層)とがこの順に積層された2層構造を有していてもよい。この「マグネシウムおよび銀を含む合金」としては、いわゆるマグネシウムおよび銀を含有する合金であり、例えば、マグネシウム銀合金(MgAg;Mg:Ag=例えば5重量%:1重量%〜20重量%:1重量%)などが挙げられる。また、「銀を含む合金」とは、いわゆる銀を含有する合金であり、例えば、銀マグネシウム合金(AgMg;例えばAg:Mg=10重量%:90重量%)などが挙げられる。
【0049】
以上までの構成において、各画素10r,10g,10bに、下部電極21、有機層22、および上部電極23を積層してなる有機電界発光素子ELが配置される。これらの各有機電界発光素子ELは、共通の色(互いに等しい色)の光を発生させるものであり、ここでは例えば、白色光を発生させる構成となっている。
【0050】
尚、この表示装置1においては、赤色画素10r、緑色画素10g、および青色画素10bを1組として、TFT12の配列パターンに対応して複数組がマトリクス状に配列された構成となっている。
【0051】
保護膜25は、主に有機電界発光素子ELを保護するものであり、例えば、窒化シリコン(SiN)などの光透過性誘電性材料により構成されたパッシベーション膜である。
【0052】
接着層26は、保護膜25上に封止基板25を貼り合わせるためのものであり、例えば、熱硬化型樹脂などの接着材料により構成されている。
【0053】
封止基板25は、各画素10r,10g,10bから放出された画像表示用の光HR,HG,HBを、表示光として表示装置1の外側に放出させるものであり、例えば、ガラスなどの光透過性絶縁性材料により構成されている。
【0054】
以上のような構成の表示装置1では、有機電界発光素子ELを構成する有機層22の屈折率n1と、有機層22と直接接する下地の一部を構成する絶縁膜17の屈折率n2とを、略同一としたことにより、これらの界面での光反射が防止される。
【0055】
特に絶縁膜17と有機層22とが接する界面部分は、有機電界発光素子ELの周辺部を囲むように存在するため、テーパ角度を持って配置されている場合が多い。例えば、先に図2を用いて説明したように、この絶縁膜17は略均一な膜厚を備えて反射パターン16を覆っているため、各画素10r,10g,10bの周縁部においてテーパ角θ=30°〜60°に設定されたテーパ形状の側壁部分が発生する。
【0056】
したがって、このようなテーパ形状の界面部分において光の反射を防止することにより、近接する画素への反射光の伝播が防止される。そして、図3に示すように、近接する画素から伝播された光Hが、有機層22と絶縁膜17とのテーパ形状の界面に入射し、この界面において、各色光の取り出し方向(表示面方向)に反射して表示光として取り出されることを防止できる。尚、テーパ角度θの界面においては、この界面に対してテーパ角θと同一の入射角φ1から入射した光が、表示面方向(正面方向)に反射して取り出されることになる。
【0057】
ここで、有機層22の屈折率をn1、有機層22において発光した光Hが入射する絶縁層17(17-1)の屈折率をn2、有機層22と絶縁層17との界面における有機層22から絶縁層17への光の入射角をφ1、屈折角をφ2とする。この場合、界面において下記式(2)が成り立つ。また光反射率は、下記式(3)で示されるp成分の光反射率Rpと、下記式(4)で示されるs成分の光反射率Rsの平均値となる。
【0058】
【数2】

【0059】
図4には、以上の式(2)〜(4)に基づいて、有機層22の屈折率n1と絶縁層17の屈折率をn2との屈折率差[(n1−n2)/n2]×100%に対する、界面での反射率をシミュレーションした結果を示す。このグラフに示すように、屈折率差[(n1−n2)/n2]×100%=−5〜8%の範囲で、反射率を約1%以下の低い値に抑えられることがわかる。
【0060】
また、この図4によれば、上述のように設定された有機層22と絶縁層17との界面のテーパ角度θ=30°〜60°の範囲(すなわち入射角度φ1=30°〜60°)において、屈折率差[(n1−n2)/n2]×100%=−5〜8%の範囲では、有機層22と絶縁層17との界面における反射率を約1%以下の低い値に抑えられることがわかる。
【0061】
以上の結果、本第1実施形態の表示装置1によれば、絶縁膜17とこれを覆う有機層22と界面での光反射を防止することで近接する画素への反射光の伝播を効果的に防止できる。これにより、画素間における混色が防止されて視認性や色純度が向上させた高精度表示が可能になる。
【0062】
<第2実施形態>
図5には、第2実施形態の表示装置の構成を示す概略断面図である。この図に示す表示装置1’と、図1に示した第1実施形態の表示装置1との異なるところは、有機電界発光素子ELを構成する下部電極23の周縁を覆うウィンドウ絶縁膜31が設けられているところにある。
【0063】
ウィンドウ絶縁膜31は、各下部電極21の周縁を覆うと共に下部電極21の中央部を露出させる形状を有し、各下部電極21を分離するように設けられている。これにより、反射パターン16を覆う絶縁層17の段差をウィンドウ絶縁膜31で覆い、この上部に形成される有機層22および上部電極23のカバレッジを良好にし、下部電極21と上部電極23との間の短絡を防止する。
【0064】
このウィンドウ絶縁膜31は、例えば、ポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールなどの有機絶縁性材料や、酸化シリコン(SiO2)などの無機絶縁性材料で構成されている。そして、本第2実施形態においては、このウィンドウ絶縁膜31の屈折率をn2とし、この屈折率n2が、ウィンドウ絶縁膜31および下部電極21を覆う有機層22の屈折率n1と略同一に調整されているところが特徴的である。ここで、有機層22の屈折率n1とは、有機層22の最下層を構成する層(例えば先に説明したホール注入層22-1)の屈折率であることとする。そして、これらの屈折率n1,n2が略同一とは、屈折率差[(n1−n2)/n2]×100%=−5%〜8%の範囲であることは第1実施形態と同様である。
【0065】
以上のようなウィンドウ絶縁膜31は、材質の選択と共に、選択された材質からなる絶縁膜17の成膜条件によってその屈折率n2が高精度に調整されていることとする。
【0066】
また、このウィンドウ絶縁膜31は、下部電極21に臨む側壁部分がテーパ形状に形成され、そのテーパ角度θは、この上部に設けられている有機層22や上部電極23の段切れを防止するために、60°以下に形成されていることとする。また、有機電界発光素子ELは、この側壁部分の上部に配置されるため、画素面積を保つことを目的としてテーパ角度θは、30°以上に形成されていることとする。
【0067】
このような第2実施形態の表示装置1’であっても、有機電界発光素子ELを構成する有機層22の屈折率n1と、有機層22と直接接する下地の一部を構成する絶縁膜31の屈折率n2とを略同一としたことにより、これらの界面での光反射が防止される。このため、第1実施形態と同様に、画素間における混色が防止されて視認性や色純度が向上させた高精度表示が可能になる。
【0068】
<第3実施形態>
図6には、第3実施形態の表示装置の構成を示す概略断面図である。この図に示す表示装置1”と、図5に示した第2実施形態の表示装置1’との異なるところは、有機電界発光素子ELを構成する下部電極21’が反射パターンを兼ねており、有機電界発光素子ELの光取り出し側にカラーフィルタ33r,33g,33bを設けたところにある。
【0069】
このため、有機電界発光素子ELの下部には、反射パターンは存在せず、TFT12を覆う平坦化絶縁膜15上に有機電界発光素子ELが直接配置されている構成となっている。このため、反射パターンを兼ねる下部電極21’と上部電極23との間の光学的距離Lは、各画素10r,10g,10bで共通になる。
【0070】
そして、赤色画素10rには、赤色光hrのみを透過させる赤色フィルタ33rが設けられ、緑色画素10gには緑色光hgのみを透過させる緑色フィルタ33gが設けられ、青色画素10bには青色光hbのみを透過させる青色フィルタ33bが設けられた構成となっている。尚、カラーフィルタに換えて色変換層を用いても同様である。
【0071】
このような表示装置1”においても、第2実施形態と同様に、ウィンドウ絶縁膜31の屈折率をn2とし、この屈折率n2がウィンドウ絶縁膜31および下部電極21を覆う有機層22の屈折率n1と略同一に調整されていることとする。
【0072】
このような第3実施形態の表示装置1”であっても、有機電界発光素子ELを構成する有機層22の屈折率n1と、有機層22と直接接する下地の一部を構成する絶縁膜31の屈折率n2とを略同一としたことにより、これらの界面での光反射が防止される。このため、第1実施形態と同様に、画素間における混色が防止されて視認性や色純度が向上させた高精度表示が可能になる。
【0073】
尚、以上の実施形態においては、有機電界発光素子ELが、白色発光の同一構成である場合を例示した。しかしながら、本発明は、発光色毎に発光層を造り分けた各色発光の有機電界発光素子を用いた構成にも適用可能であり、同様の効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1実施形態の表示装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1中のa部拡大図である。
【図3】有機層と絶縁膜との界面における光の反射を説明する図である。
【図4】屈折率差に対する、界面での反射率のシミュレーション結果である。
【図5】第2実施形態の表示装置の構成を示す断面図である。
【図6】第3実施形態の表示装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1,1’,1”…表示装置、10…基板、10r…赤色発光画素、10g…緑色発光画素、10b…青色発光画素、16…絶縁膜、21…下部電極、22…有機層、23…上部電極、31…ウィンドウ絶縁膜、EL…有機電界発光素子、n1…有機層の屈折率、n2…絶縁膜の屈折率、θ…テーパ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と上部電極との間に有機層を狭持してなる有機電界発光素子を基板上に複数配列してなる表示装置において、
基板上の各画素にパターン形成された下部電極と、
前記下部電極間に設けられた絶縁膜と、
前記下部電極および絶縁膜に接してこれらを覆う状態で設けられると共に、当該絶縁膜の屈折率n2と略同一の屈折率n1を有する有機層と、
前記下部電極との間に前記有機層を狭持すると共に、当該有機層において生じた発光光が取り出される上部電極とを備えた
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
前記有機層の屈折率n1と前記絶縁膜の屈折率n2との屈折率差[(n1−n2)/
n2]×100%が、−5%〜8%の範囲で略同一である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示装置において、
前記絶縁膜は、前記下部電極の周縁を覆うと共に当該下部電極の中央部を露出させるウィンドウ絶縁膜として構成されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示装置において、
前記絶縁膜は、前記下部電極に近接してテーパ形状に構成された側壁部分を備え、当該の側壁部分のテーパ角度が30°〜60°である
ことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−91223(P2008−91223A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271374(P2006−271374)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】