説明

表示装置

【課題】共振器構造を導入した各色の有機電界発光素子を配列してなる構成において、コスト上昇させることなく、各有機電界発光素子の画素欠陥を低減し、かつ人間の視覚特性上視認しやすい白色の視野角特性の向上を図ることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】各色発光の発光素子5r,5g,5bを基板3上に配列してなる表示装置1aであって、各発光素子5r,5g,5bは、反射電極からなる陽極(ミラー)7と半透過半反射電極からなる陰極(ハーフミラー)11との間に発光層9-3を含む発光機能層9を狭持させたことにより、各色に特有の波長を共振させて陰極(ハーフミラー)11から取り出す共振構造として構成され、青色発光素子5bの共振次数m=1、赤色発光素子5rおよび緑色発光素子5gの共振次数m=0である。また発光素子5r,5g,5bにおいて、発光機能層9を構成する発光層9-3以外の同一構成の層が共通層として設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子のような自発光型の素子を配列してなる表示装置に係り、特に共振器構造を有する各色発光の素子を設けてなる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機電界発光素子を用いた有機EL(electroluminescence)ディスプレイが実用化されている。有機ELディスプレイは、自発光型であるので、液晶などに比較して視野角が広く、また、高精細度の高速ビデオ信号に対しても十分な応答性を有するものと考えられている。
【0003】
これまで、有機電界発光素子については、共振器構造を導入することによって発光色の色純度を向上させたり発光効率を高めるなど、発光層で発生する光を制御する試みが行われている。しかしながら、有機電界発光素子に共振器構造を導入した場合、共振された光のスペクトルはピークが高く幅が狭いので、表示画面に対して正面方向の光取り出し効率が向上する一方、画面を斜めから見た場合には発光波長が大きくシフトしたり発光強度が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、共振器構造を充たす条件範囲で、共振部の光学的距離を最小値とすることにより、取り出される光のスペクトルのピーク強度を共振効果によって高めながらも、ピーク幅を保つことにより、視野角がずれた場合であっても波長のシフト量を小さく抑え、広い視野角の範囲で色純度の向上を図る構成が提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【0005】
またこの他にも、共振器構造を導入した有機電界発光素子の発光部を凹面構造としたり、当該有機電界発光素子の光取り出し側の透明基板に光拡散部や光屈折部を設けることにより、光の出射方向を拡散させ、光の指向性を平均化することで視野角の拡大を図ろうとした試みもがある(例えば、下記特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/39554号パンフレット
【特許文献2】特開2006−147598号公報
【特許文献3】特開平9−190883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、共振部の光学的距離を最小値とする特許文献1,2の構成では、有機電界発光素子における有機層の膜厚が薄くなる。有機層の膜厚が薄くなることにより、滅点等の電極間ショートによる画素欠陥が発生する問題が生じる。
【0008】
また特許文献3の構造では、新たに凹面構造や光拡散層、光屈折層を形成することが必要となり、コストアップとなる。また、透明基板に形成した凹面構造や光拡散層、光屈折層により外光も散乱され、外光コントラストが著しく悪化してしまうという新たな問題も発生する。
【0009】
またここで、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に発光する有機電界発光素子を基板上に配列してなるカラー表示の有機ELディスプレイにおいては、各色の有機電界発光素子においての視野角特性にバラツキがあると、白色の視野角特性が大幅に劣化する。つまり、各色毎に有機電界発光素子の視野角特性を改善しても、各色間の視野角特性にバラツキがあると、白色の視野角特性を向上させることはできないのである。
【0010】
そこで本発明は、共振器構造を導入した各色の有機電界発光素子を配列してなる構成において、コスト上昇させることなく、各有機電界発光素子の画素欠陥を低減し、かつ人間の視覚特性上視認しやすい白色の視野角特性の向上を図ることが可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するための本発明の表示装置は、各色の発光素子を基板上に配列してなるカラー表示の表示装置である。各発光素子は、反射電極と半透過電極との間に発光層を含む発光機能層を狭持させた共振構造を有している。そして、少なくとも最も短い波長を共振させる発光素子の共振次数が1で、それ以外の発光素子の共振次数が0である。前記発光層以外の発光機能層は、各色の発光素子に共通層である。
【0012】
このような構成の表示装置では、共振構造が導入された各色の発光素子において、少なくとも最も短い波長を共振させる発光素子(すなわち共振次数が同じであれば共振部(発光機能層)の光学的距離Lが最も薄い発光素子)の共振次数が1で、それ以外の発光素子の共振次数が0である。このため、各発光素子から取り出される光の視野角特性の劣化を抑えつつ、少なくとも最も共振部の膜厚が薄い発光素子における発光機能層を厚膜化して滅点の発生を抑制することが可能になる。しかも、各発光素子において発光層以外の発光機能層を構成する同一構成の層を共通層としたことにより、発光機能層の合計膜厚のバラツキの傾向を近似させることができる。したがって、各色の発光光の合成である白色の視野角特性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明の表示装置によれば、共振構造を導入した各色の有機電界発光素子を配列してなるカラー表示の表示装置において、コスト上昇させることなく、各有機電界発光素子の画素欠陥を低減し、かつ人間の視覚特性上視認しやすい白色の視野角特性の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態においては、基板上に、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の有機電界発光素子を配列してフルカラー表示を行う構成の表示装置に本発明を適用した実施の形態を説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の表示装置の構成図である。この図に示す表示装置1aは、基板3上に赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に発光する有機電界発光素子5r,5g,5b、すなわち赤色発光素子5r,緑色発光素子5g,青色発光素子5bをマトリックス状に配列してなり、各発光素子5r,5g,5bでの発光光を基板3と反対側から取り出す上面発光型として構成されている。
【0016】
上記基板3は、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板などの表面層に、ここでの図示を省略した薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)を配列形成してなる、いわゆるTFT基板であり、表面が平坦化絶縁膜で覆われていることとする。
【0017】
そして基板3上に配列形成された発光素子5r,5g,5bは、陽極7、有機層9、電子注入層11、および陰極13を、基板3側から順に積層した構成となっている。また、これらの発光素子5r、5g、5bのそれぞれは、陽極7を反射電極からなるミラーとし、陰極13を半透過半反射電極からなるハーフミラーとし、各発光素子5r,5g,5bで生じた特定波長の光を共振させて陰極(ハーフミラー)13側から取り出す微小共振器構造として構成されている。
【0018】
つまり、赤色発光素子5rは、赤色の波長領域の光が陽極(ミラー)7と陰極(ハーフミラー)13との間の共振部で共振して取り出し効率が極大となるように、共振部の光学的距離Lrが調整されている。また、緑色発光素子5gは、緑色の波長領域の光が陽極(ミラー)7と陰極(ハーフミラー)13との間の共振部で共振して取り出し効率が極大となるように、共振部の光学的距離Lgが調整されている。さらに青色発光素子5bは、青色の波長領域の光が陽極(ミラー)7と陰極(ハーフミラー)13との間の共振部で共振して取り出し効率が極大となるように、共振部の光学的距離Lbが調整されていることとする。これにより、各発光素子5r,5g,5bからは、異なる発光色の光が十分な強度で取り出される構成となっている。
【0019】
ここで、各発光素子5r,5g,5bの光学的距離L(Lr,Lg,Lb)は、下記式(1)を満たす範囲で設定されていることとする。
【0020】
【数1】

【0021】
ただし、式(1)中において、Lおよびλは単位が共通すれば良く、例えば(nm)を単位とする。
【0022】
そして特に、本第1実施形態においては、各発光素子5r,5g,5bのうち最も短い波長を共振させる青色発光素子5bの共振次数m=1で、それ以外の赤色発光素子5rおよび青色発光素子5gの共振次数m=0であるところが特徴的である。
【0023】
以上のように共振次数mが、各発光素子5r,5g,5b=(0,0,1)に設定された各発光素子5r,5g,5bにおける各光学的距離Lr,Lg,Lbは、以降に説明するように有機層9の膜厚によって調整されていることとする。
【0024】
次に、以上のような微小共振器構造を備えた各発光素子5r、5g、5bを構成する各層を、基板3側から順に説明する。
【0025】
先ず陽極7は、反射電極からなるミラーとして構成されており、例えば積層方向の厚み(以下、膜厚)が100nm以上1000nm以下であり、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。このような陽極7を構成する材料としては、例えば、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。
【0026】
各陽極7は、例えば表示装置1aのアクティブマトリックス駆動を可能とするため、各画素に対応させてパターン形成されている。そして、基板3の表面を覆う層間絶縁膜に形成されたコンタクトホール(図示省略)を介して、各TFTに電気的に接続されていることとする。
【0027】
また、各画素毎にパターン形成された陽極(ミラー)7は、中央部のみを露出させる状態でその周囲が絶縁膜15で覆われている。この絶縁膜15は、例えばポリイミドやフォトレジスト等の有機絶縁材料や、酸化シリコンのような無機絶縁材料を用いて構成されていることとする。
【0028】
そして、陽極(ミラー)7上に設けられた発光機能層9は、例えば正孔注入層9-1、正孔輸送層9-2、発光層9-3、および電子輸送層9-4をこの順に積層させてなる。また、一部の発光素子(ここでは青色発光素子5b)には、共振次数mを調整するための膜厚調整層9-2’がパターン形成されている。この膜厚調整層9-2’は、発光機能層9を構成する何れかの層と同一の材料からなるもので良い。ここでは、例えば正孔輸送層9-2と同一材料からなる第2の正孔輸送層として、正孔輸送層9-2と青色発光層9-3bとの間に膜厚調整層9-2’を設けた。
【0029】
発光機能層9を構成する以上の層のうち、各色の発光層9-3は各発光素子5r,5g,5b毎にパターン形成されており、また膜厚調整層9-2’は青色発光素子5bのみにパターン形成されている。これに対して、これらの発光層9-3および膜厚調整層9-2’以外の他の層は、各発光素子5r,5g,5bに同一の構成であって、共通層として設けられているところが特徴的である。
【0030】
そして本第1実施形態においては、以上のように共振次数mが設定された各発光素子5r,5g,5bにおける各光学的距離Lr,Lg,Lbを、膜厚調整層9-2’と共に各色の発光層9-3の膜厚によって調整している。
【0031】
以下に、有機層9を構成するこれらの各層を陽極(ミラー)7側から順に説明する。
【0032】
先ず、正孔注入層9-1は、発光機能層19への正孔注入効率を高めるためのもの、及びリークを防止するためのバッファ層である。正孔注入層9-1は、各画素の共通として、陽極7および絶縁膜15を覆う状態で設けられている。このような正孔注入層9-1は、一般的な正孔注入材料を用いて構成され、一例として4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。このような正孔注入層9-1は、例えば、膜厚が5nm以上300nm以下の範囲で設定される。
【0033】
次に正孔輸送層9-2は、発光層への正孔輸送効率を高めるためのものである。この正孔輸送層9-2は、各画素の共通として、正孔注入層9-1上に設けられている。このような正孔輸送層9-2は、一般的な正孔輸送材料を用いて構成され、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。このような正孔輸送層9-2は、例えば膜厚が5nm以上300nm以下の範囲で設定される。
【0034】
尚、以上の正孔注入層9-1および正孔輸送層9-2は、それぞれが複数層からなる積層構造であっても良い。
【0035】
また、青色発光素子5bのみに設けられた膜厚調整層9-2’は、正孔輸送層9-2と同一材料で構成されていて良く、青色発光素子5bが共振次数m=1となる膜厚で構成されていることとする。尚、このような正孔輸送材料からなる膜厚調整層9-2’は、正孔輸送層9-2と正孔注入層9-1との間に設けても良い。
【0036】
発光層9-3は、陽極7側から注入された正孔と陰極11側か注入された電子との再結合が起こり、光を発生する層である。ここでは、赤色発光素子5rには赤色の発光光を発生する赤色発光層9-3rが設けられ、緑色発光素子5gには緑色の発光光を発生する緑色発光層9-3gが設けられ、青色発光素子5bには青色の発光光を発生する青色発光層9-3bが設けられていることとする。
【0037】
これらの各色発光層9-3r,9-3g,9-3bは、絶縁膜15に形成された開口窓を完全に塞ぐ状態で、各画素毎にパターン形成されている。ここで、各発光素子5r,5g,5bは、上述したように、特定波長の光を陽極(ミラー)7と陰極(ハーフミラー)13との間で共振するように光学的距離Lr,Lg,Lbが調整されているとした。本実施形態においては、膜厚調整層9-2’と共に、発光層9-3r,9-3g,9-3bの膜厚差により、光学的距離Lr,Lg,Lbの調整がなされていることになる。
【0038】
赤色発光素子5rの発光層9-3rは、例えば8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に、2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成され、膜厚10nm以上100nm以下の範囲に設定される。
【0039】
緑色発光素子5gの発光層9-3gは、例えばAlq3に、クマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものにより構成され、膜厚10nm以上100nm以下の範囲に設定される。
【0040】
青色発光素子5bの発光層9-3bは、例えばスピロ6Φ(spiro6Φ)により構成され、膜厚10nm以上100nm以下の範囲に設定される。
【0041】
そして、以上のような構成の各色の発光層9-3r,9-3g,9-3b上に設けられた電子輸送層9-4は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものであり、各画素の共通として設けられている。このような電子輸送層9-4は、一般的な電子輸送材料を用いて構成され、一例として8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )を用いて膜厚5nm以上300nm以下の範囲に設定されている。
【0042】
以上のような正孔注入層9-1、正孔輸送層9-2、膜厚調整層9-2’、各色の発光層9-3r,9-3g,9-3b、および電子輸送層9-4によって、発光機能層9が構成されている。
【0043】
尚、発光機能層9は、発光層9-3以外は必要に応じて設ければ良く、さらに必要に応じて電子輸送層9-4上に電子注入層を設けても良い。電子注入層としては、例えばLiF、Li2Oなどの膜を用いる。
【0044】
そして、発光機能層9上に設けられる陰極11は、半透過半反射電極からなるハーフミラーとして構成されており、例えば膜厚が5nm以上50nm以下に設定されている。このような陰極11を構成する材料としては、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。
【0045】
以上のように陽極(ミラー)7と陰極(ハーフミラー)11との間に発光層9-3を含む発光機能層9を挟持してなる各色の発光素子5r,5g,5bは、ここでの図示は省略した窒化ケイ素(SiNx )などの保護膜により被覆され、さらにこの保護膜上に接着層を間にしてガラスなどよりなる封止用基板が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0046】
以上のような構成の表示装置1aでは、各発光素子5r,5g,5bの発光層9-3r,9-3g,9-3bで発生した各波長の光は、陽極(ミラー)7と陰極(ハーフミラー)11との間で共振して陰極(ハーフミラー)11から取り出される。このように共振器構造を導入したことにより、各発光素子5r,5g,5bから取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し、ピーク強度を高めることができる。すなわち、色純度を向上させ、発光効率を向上させることができる。また、陰極(ハーフミラー)11側から入射した外光についても多重干渉により減衰させることができ、ここでの図示を省略したカラーフィルターとの組合せにより有機発光素子における外光の反射率を極めて小さくすることができる。
【0047】
そして特に、第1実施形態の表示装置1aでは、共振構造の共振次数mを、発光素子5r,5g,5b=(0,0,1)としている。これにより、赤色発光素子5rから取り出される赤色光および緑色発光素子5gから取り出される緑色光の視野角特性を維持しつつ、青色発光素子5bにおける発光機能層9の合計膜厚(光学的距離に相等する)を、赤色発光素子5rおよび緑色発光素子5gと同程度にまで厚膜化させることができる。したがって、全ての発光素子5r,5g,5bにおいて、滅点の発生を抑制することが可能になる。
【0048】
しかも、発光層9-3r,9-3g,9-3bおよび膜厚調整層9-2’以外の発光機能層9を構成する層を、発光素子5r,5g,5bにおいて共通層としている。これにより、発光素子5r,5g,5bにおける発光機能層9の合計膜厚のバラツキの傾向を近似させることができる。したがって、各色の発光光の合成であって、特に人間の視覚特性上視認し易い白色の視野角特性の向上を図ることが可能になる。
【0049】
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態の表示装置の構成図である。この図に示す表示装置1bが、第1実施形態の表示装置と異なるところは、青色発光素子5bと共に緑色発光素子5gの共振次数m=1で、赤色発光素子5rの共振次数m=0であるところ、さらにはこれを実現するための層構成にあり、他の構成は同様であることとする。
【0050】
以上のように共振次数mが、各発光素子5r,5g,5b=(0,1,1)に設定された各発光素子5r,5g,5bにおける各光学的距離Lr,Lg,Lbは、第1実施形態と同様に、膜厚調整層9-2’と共に各色の発光層9-3の膜厚によって調整されている。また本第2実施形態においては、このような共振次数mの組み合わせを実現するために、例えば、膜厚調整層9-2’を緑色発光層5gと青色発光素子5bとの共通層としてパターン形成している。
【0051】
このような構成の表示装置1bであっても、共振器構造を導入したことにより、各発光素子5r,5g,5bから取り出される光の色純度を向上させ、発光効率を向上させることができる。
【0052】
そして特に、第2実施形態の表示装置1bでは、共振構造の共振次数mを、発光素子5r,5g,5b=(0,1,1)としている。これにより、赤色発光素子5rから取り出される赤色光の視野角特性を維持しつつ、青色発光素子5bおよび緑色発光素子5gにおける発光機能層9の合計膜厚(光学的距離に相等する)を、赤色発光素子5rと同程度かそれ以上に厚膜化させることができる。したがって、全ての発光素子5r,5g,5bにおいて、滅点の発生を抑制することが可能になる。
【0053】
しかも、発光層9-3r,9-3g,9-3bおよび膜厚調整層9-2’以外の発光機能層9を構成する層を、発光素子5r,5g,5bにおいて共通層としている。これにより、第1実施形態と同様に各色の発光光の合成であって、特に人間の視覚特性上視認し易い白色の視野角特性の向上を図ることが可能になる。
【0054】
<第3実施形態>
図3は、第3実施形態の表示装置の構成図である。この図に示す表示装置1cが、第1実施形態の表示装置と異なるところは、青色発光素子5bを含む各色の発光素子5r,5g,5bが、共振次数m=1で構成されているところ、さらにはこれを実現するための層構成にあり、他の構成は同様であることとする。
【0055】
以上のように共振次数mが、各発光素子5r,5g,5b=(1,1,1)に設定された各発光素子5r,5g,5bにおける各光学的距離Lr,Lg,Lbは、各色の発光層9-3の膜厚によって調整されている。また本第3実施形態においては、このような共振次数mの組み合わせを実現するために、例えば、膜厚調整層9-2’を赤色発光素子5rと緑色発光素子5gの共通層としてパターン形成している。
【0056】
このような構成の表示装置1cであっても、共振器構造を導入したことにより、各発光素子5r,5g,5bから取り出される光の色純度を向上させ、発光効率を向上させることができる。
【0057】
そして特に、第3実施形態の表示装置1cでは、共振構造の共振次数mを、発光素子5r,5g,5b=(1,1,1)としている。これにより、各発光素子5r,5g,5bから取り出される光の視野角特性の低下を最小限に抑えつつ、発光機能層9の合計膜厚(光学的距離に相等する)を、厚膜化させることができる。したがって、全ての発光素子5r,5g,5bにおいて、滅点の発生をより確実に抑えることが可能になる。
【0058】
しかも、発光層9-3r,9-3g,9-3bおよび膜厚調整層9-2’以外の発光機能層9を構成する層を、発光素子5r,5g,5bにおいて共通層としている。これにより、第1実施形態と同様に各色の発光光の合成であって、特に人間の視覚特性上視認し易い白色の視野角特性の向上を図ることが可能になる。
【0059】
尚、以上の第1実施形態〜第3実施形態においては、正孔輸送材料からなる膜厚調整層9-2’を一部の発光素子に設けた構成を説明した。しかしながら、膜厚調整層は、正孔輸送材料からなるものに限定されることはなく、発光機能層9を構成する各層で構成可能である。この場合、膜厚調整層として用いたと同様の材料層に隣接させて膜厚調整層を配置すれば良い。また、発光層9-3r,9-3g,9-3bのみで共振部となる発光機能層9の膜厚調整が可能である場合は、膜厚調整層を設ける必要はない。
【0060】
また各実施形態においては、陽極7を反射電極(ミラー)として用い、陰極11を半透過半反射電極(ハーフミラー)として用いた構成を説明した。しかしながら本発明は、反射電極と(ミラー)と半透過半反射電極(ハーフミラー)との間に、共振部となる発光機能層が挟持された構成の発光素子に広く適用可能である。このため、陽極−陰極間における発光機能層の積層順が上述と同様であれば、例えば陽極7を半透過半反射電極(ハーフミラー)として用い、陰極11を反射電極(ミラー)として用いた構成であっても良い。
【0061】
<表示装置の回路構成>
図4は、以上のような表示装置の一構成例を説明するための概略の回路構成図である。この図に示すように、表示装置1a,1b,1cを構成する基板3上には、表示領域3aとその周辺領域3bとが設定されている。表示領域3aには、複数の走査線41と複数の信号線43とが縦横に配線されており、それぞれの交差部に対応して1つの画素が設けられた画素アレイ部として構成されている。また周辺領域3bには、走査線41を走査駆動する走査線駆動回路45と、輝度情報に応じた映像信号(すなわち入力信号)を信号線43に供給する信号線駆動回路47とが配置されている。
【0062】
走査線41と信号線43との各交差部に設けられる画素回路は、例えばスイッチング用の薄膜トランジスタTr1、駆動用の薄膜トランジスタTr2、保持容量Cs、および有機電界発光素子ELで構成されている。ここでは、この有機電界発光素子ELとして、上述した発光素子5r,5g,5bが用いられている。
【0063】
このような回路構成の表示装置1a,1g,1bでは、走査線駆動回路45による駆動により、スイッチング用の薄膜トランジスタTr1を介して信号線43から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持され、保持された信号量に応じた電流が駆動用の薄膜トランジスタTr2から有機電界発光素子ELに供給され、この電流値に応じた輝度で有機電界発光素子ELが発光する。尚、駆動用の薄膜トランジスタTr2と保持容量Csとは、共通の電源供給線(Vcc)49に接続されている。
【0064】
尚、以上のような画素回路の構成は、あくまでも一例であり、必要に応じて画素回路内に容量素子を設けたり、さらに複数のトランジスタを設けて画素回路を構成しても良い。また、周辺領域1bには、画素回路の変更に応じて必要な駆動回路が追加される。
【0065】
尚、本発明にかかる表示装置は、図5に開示したような、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部である表示領域3aを囲むようにシーリング部51が設けられ、このシーリング部51を接着剤として、透明なガラス等の対向部(封止基板52)に貼り付けられ形成された表示モジュールが該当する。この透明な封止基板52には、カラーフィルタ、保護膜、遮光膜等が設けられてもよい。尚、表示領域3aが形成された表示モジュールとしての基板3には、外部から表示領域3a(画素アレイ部)への信号等を入出力するためのフレキシブルプリント基板53が設けられていても良い。
【0066】
<適用例>
以上説明した本発明に係る表示装置は、図6〜図10に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。以下に、本発明が適用される電子機器の一例について説明する。
【0067】
図6は、本発明が適用されるテレビを示す斜視図である。本適用例に係るテレビは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本発明に係る表示装置を用いることにより作成される。
【0068】
図7は、本発明が適用されるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0069】
図8は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0070】
図9は、本発明が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0071】
図10は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含み、そのディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【実施例】
【0072】
本発明の具体的な実施例および比較例の構成と、これらの評価結果を説明する。
【0073】
<実施例1>
図1を用いて説明した第1実施形態の表示装置1aを作製した。共振次数mが、各発光素子5r,5g,5b=(0,0,1)となるように、実施形態で例示した材料を用いて下記表1に示すように発光機能層9を構成する各層の膜厚を設定した。
【0074】
【表1】

【0075】
表1に示す各層は真空蒸着法によって成膜した。青色発光素子5bの膜厚調整層9-2’および、各色の発光層9-3r,9-3g,9-3bは、蒸着マスクを用いることでパターン成膜し、その他の層は共通層として一括成膜した。
【0076】
<比較例1>
実施例1と同様に、共振次数mが各発光素子5r,5g,5b=(0,0,1)となるように、下記表2に示すように発光機能層を構成する各層の膜厚を設定した。
【0077】
【表2】

【0078】
発光機能層を構成する各層の全てを、蒸着マスクを用いた真空蒸着法によって各発光素子毎に個別に成膜した。尚、実施例1において青色発光素子5bのみに設けた膜厚調整層は、正孔輸送層として合わせてパターン成膜した。
【0079】
<実施例2>
図2を用いて説明した第2実施形態の表示装置1bを作製した。共振次数mが、各発光素子5r,5g,5b=(0,1,1)となるように、実施形態で例示した材料を用いて下記表3に示すように発光機能層9を構成する各層の膜厚を設定した。
【0080】
【表3】

【0081】
表3に示す各層は真空蒸着法によって成膜した。緑色発光素子5gおよび青色発光素子5bの膜厚調整層9-2’を共通層として蒸着マスクを用いることでパターン成膜し、さらに各色の発光層9-3r,9-3g,9-3bは蒸着マスクを用いることでパターン成膜し、その他の層は共通層として一括成膜した。
【0082】
<比較例2>
実施例2と同様に、共振次数mが各発光素子5r,5g,5b=(0,1,1)となるように、下記表4に示すように発光機能層を構成する各層の膜厚を設定した。
【0083】
【表4】

【0084】
発光機能層を構成する各層の全てを、蒸着マスクを用いた真空蒸着法によって各発光素子毎に個別に成膜した。尚、実施例2において緑色発光素子5gおよび青色発光素子5bのみに設けた膜厚調整層は、各素子部分において正孔輸送層として合わせてパターン成膜した。
【0085】
<実施例3>
図3を用いて説明した第3実施形態の表示装置1cを作製した。共振次数mが、各発光素子5r,5g,5b=(1,1,1)となるように、実施形態で例示した材料を用いて下記表5に示すように発光機能層9を構成する各層の膜厚を設定した。
【0086】
【表5】

【0087】
表5に示す各層は真空蒸着法によって成膜した。赤色発光素子5rおよび緑色発光素子5gの膜厚調整層9-2’を共通層として蒸着マスクを用いることでパターン成膜し、さらに各色の発光層9-3r,9-3g,9-3bは蒸着マスクを用いることでパターン成膜し、その他の各層はそれぞれ共通層として一括成膜した。
【0088】
<比較例3>
実施例3と同様に、共振次数mが各発光素子5r,5g,5b=(1,1,1)となるように、下記表6に示すように発光機能層を構成する各層の膜厚を設定した。
【0089】
【表6】

【0090】
発光機能層を構成する各層の全てを、蒸着マスクを用いた真空蒸着法によって各発光素子毎に個別に成膜した。尚、実施例3において赤色発光素子5rおよび緑色発光素子5gのみに設けた膜厚調整層は、各素子部分において正孔輸送層として合わせてパターン成膜した。
【0091】
<評価結果>
以上のようにして作製された実施例1〜3および比較例1〜3の表示装置においては、これらの表示装置を構成する各発光素子に滅点の発生はなかった。
【0092】
また、各表示装置において、視野角0度と視野角45度での白色視野角色度ずれΔu’v’を測定した。この結果を下記表7に示す。Δu’v’は、各色の発光素子5r,5g,5bにおける発光機能層9の合計の膜厚ばらつきを±4%としたときの最大値である。
【0093】
【表7】

【0094】
表7に示すように、共振構造とした発光機能層の光学設計が同じ実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3の結果から、発光機能層の光学設計が同じであれば、本発明を適用して発光機能層にできるだけ多くの共通層が設けられた実施例1〜3は、発光機能層に共通層を設けずに全て個別にパターニングした比較例1〜3よりも、白色視野角色度ずれが1/2程度に小さく抑えられていることが分かる。
【0095】
以上により、本発明の適用によって、共振構造を導入した各色の有機電界発光素子を配列してなるカラー表示の表示装置において各発光素子の画素欠陥を低減し、かつ人間の視覚特性上視認しやすい白色の視野角特性の向上を図ることが可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】第1実施形態の表示装置を説明する要部断面図である。
【図2】第2実施形態の表示装置を説明する要部断面図である。
【図3】第3実施形態の表示装置を説明する要部断面図である。
【図4】実施形態の表示装置の回路構成の一例を示す図である。
【図5】本発明が適用される封止された構成のモジュール形状の表示装置を示す構成図である。
【図6】本発明が適用されるテレビを示す斜視図である。
【図7】本発明が適用されるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図8】本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図9】本発明が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。
【図10】本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【符号の説明】
【0097】
1a,1b,1c…表示装置、3…基板、5r…赤色発光素子、5g…緑色発光素子、5b…青色発光素子、7…陽極(反射電極であってミラー)、9…発光機能層、9-1…正孔注入層、9-2…正孔輸送層、9-2’…膜厚調整層、9-3r…赤色発光層、9-3g…緑色発光層、9-3b…青色発光層、11…陰極(半透過半反射電極であってハーフミラー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各色の発光素子を基板上に配列してなる表示装置であって、
前記各色の発光素子は、反射電極と半透過電極との間に発光層を含む発光機能層を狭持させた共振構造を有し、
少なくとも前記各色の発光素子のうち最も短い波長を共振させる発光素子の共振次数が1で、それ以外の発光素子の共振次数が0であると共に、
前記発光層以外の発光機能層は当該各色の発光素子に共通である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
前記各色発光の発光素子は、赤色の発光素子、緑色の発光素子、および青色の発光素子である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示装置において、
前記発光素子のうちの一部に、前記発光機能層を構成する何れかの層からなる共振膜厚の調整層を設けた
ことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−123404(P2009−123404A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293814(P2007−293814)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】