説明

表示装置

【課題】移動体内、特に航空機内で使用し電磁波遮蔽性、パネル前面の安全性に加え、難燃性を兼ね備える表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】表示装置の前面に配置されるガラスを、導電性のメッシュを間に挟んだ合わせガラスとし、さらに、ガラス表面にPETフィルムを貼る構成とする。さらに、導電性メッシュとそれを固定する接着剤から成るメッシュ接着層の厚み、及び、PETフィルムの厚みを最適化することで、(1)電磁波遮蔽性、(2)表示パネル部の安全性に加えて、航空機内で使用可能なレベルの難燃性の要求を満たすことが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体、特に、航空機内において使用可能な表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機内において、乗客、及び、乗務員が映像コンテンツを鑑賞する表示装置に求められる条件は、特に、(1)航空機無線を妨害しないための電磁波遮蔽性、次に、(2)衝撃に対する強度、及び、割れてもシャープエッジが発生しない表示画面部の安全性、そして、(3)火が付いても自己消化する程度の難燃性の三つである。上述した(1)の電磁波遮蔽性を実現するためには、特に液晶パネル前面に配置されるガラスの電磁波遮蔽性が必要不可欠であり、その手段は、大きく分けて二つ存在する。
【0003】
第一に、電磁波遮蔽のために、表面にITO(酸化インジウムスズ)蒸着膜を有するガラス(以下、ITOガラスと呼ぶ)を用いた表示装置が用いられる。第二に、より高い電磁波遮蔽性を得るために、ITO蒸着膜の代わりに導電性メッシュが用いられる。2枚のガラスの間にシールド層として導電性メッシュを挟み、合わせガラスとした表示装置が商品化されており、特許文献1に記載されたものが知られている。その表示装置に用いられている導電性メッシュ合わせガラス(以下、「メッシュガラス」という)を図5に示す。図5は、メッシュガラスの断面を示している。窓材1は2枚の透明基板2A,2Bを導電性メッシュ3又は導電性複合メッシュを介在させて接着用中間膜4A,4Bで一体化している。導電性メッシュ3は、線径200μm以下の金属繊維及び/又は金属被覆有機繊維よりなり、開口率75%以上の目の粗いメッシュ、或いは、線径200μm以下の金属繊維及び/又は金属被覆有機繊維と透明繊維とを混編みした、開口率75%以上の複合メッシュである。さらに、前記第1及び第2の透明基板の端面から第1の透明基板の非接合面側の板面の縁部と第2の透明基板の他方の板面の縁部とに回り込んで導電性粘着テープが貼り付けられている。以上のように構成された、表示装置に用いられる従来のメッシュガラスは、良好な電磁波遮蔽性を有しており、上記ITOガラスよりも効果は大きい。
【0004】
また、上述した(2)の表示パネル部の安全性の確保に関しては、強化ガラスの使用や、ガラス飛散防止のために、ガラス表面にPETフィルムを貼ることは良く行われる。これに関しては、特許文献2に記載されたものなどが知られている。また、このPETフィルムには、反射防止膜が塗布されている。
【特許文献1】特開平11−292575号公報
【特許文献2】特開平10−319859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来のガラスを用いた表示装置では、(1)電磁波遮蔽性、(2)表示パネル部の安全性に加え、(3)難燃性を得ることは難しい。移動体内、特に航空機内で用いる部品や製品には、高い難燃性が要求されている。上記従来のメッシュガラスでは、高い電磁波遮蔽性がある一方で、メッシュを固定している接着剤が燃えやすく、難燃性の基準を満たすことができないという問題点を有していた。一方、上記従来のITOガラスは難燃性に優れているが、十分な電磁波遮蔽性を得ることが出来ないという問題を有していた。これは、現在の技術では、ITO蒸着膜の低抵抗化に限界があるからである。
【0006】
本発明の表示装置は、上記従来の問題点を解決するもので、移動体内、特に航空機内で使用し、電磁波遮蔽性、パネル前面の安全性に加え、難燃性を兼ね備える表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の表示装置は、液晶パネルと、液晶パネルの前面に設けた第1のガラス板と、第1のガラス板の前面に設け接着材と導電性メッシュとを含む厚さ0.06mm〜0.15mmの範囲内のメッシュ接着層と、接着層の前面に設けた第2のガラス板と、第2のガラス板の前面に設けたPETフィルムとを備えた構成を有している。
【0008】
また、PETフィルムの厚さは0.05mm〜0.075mmの範囲内である構成を有している。
【0009】
この構成によって、移動体内、特に航空機内で使用可能な表示装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、移動体内、特に航空機内で使用し、電磁波遮蔽性、パネル前面の安全性に加え、難燃性を兼ね備える表示装置を提供するとことができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における表示装置の断面構造を示す図である。以下、図1に記載の各要素について説明する。1は表示装置の金属筐体であり、一般的にはアルミ合金が良く用いられる。2は液晶パネルモジュールであり、前記金属筐体の内部に配置される。3aは、前記液晶パネルモジュールの前面に設けた第1のガラス板である。4は、前記第1のガラス板の前面に設けられた、導電性メッシュと固定用の接着材を含むメッシュ接着層である。尚、導電性メッシュには、PETメッシュの基材に、銅コーティングが施され、且つ、表面が黒色のものが好ましい。3bは、前記メッシュ接着層の前面に設けた第2のガラス板である。尚、前記第1のガラス板、及び、前記第2のガラス板は、液晶パネルモジュールの保護を目的としている。そのため、用いられるガラスは、一般的に強化ガラスであり、実施の形態1では、化学強化法、すなわち、ガラス表面をイオン交換によって圧縮層を形成することによって強化されたガラスを用いている。5は、前記第2のガラス板の前面に設けられた樹脂の薄膜シートであり、実施の形態1ではPETフィルムが用いられる。尚、このシートの前面には、ハードコート処理が施されている。6は、導電性粘着テープであり、金属箔の片面に両面テープが貼付けられている。特に、導電性銅箔テープを用いることが好ましい。尚、前記メッシュ接着層に含まれる導電性メッシュは、前記第1のガラス板、及び、前記第2のガラス板の端面から飛び出しており、前記導電性粘着テープの粘着面と接している。さらに、前記導電性粘着テープの非粘着面は、前記金属筐体と接する構造である。
【0012】
図2は本発明の実施の形態1における表示装置のメッシュ接着層厚みの最適範囲を示す図である。一般的に、導電性メッシュは材質が同一であれば、その厚みが厚い程、電気的な抵抗を小さくすることが可能であり、それゆえ電磁波遮蔽性に優れている。一方で、導電性メッシュの厚みが増すにつれ、接着層の厚みも増し、難燃性が失われる。したがって、接着層厚みの最適化が必要不可欠であった。
【0013】
ここで難燃性は以下の三つの基準をクリアする必要がある。(イ)垂直試験(14CFR 25.853(a) Appendix F Part 1)、(ロ)放出熱量試験(14CFR 25.853(a) Appendix F Part 4)、(ハ)排出煙量試験(14CFR 25.853(a) Appendix F Part 5)である。ここで、括弧内は、CFR(Code of Federal Regulations:米国連邦規則集)にて定められる試験規格である。それぞれの試験概要について図3に示す。(イ)の垂直試験は、板状の供試体の下端面を、一定時間バーナーで炙る試験である。要求事項として、試験後の消火時間などがある。また、(ロ)の放出熱量試験は、板状の供試体の面と平行にヒータを配置し、輻射熱により均一に加熱し、さらに、供試体の上下からバーナーで加熱する試験である。規定時間内に放出される熱量が、規定量を超えないことが要求されている。(ハ)の排出煙量試験は、二種類ある。一つは、板状の供試体を面方向からヒータの輻射熱により加熱する試験であり、もう一方は、ヒータによる加熱に加えて、供試体の下端からバーナーによる加熱も行われる。判定基準には、一定時間内に排出された煙の光学密度を用いる。
【0014】
図2に示すように、接着層の厚みの上限は、難燃性の観点から決定され、0.15mmである。さらに、接着層厚みの下限は、十分な電磁遮蔽性を満たすよう決定され、0.06mmである。
【0015】
尚、接着層に用いられる接着剤は、熱可塑性樹脂であることが望ましい。これは、上述の(ロ)の放出熱量試験を行った際に放出される熱量が、熱硬化性樹脂の場合に比して少ないからである。
【0016】
このように、接着層の厚みを最適化することで初めて、上述した(1)の十分な電磁遮蔽性を確保しつつ、(3)の難燃性を満たすことが可能となった。
【0017】
図4は本発明の実施の形態1における表示装置のPETフィルム厚みの最適範囲を示す図である。図4に示すように、PETフィルム厚みの下限値は0.05mmであり、これは、ガラスの飛散を防ぐことが可能な最低の厚みである。一方、PET厚みの上限値は、難燃性を満たすように決定される。これは、上述の(イ)〜(ハ)の難燃性試験の内、(ロ)の放出熱量試験の制約によっている。以下、簡単に説明する。実際に、厚みを0.075mm、0.125mm、0.175mmの3通りに変えて、上述の(イ)の垂直試験を実施した結果、これらは全て基準を満たした。尚、厚い0.175mmが有利であった。これは、一般的に、樹脂のシート厚みが厚いほど燃えにくいためである。なぜなら、同一の試験状況下では、被燃焼物の体積が大きいほど、単位体積あたりに与えられる熱エネルギーが小さいからである。
【0018】
しかしながら、厚み0.125mm、及び、0.175mmでは、(ロ)の放出熱量試験の基準を満たさなかった。これは、体積が多いほど発熱量が多いためである。そのため、(ロ)の放出熱量試験を満たすためには、より薄くする必要がある。それゆえ、この基準を満たすため厚みの上限値は、0.075mmが適切である。
【0019】
このように、PETフィルムの厚みを最適化することで、上述した(2)の表示パネル部の安全性を満たし、且つ、上述した(3)の難燃性を確保することが可能となった。
【0020】
尚、(ハ)の排出煙量試験については、上記3種の厚みに対しても、基準を満たすことは確認している。
【0021】
以上のように本実施の形態1によれば、適切な厚みのメッシュ接着層、及び、PETフィルムを設けることにより、移動体内、特に航空機内で使用し電磁波遮蔽性、パネル前面の安全性に加え、難燃性を兼ね備える表示装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の表示装置は、電磁波遮蔽性、パネル前面の安全性に加え、難燃性を兼ね備えることができるという優れた効果を有しているため、航空機内において使用可能な表示装置等において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における表示装置の断面構造を示す図
【図2】本発明の実施の形態1における表示装置のメッシュ接着層厚みの最適範囲を示す図
【図3】難燃性試験の概略図
【図4】本発明の実施の形態1における表示装置のPETフィルム厚みの最適範囲を示す図
【図5】従来の表示装置の断面構造を示す図
【符号の説明】
【0024】
1 金属筐体
2 PETフィルム
3a 強化ガラス
3b 強化ガラス
4 メッシュ接着層
5 液晶パネルモジュール
6 導電性粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルと、
前記液晶パネルの前面に設けた第1のガラス板と、
前記第1のガラス板の前面に設け接着材と導電性メッシュとを含む厚さ0.06mm〜0.15mmの範囲内のメッシュ接着層と、
前記接着層の前面に設けた第2のガラス板と、
前記第2のガラス板の前面に設けたPETフィルムと、
を有する表示装置。
【請求項2】
前記PETフィルムの厚さは、0.05mm〜0.075mmの範囲内である請求項1記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−8450(P2010−8450A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164082(P2008−164082)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】