説明

表示装置

【課題】上部電極が低抵抗化された表示装置を提供する。
【解決手段】透明基板の一面に、マトリクス状に配置されたカラーフィルタと、該カラーフィルタの周辺に形成された、遮光性を有する遮光パターンとが形成され、該遮光パターン及びカラーフィルタ上に、被覆部と、下部電極と、発光層と、上部電極と、が順次積層されてなる表示装置であって、遮光パターンは、上部電極の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料によって形成され、上部電極は、遮光パターンの一部と電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を有する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、有機EL素子を有する発光層にキャリアを注入する下部電極には、発光層で生じた光を透光するために、Alなどの金属材料よりも比抵抗が大きいITOなどの透光性(透明性)を有する導電材料が用いられる。そのため、下部電極に入力される駆動信号の電圧レベルが高くなり、これによって消費電力が高くなるという問題があった。これに対し、例えば特許文献1に示される表示装置は、Al等からなる遮光層パターンと下部電極とが電気的に接続された構成となっている。
【0003】
特許文献1に示されるEL表示装置は、カラーフィルタ上にEL表示素子を積層して設けたものである。EL表示素子は、カラーフィルタ側から下部電極、発光層、及び上部電極を順次積層して構成される。カラーフィルタは、透光基板上に、EL表示素子の発光を受光する位置に配置された着色層パターンと、下部電極及び上部電極それぞれと接続される取出電極と、着色層パターン間を埋める遮光層パターンと、を備えている。遮光層パターンは、導電材料によって形成されており、下部電極は、遮光層パターンと電気的に接続され、遮光層パターンと下部電極とが取出電極との電気的な接続を担う構成となっている。したがって、下部電極を、遮光層パターンと下部電極からなるものと広義的に解釈すると、下部電極のみが取出電極との電気的な接続を担う構成と比べて、下部電極が低抵抗化され、消費電力が低減された表示装置となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−17263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される構成では、下部電極の低抵抗化は実現されているが、上部電極の低抵抗化は実現されていない。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、上部電極が低抵抗化された表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、透明基板と、該透明基板の一面に、マトリクス状に配置された複数のカラーフィルタと、透明基板の一面における、カラーフィルタの周辺に形成された、遮光性を有する遮光パターンと、絶縁性を有し、遮光パターン、及びカラーフィルタを被覆する被覆部と、該被覆部の一面に、被覆部を介してカラーフィルタと重なるように、カラーフィルタのなすマトリクスの行方向に並列配置された複数の下部電極と、該下部電極を被覆するように、被覆部の一面に形成された発光層と、該発光層の一面に、発光層を介して下部電極と交差する領域が、発光層、下部電極、及び被覆部を介してカラーフィルタと重なるように、カラーフィルタのなすマトリクスの列方向に並列配置された複数の上部電極と、該上部電極と電気的に接続される上部取出電極と、下部電極と電気的に接続される下部取出電極と、を備える表示装置であって、遮光パターンは、上部電極の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料によって形成されており、上部電極は、遮光パターンを介して上部取出電極と電気的に接続されていることを特徴する。
【0008】
このように本発明によれば、上部電極が、上部電極の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料からなる遮光パターンを介して上部取出電極と電気的に接続されている。これにより、上部電極を、遮光パターンと上部電極からなるものと広義的に解釈すると、上部電極が上部取出電極と直接電気的に接続された構成と比べて、上部電極が低抵抗化された構成となっている。これにより、本発明に係る表示装置は、上部電極が低抵抗化された表示装置となっている。
【0009】
請求項2に記載のように、遮光パターンは、下部電極の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料によって形成されており、遮光パターンは、上部取出電極と電気的に接続される第1遮光パターンと、下部取出電極と電気的に接続され、第1遮光パターンとは離れて形成された第2遮光パターンと、第1遮光パターン及び第2遮光パターンと離れて形成された第3遮光パターンと、を有し、上部電極は、第1遮光パターンを介して上部取出電極と電気的に接続され、下部電極は、第2遮光パターンを介して下部取出電極と電気的に接続された構成が好ましい。
【0010】
これによれば、上部電極が、上部電極の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料からなる第1遮光パターンを介して上部取出電極と電気的に接続されている。これにより、上部電極を、第1遮光パターンと上部電極からなるものと広義的に解釈すると、上部電極が上部取出電極と直接電気的に接続された構成と比べて、上部電極が低抵抗化された構成となっている。また、下部電極が、下部電極の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料からなる第2遮光パターンを介して下部取出電極と電気的に接続されている。これにより、下部電極を、第2遮光パターンと下部電極からなるものと広義的に解釈すると、下部電極が下部取出電極と直接電気的に接続された構成と比べて、下部電極が低抵抗化された構成となっている。以上により、本発明に係る表示装置は、上部電極が上部取出電極と直接電気的に接続され、下部電極が第2遮光パターンを介して下部取出電極と電気的に接続された表示装置と比べて、消費電力が低減された表示装置となっている。
【0011】
請求項3に記載のように、透明基板の一面における、カラーフィルタ及び該カラーフィルタ間に形成される遮光パターンのなす領域が表示領域とされ、該表示領域を除く領域が非表示領域とされており、上部電極は、非表示領域にまで延設された第1遮光パターンの端部と、電気的に接続された構成が好ましい。
【0012】
表示領域にて、上部電極が第1遮光パターンと電気的に接続される構成としては、被覆部と発光層における、上部電極とカラーフィルタとが重ならない領域に、上部電極と第1遮光パターンとを接続するスルーホールを形成し、該スルーホールにおける発光層によって形成される壁面を絶縁部材によってコーティングし、スルーホール内に導電材料が充填されてなる層間接続部を形成することで、該層間接続部を介して上部電極と第1遮光パターンとを電気的に接続する構成を考えることができる。しかしながら、この場合、上記した層間接続部の形成領域を、表示領域にてカラーフィルタが形成されていない領域(遮光パターンの形成領域)に確保しなくてはならない。したがって、層間接続部の形成領域の分、表示領域における遮光パターンの形成領域の面積が広くなってしまい、開口率が低下する、という不具合が生じる。
【0013】
これに対し、請求項3に記載の発明によれば、非表示領域にて、上部電極と第1遮光パターンとが電気的に接続されているので、表示領域にて上部電極と第1遮光パターンとが電気的に接続される表示装置と比べて、開口率の低下が抑制された表示装置となっている。
【0014】
請求項4に記載のように、上部電極は、第1遮光パターンの両端部と、電気的に接続された構成が良い。これによれば、上部電極を、第1遮光パターンと上部電極からなるものと広義的に解釈すると、上部電極が第1遮光パターンの一方の端部と電気的に接続された構成と比べて、上部電極と第1遮光パターンとの接触面積が増えるので、上部電極が低抵抗化された構成となっている。これにより、より効果的に消費電力を低減することができる。
【0015】
請求項5に記載のように、第3遮光パターンは、下部電極と電気的に接続された構成が良い。これによれば、下部電極が、下部電極の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料からなる第3遮光パターンと電気的に接続されている。したがって、下部電極を、第2遮光パターンと、第3遮光パターンと、下部電極と、からなるものと広義的に解釈すると、下部電極が第3遮光パターンと電気的に接続されていない構成と比べて、下部電極が低抵抗化された構成となっている。これにより、より効果的に消費電力を低減することができる。
【0016】
下部電極が第3遮光パターンと電気的に接続される構成としては、請求項6に記載のように、被覆部における第3遮光パターンとの対向部位それぞれには、スルーホールに導電部材が充填されてなる層間接続部が少なくとも2つ形成されており、第3遮光パターンは、層間接続部を介して下部電極と電気的に接続された構成を採用することができる。これにより、下部電極を流れる電流を、2つの層間接続部材を介すことで、第3遮光パターンを経由させることができる。
【0017】
請求項7に記載のように、上部取出電極及び下部取出電極は、遮光パターンと同一の材料によって形成された構成が良い。これによれば、取出電極を、遮光パターンとともに形成することができるので、取出電極が遮光パターンを形成する材料とは別の材料によって形成された構成と比べて、表示装置の製造工程を簡略化することができる。
【0018】
請求項8に記載のように、上部取出電極と第1遮光パターンは一体的に形成され、下部取出電極と第2遮光パターンは一体的に形成された構成が良い。これによれば、上部取出電極と第1遮光パターン、及び下部取出電極と第2遮光パターンそれぞれが離反し、上部取出電極と第1遮光パターン、及び下部取出電極と第2遮光パターンそれぞれが接続部材によって接続された構成と比べて、取出電極と接続部材との接触抵抗、及び接続部材と遮光パターンとの接触抵抗の分、取出電極と遮光パターン間の抵抗を低減することができる。すなわち、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る表示装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は、第1実施形態に係る表示装置の概略構成を示す平面図である。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、図1のIII−III線に沿う断面図である。図4は、図1のIV−IV線に沿う断面図である。なお、図1においては、便宜上、上部電極70と重なる、カラーフィルタ20、遮光パターン30、及び下部電極50を実線で示し、後述する被覆部40及び発光層60を省略する。また、以下においては、透明基板10の一面10aに沿う方向であり、カラーフィルタ20によって形成されるマトリクスの行方向を単に行方向と示し、一面10aに沿う方向であり、行方向と垂直である方向を列方向と示す。
【0021】
図1及び図2に示すように、表示装置100は、要部として、透明基板10と、該透明基板10の一面10aにマトリクス状に配置されたカラーフィルタ20と、一面10aにおけるカラーフィルタ20の周辺に配置された遮光パターン30と、カラーフィルタ20及び遮光パターン30上に形成された被覆部40と、該被覆部40の一面40aに形成された下部電極50と、該下部電極50を被覆するように、被覆部40の一面40aに形成された発光層60と、該発光層60の一面60aに形成された上部電極70と、該上部電極70及び下部電極50と電気的に接続される取出電極80と、を有している。取出電極80には、下部電極50及び上部電極70に駆動信号を入力するための入力部90が接続されており、該入力部90から出力される駆動信号によって、画像が表示されるようになっている。
【0022】
透明基板10は、発光層60が発光する白色光の内、少なくとも波長が380nm〜780nmである可視光を透過する材料によって形成されており、本実施形態では、ガラスによって形成されている。
【0023】
カラーフィルタ20は、発光層60が発光する白色光の内、可視光領域における代表的な波長領域の光を選択的に透過するものである。本実施形態に係るカラーフィルタ20は、代表的な波長領域の光として、光の三原色である、赤色、緑色、及び青色の波長領域の光を選択的に透過させる、3つのフィルタ21〜23を有している。レッドフィルタ21は赤色の波長領域(625nm〜740nm)の光を透過する材料によって形成され、グリーンフィルタ22は緑色の波長領域(500nm〜565nm)の光を透過する材料によって形成され、ブルーフィルタ23は青色の波長領域(450nm〜485nm)の光を透過する材料によって形成されている。これらフィルタ21〜23は、透明基板10の一面10aにマトリクス状に配置されており、発光層60から出力される白色光が、各フィルタ21〜23を介して外部に出力されることで、画像がカラー表示されるようになっている。なお、透明基板10の一面10aにおける、カラーフィルタ20と、カラーフィルタ20間に配置された遮光パターン30とによって形成される領域が、特許請求の範囲に記載の表示領域に相当し、該表示領域を除く部位が、特許請求の範囲に記載の非表示領域に相当する。
【0024】
遮光パターン30は、遮光性を有し、カラーフィルタ20を透過した光が混合することを抑制するものである。遮光パターン30は、透明基板10の一面10aに導電材料を堆積した後、該導電材料を所定のパターンにエッチングすることで形成される。遮光パターン30は、後述する上部電極70の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料によって形成されており、本実施形態では、Alよりも比抵抗が小さいAgによって形成されている。
【0025】
遮光パターン30は、後述する取出電極80を構成する上部取出電極81と電気的に接続される第1遮光パターン31と、取出電極80を構成する下部取出電極82と電気的に接続され、第1遮光パターン31とは離れて形成された第2遮光パターン32と、該第2遮光パターン32及び第1遮光パターン31とは離れて形成された第3遮光パターン33と、を有している。図1に示すように、第1遮光パターン31は、長手方向が行方向と平行となるように形成され、それぞれが、列方向に並列配置された構成となっている。第2遮光パターン32は、長手方向が列方向と平行となるように形成され、それぞれが、行方向に並列配置された構成となっている。第3遮光パターン33は、長手方向が列方向と平行となるように形成され、カラーフィルタ20によって構成されるマトリクスの列方向に沿う隙間、及び行方向において最外層に位置するカラーフィルタ20の周辺に配置された構成となっている。
【0026】
被覆部40は、絶縁性を有し、カラーフィルタ20と遮光パターン30とを被覆するものである。本実施形態に係る被覆部40は、アクリル系の透光性を有する樹脂によって形成されており、該樹脂をスピンコート法によって塗布し、塗布された樹脂をフォトリソ法によってパターニングし、パターニングされた樹脂の表面を研磨することで、所定の形状に形成される。図3及び図4に示すように、被覆部40は、カラーフィルタ20と遮光パターン30とによって形成される凸凹な面と対向する一面40aが平坦とされ、行方向の端部には、被覆部40の中心から端部に向かうに従って厚さが縮径する第1の傾斜が形成され、列方向の端部には、下部取出電極82の方向へ向かうに従って厚さが縮径する第2の傾斜が形成されている。
【0027】
また、図4に示すように、被覆部40における第3遮光パターン33との対向部位それぞれには、第3遮光パターン33と、下部電極50とを接続するスルーホールに、Agなどの導電部材が充填されてなる2つの層間接続部41が形成されている。これにより、下部電極50を流れる電流が、層間接続部41を介すことで、第3遮光パターン33を経由する構成となっている。下部電極50から、一方の層間接続部41を介して第3遮光パターン33に流入した電流は、他方の層間接続部41を介して、下部電極50に戻るようになっている。このように、下部電極50を流れる電流が、第3遮光パターン33を流れるようになっている。なお、上記した構成において、第3遮光パターン33に流れる電流量を増大することで、下部電極50を低抵抗化するには、層間接続部41が、各第3遮光パターン33における長手方向の各端部に設けられた構成が望ましい。
【0028】
下部電極50は、透明性を有する導電材料によって形成されており、本実施形態では、比抵抗がAgよりも大きいITOによって形成されている。下部電極50は、その長手方向が、被覆部40を介して、列方向に配列されたカラーフィルタ20、第2遮光パターン32、及び第3遮光パターン33と重なるように、列方向に沿って形成されている。そして、下部電極50それぞれが、所定の間隔を隔てて、行方向に並列配置された構成となっている。図4に示すように、下部電極50の一端50aは、被覆部40の第2の傾斜に沿って形成され、一端50aと、第2遮光パターン32とが電気的に接続されている。これにより、下部電極50と下部取出電極82とが、第2遮光パターン32を介して電気的に接続された構成となっている。また、上記したように、下部電極50は、層間接続部41を介して、列方向に並列配置された第3遮光パターン33それぞれと電気的に接続された構成となっている。図1では、1つの下部電極50につき、1つの第2遮光パターン32と、2つの第3遮光パターン33とが電気的に接続された構成が示されている。
【0029】
発光層60は、有機EL素子を有し、有機エレクトロルミネッセンス現象によって、可視光領域の様々な波長を有する光が重なり合わさった白色光を発光するものである。発光層60は、被覆部40の一面40aに形成された下部電極50を被覆するように、一面40aに形成される。
【0030】
上部電極70は、比抵抗がAgよりも大きいAlによって形成され、その長手方向が、発光層60、下部電極50、及び被覆部40を介して、行方向に配列されたカラーフィルタ20、及び第1遮光パターン31と重なるように形成されている。そして、上部電極70それぞれが、所定の間隔を隔てて、列方向に並列配置された構成となっている。図3に示すように、上部電極70の端部70a,70bは、被覆部40の第1の傾斜に沿って形成され、端部70a,70bと、第1遮光パターン31における非表示領域まで延設された両端部とが電気的に接続されている。これにより、上部電極70と上部取出電極81とが、第1遮光パターン31を介して電気的に接続された構成となっている。
【0031】
取出電極80は、下部電極50及び上部電極70と、後述する入力部90とを電気的に接続するものである。本実施形態に係る取出電極80は、遮光パターン30とともに形成され、遮光パターン30の一部と一体的に形成されている。取出電極80は、第1遮光パターン31と一体的に形成された上部取出電極81と、第2遮光パターン32と一体的に形成された下部取出電極82と、を有している。上記したように、上部取出電極81は、第1遮光パターン31を介して上部電極70と電気的に接続され、下部取出電極82は、第2遮光パターン32を介して下部電極50と電気的に接続されている。
【0032】
入力部90は、上部電極70及び下部電極50に駆動信号を入力するものであり、上部取出電極81と電気的に接続される第1入力部91と、下部取出電極82と電気的に接続される第2入力部92と、を有している。第1入力部91から出力された駆動信号は、上部取出電極81、第1遮光パターン31、及び上部電極70を介して発光層60に入力され、第2入力部92から出力された駆動信号は、下部取出電極82、第2遮光パターン32、第3遮光パターン33、及び下部電極70を介して発光層60に入力されるようになっている。このように、第1遮光パターン31と、上部電極70と、上部取出電極81とが第1入力部91と発光層60とを接続する供給配線の役割を果たし、第2遮光パターン32と、第3遮光パターン33と、下部電極50と、下部取出電極82とが、第2入力部92と発光層60とを接続する供給配線の役割を果たす。
【0033】
次に、本実施形態に係る表示装置100の駆動方式を説明する。表示装置100は、パッシブマトリクス型の表示装置であり、駆動方式として線順次駆動方式を採用している。上部電極70それぞれには、第1入力部91から順次1行ずつ、上部電極70と下部電極50との間に電位差を生じさせる選択電圧が印加され、その他の行の上部電極70には、上部電極70と下部電極50との間に電位差を生じさせない非選択電圧が印加される。そして、下部電極50それぞれには、第2入力部92からパルス幅変調された階調信号が供給されるようになっている。したがって、発光層60における、上部電極70と下部電極50とが交差する領域(以下、このような領域を発光領域と示す)に、上部電極70から選択電圧が印加され、下部電極50から階調信号が入力されると、発光領域にキャリア(電子とホール)が注入され、発光領域で対消滅が生じ、パルス幅に応じた時間分、発光領域が発光する。これに対し、上部電極70における非選択電圧が印加された行の発光領域には、上部電極70と下部電極50との間で電位差が生じないので、発光層60にキャリアは流れ込まず、したがって発光領域は発光しない。このように、線順次駆動方式は、選択電圧が印加された行における、階調信号が入力された発光領域のみが発光するようになっている。なお、線順次駆動方式については、例えば特開2008−26678号公報などに示されるように公知なので、本実施形態では、詳細な説明を割愛する。
【0034】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。上記したように、上部電極70は、非表示領域において、上部電極70の形成材料(Al)以下の比抵抗を有する導電部材(Ag)によって形成された第1遮光パターン31の両端部と、端部70a,70bにて電気的に接続され、上部電極70と上部取出電極81とが、第1遮光パターン31を介して電気的に接続された構成となっている。これにより、上部電極70を、第1遮光パターン31と上部電極70からなるものと広義的に解釈すると、上部電極70が上部取出電極81と直接電気的に接続された構成と比べて、上部電極70が低抵抗化された構成となっている。これにより、本実施形態に係る表示装置100は、上部電極70が低抵抗化された表示装置となっている。
【0035】
また、本実施形態では、下部電極50が、一端50aにおいて、下部電極50の形成材料(ITO)以下の比抵抗を有する導電部材(Ag)によって形成された第2遮光パターン32と電気的に接続され、下部電極50と下部取出電極82とが、第2遮光パターン32を介して電気的に接続された構成となっている。これにより、下部電極50を、第2遮光パターン32と下部電極50からなるものと広義的に解釈すると、下部電極50が下部取出電極82と直接電気的に接続された構成と比べて、下部電極50が低抵抗化された構成となっている。以上により、本実施形態に係る表示装置100は、上部電極70が上部取出電極81と直接電気的に接続され、下部電極50が第2遮光パターン32を介して下部取出電極82と電気的に接続された表示装置と比べて、消費電力が低減された表示装置ともなっている。なお、選択電圧が印加された行のみを発光させる線順次駆動方式の場合、選択された行の輝度を保つために、1つの行に印加する電圧も高くなる。したがって、上記した、上部電極70が低抵抗化された構成は、線順次駆動方式によって駆動する表示装置に、特に有用である。
【0036】
上記したように、上部電極70は、端部70a,70bにて、第1遮光パターン31の両端部と電気的に接続された構成となっている。これにより、上部電極70を、第1遮光パターン31と上部電極70からなるものと広義的に解釈すると、上部電極70が第1遮光パターン31の一方の端部と電気的に接続された構成と比べて、上部電極70と第1遮光パターン31との接触面積(駆動信号の流入面積)が増えるので、上部電極70が低抵抗化された構成となっている。これにより、より効果的に消費電力を低減することができる。
【0037】
表示領域にて、上部電極70と第1遮光パターン31とが電気的に接続される構成としては、被覆部40と発光層60における、上部電極70とカラーフィルタ20とが重ならない領域に、上部電極70と第1遮光パターン31とを接続するスルーホールを形成し、該スルーホールにおける発光層60によって形成される壁面を絶縁部材によってコーティングし、スルーホール内に導電材料が充填されてなる層間接続部を形成し、該層間接続部を介して上部電極70と第1遮光パターン31とを電気的に接続する構成を考えることができる。しかしながら、この場合、上記した層間接続部の形成領域を、表示領域にてカラーフィルタ20が形成されていない領域(第1遮光パターン31の形成領域)に確保しなくてはならない。したがって、層間接続部の形成領域の分、表示領域における遮光パターン30の形成領域の面積が広くなってしまい、開口率が低下する、という不具合が生じる。
【0038】
しかしながら、本実施形態では、非表示領域にて、上部電極70と第1遮光パターン31とが電気的に接続されている。これにより、表示領域にて上部電極70と第1遮光パターン31とが電気的に接続された表示装置と比べて、開口率の低下が抑制された表示装置100となっている。
【0039】
本実施形態では、下部電極50が、2つの層間接続部41を介して、下部電極50の形成材料以下の比抵抗を有する導電部材によって形成された第3遮光パターン33と電気的に接続された構成となっている。したがって、下部電極50を、第2遮光パターン32と、第3遮光パターン33と、下部電極50と、からなるものと広義的に解釈すると、下部電極50が第3遮光パターン33と電気的に接続されていない構成と比べて、下部電極50が低抵抗化された構成となっている。これにより、より効果的に消費電力を低減することができる。
【0040】
本実施形態では、取出電極80が、遮光パターン30と同一の材料によって形成されている。これにより、取出電極80が遮光パターン30を形成する材料とは別の材料によって形成された構成と比べて、表示装置100の製造工程を簡略化することができる。
【0041】
本実施形態では、上部取出電極81と第1遮光パターン31とが一体的に形成され、下部取出電極82と第2遮光パターン32とが一体的に形成されている。これにより、上部取出電極81と第1遮光パターン31、及び下部取出電極82と第2遮光パターン32それぞれが離反し、上部取出電極81と第1遮光パターン31、及び下部取出電極82と第2遮光パターン32それぞれが接続部材によって接続される構成と比べて、取出電極80と接続部材との接触抵抗、及び接続部材と遮光パターン30との接触抵抗の分、取出電極80と遮光パターン30間の抵抗を低減することができる。これにより、消費電力を低減することができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0043】
本実施形態では、上部電極70が、その端部70a,70bにて、第1遮光パターン31の両端部と電気的に接続される例を示した。しかしながら、上部電極70が、端部70aにて、第1遮光パターン31の一端と電気的に接続される構成としても良い。
【0044】
本実施形態では、下部電極50が、その一端50aにて、第2遮光パターン32と電気的に接続される例を示した。しかしながら、下部電極50と第2遮光パターン32とが電気的に接続されない構成としても良い。
【0045】
本実施形態では、層間接続部41を介して、下部電極50と第3遮光パターン33とが電気的に接続される例を示した。しかしながら、下部電極50と第3遮光パターン33とが電気的に接続されない構成としても良い。
【0046】
本実施形態では、取出電極80が、遮光パターン30と同一の材料によって形成される例を示した。しかしながら、取出電極80を、遮光パターン30とは異なる材料によって形成しても良い。
【0047】
本実施形態では、遮光パターン30がAgによって形成される例を示した。しかしながら、遮光パターン30の形成材料としては、上記例に限定されず、上部電極70の形成材料以下の比抵抗を有する導電部材ならば適宜採用することができる。例えば、上部電極70がITOによって形成される場合、遮光パターン30の形成材料として、酸化Cr、Crの積層膜、Alなどを採用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10・・・透明基板
20・・・カラーフィルタ
30・・・遮光パターン
31・・・第1遮光パターン
32・・・第2遮光パターン
33・・・第3遮光パターン
40・・・被覆部
50・・・下部電極
60・・・発光層
70・・・上部電極
80・・・取出電極
81・・・上部取出電極
82・・・下部取出電極
90・・・入力部
100・・・表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
該透明基板の一面に、マトリクス状に配置された複数のカラーフィルタと、
前記透明基板の一面における、前記カラーフィルタの周辺に形成された、遮光性を有する遮光パターンと、
絶縁性を有し、前記遮光パターン、及び前記カラーフィルタを被覆する被覆部と、
該被覆部の一面に、前記被覆部を介して前記カラーフィルタと重なるように、前記カラーフィルタのなすマトリクスの行方向に並列配置された複数の下部電極と、
該下部電極を被覆するように、前記被覆部の一面に形成された発光層と、
該発光層の一面に、前記発光層を介して前記下部電極と交差する領域が、前記発光層、前記下部電極、及び前記被覆部を介して前記カラーフィルタと重なるように、前記カラーフィルタのなすマトリクスの列方向に並列配置された複数の上部電極と、
該上部電極と電気的に接続される上部取出電極と、
前記下部電極と電気的に接続される下部取出電極と、を備える表示装置であって、
前記遮光パターンは、前記上部電極の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料によって形成されており、
前記上部電極は、前記遮光パターンを介して前記上部取出電極と電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記遮光パターンは、前記下部電極の形成材料以下の比抵抗を有する導電材料によって形成されており、
前記遮光パターンは、前記上部取出電極と電気的に接続される第1遮光パターンと、前記下部取出電極と電気的に接続され、前記第1遮光パターンとは離れて形成された第2遮光パターンと、前記第1遮光パターン及び前記第2遮光パターンと離れて形成された第3遮光パターンと、を有し、
前記上部電極は、前記第1遮光パターンを介して前記上部取出電極と電気的に接続され、前記下部電極は、前記第2遮光パターンを介して前記下部取出電極と電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記透明基板の一面における、前記カラーフィルタ及び該カラーフィルタ間に形成される前記遮光パターンのなす領域が表示領域とされ、該表示領域を除く領域が非表示領域とされており、
前記上部電極は、前記非表示領域にまで延設された前記第1遮光パターンの端部と、電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記上部電極は、前記第1遮光パターンの両端部と、電気的に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第3遮光パターンは、前記下部電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記被覆部における前記第3遮光パターンとの対向部位それぞれには、スルーホールに導電部材が充填されてなる層間接続部が少なくとも2つ形成されており、
前記第3遮光パターンは、前記層間接続部を介して前記下部電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記上部取出電極及び前記下部取出電極は、前記遮光パターンと同一の材料によって形成されていることを特徴とする請求項2〜6いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記上部取出電極と前記第1遮光パターンは一体的に形成され、前記下部取出電極と前記第2遮光パターンは一体的に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−198929(P2010−198929A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42899(P2009−42899)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】